以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<実施形態>
図1は、この発明の一実施形態による信号機システム1の概要を示す概念図である。図1に示すように、信号機システム1は、複数の信号機10を含んでいる。各信号機10は、交通整理を担う交通信号機であり、道路Wに沿って設置されている。各信号機10は、通信装置(例えば無線通信装置)を有している。各信号機10は、その通信装置を介して他の信号機10と通信を行う。本実施形態による信号機システム1では、その通信装置を介した通信の内容に従って、各信号機10間で各信号機10を動作させるための電力の融通が行われる。
図2は、本実施形態による信号機システム1の構成例を示す模式図である。図2には、縦方向の道路W1およびW2と横方向の道路W3およびW4が表示されている。道路W1と道路W3とが交差する位置には交差点Aが、道路W2と道路W3とが交差する位置には交差点Bが、道路W1と道路W4とが交差する位置には交差点Cが、道路W2と道路W4とが交差する位置には交差点Dがある。各交差点A〜Dには、本実施形態による信号機10が1個ずつ設置されている。この例では、交差点Aに設置されている信号機を信号機10Aと呼び、交差点Bに設置されている信号機を信号機10Bと呼び、交差点Cに設置されている信号機を信号機10Cと呼び、交差点Dに設置されている信号機を信号機10Dと呼ぶ。なお、各信号機を区別しない場合、信号機10と表示する。また、図2の例では、説明の便宜のため4個の信号機10A〜10Dを表示しているが、信号機システム1を構成する信号機10の数は、これに限らない。例えば、信号機システム1は、数百個程度の信号機10から構成される。
図3は、本実施形態による信号機システム1の信号機10が接続されている送配電網の例を示す図である。図3に示す電力線P1〜P3は、送配電網(具体的には商用電源の送配電網)を構成する電力線の一部である。電力線P1〜P3は、ノードPNにおいて互いに接続されている。また、電力線P1が送配電網における上流側であり、電力線P2およびP3が送配電網における下流側であるとする。電力線P2には、信号機10Aおよび信号機10Bが接続されている。電力線P3には、信号機10Cおよび信号機10Dが接続されている。
図4は、本実施形態による信号機システム1の信号機10の構成を示すブロック図である。図4に示すように、信号機10は、4個の表示装置11、コントローラ12、通信装置13、発電装置14、蓄電部15および給電部16を有している。
表示装置11は、交通整理のための青色、黄色および赤色の表示灯を含んでいる。表示装置11は、コントローラ12から供給される電力を使用して各表示灯の点灯、消灯、点滅などの動作を行う。信号機10が4個の表示装置11を有しているのは、図2に示すように、1つの4差路(図2では交差点A〜D)に本実施形態の信号機10(図2では10A〜10D)を1つ設置しているからである。例えば、信号機10Aの4つの表示装置11のうちの1つ目は、交差点Aにおける道路W1の上方向へ向かう車の交通整理を行うように設置され、同2つ目は、交差点Aにおける道路W1の下方向へ向かう車の交通整理を行うように設置され、同3つ目は、交差点Aにおける道路W3の右方向へ向かう車の交通整理を行うように設置され、同4つ目は、交差点Aにおける道路W3の左方向へ向かう車の交通整理を行うように設置される、という具合である。
給電部16は、例えば、商用電源の送配電網に接続された電力ケーブルである。給電部16の終端は、コントローラ12に接続されている。
発電装置14は、電力を生成する装置である。発電装置14は、例えば、太陽光発電装置などの自然エネルギから電力を生成する装置であることが好ましい。また、発電装置14は、ディーゼル発電装置などであっても良い。発電装置14は、生成した電力をコントローラ12に供給する。
蓄電部15は、例えば、2次電池やコンデンサなどの電力を蓄える装置である。蓄電部15は、コントローラ12から供給される電力を蓄える。より正確には、蓄電部15は、給電部16からコントローラ12を介して供給される電力および発電装置14からコントローラ12を介して供給される電力を蓄える。また、蓄電部15は、蓄えた電力をコントローラ12へ放電する。
通信装置13は、他の信号機10の通信装置13との間で通信を行う装置である。通信装置13は、例えば、無線通信装置である。通信装置13は、他の信号機10の通信装置13との間に無線メッシュネットワークを形成している。信号機10には、信号機10毎(より正確には通信装置13毎)に通信アドレスが与えられている。その通信アドレスは、例えば、信号機10のMAC(Media Access Control)アドレス(より正確には通信装置13のMACアドレス)である。通信装置13は、他の信号機10から当該他の信号機10の電力事情に関する情報を受け取ると、その受け取った情報をコントローラ12に引き渡す。また、通信装置13は、コントローラ12の制御の下、自己の電力事情に関する情報を他の信号機10宛に送信する。
図5は、通信装置13が行う通信におけるフレームの構造を示す図である。図5に示すように、フレームは、ヘッダとペイロードとから構成される。ヘッダには、フレームの送信先となる信号機10のアドレス(具体的には送信先となる信号機10のMACアドレス)と、フレームの送信元となる信号機10のアドレス(具体的には送信元となる信号機10のMACアドレス)とが格納される。ペイロードには、電力事情の内容を示すデータが格納される。電力事情の内容を示すデータの一例としては、送信元の蓄電部15の蓄電残量を示す情報や給電要求を示す情報が挙げられる。
図4に示すコントローラ12は、例えば、パワーコンディショナである。コントローラ12は、給電部16、発電装置14または蓄電部15から供給される電力を表示装置11に供給する装置である。本実施形態のコントローラ12は、4個の表示装置11の各々に電力を供給する。また、コントローラ12は、通信装置13を介して送受信する電力事情に関する情報に基づいて他の信号機10との間で電力を融通する制御を行う。コントローラ12については、後に詳述する。
図6は、信号機10の外観の1例を示す図である。図6では、信号機10の有する4つの表示装置11のうちの1の表示装置11が図示されている。地面に固定された円柱状の支柱18の上端には、発電装置(図6では太陽光発電装置)14が固定されている。支柱18近傍の地面上には、蓄電部15が設置されている。支柱18の長手方向における中央と上端との間には、棒状の腕金19が固定されている。腕金19の側面には通信装置13が固定されている。腕金19の先には、表示装置11が固定されている。支柱18の長手方向における中央近傍の側面には、コントローラ12が固定されている。コントローラ12の下方には、支柱18に沿って給電部16が固定されている。コントローラ12と表示装置11との間には、コントローラ12から表示装置11へ電力を供給するための線が支柱18および腕金19に沿って設けられている(図示略)。図6に示す支柱18(コントローラ12等が固定されている支柱18)は、交差点における1の位置に設置される。その交差点における他の位置には、表示装置11のみが固定された支柱18(すなわち、コントローラ12等が固定されていない支柱18)が設置される。また、コントローラ12と同一交差点内の他の表示装置11との間にも、コントローラ12から電力を供給するための線が設けられる。
次に、コントローラ12について詳述する。図7は、コントローラ12の構成を示すブロック図である。図7では、各構成間の関係を把握し易くするために単線図で示している。図7に示すように、コントローラ12は、制御部21、スイッチ22、電圧検出部23、電流検出部24、インバータ25およびコンバータ26を有している。
コンバータ26の入力端子は、電流検出部24を介して給電部16に接続されている。コンバータ26の出力端子は、スイッチ22の一端に接続されている。スイッチ22の他端は、ノードNに接続されている。コンバータ26は、給電部16から供給される交流電力を直流電力に変換してスイッチ22を介してノードNへ出力する装置である。スイッチ22は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子である。スイッチ22は、制御部21の制御(例えば、制御部21からのゲート信号)に従ってオン/オフする。電流検出部24は、給電部16を介してコントローラ16に供給される電流の有無(すなわち給電部16を介した受電の有無)を検出する装置である。電流検出部24は、検出結果を制御部21に引き渡す。
ノードNには、スイッチ22の他端の他、発電装置14、蓄電部15およびインバータ25の入力端子が接続されている。そして、インバータ25の出力端子には、表示装置11が接続されている。インバータ25は、ノードNから供給される直流電力を交流電力に変換して表示装置11に出力する装置である。インバータ25は、IGBTなどのスイッチング素子を含んでいる。インバータ25は、制御部21から当該スイッチング素子をオン/オフするゲート信号が与えられることにより動作する。
電圧検出部23は、蓄電部15の蓄電電圧を検出する装置である。電圧検出部23の検出端子は、蓄電部15の両極(例えば、2次電池の両極)間に取り付けられる。電圧検出部23は、検出結果を示すデータ(すなわち、蓄電部15の蓄電電圧を示すデータ)を制御部21に引き渡す。
制御部21は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの半導体集積回路であり、コントローラ12の各部を制御する回路である。制御部21は、通信装置13を介して取得した電力事情を示す情報、電流検出器24の検出結果および電圧検出器23の検出結果に基づいてスイッチ22のオン/オフを切り替える制御を行う。制御部21の行う制御については、動作の説明において詳述する。
以上が、信号機システム1および信号機10の構成である。
次に、信号機システム1および信号機10の動作を説明する。
まず、信号機システム1に含まれる4つの信号機10のうちの1つに着目して信号機10の動作を説明する。図8は、信号機10の動作の流れを示すフローチャートである。信号機10のコントローラ12のスイッチ22は、初期状態ではオンしている。制御部21は、コントローラ12の電源が投入されたことを契機として(SA100)、後続の制御を行う。まず、制御部21は、当該信号機10を他の信号機10に認識させる(SA110)。より詳細には、制御部21は、自己のMACアドレスを送信元アドレスとするフレームを通信装置13を介してブロードキャストする。周囲の信号機10の制御部21は、ブロードキャストされたMACアドレスを取得すると、そのMACアドレスを記憶する。そして、周囲の信号機10の制御部21は、ブロードキャストされたMACアドレスを送信先アドレスとし、自己のMACアドレスを送信元アドレスとするフレームを通信装置13を介して送信する。周囲の信号機10から送信されたフレームを受信した信号機10の制御部21は、そのフレームにおける送信元アドレスを示すMACアドレスを記憶する。このようにして、各制御部21は、周囲の信号機10を認識する。
次に、制御部21は、外部から(すなわち、商用電源から)電力が供給されているか否かを判断する(SA120)。より詳細に説明すると、制御部21は、電流検出器24が電流を検出しているときに外部から電力が供給されていると判断し、電流検出器24が電流を検出しなかったときに外部から電力が供給されていないと判断する。
外部から電力が供給されている場合(SA120:Yes)、制御部21は、ステップSA120を繰り返す。外部から電力が供給されている状態では、コントローラ12は、給電部16を介して供給される外部からの電力を表示装置11に出力する。より具体的に説明すると、コントローラ12は、給電部16からの交流電力をコンバータ26で直流電力に変換し、変換した直流電力をインバータ25で交流電力に再変換し、再変換した交流電力を表示装置11に出力する。また、コントローラ12は、コンバータ26で直流電力に変換した電力をノードNを介して蓄電部15にも出力して、蓄電部15に蓄電させる。また、コントローラ12は、発電装置14が生成した電力をノードNを介して蓄電部15に出力して蓄電部15に蓄電させる。
外部から電力が供給されていない場合(SA120:No)、制御部21は、スイッチ22をオフにする信号をスイッチ22に送る(SA130)。スイッチ22をオフにした後の状態では、コントローラ12は、発電装置14が生成した電力を蓄電部15に出力して蓄電部15を蓄電させつつ発電装置14が生成した電力を表示装置11に出力する。また、コントローラ12は、発電装置14の生成電力量よりも信号機10の消費電力量が多い場合(例えば、日照が十分でなく太陽光発電装置の生成電力量が信号機10の消費電力量よりも少ない場合)、蓄電部15に蓄えた電力を表示装置11に出力する。
スイッチ22をオフにした後、制御部21は、外部からの電力の供給が復旧したか否かを判断する(SA140)。より詳細に説明すると、制御部21は、外部からの電力の供給が復旧した旨を示す情報(例えば、送配電網内の電力線の補修完了を示す情報など)を通信装置13を介して取得したときに外部からの電力の供給が復旧したと判断する。外部からの電力の供給が復旧した場合(SA140:Yes)、制御部21は、スイッチ22をオンにする信号をスイッチ22に送る(SA150)。その後、制御部21は、ステップSA120以降の処理を実行する。
外部からの電力の供給が復旧していない場合(SA140:No)、制御部21は、蓄電部15の蓄電残量が十分であるか否かを判断する(SA160)。具体的には、制御部21は、電圧検出器23の検出結果が所定の下限閾値電圧以上である場合を蓄電部15の蓄電残量が十分であると判断する。また、蓄電残量が十分であるか否かの判断は、蓄電残量の絶対量で行っても良いし、蓄電部15の容量に対する蓄電されている割合により行っても良い。例えば、制御部11は、蓄電部15の蓄電残量が蓄電部15の容量の50%を下回ったときに蓄電残量が十分でないと判断する、という具合である。
蓄電残量が十分でない場合(SA160:No)、制御部21は、他の信号機10に対して本信号機10へ給電するよう要求する(SA170)。この場合(SA160:No)、信号機10は、給電される側となる。具体的には、制御部21は、本信号機10の周囲の各信号機10に対して給電要求を示す情報をペイロードに書き込んだフレームを通信装置13を介して送信する。その後、制御部21は、周囲の信号機10から当該周囲の信号機10における蓄電残量を示す情報を通信装置13を介して取得すると、取得した蓄電残量を示す情報から給電元となる信号機10を決定する(SA180)。具体的には、制御部10は、取得した複数の蓄電残量を示す情報を比較し、最も蓄電残量が多い信号機10を給電元となる信号機10に決定する。なお、給電元となる信号機10の決定は、最も蓄電残量の多い信号機を給電元となる信号機10にするものに限られず、種々の条件により行っても良い。そして、制御部21は、給電元となる信号機10に決定された旨を示す情報または給電元となる信号機10に決定されなかった旨を示す情報をペイロードに書き込んだフレームを、蓄電残量を示す情報の送信元に送信する。
給電元となる信号機10に決定されたか否かを示す情報に対する了解通知を取得すると、制御部21は、スイッチ22をオンにする信号をスイッチ22に送る(SA190)。スイッチ22をオンすると、本信号機10のコントローラ12には、給電元に決定した信号機10から給電部16および商用電源の送配電網を介して電力が供給される。
次に、制御部21は、給電元の信号機10からの給電により、蓄電部15に電力が十分に蓄えられたか否かを判断する(SA200)。具体的には、制御部21は、電圧検出器23の検出結果が所定の上限閾値電圧以上となった場合に十分に蓄電されたと判断する。また、十分に蓄電されたか否かの判断は、ステップSA160と同様に、蓄電残量の絶対量で行っても良いし、蓄電部15の容量に対する蓄電されている割合により行っても良い。例えば、制御部21は、蓄電部15の蓄電残量が蓄電部15の容量の90%以上になったときに十分に蓄電されたと判断する、という具合である。なお、制御部21は、蓄電部15が完全に蓄電されたとき(フル充電されたとき)に十分に蓄電されたと判断しても良い。十分に蓄電されていない場合(SA200:No)、制御部21は、ステップSA200を繰り返す。十分に蓄電された場合(SA200:Yes)、制御部21は、給電の終了を給電元の信号機10に通信装置13を介して通知する(SA210)。その後、制御部21は、ステップSA130に戻ってスイッチ22をオフにする信号をスイッチ22に送る。
一方、ステップSA160の判定結果がYesであった場合(蓄電残量が十分である場合)、制御部21は、他の信号機10から給電要求を示す情報を取得したか否かを判断する(SA220)。他の信号機10から給電要求を示す情報を取得しなかった場合(SA220:No)、制御部21は、ステップSA140に戻る。他の信号機10から給電要求を示す情報を取得した場合(SA220:Yes)、制御部21は、蓄電残量を示す情報をペイロードに書き込んだフレームを給電要求を示す情報の送信元の信号機10に通信装置13を介して送信する(SA230)。その後、制御部21は、給電要求元の信号機10へ給電することになったか否か(すなわち給電元となる信号機10に決定されたか否か)を判断する(SA240)。具体的には、制御部10は、給電元に決定された旨を示す情報を取得した場合に給電することになったと判断する。給電元に決定されなかった旨を示す情報を取得した場合(SA240:No)、制御部21は、ステップSA140以降の処理を実行する。
給電元に決定された旨を示す情報を取得した場合(SA240:Yes)、制御部21は、スイッチ22をオンにする信号をスイッチ22に送る(SA250)。この場合(SA240:Yes)、信号機10は、給電する側となる。スイッチ22をオンすると、本信号機10のコントローラ12は、給電要求元の信号機10に給電部16および商用電源の送配電網を介して電力を供給する。電力の供給についてより詳細に説明する。給電元の信号機10の蓄電部15の電圧は、十分に蓄電されているため、十分に蓄電されていない給電要求元の信号機10の蓄電部15の電圧よりも高い。給電元の信号機10のスイッチ22と給電要求元の信号機10のスイッチ22とを共にオンすると、給電元の信号機10と給電要求元の信号機10との間で給電部16および送配電網を介して電位勾配が生じる。これにより、給電元の蓄電部15から給電要求元の蓄電部15に電流が流れる。その結果、給電要求元の信号機10は、給電元の信号機10によって給電される。
次に、制御部21は、通信装置13を介して給電要求元の信号機10から給電の終了を通知されたか否かを判断する(SA260)。制御部21は、給電の終了の通知を受け取るまでステップ260を繰り返す(SA260:No)。給電の終了の通知を受け取った場合(SA260:Yes)、制御部21は、SA130に戻りスイッチ22をオフにする信号をスイッチ22に送る。スイッチ22がオフになると、給電要求元への給電が終了する。
以上が、信号機10の動作である。
次に、図3に示す信号機10A〜10Dを例に、信号機10間の動作を詳述する。なお、以後、各信号機10A〜10Dの各要素を区別するときは、それらの符号の末尾にA〜Dを付して区別する。例えば、信号機10Aの制御部21を制御部21Aと表示するといった具合である。
図9は、スイッチ22A〜22Dの状態および給電経路を示す概念図である。図9では、給電経路を矢印で示している。図9(A)は、制御部21A〜21Dの各々が図8のフローチャートに示すステップSA120の処理を繰り返している場合を示している。この場合、スイッチ22A〜22Dは、それぞれオンしている。このため、すべての表示装置11A〜11Dは、スイッチ22A〜22Dを介して電力線P1〜P3から供給される電力を使用して動作している。
今、電力線P1が災害などにより断線したとする。電力線P1が断線すると、電力線P1の上流から電力線P1の下流である電力線P2およびP3に電力が供給されず、各信号機10A〜10Dへの給電が遮断される。このため、すべての制御部21A〜21Dは、外部からの給電がないと判断し(SA120:No)、スイッチ22A〜22Dをオフする(SA130)。図9(B)は、このときのスイッチ22A〜22Dの状態を示している。図9(B)に示すように、各信号機10A〜10Dへの給電が遮断されると、各表示装置11A〜11Dには、自信号機10A〜10Dの発電装置14A〜14Dの生成する電力および自信号機10A〜10Dの蓄電部15A〜15Dに蓄えられている電力が供給される。なお、図9では、発電装置14A〜14Dの表示を省略している。
図10は、信号機10A〜10D間の通信の内容を示すシーケンスチャートである。図3の電力線P1が断線した状態で、例えば、図10に示すように、蓄電部15Aの蓄電残量が蓄電容量の50%(下限閾値)よりも少なくなったとする。この場合、制御部21Aは、蓄電残量が十分ではないと判断する(SA160:No)。そして、制御部21Aは、信号機10Aの周囲の信号機である信号機10B、10Cおよび10Dに対して給電要求を示す情報(M170)を送信する(SA170)。
給電要求を示す情報(M170)を信号機10Bが受信する時点では、蓄電部15Bの蓄電残量は蓄電容量の70%であったとする。制御部21Bは、蓄電部15Bの蓄電残量が下限閾値(蓄電容量の50%)よりも多いため蓄電量は十分であると判断する(SA160:Yes)。この場合において、制御部21Bは、信号機10Aからの給電要求を示す情報(M170)を通信装置13Bを介して取得すると、他の信号機10から給電要求があったと判断する(SA220:Yes)。そして、制御部21Bは、蓄電部15Bの現在の蓄電残量が蓄電容量の70%である旨を示す情報(M232)を通信装置13Bを介して信号機10Aに送信する(SA230)。
同様に、制御部21Cは、信号機10Aからの給電要求を示す情報を取得すると(SA220:Yes)、蓄電部15Cの現在の蓄電残量が蓄電容量の80%である旨を示す情報(M234)を通信装置13Cを介して信号機10Aに送信する(SA230)。また、制御部21Dは、信号機10Aからの給電要求を示す情報を取得すると(SA220:Yes)、蓄電部15Dの現在の蓄電残量が蓄電容量の100%である旨を示す情報(M236)を通信装置13Dを介して信号機10Aに送信する(SA230)。
制御部21Aは、信号機10Bから信号機10Bにおける蓄電残量(70%)を示す情報(M232)を取得し、信号機10Cから信号機10Cにおける蓄電残量(80%)を示す情報(M234)を取得し、信号機10Dから信号機10Dにおける蓄電残量(100%)を示す情報(M236)を取得する。制御部21Aは、取得した信号機10B〜10Dにおける蓄電残量を示す情報(M232、M234およびM236)を比較し、最も蓄電残量が多い信号機10(この例では信号機10D)を給電元となる信号機10に決定する(SA180)。なお、最も蓄電残量が多い信号機10が複数あった場合(例えば、蓄電残量が100%の信号機10が2以上あった場合など)、制御部21Aは、その最も蓄電残量が多い信号機10の中から、信号機10Aに最も近い位置に設置されている信号機10を給電元となる信号機10に決定すれば良い。
次いで、制御部21Aは、信号機10Bおよび10Cの各々に対し給電元に決定されなかった旨を示す情報(M182、M184)を送信する。一方、制御部21Aは、給電元に決定された旨を示す情報(M186)を信号機10Dに送信する。
制御部21Bは、給電元に決定されなかった旨を示す情報(M182)を受け取ると、給電元に決定されなかったと判断し(SA240:No)、了解を示す情報(M242)を信号機10Aに送信する。同様に、制御部21Cは、給電元に決定されなかった旨を示す情報(M184)を受け取ると、給電元に決定されなかったと判断し(SA240:No)、了解を示す情報(M244)を信号機10Aに送信する。そして、信号機10Bおよび信号機10Cは、信号機10Aへの給電動作を行わず、外部からの電力の供給が復旧するのを待つ(SA140)。一方、制御部21Dは、給電元に決定された旨を示す情報(M186)を受け取ると、給電元に決定されたと判断し(SA240:Yes)、了解を示す情報(M246)を信号機10Aに送信する。そして、制御部21Dは、スイッチ22Dをオンにさせる(SA250)。
制御部21Aは、信号機10B〜10Dから了解を示す情報(M242、M244およびM246)を受け取ると、スイッチ22Aをオンにさせる(SA190)。図9(C)は、このときのスイッチ22A〜22Dの状態を示している。図9(C)に示すように、給電要求元の信号機10Aのスイッチ22Aと給電元に決定された信号機10Dのスイッチ22Dのみがオンとなっている。スイッチ22Aとスイッチ22Dの両方がオンになると、蓄電部15Dは、スイッチ22D、給電部16D、電力線P3、電力線P2、給電部16Aおよびスイッチ22Aを介して蓄電部15Aに接続されることとなる。このため、蓄電部15Dに蓄えられている電力が電力線P3およびP2を介して信号機10Aに供給される。そして、蓄電部15Dから信号機10Aに供給された電力は、蓄電部15Aに蓄えられるとともに、表示装置11Aに供給される。
信号機10Dから信号機10Aへの給電時、スイッチ22Bおよび22Cはオフしているため、蓄電部15Dに蓄えられている電力が信号機10Bおよび10Cに供給されることはない。また、蓄電部22Bおよび22Cに蓄えられている電力が信号機10Aに供給されることはない。従って、本信号機システム1では、給電要求元の信号機10と給電元に決定された信号機10との間でのみ電力の供給が行われる。
蓄電部15Aに十分に蓄電されると(SA200:Yes)、制御部21Aは、信号機10Dに給電の終了を示す情報(M210)を送信する(SA210)。制御部21Dは、給電の終了を示す情報(M210)を取得すると(SA260:Yes)、了解を示す情報(M262)を信号機10Aに送信し、スイッチ22Dをオフにさせる(SA130)。制御部21Aは、信号機10Dから了解を示す情報を取得すると、スイッチ22Aをオフにさせる(SA130)。これにより、信号機10Dから信号機10Aへの給電が完了する。なお、信号機10Dから信号機10Aへの給電について例示したが、給電元および給電要求元の関係はこの態様に限られない。
このように、本実施形態による信号機システム1の信号機10は、他の信号機10と通信を行う通信装置13と、通信装置13を介して送受信する電力事情を示す情報に基づいて他の信号機との間で電力を融通する制御を行うコントローラ12と、を具備している。このため、信号機システム1では、電力の余裕のある信号機10から電力の余裕のない信号機10に電力が供給される。すなわち、信号機10は、電力が不足する前に電力の供給を受けることができる。従って、本実施形態による信号機10を含む信号機システム1は、電力不足により信号機10が動作不能になるのを回避することができる。その結果、信号機10の動作不能により生じる交通事故などの2次災害の発生を回避することができる。
また、本実施形態による信号機システム1の信号機10は、蓄電部15をさらに有している。また、コントローラ12は、通信装置13を介して送受信する蓄電部15の蓄電残量を示す情報に基づいて他の信号機との間で電力を融通する制御を行っている。このため、本実施形態による信号機システム1では、蓄電部15の蓄電残量の多い信号機10から蓄電部15の蓄電残量の少ない信号機10に電力を供給することができる。その結果、信号機システム1全体として電力融通を効率良く行うことができる。
また、本実施形態による信号機システム1の信号機10は、発電装置14をさらに有している。このため、本実施形態による信号機システム1では、商用電源からの電力の供給が断たれても発電装置14の生成する電力によって蓄電部15を蓄電させることができる。従って、蓄電部15の蓄電残量が少なくなるのを低減することができる。
また、本実施形態による信号機システム1では、商用電源の送配電網を介して信号機10間の電力融通を行っている。このため、信号機10間の電力融通を行うための新たな送配電網を構築することなく信号機システム1を構築することができる。
また、本実施形態による信号機システム1の各信号機10は、無線メッシュネットワークを構成している。無線メッシュネットワークを構成する各信号機10は、その内のいくつかの信号機10が故障すると、他の信号機10との間で通信路を再構成して送信先の信号機10に接続する。従って、本実施形態による信号機システム1では、信号機10が故障しても信号機システム1を容易に維持することができる。また、各信号機10は無線メッシュネットワークを構成しているため、アクセスポイントを用いる態様に比較して初期設定等を行うことなく新たな信号機10を設置することができる。従って、信号機システム1の拡張および変更を容易に行うことができる。
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記実施形態の信号機10は、コントローラ12に4個の表示装置11が接続されていた。しかし、コントローラ12に接続される表示装置11の数は、これに限られない。例えば、信号機10は、1のコントローラ12に対して1の表示装置11が接続される態様としても良い。この態様では、1の表示装置11毎に電力融通制御を行うことができるため、よりきめ細やかな電力融通制御を行うことができる。また、例えば、信号機10は、1のコントローラ12に対して4よりも多い数(例えば8個)の表示装置11が接続される態様としても良い。この態様では、より広い範囲の表示装置11に対して電力融通制御を行うことができる。すなわち、コントローラ12に接続される表示装置11の数は、信号機システム1のコストと信頼性との兼ね合いにより設計すれば良い。また、3差路では、1のコントローラ12に対して3個の表示装置11を接続し、4差路では、1のコントローラ12に対して4個の表示装置11を接続し、5差路では、1のコントローラ12に対して5個の表示装置11を接続するという具合に、交差点の形状によりコントローラ12に接続される表示装置11の個数を変えても良い。また、信号機システム1において、コントローラ12に接続される表示装置11の個数が異なる信号機10が混在していても良い。
(2)上記実施形態による信号機システム1の信号機10は、他の1の信号機10から給電されていた。しかし、信号機10は、他の複数の信号機10から同時に給電されても良い。例えば、給電要求元の信号機10の制御部21は、取得した蓄電残量を示す情報を比較して蓄電残量の多い順から所定数(複数)の信号機10を給電元となる信号機10に決定する、という具合である。この態様では、給電をより早く完了させることができる。
(3)上記実施形態では、電力事情を示す情報として蓄電部15の蓄電残量を利用していた。しかし、電力事情を示す情報はこれに限られない。例えば、電力事情を示す情報として発電装置14の生成電力量を利用しても良い。発電装置14の生成電力量が少なくなるということは、蓄電部15に蓄電される電力が少なくなることに対応するからである。この態様では、例えば、発電装置14とコントローラ12のノードNとの間に電力量検出部を設ける。制御部21は、電力量検出部の検出結果が所定の電力量以下となったときや所定の電力量以下の状態が所定時間継続したときに給電要求を行う。給電要求を受けた他の信号機10の制御部21は、電力量検出部の検出した生成電力量を示す情報を給電要求元の信号機10へ送信する。そして、給電要求元の信号機10の制御部21は、取得した生成電力量を示す情報を比較して生成電力量の最も多い信号機10を給電元となる信号機10に決定する、という具合である。この態様においても上記実施形態と同様の効果が得られる。
(4)信号機10の通信装置13は、集中管理センタ(防災センタなど)と通信可能であっても良い。また、その集中管理センタは、信号機システム1における電力融通に関する各情報を収集しても良い。集中管理センタにて電力融通に関する情報を収集および分析することで、どの信号機10が電力不足になりやすいかを把握したり、災害復旧に利用したりできるからである。
(5)信号機10の発電装置14は、各信号機10で同じ種類のものであっても良いし、異なった種類のものであっても良い。例えば、信号機システム1は、発電装置14として太陽光発電装置を有する複数の信号機10と発電装置14としてディーゼル発電機を有する複数の信号機10とにより構成される、という具合である。また、ディーゼル発電機のように燃料残量により発電時間が制限されるものを信号機10の発電装置14とした場合、制御部21は、外部からの電力の供給がなくなったことを契機として、発電装置14の動作を開始させるようにすれば良い。
(6)上記実施形態による各信号機10は、商用電源の送配電網を介して他の信号機10との間で電力の融通を行っていた。しかし、各信号機10間に専用の送配電網を敷設し、敷設した専用の送配電網を介して他の信号機との間で電力の融通を行っても良い。この態様でも上記実施形態と同様の効果が得られる。また、各信号機10は、商用電源の送配電網と専用の送配電網の両方により他の信号機10との間で電力の融通を行っても良い。
(7)上記実施形態では、各信号機10に蓄電部15を設けていた。しかし、各信号機10に蓄電部15を設けなくても良い。信号機10は、外部からの電力の供給がなくなったときに、外部から電力の供給を受けている信号機10から電力の供給を受ければ良いからである。例えば、各信号機10は、それらの間で外部からの電力の供給を受けている旨の情報を定期的に送受信する。外部からの電力の供給がなくなると、信号機10は、その情報の送受信をすることができなくなる。その情報の送受信が途絶えた場合、その情報の途絶えた信号機10の周囲の信号機10(外部からの電力の供給を受けている信号機10)は、その情報の途絶えた信号機10(外部からの電力の供給が断たれた信号機10)へ商用電源の送配電網または専用の送配電網を介して給電を行う、という具合である。信号機10間で電力の融通を行う点において上記実施形態と同様であるため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
(8)上記実施形態では、各信号機10に発電装置14を設けていた。しかし、各信号機10に発電装置14を設けなくても良い。外部からの給電がなくなったときに蓄電部15に蓄えられている電力が表示装置11に出力される点において上記実施形態と同様であるからである。従って、上記実施形態と同様の効果が得られる。
(9)上記実施形態の信号機10は、コントローラ12の電源が投入されたことを契機として、当該信号機10を他の信号機10に認識させていた。しかし、信号機10は、ブロードキャストされた給電要求を示す情報を受け取ったことを契機として、他の信号機10を認識しても良い。例えば、信号機10は、ブロードキャストされた給電要求を示す情報を受け取ったときに、給電要求元の信号機10のMACアドレスを送信先アドレスとし、自己のMACアドレスを送信元アドレスとし、ペイロードに自己の蓄電残量を示すデータを格納したフレームを給電要求元の信号機10に送信する、という具合である。この態様でも上記実施形態と同様の効果が得られる。また、この態様では、周囲の信号機のMACアドレスを予め記憶しておくための記憶手段を省略することができる。
(10)信号機10のコントローラ12は、蓄電部15の蓄電残量に基づいて当該信号機10の消費電力を調整する制御を行っても良い。例えば、コントローラ12は、蓄電部15の蓄電残量が少なくなった時に、表示装置11に輝度を抑えて表示させる制御を行う、という具合である。また、制御部21は、発電装置14の生成電力量により当該信号機10の消費電力を調整する制御を行っても良い。この態様では、蓄電残量が十分でない状態になるのを遅くすることができる。
(11)上記実施形態による通信装置13は、無線通信装置であった。しかし、通信装置13は、無線通信装置に限られず、有線通信装置であっても良いし、赤外線通信装置であっても良い。
(12)上記実施形態による信号機システム1では、各信号機10間の電力融通動作を電子回路により実現した。しかし、コンピュータにプログラムを実行させることにより各信号機10間の電力融通動作を実現しても良い。この場合のプログラムは、信号機10にインストールされた状態で取引されても良いし、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で別個に取引されても良いし、ネットワークを介したダウンロードにより取引されても良い。