JP6277095B2 - セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
第一には、優れた耐擦傷性を有することである。セルロースアシレートフィルムを加工する際や、液晶表示装置において偏光板用保護フィルムとして使用する際等にフィルムに傷が発生することを防ぐためである。
第二には、水分を通しにくい性質、すなわち低透湿性である。これは次の理由による。液晶表示装置に含まれるフィルム部材が低透湿性に劣るものであると、このフィルム部材を通過した水分により、液晶表示装置を構成する部材が寸法変化や変質を起こすことが懸念される。一例として、偏光子としてポリビニルアルコール系フィルムを含む偏光板を有する液晶表示装置では、ポリビニルアルコールの吸湿による変形、偏光子の劣化が発生することが懸念される。このような変形や劣化は、液晶表示装置の表示性能を低下させてしまうため、表示性能に優れる液晶表示装置を提供するためには、セルロースアシレートフィルムの透湿度が低いこと(低透湿性に優れること)が望ましい。
一方、特許文献1、2には、セルロースアシレートフィルムに添加剤を含有させることが提案されているが、かかる添加剤によりセルロースアシレートフィルムの耐擦傷性および低透湿性を改善することの記載はない。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレタン基、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、及びシリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記一般式1で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルムである。
一般式1で表される化合物は、1分子中に、−NH−および−CO−からなる群から選択される基を少なくとも1つ含む。このことが、セルロースアシレートフィルムの耐擦傷性の向上に寄与していると、本発明者らは推察している。また、芳香族ヘテロ環が含まれることも耐擦傷性の向上に寄与していると、本発明者らは考えている。
更に、一般式1で表される化合物は、下記群:−X2−(C=X4)−X3−、−NR5−(SO2)−、−CO−NR6−CO−、−O−、−S−、−COOH、−CN、−NR7R8、−OH、および−SHからなる群、から選択される基を1分子中に少なくとも1つ含む。上記群に含まれる基は、他の官能基と水素結合を形成することができる性質、いわゆる水素結合性を有し得るものである。そのような基はセルロースアシレート中に存在するエステル結合やヒドロキシル基などの局所的な部位や分子鎖と相互作用し自由体積を小さくすることできると考えられる。このことが、セルロースアシレートフィルムの表面硬度(ヌープ硬度)向上に寄与するのではないかと、本発明者らは考えている。また、上記の相互作用が、セルロースアシレートフィルムの低透湿性向上にも寄与するのではないかと、本発明者らは推察している。
ただし、以上は、本発明者らによる推察であって、本発明を何ら限定するものではない。
上記セルロースアシレートフィルムは、下記一般式1で表される化合物を含む。一般式1で表される化合物は、一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。この点は、本発明において、後述する各種成分についても、同様である。
一般式1中、Hetは、置換基を有してもよい芳香族ヘテロ環を表す。Hetで表される芳香族ヘテロ環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、上記置換基群Tに含まれるものを例示できる。
ただし、一般式1で表される化合物が、1分子中に1つのみ1,3,5−トリアジン環を有する場合には、かかる1,3,5−トリアジン環は、下記(i)、(ii)の少なくとも一方を満たすものとする。なお、一般式1で表される化合物が、1分子中に2つ以上の1,3,5−トリアジン環を有する場合には、一態様では、かかる1,3,5−トリアジン環の少なくとも1つが、下記(i)、(ii)の少なくとも一方を満たすことができる。または、一態様では、2つ以上の1,3,5−トリアジン環が、下記(i)、(ii)の少なくとも一方を満たすことができる。
(i)1,3,5−トリアジン環に−NH2が直接置換しない。
(ii)1,3,5−トリアジン環の2位、4位、6位の少なくとも1つに、少なくとも1つのアルキレン基を含む置換基が置換する。
一般式1で表される化合物であって1,3,5−トリアジン環を有する化合物としては、一般式2で表される化合物を挙げることができる。詳細は後述する。
一般式1中、X1は、単結合、または、−O−、−NR2−、−CR3R4−、−S−および−CO−からなる群から選択される基を表す。R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては、前述の置換基群Tに含まれる置換基を挙げることができ、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましくき、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、無置換の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。耐擦傷性の一層の向上の観点からは、X1は、−NR2−または−CO−を表すことが好ましく、−NH−または−CO−を表すことが好ましい。
上記のR1に含まれる環状構造は、R1で表される部分構造のいずれの位置に存在していてもよいが、末端に存在することが好ましい。
上記イミド基としては、環状イミド基が好ましい。環状イミド基としては、スクシンイミド基、フタルイミド基、ヘキサヒドロフタルイミド基が好ましい。
また、R100で表されるアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。アルキルアミノカルボニルオキシ基については、R100がメチル基であり、Rが水素原子であるメチルアミノカルボニルオキシ基がより好ましい。アルコキシカルボニル基としては、R100が炭素数1〜3のアルキル基であるものが好ましく、R100がメチル基であるメトキシカルボニル基がより好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基としては、R100が炭素数1〜3のアルキル基であるものが好ましく、R100がメチル基であるメトキシカルボニルアミノ基がより好ましい。アルキルアミノカルボニルアミノ基としては、R100が炭素数1〜3のアルキル基であるものが好ましく、R100がメチル基であるメチルアミノカルボニルアミノ基がより好ましい。
一般式1で表される化合物は、一分子中に、−NH−および−CO−からなる群から選択される基(官能基1)を少なくとも1つ含み、かつ−X2−(C=X4)−X3−、−NR5−(SO2)−、−CO−NR6−CO−、−O−、−S−、−COOH、−CN、−NR7R8、−OH、および−SHからなる群から選択される基(官能基2)を少なくとも1つ含む。この点に関する本発明者らの推察は、先に記載した通りである。
なお、官能基1は、官能基2に含まれていることもある。また、官能基2に含まれる基として官能基1を少なくとも1つ含むとともに、官能基2以外の部分に官能基1を少なくとも1つ含む化合物も、一般式1で表される化合物に包含される。なお官能基1について、一般式1で表される化合物は、−NH−および−CO−からなる群から選択される基を少なくとも1つ含み、2つ以上の組み合わせを含むこともできる。また官能基2についても、一般式1で表される化合物は、上記群から選択される基を少なくとも1つ含み、2つ以上の組み合わせを含むこともできる。
−NR9−は、好ましくは−NH−である。
−(CR10R11)m−は、すなわち、置換基を有していてもよいアルキル基によって置換されていてもよいアルキレン基である。アルキル基は、無置換アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の無置換アルキル基であることがより好ましい。好ましくはCR10R11において少なくともR10、R11の一方が水素原子であり、両方が水素原子であってもよい。
CR10R11において、炭素原子(C)、R10およびR11が連結して環構造を形成する場合、形成される環構造は飽和環、不飽和環のいずれであってもよく、飽和炭化水素環または不飽和炭化水素環であることが好ましく、炭素数1〜12の飽和炭化水素環または不飽和炭化水素環であることがより好ましく、置換基を有していてもよいシクロヘキサン環または置換基を有していてもよいベンゼン環であることが更に好ましい。ここで置換基としては炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
mは1以上の整数であり、1〜3の範囲の整数であることが好ましい。mが2以上の整数を表す場合、複数存在するR10およびR11は同一であっても異なっていてもよい。
一態様では、Het中の芳香族ヘテロ環に置換する置換基が、−NH−または−CO−によって芳香族ヘテロ環に置換することが好ましい。また、一態様では、X1が−NH−または−CO−を表すことが好ましい。即ち、一態様では、芳香族ヘテロ環に、官能基1が直結していることが好ましい。
一般式1中のnが1を表す場合、官能基2は、少なくともR1または−X1−R1−に含まれることが好ましい。また、R1または−X1−R1−に含まれるとともに、Hetにおいて芳香族ヘテロ環に置換する置換基に含まれていることも好ましい。
一方、一般式1中のnが2以上の整数を表す場合、官能基2は、少なくとも、Hetにおいて芳香族ヘテロ環に置換する置換基に含まれるか、または、R1または−X1−R1−に含まれることが好ましい。
一般式1で表される化合物は、上記の連結基Aを、1分子中に少なくとも1つ含むことが好ましく、1〜4つ含むことがより好ましい。
一般式1で表される化合物の分子量は特に限定されるものではないが、セルロースアシレートとの相溶性の観点からは、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましく、600以下であることが一層好ましく、450以下であることがより一層好ましい。セルロースアシレートフィルムに添加される化合物がセルロースアシレートとの相溶性に優れることにより、セルロースアシレートフィルムのヘイズの上昇を抑制することができる。この点は、透明性に優れるセルロースアシレートフィルムを得るうえで好ましい。一方、セルロースアシレートフィルムの透明性の観点からは、セルロースアシレートフィルムに添加した化合物の揮散等による白化を抑制することが好ましい。この点から、一般式1で表される化合物の分子量は、230以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましい。
なお上記化合物が多量体である場合、分子量とは、重量平均分子量をいうものとする。本発明における平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定される平均分子量を言うものとする。具体的な測定条件の一例としては、以下の測定条件を挙げることができる。
GPC装置:HLC−8320(東ソー製):
カラム:TSK gel SuperHZM−H、TSK gel SuperHZ4000、TSK gel SuperHZ2000併用、(東ソー製、4.6mmID(内径)×15.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
セルロースアシレートフィルムの一般式1で表される化合物の含有量は特に限定されるものではないが、セルロースアシレート100.0質量部に対して、1.0〜50.0質量部とすることが好ましく、2.0〜30.0質量部とすることがより好ましく、2.0〜20.0質量部とすることが更に好ましく、4.0〜15.0質量部とすることが特に好ましい。なお、一般式1で表される化合物は、セルロースアシレートフィルムへ、異なる構造のものを2種以上添加してもよい。2種類以上添加する場合も、含有量の好ましい範囲は、上記と同一である。
セルロースアシレートは、セルロースアシレートフィルムの製造に用いられる公知のセルロースアシレートを何ら制限なく用いることができる。セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つのヒドロキシル基がアシル化されている割合を意味する。置換度(アシル化度)は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。本発明において、セルロース体の置換度はセルロース体を重水素置換されたジメチルスルフォキシド等の溶剤に溶解して13C−NMRスペクトルを測定し、アシル基中のカルボニル炭素のピーク強度比から求めることにより算出することができる。セルロースアシレートの残存ヒドロキシル基をセルロースアシレート自身が有するアシル基とは異なる他のアシル基に置換したのち、13C−NMR測定により求めることができる。測定方法の詳細については、手塚他(Carbohydrate.Res.,273(1995)83−91)に記載がある。
セルロースアシレートのアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が好ましく、アセチル基がより好ましい。
本発明においては、置換基および置換度の一方または両方の異なる2種のセルロースアシレートを併用、混合して用いてもよいし、後述の共流延法などにより、異なるセルロースアシレートからなる複数層からなるフィルムを形成してもよい。
上記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートおよび一般式1で表される化合物に加え、他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、公知の可塑剤、有機酸、色素、ポリマー、レターデーション調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などが例示される。これらについては、特開2012−155287号公報の段落番号0062〜0097の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。これらの合計含有量はセルロースアシレートの50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
上記セルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、溶融製膜法または溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により製造することが好ましく、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により製造することがより好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号および同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。また、セルロースアシレートフィルムは、延伸処理が施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があり、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することができる。
セルロースアシレートフィルムの形成においては、共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。共流延ギーサを用い、流延用支持体の上に表層用ドープとコア層用ドープを3層同時に押出して流延することができる。
上述の化合物をこれらの層のいずれか一層以上またはすべての層に含有させることにより、高い耐擦傷性および低透湿性を示すセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はセルロースアシレートフィルム搬送方向(MD(Machine Direction)方向)と搬送方向に直交する方向(TD(Transverse Direction)方向)のいずれでも好ましいが、セルロースアシレートフィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)であることが、後に続くセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
上述の一般式1で表される化合物を含有したセルロースアシレートフィルムに延伸処理を施すことで、フィルムの耐擦傷性をさらに高めることができる。
(ヌープ硬度)
上記セルロースアシレートフィルムは、一般式1で表される化合物を含むことにより、優れた耐擦傷性を有することができる。耐擦傷性の指標の1つとしては、表面硬度を挙げることができ、後述の実施例ではヌープ硬度を用いている。なお本発明におけるヌープ硬度とは、JIS Z 2251の方法に準じて、以下の方法により求められる値とする。なお、JIS Z 2251は、ISO4545を基に作成された日本工業規格である。
フィッシャーインスツルメンツ(株)社製フィッシャースコープH100Vp型硬度計を用い、JIS Z 2251の方法に準じて圧子の短軸の向きをセルロースアシレートフィルム製膜時の搬送方向(長手方向)に対して平行に配置したヌープ圧子により、ガラス基板に固定したサンプル表面を負荷時間5sec、クリープ時間5sec、除荷時間10sec、最大荷重50mNの条件で測定する。押し込み深さから求められる圧子とサンプルとの接触面積と最大荷重の関係より硬度を算出し、この5点の平均値を求める。以上の操作を、同じ条件で作製した10枚のポリマーフィルムに対して行い、得られた値の算術平均をヌープ硬度とする。
特記しない限り、本発明におけるヌープ硬度とは、上記の方法により求められたヌープ硬度をいうものとする。
上記セルロースアシレートフィルムは、少なくとも一方の表面、好ましくは両方の表面において、210N/mm2以上のヌープ硬度を示すことが好ましく、220N/mm2以上のヌープ硬度を示すことがより好ましい。ヌープ硬度は、例えば315N/mm2以下程度、または300N/mm2以下程度であってもよいが、高いほど耐擦傷性向上の観点から好ましいため、上限は特に限定されるものではない。
上記セルロースアシレートフィルムは、一般式1で表される化合物を含むことにより、優れた低透湿性を示すこともできる。セルロースアシレートフィルムの透湿性の指標としては、透湿度を用いることができる。上記セルロースアシレートフィルムは、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1m2かつ膜厚60μmの値に換算した値として求められる透湿度が、1480g/m2・day以下であることが好ましく、1470g/m2・day以下であることがより好ましく、1460g/m2・day以下であることが更に好ましい。また、透湿度は、例えば1200g/m2・day以上であるが、低いほど好ましいため下限は特に限定されるものではない。
含水率:
セルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は上記温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
セルロースアシレートフィルムの25℃相対湿度80%における含水率は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下が更に好ましく、3質量%未満が更に好ましい。セルロースアシレートフィルムの含水率を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿状態に起因する液晶表示装置の表示性能低下を起こしにくくすることができる。含水率の下限値は、例えば0.1質量%以上であるが、特に限定されない。
セルロースアシレートフィルムは、下記方法により測定されるヘイズが1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下とすることにより、セルロースアシレートフィルムの透明性がより高くなり、偏光板および液晶表示装置の構成部材として好ましい。ヘイズの下限値は、例えば0.001%以上であるが、特に限定されない。
ヘイズは、セルロースアシレートフィルム40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K7136に従って測定する。
セルロースアシレートフィルムの膜厚は、用途に応じ適宜定めることができるが、例えば、5〜100μmである。5μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、100μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすくなる。セルロースアシレートフィルムの膜厚は、8〜80μmがより好ましく、10〜70μmが更に好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、コア層の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルムが、3層構造の場合、スキン層Aおよびスキン層Bの膜厚は、ともに0.5〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、0.5〜3μmが更に好ましい。なおコア層とは、3層構造で中心部に位置する層のことをいい、スキン層A、Bとは3、層構造で外側に位置する層のことをいう。
セルロースアシレートフィルムを製造する場合は、その幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1300〜2500mmであることが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムはアルカリ鹸化処理することによりポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を付与し、偏光板保護フィルムとして用いることができる。
鹸化の方法としては、例えば、特開2007−86748号公報の段落0211と段落0212に記載される方法を用いることができる。
(偏光板の構成)
本発明の偏光板は、上述のセルロースアシレートフィルムと偏光子とを有する。
一態様では、偏光板は、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルムとを含み、上記セルロースアシレートフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有することができる。
また、液晶表示装置は、通常、視認側偏光板とバックライト側偏光板との間に、液晶セルが配置された構成を有する。視認側偏光板およびバックライト側偏光板において、偏光板と液晶セルとの間に位置する偏光板保護フィルムを、インナー側保護フィルム、インナー側とは反対側に位置する保護フィルムをアウター側保護フィルムと呼ぶと、上述のセルロースアシレートフィルムは、視認側偏光板のインナー側、アウター側、バックライト側偏光板のインナー側、アウター側のいずれの保護フィルムとしても用いることができる。
ここで、実質的に平行、直交または45°であるとは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが5°以内であることをいい、1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。ずれが1°以内であれば、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下しにくく、光抜けが生じにくく好ましい。
上記偏光板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板として用いることもできる。これらの詳細は、特開2012−082235号公報の段落0229〜0242、段落0249〜0250、特開2012−215812公報の段落0086〜0103の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
一例としてハードコート層について以下に説明する。
セルロースアシレートフィルム上には、所望によりハードコート層を設けることもできる。セルロースアシレートフィルムに一般式1で表される化合物を含有させることにより、ハードコート層等の隣接する層との密着性を高めることもできる。例えば、塗布組成物をセルロースアシレートフィルム上に塗布し、硬化させることによって、セルロースアシレートフィルム上にハードコート層を形成することができる。ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層に付与することもできる。ハードコート層の厚みは0.1〜6μmの範囲であることが好ましく、3〜6μmの範囲であることが更に好ましい。このような範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む偏光板を得ることができる。
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも1枚含む。液晶表示装置の詳細は、特開2012−082235号公報の段落0251〜0260の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。本発明の偏光板は、視認側偏光板、バックライト側偏光板のいずれの偏光板としても用いることができる。
−セルロースアシレートフィルムの製膜−
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
セルロースアシレート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート 100.0質量部
アセチル置換度2.87、重合度370
下記表3に記載の化合物 表3に記載
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(1)セルロースアシレートフィルムのヌープ硬度の測定
JIS Z 2251の方法に準じてフィッシャーインスツルメンツ(株)社製“フィッシャースコープH100Vp型硬度計”を用い、圧子の短軸の向きをセルロースアシレートフィルム製膜時の搬送方向(長手方向)に対して平行に配置したヌープ圧子により、ガラス基板に固定したサンプル表面を負荷時間10sec、クリープ時間5sec、除荷時間10sec、最大荷重50mNの条件で測定した。押し込み深さから求められる圧子とサンプルとの接触面積と最大荷重の関係より硬度を算出し、この5点の平均値を求めた。以上の操作を、同じ条件で作製した10枚のセルロースアシレートフィルムに対して行い、求められた値の算術平均をヌープ硬度とした。
さらに、同じ押し込み位置において、ヌープ圧子を10°ずつ回転させて測定を行った。こうして合計18方位等角度回転させて測定して全方位のヌープ硬度の測定を行い、最小値を求めたところ、上記のヌープ圧子の短軸の向きをセルロースアシレートフィルム製膜時の搬送方向(長手方向)に対して平行に配置して測定した値と一致した。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1m2かつ膜厚60μmあたりの24時間に通過する水蒸気の質量に換算した値として求めた。透湿度が1480g/m2・day以下であれば、例えば偏光板保護フィルムとして用いた場合に、水分による偏光子の変形や劣化を効果的に防ぐことができる。
(ハードコート層付き光学フィルムの作製)
上記で作製した各セルロースアセテートフィルムの表面に下記の硬化組成のハードコート層溶液を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、厚み6μmのハードコート層を形成したハードコート層付き光学フィルムを作製した。
ハードコート層溶液の硬化組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モノマー ペンタエリスリトールトリアクリレート/
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(混合質量比3/2)
53.5質量部
UV開始剤 Irgacure(登録商標)907
(BASFジャパン(株)社製) 1.5質量部
酢酸エチル 45.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記で作製した各ハードコート層付き光学フィルムについて、JIS K 5600に準処した碁盤目試験を行った。具体的には、硬化済みハードコート層付き光学フィルムにキセノン(Xe)を48時間照射した。Xeの照射後のハードコート層に1mm間隔で縦横に11本の切れ込みを入れて1mm角の碁盤目を100個作った。この上にセロハンテープおよびマイラーテープを貼り付け、素早く剥がし剥がれた箇所を目視観察し、下記評価基準により密着性を評価した。なお、Xeの照射はスガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いて行った。評価結果が「C」以上のセルロースアシレートフィルムは、実用上十分なハードコート層との密着性を有すると言える。
密着性の評価基準
A:剥がれ箇所0〜35マス
B:剥がれ箇所36〜55マス
C:剥がれ箇所56〜80マス
D:剥がれ箇所81マス以上
表3に示す結果から、実施例のセルロースアシレートフィルムは、耐擦傷性(ヌープ硬度)、低透湿性(透湿度)とも比較例のセルロースアシレートフィルムより優れること、更にはハードコート層との密着性も良好であることが確認できる。
(1)偏光板保護フィルムの鹸化処理
実施例で得られた各セルロースアシレートフィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムについて表面の鹸化処理を行った。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で作製した各セルロースアシレートフィルムを貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に鹸化処理後の市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と得られたセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行するように配置した。また、偏光子の透過軸と市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸については、直交するように配置した。
このようにして各偏光板を作製した。
また、こうして作製した偏光板を組み込むことにより液晶表示装置を作製することができる。
Claims (4)
- 下記一般式2で表され、かつ分子量が2000以下の化合物を含有するセルロースアシレートフィルム;
- 前記化合物の含有量は、セルロースアシレート100.0質量部に対して、1〜50.0質量部の範囲である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルムと偏光子とを有する偏光板。
- 請求項3に記載の偏光板を有する液晶表示装置。
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