以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本開示に至った背景
1−1.既存の光学式の顕微鏡装置についての検討
1−2.電子撮像式の顕微鏡装置についての考察
2.本実施形態に係る顕微鏡装置の支持部の設計思想
2−1.使用態様から要請される条件
2−2.可動範囲及び小型化から要請される条件
2−3.設置位置から要請される条件
2−4.条件のまとめ
2−5.支持部の具体的な設計例
3.顕微鏡装置の構成例
4.顕微鏡装置の使用例
4−1.立位での手術における使用例
4−2.座位での手術における使用例
5.変形例
5−1.支持部に回転軸部が追加された変形例
5−2.ベース部に電装部が追加された変形例
5−3.支柱部の長さ(T)がより長く構成される変形例
5−3−1.顕微鏡装置の概要
5−3−2.顕微鏡装置の概略構成
5−3−3.支持部の設計思想
5−3−4.支持部の具体的な設計例
5−3−5.顕微鏡装置の使用例
5−4.映像振動抑制機構を有する変形例
6.補足
ここで、顕微鏡装置は、顕微鏡部と、当該顕微鏡部を先端で支持する支持部と、当該支持部の基端を支持するベース部と、から主に構成される。以下では、顕微鏡装置の構成について説明するために、下記のように方向を定義することとする。すなわち、以下の説明では、顕微鏡装置が設置される床面に対して鉛直な方向をz軸方向と定義する。z軸方向のことを上下方向又は鉛直方向とも呼称する。また、z軸方向と互いに直交する方向であって、ベース部から見て支持部が延伸する方向(ベース部から見て顕微鏡部が位置する方向)のことをx軸方向と定義する。x軸方向のことを前後方向とも呼称する。更に、x軸方向及びz軸方向とともに直交する方向を、y軸方向と定義する。y軸方向は、鉛直方向及び前後方向とともに直交する方向であると言える。なお、x−y平面と平行な方向のことを水平方向とも呼称する。
また、以下の説明では、顕微鏡装置の支持部の構成について説明する際に、顕微鏡部が設けられる側を先端側又は先端部等とも呼称し、ベース部に近い側を基端側又は基端部等とも呼称することとする。
また、以下の説明では、支持部の構成について説明するために、支持部を、便宜的に、第1アームと、第2アームと、支柱部と、の3つの部位に分割することとする(後述する図1及び図9等も参照)。
第1アームは、これらの部位の中で最も先端側に位置する部位である。第1アームの先端側に顕微鏡部が設けられる。第1アームの基端は、第2アームの先端によってy軸と平行な(すなわち、鉛直方向及び前後方向と互いに直交する)第1の回転軸まわりに回動可能に支持される。具体的には、第1アームは、顕微鏡部の光軸が略鉛直になるように配置された際における当該顕微鏡部の光軸と第1の回転軸との間の部位である。
支柱部は、支持部の最も基端側の部位であり、床面から略鉛直方向に延伸し、先端において第2アームの基端をy軸と平行な(すなわち、鉛直方向及び前後方向と互いに直交する)第2の回転軸まわりに回動可能に支持する。
第2アームは、第1アームと支柱部との間に位置する部位である。第2アームは、第1の回転軸と第2の回転軸との間の部位であるとも言える。
支柱部と第2アームとの間の第2の回転軸、及び第2アームと第1アームとの間の第1の回転軸は、ともに、y軸方向、すなわち、鉛直方向及び前後方向と互いに直交する方向であるため、第2の回転軸における支柱部に対する第2アームの回転角度、及び第1の回転軸における第2アームに対する第1アームの回転角度が制御されることにより、鉛直面内(x−z平面内)での顕微鏡部の位置が決定されることとなる。また、第1アームの長さ(H)(すなわち、顕微鏡部の光軸が略鉛直になるように配置された際における当該顕微鏡部の光軸と第1の回転軸との間の距離(H))、第2アームの長さ(V)(すなわち、第1の回転軸と第2の回転軸との間の距離(V)及び支柱部の長さ(T)により、当該鉛直面内での顕微鏡部の可動範囲が決定されることとなる。
このように、第1アームの長さ(H)、第2アームの長さ(V)及び支柱部の長さ(T)は、支持部の構造や顕微鏡部の可動範囲を示す、重要なパラメータである。従って、以下では、支持部が第1アーム、第2アーム及び支柱部によって構成されるとみなし、これら3つの部位の長さに特に注目して、支持部の構成について説明することとする。なお、以下の説明では、便宜的に「支柱部の長さ(T)」という呼称を用いるが、当該長さ(T)は、実際には、床面から第2の回転軸までの長さ、すなわち、ベース部まで含んだ支柱部の長さを意味するものである。
また、以下では、本開示の実施形態に係る顕微鏡装置に対して各種の操作を行うユーザのことを、便宜的に術者と記載する。ただし、当該記載は顕微鏡装置を使用するユーザを限定するものではなく、顕微鏡装置に対する各種の操作は、他の医療スタッフ等、あらゆるユーザによって実行されてよい。
(1.本開示に至った背景)
本開示の好適な一実施形態について説明するに先立ち、本開示の目的及び効果をより明確なものとするために、本発明者らが本開示に想到した背景について説明する。
(1−1.既存の光学式の顕微鏡装置についての検討)
図1を参照して、本発明者らが、既存の光学式の顕微鏡装置について検討した内容について説明する。図1は、既存の光学式の顕微鏡装置を用いた手術の様子を示す図である。図1を参照すると、術者820が、顕微鏡装置810を用いて、手術台840上に横臥している患者830に対して手術を行っている様子が図示されている。
顕微鏡装置810は、光学式の顕微鏡装置であり、患者の術部(図示する例では頭部)を拡大観察するための光学式の顕微鏡部801と、先端において顕微鏡部801を支持する支持部803と、支持部803の基端を支持するベース部805と、から構成される。また、支持部803は、カウンターウエイトを有するバランスアームとして構成されている。
顕微鏡装置810では、手術時には、顕微鏡部801が患者830の術部に対して向けられ、術者820は、顕微鏡部801の接眼部を覗き込み、当該顕微鏡部801によって適当な倍率に拡大された術部の像を直接観察しながら、手術を行う。
ここで、光学式の顕微鏡部801は、接眼部等の構成を備えるため、後述する電子撮像式の顕微鏡部に比べて大型であり、その重量も大きい。従って、顕微鏡部801を支持するために、支持部803もより大型化し、その重量も大きくなる。カウンターウエイトは、支持部803全体としてバランスが保たれるようにその重量が設計されているため、支持部803が大型化した場合には、バランスを取るためにカウンターウエイトも大型化し、結果的に装置全体が大型化する。
大型の装置が手術台840の近傍に配置されると、術者や他の医療スタッフの作業の妨げとなる。従って、顕微鏡装置810は、好適に、ベース部805が手術台840からより離れた位置に配置され、その離れた位置から、支持部803が、術者820の上方を通過して手術台840の近傍まで延伸するように構成され得る。つまり、図示するように、顕微鏡装置810では、術者820が支持部803の下に入り込んで術部を観察するスタイル、すなわちオーバーヘッドスタイルでの使用が主流となる。
オーバーヘッドスタイルでの使用を前提として設計されるため、支持部803は、術者820が支持部803の下に入り込めるように、第1アーム807aが比較的長く構成される。第1アーム807aが長ければ、それだけ第1アーム807aの重量が大きくなるため、カウンターウエイトは更に大型化し、装置全体も更に大型化してしまうこととなる。
このように、光学式の顕微鏡装置810では、光学式の顕微鏡部801を支持するために、及び、オーバーヘッドスタイルでの使用を可能とするために、支持部803の構成を大型化する必要がある。その結果、カウンターウエイトも大型化するため、装置全体の構成も大型化する傾向にある。
一方、顕微鏡部801の可動範囲(顕微鏡部801が到達し得る範囲)は、第1アーム807aの長さ、第2アーム807bの長さ及び支柱部807cの長さに依存するが、可動範囲を確保するために第2アーム807bの長さを長くしてしまうと、支持部803の構成が益々大型化することとなるため、カウンターウエイトが非常に大型化してしまう。従って、顕微鏡装置810では、顕微鏡部801の可動範囲の確保と、カウンターウエイトの小型化と、を両立するために、第2アーム807bが比較的短く構成されるとともに、高さ方向(z軸方向)の可動範囲を確保するために支柱部807cが比較的長く構成される。
まとめると、既存の光学式の顕微鏡装置810においては、顕微鏡部801の構成や使用態様等からの要請により、第1アーム807aの長さをH、第2アーム807bの長さをV、支柱部807cの長さをTとした場合に、支持部803は、「H>V、かつT>V」又は「H>T>V」を満たすように構成される。
以上、図1を参照して、本発明者らが、既存の光学式の顕微鏡装置810について検討した内容について説明した。
(1−2.電子撮像式の顕微鏡装置についての考察)
近年、小型で高解像度の撮像素子が容易に入手できるようになり、顕微鏡装置においては、上述したような光学式の顕微鏡部801ではなく、撮像素子により術部を電子的に撮像することが可能な、電子撮像式の顕微鏡部を備えるものが開発されている。
光学式の顕微鏡部801では、術者が当該顕微鏡部801に設けられる接眼部を覗き込んで術部を観察するため、観察時の術者の姿勢が、接眼部の位置(すなわち、顕微鏡部801の姿勢)に拘束されることとなる。術部をあらゆる角度から観察したい場合には、顕微鏡部801の姿勢の変化に応じて、術者も姿勢を変化させる必要があり、利便性が高いとは言えない状況であった。また、術者が覗き込めない位置に接眼部が位置するような方向からは、術部を観察することができないため、実質的に、観察可能な範囲が制限されており、顕微鏡部に求められる可動範囲も制限されていた。
一方、電子撮像式の顕微鏡装置では、顕微鏡部によって撮影された術部の映像が、手術室内に設置される表示装置に表示され、術者は、当該表示装置に映し出された術部の映像を観察しながら手術を行う。従って、術者と顕微鏡部との相対的な位置関係に係る制約がなくなり、あらゆる角度から術部を観察可能であるとともに、術者は、より無理のない姿勢で、術部を観察することができる。このように、電子撮像式の顕微鏡装置によれば、術者の利便性をより向上させることができる。
ここで、電子撮像式の顕微鏡装置に適した支持部の構造は、必ずしも上述した光学式の顕微鏡装置810における支持部803と同じではないと考えられる。
例えば、電子撮像式の顕微鏡部においては、接眼部等の構成を設ける必要がないため、光学式の顕微鏡部801に比べて、大幅な小型化が可能となる。従って、電子撮像式の顕微鏡装置では、顕微鏡部を支持する支持部の構成、及びカウンターウエイトをより小型化することができ、装置全体の構成も小型化できる可能性がある。装置が小型化できれば、ベース部を手術台により近い位置に設置しても、術者や他の医療スタッフの作業の妨げにならない。従って、電子撮像式の顕微鏡装置には、手術台のより近くに設置して使用する様態が想定され、必ずしもオーバーヘッドスタイルでの使用が前提とはならない。
また、上述したように、光学式の顕微鏡装置810では、接眼部と術者との位置関係から、顕微鏡部801に求められる可動範囲は、実質的に一部の領域に限定されていた。しかしながら、電子撮像式の顕微鏡装置では、あらゆる角度から術部を観察可能であるため、その顕微鏡部には、より広い可動範囲が求められる。
更に、電子撮像式の顕微鏡装置では、術者が表示装置を見ながら手術を行うため、当該表示装置を観察する術者の視界ができるだけ遮られないように、当該支持部及び当該顕微鏡部が配置されることが求められる。もしも電子撮像式の顕微鏡装置に対してオーバーヘッドスタイルに対応した構成を適用したとすると、支持部の先端部分及び顕微鏡部が、術者の上方から術者の眼前に吊り下げられるように位置することとなるため、たとえ顕微鏡部が小型であったとしても、支持部及び顕微鏡部が術者の視界の妨げとなる可能性が高い。従って、電子撮像式の顕微鏡装置においては、術者の眼前に顕微鏡部が位置するようなオーバーヘッドスタイルでの使用は、最適な使用方法とは言えないと考えられる。
このように、電子撮像式の顕微鏡装置と光学式の顕微鏡装置とでは、顕微鏡部の構成や、顕微鏡部に要求される可動範囲、使用態様等が異なる。従って、図1を参照して説明したような、光学式の顕微鏡装置における支持部の構成を、そのまま電子撮像式の顕微鏡装置に適用した場合には、当該構成は、必ずしも電子撮像式の顕微鏡装置に適したものではなく、かえって術者の利便性を低下させてしまう恐れがある。
上記事情に鑑みれば、電子撮像式の顕微鏡装置においては、当該電子撮像式の顕微鏡装置の特徴や使用態様を考慮して、術者にとっての利便性がより向上するように支持部が構成されることが求められていた。そこで、本発明者らは、電子撮像式の顕微鏡装置により適した、術者の利便性をより向上させることが可能な構成について鋭意検討した結果、本開示に想到したものである。以下では、本発明者らが想到した、本開示の好適な一実施形態について、詳細に説明する。
(2.本実施形態に係る顕微鏡装置の支持部の設計思想)
本開示の好適な一実施形態に係る顕微鏡装置の具体的な構成について説明する前に、図2−図8を参照して、本実施形態に係る顕微鏡装置の支持部の設計思想について説明する。本実施形態に係る顕微鏡装置の具体的な構成例については、下記(3.顕微鏡装置の構成例)で改めて説明する。なお、以下に示す図2−図8では、簡単のため、顕微鏡装置の支持部を図示する際に、当該支持部を簡略化し、その第1アーム、第2アーム及び支柱部のみを概略的に図示している。
(2−1.使用態様から要請される条件)
図2は、電子撮像式の顕微鏡装置を用いた手術の様子を示す図である。図2を参照すると、術者(図示せず)が、顕微鏡装置710を用いて、手術台740上に横臥している患者730に対して手術を行っている様子が図示されている。
顕微鏡装置710は、電子撮像式の顕微鏡装置であり、患者の術部(図示する例では腹部)を拡大観察するための電子撮像式の顕微鏡部701と、先端において顕微鏡部701を支持する支持部703と、支持部703の基端を支持するベース部705と、から構成される。なお、図2では、図示を省略しているが、支持部703はカウンターウエイトを有しており、バランスアームとして構成されている。
図2では、顕微鏡部701によって撮影された術部の映像を表示する表示装置760も併せて図示している。術者は、当該表示装置760に映し出された術部の映像を観察しながら手術を行う。なお、本実施形態では、立位で手術を行う際に術者の略正面に位置し得るように表示装置760が設置されることを想定している。
このような使用態様を考慮すると、表示装置760を見る術者の視界を確保するためには、図示するように、顕微鏡部701は、表示装置760よりも下側(術部に近い側)に位置することが好ましい。一方、術者が術部に対して各種の処置を行う作業空間を確保するためには、顕微鏡部701と術部との間の空間には、ある程度の広さが求められる。
ここで、例えば、視界を確保するために顕微鏡部701を表示装置760よりも下側に位置させつつ、第1アーム707aが顕微鏡部701から下側に向かって延伸する場合(図中に破線で示す第1アーム707dのような姿勢になる場合)には、第1アーム707aによって作業空間が制限されてしまう。
また、例えば、視界を確保するために顕微鏡部701を表示装置760よりも下側に位置させつつ、第1アーム707aが顕微鏡部701から上側に向かって延伸する場合(図中に破線で示す第1アーム707eのような状態になる場合)には、第1アーム707aによって表示装置760を見る術者の視界が遮られてしまう。
従って、術者の視界及び術者の作業空間を同時に確保するためには、図示するように、顕微鏡部701によって術部を撮影する際に第1アーム707aが略水平になるように、支持部703が構成されることが好ましい。
ここで、図3を参照して、顕微鏡部701の可動範囲について考える。図3は、顕微鏡部701の可動範囲を示す概略図である。図3では、顕微鏡部701の可動範囲750を、ハッチングを付して図示している。ただし、顕微鏡部701については、詳細な図示は省略し、簡易的に丸印で図示している。
図3に示すように、顕微鏡部701の可動範囲750は、半径の異なる2つの円弧に挟まれた領域であり得る。これらの円弧の半径、すなわち顕微鏡部701の可動範囲750の大きさは、第1アーム707aの長さ(H)及び第2アーム707bの長さ(V)に依存する。
ここで、顕微鏡部701の鉛直方向の可動範囲について考えると、第1アーム707aが略水平に保たれる場合には、当該第1アーム707aの長さ(H)は顕微鏡部701の鉛直方向の可動範囲には寄与せず、当該可動範囲は、第2アーム707bの長さ(V)に依存することとなる。従って、例えば上述した光学式の顕微鏡装置810のように、第1アーム707aの長さ(H)が第2アーム707bの長さ(V)よりも長くなるように支持部703が構成される場合(すなわち、Vが比較的短い場合)には、顕微鏡部701の鉛直方向の可動範囲は大幅に制限されることとなる。もしも、第1アーム707aの長さ(H)が第2アーム707bの長さ(V)よりも長くなるように構成された支持部703によって、顕微鏡部701を鉛直方向に大きく移動させようとすると、第1アーム707aを水平に保つことができなくなり、図2に示す第1アーム707d、707eのように、第1アーム707aが術者の視界又は術者の作業空間を妨げる恐れがある。
一方、手術には、術者が立った姿勢(立位)で行う手術と、術者が座った姿勢(座位)で行う手術と、が存在する。手術時には、顕微鏡部701は手術台740の直上に位置することとなるが、立位と座位とでは、手術台740の高さが異なるため、顕微鏡部701の使用領域(術部の撮影時に顕微鏡部701が位置し得る領域)の高さも異なる。従って、顕微鏡部701の鉛直方向の可動範囲が狭いと、立位での手術及び座位での手術の双方に対応することが困難になる。
従って、第1アーム707aを略水平に保ちつつ、立位での手術及び座位での手術の双方に対応する(すなわち、顕微鏡部701の鉛直方向における可動範囲をより広く確保する)ためには、第2アーム707bの長さ(V)が第1アーム707aの長さ(H)よりも長くなるように支持部703が構成されることが好ましい。つまり、第1アーム707aを略水平に保ちつつ立位での手術及び座位での手術の双方に対応するために支持部703に求められる条件(以下、便宜的に、「使用態様による条件」ともいう)のうちの1つは、下記(条件1)のように表現される。
(条件1)
V>H
なお、詳細は下記(4.顕微鏡装置の使用例)で改めて説明するが、本実施形態では、第1アーム707aを略水平に保ちつつ、立位での手術及び座位での手術の双方に対応する場合には、支柱部707cと手術台740との距離が調整されることとなる。
具体的には、図3に示すように、顕微鏡部701の可動範囲750は、支柱部707cに近いほど高く、支柱部707cから離れるほど低くなっている。従って、立位で手術を行う場合には、より高い位置に位置する立位での手術時における顕微鏡部701の使用領域751(立位時使用領域751)が、可動範囲750に含まれるように、支柱部707cが手術台740のより近くに位置するように顕微鏡装置710が設置され得る。支柱部707cを手術台740により近付けた状態で、第2アーム707bが垂直に近い角度になるように支持部703の姿勢を調整すれば、第1アーム707aを略水平に保ちつつ、手術台740の直上において顕微鏡部701をより高い位置に配置することができるため、顕微鏡部701を立位時使用領域751に配置することができる。
一方、座位で手術を行う場合には、より低い位置に位置する座位での手術時における顕微鏡部701の使用領域752(座位時使用領域752)が、可動範囲750に含まれるように、支柱部707cが手術台740から比較的遠くに位置するように顕微鏡装置710が設置され得る。支柱部707cを手術台740から比較的遠ざけた状態で、第2アーム707bが手術台740に向かってより傾けられるように支持部703の姿勢を調整すれば、第1アーム707aを略水平に保ちつつ、手術台740の直上において顕微鏡部701をより低い位置に配置することができるため、顕微鏡部701を座位時使用領域752に配置することができる。
ここで、図4及び図5を参照して、使用態様による条件について、より詳細に説明する。図4は、使用態様による条件について説明するための説明図である。図4では、顕微鏡装置710の支持部703及び手術台740の位置関係を概略的に図示している。なお、図4では、簡単のため、図3と同様に、顕微鏡部701を簡略化して図示している。また、図5は、図4に示す支柱部707cに対する第2アーム707bの回転角度r2(第2の回転軸の回転角度r2)の最大値r2maxの範囲について説明するための説明図である。
立位での手術時における顕微鏡部701の下端近傍に設けられる対物レンズの高さ(以下、立位高さともいう)をZ1、座位での手術時における顕微鏡部701の対物レンズの高さ(以下、座位高さともいう)をZ2とする。使用態様による条件を満たすためには、図4に示すように、第2アーム707bが略鉛直方向に延伸している状態で顕微鏡部701の対物レンズが立位高さZ1に位置し、第2アーム707bが支柱部707cに対して所定の角度r2だけ傾いた状態(回転した状態)で顕微鏡部701の対物レンズが座位高さZ2に位置し得るように、支持部703が構成されればよい。換言すれば、第2アーム707bを、略鉛直方向に延伸している状態から、支柱部707cに対して所定の角度r 2だけ回転した状態に変化させた場合に、顕微鏡部701の対物レンズが、立位高さZ1と座位高さZ2との変化量(Z1−Z2)分だけ高さ方向に変化し得るように、支持部703が構成されればよい。
つまり、支持部703は、下記(条件2)及び(条件3)を満たすように構成され得る。
(条件2)
Z1−Z2<V(1−cos(r2max))
(条件3)
Z2>Vcos(r2max)+T
ここで、一般的な身長の術者を想定すると、立位高さZ1と座位高さZ2との変化量Z 1−Z2は、少なくとも200(mm)程度となる。あらゆる身長の術者に対応し得ることを考慮すると、例えば、身長2mの術者が立位で手術を行う場合、及び身長1.5mの術者が座位で手術を行う場合、の双方に対応し得るように、Z1−Z2が取り得る範囲は、約200(mm)<Z1−Z2<約400(mm)であることが好ましい。
また、支柱部707cに対する第2アーム707bの回転角度r2が大きいほど、顕微鏡部701を高さ方向に大きく変化させることができることになるが、当該回転角度r2には、操作性の観点から上限値を考慮する必要がある。図5には、第2アーム707bを模擬的に図示し、顕微鏡部701を移動させようとする際に第2アーム707bの先端に加わる力を太線の矢印で、当該力によって第2アーム707bが回転する方向を細線の矢印で図示している。図5(a)に示すように、回転角度r2が略0°である場合には、力の作用方向と第2アーム707bの回転方向とが略一致しているため、第2アーム707bは比較的小さい力で回転し、その結果、術者は比較的小さい力で顕微鏡部701を移動させることが可能となる。
ところが、図5(b)、(c)に示すように、回転角度r2が大きくなるにつれて、力の作用方向と第2アーム707bの回転方向とは、ずれていく。従って、回転角度r2が大きい場合には、第2アーム707bが回転し難くなり、術者は顕微鏡部701を移動させるために比較的大きい力を要することとなる。つまり、回転角度r2が過度に大きい場合には、顕微鏡部701を移動させる際の術者の操作性が低下する恐れがある。従って、術者の操作性を必要以上に低下させずに、かつ、顕微鏡部701の高さ方向の変化量を確保するために、回転角度r2の最大値をr2maxとすると、当該r2maxは、約45°<r2max<約60°の範囲を取ることが好ましい。
実際に第2アーム707bの長さ(V)を設計する場合には、上述したようなZ1−Z2が取り得る範囲及びr2maxが取り得る範囲を考慮して、具体的な長さVを設計すればよい。一例として、上記(条件2)の式に、Z1−Z2=200(mm)、r2max=45°を代入すると、約683(mm)<Vとなる。
なお、装置の小型化の観点からは、Z1−Z2=200(mm)、r2max=60°として第2アーム707bの長さ(V)が設計されることが好ましい。この場合には、約400(mm)<Vとなり、第2アーム707bの長さ(V)を最も短くすることができ、装置のより一層の小型化を図ることが可能になる。
以上、使用態様による条件について説明した。まとめると、使用態様による条件から、支持部703は、上記(条件1)−(条件3)に示す条件を満たすように構成されることが好ましい。
(2−2.可動範囲及び小型化から要請される条件)
顕微鏡装置710の支持部703には、顕微鏡部701の可動範囲が所望の範囲を満たすように構成されることが求められる。ここで、顕微鏡部701の可動範囲は、第1アーム707aの長さ(H)、第2アーム707bの長さ(V)、支柱部707cの長さ(T)、第2アーム707bに対する第1アーム707aの回転角度r1(第1の回転軸の回転角度r1)、及び支柱部707cに対する第2アーム707bの回転角度r2(第2の回転軸の回転角度r2)に依存するため、これらの値を大きくすれば、顕微鏡部701の可動範囲を大きくすることができる。しかしながら、これらの値を必要以上に大きくしてしまうと、支持部703が大型化し、装置全体の構成も大型化してしまう。上述したように、顕微鏡装置710には、電子撮像式の顕微鏡部701を光学式の顕微鏡部801よりも小型、軽量に構成することができるため、顕微鏡装置710全体の構成をより小型化することができるという利点があるため、当該利点を活かすためには、たとえより広い可動範囲を得ることができたとしても、装置が大型化することは好ましくない。
つまり、顕微鏡装置710の支持部703は、小型であることを保ちつつ顕微鏡部701が所望の可動範囲を有するように構成されることが好ましい。以下、小型であることを保ちつつ顕微鏡部701が所望の可動範囲を有するために支持部703に求められる条件(以下、便宜的に、「可動範囲及び小型化による条件」ともいう)について、より詳細に説明する。
まず、顕微鏡部701の可動範囲について説明する。本実施形態では、顕微鏡部701に求められる可動範囲を、水平方向において顕微鏡部701の対物レンズに求められる支柱部707cからの到達可能距離(以下、水平要求到達距離(WH)という)と、鉛直方向において顕微鏡部701の対物レンズに求められる床面からの到達可能距離(以下、鉛直要求到達距離(WV)という)と、によって規定する。水平要求到達距離(WH)及び鉛直要求到達距離(WV)に対応する空間上の位置を顕微鏡部701の対物レンズが通過することができれば、当該顕微鏡部701は、十分な可動範囲を有していると言える。換言すれば、顕微鏡部701が十分な可動範囲を有するためには、支持部703が、水平要求到達距離(WH)及び鉛直要求到達距離(WV)に対応する空間上の位置を顕微鏡部701の対物レンズが通過するように構成されることが好ましい。
図6及び図7を参照して、顕微鏡部701の可動範囲についてより詳細に説明する。図6は、電子撮像式の顕微鏡装置における水平要求到達距離(WH)について説明するための説明図である。図7は、電子撮像式の顕微鏡装置における鉛直要求到達距離(WV)について説明するための説明図である。
図6及び図7では、図2と同様に、術者720が、顕微鏡装置710を用いて、手術台740上に横臥している患者730に対して手術を行っている様子を図示している。なお、図6では、手術時の状況を真上から見た様子を図示しており、図7では、手術時の状況を水平方向から見た様子を図示している。また、図6では、手術を行う術者720以外にも、手術を補佐する助手721も併せて図示している。
水平要求到達距離(WH)は、顕微鏡装置710と手術台740との位置関係、より具体的には支柱部707cと手術台740との距離に基づいて、顕微鏡部701の対物レンズが術部の略直上に位置し得るように、決定される。
具体的には、図6に示すように、実際の手術時における、術者720の位置、助手721の位置、表示装置760の位置、患者730の位置(術部の位置)を想定し、現実的に顕微鏡装置710が設置され得る位置を決定する。そして、当該設置位置から、顕微鏡部701の対物レンズが術部の略直上に到達し得るように、水平要求到達距離(WH)を決定すればよい。この際、支持部703の構成をできるだけ小型にするために、可能な限り支柱部707cを手術台740に近づけて設置し、できるだけ小さい距離WHが決定されることが好ましい。
ただし、上述した術者720等の位置は、手術の態様によって変化し得る。例えば、助手721が術者720と対向する位置にいる場合には、図示するように術者から見て斜めの方向に表示装置760aが配置され得るが、助手721が術者720と対向する位置にいない場合には、術者と対向する位置に表示装置760b(図中2点鎖線で示す)が配置され得る場合も考えられる。従って、想定される手術の態様に応じて術者720等の位置を適宜変更しながら、様々な手術の態様に対応し得るように、当該距離WHが決定されることが好ましい。
支柱部707cを可能な限り手術台740に近づけて設置した場合を仮定して、一般的な手術の態様を想定して本発明者らが検討した結果、例えば、水平要求到達距離(WH)=約800(mm)を満たすように支持部703を構成することにより、少なくとも水平方向においては、あらゆる手術の態様に対応し得る位置に顕微鏡部701を移動させることができることが分かった。ただし、当該数値はあくまで一例であり、当該距離WHは、実際に行われることが想定される手術の態様に応じて適宜決定され得る。
鉛直要求到達距離(WV)は、手術台740の高さ(B)、手術台740上に横臥している患者730の鉛直方向における体高(以下、単に患者730の体高という)、及び顕微鏡部701の作動距離(WD:Working Distance)に基づいて、顕微鏡部701の対物レンズが術部の略直上において適切な映像を撮影可能な位置に配置され得るように、決定される。具体的には、当該距離WVが、手術台740の高さ(B)、患者730の体高、及び顕微鏡部701のWDの合計値と略等しくなるように、当該WVの値が決定されればよい。
図7に示すように、撮影時には、患者730(術部)及び手術台740が、鉛直方向に、顕微鏡部701の光軸上に位置することとなる。従って、手術台740の高さ(B)、患者730の体高及び顕微鏡部701のWDの合計値と略等しくなるように、当該距離WVが決定されれば、顕微鏡部701が、術部を適切に撮影し得るように配置されることとなる。実際には、斜めから術部が撮影されることも考えられるが、顕微鏡部701のWDが一定の状態で、術部を異なる角度から撮影するように顕微鏡部701を移動させた場合には、顕微鏡部701は、術部を中心とする半球上を移動することとなり、図示するように鉛直上方から術部を撮影する場合に顕微鏡部701の対物レンズの高さが最も高くなるため、当該場合でのWVを満たすように支持部703が構成されれば、他の姿勢も実現され得ることとなる。
ここで、顕微鏡部701のWDは、顕微鏡部701の下端近傍に設けられる対物レンズの焦点距離に対応しているため、当該焦点距離が可変である場合には、その焦点距離の最大値及び最小値(すなわち、WDの最大値及び最小値)も考慮して、当該距離WVが決定されることが好ましい。
手術台740の大きさ、患者730の体型、及び顕微鏡部701の光学特性として一般的なもの(例えば手術台740の高さ(B)=800(mm)等)を想定して、本発明者らが検討した結果、例えば、鉛直要求到達距離(WV)=約1600(mm)を満たすように支持部703を構成することにより、少なくとも鉛直方向において、適切な映像が撮影され得る位置に顕微鏡部701の対物レンズを移動させることができることが分かった。ただし、当該数値はあくまで一例であり、当該距離WVは、実際に用いられることが想定される手術台740の大きさや顕微鏡部701の光学特性等に応じて適宜決定され得る。
まとめると、手術台740の大きさ等の条件として一般的な条件を想定した場合に、あらゆる使用態様に対応可能な、十分な顕微鏡部701の可動範囲を実現するためには、下記(条件4)を満たすように支持部703が構成されることが好ましい。
(条件4)
顕微鏡部701の対物レンズが、WH=約800(mm)、かつWV=約1600(mm)である空間上の位置を通過する。
なお、図7に示すように、鉛直要求到達距離(WV)は、立位での手術を想定して決定される。図3を参照して上述したように、立位での手術の方が、座位での手術に比べて、手術台740の高さ(B)が高く、顕微鏡部701の使用領域の位置も高い。つまり、立位での手術の方が、座位での手術よりも、顕微鏡部701に求められる鉛直方向の可動範囲が広い(すなわち、鉛直要求到達距離(WV)が長い)。従って、立位での手術を想定して鉛直要求到達距離(WV)を求めておけば、より短い鉛直要求到達距離(WV)しか要求されない座位での手術にも対応可能である。具体的には、上述したように、座位での手術時には、顕微鏡装置710を手術台740からより離れた位置に設置し、第2アーム707bを手術台740に向かってより傾けるように支持部703の姿勢を調整することにより、顕微鏡部701をより低い位置に配置することが可能になる。
次に、支持部703の小型化について説明する。支持部703は、小型であることを保ちつつ、顕微鏡部701が上述した可動範囲を有するように構成されることが好ましい。ここで、上述したように、顕微鏡部701の可動範囲は、第1アーム707aの長さ(H)、第2アーム707bの長さ(V)、支柱部707cの長さ(T)、第2アーム707bに対する第1アーム707aの回転角度r1、及び支柱部707cに対する第2アーム707bの回転角度r2に依存する。従って、これを実現するためには、支持部703の第1アーム707aの長さ(H)、第2アーム707bの長さ(V)、支柱部707cの長さ(T)に上限値が設けられるとともに、第2アーム707bに対する第1アーム707aの回転角度r1及び支柱部707cに対する第2アーム707bの回転角度r2の可動範囲が、既存の光学式の顕微鏡装置の支持部におけるこれらの回転角度の可動範囲よりも広く設定されることが好ましい。
例えば、支持部703の各部の長さの上限値は、手術台740の近くに顕微鏡装置710を設置した場合に、当該顕微鏡装置710が、術者及び他の医療スタッフの作業の妨げにならないように決定され得る。また、回転角度r1及び回転角度r2の可動範囲は、各部の長さが決定された上限値を満たすように構成された支持部703において、顕微鏡部701が上記(条件4)に示す可動範囲を満たすように設定されればよい。
本発明者らによる検討の結果、下記(条件5)及び(条件6)を満たすように支持部703が構成されることにより、上記(条件4)に示す可動範囲を満たしつつ、比較的小型の顕微鏡装置710が実現可能であることが分かった。
(条件5)
H+V+T<約2500(mm)
(条件6)
約130°<r1+r2<約180°
好ましくは、約150°<r1+r2<約180°
更に好ましくは、約170°<r1+r2<約180°
以上、可動範囲及び小型化による条件について説明した。まとめると、可動範囲及び小型化による条件から、支持部703は、上記(条件4)−(条件6)に示す条件を満たすように構成されることが好ましい。
ここで、比較のため、図8を参照して、図1に示す光学式の顕微鏡装置810において顕微鏡部801に求められる可動範囲(すなわち、水平要求到達距離(WH)及び鉛直要求到達距離(WV))について説明する。図8は、光学式の顕微鏡装置における水平要求到達距離(WH)について説明するための説明図である。
図8では、図1と同様に、術者820が、光学式の顕微鏡装置810を用いて、手術台840上に横臥している患者830に対して手術を行っている様子を図示している。なお、図8では、手術時の状況を真上から見た様子を図示している。また、図8では、手術を行う術者820以外に、手術を補佐する助手821も併せて図示している。
図8に示すように、光学式の顕微鏡装置810では、手術台840から比較的離れた位置に顕微鏡装置810が設置されるため、水平要求到達距離(WH)は、電子撮像式の顕微鏡装置710における当該距離WH(上述した例では800(mm))よりも長くなる。また、図1を参照して上述したように、光学式の顕微鏡装置810では、支持部803の下に術者820が入り込んで手術が行われるため、鉛直要求到達距離(WV)も、電子撮像式の顕微鏡装置710における当該距離WV(上述した例では1600(mm))よりも長くなる。
このように、電子撮像式の顕微鏡装置710では、所望の可動範囲を実現するために支持部703に求められる長さが、光学式の顕微鏡装置810に比べて非常に短い。支持部703が短ければ、その分、支持部703の重量が小さくなり、カウンターウエイトも小型化することができる。従って、電子撮像式の顕微鏡装置710によれば、装置の小型化と、所望の可動範囲の確保と、を両立することが可能となるのである。
なお、参考までに、既存の光学式の顕微鏡装置810において、比較的支持部の可動範囲が広いと言われている機種では、回転角度r2に対応する関節部の可動範囲は0°〜50°程度であり、回転角度r1に対応する関節部の可動範囲は−40°〜+40°程度である。つまり、上記(条件6)に対応するように表記すれば、既存の光学式の顕微鏡装置810における回転角度の可動範囲は、r1+r2<130°程度である。このように、本実施形態では、支持部703の各部の長さを比較的短く抑えつつ、回転角度r1及び回転角度r2の可動範囲を既存の顕微鏡装置に比べて大きく設定することにより、既存の装置と同等又はそれ以上の顕微鏡部701の可動範囲を確保しつつ、装置の小型化を実現することができる。
(2−3.設置位置から要請される条件)
上述したように、電子撮像式の顕微鏡部701は、光学式の顕微鏡部801よりも小型、軽量に構成することができるため、顕微鏡装置710全体の構成をより小型化することができる。従って、顕微鏡装置710を、手術台740のより近くに設置することが可能になる。
ここで、一般的に、外科手術には、清潔域と不潔域という概念があり、清潔域の近傍に不潔な機材が配置されることは避けられなければいけない。手術台740の上は清潔域であるため、顕微鏡装置710を手術台740の近くに設置する場合には、顕微鏡装置710の顕微鏡部701及び支持部703には、袋状のドレープが被せられることになる。
しかしながら、顕微鏡装置710の全体にドレープを被せようとすると、大型のドレープが必要となってしまうため、通常は、第1アーム707a及び第2アーム707bに対応する部位にのみドレープが被せられ、支柱部707cに対応する部位は、露出していることが多い。従って、支柱部707cの長さ(T)が、手術台740の高さ(B)よりも長いと、当該支柱部707cによって清潔域が侵される恐れがある。
ここで、手術台740の上部は清潔域であるが、手術台740よりも下側の領域は不潔域である。従って、支柱部707cの長さ(T)が手術台の高さ(B)よりも短ければ、顕微鏡装置710を手術台740に接近して設置しても、当該支柱部707cによって清潔域が侵される恐れがない。換言すれば、顕微鏡装置710を手術台740のより近くに設置するためには、下記(条件7)を満たすように支持部703が構成されることが好ましい。
(条件7)
T<B
例えば、一般的に用いられる手術台740の高さ(B)は、800(mm)程度である。従って、例えば、支持部703は、好適に、支柱部707cの長さ(T)が800(mm)よりも短くなるように構成され得る。以下では、支持部703に求められる当該条件(B>T)のことを、便宜的に、「設置位置による条件」とも呼称することとする。
(2−4.条件のまとめ)
以上説明した3つの条件についてまとめる。
(使用態様による条件)
目的:
第1アーム707aを略水平に保ちつつ、立位での手術及び座位での手術の双方に対応する(顕微鏡部701の上下方向における可動範囲をより広く確保する)。
支持部に求められる条件:
(条件1)
V>H
(条件2)
Z1−Z2<V(1−cos(r2max))
(条件3)
Z2>Vcos(r2max)+T
(可動範囲及び小型化による条件)
目的:
多様な手術態様に対応し得る顕微鏡部701の可動範囲を確保しつつ、支持部703をより小型に構成する。
(条件4)
顕微鏡部701の対物レンズが、適切な映像を撮影するために要求される到達距離である、水平要求到達距離(WH)(例えば、WH=約800(mm))、及び鉛直要求到達距離(WV)(例えば、WV=約1600(mm))に対応する空間上の位置を通過する。
(条件5)
H+V+T<約2500(mm)
(条件6)
約130°<r1+r2<約180°
好ましくは、約150°<r1+r2<約180°
更に好ましくは、約170°<r1+r2<約180°
(設置位置による条件)
目的:
顕微鏡装置710を手術台740のより近くに設置しつつ、清潔域を確保する。
支持部に求められる条件:
(条件7)
T<B
本実施形態では、少なくとも上記(条件1)を満たすように支持部703が構成される。より詳細には、上記(条件2)及び上記(条件3)を更に満たすように支持部703が構成されてもよい。これにより、手術中において、第1アーム707aを略水平に保つことができるため、術者の作業空間及び術者の視界を確保することができ、術者の利便性をより向上させることができる。この際、立位での手術及び座位での手術の双方において、第1アーム707aを略水平に保つことができるため、手術態様にかかわらず、術者の作業空間及び術者の視界を確保することが可能になる。
また、顕微鏡部701が多様な術式に対応し得る所望の可動範囲を有しつつ、顕微鏡装置710をより小型に保つために、上記可動範囲及び小型化による条件(すなわち、上記(条件4)−上記(条件6))を満たすように支持部703が構成され得る。これにより、各種の術式に対応し得る十分な顕微鏡部701の可動範囲を確保しつつ、顕微鏡装置710を小型化することができるため、術者の利便性が更に向上され得る。
また、顕微鏡装置710を手術台740に近接して設置したい場合には、上記設置位置による条件(すなわち、上記(条件7))を満たすように支持部703が構成され得る。これにより、清潔域を確保しつつ、顕微鏡装置710を手術台740のより近くに設置することが可能になるため、支持部703を更に小型化することができ、装置全体の構成も更に小型化することができる。
(2−5.支持部の具体的な設計例)
本発明者らは、上記の各条件を満たし得る支持部703の構成について実際に設計を行った。ここでは、一例として、使用態様による条件、前記可動範囲及び小型化による条件、並びに上記設置位置による条件を満たすように(すなわち、上記(条件1)−上記(条件7)を満たすように)支持部120を構成する場合における設計結果について説明する。
具体的には、上記(条件2)から、第2アーム707bの長さ(V)の上限値が決定され得る。また、Vの上限値が決定されれば、上記(条件1)から第1アーム707aの長さ(H)の上限値が決定され、上記(条件3)から支柱部707cの長さ(T)の下限値が決定され得る。更に、支柱部707cの長さ(T)については、上記(条件7)から、その上限値も決定され得る。決定されたH、V、Tの範囲内において、上記(条件4)−(条件6)を満たすように具体的なH、V、Tの値を決定していく。
上記(条件7)における手術台740の高さ(B)を800(mm)とし、上記(条件4)における水平要求到達距離(WH)及び鉛直要求到達距離(WV)をWH=800(mm)、WV=1600(mm)として、実際に本発明者らが支持部703を設計した結果、第1アーム707aの長さ(H)、第2アーム707bの長さ(V)及び支柱部707cの長さ(T)について、概ね以下の関係が満たされ得ることが分かった。
H+V+T>約2000(mm)
H<T<V
約800(mm)<V<約1000(mm)
約600(mm)<H<約800(mm)
なお、上記の2000(mm)という数値は、顕微鏡部701に求められる最低限の可動範囲を実現し得るように算出されたものである。マージンを考慮して、より広い可動範囲を得ようとする場合には、H+V+Tの下限値はより大きい値になり得る。例えば、本発明者らによる検討の結果、より多様な使用態様に対応し得るように顕微鏡部701についてより広い可動範囲を実現しようとする場合には、H+V+T>約2100(mm)を満たすように支持部703が構成されることが好ましいことが分かった。更に継続して検討を行った結果、更に自由度の高い顕微鏡部701の移動を実現するためには、例えば、H+V+T>約2200(mm)を満たすように支持部703が構成されることがより好ましいことが分かった。
以上、本発明者らが、上記の各条件を満たし得る支持部703の構成について実際に設計を行った結果について説明した。
(3.顕微鏡装置の構成例)
図9を参照して、以上説明した(条件1)−(条件7)を満たし得る、本実施形態に係る顕微鏡装置の具体的な構成例について説明する。図9は、本実施形態に係る顕微鏡システムの一構成例を示す図である。
図9を参照すると、本実施形態に係る顕微鏡システム1は、顕微鏡部110を支持し、当該顕微鏡部110によって患者の術部を撮影する顕微鏡装置10と、顕微鏡装置10によって撮影された術部の映像を表示する表示装置20と、から構成される。手術時には、術者は、顕微鏡装置10によって撮影され表示装置20に表示された映像を参照しながら、術部を観察し、当該術部に対して各種の処置を行う。
(表示装置)
表示装置20は、上述したように、顕微鏡装置10によって撮影された患者の術部の映像を表示する。表示装置20は、例えば手術室の壁面等、術者によって視認され得る場所に設置される。表示装置20の種類は特に限定されず、表示装置20としては、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ装置等、公知の各種の表示装置が用いられてよい。なお、後述するように、撮像部111がステレオカメラとして構成される場合、及び/又は高解像度の撮影に対応したものである場合には、表示装置20としては、それぞれに対応して、3D表示可能なもの、及び/又は高解像度の表示が可能なものが用いられ得る。また、表示装置20は、必ずしも手術室内に設置されなくてもよく、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)や眼鏡型のウェアラブルデバイスのように、術者が身に付けて使用するデバイスに搭載されてもよい。
(顕微鏡装置)
顕微鏡装置10は、患者の術部を拡大観察するための顕微鏡部110と、顕微鏡部110を保持する支持部120(アーム部120)と、支持部120の一端が接続され顕微鏡部110及び支持部120を支持するベース部130と、顕微鏡装置10の動作を制御する制御装置140と、を備える。顕微鏡装置10は、手術中に患者の術部を拡大観察するための手術用顕微鏡装置である。
(ベース部130)
ベース部130は、顕微鏡部110及び支持部120を支持する。ベース部130は板状の形状を有する架台131と、架台131の下面に設けられる複数のキャスター132と、を有する。架台131の上面に支持部120の一端が接続され、架台131から延伸される支持部120の他端(先端)に顕微鏡部110が接続される。また、顕微鏡装置10は、キャスター132を介して床面と接地し、当該キャスター132によって床面上を移動可能に構成されている。
(顕微鏡部110)
顕微鏡部110は、患者の術部を拡大観察するための顕微鏡鏡体によって構成される。図示する例では、顕微鏡部110の光軸方向は、z軸方向と略一致している。顕微鏡部110は、電子撮像式の顕微鏡に対応する構成を有しており、略円筒形状を有する筒状部112と、筒状部112内に設けられる撮像部111と、から構成される。また、撮像部111は、対物レンズ、ズームレンズ等の光学系と、当該光学系を通過した光により被写体(すなわち術部)の像を撮影する撮像素子と、から構成される。なお、顕微鏡部110の光軸方向の長さ(より厳密には、後述する第1アーム290aと顕微鏡部110との接続部から、当該顕微鏡部110の下端までの長さ)は、例えば210mm程度以下、より好ましくは200mm程度以下である。
筒状部112の下端の開口面には、撮像部111を保護するためのカバーガラスが設けられる。筒状部112の内部には、光源も設けられており、撮影時には、当該光源からカバーガラス越しに被写体に対して照明光が照射される。当該照明光の被写体での反射光が、カバーガラスを介して撮像部111に入射することにより、当該撮像部111によって術部の映像に係る信号(映像信号)が取得される。
顕微鏡部110としては、各種の公知の電子撮像式の顕微鏡部に対応する構成が適用されてよいため、ここではその詳細な説明は省略する。例えば、撮像部111の撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal−Oxide−Semiconductor)センサ等の各種の公知の撮像素子が適用されてよい。また、撮像部111は、1対の撮像素子を備えた、いわゆるステレオカメラとして構成されてもよい。この場合、撮像部111によって撮影された映像の3D表示が可能になる。また、撮像部111は、4K以上(例えば4K(水平画素数3840×垂直画素数2160)又は8K(水平画素数7680×垂直画素数4320)等)の高解像度の撮影に対応し得るように構成されてもよい。この場合、術部の様子をより鮮明に表示装置20に表示することができ、円滑な手術の実行が可能になる。なお、撮像部111が高解像度の撮影に対応可能なものである場合、表示装置20として55インチ以上のサイズのものを用いることで一層の没入感が得られる。また、撮像部111の光学系についても、各種の公知の構成が適用され得る。更に、撮像部111には、AF(Auto Focus)機能や光学ズーム機能等の、一般的に電子撮像式の顕微鏡部に備えられる各種の機能が搭載され得る。
顕微鏡部110によって取得された映像信号は制御装置140に送信され、当該制御装置140において、例えばガンマ補正やホワイトバランスの調整等の各種の画像処理が行われる。また、制御装置140においては、電子ズーム機能に係る拡大、画素間補正等の画像処理が更に行われてもよい。画像処理が施された映像信号が手術室に設けられる表示装置20に送信され、当該表示装置20に術部の映像が、例えば光学ズーム機能及び/又は電子ズーム機能によって所望の倍率に適宜拡大されて表示される。なお、制御装置140と表示装置20との間の通信は、有線又は無線の公知の各種の方式で実現されてよい。
なお、顕微鏡部110に、上記の画像処理を行うための処理回路が設けられていてもよく、上記の画像処理は、制御装置140によって行われず、顕微鏡部110の当該処理回路によって行われてもよい。この場合、顕微鏡部110に搭載される処理回路において適宜画像処理が施された後の画像情報が、顕微鏡部110から手術室に設けられる表示装置20に送信され得る。また、この場合、顕微鏡部110と表示装置20との間の通信は、有線又は無線の公知の各種の方式で実現されてよい。
顕微鏡部110には、顕微鏡部110の動作を制御するための各種のスイッチが設けられる。例えば、顕微鏡部110には、当該顕微鏡部110の撮影条件を調整するためのズームスイッチ151(ズームSW151)及びフォーカススイッチ152(フォーカスSW152)、並びに、支持部120の動作モードを変更するための動作モード変更スイッチ153(動作モード変更SW153)が設けられる。
術者は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作することにより、顕微鏡部110の倍率及び焦点距離を、それぞれ調整することができる。また、術者は、動作モード変更SW153を操作することにより、支持部120の動作モードを、固定モード及びフリーモードのいずれかに切り替えることができる。
ここで、固定モードは、支持部120に設けられる各回転軸における回転がブレーキにより規制されることにより、顕微鏡部110の位置及び姿勢が固定される動作モードである。フリーモードは、ブレーキが解除されることにより、支持部120に設けられる各回転軸における回転が自由に可能な状態であり、術者による直接的な操作によって顕微鏡部110の位置及び姿勢を調整可能な動作モードである。ここで、直接的な操作とは、術者が例えば手で顕微鏡部110を把持し、当該顕微鏡部110を直接移動させる操作のことを意味する。例えば、術者が動作モード変更SW153を押下している間は支持部120の動作モードがフリーモードとなり、術者が動作モード変更SW153から手を離している間は支持部120の動作モードが固定モードとなる。
なお、これらのスイッチは必ずしも顕微鏡部110に設けられなくてもよい。本実施形態では、これらのスイッチと同等の機能を有する、操作入力を受け付けるための機構が顕微鏡装置10に設けられればよく、当該機構の具体的な構成は限定されない。例えば、これらのスイッチは、顕微鏡装置10の他の部位に設けられてもよい。また、例えば、リモコン等の入力装置を用いて、これらのスイッチに対応する命令が、遠隔的に顕微鏡装置10に対して入力されてもよい。
また、簡単のため、図9では顕微鏡部110の筒状部112を簡易的に単純な円筒形状の部材として図示しているが、実際には、筒状部112は、術者によって把持されやすいようにその形状が工夫されていてよい。例えば、フリーモード時には、術者が筒状部112を直接手で握った状態で、顕微鏡部110を移動させる操作が想定され得る。この際、術者は、動作モード変更SW153を押下しながら、顕微鏡部110を移動させる操作を行うこととなるため、筒状部112の形状及び動作モード変更SW153の配置位置は、フリーモード時の術者の操作性を考慮して適宜決定され得る。また、ズームSW151及びフォーカスSW152の配置位置も、同様に、術者の操作性を考慮して適宜決定されてよい。
(制御装置140)
制御装置140は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Pocessor)等のプロセッサ、又はこれらのプロセッサと記憶素子等がともに搭載された制御基板等によって構成され、所定のプログラムに従った演算処理を実行することにより、顕微鏡装置10の動作を制御する。
例えば、制御装置140は、上記動作モード変更SW153を介した術者の操作入力に応じて、支持部120の各関節部に設けられるブレーキの駆動を制御することにより、上述した支持部120の動作モードを切り替える機能を有する。また、例えば、制御装置140は、上記ズームSW151及びフォーカスSW152を介した術者の操作入力に応じて、顕微鏡部110の撮像部111の光学系を適宜駆動させ、顕微鏡部110の倍率及び焦点距離を調整する機能を有する。また、制御装置140は、顕微鏡部110によって撮影された映像信号に対して、各種の画像処理を施し、処理後の映像信号を手術室に設けられる表示装置20に送信する機能を有する。
なお、図示する例では、制御装置140は、顕微鏡部110、支持部120及びベース部130とは異なる構成として設けられ、ケーブルによってベース部130と接続されているが、本実施形態はかかる例に限定されない。例えば、制御装置140と同様の機能を実現するプロセッサや制御基板等が、ベース部130内に配置されてもよい。また、制御装置140と同様の機能を実現するプロセッサや制御基板等が顕微鏡部110の内部に組み込まれることにより、制御装置140と顕微鏡部110とが一体的に構成されてもよい。
(支持部120)
支持部120は、顕微鏡部110を保持し、顕微鏡部110を3次元的に移動させるとともに、移動後の顕微鏡部110の位置及び姿勢を固定する。本実施形態では、支持部120は、6自由度を有するバランスアームとして構成されている。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、支持部120は他の異なる数の自由度を有するように構成されてもよい。支持部120をバランスアームとして構成し、顕微鏡部110及び支持部120全体としてモーメントの釣り合いが取れた構成とすることにより、より小さい外力で顕微鏡部110を移動させることが可能となり、術者の操作性をより向上させることができる。
支持部120には、6自由度に対応する6つの回転軸(第1軸O1、第2軸O2、第3軸O2、第4軸O4、第5軸O5及び第6軸O6)が設けられる。以下では、説明のため便宜的に、各回転軸を構成する部材をまとめて、回転軸部と呼称することとする。例えば、回転軸部は、軸受、当該軸受に回動可能に挿通されるシャフト、及び回転軸における回転を規制するブレーキ等によって構成され得る。後述する平行四辺形リンク機構240も、回転軸部の一つとみなすことができる。
支持部120は、各回転軸に対応する第1回転軸部210、第2回転軸部220、第3回転軸部230、第4回転軸部240、第5回転軸部250、第6回転軸部260と、これら第1回転軸部210〜第6回転軸部260によって互いに回動可能に接続される第1アーム部271、第2アーム部272、第3アーム部273及び第4アーム部274と、顕微鏡部110及び支持部120全体としてのモーメントの釣り合いを取るためのカウンターウエイト280と、によって構成される。ただし、第4回転軸部240は平行四辺形リンク機構240に対応する。
第1回転軸部210は、略円筒形状を有し、その中心軸が顕微鏡部110の筒状部112の中心軸と略一致するように、顕微鏡部110の筒状部112の基端部に接続される。第1回転軸部210は、顕微鏡部110の光軸と略一致する方向を回転軸方向(第1軸O 1方向)として、顕微鏡部110を回動可能に支持する。図9に示す例では、第1軸O1は、z軸と略平行な回転軸として設けられている。第1回転軸部210によって第1軸O 1まわりに顕微鏡部110が回動することにより、顕微鏡部110による撮像画像の向きが調整されることとなる。
なお、図示する例では、第1回転軸部210を構成する円筒形状の筐体内に、顕微鏡部110の撮像部111の一部が格納されている。すなわち、顕微鏡部110及び第1回転軸部210が一体的な部材として構成されている。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、第1回転軸部210及び顕微鏡部110は、互いに別個の部材として構成されてもよい。
第1回転軸部210には、第1軸O1とは略垂直な方向に延伸する第1アーム部271の先端が接続される。また、第1アーム部271の基端には、当該第1アーム部271の延伸方向と略平行な方向を回転軸方向(第2軸O2方向)として第1アーム部271を回動可能に支持する第2回転軸部220が設けられる。第2軸O2は、第1軸O1とは略垂直な回転軸であり、図9に示す例ではy軸と略平行な回転軸として設けられている。第2回転軸部220によって、第2軸O2を回転軸として顕微鏡部110及び第1アーム部271が回動することにより、顕微鏡部110のx軸方向の位置が調整されることとなる。
第2回転軸部220には、第1軸O1及び第2軸O2と互いに略垂直な方向に延伸する第2アーム部272の先端が接続される。また、第2アーム部272の基端側は略L字状に屈曲しており、折り曲げられた短辺に当たる位置に、当該第2アーム部272の長辺に当たる部位の延伸方向と略平行な方向を回転軸方向(第3軸O3方向)として第2アーム部272を回動可能に支持する第3回転軸部230が設けられる。第3軸O3は、第1軸O1及び第2軸O2と略垂直な回転軸であり、図9に示す例ではx軸と略平行な回転軸として設けられている。第3回転軸部230によって、第3軸O3を回転軸として顕微鏡部110、第1アーム部271及び第2アーム部272が回動することにより、顕微鏡部110のy軸方向の位置が調整されることとなる。
このように、支持部120は、第2軸O2及び第3軸O3まわりの回転がそれぞれ制御されることにより、顕微鏡部110の姿勢が制御されるように構成される。つまり、第2回転軸部220及び第3回転軸部230は、顕微鏡部110の姿勢を規定する回転軸部であり得る。
第3回転軸部230の基端側には、平行四辺形リンク機構240の上辺の先端が接続される。平行四辺形リンク機構240は、平行四辺形の形状に配置される4つのアーム(アーム241、242、243、244)と、当該平行四辺形の略頂点に対応する位置にそれぞれ設けられる4つの関節部(関節部245、246、247、248)と、によって構成される。
第3回転軸部230に対して、第3軸O3と略平行な方向に延伸するアーム241の先端が接続される。アーム241の先端付近には関節部245が、基端付近には関節部246がそれぞれ設けられる。関節部245、246には、アーム241の延伸方向と略垂直な互いに略平行な回転軸(第4軸O4)まわりに回動可能に、それぞれ、アーム242、243の先端が接続される。更に、アーム242、243の基端には、それぞれ、関節部247、248が設けられる。これら関節部247、248には、第4軸O4まわりに回動可能に、かつ、アーム241に対して略平行に、アーム244の先端及び基端がそれぞれ接続される。
このように、平行四辺形リンク機構240を構成する4つの関節部は、互いに略平行な略同一方向の回転軸(第4軸O4)を有し、当該第4軸O4まわりに互いに連動して動作する。図9に示す例では、第4軸O4は、y軸と略平行な回転軸として設けられている。つまり、平行四辺形リンク機構240は、互いに異なる位置に配置され同一方向の回転軸で互いに連動して回転する複数の関節部を有するように構成され、一端での動作を他端に伝達する伝達機構として振る舞う。平行四辺形リンク機構240が設けられることにより、平行四辺形リンク機構240よりも先端側の構成(すなわち、顕微鏡部110、第1回転軸部210、第2回転軸部220、第3回転軸部230、第1アーム部271及び第2アーム部272)の動きが、平行四辺形リンク機構240の基端側に伝達されることとなる。
アーム242の基端から所定の距離離れた部位には、当該アーム242の延伸方向と垂直な方向を回転軸方向(第5軸O5方向)として、平行四辺形リンク機構240を回動可能に支持する第5回転軸部250が設けられる。第5軸O5は、第4軸O4と略平行な回転軸であり、図9に示す例ではy軸と略平行な回転軸として設けられている。第5回転軸部250には、z軸方向に延設する第3アーム部273の先端が接続されており、顕微鏡部110、第1アーム部271、第2アーム部272及び平行四辺形リンク機構240は、第5回転軸部250を介して、第5軸O5を回転軸として第3アーム部273に対して回動可能に構成される。
第3アーム部273は略L字型の形状を有しており、その基端側は、床面と略平行になるように折り曲げられている。第3アーム部273の当該床面と略平行な面には、第5軸O5と直交する回転軸(第6軸O6)まわりに第3アーム部273を回動可能な第6回転軸部260が接続される。図9に示す例では、第6軸O6は、z軸と略平行な回転軸として設けられている。
図示する例では、第6回転軸部260は、鉛直方向に延伸する第4アーム部274と一体的に構成されている。すなわち、第4アーム部274の先端が、第3アーム部273の基端の床面と略平行な面に接続される。また、第4アーム部274の基端は、ベース部130の架台131の上面に接続される。当該構成により、第6回転軸部260を介して、顕微鏡部110、第1アーム部271、第2アーム部272、平行四辺形リンク機構240及び第3アーム部273が、第6軸O6を回転軸としてベース部130に対して回動する。
平行四辺形リンク機構240の下辺を構成するアーム244は、上辺を構成するアーム241よりも長尺に形成されており、当該アーム242の、平行四辺形リンク機構240の第3回転軸部230が接続される部位と対角に位置する端は、平行四辺形リンク機構240の外部に延出されている。延出されたアーム244の端には、カウンターウエイト280が設けられる。カウンターウエイト280は、自身よりも先端側に配置される各構成(すなわち、顕微鏡部110、第1回転軸部210、第2回転軸部220、第3回転軸部230、第1アーム部271、第2アーム部272及び平行四辺形リンク機構240)の質量によって、第4軸O4まわりに発生する回転モーメント及び第5軸O5まわりに発生する回転モーメントを相殺可能なように、その質量及び配置位置が調整されている。
また、第5回転軸部250の配置位置は、当該第5回転軸部250よりも先端側に配置される各構成の重心が第5軸O5上に位置するように調整されている。更に、第6回転軸部260の配置位置は、当該第6回転軸部260よりも先端側に配置される各構成の重心が第6軸O6上に位置するように調整されている。
カウンターウエイト280の質量及び配置位置、第5回転軸部250の配置位置、及び第6回転軸部260の配置位置がこのように構成されることにより、支持部120は、顕微鏡部110及び支持部120全体としてモーメントの釣り合いが取れたバランスアームとして構成され得る。支持部120をバランスアームとして構成することにより、術者が顕微鏡部110を直接的な操作によって移動させようとした場合に、あたかも無重力下であるかのようなより小さい外力で当該顕微鏡部110を移動させることが可能となる。従って、ユーザの操作性を向上させることができる。
なお、カウンターウエイト280は着脱可能であってよい。例えば、互いに異なる質量を有するいくつかの種類のカウンターウエイト280が準備されており、平行四辺形リンク機構240よりも先端側に配置される構成が変更された場合には、当該変更に応じて、回転モーメントを相殺し得るカウンターウエイト280が適宜選択されてよい。
支持部120の第1回転軸部210〜第6回転軸部260には、それぞれ、第1回転軸部210〜第6回転軸部260における回転を規制するブレーキが設けられる。なお、平行四辺形リンク機構240は、4つの関節部(関節部245〜248)が互いに連動して回転するため、平行四辺形リンク機構240に対するブレーキは、これら4つの関節部の少なくともいずれかに設けられればよい。これらのブレーキの駆動は、制御装置140によって制御される。制御装置140からの制御により、これらのブレーキが一斉に解除されることにより、支持部120の動作モードがフリーモードに移行する。また、同じく制御装置140からの制御により、これらのブレーキが一斉に駆動されることにより、支持部120の動作モードが固定モードに移行する。
なお、第1回転軸部210〜第6回転軸部260に設けられるブレーキとしては、一般的なバランスアームに用いられる各種のブレーキが適用されてよく、その具体的な機構は限定されない。例えば、これらのブレーキは、機械的に駆動するものであってもよいし、電気的に駆動する電磁ブレーキであってもよい。
ここで、顕微鏡装置10の支持部120においては、第1アーム部271から平行四辺形リンク機構240の上辺(アーム241)の関節部245までに対応する構成が第1アーム290a、平行四辺形リンク機構240の上辺(アーム241)から第5回転軸部250までに対応する構成が第2アーム290b、及び第5回転軸部250から第4アーム部274の基端までの構成が支柱部290cに対応する。
本実施形態では、これら第1アーム290a、第2アーム290b及び支柱部290cが、少なくとも上記(条件1)(すなわち、V>H)を満たすように、支持部120が構成される。また、支持部120は、他の(条件2)−(条件7)を更に満たすように、構成されてもよい。これにより、顕微鏡装置10は、上記(2.本実施形態に係る顕微鏡装置の支持部の設計思想)で説明したような各効果を奏するように構成され得る。なお、これらの条件について議論する際に、図9に示す構成においては、支柱部290cの長さ(T)は、床面から第5回転軸部250までの距離を意味している。
以上、図9を参照して、本実施形態に係る顕微鏡装置10の具体的な構成例について説明した。ただし、本実施形態に係る顕微鏡装置10の構成はかかる例に限定されない。顕微鏡装置10は、上述した各条件を満たすように構成されればよく、その具体的な構成は任意であってよい。
(4.顕微鏡装置の使用例)
図10−図12を参照して、以上説明した顕微鏡装置10の使用例について説明する。なお、図10−図12では、簡単のため、図9に示す顕微鏡装置10を簡略化して図示している。
(4−1.立位での手術における使用例)
まず、図10を参照して、立位での手術における顕微鏡装置10の使用例について説明する。図10は、本実施形態に係る顕微鏡装置10を用いた立位での手術の様子を示す図である。
図10を参照すると、術者320が、顕微鏡装置10を用いて、手術台340上に横臥している患者330に対して、立位で手術を行っている様子が図示されている。手術時には、顕微鏡装置10の顕微鏡部110によって患者330の術部が撮影され、撮影された術部の映像が表示装置20に表示される。術者320は、当該表示装置20に映し出された術部の映像を観察しながら手術を行う。
立位での手術は、例えば整形外科や心臓外科等の診療科において主に行われる。立位での手術では、術者320の作業空間が比較的広く確保されることが多い。そのため、術部を撮影する顕微鏡部110も、比較的高い位置に配置される。
手術を開始する際には、キャスターを使用して、顕微鏡装置10全体を手術台340の近くに移動させる。この際、顕微鏡装置10は、できるだけ手術台340の近くに位置するように配置される。本実施形態では、顕微鏡装置10は小型に構成され得るため、手術台340の近くに配置されても、術者320等の作業の妨げにはなり難い。また、顕微鏡装置10では、支柱部290cの長さ(T)が、手術台340の高さ(B)よりも短くなるように構成され得るため、顕微鏡装置10が手術台340の近くに配置されても、手術台340の上部の清潔域が侵される危険性がない。なお、立位での手術に用いられる手術台340の高さ(B)は、例えば、800(mm)程度である。
次いで、術者320は、顕微鏡部110の把持部を握りながら、動作モード変更SW153を押下して、第1回転軸部210〜第6回転軸部260に設けられるブレーキを解除し、フリー動作モード、すなわち、顕微鏡部110を自由に移動可能な状態にする。術者320は、表示装置20に表示される顕微鏡部110によって撮影された映像を観察しながら、術部に顕微鏡部110の視野が合うように顕微鏡部110を移動させた後、動作モード変更SW153を離して(すなわち、動作モードを固定モードに変更して)顕微鏡部110及び支持部120の姿勢を固定する。この際、顕微鏡装置10では、顕微鏡部110の可動範囲が所望の可動範囲を満足するように支持部120が構成され得るため、術者320は、所望の映像が得られる位置に顕微鏡部110を移動させることができる。
ここで、顕微鏡装置10は、第2アーム290bの長さ(V)が第1アーム290aの長さ(H)よりも長くなるように構成されているため、顕微鏡装置10を手術台340の近くに配置し、第2アーム290bを垂直に近い姿勢にすることにより、第1アーム290aを略水平に保ちつつ、顕微鏡部110をより高い位置に配置することができる。つまり、立位での手術における使用領域に、顕微鏡部110を配置することができる。また、第1アーム290aが略水平に保たれるため、当該第1アーム290aが術者320の作業空間及び術者320の視界に干渉せず、当該作業空間及び当該視界が好適に確保され得る。このように、顕微鏡装置10によれば、第2アーム290bの長さ(V)が第1アーム290aの長さ(H)よりも長くなるように支持部120が構成されることにより、立位での手術において十分な作業空間が確保され得るより高い位置に顕微鏡部110を配置させつつ、術者320の作業空間及び術者320の視界を確保することが可能になる。
顕微鏡部110及び支持部120の姿勢が固定された状態で、術者320は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作して、顕微鏡部110によって撮影される映像の倍率及び焦点距離の調整を行う。術者320は、調整後の映像を観察しながら、処置を開始する。
以上、図10を参照して、立位での手術における顕微鏡装置10の使用例について説明した。
(4−2.座位での手術における使用例)
次に、図11を参照して、座位での手術における顕微鏡装置10の使用例について説明する。図11は、本実施形態に係る顕微鏡装置10を用いた座位での手術の様子を示す図である。
図11を参照すると、術者320が、顕微鏡装置10を用いて、手術台340上に横臥している患者330に対して、座位で手術を行っている様子が図示されている。なお、座位での手術においては、立位での手術に対して顕微鏡装置10の設置位置及び支持部120の姿勢が異なるだけであり、その他の手順は立位での手術と同様である。従って、以下の座位での手術における顕微鏡装置10の使用例についての説明では、立位での手術と重複する事項については詳細な説明を省略し、相違する事項についてのみ主に説明することとする。
座位での手術は、例えば脳神経外科等の診療科において主に行われる。座位での手術では、術者320は座った姿勢で手術を行うため、手術台340の高さ(B)が立位の場合よりも低く、術部を撮影する顕微鏡部110も、比較的低い位置に配置されることとなる。すなわち、座位での手術では、立位での手術に比べて、顕微鏡部110の使用領域がより低い位置になる。なお、座位での手術に用いられる手術台340の高さ(B)は、例えば、600(mm)程度である。
手術を開始する際には、キャスターを使用して、顕微鏡装置10全体を手術台340の近くに移動する。この際、顕微鏡装置10は、立位での手術のときよりも手術台340から遠い位置に設置される。
次いで、術者320は、立位での手術と同様に、表示装置20を観察しながら術部に顕微鏡部110の視野が合うように顕微鏡部110を移動させ、顕微鏡部110及び支持部120の姿勢を固定する。ここで、顕微鏡装置10は、第2アーム290bの長さ(V)が第1アーム290aの長さ(H)よりも長くなるように構成されているため、顕微鏡装置10を手術台340から離れた位置に配置し、第2アーム290bを手術台340に向かって傾けるように支持部120の姿勢を調整することにより、第1アーム290aを略水平に保ちつつ、顕微鏡部110をより低い位置、すなわち座位での手術での使用領域に対応する位置に配置することができる。
このように、本実施形態によれば、第2アーム290bの長さ(V)が第1アーム290aの長さ(H)よりも長くなるように支持部120が構成されるため、顕微鏡装置10と手術台340との距離(すなわち、支柱部290cと手術台340との距離)を適宜調整することにより、第1アーム290aを略水平に保ちつつ、異なる高さに顕微鏡部110を配置させることが可能になる。従って、使用領域の高さが互いに異なる立位での手術及び座位での手術の双方に対応することが可能になる。立位での手術及び座位での手術のいずれの場合においても、第1アーム290aが略水平に保たれるため、手術の態様によらず術者320の作業空間及び術者320の視界を確保することが可能になる。
顕微鏡部110及び支持部120の姿勢が固定されたら、術者320は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作して、顕微鏡部110によって撮影される映像の倍率及び焦点距離の調整を行う。術者320は、調整後の映像を観察しながら、処置を開始する。
以上、図11を参照して、座位での手術における顕微鏡装置10の使用例について説明した。
なお、手術に使用していない場合、すなわち格納時には、図12に示すように、支持部120が折り畳まれた状態(第1アーム707aを第2アーム707bに向かって可能な限り回転させた状態)にして、顕微鏡装置10を所定のスペースに格納すればよい。図12は、格納時における本実施形態に係る顕微鏡装置10の状態の一例を示す図である。顕微鏡装置10は、第2アーム707bの長さ(V)が第1アーム707aの長さ(H)よりも長くなるように構成されるため、支持部120は、その高さ(鉛直方向の長さ)は比較的高く、幅(水平方向の長さ)は比較的小さくなるように構成されている。従って、支持部120が折り畳まれた状態にすることにより、支持部120の幅を更に小さくすることができ、顕微鏡装置10を小さいスペースに格納することが可能になる。
(5.変形例)
以上説明した実施形態に関する、いくつかの変形例について説明する。
(5−1.支持部に回転軸部が追加された変形例)
図13を参照して、支持部に回転軸部が追加された変形例に係る顕微鏡装置の構成について説明する。図13は、支持部に回転軸部が追加された変形例に係る顕微鏡装置の一構成例を示す図である。なお、図13に示す本変形例に係る顕微鏡装置は、図9を参照して説明した顕微鏡装置10に対して、後述する第7回転軸部270が追加されたものに対応する。従って、以下の本変形例についての説明では、上述した実施形態と重複する事項については詳細な説明を省略し、相違する事項についてのみ主に説明することとする。
図13を参照すると、本変形例に係る顕微鏡装置10aは、図9に示す顕微鏡装置10に対して、第1軸O1〜第6軸O6以外の更なる回転軸(第7軸O7)が設けられたものに対応する。具体的には、顕微鏡装置10aの支持部120aでは、平行四辺形リンク機構240の略鉛直方向に延伸するアーム242が、その延伸方向において2つの部材(アーム242a及びアーム242b)に分割されている。そして、アーム242の先端側を構成するアーム242aの基端と、アーム242の基端側を構成するアーム242bの先端との間に、当該アーム242の延伸方向を回転軸方向(第7軸O7)とする第7回転軸部270が設けられる。
このように、本変形例に係る顕微鏡装置10aは、上述した実施形態に係る顕微鏡装置10に対して、第2アーム290bと支柱部290cとの接続部位に対応する位置に、第7回転軸部270が設けられたものに対応する。
第7回転軸部270は、アーム242aを、アーム242bに対して回動可能に支持する。第7回転軸部270によってアーム242aが第7軸O7まわりに回転させられることにより、アーム242は、その延伸方向に沿って捻じれるように動作する。つまり、第7回転軸部270は、第2アーム290bを、当該第2アーム290bの延伸方向と平行な回転軸まわりに回動可能に支持する回転軸部であり、当該第7回転軸部270によって、第2アーム290bの当該第7回転軸部270が設けられる部位から先の構成及び第1アーム290aが、第2アーム290bの延伸方向に沿って捻じれるように動作することとなる。
本変形例では、第7回転軸部270に設けられるブレーキは、動作モード変更SW153に対する操作にかかわらず、常に動作した状態であり得る。従って、上記(4−1.立位での手術における使用例)及び(4−2.座位での手術における使用例)で説明したような、通常の手順で手術が行われている場合には、第7回転軸部270での回転は生じない。
第7回転軸部270には、第7回転軸部270のブレーキを操作するための第7軸操作スイッチ276(第7軸操作SW276)が設けられる。そして、当該第7軸操作SW276が術者によって押下されることにより、第7回転軸部270のブレーキが解除される。例えば、固定モードにおいて、術者は、第7軸操作SW276を押下しながら、第1アーム290a及び/又は第2アーム290bを第7軸O7まわりに回転させることにより、顕微鏡部110の位置は固定された状態で、支持部120aの姿勢を適宜変更することができる。
例えば、手術時に顕微鏡部110の配置が決定された状態において、支持部120aの姿勢によっては、第1アーム290aが表示装置20を観察する術者の妨げになったり、第2アーム290bが術者の近くに配置されてしまい術者の作業の妨げになる場合がある。このような場合に、術者が、第7軸操作SW276を操作して、アーム242aを第7軸O7まわりに回転させ、第2アーム290bの先端側の構成及び第1アーム290aを捻じるように移動させることにより、術者の妨げにならないように、第2アーム290b及び第1アーム290aの位置を変更することができる。第2アーム290b及び第1アーム290aの移動が終わったら、第7軸操作SW276から手を離し、第7回転軸部270を固定する。これにより、支持部120aの姿勢が固定されるため、術者は、術部に対する処置を開始することができる。
以上、図13を参照して、支持部120aに回転軸部(第7回転軸部270)が追加された変形例に係る顕微鏡装置10aの構成について説明した。以上説明したように、本変形例によれば、術部に顕微鏡部110の視野が合うように顕微鏡部110を移動させ、顕微鏡部110の配置を決定した後に、必要に応じて、術者の妨げにならないように、支持部120aの姿勢を適宜変更することが可能になる。従って、術者にとってより利便性の高い顕微鏡装置10aが提供され得る。
(5−2.ベース部に電装部が搭載された変形例)
図14を参照して、ベース部に電装部が搭載された変形例に係る顕微鏡装置の構成について説明する。図14は、ベース部に電装部が搭載された変形例に係る顕微鏡装置の一構成例を示す図である。なお、図14に示す本変形例に係る顕微鏡装置は、図9を参照して説明した顕微鏡装置10に対して、後述する電装部133が追加されたものに対応する。従って、以下の本変形例についての説明では、上述した実施形態と重複する事項については詳細な説明を省略し、相違する事項についてのみ主に説明することとする。なお、簡単のため、図14では、図10−図12にならって、顕微鏡装置の構成を簡略化して図示している。
図14を参照すると、本変形例に係る顕微鏡装置10bは、図9に示す顕微鏡装置10に対して、ベース部130の構成が変更されたものに対応する。具体的には、顕微鏡装置10bのベース部130aは、板状の形状を有する架台131と、架台131の下面に設けられる複数のキャスター132と、架台131の上面に搭載される電装部133と、を有する。
電装部133は、例えば制御基板等によって構成され、図9に示す顕微鏡装置10における制御装置140と同様の機能を有する。つまり、顕微鏡装置10bは、図9に示す制御装置140が、ベース部130aと一体的に構成されたものであると言える。電装部133は、例えば、各回転軸部におけるブレーキの制御や、顕微鏡部110における撮像部111の駆動制御、及び/又は、顕微鏡部110によって取得された映像信号に対する信号処理(すなわち画像処理)等、上述した実施形態において制御装置140が行っていた各種の処理を実行可能である。
ここで、電装部133は、架台131の後方側(支持部120においてカウンターウエイトが設けられる側)の高さが比較的高く、架台131の前方側(支持部120において顕微鏡部110が設けられる側)の高さが比較的低くなるように構成される。そして、顕微鏡装置10bでは、支柱部290cは、架台131の前方側の電装部133の高さがより低い部位に、当該電装部133の上面に基端が接続されるように、配置される。つまり、顕微鏡装置10bでは、上述した実施形態に比べて、架台131のより前方側に支柱部290cの基端が接続され得る。なお、図示する構成例では、架台131の全面に電装部133が設けられているが、電装部133が架台131の後方側にのみ設けられ、架台131の前方側において、架台131の上面に対して直接支柱部290cの基端が接続されてもよい。
当該構成により、顕微鏡装置10bを用いて手術を行う際には、架台131の上面の略中央に支柱部290cの基端が接続されている構成よりも、支柱部290cが手術台の近くに配置されることとなる。従って、第1アーム290aの長さ(H)をより短くすることができ、装置の更なる小型化を図ることができる。
また、制御装置140の機能を実現する電装部133をベース部130aに搭載することにより、図9に示す構成のように、制御装置140をベース部130から離隔して設ける必要がなく、顕微鏡装置10bの構成を小型化することができる。この際、支柱部290cを架台131の前方側に移動させ、空いた領域である後方側に電装部133の多くの構成が搭載されるように、ベース部130aが構成されるため、支持部120の高さは、上記実施形態に比べてほとんど変化しない。つまり、ベース部130aに電装部133を搭載したことに起因する装置の大型化を招くことなく、効率的に顕微鏡装置10bの構成を小型化することができる。
更に、ベース部130aは不潔域に属する構成であり得るが、電装部133が、架台131の後方側の高さが比較的高く、架台131の前方側の高さが比較的低くなるように構成されることにより、不潔域である電装部133を、手術台の上部、すなわち清潔域からより遠ざけることができる。従って、清潔域が侵される危険性を増加させずに、ベース部130aに電装部133を搭載することが可能になる。
(5−3.支柱部の長さ(T)がより長く構成される変形例)
(5−3−1.顕微鏡装置の概要)
上述した実施形態では、手術時に第1アーム290aが略水平を保った状態で顕微鏡部110が表示装置20よりも下方に位置し得るように、顕微鏡装置10の支持部120を構成することにより、術者の視界を確保していた。ただし、本実施形態はかかる例に限定されない。例えば、手術時に顕微鏡部110が表示装置20よりも上方に位置し得るように、支持部120が構成されてもよい。この場合であっても、表示装置20を見る術者の視界を遮る位置には顕微鏡部110が存在しないこととなるため、当該術者の視界が妨げられず、明りょうに術部を観察することができるという、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記実施形態のように、顕微鏡部110が表示装置20よりも下方に位置し得るように支持部120を構成することでも、当該顕微鏡部110が術者の視界を妨げる事態は回避され得るが、術者のより手元に当該顕微鏡部110が位置することとなるため、術式等によっては、当該顕微鏡部110及び支持部120が術者の作業空間に干渉してしまう恐れが生じ得る。これに対して、上記のように顕微鏡部110が表示装置20よりも上方に位置し得るように支持部120を構成することにより、当該顕微鏡部110及び支持部120が術者の作業空間により干渉し難くなり、術者の利便性をより向上させることが可能になる可能性がある。
かかる支持部120の構成は、上記実施形態に係る顕微鏡装置10において、支柱部290cの長さ(T)をより長くすることによって実現することができる。これにより、顕微鏡部110をより上方に配置することが可能になる。ここで、顕微鏡部110は、電子撮像式の顕微鏡部であり、術者が接眼部から直接覗き込む使用態様が前提である光学式の顕微鏡部のようにその位置が拘束されることがないため、その焦点距離をより長くすることにより、そのWDを光学式の顕微鏡部よりも長くすることができる。従って、このように顕微鏡部110をより上方に配置した場合であっても、術部の観察を行うことが可能になる。このように、顕微鏡部110が表示装置20よりも上方に位置し得るように支持部120を構成することは、電子撮像式の顕微鏡部110を有するからこそ実現可能なものであると言える。
ここでは、本実施形態の一変形例として、このような、支柱部290cの長さ(T)をより長くすることにより、手術時に顕微鏡部110が表示装置20よりも上方に位置し得るように構成された支持部120を有する顕微鏡装置について説明する。
(5−3−2.顕微鏡装置の概略構成)
本変形例に係る顕微鏡装置の構成について説明する。なお、本変形例に係る顕微鏡装置の構成は、支柱部290cの長さ(T)がより長く変更されること以外は、上記実施形態に係る顕微鏡装置10の構成と同様である。従って、以下の本変形例に係る顕微鏡装置の構成についての説明では、重複する事項については説明を省略する。
図15は、支柱部の長さ(T)がより長く構成される変形例に係る顕微鏡装置の一構成例を示す図である。図15では、表示装置20、及び手術台340上に横臥している患者330を併せて図示している。また、図15では、本変形例に係る顕微鏡装置10cについて、座位での手術時における好ましい姿勢を示している。なお、本変形例に係る顕微鏡装置は、上記のように、支柱部290cの長さ(T)が異なること以外は、図9を参照して説明した上記実施形態に係る顕微鏡装置10と同様の構成を有するため、図15では、簡単のため、本変形例に係る顕微鏡装置を簡略化して図示している。また、図15では、比較のため、上記実施形態に係る顕微鏡装置10を模擬的に二点鎖線で、本変形例に係る顕微鏡装置と重ねて図示している。
図15に示すように、本変形例に係る顕微鏡装置10cは、患者の術部を拡大観察するための顕微鏡部110と、顕微鏡部110を保持する支持部120bと、支持部120bの一端が接続され顕微鏡部110及び支持部120bを支持するベース部130と、を備える。また、図示を省略しているが、顕微鏡装置10cには、顕微鏡装置10と同様に、顕微鏡装置10cの動作を制御する制御装置140も備えられる。顕微鏡部110、ベース部130及び制御装置140の構成及び機能は、上述した顕微鏡装置10のこれらの構成及び機能と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
支持部120bの構成及び機能も、顕微鏡装置10の支持部120の構成及び機能と略同様である。ただし、上述したように、支持部120bは、その支柱部290cの長さ(T)が、支持部120の支柱部290cよりも長く構成される。
具体的には、本変形例では、表示装置20は、上記実施形態よりも低い位置、例えば、座位での手術時において、術者の略正面に当該表示装置20が位置し得るように設置され得る。そして、支柱部290cは、図示するように、顕微鏡部110がより低い位置に配置される座位での手術時においても、顕微鏡部110が当該表示装置20よりも上方に配置され得るような長さを有するように、構成される。また、このとき、第1アーム290aは略水平な状態に保たれる。これは、上記実施形態と同様に、第1アーム290aが略水平である状態が、当該第1アーム290aが表示装置20を視認する術者の視界を最も妨げない状態であるからである。かかる構成によれば、座位での手術時において、術者は、患者330と顕微鏡部110との間の空間から表示装置20を観察することができるため、当該顕微鏡部110及び支持部120bが術者の視界を妨げる事態が回避され得る。なお、このような構成に伴い、本変形例では、顕微鏡部110は、上記実施形態に比べて、その焦点距離がより長く、そのWDがより長くなるように、構成される。
一方、立位での手術時には、手術台340の高さがより高くなることに合わせて、第1アーム290aを略水平な状態に保ったまま、顕微鏡部110の高さ方向の位置が座位での手術時よりも高い位置に適宜調整される。従って、立位での手術時にも、顕微鏡部110は表示装置20よりも上方に配置されることとなり、当該顕微鏡部110及び支持部120bが術者の視界の妨げとなることはない。
支持部120bについて、座位での手術時の姿勢及び立位時での手術時の姿勢の切り替えは、上記実施形態と同様に、支柱部290cに対する第2アーム290bの回転角度r 2を変更することにより行えばよい。具体的には、座位での手術時の姿勢は、手術台340から比較的離れた位置にベース部130が位置し得るように顕微鏡装置10cを配置するとともに、支柱部290cに対して第2アーム290bを比較的大きな角度で傾ける(すなわち、回転角度r2を比較的大きくする)ことによって実現され得る。一方、立位での手術時の姿勢は、手術台340に比較的近い位置にベース部130が位置し得るように顕微鏡装置10cを配置するとともに、支柱部290cに対して第2アーム290bを比較的小さな角度で傾ける(すなわち、回転角度r2を比較的小さくする)ことによって実現され得る。
ここで、顕微鏡装置10cの支持部120bについて、支柱部290cよりも先端側の構成は、上記実施形態に係る顕微鏡装置10の支持部120と同様である。つまり、支持部120bにおいては、カウンターウエイト280等の、支柱部290cよりも先端側の構成については、上記実施形態と同様に比較的小型に構成され得る。このように、顕微鏡装置10cは、支柱部290cの長さ(T)が長くなる分、その装置全体の高さは上記実施形態に比べて大きくなるものの、装置全体の横方向の大きさについては、上記実施形態と同様の小型化が好適に保たれ得る。
(5−3−3.支持部の設計思想)
本変形例に係る支持部120bの構成も、上記実施形態と略同様の設計思想によって設計され得る。ただし、支柱部290cの長さ(T)をより長くする必要があることから、上記(条件1)〜上記(条件7)が一部変更される。
具体的には、「使用態様による条件」は、上記実施形態と変わらない。すなわち、本変形例に係る支持部120bは、上記(条件1)〜上記(条件3)を満たすように構成され得る。
一方、「可動範囲及び小型化による条件」については、上記(条件4)及び上記(条件6)は、上記実施形態と変わらない。一方、上記(条件5)については、変更される。具体的には、本発明者らによる検討の結果、上記(条件4)に示す可動範囲を満たしつつ、比較的小型の顕微鏡装置10cを実現するためには、下記(条件5’)及び上記(条件6)を満たすように支持部120bが構成されることが好ましいことが分かった。
(条件5’)
H+V+T<約2600(mm)
また、本変形例では、「設置位置から要請される条件」(すなわち、上記(条件7))については、考慮しないこととする。(条件7)について説明する際に上述したように、清潔域を確保する観点からは、支柱部290cの長さ(T)が手術台340の高さ(B)よりも短いことが好ましいものの、たとえ支柱部290cの長さ(T)が手術台340の高さ(B)よりも長かったとしても、支柱部290cをドレープで覆う等の処置を行うことにより、清潔域を確保することは十分に可能である。従って、本変形例では、術者の利便性のより一層の向上を図るために、支柱部290cの長さ(T)の上限を、手術台340の高さ(B)によっては規定しないこととする。
まとめると、本変形例では、支持部120bを構成するための条件は、上記(条件1)〜上記(条件4)、上記(条件5’)、及び上記(条件6)となる。本変形例では、少なくとも上記(条件1)を満たすように支持部120bが構成される。また、上記(条件2)及び上記(条件3)を更に満たすように120bが構成されてもよい。これにより、上記実施形態と同様に、手術中において、第1アーム290aを略水平に保つことができるため、術者の視界をより確実に確保することができ、術者の利便性をより向上させることができる。この際、立位での手術及び座位での手術の双方において、第1アーム290aを略水平に保つことができるため、手術態様にかかわらず、術者の作業空間を確保することが可能になる。
また、上記(条件4)、上記(条件5’)、及び上記(条件6)を更に満たすように120bが構成されてもよい。これにより、各種の術式に対応し得る十分な顕微鏡部110の可動範囲を確保しつつ、顕微鏡装置10cを小型化することができるため、術者の利便性が更に向上され得る。
(5−3−4.支持部の具体的な設計例)
本発明者らは、上記実施形態と同様に、上記の各条件を満たし得る本変形例に係る支持部120bの構成について実際に設計を行った。ここでは、一例として、上記(条件1)〜上記(条件4)、上記(条件5’)、及び上記(条件6)を全て満たすように支持部120bを構成する場合における設計結果について説明する。
具体的には、上記実施形態と同様に、上記(条件2)から、第2アーム290bの長さ(V)の上限値が決定され得る。また、Vの上限値が決定されれば、上記(条件1)から第1アーム290aの長さ(H)の上限値が決定され、上記(条件3)から支柱部290cの長さ(T)の下限値が決定され得る。決定されたH、V、Tの範囲内において、上記(条件4)、上記(条件5’)、及び上記(条件6)を満たすように具体的なH、V、Tの値を決定していく。
上記(条件4)における水平要求到達距離(WH)及び鉛直要求到達距離(WV)をWH=800(mm)、WV=1600(mm)とし、一般的な手術時の条件(術者の身長(座高)、手術台340の高さ、及び表示装置20の高さ方向の設置位置等)を考慮して顕微鏡部110のWDの最大値WDmaxをWDmax=約400(mm)〜約600(mm)として、実際に本発明者らが支持部120bを設計した結果、第1アーム290aの長さ(H)、第2アーム290bの長さ(V)及び支柱部290cの長さ(T)について、概ね以下の関係が満たされ得ることが分かった。
H+V+T>約2000(mm)
約800(mm)<V<約1000(mm)
約600(mm)<H<約800(mm)
約800(mm)<T<約1000(mm)
なお、本変形例では、支柱部290cの長さ(T)を長くした分、上記実施形態に係る顕微鏡装置10に比べて、相対的に、顕微鏡部110の位置が高くなる。従って、座位での手術時において適切な位置に顕微鏡部110を位置させるためには、支柱部290cに対して第2アーム290bをより大きく傾ける必要がある。よって、本変形例では、上記実施形態に比べて、支柱部290cに対する第2アーム290bの回転角度r2の最大値r2maxの値も変更され得る。本発明者らによる検討の結果、上記(条件1)〜上記(条件4)、上記(条件5’)、及び上記(条件6)を全て満たすように支持部120bを構成しつつ、座位での手術に適切に対応するためには、回転角度r2の最大値r2maxは、約45°<r2max<約65°の範囲を取ることが好ましいことが分かった。
また、本変形例においても、顕微鏡部110は、その光軸方向の長さ(より厳密には、第1アーム290aと顕微鏡部110との接続部から、当該顕微鏡部110の下端までの長さ)が、例えば約200mm程度以下となるように構成される。第1アーム290aを略水平な状態に保ちつつ、顕微鏡部110が表示装置20よりも上方に位置し得るように支持部120bを構成したとしても、当該顕微鏡部110の大きさが大き過ぎれば、当該顕微鏡部110によって表示装置20の良好な観察が妨げられる恐れがある。本変形例では、このように顕微鏡部110を比較的小型に構成することにより、術者の視界をより確実に確保することが可能になる。
(5−3−5.顕微鏡装置の使用例)
図16を参照して、本変形例に係る顕微鏡装置10cの使用例について説明する。図16は、本変形例に係る顕微鏡装置10cを用いた座位での手術の様子を示す図である。
図16を参照すると、術者320が、顕微鏡装置10cを用いて、手術台340上に横臥している患者330に対して、座位で手術を行っている様子が図示されている。手術時には、顕微鏡装置10cの顕微鏡部110によって患者330の術部が撮影され、撮影された術部の映像が表示装置20に表示される。術者320は、当該表示装置20に映し出された術部の映像を観察しながら手術を行う。
図示するように、本変形例に係る顕微鏡装置10cでは、座位での手術において、術者320が第1アーム290aの下方の空間に入り込んだ状態、すなわち、オーバーヘッドスタイルでの手術が行われ得る。本変形例では、上記実施形態よりも顕微鏡部110がより上方に位置し得るため、第1アーム290aの下方に術者320が入り込む空間が生まれ、このようなオーバーヘッドスタイルでの手術が可能になる。オーバーヘッドスタイルで手術を行うことにより、術者320の正面又は側方から当該術者320に向かって支持部120bが延伸されるように顕微鏡装置10cが設置されることがないため、術者320の眼前の空間がより確保され得ることとなる。
以下、座位での手術時における顕微鏡装置10cの操作手順について説明する。なお、座位での手術における顕微鏡装置10cの操作手順は、上記(4−2.座位での手術における使用例)で説明した顕微鏡装置10の操作手順と略同様であるため、重複する事項については、その詳細な説明は省略する。
まず、手術を開始する際には、キャスターを使用して、顕微鏡装置10c全体を手術台340の近くに移動する。この際、立位で手術を行う場合に比べて、手術台340からより離れた位置に顕微鏡装置10cを設置する。
次いで、術者320は、顕微鏡部110の把持部を握りながら、動作モード変更SW153を押下して、第1回転軸部210〜第6回転軸部260に設けられるブレーキを解除し、フリー動作モード、すなわち、顕微鏡部110を自由に移動可能な状態にする。術者320は、表示装置20に表示される顕微鏡部110によって撮影された映像を観察しながら、術部に顕微鏡部110の視野が合うように顕微鏡部110を移動させた後、動作モード変更SW153を離して(すなわち、動作モードを固定モードに変更して)顕微鏡部110及び支持部120bの姿勢を固定する。
ここで、本変形例では、顕微鏡装置10cは、支持部120bの支柱部290cの長さ(T)がより長く構成されているため、上述した実施形態よりも高い位置に顕微鏡部110を配置することができる。具体的には、顕微鏡部110を表示装置20よりも上方に配置することができる。また、この際、顕微鏡装置10cは、第2アーム290bの長さ(V)が第1アーム290aの長さ(H)よりも長くなるように構成されているため、顕微鏡装置10cを手術台340から比較的離れた位置に配置し、第2アーム290bを手術台340に向かって傾けるように支持部120bの姿勢を調整することにより、第1アーム290aを略水平に保ちつつ、上記のようなより高い位置に顕微鏡部110を配置することができる。
顕微鏡部110及び支持部120bの姿勢が固定されたら、術者320は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作して、顕微鏡部110によって撮影される映像の倍率及び焦点距離の調整を行う。上述したように、本変形例では、顕微鏡部110は、焦点距離を比較的長く取れるように構成されているため、上記のようなより高い位置に顕微鏡部110を配置した場合であっても、術部に焦点の合った鮮明な映像を得ることができる。
そして、術者320は、第1アーム290aの下方の空間に座り、患者330の術部と顕微鏡部110との間の空間から表示装置20の映像を観察しながら、処置を開始する。すなわち、オーバーヘッドスタイルで手術を開始する。この際、本変形例では、上記のように、第1アーム290aを略水平に保ちつつ、顕微鏡部110を表示装置20よりも上方に配置することができるため、術者320の視界が顕微鏡部110によって遮られることがなく、手術をより円滑に行うことが可能になる。
以上、図11を参照して、座位での手術における顕微鏡装置10の使用例について説明した。なお、立位で手術を行う場合には、座位で手術を行う場合に比べて手術台340により近い位置に顕微鏡装置10cを設置するとともに、支柱部290cに対する第2アーム290bの回転角度r2をより小さくし、顕微鏡部110をより高い位置に配置すればよい。これにより、座位での手術に比べて手術台340が高くなることに合わせて、顕微鏡部110を、立位での手術に適した位置に配置することができる。この際も、第1アーム290aは略水平に保たれ、顕微鏡部110は表示装置20よりも上方に配置され得るため、術者320の視界が顕微鏡部110によって遮られる事態を回避することができる。
ここで、上記(1.本開示に至った背景)で説明したように、光学式の顕微鏡装置810は、オーバーヘッドスタイルでの使用が前提となっており、かかる光学式の顕微鏡装置810の支持部803の構成を、そのまま電子撮像式の顕微鏡装置に適用することは、当該電子撮像式の顕微鏡装置にとっては、必ずしも適切な構成とは言えない。具体的には、電子撮像式の顕微鏡装置では、顕微鏡部が小型化可能であることにより、装置全体の構成もより小型化できる。従って、上記実施形態のように、オーバーヘッドスタイルでの使用を前提としないような、より小型の顕微鏡装置10を構成することが可能になる。
一方で、一般的に、顕微鏡装置を用いた手術では、オーバーヘッドスタイルでの手術に対するニーズが存在し得る。上述したように、オーバーヘッドスタイルで手術を行う場合には、術者の正面及び側方に支持部が存在しないこととなるため、術者の視界及び作業空間がより確保され得るからである。つまり、電子撮像式の顕微鏡装置においても、オーバーヘッドスタイルでの使用が必ずしも避けられるべきだとは限らない。換言すれば、オーバーヘッドスタイルでの使用も考慮して電子撮像式の顕微鏡装置を構成すれば、より小型で、かつ、術者の利便性をより向上させることが可能な顕微鏡装置を実現できる可能性がある。
本変形例に係る顕微鏡装置10cは、このような、装置全体の大きさを光学式の顕微鏡装置810よりも小型に保ちつつ、座位での手術時にオーバーヘッドスタイルでの手術に対応し得るものである。具体的には、顕微鏡装置10cは、電子撮像式の顕微鏡部110を有するため、当該顕微鏡部110のWDを光学式の顕微鏡部801よりも大きくすることができる。従って、オーバーヘッドスタイルでの使用時において、表示装置20よりも上方に当該顕微鏡部110が位置し得るように、すなわち当該顕微鏡部110が術者の眼前に位置しないように、顕微鏡装置10cを構成することが可能になる。かかる構成によれば、オーバーヘッドスタイルでの使用であっても、顕微鏡部110が術者の視界の妨げにならない。また、このように顕微鏡装置10cを構成したとしても、顕微鏡部110自体の大きさは、光学式の顕微鏡部801よりは小さく、支持部120bやカウンターウエイトも小型化できるため、顕微鏡装置10c全体の大きさを、光学式の顕微鏡装置810よりも小型化することができる。特に、本変形例では、上記実施形態に係る顕微鏡装置10において、支柱部290cよりも先端側の構成は変更せずに、当該支柱部290cの長さ(T)をより長くすることにより、上記の顕微鏡部110の配置を実現しているため、支持部120bやカウンターウエイトの小型化が好適に保たれ得る。
このように、本変形例に係る顕微鏡装置10cによれば、装置全体の小型化を実現しつつ、顕微鏡装置10cの配置の自由度、すなわち手術時の使用態様の自由度を向上させることができ、術者320の利便性をより向上させることが可能になる。ただし、本変形例に係る顕微鏡装置10cを用いたオーバーヘッドスタイルでの手術は、好適に、例えば脳外科手術等の座位で行われる手術に限定され得る。立位での手術時においてもオーバーヘッドスタイルで顕微鏡装置10cを使用しようとすると、たとえ顕微鏡部110が小型化可能であるとは言え、支持部120bが比較的大型化してしまい、光学式の顕微鏡装置810よりも装置全体を小型化できるという利点を享受し難くなってしまう恐れがあるからである。従って、本変形例では、立位での手術時には、オーバーヘッドスタイルでの使用ではなく、例えば図10に示す使用態様と同様に術者320の正面側、あるいは術者320の側方に、顕微鏡装置10cが設置され得る。
(5−4.映像振動抑制機構を有する変形例)
以上説明した顕微鏡装置10、10a〜10cには、顕微鏡部110によって撮影された映像の振動を抑制する映像振動抑制機構が搭載されてもよい。かかる映像振動抑制機構が搭載されることにより、より安定的な術部の映像を得ることができ、手術をより円滑に行うことが可能になる。
具体的には、顕微鏡装置10、10a〜10cには、映像振動抑制機構として、顕微鏡部110自体の振動を抑制することを目的として支持部120、120a、120bの第1回転軸部210〜第6回転軸部260にそれぞれ設けられる機械的な振動抑制機構、及び/又は顕微鏡部110が振動した場合にその撮影された映像の振動を補正する映像振動補正機構が設けられ得る。
まず、機械的な振動抑制機構について説明する。当該機械的な振動抑制機構は、例えば動吸振器であり、ダンパ等の制振部材からなり、各回転軸部における振動を抑制することができる。
図17及び図18を参照して、機械的な振動抑制機構の具体的ないくつかの構成例について説明する。図17は、各回転軸部に設けられ得る機械的な振動抑制機構の一構成例を示す図である。図17を参照すると、振動抑制機構401は、筒形状の第1の部材403と第2の部材405を接続する際にこれらの部材間に設けられ、これらの部材間における振動の伝達を抑制する機能を有する。具体的には、この構成例では、制振対象である筒形状の第1の部材403(制振対象部材403)の内部に、第2の部材405(錘側部材405)が軸方向(図中上下方向)に摺動可能に嵌め込まれることにより、両者が接続されている。この際、制振対象部材403と錘側部材405との間には、粘性抵抗要素として粘弾性部材407及びバネ409が設けられる。振動抑制機構401は、当該粘弾性部材407及び当該バネ409から構成される、動吸振器である。なお、粘弾性部材407は、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム材からなる、機械的性質とバネ要素としての性質を併せ持つものである。
粘弾性部材407及びバネ409は、制振対象部材403及び錘側部材405の振動に応じて軸方向に伸縮し、この振動を減衰する機能を有する。粘弾性部材407及びバネ409の特性に応じて振動抑制機構401の固有振動数が決定されるが、この固有振動数が制振対象である支持部120、120a、120bの固有振動数と略一致する場合に、その制振効果を最も大きく発揮することができる。従って、振動抑制機構401は、粘弾性部材407及びバネ409を、異なる特性を有するものに交換可能に構成されてよい。これにより、支持部120、120a、120bの構成に応じて、振動抑制機構401の固有振動数が当該支持部120、120a、120bの固有振動数と略一致するように当該振動抑制機構401を適宜構成することができ、大きな制振効果を得ることができる。
また、図18は、各回転軸部に設けられ得る振動抑制機構の他の構成例を示す図である。図18を参照すると、振動抑制機構451は、略棒形状の第1の部材453と第2の部材455を接続する際にこれらの部材間に設けられ、これらの部材間における振動の伝達を抑制する機能を有する。具体的には、この構成例では、第1の部材453の接続端に、ゴム等の振動を吸収可能な弾性部材で形成される凹形状の受座459が設けられる。また、第2の部材455の接続端に、外径が他の部位よりも細く形成された軸部457が設けられる。そして、受座459の凹部にこの第2の部材455の軸部457が挿入された状態で、第1の部材453、受座459及び軸部457がねじ461によって固定されることにより、第1の部材453と第2の部材455が接続される。この受座459が、振動を吸収する振動抑制機構451を構成し得る。なお、このとき、ねじ461と第1の部材453との間にも、ゴム等の振動を吸収可能な弾性部材(図示せず)が介在されてもよく、受座459及び当該弾性部材によって振動抑制機構451が構成されてもよい。
図示するように、受座459は凹形状を有するため、3軸方向の全ての振動を好適に抑制し得る。このように、振動抑制機構451によれば、第1の部材453及び第2の部材455のいずれか一方において生じた振動が他方に伝達されることが、より効果的に抑制され得る。
以上、図17及び図18を参照して、支持部120、120a、120bの各回転軸部に設けられ得る機械的な振動抑制機構のいくつかの構成例について説明した。なお、当該振動抑制機構としては、図示するもの以外にも、各種の公知のものを用いることができる。
次に、映像振動補正機構について説明する。当該映像振動補正機構としては、電子式の補正機構及び光学式の補正機構のいずれかを用いることができる。電子式の補正機構とは、撮像部111の振動状態を検出するとともに、撮像部111の撮像素子によって取得された映像信号に対する画像処理の段階で、検出された振動状態に基づいて、撮像素子の画素ごとの観察光の取り込み位置を補正することにより、映像の振動を補正するものである。一方、光学式の補正機構とは、撮像部111の振動状態を検出するとともに、検出された振動状態に基づいて、撮像部111の光学系(例えばレンズ等)又は撮像素子の位置を移動させることにより、撮像素子における観察光の受光位置を調整し、映像の振動を補正するものである。なお、撮像部111の振動状態の検出は、顕微鏡部110に振動センサを設けることによって行ってもよいし、撮影した映像を一定時間分バッファしておき、最新の映像と直前の映像とを比較することによって行ってもよい。
これら映像振動補正機構としては、例えばデジタルカメラ等の撮像装置における手ぶれ補正の技術分野において一般的に用いられている各種の公知のものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
以上、顕微鏡装置10、10a〜10cに搭載され得る、映像振動抑制機構について説明した。ここで、支柱部の長さ(T)がより長く構成される変形例に係る顕微鏡装置10cでは、上述したように、顕微鏡部110が、他の顕微鏡装置10、10a、10bよりも高い位置に配置され、そのWDがより大きくなるように構成される。従って、顕微鏡装置10cでは、顕微鏡部110の振動がその撮影された映像に及ぼす影響が、他の顕微鏡装置10、10a、10bに比べて大きくなる恐れがある。従って、以上説明した映像振動抑制機構が顕微鏡装置10cに対して設けられることにより、安定的な映像を得る効果をより顕著に得ることが可能になる。
(6.補足)
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的又は例示的なものであって限定的なものではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏し得る。
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)手術台上の患者の術部を撮影し、映像信号を出力する顕微鏡部と、先端において前記顕微鏡部を支持する支持部と、を備え、前記支持部が、先端側から順に、第1アームと、先端において前記第1アームの基端を鉛直方向及び前後方向と互いに直交する第1の回転軸まわりに回動可能に支持する第2アームと、床面から略鉛直方向に延伸し、先端において前記第2アームの基端を鉛直方向及び前後方向と互いに直交する第2の回転軸まわりに回動可能に支持する支柱部と、によって構成されるとみなした場合に、前記支持部は、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間の長さである前記第2アームの長さが、前記顕微鏡部の光軸が略鉛直になるように配置された際における当該顕微鏡部の光軸と前記第1の回転軸との間の長さである前記第1アームの長さよりも長くなるように構成される、手術用顕微鏡装置。
(2)前記第2アームの長さをV、前記支柱部に対する前記第2アームの回転角度の最大値をr2max、立位での手術時における前記顕微鏡部の対物レンズの床面からの高さをZ1、座位での手術時における前記顕微鏡部の対物レンズの床面からの高さをZ2とした場合に、当該長さV、当該回転角度の最大値r2max、当該高さZ1及び当該高さZ2が、Z1−Z2<V(1−cos(r2max))で示す関係を満たす、前記(1)に記載の手術用顕微鏡装置。
(3)前記長さV、前記回転角度の最大値r2max、前記高さZ1及び前記高さZ2が、200(mm)<V(1−cos(r2max))で示す関係を満たす、前記(2)に記載の手術用顕微鏡装置。
(4)前記支柱部の長さをT、前記支柱部に対する前記第2アームの回転角度の最大値をr2max、座位での手術時における前記顕微鏡部の対物レンズの床面からの高さをZ2とした場合に、当該長さV、当該回転角度の最大値r2max及び当該高さZ2が、Z2>Vcos(r2max)+Tで示す関係を
満たす、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(5)前記支持部は、水平方向における前記支柱部からの距離が約800(mm)であり鉛直方向における床面からの距離が約1600(mm)である空間上の位置を、前記顕微鏡部が通過するように構成される、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(6)前記支持部は、前記第1アームの長さ、前記第2アームの長さ、及び前記支柱部の長さの合計が、2500(mm)よりも小さくなるように構成される、前記(5)に記載の手術用顕微鏡装置。
(7)前記第2アームに対する前記第1アームの回転角度をr1、前記支柱部に対する前記第2アームの回転角度をr2とした場合に、当該回転角度r1及び当該回転角度r2が、約130°<r1+r2<約180°で示す関係を満たす、前記(5)又は(6)に記載の手術用顕微鏡装置。
(8)前記支持部は、前記支柱部の長さが前記手術台の高さよりも短くなるように構成される、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(9)前記支柱部の長さは、800(mm)よりも短い、前記(8)に記載の手術用顕微鏡装置。
(10)前記支柱部の長さTは、約800(mm)<T<約1000(mm)で示す関係を満たす、前記(5)に記載の手術用顕微鏡装置。
(11)前記顕微鏡部の作動距離の最大値WDmaxは、約400(mm)≦WDmax≦約600(mm)で示す関係を満たす、前記(10)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(12)前記支持部は、前記第1アームの長さ、前記第2アームの長さ、及び前記支柱部の長さの合計が、2000(mm)よりも大きくなるように構成される、前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(13)前記支持部は、バランスアームとして構成される、前記(1)〜(12)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(14)前記第2アームは、前記支持部を構成する平行四辺形リンク機構に対応する、前記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(15)前記支持部には、前記第2アームと前記支柱部との接続部位に対応する位置に、前記第2アームの延伸方向と平行な回転軸まわりに前記第2アームを回動可能に支持する回転軸部が設けられる、前記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(16)前記支持部の基端を支持するベース部の上面に、前記手術用顕微鏡装置における信号処理を実行する電装部が搭載され、前記ベース部の上面において、前記支持部の基端は、前記電装部よりも前方側に接続される、前記(1)〜(15)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(17)前記電装部は、前記ベース部の上面において、後方側が前方側よりも高くなるように構成される、前記(16)に記載の手術用顕微鏡装置。
(18)手術台上の患者の術部を撮影し映像信号を出力する顕微鏡部と、先端において前記顕微鏡部を支持する支持部と、を備える顕微鏡装置と、前記映像信号に基づく映像を表示する表示装置と、を備え、前記支持部が、先端側から順に、第1アームと、先端において前記第1アームの基端を鉛直方向及び前後方向と互いに直交する第1の回転軸まわりに回動可能に支持する第2アームと、床面から略鉛直方向に延伸し、先端において前記第2アームの基端を鉛直方向及び前後方向と互いに直交する第2の回転軸まわりに回動可能に支持する支柱部と、によって構成されるとみなした場合に、前記支持部は、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間の長さである前記第2アームの長さが、前記顕微鏡部の光軸が略鉛直になるように配置された際における当該顕微鏡部の光軸と前記第1の回転軸との間の長さである前記第1アームの長さよりも長くなるように構成される、手術用顕微鏡システム。