JP6270559B2 - 低熱膨張鋳物 - Google Patents

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Description

本発明は、低熱膨張鋳物に関するものである。
近年、エレクトロニクス産業や光学産業の発展に伴って、それらに関連する精密工作機械や精密測定機器、その他製造機械類には、より高い寸法精度が要求されている。
このような機械や機器などは、寸法精度を保つために、恒温恒湿の環境下で使用される。しかし、上記機械や機器の使用による発熱で、これら温度が若干上昇してしまった場合、上記機械や機器が熱膨張し、その寸法精度が狂うおそれもある。このため、上記機械や機器の材料には、低い熱膨張性のもの、特に成形性および加工性を考慮して、低い熱膨張性の鋳物(以下、低熱膨張鋳物という)が望まれている。
低熱膨張鋳物としては、鋳造後に熱処理を不要としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、所定の面積率を有する塊状MnSなど、組織中の快削介在物を有することで、切削性を改善した低熱膨張鋳物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。なお、周知のものとしては、インバー合金(INVERは登録商標)ともいわれる不変鋼などがある。
特許3707825号公報 特許3381845号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の低熱膨張鋳物は、高価なCoを多量に含有するので、必然的に製品コストが高くなる。また、上記特許文献2に記載の低熱膨張鋳物は、切削性を良くするためだけに、快削介在物(黒鉛やMnS)を別途存在させる必要がある。一方で、インバー合金は、よく知られているように、低熱膨張性に優れるものの、材料自体が粘く切削性は悪い。また、インバー合金のように、Cの含有量が極めて低い材料は、そのCの含有量の調整が非常に困難で、そのために特殊な設備を必要とするので、製造コストが高くなる。
そこで、本発明は、低熱膨張性および切削性の両方に優れ、安価に製造可能な低熱膨張鋳物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明の低熱膨張鋳物は、Cを0.1〜0.25質量%、Siを0.1〜0.5質量%、Mnを0.05〜0.8質量%、Niを33〜40質量%、Nbおよびその他不可避的不純物を含有し、残部がFeからなる低熱膨張鋳物であって、
Nbの含有量が、Cの含有量の8倍以上で且つ、2.5質量%以下であり、
含有されたCとNbとが結合してNbCとなり、当該結合により低熱膨張性の低下要因となる固溶Cを減少させるとともに、切削性の向上要因となる上記NbCが晶出または析出した鋳放し材であるものである。
また、請求項2に係る本発明の低熱膨張鋳物は、Cを0.1〜0.25質量%、Siを0.1〜0.5質量%、Mnを0.05〜0.8質量%、Niを33〜40質量%、Nbおよびその他不可避的不純物を含有し、残部がFeからなる低熱膨張鋳物であって、
Nbの含有量が、Cの含有量の8倍以上で且つ、2.5質量%以下であり、
含有されたCとNbとが結合してNbCとなり、当該結合により低熱膨張性の低下要因となる固溶Cを減少させるとともに、切削性の向上要因となる上記NbCが晶出または析出したものであり、
CとNbとの結合により低熱膨張性の低下要因となる固溶Cを減少させる量が、室温〜100℃の熱膨張率が2.11×10 −6 以下となる量である。

上記低熱膨張鋳物によると、低熱膨張性および切削性の両方に優れ、安価に製造することができる。
従来例に係る低熱膨張鋳物の金属組織写真であり、(a)は鋳放し材を示し、(b)は熱処理温度が900℃の熱処理材を示す。 本発明の実施例1に係る低熱膨張鋳物の金属組織写真であり、(a)は鋳放し材を示し、(b)は熱処理温度が900℃の熱処理材を示す。 本発明の実施例2に係る低熱膨張鋳物の金属組織写真であり、(a)は鋳放し材を示し、(b)は熱処理温度が900℃の熱処理材を示す。 比較例1に係る低熱膨張鋳物の鋳放し材の金属組織写真である。 比較例2に係る低熱膨張鋳物の鋳放し材の金属組織写真である。 試験片の切り屑を示す写真であり、(a)は同実施例2に係るものを示し、(b)は同従来例に係るものを示す。 比較するための試験片の切り屑を示す写真であり、(a)は同実施例2に係るものを示し、(b)は同従来例に係るものを示す。 同実施例2に係る切り屑を拡大して示し、(a)は拡大投影機での断面の拡大写真(断面マクロ組織)、(b)は光学顕微鏡での断面の拡大写真(断面ミクロ組織)、(c)は光学顕微鏡での断面のさらなる拡大写真[(b)の詳細]である。 同従来例に係る切り屑を拡大して示し、(a)は拡大投影機での断面の拡大写真(断面マクロ組織)、(b)は光学顕微鏡での断面の拡大写真(断面ミクロ組織)、(c)は光学顕微鏡での断面のさらなる拡大写真[(b)の詳細]である。
以下、本発明の実施の形態に係る低熱膨張鋳物について説明する。なお、本発明の実施の形態に係る低熱膨張鋳物は、一般的な低熱膨張鋳物と区別するために、以下では単に本発明材という。
この本発明材は、C(炭素)を0.1〜0.25質量%、Si(ケイ素)を0.1〜0.5質量%、Mn(マンガン)を0.05〜0.8質量%、Ni(ニッケル)を33〜40質量%、およびNb(ニオブ)を含有する。
また、上記本発明材は、その他不可避的不純物も含有し、残部がFe(鉄)からなる。
さらに、上記本発明材は、本発明の要旨として、Nbの含有量が、Cの含有量の8倍以上で且つ、2.5質量%以下である。
次に、上述の成分範囲にした理由について説明する。
Cは、低熱膨張を要求される鋳物の場合であれば、インバー合金のように、極力低い含有量であることが望ましい。しかしながら、現実の製造現場においては、1つの溶解炉で成分の異なる様々な鋼材を溶解・鋳造している。このため、このようなCの含有量が極力低い鋳鋼、つまり極低炭素鋳鋼を製造するためには、上記溶解炉は、他の鋼材の製造で使用されたことにより、内部にCを含有する金属が残留した場合には、極低炭素鋳鋼を製造する前に、この金属を予めC含有量の低い純鉄ないし鉄スクラップで洗い流すことが必要となる。このような洗い流し、つまり洗い湯といわれる溶解作業は、純鉄ないし鉄スクラップが必要となり工数も増加するので、製造コストを上昇させることになるが、行わなければ溶解炉に残留したCが鋳物に混入してしまう。そこで、本発明では、洗い湯を行わず、現場でのCの調整を容易にするために、Cの混入をある程度(0.1質量%以上)許容する。このため、Cの含有量の下限を0.1質量%とした。また、本発明では、ある程度のCが混入しても、Cと結合する成分であるNbを添加することにより、CがNbと結合してNbC(ニオブ炭化物)として固定されることで、Cが基地に固溶することを防止している。すなわち、CをNbCとして固定することは、擬似的にCの含有量を低くすることにつながる。しかし、Cの含有量が0.25質量%を超えると、必要とされるNbが多量となるので、現実的でない。このため、Cの含有量の上限を0.25質量%とした。
Siは、不可避的に含むと同時に脱酸成分として、ある程度は許容されるが、一般的な鋼の場合よりも許容される範囲は狭い。すなわち、Siを多量に含有すると、Siの酸化物が生成されることにより低熱膨張性の低下につながるので、Siの含有量の上限を0.5質量%とした。また、必要な脱酸成分としての作用から、Siの含有量の下限を0.1質量%とした。
Mnは、本発明の目的とする低熱膨張性を確保するためには基本的に不要な成分であるが、多量に含有するとSと結合してMnSとなり、低熱膨張性が悪くなる。このため、Mnの含有量の上限を0.8質量%とした。また、鋳造性に必要な成分として、Mnの含有量の下限を0.05質量%とした。
Niは、インバー合金の特徴となる成分である。インバー合金は、Niを36質量%含有することで、低熱膨張性に優れる。これに対して、本発明材は、インバー合金にない成分であるNbおよびCも含有する。これらを含有する場合であっても低熱膨張性に優れるためのNiの含有量は、33〜40質量%となる。このため、Niの含有量の下限を33質量%とし、Niの含有量の上限を40質量%とした。なお、Niの含有量が33〜40質量%を外れると、低熱膨張性が悪くなる。
Nbは、Cと結合してNbCとなることにより、Cが基地に固溶することを防止するものである。この作用により、Cの混入をある程度許容することが可能となる。Nbの適切な含有量は、Cの含有量に影響されるものであり、NbがCと結合してNbCとしてCを固定するために、Cの含有量の8倍以上が必要となる。このため、Nbの含有量の下限をCの含有量の8倍とした。しかし、Nbの含有量が2.5質量%を超えると、NbCの熱膨張による影響が無視できなくなり、また余分なNbがNiと結合して擬似的にNiの含有量を低くするので、低熱膨張性が悪くなる。このため、Nbの含有量の上限を2.5質量%とした。
ところでNbCは、その生成によりCが基地に固溶することを防止するだけでなく、晶出または析出することにより、低熱膨張鋳物の切削性を向上させる。なぜなら、晶出または析出したNbCは、その脆さから、切削時に生ずる切り屑がミクロ的に破壊される役割を果たすからである。また、この観点からCの含有量の範囲について再考すると、Cの含有量が上述した下限(0.1質量%)未満であれば、NbCの晶出または析出する量が少なく、切削性が向上しない。逆に、CおよびNbの含有量が上述した上限を超えるのであれば、NbCの晶出または析出する量が多くなる。しかし、NbCは、室温〜1000℃での平均熱膨張率が7.2×10−6と大きいので、晶出または析出する量が多くなると、必然的に本発明材の低熱膨張性を悪くする。
また、本発明のNbがCと結合して、CがNbCとして固定されたことは、一般的に、NbCの晶出または析出から把握される。本発明者らは、上述した成分範囲であれば、高温でもNbCの晶出または析出を確認し、言い換えれば、高温でもNbCが分解されずに安定してNbがCを固定していることを確認した。NbCが分解されずに安定してNbがCを固定していれば、その結果として、Niの偏析が防止され、これにより、低熱膨張性が向上する。一方で、NbCが分解されず、すなわち、NbCが晶出または析出されることにより、切削性も向上する。
以上より、本発明の技術的思想は、Cの含有量を極力抑えるという困難な方法ではなく、Nbを適切な含有量にすることで、CをNbCとして固定して擬似的にCの含有量を低くするとともに、晶出または析出するNbCの脆さを利用して、切削性の向上を図ることである。加えて、この作用を最大化する上述した成分範囲についても、本発明の特徴である。
なお、不可避的不純物として、特殊な溶解・鋳造方法を用いない通常の溶解鋳造作業において混入する範囲内の不純物を許容する。具体的には、S(硫黄)が0.005質量%程度、P(リン)が0.005質量%程度である。
以下、上記本発明材の製造方法について説明する。
上記本発明材は、通常の方法により鋳造されるが、鋳造時の凝固偏析を防止するために、鋳込み温度を低く設定するとともに、鋳型にチル(冷し金)を多く使用して、溶湯を急冷凝固または急速凝固させる。なぜなら、鋳造時の凝固偏析が発生すると、Niの偏析により、低熱膨張性が悪くなるからである。なお、鋳造時の凝固偏析を防止しても、鋳造品の内部偏析が発生すると、Niの偏析により、低熱膨張性が悪くなるので、この内部偏析を防止するために、鋳造された製品を鋳放しではなく、以下の熱処理を行う。
具体的には、鋳造された製品を、700〜1150℃の範囲において一定の温度に保持し、その後に水につけて急冷(つまり水靭)する。
一定の温度に保持する温度を700℃以上としたのは、詳しくは以下の従来例および実施例で説明するが、上記温度が500℃未満だと低熱膨張性の向上があまり現れないのに対し、上記温度が700℃以上だと低熱膨張性の向上が顕著に現れるからである。また、上記温度を1150℃以下としたのは、上記温度が1150℃を超えると、製品の熱変形の問題などが生じ得るからである。なお、上記温度が1150℃をある程度超えても、低熱膨張性は悪くならない。また、上記温度のより好ましい範囲は、低熱膨張性の向上が一層顕著に現れる850〜950℃である。
さらに、水靭としたのは、これにより、Niの偏析が再現されることを防止することにより、本発明材の低熱膨張性を向上させるためである。
このように、上記本発明材によると、擬似的にCの含有量が低くされるとともに、Niの偏析が防止されるので、低熱膨張性に優れるという効果を奏する。同時に、NbCの晶出または析出により、切削性にも優れるという効果を奏する。
また、洗い湯を行わず、現場でのCの調整が容易であるから、製造コストを抑えることが可能となり、さらに、Nbの添加だけで低熱膨張性および切削性の両方を向上させることが可能となる。
以下、本発明の実施例について説明するが、まずは従来例について説明した後、実施例について説明し、その後に比較例について説明する。
[従来例]
従来例に係る低熱膨張鋳物は、Cを0.007質量%、Siを0.20質量%、Mnを0.02質量%、Niを36.59質量%、Sを0.003質量%、Pを0.010質量%、Alを0.054質量%含有するものとし、つまり、極低炭素鋳鋼とした。
まず、C含有量の低い高純度鉄合金で100kg高周波溶解炉の洗い湯をして溶解し、上記成分をこの100kg高周波溶解炉で溶解後に、Yブロック砂型に鋳込んだ。そして、Yブロックから25mm角×100mm長さの試験片を6つ切り出し、これらのうち1つは鋳放し材とし、残りの5つを熱処理材1〜5とした。なお、熱処理材1〜5は、表1に示す熱処理温度で2時間保持し、その後に水靭した。上記鋳放し材および熱処理材1〜5の熱膨張率は、表1の通りである。
表1に示すように、従来例に係る低熱膨張鋳物は、熱処理温度が700℃以上で低熱膨張性に優れ、熱処理温度が特に700℃,900℃で低熱膨張性に一層優れることを確認した。この傾向は、従来例だけでなく、本発明材に対しても同様であるといえる。
また、図1には、上記試験片の金属組織写真を示す。図1(a)の鋳放し材に比べて、図1(b)の熱処理材4(熱処理温度が900℃)は、凝固セルの凹凸が小さく、つまりNiの偏析が小さくなっている。このため、Niの偏析が低熱膨張性に影響を与えると考えられる。
本発明の実施例1に係る低熱膨張鋳物は、Cを0.11質量%、Siを0.19質量%、Mnを0.09質量%、Niを35.95質量%、Nbを0.96質量%、Sを0.005質量%、Pを0.005質量%、Al(アルミニウム)を0.074質量%含有するものとした。
上記成分を100kg高周波溶解炉で溶解後に最終脱酸し、Yブロック砂型に鋳込んだ。そして、Yブロックから50mm角×100mm長さの試験片を4つ切り出し、これらのうち1つは鋳放し材とし、残りの3つを熱処理材1〜3とした。なお、熱処理材1〜3は、表2に示す熱処理温度で4時間保持し、その後に水靭した。上記鋳放し材および熱処理材1〜3の熱膨張率は、表2の通りである。
また、図2には、上記試験片の金属組織写真を示す。図2(a)に示すように、鋳放し材には、NbCが、結晶粒界およびその近傍に晶出または析出している。一方で、図2(b)に示すように、熱処理材2(熱処理温度が900℃)には、金属組織におけるエッチングの濃淡が小さく、基地のNiの偏析が低減したような金属組織を呈している。
本発明の実施例2に係る低熱膨張鋳物は、Cを0.16質量%、Siを0.42質量%、Mnを0.71質量%、Niを36.32質量%、Nbを2.33質量%、Sを0.005質量%、Pを0.008質量%、Alを0.072質量%含有するものとした。
上記成分を100kg高周波溶解炉で溶解後に最終脱酸し、Yブロック砂型に鋳込んだ。そして、Yブロックから50mm角×100mm長さの試験片を2つ切り出し、これらのうち1つは鋳放し材とし、残りを熱処理材とした。なお、熱処理材には、表3に示す熱処理温度で4時間保持し、その後に水靭した。上記鋳放し材および熱処理材の熱膨張率は、表3の通りである。
また、図3には、上記試験片の金属組織写真を示す。図3(a)に示すように、鋳放し材には、実施例1と同様に、NbCが、結晶粒界およびその近傍に晶出または析出している。一方で、図3(b)に示すように、熱処理材(熱処理温度が900℃)には、金属組織におけるエッチングの濃淡が小さく、基地のNiの偏析が低減したような金属組織を呈している。なお、実施例2では、実施例1よりもNbおよびCの含有量が多いので、図3(a)および(b)に示すように、多くのNbCがみられる。
[比較例1]
比較例1に係る低熱膨張鋳物は、Cを0.26質量%、Siを0.70質量%、Mnを0.13質量%、Niを36.44質量%、Nbを2.56質量%、Sを0.005質量%、Pを0.008質量%、Alを0.088質量%含有するものとし、つまり、本発明材よりも多いC,Si,MnおよびNbを含有するものとした。
上記成分を100kg高周波溶解炉で溶解後に最終脱酸し、Yブロック砂型に鋳込んだ。そして、Yブロックから50mm角×100mm長さの試験片を4つ切り出し、これらのうち1つは鋳放し材とし、残り3つを熱処理材1〜3とした。なお、熱処理材1〜3は、表4に示す熱処理温度で4時間保持し、その後に水靭した。上記鋳放し材および熱処理材1〜3の熱膨張率は、表4の通りである。
表4に示すように、比較例1では、熱処理材でも熱膨張率が1.5×10−6以下とならず、すなわち、低熱膨張性が悪い。これは、図4の鋳放し材の金属組織写真に示すように、NbC(熱膨張率が大きい)の晶出または析出の量が多いためと考えられる。
[比較例2]
比較例2に係る低熱膨張鋳物は、Cを0.009質量%、Siを0.070質量%、Mnを0.030質量%、Niを36.16質量%、Nbを0.59質量%、Sを0.005質量%、Pを0.004質量%、Alを0.084質量%含有するものとし、つまり、本発明材よりも少ないC,Si,MnおよびNbを含有するものとした。
上記成分を100kg高周波溶解炉で溶解後に最終脱酸し、Yブロック砂型に鋳込んだ。そして、Yブロックから50mm角×100mm長さの試験片を4つ切り出し、これらのうち1つは鋳放し材とし、残り3つを熱処理材1〜3とした。なお、熱処理材1〜3は、表5に示す熱処理温度で4時間保持し、その後に水靭した。上記鋳放し材および熱処理材1〜3の熱膨張率は、表5の通りである。
比較例2に係る低熱膨張鋳物は、極低炭素鋳鋼に分類され、熱処理材の熱膨張率が1.5×10−6以下であり、低熱膨張性に優れる。しかし、図5の鋳放し材の金属組織写真に示すように、NbCが微量であるから、インバー合金のような極低炭素鋼と同様に切削性は悪いと考えられる。
以下、本発明材の切削性について、図面に基づき詳しく説明する。また、切削性を適切に評価するために、以下では、切削時に生ずる切り屑からの観点と、切削される材料のミクロ的な観点との、2つの観点から説明する。
まず、切削時に生ずる切り屑の観点から説明する。
試験片に卓上ボール盤で穴をあけ、その際に生じた最長の切り屑を図6に示す。通常、試験片に卓上ボール盤で穴を開けると、その試験片が切削性の良い材料の場合、切り屑が適当に割れて短くなるのに対し、その試験片が切削性の悪い材料の場合、切り屑が連続的に捻れて長くなる。なぜなら、切削性の良い材料だと切り屑がミクロ的に破壊されて短くなりやすく、切削性の悪い材料だと粘い材料のため切り屑がミクロ的に破壊されず長くなりやすいからである。ここで、図6(a)は試験片が実施例2に係る本発明材(以下、単に本発明材という)の場合であり、図6(b)は試験片が従来例に係るもの(以下、単に従来材という)の場合である。試験片が本発明材の場合、長い切り屑でも全長が1〜3cmであり、最長の切り屑で全長が5cmであった。これに対して、試験片が従来材の場合、長い切り屑だと全長が15〜20cmであり、最長の切り屑で全長が35cmもあった。
したがって、上記本発明材は、切削時に生ずる切り屑の観点から、従来材と比べて切削性に優れるといえる。
次に、切削される材料のミクロ的な観点から説明する。
まず、本発明材と従来材とを適切に比較するために、図7に示すように、本発明材の切り屑と従来材の切り屑とで長さに大差がないものをそれぞれ1つずつ選別する。なお、図7(a)は本発明材の切り屑を示し、図7(b)は従来材の切り屑を示す。
そして、選別された切り屑の拡大断面写真を図8および図9に示す。図8は本発明材の切り屑の拡大断面写真であり、図9は従来材の切り屑の拡大断面写真である。図8(b)に示すように、本発明材の切り屑には、多数の亀裂がみられる。また、これら亀裂の1つを拡大した図8(c)には、析出したNbCに沿って亀裂の入っている状態がみられる。これに対して、図9(b)に示すように、従来材の切り屑には、本発明材の切り屑のような多数の亀裂がみられない。また、図9(b)を拡大した図9(c)には、粘い材料の特徴である著しい塑性流動がみられる。
したがって、上記本発明材は、切削される材料のミクロ的な観点からも、従来材と比べて切削性に優れるといえる。
このように、上記実施例に係る本発明材は、低熱膨張性に優れる効果を奏した。特に、700〜1150℃(好ましくは850〜950℃)の所定温度で保持され、その後に水靭された上記本発明材は、熱膨張率(室温〜100℃)が1.5×10−6以下となり、低熱膨張性に一層優れるという効果を奏した。同時に、上記本発明材は、晶出または析出したNbCの脆さにより、亀裂が入りやすくなるので、切削性にも優れるという効果を奏した。

Claims (2)

  1. Cを0.1〜0.25質量%、Siを0.1〜0.5質量%、Mnを0.05〜0.8質量%、Niを33〜40質量%、Nbおよびその他不可避的不純物を含有し、残部がFeからなる低熱膨張鋳物であって、
    Nbの含有量が、Cの含有量の8倍以上で且つ、2.5質量%以下であり、
    含有されたCとNbとが結合してNbCとなり、当該結合により低熱膨張性の低下要因となる固溶Cを減少させるとともに、切削性の向上要因となる上記NbCが晶出または析出した鋳放し材であることを特徴とする低熱膨張鋳物。
  2. Cを0.1〜0.25質量%、Siを0.1〜0.5質量%、Mnを0.05〜0.8質量%、Niを33〜40質量%、Nbおよびその他不可避的不純物を含有し、残部がFeからなる低熱膨張鋳物であって、
    Nbの含有量が、Cの含有量の8倍以上で且つ、2.5質量%以下であり、
    含有されたCとNbとが結合してNbCとなり、当該結合により低熱膨張性の低下要因となる固溶Cを減少させるとともに、切削性の向上要因となる上記NbCが晶出または析出したものであり、
    CとNbとの結合により低熱膨張性の低下要因となる固溶Cを減少させる量が、室温〜100℃の熱膨張率が2.11×10 −6 以下となる量であることを特徴とする低熱膨張鋳物。
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