次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して、本実施の形態が適用される部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、基板に電子部品を実装して実装基板を製造する機能を有するものであり、部品実装装置M1,M2,M3および検査装置M4を備えている。これら装置は通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。
それぞれの部品実装装置M1,M2,M3は、部品実装機構12(図2参照)によって部品接合用の半田が印刷された基板に部品供給部から取り出した部品を移送搭載する部品実装作業を行う。すなわち本実施の形態では、部品実装システム1は前述の部品実装作業を反復実行する形態となっている。そしてこの部品実装作業を反復して実行する過程においては、部品実装装置M1,M2,M3において部品実装機構12の経時変化を測定して経時変化情報を求めるようになっている。
検査装置M4は、部品実装装置M1,M2,M3により部品を実装された基板における部品の実装状態を検査して正しい実装位置からの位置ずれ状態を検出する。管理コンピュータ3はライン管理機能と併せて、検査装置M4によって検出された位置ずれ状態および各部品実装装置で経時変化を測定して求められた経時変化情報に基づいて、実装位置精度を改善するために各部品実装装置にフィードバックすべきフィードバック補正値を算出する機能を備えている。以下、部品実装システム1を構成する各装置の詳細構成について各図を参照して説明する。
まず図2を参照して、部品実装装置M1,M2,M3の構成を説明する。図2において、基台4の上面の中央にはX方向(基板搬送方向)に基板搬送機構5が配設されており、基板搬送機構5は上流側装置から受け渡された基板6を搬送して、以下に説明する部品実装機構12による実装作業位置に基板6を位置決め保持する。
基板搬送機構5の両側方には部品供給部7が配置されており、部品供給部7には複数のテープフィーダ8が並設されている。テープフィーダ8は実装対象の部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、部品実装機構による部品吸着位置に部品を供給する。基台4の上面においてX方向の一方側の端部には、X方向と直交するY方向にY軸ビーム9が配設されており、Y軸ビーム9には2基のX軸ビーム10が、Y方向に移動自在に結合されている。
2基のX軸ビーム10には、それぞれ実装ヘッド11がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド11は複数の保持ヘッドを備えた多連型ヘッドであり、それぞれの保持ヘッドの下端部には、図3に示すように、電子部品を吸着して保持し個別に昇降可能な吸着ノズル11aが装着されている。
Y軸ビーム9、X軸ビーム10を駆動することにより、実装ヘッド11はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド11は、それぞれ対応した部品供給部7のテープフィーダ8の部品吸着位置から部品を吸着ノズル11aによって吸着保持して取り出して、基板搬送機構5に位置決めされた基板6の実装点に移送搭載する。Y軸ビーム9、X軸ビーム10および実装ヘッド11は、電子部品を保持した実装ヘッド11を移動させることにより、部品を基板6に移送搭載する部品実装機構12を構成する。
部品供給部7と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ14が配設されている。部品供給部7から部品を取り出した実装ヘッド11が部品認識カメラ14の上方を移動する際に、部品認識カメラ14は実装ヘッド11に保持された状態の部品を撮像して認識する。実装ヘッド11にはX軸ビーム10の下面側に位置して、それぞれ実装ヘッド11と一体的に移動する基板認識カメラ13が装着されている。実装ヘッド11が移動することにより、基板認識カメラ13は基板搬送機構5に位置決めされた基板6の上方に移動し、基板6を撮像して認識する。実装ヘッド11による基板6への部品実装動作においては、部品認識カメラ14による部品の認識結果と、基板認識カメラ13による基板認識結果とを加味して搭載位置補正が行われる。
経時変化を検出するため、基台4の上面には、基板搬送機構5に位置決めされた状態の基板6を周囲から囲む配置で、4つの位置基準ポスト15が立設されている。位置基準ポスト15には、時計回りに(1)〜(4)の番号が付番されており、それぞれを個別に特定できるようになっている。すなわち実装ヘッド11とともに移動する基板認識カメラ13によって位置基準ポスト15(1)〜15(4)の位置を認識することにより、実装ヘッド11が熱変形により正規状態から変位している経時変化を検出できるようになっている。
次に図3を参照して、上述の部品実装機構12による部品実装作業を反復実行する過程において生じる経時変化および経時変化の検出方法について説明する。部品実装作業では、実装ヘッド11を部品供給部7と基板6との間で反復して移動させる実装ターンが高頻度で実行されるため、実装ヘッド11を構成するY軸ビーム9やX軸ビーム10は、摺動部からの発熱によって温度が上昇し、昇温部分が熱膨張する熱変形を生じる。
この熱変形により、稼働開始前の冷却状態では本来の直線的な形状を維持していたY軸ビーム9やX軸ビーム10は、発熱状況に応じて図3(a)に示すように、複雑な曲線形状に変形する。そしてこの変形は、稼働開始からの時間経過とともに変化し、ある時間経過後に熱変形が飽和状態となって一定形状に収束し、その後稼働停止により温度低下し徐々に熱変形が解消して初期形状に復帰する。
このような熱変形が生じている状態で部品実装作業を実行すると、Y軸ビーム9やX軸ビーム10の変形により、図3(b)に示すように、実装ヘッド11の水平方向の位置が安定しないまま、部品16が基板6に搭載される結果となる。すなわち、図3(c)に示すように、基板6における本来の実装点6a(部品16の中心点16cが目標とすべき実装位置)から中心点16cが位置ずれした状態で、部品16が基板6に搭載される。そしてこの中心点16cの位置ずれ量は、時系列的に一定ではなく部品実装機構12の熱変形状態によって異なっている。
このような部品実装機構12の熱変形状態の経時変化に起因する実装位置ずれを抑制するため、本実施の形態では、部品実装装置M1,M2,M3において以下に説明するような実装位置の経時補正を実行するようにしている。まず図4(a)は、実装ヘッド11を移動させて、基板認識カメラ13を認識対象の位置基準ポスト15の上方に位置させた状態を示している。基準位置としての位置基準ポスト15の位置は固定されており、実装ヘッド11を移動させる際には位置基準ポスト15の正規位置データで示される位置を目標として実装ヘッド11を移動させる。そして基板認識カメラ13によって位置基準ポスト15を撮像することにより、図4(b)に示す認識画像が得られる。
すなわち基板認識カメラ13の認識画面13aには、位置基準ポスト15の上面を示す画像が、実装ヘッド11の経時変化による変位状態に応じた位置ずれベクトルP(X方向成分px、Y方向成分py)だけ、認識画面13aの光学座標原点から位置ずれした状態で現れる。すなわち、実装ヘッド11が位置ずれしていない状態では、認識画面13aにおける位置基準ポスト15の画像は光学座標系の原点に一致して現れ、実装ヘッド11の位置ずれ量が大きいほど位置基準ポスト15の位置ずれ状態を示す位置ずれベクトルPは大きくなる。そしてこの位置基準ポスト15を対象とした位置ずれ検出は、図4(c)に示すように、基板6を囲んで配置された4つの位置基準ポスト15(1)〜15(4)について実行される。
これにより、図5(a)に示すように、4つの位置基準ポスト15(1)〜15(4)について、それぞれに対応する位置ずれベクトルPn(1)〜Pn(4)が求められる。ここで添え字nは、複数枚の基板6を連続して実装対象とする場合におけるN枚目の基板6に対応する計測結果であることを示している。これらの位置ずれベクトルの組み合わせは、当該部品実装装置の部品実装機構12の当該時点(N枚目の基板6の実装時点)における経時変化による熱変形状態を示す経時変化情報となっている。
この経時変化情報は、経時変化測定部37(図7参照)が、部品実装機構12を制御して基板認識カメラ13を移動させて基板認識カメラ13に位置基準ポスト15を撮像させ、さらに撮像結果を認識処理部36(図7)によって認識処理させることにより実行される。そしてこれらの経時変化情報に基づいて、実装ヘッド11の位置ずれに起因する実装位置の位置ずれを補正するための経時補正値を求める演算処理が、経時補正処理部38によって実行される。
このような目的の経時補正値の算出方法としては、所望の補正精度に応じて各種の方法を用いることができる。本実施の形態では、4つの位置ずれベクトルPn(1)〜Pn(4)の平均を算出して当該経時変化状態を代表する平均位置ずれベクトルとし、この平均位置ずれベクトルを打ち消すようなX,Y2方向の補正値を以て、経時補正値として用いている。すなわち図5(b)に示すように、部品実装機構12の経時変化による実装ヘッド11の位置ずれを打ち消すために、基板6における実装データ上の実装点6aを、平均位置ずれベクトルに相当するdxn,dynだけ補正して,補正後の実装点6a*とする。この方法では、当該部品実装装置において共通の経時補正値が基板6に適用される。
次に図6を参照して、検査装置M4によって実行される部品実装後の検査工程について説明する。検査装置M4に設けられた基板搬送機構17には、上流側の部品実装装置M1,M2、M3によって部品16が実装された基板6が搬入される。図6(a)に示すように、基板搬送機構17の上方には検査用カメラ18が、カメラ移動機構19によって水平方向に移動自在に配設されている。検査用カメラ18を検査対象の部品16の上方に移動させて撮像した画像を認識処理部44(図7)によって認識処理することにより、図6(b)に示す実装位置ずれ量Δxn,Δynが取得される。
実装位置ずれ量Δxn,Δynは、実装データにおいて部品16の中心点16cが一致すべき実装点6aと、実際に基板6に搭載された部品16の中心点16cとの位置ずれ状態を示すものである。なお、ここでは説明の便宜のため、検査対象の部品16を1つのみ図示しているが、実際の部品実装作業では単一の基板6に対し、部品実装装置M1,M2、M3によって順次実装された複数の部品16が存在し、それぞれの部品16について実装位置ずれ量Δxn,Δynが求められる。
次に図7を参照して、部品実装システム1の制御系の構成を説明する。図7において、部品実装装置M1、M2,M3は、実装制御部30、記憶部31、機構駆動部35、認識処理部36、経時変化測定部37、経時補正処理部38を備えている。実装制御部30は、記憶部31に記憶された処理プログラムやデータに基づき、以下に説明する各部を制御する。これにより当該装置における各種の作業や演算処理が実行される。
記憶部31には、実装データ32、経時変化情報33、経時補正値34が記憶されている。実装データ32は、作業対象の基板6における部品の実装座標データや部品データ、実装作業順序を示すシーケンスデータなどを含んでいる。経時変化情報33は部品実装機構12の経時変化の状態を示すデータであり、経時補正値34は経時変化による実装位置の誤差を補正するために経時補正処理部38により算出される補正値である(図5(a)、(b)参照)。機構駆動部35は、実装制御部30に制御されて、基板搬送機構5や部品実装機構12などの作業機構を制御する。これにより、基板搬送動作や部品実装動作が実行される。
認識処理部36は、基板認識カメラ13、部品認識カメラ14による撮像結果を認識処理する。これにより、位置決めされた基板6や、実装ヘッド11に保持された状態の部品16の位置認識が行われる。これとともに、基板認識カメラ13による位置基準ポスト15の撮像結果を認識処理することにより、部品実装機構12の経時変化を測定するための位置基準ポスト15の認識結果が取得される。
経時変化測定部37は、前述の認識結果に基づき、部品実装機構12の経時変化の状態を示す経時変化情報を画像認識を用いた測定により求める(図5(a)参照)。測定結果は、記憶部31に経時変化情報33として記憶される。すなわち、経時変化測定部37は、部品実装作業を反復して実行する過程において部品実装機構12の経時変化を測定して経時変化情報33を求める。経時補正処理部38は、経時変化測定部37による測定情報に基づき、図5(b)に示す補正値を算出する。算出された補正値は、記憶部31に当該時点における経時補正値34として記憶される。
検査装置M4は、検査制御部40、記憶部41、認識処理部44を備えている。検査制御部40は、記憶部41に記憶された検査用データ42に基づいて各部を制御することにより、検査対象の基板6における部品16の実装状態を検査するための作業を実行させる。検査用データ42には、検査対象の基板6において検査対象とすべき部品16の位置情報や、実装状態の正否判定に用いられる閾値データなどが含まれる。
これにより、検査用カメラ18はカメラ移動機構19(図6)によって検査対象の部品16の上方に移動して撮像する。そして撮像結果を認識処理部44によって認識処理することにより、実装状態検査が実行される。この実装状態の検査結果には、検査対象の部品16の実装状態の合否判定結果とともに、正しい実装位置からの位置ずれの程度を示す実装位置ずれ量が含まれる。
管理コンピュータ3は、全体制御部20、記憶部21、データ集計・解析部23、通信部24を備えている。全体制御部20は、部品実装システム1全体の管理のために以下の各部を制御する。記憶部21には、部品実装装置M1,M2,M3,検査装置M4から送信される計測値や検査結果を集計し解析するための補正計測値集計・解析データ22が記憶される(図8,図9参照)。データ集計・解析部23は、部品実装装置M1,M2,M3から送信される基板毎の経時変化情報33、経時補正値34および検査装置M4から送信される基板毎の検査結果43を集計することにより、補正計測値集計・解析データ22における経時変化情報22a、経時補正値22b、フィードバック補正値22c、検査結果データ22d、補正値対応データ22eを編集する。
さらにデータ集計・解析部23はフィードバック補正値算出部23aを備えており、フィードバック補正値算出部23aは、検査装置M4にて検出された実装後の位置ずれ状態を示す検査結果データ22dおよび経時変化情報22aに基づいて、実装位置精度を改善するために部品実装装置M1,M2,M3にフィードバックすべき補正値を、フィードバック補正値22cとして算出する演算処理を行う。通信部24は通信インターフェイスであり、部品実装システム1を構成する部品実装装置M1,M2,M3,検査装置M4などの他装置との間で通信ネットワーク2を介してデータや制御信号の授受を行う。
次に図8,図9、図10を参照して、補正計測値集計・解析データ22のデータ構成を説明する。補正計測値集計・解析データ22は、部品実装システム1を構成する部品実装装置M1、M2、M3毎に作成される設備固有のデータである。ここで、図8は、当該部品実装システム1にて新たな基板の種類を対象として生産を行う初回生産において適用されるデータ構成を示している。また図9は、当該部品実装システム1にて、所定時間を超えて稼働を停止した後に、同一の基板の種類を対象として生産を行う次回生産において適用されるデータ構成を示している。
図8,図9において、基板追番号50は、部品実装システム1に上流側装置から供給される基板6の順序(生産順)を示す番号である。図10は、前述構成の部品実装システム1にて複数の基板6を対象として部品実装作業を反復実行する過程における基板配置を示している。ここで基板6(1)〜6(10)における( )番号は、図8,図9における基板追番号50(1、2、・・・N)に対応している。
図10に示すように、部品実装システム1に上流側から供給される基板6は、まず部品実装装置M1にて部品実装作業の対象となり、次に部品実装装置M2、M3にて順次同様に部品実装作業が行われた後、検査装置M4に到達してここで実装状態の検査が行われる。ここでは、最初に供給された、すなわち基板追番号50が(1)の基板6(1)が検査装置M4による検査作業対象となる。
部品実装装置M1、M2、M3にはそれぞれ3つの基板位置が設定されており、基板6(1)が検査装置M4にて滞留している間は、検査装置M4の上流側に隣接する部品実装装置M3には、搬出前待機中の基板6(2)、部品実装作業実行中の基板6(3)、搬入後待機中の基板6(4)の3枚が位置している。
同様に部品実装装置M2には、搬出前待機中の基板6(5)、部品実装作業実行中の基板6(6)、搬入後待機中の基板6(7)の3枚が位置しており、最上流の部品実装装置M1には、搬出前待機中の基板6(8)、部品実装作業実行中の基板6(9)が位置し、さらに上流側装置からは部品実装装置M1に搬入される基板6(10)が準備されている。そして最初に部品実装システム1に供給された基板6(1)が検査装置M4に到達し、ここでの検査が終了して下流側へ搬出された後には、上流側装置において滞留中のそれぞれの基板6は、1つ下流側の基板位置に順次移動する。
すなわち図10に示す構成の部品実装システム1では、生産初期においては最初の基板6(1)から、設備によって規定される基板位置の数(ここでは9)だけ上流へ遡及した基板6(9)まで、検査装置M4による検査結果から求められた位置ずれ状態のフィードバックの対象とすることができない。本実施の形態では、このような生産初期における実装位置ずれの位置補正精度を向上させることを目的として、後述するように前回生産時に取得された補正計測値集計・解析データ22に基づいてフィードバック補正値22cを導出して用いるようにしている。
図8,図9に示すように、経時変化情報22aは、基板追番号50によって特定される基板6毎の情報、例えば位置基準ポスト15(1)〜位置基準ポスト15(4)を基板認識カメラ13によって撮像して求めた基準ポスト位置の相対位置ずれを示す位置ずれベクトルP(1)〜P(4)を組み合わせたセット情報(図5(a)参照)を、含む構成となっている。
そして基板追番号50毎のセット情報(基板追番号50(1)に対応したP1(1)〜P1(4)、・・・基板追番号50(N)に対応したPn(1)〜Pn(4))を集計することにより、経時変化情報22aが構成される。経時補正値22bは、上述の経時変化情報22aのセット情報毎に算出される補正値(図5(b)参照)であり、経時変化による位置ずれを補正するために用いられる。
フィードバック補正値22cは、実装位置精度を改善するために部品実装装置にフィードバックすべき補正値であり、検査装置M4による実装後検査の検査結果データ22dとして検出された位置ずれ状態(実装位置ずれ量)および経時変化情報22aに基づいて算出される。ここで前述のように、最初の基板6(1)から基板6(9)まで、すなわち生産開始後の生産初期においては、検査装置M4には未だ基板6が到達していらず検査結果が存在しない。したがってフィードバックの対象となる補正値は存在せず、フィードバック補正値22cは空欄となる。検査結果データ22dは、検査装置M4から基板追番号50毎に送信された検査結果43であり、基板6において部品16が実装される複数の実装点毎に作成される。
基板追番号50が(10)以降の基板6については、すなわち検査装置M4における最初の基板6(1)を対象とする実装後検査が終了した後には、この検査結果に基づいてフィードバック補正値22cがフィードバック補正値算出部23aによって算出され、フィードバック補正値22cとして記憶される。このとき、算出されたフィードバック補正値22cを経時変化情報22aに対応させた補正値対応データ22eが作成されて、記憶部21に記憶される。
ここでフィードバック補正値22cの技術的意義について説明する。本実施の形態においては、部品実装装置M1,M2、M3の部品実装機構12の経時変化に起因する実装位置ずれを、図4に示す経時変化情報22aに基づいて算出される経時補正値22b(図5(b))により補正するようにしている。しかしながら経時変化情報22aは、制約された数の位置基準ポスト15の位置認識結果に基づいて取得されるものであることから、熱変形により曲線形状に変形するY軸ビーム9、X軸ビーム10などの複雑な熱変形を正確に表すことができない。このため、このようにして求められた経時補正値22bを適用して実装位置補正を行っても、経時変化に起因する位置誤差は必ずしも厳密には補正されない。
フィードバック補正値22cは、上述のような経時補正値22bを用いてもなお補正されずに残留する補正残渣成分を極力減少させることを目的として採用される。本実施の形態においては、このフィードバック補正値22cとして、検査結果データ22dに示される実装位置ずれ量Δxn、Δyn、経時補正値22bに示される経時補正値dxn,dynの差を用いる。すなわちX方向についてはΔxn−dxn,Y方向についてはΔyn−dynを近似的に補正残渣成分と見なし、この補正残渣成分を加味して実装位置を補正するようにしている。
すなわち部品実装装置M1,M2,M3は、経時変化情報33に基づいて算出された経時補正値34にさらにフィードバック補正値22cを加味して実装位置を補正する。なお、フィードバック補正値22cとしては、経時補正値22b、検査結果データ22dに基づいて実装位置精度を改善するために用いられるものであれば、上述方法以外の方法で算出されるものであってもよい。
そして初回生産で求められた補正計測値集計・解析データ22において、フィードバック補正値22cの具体値が求められた破線枠51にて示すデータ範囲(ここでは基板追番号50が(10)以降のデータ)は、次回生産の生産初期において未だフィードバック補正値22cが求められていない場合において、代替値として使用可能なデータを含む範囲を示している。
すなわち、次回生産で求められる全体制御部20を示す図9において、基板追番号50が(1)〜(9)の間のデータ範囲については、上述の理由によりフィードバック補正値22cにおいて破線枠52にて示すデータ範囲には、経時補正値22b、検査結果データ22dの実データに基づいて算出されたデータが存在しない。このような場合には、図8に示す初回生産で求められた補正計測値集計・解析データ22に含まれるデータを流用して、不足するデータを補足するようにしている。
換言すれば、部品実装システム1は複数の部品実装装置M1,M2,M3を有し、生産初期には、フィードバック補正値算出部23aは、検査装置M4に部品実装装置M1,M2,M3により部品を実装された基板6が到達した後に部品実装作業の対象となる基板6の部品実装作業に加味されるフィードバック補正値22cの算出を実行し、部品実装装置M1,M2,M3は、検査装置M4に部品実装後の基板6が到達した後に部品実装作業の対象となる基板6について、部品実装装置M1,M2,M3において経時補正値22bにさらにフィードバック補正値22cを加味して実装位置を補正する。
すなわち、次回生産の場合、部品実装システム1では、検査装置M4に各部品実装装置の部品実装機構12により部品16が実装された基板6が到達する前に部品実装作業の対象となる基板6については、記憶部21に記憶された補正値対応データ22eを参照することにより当該基板6の経時変化情報22aに対応するフィードバック補正値22cを求める。基板6の経時変化情報22aに対応するフィードバック補正値22cを部品実装装置にフィードバックすべきフィードバック補正値22cとして用いるようにしている。すなわち全体制御部20において経時変化情報22aに示される経時変化情報の特定パターンが指定されれば、指定された経時変化情報22aに対応した適切なフィードバック補正値22cを、補正値対応データ22eを参照して推定することができる。
次に、図11,図12を参照して、部品実装システム1において実行される部品実装方法の処理フローについて説明する。この部品実装方法では、複数の部品実装装置M1,M2,M3が備えた部品実装機構12によって部品供給部7から取り出した部品16を、基板6に移送搭載する部品実装工程を反復実行する形態となっている。
まず図11は、部品実装システム1にて新たな基板6の種類を対象として生産を行う初回生産(図8参照)における処理を示している。ここで(ST1)に示す部品実装作業は、同一の基板6が複数の部品実装装置M1、M2,M3を順次搬送される過程において、順次実行される単位作業((ST1A)、(ST1B)、(ST1C)、(ST1D)および(ST1E))より構成される。
部品実装作業の具体内容では、まず作業対象となる部品実装装置へ基板6が搬入される(ST1A)。ここでは基板6は最初に部品実装装置M1に搬入され、次いで部品実装装置M2、M3に順次搬入される。次いで当該部品実装装置にて、図4に示す経時変化測定が経時変化測定部37によって実行される(ST1B)。すなわち、部品実装工程を反復して実行する過程において、部品実装機構12の経時変化を測定して経時変化情報22aを求める(経時変化測定工程)。そして求められた経時変化情報22aに基づき、図5(b)に示す経時補正値22b(dxn,dyn)が算出される(ST1C)。そして算出された経時補正値22bを加味して、部品実装作業が実行される(ST1D)。
このようにして1つの部品実装装置における部品実装作業を終えたならば、当該基板6について、予め規定された所定の部品実行過程が完了したか否か?を判断する(ST1E)。ここでまだ所定の部品実行過程が完了していないならば、すなわち下流側に未だ経由すべき部品実装装置があるならば、(ST1A)に戻って,以下同様の作業処理が反復して実行される。これに対し、(ST1E)にて部品実装作業の完了が確認されたならば、基板6は下流側の検査装置M4に搬入され、実装後検査が実行される(ST2)(検査工程)。
すなわち部品実装機構12により部品16を実装された基板6における部品16の実装状態を検査して合否判定を行うとともに、正しい実装位置からの位置ずれ状態を検出する(ST3)(位置ずれ状態検出)。そして検出された検査結果43は、管理コンピュータ3へ送信され(ST4)、記憶部21へ補正計測値集計・解析データ22として記憶される。
次に管理コンピュータ3のフィードバック補正値算出部23aにより、検出された位置ずれ状態および経時変化情報に基づいて、実装位置精度を改善するために部品実装工程にフィードバックすべきフィードバック補正値22cを算出する(フィードバック補正値算出工程)(ST5)。そして算出されたフィードバック補正値22cを経時変化情報22aに対応させた補正値対応データ22eを、記憶部21に記憶する(ST6)(記憶工程)。
そしてフィードバック補正値22cは、対応する部品実装装置へ送信される(ST7)。そして当該部品実装装置によって実行される部品実装工程においては、経時変化情報22aに基づいて算出された経時補正値22bにさらにフィードバック補正値22cを加味して実装位置を補正する。これにより、経時補正値22bのみによる補正では不十分であった実装位置補正の精度を改善することができる。
すなわち、図11に示す部品実装方法では、部品実装工程は複数の部品実装装置M1,M2,M3のそれぞれによって実行される形態となっている。そして生産初期には、フィードバック補正値算出工程において、(ST2)にて示す検査工程に部品実装装置により部品16が実装された基板6が到達した後に部品実装作業の対象となる基板6について、フィードバック補正値の算出を実行するようになっている。
そして部品実装工程において、検査工程に部品実装装置により部品16が実装された基板6が到達した後に部品実装作業の対象となる基板6について、経時補正値22bにさらにフィードバック補正値22cを加味して実装位置を補正する。ここでフィードバック補正値22cとして、位置ずれ状態から算出された位置ずれ量(検査結果データ22d参照)と経時補正値22bとの差を近似的に用いる。このように、経時補正値22bにフィードバック補正値22cを加味して実装位置の補正を行うことにより、経時変化による位置誤差を対象として高精度な実装位置精度を実現することができる。
次に図12を参照して、部品実装システム1にて所定時間を超えて稼働を停止した後に、同一の基板の種類を対象として生産を行う次回生産(図9参照)における処理を説明する。ここではまず、図11の(ST6)にて管理コンピュータ3の記憶部21に記憶された前回生産時の補正値対応データ22eを読み込む(ST11)。ここで前回生産時の補正値対応データ22eを読み込むのは、既存のデータを流用してフィードバック補正値22cを求めるためである。
すなわち図10に示す例では、検査工程に部品実装装置により部品16が実装された基板6が到達した後に部品実装作業の対象となる基板6についてのみ、フィードバック補正値22cを加味した補正を行うようにしているのに対し、図12に示す例では、前回生産時に記憶された補正値対応データ22eを用いることにより、検査工程に部品16が実装された基板6が到達する前の段階から、フィードバック補正値22c(図9に示す破線枠52参照)を用いた補正を行うようにしている。
次いで、作業対象となる部品実装装置へ基板6が搬入される(ST12)。ここでは基板6は最初に部品実装装置M1に搬入され、次いで部品実装装置M2、M3に順次搬入される。次いで図11の(ST1B)と同様に、当該部品実装装置にて図4に示す経時変化測定が経時変化測定部37によって実行される(ST13)。すなわち、部品実装工程を反復して実行する過程において、部品実装機構12の経時変化を測定して経時変化情報を求める(経時変化測定工程)。そして求められた経時変化情報に基づき、図5(b)に示す経時補正値(dxn,dyn)が算出される(ST14)。
次に、経時変化情報を補正値対応データ22eと参照してフィードバック補正値を求める(ST15)。すなわち検査工程に部品実装機構12により部品16が実装された基板6が到達する前に部品実装作業の対象となる基板6については、既に記憶済みの補正値対応データ22e,すなわち経時変化情報22aとフィードバック補正値22cとを対応させたデータを参照することにより、当該基板6の経時変化情報22aに対応するフィードバック補正値22cを求める。そして基板6の経時変化情報22aに対応するフィードバック補正値22cを、作業対象となっている部品実装装置にフィードバックすべきフィードバック補正値22cとして用いる。
そしてフィードバックされた部品実装装置では、当該部品実装装置に固有の経時補正値22bに,送信されたフィードバック補正値22cを加味して実装位置を補正し(ST16)、補正された実装位置を目標として部品実装作業を実行する(ST17)。これにより、最初の基板6が検査工程に未だ到達しない生産初期においても、フィードバック補正を適用することが可能となっている。
上記説明したように本実施の形態に示す部品実装においては、検査工程における実装状態の検査にて検出された位置ずれ状態および部品実装工程を反復して実行する過程において部品実装機構12の経時変化を測定して求めた経時変化情報22aに基づいて、実装位置精度を改善するために部品実装工程にフィードバックすべきフィードバック補正値22cを算出し、部品実装工程において、経時変化情報22aに基づいて算出された経時補正値22bにさらにフィードバック補正値22cを加味して実装位置を補正するようにしている。これにより、経時補正値22bのみによる位置補正では達成できない高精度な実装位置精度を実現することができる。
さらに、フィードバック補正値22cを経時変化情報22aに対応させた補正値対応データ22eを記憶させておき、検査工程に部品実装機構12により部品16が実装された基板6が到達する前に部品実装作業の対象となる基板6については、補正値対応データ22eを参照することにより当該基板6の経時変化情報22aに対応するフィードバック補正値22cを求め、基板6の経時変化情報22aに対応するフィードバック補正値22cを部品実装工程にフィードバックすべきフィードバック補正値22cとして用いるようにしている。これにより、フィードバック補正と経時変化の補正を併せて行う構成において、生産初期における実装位置精度を確保することができる。