JP6266242B2 - 電磁波吸収体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電磁波吸収体とその製造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、薄く軽量性に優れ、電磁波を広帯域かつ高い吸収度で吸収する電磁波吸収体と、該電磁波吸収体を少工程ながらも簡便かつ高精度に作りうる電磁波吸収体の製造方法に関するものである。
近年、半導体、エレクトロニクス分野の技術革新により、コンピューターの無線通信や民生用電子機器、すなわち携帯電話やスマートフォン、携帯型ゲーム機等の情報通信機器において、また高速道路通行時などに利用される自動料金収受システム(ETC)や車載レーダー装置を用いた安全運転支援システムに代表される高度道路交通システム(ITS)、更には、現行の、あるいは将来的に利用される高精細ハイビジョン放送などにおいて、使用される電磁波の高周波化が顕著に進展し、1秒間に10億回以上振動するいわゆるギガヘルツ(GHz)帯電磁波が頻繁に使用されるようになってきた。それに伴い、これら装置・機器が安定に動作するために、あるいはこれら装置・機器を安全に使用するために、反射あるいは予期せぬ方向への発信のために障害となりうる電磁波を吸収する、広帯域GHz帯対応の電磁波吸収体の開発が望まれている。
狭域通信で使用されるGHz帯で機能する、ETC装置(起動周波数5.8GHz)等の誤作動防止用電波吸収シートの技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。該技術は、異方性黒鉛とバインダーを含むペーストを塗工、乾燥させて塗工吸収シートを得て、かかるシートをX方向とY方向(X方向を90度回転させた方向)とに交互に積層して構成することで、電磁波の入射角度に依らず安定した電波吸収性を示す電波吸収シートを作製するものである。しかしながら、用いる異方性黒鉛は数十μmレベルの粒径を有しており樹脂中の分散性が極めて悪く、薄いシートを作るのは難しく、特に塗布用に用いるのは極めて困難であった。また、異方性黒鉛に由来する粗粒がシート表面に顕在して表面粗度が高くなる傾向にあり、結果として電磁波吸収性能のばらつきが大きく、更には高濃度の異方性黒鉛を含有したシートは脆くて取扱い性や施工性が悪いものであった。
また小粒径の天然黒鉛を含む塗工液を塗布乾燥させて形成した誘電体シートを用いた電磁波吸収体の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。該技術は薄く軽量の誘電体シートを作製するものである。しかしながら、ミクロンレベルの小粒径の天然黒鉛は極めて疎水性でバインダー樹脂との親和性が低く、高い凝集性を示すため、誘電体シートを形成させる塗布乾燥(溶媒除去)工程で、バインダー樹脂から分離して天然黒鉛粒子同士が凝集しやすいこと、また天然黒鉛を含有した樹脂の誘電率は天然黒鉛同士の繋がり(パーコレーション)に依存するため、天然黒鉛の僅かな分散不均一で誘電率が変化しやすい(ばらつきが大きい)ことなどから、結果として一定の誘電特性を有する誘電体シートの作製は非常に難しいものであった。
最近、従来の黒鉛に代わる新たな炭素材料として、カーボンナノチューブや樹脂材料を炭化焼成して得られるグラファイトシートやグラフェン類等が黒鉛同様の高導電性材料として幅広い用途に活用されつつある。特にグラフェン類については、天然黒鉛よりも薄い、1ミクロン以下の単層グラフェンあるいは多層グラフェン(薄層黒鉛)が、高い導電性と非常に薄い特性を両立するとともに、高強度/高弾性率、高い移動度など多くの優れた特性を有する材料として知られつつあり、新材料として利用すべく研究開発が活発化している。
前記課題に対し、電磁波吸収体を構成する際にグラフェン類を用いる試みが幾つかなされている。例えば、剥離薄層化して調製したグラフェン粉をニトリル−ブタジエンゴム(NBR)に含有せしめて得た複合体に関する技術が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。当該技術においては、黒鉛粉の化学的処理により得た酸化グラフェンを熱処理により還元し、NBRとともにキシレン中に分散させたのちキュアして複合体を得ており、該複合体の電磁波吸収特性の評価においては、GHz帯での吸収特性を有する結果が示されている。しかしながら当該結果は単にGHz帯での吸収特性を有することを示したのみで、当該技術は狭帯域の電磁波吸収特性を実現するにとどまるものであった。
特開2006−80352号公報 国際公開第2011/149039号
「Microwave absorbing properties of a thermally reduced graphene oxide/nitrile butadiene rubbercomposite」,Carbon,2012年,第50号,p.2202−2208
本発明者らは前述の課題を解決すべく、薄層黒鉛を利用した電磁波吸収体において、高い電磁波吸収特性を有しながらも、軽量性、物理物性を維持し、また高精度の素材設計が可能で、工業的に高い利用価値を有する、電磁波吸収体を実現するべく鋭意取り組んだものである。
すなわち本発明の目的は、少ない工程で簡便に作製が可能で、薄く軽量性に優れる、広帯域の電磁波を吸収する電磁波吸収体を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用するものである。
(1)平板状の電磁波吸収帯を備える電磁波吸収体であって、前記電磁波吸収帯は、平均酸化度の異なる複数種の薄層黒鉛を含有することにより、厚み方向に電磁波吸収性能の不均一性を有するものである、
電磁波吸収体。
(2)前記電磁波吸収帯が、2層以上の電磁波吸収層から構成されるとともに、前記電磁波吸収帯における電磁波吸収性能の不均一性が、それぞれ平均酸化度の異なる薄層黒鉛を含有する2層以上の電磁波吸収層を備えることにより発現するものである、前記(1)に記載の電磁波吸収体。
3)前記電磁波吸収帯の電磁波吸収性能の不均一性が、該電磁波吸収帯の厚み方向に、含有する前記薄層黒鉛の連続的な平均酸化度の変化を有することにより発現するものである、前記(1)に記載の電磁波吸収体。
前記電磁波吸収帯の電磁波吸収性能の不均一性が、さらに、前記電磁波吸収帯の厚み方向の、薄層黒鉛の密度変化によっても発現するものである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
)シート状の形状を有する、(1)〜()のいずれかに記載の電磁波吸収体。
)前記電磁波吸収帯が、10%以下の空隙率を有する、前記(1)〜()のいずれかに記載の電磁波吸収体。
7)前記電磁波吸収帯が、さらにポリマーを含有する、前記(1)〜()のいずれかに記載の電磁波吸収体。
)さらに、電磁波を反射する基板を有し、前記電磁波吸収帯が、前記基板上に設けられている、前記(1)〜()のいずれかに記載の電磁波吸収体。
)電磁波吸収性能測定により得られた吸収スペクトルにおいて、1GHz以上の周波数帯域で、25dB以上の電磁波吸収性能を有する周波数が1GHz以上の帯域にわたり連続する、前記(1)〜()のいずれかに記載の電磁波吸収体。
10)平板状の電磁波吸収帯を備える電磁波吸収体の製造方法であって、層以上の、それぞれ平均酸化度の異なる薄層黒鉛を含有する電磁波吸収層を積層することで、前記電磁波吸収帯を形成するステップを有する電磁波吸収体の製造方法。
11)さらに、積層した電磁波吸収層同士を結合させて、厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の変化を有する電磁波吸収帯を形成するステップを有する、前記(12)または(10)に記載の電磁波吸収体の製造方法。
12)前記2層以上の、薄層黒鉛を含有する電磁波吸収層が、熱可塑性ポリマーを含有するものであり、前記電磁波吸収層同士の結合が、前記熱可塑性ポリマーの融点または軟化点温度以上に加熱することによる溶融結合により行われるものである、前記(11)に記載の電磁波吸収体の製造方法。
本発明の電磁波吸収体は、広い帯域での優れた電磁波吸収性能、好ましくは1GHz以上の周波数帯において広い帯域幅で25dB以上の高い電磁波吸収性能を有するため、近年頻繁に利用されつつあるGHz帯の電磁波を利用した各種用途に広範に利用しうるものである。また薄層黒鉛の特性に由来し、薄くすることが可能かつ容易で、電磁波吸収体の材料特性が損なわれないため、優れた電磁波吸収体として利用しうる。
本発明の電磁波吸収体の実施形態の一例として、3層の電磁波吸収層から構成される電磁波吸収帯を有する電磁波吸収体を示す模式図である。
本発明の電磁波吸収体は、平板状の電磁波吸収帯を有し、該電磁波吸収帯は薄層黒鉛を含有するものである。
まず、薄層黒鉛について説明する。薄層黒鉛は、炭素原子のπ結合により形成される六角形のベンゼン環格子構造が蜂の巣のように平面方向に多数集合したグラフェンシートが、一層単独で存在、あるいは二層以上積層した構造を有している。積層している場合、各層は独立であっても、また層間で共有結合あるいは非共有結合を介して接続されていても良い。
該薄層黒鉛としては、天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛、グラファイトシートなどを原料として物理的および/または化学的な薄層化処理を経て薄層化して得た微粒子や、あるいは気体、液体、固体の中から少なくとも1種選ばれた原料を用いて、物理的および/または化学的合成法により、原子レベルからボトムアップ的に合成された微粒子を用いることが可能である。
天然黒鉛あるいは人造黒鉛を原料として用いた薄層黒鉛は、次のような物理的および/または化学的な薄層化処理を経て得ることができる。まず物理的な薄層化処理としては各種ミル、すなわち遊星ボールミルや略一次元方向に高速で往復するミキサーミル、石臼のようなディスクミル、高速回転刃と遠心力を利用したローターミルを用いることができる。薄層化処理時には原料単独で処理を行ってもよく、また後述するポリマーや塗布用の混合液を構成する溶媒を共存させて処理を行ってもよく、あるいは該原料とポリマーとからなる複合体をいったん形成した後に該ミルによる処理を行っても良い。
また物理的な薄層化処理としては、前記ミル以外にも、スクリュー状の軸を1本あるいは2本以上備えた混練機を用いて原料黒鉛とポリマーを共存させて混練し、処理を行うことで薄層黒鉛が得られる。この方法においては、スクリューによる剪断力で原料黒鉛の剥離が促進されるが、特にポリマーが熱可塑性で粘弾性を有する場合には、該粘弾性とスクリューによる剪断効果で効果的に剥離が発現し薄層化が達成できる。混練機に関してはポリマーと薄層黒鉛とを混練した際に薄層黒鉛が効率的に薄層化されつつ混練されるという点で2軸以上の多軸エクストルーダを採用することが好ましい。また薄層黒鉛とポリマーとがより均質に混練される点で、粉体もしくは粉体化された熱可塑性ポリマーを用いることが好ましい。また薄層黒鉛の添加は、多軸エクストルーダに供給する以前の段階で熱可塑性ポリマーと乾式ブレンドしておいても良く、あるいは多軸エクストルーダに配設したサイドフィーダーを用いて溶融した熱可塑性ポリマーと多軸エクストルーダ中にて混合しても良く、混練は窒素やアルゴンなどの不活性ガスを供給した雰囲気中で行うことが好ましい。
上記物理的な薄層化処理として好ましいのは、遊星ボールミルやミキサーミル、スクリュー状の軸を2本以上備えた多軸混練機(多軸エクストルーダ)を用いた処理である。またこれら物理的な薄層化処理を2種以上組み合わせて行うと、効果的な薄層化が達成できるためより好ましく、具体的には、スクリュー状の軸を2本以上備えた多軸混練機を用いて原料の薄層化処理を施しながら熱可塑性ポリマーとあらかじめ複合化させ、その後ローターミルを用いて処理を行うことで薄層化処理を行う処理方法がより好ましい態様として挙げられる。
膨張黒鉛を原料として用いた薄層黒鉛も本発明では採用できるが、膨張黒鉛自体は比表面積が大きくポリマーとの濡れ性や混和性が極めて悪いため、天然黒鉛や人造黒鉛同様に前述のミルや混練機を用いた物理的な薄層化処理を採用して薄層化することで初めて用いうる。ここで膨張黒鉛については、酸処理黒鉛の高温高速熱処理で黒鉛層間が広げられて形成されたものであって、該酸処理黒鉛は黒鉛を酸性物質および酸化剤を含む溶液中に浸漬して黒鉛層間化合物を生成した後、洗浄・乾燥して得たもので、高温高速熱処理により数百倍に膨張して膨張黒鉛が得られるものである。高温高速熱処理は、500℃以上の高温炉に入れて行う方法、あるいはマイクロ波により急速加熱する方法が採用でき、特にマイクロ波による急速加熱は膨張率が大きく好ましい方法である。なお、膨張黒鉛は薄層化処理を考慮すると、膨張黒鉛のシート化物など成型したものを適用する場合、薄層化の効率や効果が劣る場合がある。そして好ましい物理的な薄層化処理としては、遊星ボールミル中で乾式で膨張黒鉛のみを存在させて薄層化処理を行う、あるいはミキサーミル中で膨張黒鉛と溶媒とプレポリマーとを共存させて薄層化処理を行う、あるいはスクリュー状の軸を2本以上備えた多軸混練機を用いて熱可塑性ポリマーと混練複合化しながら剪断力で薄層化処理を行う方法、の各方法である。
グラファイトシートを原料として用いた薄層黒鉛も本発明では採用できる。グラファイトシートはフィルム状の樹脂を非常に高温の不活性雰囲気で不融化した後に焼成することで作製され、樹脂の種類としては、ポリアクリロニトリル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂やフェノール系樹脂、ピッチ系樹脂などがよく用いられ、通常1000℃以下の温度で不融化した後、3500℃以下の温度で焼成処理して得られる。該グラファイトシートはあらかじめナイフミルやクラッシュミルなどで粗粒片化した後に前述のミルや混練機を用いた物理的な薄層化処理を行うことで薄層黒鉛となすことができる。この時、グラファイトシートの厚みは、粗粒片化および薄層化処理が効率よくなされるように一定の厚みを持つことが好ましく、10nm〜500μmの範囲であることが特に好ましい。
化学的な薄層化処理としては、有機合成手法あるいはプラズマやマイクロ波などの高エネルギー印加手法を用いることができ、これら手法によって前述の天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛、グラファイトシートなどの黒鉛系原料に官能基を付加させ、原料を構成するグラフェンシート層間が広がり剥離する作用を利用して薄層化処理がなされる。有機合成手法としては、数多くの手法が知られており、代表的な手法としては、濃硝酸中で塩素酸カリウムを酸化剤として用いて黒鉛を酸化した後に水で処理するBrodie法、硝酸と硫酸の混合溶液に黒鉛を投入し塩素酸カリウムで酸化処理を行うStaudenmaier法、硫酸ナトリウムを含む冷却した濃硫酸中に黒鉛を投入して均質になるまで撹拌した後、過マンガン酸カリウムを投入して酸化するHummers法、あるいはこれら手法を改良した黒鉛原料を用いた化学的な分散液調製法が好適に用いられる。これら手法の中で特に天然黒鉛あるいは膨張黒鉛を原料として用いたHummers法あるいは改良されたHummers法は、反応が最も穏やかで薄層化が効率よく進行し、また後述する酸化度についても制御が行いやすく、工業的利用の点で好ましい手法である。反応後、得られた反応液を遠心分離あるいは濾過により不要な金属化合物、金属イオン、酸系イオンなどを除去することで、薄層黒鉛が分散された水系分散液が得られ、分散媒である水を除去することで薄層黒鉛の粉体が得られる。
またプラズマやマイクロ波などの高エネルギー印加手法によっても化学的な薄層化処理を好ましく行うことができる。プラズマについては大気圧プラズマや低圧プラズマを用いることができ、マイクロ波を含め、気体中あるいは液体中で処理を行うことができる。雰囲気の気体を二酸化炭素やアンモニア、酸素、窒素など、置換あるいは割合を変更する、あるいは液中であれば分散媒の種類に応じて、これら手法により処理を行うことで黒鉛系原料に所望の官能基を付与しうる。
当該化学的な薄層化処理によって、薄層黒鉛には酸素原子由来の官能基、すなわち水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、エステル(−C(=O)−O−)、エーテル(−C−O−C−)、ケトン(−C(=O)−)などを有する。これにより電磁波吸収帯および/または電磁波吸収層を構成するポリマーまたはプレポリマーとの親和性が向上して、また薄層化が達成されることで結果としてポリマーに分散されやすくなる。ただし官能基を過度に有することで薄層黒鉛が本来有している導電性や移動度などの特性が低下することがある。
またこれら化学的な薄層化処理の一環として、さらに還元処理を経て、付加された官能基を制御し、ポリマーとの親和性や電磁波吸収性能を制御することができる。該還元では付加した官能基の一部の酸素原子が失われることで、薄層黒鉛の導電性が向上する。ここで還元処理としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)やヒドラジン(N24)などの還元剤による化学的還元、レーザー光やフラッシュ光、紫外線、マイクロ波などの光源や電磁波による熱還元、あるいは不活性雰囲気中、100℃以上の加熱による加熱還元など、多種多様な方法を採用することが出来る。ただし薄層黒鉛の分散液の状態で還元処理を行うと、均一分散していた薄層黒鉛同士が相互作用で凝集することもあるため、必要に応じて凝集を阻害する分散剤が用いられても良い。また還元によって薄層黒鉛のポリマーへの親和性が低下することがある。
上記化学的な薄層化処理として好ましいのは、天然黒鉛あるいは膨張黒鉛を原料として用いたHummers法あるいは改良されたHummers法による有機合成手法である。またこれら化学的な薄層化処理を2種以上組み合わせて行うと、効果的な薄層化が達成できるためより好ましく、具体的には、天然黒鉛あるいは膨張黒鉛を空気中でマイクロ波処理した後に、Hummers法あるいは改良されたHummers法により処理を行うことで薄層化処理を行う処理方法がより好ましい態様として挙げられる。
そして上記物理的な薄層化処理と化学的な薄層化処理は組み合わせて用いることでより効果的な薄層化が達成できるため好ましい。具体的には、天然黒鉛あるいは膨張黒鉛を遊星ボールミルで物理的に薄層化処理を行った後、Hummers法あるいは改良されたHummers法により処理を行うことで薄層化処理を行う処理方法が特に好ましい組み合わせの態様として挙げられる。
本発明の電磁波吸収体に用いられる薄層黒鉛の平均厚みは、電磁波吸収性能や後述するポリマー(またはプレポリマー)との混和性あるいは薄層黒鉛とポリマー(またはプレポリマー)とを含有する混合液の塗布性が阻害されない範囲で、薄ければ薄いほど良い。薄層黒鉛の平均厚みは0.3nm〜200nmであることが好ましく、薄層黒鉛が平面状の形態を維持しやすい点で、0.6nm〜100nmであることがより好ましく、1.0nm〜50nmであることが特に好ましく、1.0nm〜25nmであることが最も好ましい。そして薄層黒鉛はグラフェンシートが積層したものであることから、これらを満たす薄層黒鉛を構成するグラフェンの層数としては、層数が1〜600であることが好ましく、薄層黒鉛が平面状の形態を維持しやすい点で、2〜300であることが好ましく、3〜150であることが特に好ましく、3〜75であることが最も好ましい。薄層黒鉛の平均厚みは後述するB.項に記載のとおり、透過型電子顕微鏡で測定することができる。
本発明の電磁波吸収体に用いられる薄層黒鉛の平均大きさは、電磁波吸収性能やポリマー(またはプレポリマー)との混和性あるいは薄層黒鉛とポリマー(またはプレポリマー)とを含有する混合液の塗布性が阻害されない範囲であればよく、該平均大きさは0.02〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましく、0.1〜2μmであることが特に好ましい。ここで該薄層黒鉛の平均大きさは後述するE.項に記載の方法で解析できる。
電磁波吸収帯における薄層黒鉛の量は、目的とする電磁波吸収帯の誘電率に応じて適宜決定することができるが、電磁波吸収帯が適切な、すなわち複素誘電率で表される誘電率の実部が1〜50、虚部が0.25〜10の誘電特性を持つという点で、電磁波吸収帯中、あるいは各電磁波吸収層中で5〜30体積%の含有量であることが好ましく、8〜25体積%であることがより好ましい。
また、本発明の電磁波吸収体における電磁波吸収帯は、薄層黒鉛を電磁波吸収材として用いることにより、空隙率を大幅に低下させることが可能である。詳しいことは明らかになっていないが、薄層黒鉛の有する薄さとポリマー(またはプレポリマー)との親和性を具有することにより塗布あるいは成型時の流動性ないし変形追従性に優れるためと考えられる。そして本発明における電磁波吸収帯は、機械的強度を向上させる観点から、空隙率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることが好ましく、空隙率が2%以下であることが特に好ましい。ここで電磁波吸収帯の空隙率は後述するF.項に記載の方法で求められる。
薄層黒鉛は、酸素原子に由来する一定の酸化度を有する。本発明における酸化度とは、薄層黒鉛における酸素原子の原子組成百分率(アトミックパーセント、単位として「at%」を用いる。)であり、後述するD.項に記載の方法で平均酸化度として算出できる。通常、天然黒鉛で2〜3at%、人造黒鉛でもわずかながら(1at%未満)、それぞれ酸化度を有する。
前述の物理的および/または化学的な処理を経て得た薄層黒鉛は、空気中の酸素ないし添加された試薬等から酸素原子を含む官能基が付加されて、原料黒鉛に比べて酸化度が増加する傾向にある。そして該酸化度は高いほど前述の親和性や分散性が向上しうるが、一方で酸化度が高いと電磁波吸収性能に関係のある導電性や誘電特性が低下することもあるため、平均酸化度は5〜30at%であることが好ましい。
そして電磁波吸収体の設計においてより薄くかつ高い吸収性能(吸収量)を持ちうるという点で薄層黒鉛の平均酸化度は5〜25at%であることが特に好ましい。
なお本発明の薄層黒鉛は、電磁波吸収性能を阻害しない範囲において、炭素原子や酸素原子、水素原子以外の異元素、例えばホウ素(B)や窒素(N)、硫黄(S)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、などを5at%以下の原子組成百分率で含まれても良い。これら異元素の解析は後述するD.項に記載の方法により算出することができる。
本発明の電磁波吸収体の電磁波吸収帯ないし電磁波吸収層に含有される薄層黒鉛は、1種類を単独で用いても良く、あるいは複数種を用いても良い。後述するように、電磁波吸収帯を2層以上の複数層で構成する場合、あるいは2層以上の電磁波吸収層を積層した後に層同士を結合させて厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の変化を有する電磁波吸収帯を構成する場合、各電磁波吸収層の電磁波吸収特性を薄層黒鉛の種類を変更することで種々設計することができるため、電磁波吸収体全体としては複数種の薄層黒鉛を用いるのが好ましい。該薄層黒鉛の種類を変更する場合、前述の薄層黒鉛の平均厚みや平均大きさを変更しうるが、特に平均酸化度を変更することで、容易に電磁波吸収層の電磁波吸収特性を変更・制御することができる。そのため、平均酸化度の異なる複数の薄層黒鉛を用いることは、例えば厚さやポリマーの要求仕様があらかじめ定められている電磁波吸収体を設計しようとする場合に非常に有効である。
本発明の電磁波吸収体は、平板状の電磁波吸収帯を備え、この電磁波吸収帯は、薄層黒鉛を含有し、その厚み方向に電磁波吸収性能の不均一性を有するものである。電磁波吸収帯が平板状であることで、面内均一性に優れた吸収性能を発現しうる。また、非常に薄い層においても高い電磁波吸収性能を発揮する薄層黒鉛の特性を生かすという観点からも、平板状とする意義が大きい。ここで、「平板状」とは、扁平形状であることにより厚み方向が観念できる形状であれば特に形状は限定されず、電磁波吸収体全体の設計に応じて適宜設計することが可能である。
そして、壁等の垂直な平面に貼付する場合に自重により剥離しないこと、厚みにより嵩張らないこと、また製造時や設置施工時の取扱い性が容易であること等から、電磁波吸収帯の厚みは15mm以下であることが好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下が特に好ましく、2mm以下が最も好ましい。
また、本発明の電磁波吸収体は、全体としてもシート状の形状を有することが好ましい。ここで、「シート状の形状を有する」とは、電磁波吸収体が扁平形状であり、電磁波吸収体の扁平面方向における最も幅の狭い部分が、厚みの3倍以上の長さを持つ形状を有することをいう。また、電磁波吸収体の適用用途が広がる点、および、ロールツーロールプロセス(ロール状に巻かれた基材への連続的な製造プロセス)での製造が可能になる点からは、可撓性を有し、巻き取り可能なシート状であることが特に好ましい。
また本発明における平板状の電磁波吸収帯は、層の厚み方向に電磁波吸収性能の不均一性を有する。このような不均一性を有することにより、1つの電磁波吸収体に広い波長域に渡る電磁波を吸収しうる特性を付与することができる。
電磁波吸収帯は、厚み方向に電磁波吸収性能の不均一性を有し、対象とする電磁波の帯域に吸収特性を有する限りにおいて、1層の電磁波吸収層で形成されても良く、2層以上の電磁波吸収層から構成されても良いが、対象とする電磁波の帯域に応じた設計の容易さや、製造の簡便さの観点から、2層以上の電磁波吸収層から構成されることが好ましい。2層以上の電磁波吸収層から電磁波吸収帯を構成する場合、吸収対象周波数の相違する2層以上の電磁波吸収層を備えるよう構成することが好ましい。この場合、電磁波吸収帯の厚み方向の電磁波吸収性能の不均一性は、吸収対象周波数の相違する2層以上の電磁波吸収層を備えることにより発現することになる。
本発明において、2層以上の電磁波吸収層は、製造する電磁波吸収体が目的とする吸収周波数帯、あるいは厚みなどの要求特性に応じて選択することができる。電磁波吸収性能の不均一性を発現させるためには、少なくとも1層の電磁波吸収層が、その他のいずれかの層と異なる吸収対象周波数を有するものであることが必要である。これを満たす限り、電磁波吸収帯は互いに同一の吸収対象周波数を有する複数の電磁波吸収層を有していてもよいが、全ての層が互いに異なる吸収対象周波数を有する電磁波吸収層によって構成されていることが好ましい。また、積層する電磁波吸収層の数もまた、電磁波吸収体の要求特性により適宜決定される事項であり、何ら限定されるものではないが、広帯域での電磁波吸収性能を担保する観点からは3層以上であることが好ましく、4層以上であることがより好ましい。また薄さと軽量性を担保し、設計を容易にする観点からは、10層以下であることが好ましく、6層以下であることがより好ましい。本明細書において、吸収対象周波数とは、各電磁波吸収層が10dB以上の電磁波吸収性能を発揮する周波数帯域をいう。
図1は、本発明の電磁波吸収体の一実施態様を示す模式図である。図1に示すように、例えば、電磁波吸収体6は、電磁波を反射する基板1の上に、電磁波吸収帯5を設けることにより形成することができる。この電磁波吸収帯5は、3層の電磁波吸収層2,3,4を積層させて構成することができる。電磁波吸収層2,3,4は、それぞれの吸収対象周波数が互いに相違するとよい。
本発明の電磁波吸収帯は薄層黒鉛を含有するものであるため、各電磁波吸収層のうち少なくとも1層は薄層黒鉛を含有する必要がある。この限りにおいて、電磁波吸収帯は薄層黒鉛を含まない電磁波吸収層を有していてもよいが、電磁波吸収体全体としての薄さと軽量性を担保する観点からは、全ての電磁波吸収層が薄層黒鉛を含有するものであることが好ましい。薄層黒鉛を含まない電磁波吸収層としては、例えば、メガヘルツ(MHz)以下の長波長電磁波を吸収する磁性層や、表面コートとしての機能を兼ねうるあるいは低誘電率層として機能しうるポリマーのみの層等が挙げられる。
電磁波吸収層は、薄層黒鉛の濃度を変える、含有する薄層黒鉛の酸化度を変える、含有するポリマーの種類を変える、厚みを変える等の様々な方法により、その吸収対象周波数を調整することができる。吸収対象周波数の相違する2層以上の電磁波吸収層により不均一性を形成する場合、どのような手段により吸収対象周波数を調整したものを用いてもよいが、設計する電磁波吸収体の厚みや比重の制限に依らずに適用できるという点で、含有する薄層黒鉛の酸化度が相違する複数の電磁波吸収層を用いることが好ましい。
これら2層以上の電磁波吸収層を形成する方法は特に制限はなく、接着、溶着等により積層することができるが、電磁波吸収の設計の観点からは、接着剤を用いず、熱可塑性ポリマーからなる電磁波吸収層同士の熱接着を行うことが好ましい。
また、薄層黒鉛と、ポリマーまたは重合前のモノマーやプレポリマーなどの前駆体を含む混合液を、基材上に順次塗布して電磁波吸収層を形成する方法も、好ましい方法として挙げられる。この方法は、工程数が少なくかつ簡便な手法であり、また接着剤を用いないために設計が容易で設計自由度も高い。また異なる電磁波吸収特性を有する電磁波吸収層を積層する場合にも、設計する順に塗布・積層するだけでよく、適当な溶媒を選択することで電磁波吸収層の層間の結合も容易であるため、優れた手法である。
ここで、基材としては、樹脂基材、織物や編み物、不織布などの繊維基材、金属やセラミック等の無機基材、黒鉛平板基材等が挙げられるが、後述する、電磁波を反射する基板であることが好ましい。すなわち、電磁波を反射する基板上に電磁波吸収層を形成するための混合液を順次塗布・積層することで、簡易な工程で本発明の電磁波吸収体を製造することが可能である。
より具体的には、薄層黒鉛と溶媒可溶性ポリマーと溶媒とを混合して、または熱硬化性ポリマーや光硬化性ポリマーの場合は硬化するモノマーないしプレポリマーと薄層黒鉛とを混合して、混合液を調製する。ここで、混合手法としては超音波ホモジナイザー、遊星ボールミル、ミキサーミルなどを用いることができる。そして、調製して得た混合液を電磁波を反射する基材上に塗布したのち、溶媒を乾燥させることで塗膜を形成する。ここで塗布直後の塗膜の厚みは0.1〜200μmであることが好ましい。この厚みとなるように塗工装置で塗膜を形成した後、膜の厚みや使用する樹脂、溶媒により異なるものの、好ましくは80〜150℃の雰囲気下、1〜30分加熱乾燥して、好ましくは35μm以下の厚みの電磁波吸収層を得る。乾燥後の厚みを大きくする場合には、重ね塗りを行うことが好ましい。
また、適切な溶媒、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン、ベンゼン、キシレン、n−ヘキサン、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、等を選択することで、前層の表面をわずかに溶解ないし活性化することで次に塗布する層と結合させることができる。ここで塗布には塗工装置を用いることができ、ダイコーター、バーコーター、アプリケーター、スプレーコーター、スピンコーター、インクジェットコーター等を好適に採用できる。
また本発明の電磁波吸収体における電磁波吸収帯の厚み方向の電磁波吸収性能の不均一性は、該電磁波吸収帯が、その厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の変化を有することにより発現するものであってもよい。この場合、電磁波吸収帯は実質的に1層であるが、無限の層からなる電磁波吸収帯と同意であるとも言え、その電磁波吸収特性は、前述の2層以上電磁波吸収層を設けてなる電磁波吸収帯と類似する。すなわち、電磁波吸収帯が実質的に1層からなる態様においては、「電磁波吸収層」は「電磁波吸収帯」と同意である。
該厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の変化を設ける方法は種々あり、2種以上の薄層黒鉛の含有割合を連続的に変化させる方法や、ポリマーの含有割合を連続的に変化させる方法、薄層黒鉛の含有割合を厚み方向に連続的に変化させる(すなわち、厚み方向に薄層黒鉛の密度変化をつける)方法などがあるが、電磁波吸収性能の調整が容易であることから、薄層黒鉛の密度変化により連続的に電磁波吸収性能を変化させる方法が好ましい。
この場合、電磁波吸収帯が有する電磁波吸収性能の変化は、必ずしも電磁波吸収帯の一面から他面へと向かう単調関数的な変化である必要はないが、電磁波の反射を抑制し、より効率的な吸収特性を有する設計のため、電磁波吸収性能が単調関数的に変化するものであることが好ましい。すなわち、電磁波吸収帯は、厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の勾配を有していることが好ましい。
さらに、電磁波吸収効率を向上させる観点からは、電磁波入射面から他面に向かうにつれ、複素誘電率の実部の値が序々に高くなるよう設計することが好ましい。
薄層黒鉛の密度勾配により電磁波吸収性能の変化を担保する場合においては、電磁波入射面から他面に向かうにつれて薄層黒鉛密度が高くなる密度勾配を設けることが好ましい。
厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の変化を付与する方法は特に限定されないが、例えば、互いに異なる吸収対象周波数を有する、熱可塑性ポリマーを含有する電磁波吸収層を複数層積層し、その後、該熱可塑性ポリマーの融点または軟化点温度以上に短時間加熱溶融したのち、冷却する方法を用いることができる。
また、1層に形成した熱可塑性ポリマーを含有する電磁波吸収帯を、該熱可塑性ポリマーの融点または軟化点温度以上の温度で必要時間加熱することによっても、電磁波吸収帯に連続的な電磁波吸収性能の変化を付与せしめることが可能である。これは、熱可塑性ポリマーを溶融することで、熱対流により比重の小さいポリマーが上部へ、比重の大きな薄層黒鉛が下部へ、それぞれ徐々に移動し、上部と下部とで密度勾配が形成されることによる。
ここでポリマーの融点は下記G.項に、また軟化点温度は下記H.項に記載の方法にてそれぞれ測定される。また加熱時間は60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。但し十分な連続構造形成時間をとるという点で、5分以上であることが好ましい。また、薄層黒鉛の濃度あるいは酸化度が序列を持って異なる複数の分散液を塗布・乾燥を繰り返しながら電磁波吸収層を積層することによって連続して変化させる方法や、溶媒可溶性ポリマーあるいはプレポリマーの場合は薄層黒鉛とポリマーとの比重差を利用して、薄層黒鉛をポリマー溶液あるいはプレポリマー中に分散させた分散液を、長時間かけて薄層黒鉛とこれらポリマー溶液あるいはプレポリマーとの比重差を利用して薄層黒鉛を沈降させながら固化する方法、厚み方向に連続して含有する混合液を複数、好ましくは3種以上用意し、混合割合を連続的に変えるように塗布積層する方法によっても、厚み方向に薄層黒鉛含有量の密度勾配を有する電磁波吸収帯を形成することができる。
所望の特性を発現せしめるべく前述の薄層黒鉛を電磁波吸収体において保持するには様々な材料、例えば蝋やワックス、アスファルト、セメント等、薄層黒鉛を含有せしめた後に固化しうる、多くの材料があるものの、加熱や溶媒に溶解せしめるなどの手法で薄層黒鉛を含有したままでも優れた賦型性を有する点から、本発明の電磁波吸収体における電磁波吸収帯および/または電磁波吸収層はポリマーを含有することが好ましい。
該ポリマーは、特に限定されず、後述する工程や使用環境で求められる耐久性に応じて、熱可塑性ポリマー、溶媒可溶性ポリマー、熱硬化性ポリマー、光硬化性ポリマーを使い分けることができる。加熱によって容易に所望の形状、形態を付与しうる点で、熱可塑性ポリマーを用いることが好ましい。また塗布および簡便な後処理によって非常に薄い形状にしうる点で溶媒可溶性ポリマーと熱硬化性ポリマーが好ましい。
熱可塑性ポリマーは、後述するような薄層黒鉛との溶融混練によって混合されて電磁波吸収層を好適に形成しうる。熱可塑性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーやその他ビニル基の付加重合により合成されるビニル系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、シリコーン系ポリマー、芳香族あるいは脂肪族ケトン系ポリマー、天然ゴムや合成ゴムなどのエラストマー、その他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。より具体的には、ポリオレフィン系ポリマーやビニル系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらは単一モノマーの重合によるポリマーであっても良いし、あるいは薄層黒鉛の分散性を損ねない範囲において、複数のモノマーの重合により形成される共重合ポリマーであっても良い。
熱可塑性ポリマーとしては重縮合型のポリマーも好適に用いられる。重縮合型のポリマーとして、ポリアミド系ポリマーが好適に用いられ、具体的にはナイロン6、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,9、ナイロン6,12、ナイロン5,7およびナイロン5,6が例示される。その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で他の芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸と芳香族、脂肪族、脂環族ジアミン成分が用いられたポリアミド系ポリマー、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸とアミノ基を両方有したアミノカルボン酸化合物が単独で用いられたポリアミド系ポリマーでもよい。
また重縮合型ポリマーとしては、ポリエステル系ポリマーも好適に用いられる。具体的には、ジカルボン酸とジオールからなるポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート(ポリトリメチレンテレフタレートとも言う)、ポリブチレンテレフタレート(ポリテトラメチレンテレフタレートとも言う)、ポリエチレンナフタレートおよびポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、あるいは芳香族ヒドロキシカルボン酸を主成分とする溶融液晶性を有する液晶ポリエステルなどが挙げられる。またポリエステル系ポリマーとしては、ヒドロキシカルボン酸を単独モノマーとするポリエステルも挙げることができ、該ポリ(ヒドロキシカルボン酸)としては、例えばポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレートバリレート)等を好適なものとしてあげることができる。そして、これらポリエステル系ポリマーには、本発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分が共重合されていても良く、例えばジカルボン酸化合物として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができる。またジオール化合物を共重合せしめることもでき、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができる。これら共重合するジカルボン酸化合物あるいはジオール化合物は、1種を単独で用いても良いし、または発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
その他に本発明における熱可塑性ポリマーとしては、ポリカーボネート系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリエーテルケトンケトン系ポリマー、脂肪族ポリケトンなどのポリマーの他、熱可塑性セルロース系ポリマーや、熱可塑性のキチン、キトサンおよびそれらの誘導体など、天然高分子由来のポリマーなども挙げられる。
これら熱可塑性ポリマーの中で、本発明の電磁波吸収体における電磁波吸収帯および/または電磁波吸収層として耐候性や成型性、賦型性に優れることから、融点または軟化点が150℃以上のポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーが好ましく、高濃度の薄層黒鉛を含有させた場合でも軽量性に優れることから、特に融点または軟化点が150℃以上のポリオレフィン系ポリマー、融点または軟化点が200℃以上のポリエステル系ポリマーおよびポリアミド系ポリマーより選択される1または2以上のポリマーからなることが好ましい。ここで融点とは下記実施例のG.項に記載の方法にて測定されるピーク温度を指す。また軟化点は下記実施例のH.項に記載の方法にて測定される。
上記の熱可塑性ポリマーの溶融粘度は、特に制限されるものではなく、ポリマーを含有する電磁波吸収層の成型加工温度で、剪断速度が10sec-1の溶融粘度が10〜10,000[Pa・秒]のポリマーが通常用いられ、好ましくは30〜5,000[Pa・秒]である。また、該熱可塑性ポリマーの融点または軟化点温度以上の温度で必要時間加熱することによって連続帯を形成する場合は、やや粘度が低い方がより好ましいため30〜500[Pa・秒]である。ここで溶融粘度とは溶融粘度測定装置、例えば(株)東洋精機社製キャピログラフ1Bを用いて、好ましくは窒素雰囲気下、ノズル(ノズル長10mm,ノズル内径1mm〕を用いて、剪断速度10sec-1で測定し、5回測定した値の平均値を溶融粘度の測定値とすることで採用できる。なお測定時間が過度に長いと熱可塑性ポリマーの劣化が見られる場合があるため、試料の劣化を防ぐために好ましくは5回の測定を30分以内で完了するのがよい。
本発明の電磁波吸収体における電磁波吸収層は、溶媒可溶性ポリマーに少なくとも1種の薄層黒鉛を含有せしめた後、後述するような塗布あるいは型に入れて溶媒を除去することで形成することができる。また熱硬化性ポリマーや光硬化性ポリマーを用いる場合は、これらのモノマーないしプレポリマーに、必要に応じて溶媒を用いて、更に少なくとも1種の薄層黒鉛を含有せしめた後、熱や紫外線等の光照射により固化させることで形成することができる。これら溶媒可溶性ポリマー、熱硬化性ポリマー、光硬化性ポリマーの好ましいものとしては、二液混合エポキシ樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンモノマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルを挙げることができ、薄層黒鉛の分散性が良いことと、塗工程の容易さからポリビニルブチラールが最も好ましい。なお溶媒可溶性ポリマーについては、好ましい溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、イソプロパノール(IPA)、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)を用いることができ、特にIPA、DMF、NMPが好ましい。これら溶媒は1種類を単独で用いても良く、発明の趣旨を損ねない範囲で、薄層黒鉛の分散性を向上させるなど目的や必要に応じて2種類以上を混用してもよい。
本発明の電磁波吸収帯または電磁波吸収層には、上記の中から選ばれるポリマーのうち1種類を単独で用いても良く、また発明の趣旨を損ねない範囲において複数種のポリマーを併用しても良い。
また、本発明の電磁波吸収帯における電磁波吸収層は、発明の趣旨を損ねない範囲において、必要に応じて、薄層黒鉛を均一に分散せしめる分散剤を含むことができる。具体的には、芳香族エーテル型、カルボン酸エステル型、アクリル酸エステル型、リン酸エステル型、スルホン酸エステル型、脂肪酸エステル型、ウレタン型、フッ素型、アミノアマイド型、アクリルアマイド型などの非イオン系界面活性剤、ボスホニウム含有ポリマーなどの陽イオン界面活性剤、カルボン酸型、リン酸型、スルホン酸型、ヒドロキシ脂肪酸型、脂肪酸アマイド型などの陰イオン系界面活性剤が用いられる。中でも、前述あるいは後述の塗布による電磁波吸収層の形成において、低粘度の塗工液中での薄層黒鉛の分散性が安定化する観点から、リン酸エステル型界面活性剤が好ましい。
本発明の電磁波吸収帯または電磁波吸収層は、本発明で目的とする電磁波吸収性能を損ねない範囲において、薄層黒鉛やポリマー以外の難燃剤、滑剤、酸化防止剤、結晶核剤、末端基封止剤等の添加剤や、粒子状や棒状、繊維状の金属微粒子やファーネスブラック、ケッチェンブラックあるいはアセチレンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素系微粒子を少量含有しても良い。
本発明の電磁波吸収体は、電磁波入射面の他面側に電磁波を反射する基板を設けたものであることが好ましい。すなわち、本発明の電磁波吸収体は、電磁波入射面から、電磁波吸収帯、電磁波を反射する基板、の順に積層された構造を有することが好ましい。このように構成することで、電磁波吸収体に入射する電磁波を基板で反射させ、電磁波を電磁波吸収帯中で往復させることができ、更に電磁波を効率的に吸収することが可能となる。
電磁波を反射する基板としては、導電性の高い素材であることが好ましく、金属からなる板やシート、箔、あるいはメッキが好適に用いられる。電磁波吸収体自体を薄くすることで軽量性に優れることから、金属からなる電磁波を反射する基板の厚さは薄い方が好ましい。
電磁波吸収体を薄くするためには、基板も薄い方が好ましいため、該基板の厚さとしては500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。また該基板は薄い方が好ましいものの、十分な電磁波反射性を有する必要があることから、厚さ50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。
このように、電磁波を反射する基板は薄いことが好ましいことから、膜、箔、あるいはメッキで形成されることがより好ましい。特にメッキは、非常に薄い薄膜状の基板を形成でき、かつ接着剤が不要で設計された電磁波吸収性能の再現性に優れることから特に好ましく、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティングなどの真空メッキ法により形成される薄膜が電磁波を反射する基板であることが最も好ましい。
基板に用いられうる金属の種類として具体的には、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)が好ましいものとして挙げられる。これらの金属は、単体で用いられてもよく、あるいは電磁波を反射する機能を有する限り、これらの金属の化合物、すなわち、酸化物、窒化物、炭化物、硫黄化物等の金属化合物として用いられてもよく、あるいは複数種類の金属から構成されてなる金属化合物として用いられてもよい。
ここで複数種類の金属を併用する場合は、例えば一種類目の金属あるいは金属化合物を用いて薄膜(基板)を形成した後に二種類目以上の金属あるいは金属化合物を上から薄膜形成させて積層してもよいし、あるいは複数種の金属あるいは金属化合物を同時に存在させて薄膜形成させても良い。そして高々三種類の金属を含んでなることが好ましい。
これらの中で工程および時間が少なくて済む点で一種類の金属であることがより好ましい。なお一種類の金属であることが好ましいものの、0.1%未満の割合の金属成分は、該基板として形成された金属種の数に含まない。そして特にこれら金属の中でメッキ性(薄膜形成性)が良好であるため好ましいのはアルミニウム、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、金あるいはこれらの化合物であり、アルミニウム、銅、銀、金が入手容易性の点で特に好ましい。
また電磁波を反射する基板は、上記金属以外でもよく、高導電性の炭素材料が好適に用いられ、炭素繊維織物やグラファイトシートなどが好適に用いられる。特にグラファイトシートは前述したように樹脂フィルムの焼成処理により製造され、極めて電磁波の反射性能が優れている。またグラファイトシートの他の種類としては、微小グラファイトが多数敷き詰められて積層されてなるシートであっても良い。微小グラファイトを多数敷き詰めて積層するには幾つかの手法があり、粉体となした微小グラファイトを平板上に吹き付けて、あるいは溶媒中に分散させた分散液を噴霧法あるいはスピンコート法などにより塗布した後、分散液の溶媒が蒸発・消失することで平板上に敷き詰められ積層されて得られる。該微小グラファイトからなるシートはプレスなどの方法により、緻密かつ非常に薄い基板となりうる。
そしてこれら電磁波を反射する基板としては、真空メッキ法により形成される金属薄膜、樹脂フィルムの焼成処理により製造されるグラファイトシートまたは微小グラファイトが多数敷き詰められて積層されてなるシートが特に好ましい。
本発明の電磁波吸収体は、発明の趣旨を損ねない範囲で他の層を設けても良い。具体的には保護層などの耐久性や耐候性を補佐する層、あるいは強度などの物理物性を補佐する層を設けても良い。
本発明は、前述の通り、任意の周波数帯域に電磁波吸収特性を有する電磁波吸収体とすることができるものであり、目的とする周波数帯域は特に限定されない。しかし、GHz帯に吸収対象周波数帯を有する電磁波吸収体は、これまで十分な性能のものが得られておらず、本発明の効果をひときわ発揮することができるものと考えられる。このような観点からは、電磁波吸収性能測定により得られた吸収スペクトルにおいて、1GHz以上の周波数帯域で、25dB以上の電磁波吸収性能を有する周波数が、1GHz以上の帯域にわたり連続することが好ましい。また、25dB以上の電磁波吸収性能を有する周波数が2GHz以上の帯域にわたり連続することが好ましく、5GHz以上の帯域にわたり連続することがより好ましく、10GHz以上の帯域にわたり連続することが特に好ましく、30GHz以上の帯域にわたり連続することが最も好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的かつより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。なお実施例中の部は特に具体的な記載のない限り重量部を意味する。実施例中の物性値は、下記の方法によって測定した。
A.電磁波吸収層の厚みおよび電磁波吸収体の総厚みの測定
株式会社テクロック製SM−125を用いて、無作為に抽出した10個の試料の、任意の厚み10点を測定して、その平均した値を電磁波吸収層の厚みとして得た。
B.薄層黒鉛の平均厚みの測定方法
試料は、ポリマー中に分散された薄層黒鉛をそのまま、あるいは粉体状の薄層黒鉛であればあらかじめエポキシ樹脂中に包埋して使用した。各試料は、窒素雰囲気下80℃で乾燥した後、FEI社製Strata DB235を用いて加速電圧30kVで集束イオンビーム法により試料薄膜を作製して、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製透過電子顕微鏡H−9000UHR IIIを用い、加速電圧300kVで、薄層黒鉛厚みが50nm未満であれば200万倍で、50nm以上500nm未満であれば20万倍で、500nm以上5μm未満であれば2万倍でそれぞれ観察して、1つの画面に存在する薄層黒鉛を無作為に30個抽出して各薄層黒鉛1つのドメインの最大厚みを測定し、100μm以上離れた異なる3点の厚みの平均値で薄層黒鉛の平均厚みとした。
C.誘電率および電磁波吸収性能の測定方法
(誘電率測定)
アジレントテクノロジー(株)製ネットワークアナライザ8722Dおよび関東電子(株)製の材料定数測定ソフト85071を用いて測定した。
試料調製は、1〜18GHzの測定においては内径3.04mm、外形7.0mmの円盤で内側に穴のあるドーナツ型、18GHz〜50GHz以上は、外径寸法10.7mm×4.3mm×4.3mm〜5.7mm×2.85mm×2.85mmの直方体型にそれぞれ削り出し加工して、計測に供した。また50GHz以上の周波数では、ホーンアンテナの中央に直径50.2mmの試料を金属リングで設置固定して、フリースペース型Sパラメータ法により、SパラメータのS11、S21を測定し反射係数と透過係数を算出し、そこから、複素誘電率の実部と虚部を算出した。
(電磁波吸収性能測定)
試料は上述した誘電率測定用の試料と同様に、各周波数によって必要な試料形状に加工したのち、電磁波を反射する基板がある場合はそのまま、電磁波を反射する基板が無い電磁波吸収層のみの場合には反射材としてSUS板を試料の裏面に重ねて、それぞれ試料を固定した。測定はアジレントテクノロジー(株)製ネットワークアナライザ8722Dを用いて、Sパラメータ法により、試料への入射波と反射波の測定結果から、1〜100GHzの範囲で周波数を変化せた電磁波を照射させ、電磁波吸収量を算出した。
周波数に対する電磁波吸収量のプロットから、電磁波吸収量が最大値を示した周波数を求め、「電磁波吸性能最大ピーク周波数」とした。また1GHz以上の連続する帯域幅で25dB以上の電磁波吸収性能が測定された電磁波の帯域幅を「25dB以上の吸収量の連続する帯域幅」として求めた。
D.薄層黒鉛の平均酸化度の評価および異元素の解析方法
解析する試料は、窒素雰囲気下80℃で乾燥した後、用いた。株式会社堀場製作所製エネルギー分散型X線検出器(EDX)X−Max SILICON DRIFT X−RAY DETECTORが付属した、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡SU8020を用い、加速電圧1kV、倍率100倍で、観察視野が全て薄層黒鉛となるように観察しながら、各種原子の原子組成百分率(atomic(at)%)を解析した。酸化度については、酸素原子のat%について視野が全く重ならない別視野10か所について解析し、酸化度の平均値を求めて、当該試料の平均酸化度とした。また炭素原子や酸素原子、水素原子以外の異元素の有無についても、同一解析において、0.05at%を測定限界として、0.05at%未満であれば、無しと判断した。
E.薄層黒鉛の平均大きさの解析方法
解析する試料は、あらかじめ薄層黒鉛の分散液をスピンコート法で清浄なガラス基板上に塗布した後、窒素雰囲気下80℃で乾燥して調製した後、解析に供した。株式会社島津製作所製SFT−3500を用い、まずレーザー顕微鏡モードで観察視野が100μm×130μm程度の倍率で観察し、高さ(厚さ)が0.1μm以上の粒子に対して粒子幅を測定した。厚さが0.1μm未満の粒子については、プローブ顕微鏡モードにおいて、観察視野が30μm×30μmのダイナミックモードでマッピング観察し、各薄層黒鉛粒子の最大幅を測定した。そして平均大きさについては、レーザー顕微鏡モードのみ、あるいはプローブ顕微鏡モードのみ、各々別々で評価し、観察視野内の任意の薄層黒鉛粒子50個の粒子最大幅を測定し、更に1mm以上異なる5か所の観察視野において同様に最大粒子幅を測定してその平均値を算出し、薄層黒鉛の平均大きさとして得た。
F.空隙率の評価方法
作製した試料の重量と体積の実測値から算出した嵩密度を、試料を構成する複数の材料の密度を各材料の体積含有率で加重平均して算出した試料の真密度で除し、空隙率=[1−(嵩密度/真密度)]×100(%)の式から、空隙率を算出した。尚、電磁波吸収層が基材上に設けられる場合の重量と体積の実測は、基材の重量と体積を差し引くことで算出した。体積の実測は、試料が直方体に近似できる場合は各辺の長さを実測し、近似できない場合は水中に浸漬して増加した水の体積を測定することで行った。
G.ポリマーの融点(Tm)の測定
パーキンエルマー社製示差走査熱量分析装置(DSC−2)を用いて試料10mgで、昇温速度16℃/分で熱可塑性ポリマーの融点(Tm)を測定した。Tmの定義は、一旦昇温速度16℃/分で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、約(Tm1+20)℃の温度で5分間保持した後、室温まで急冷し、(急冷時間および室温保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に、結晶の融解温度として観測される吸熱ピーク温度をTmとした。
H.ポリマーの軟化点温度(Ts)の測定
測定対象のポリマーを用いて厚さ5mm、縦横共に5cmの板状試料を作製し、シリコンオイル中でオイル温度を120℃/時間の昇温速度で昇温させながら、断面積1mm2の針で試験荷重50Nの荷重で試料に当て、侵入深さが1mmになった温度を熱可塑性ポリマーの軟化点温度(Ts)とした。
[製造例1](物理的および化学的に薄層化処理した薄層黒鉛の製造方法)
原料として平均大きさ100μmの天然黒鉛10gを株式会社レッチェ製遊星ボールミルPM100を用いて、公転回転数400rpm、公自転比1:−2、で6時間処理することで、平均大きさ4.3μmの物理的に薄層化処理した天然黒鉛を得た。その後、氷冷した400部の98%硫酸を撹拌しながら、前述の物理的に薄層化処理した天然黒鉛12部、純度99%以上の硝酸ナトリウム4部を加え、更に純度99.3%以上の過マンガン酸カリウム15部を少しずつ添加して加えたのち、20℃で4時間反応させた。反応物は460部の純水で氷冷しながら希釈した後15分間強撹拌し、更に680部の純水で希釈しながら30分間強撹拌したのち、濃度30%の過酸化水素水60部を添加して更に10分間強撹拌して反応を停止した。
得られた混合物は株式会社久保田製作所製高速冷却遠心機7780IIを用いて、重力の2000倍(2000×g)に相当する遠心力で遠心分離を行った。遠心分離後に上澄み液を除去して試料を得たのち、得られた試料に対して除去した上澄み液と同量の純水を添加し、遠心分離操作で5000×gの遠心力で30分間かけて分離して固体を得た後、更に同様に純水を用いてpHが3以上となるまで純水での洗浄と20000×gでの遠心分離処理を繰り返して、凍結乾燥して、化学的に薄層化処理した薄層黒鉛Aを得た。該薄層黒鉛は平均大きさ1.1μm、平均厚みは2.3nm、酸化度は21at%であった。またC、O、H以外の元素は測定限界未満であった。
[製造例2](物理処理による薄層黒鉛の製造方法)
黒鉛(XGscience社製、タイプM−5)3.0gを株式会社レッチェ製ミキサーミルMM100の容量50mlのSUS容器に入れ、直径10mmのSUSボールを入れて、10分撹拌と2分静置を6回繰り返し、薄層黒鉛の平均大きさが4.9μm、平均厚み8.3nm、酸化度10.7at%である薄層黒鉛Bを得た。また黒鉛(XGscience社製、タイプC−750)3.0gをKEYENCE社製ハイブリッドミキサーHM500を用いて、公転2000rpm、自転800rpmで60分処理することにより、薄層黒鉛の平均大きさが1.9μm、平均厚さ4.5nm、酸化度7.1at%の薄層黒鉛Cを得た。薄層黒鉛B、CともにC、O、H以外の異種元素は測定限界未満であった。
[実施例1]
製造例2で得た薄層黒鉛Cを1.15gと溶媒可溶性ポリマーとしてポリビニルブチラール(軟化点温度181℃、以下、PVB)3.25gをN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMP)11.7ml中に分散させた混合液とを、株式会社レッチェミキサーミルMM100の容量50mlのSUS容器に入れ、直径5mmのSUSボール10個入れて、45分処理し、薄層黒鉛混合分散液C(PVBに対する薄層黒鉛含有量:15体積%;薄層黒鉛Cの比重2.0、PVBの比重1.0として算出)を得た。また同様の方法により、製造例2で得た薄層黒鉛Bを0.72g、また0.34g(それぞれPVBは3.25g)をそれぞれ用いて、薄層黒鉛混合分散液B1(PVBに対する薄層黒鉛含有量:10体積%;薄層黒鉛Bの比重2.0として算出)、およびB2(PVBに対する薄層黒鉛含有量:5体積%)をそれぞれ得た。
電磁波吸収体を得る際に、前記得られた混合分散液C、B1、B2を用いて、福田金属箔粉社製33μm厚の圧延銅箔(基板)上に、コーティングテスター社製マルチアプリケーターを用いて塗布した。マルチアプリケーターは乾燥後の厚みが30ないし40μmとなるように、クリアランスを調節し、塗工速度は50mm/分で動かした。そして各層に必要な厚みとなるように複数回塗布と乾燥を繰り返して、各層を形成した。すなわち、混合分散液Cを用いた塗布および乾燥を5回繰り返し、基板上に乾燥後の厚みが150μmになるようにア層を形成した。次にア層の上に、混合分散液B1を用いた塗布および乾燥を10回繰り返し、乾燥後の厚みが300μmになるようにイ層を積層した。次いでイ層の上に、混合分散液B2を用いた塗布および乾燥を14回繰り返し、乾燥後の厚みが700μmになるようにウ層を積層して、電磁波吸収層の厚み1141μm、電磁波吸収体としての総厚み1174μmとなるシート状の電磁波吸収体を得た。なお各層を塗布積層する間の乾燥は130℃で30分間、窒素雰囲気下で行った。電磁波吸収性能を測定したところ、250GHzおよび290GHzに大きな吸収ピークを有する、25dB以上の吸収量が連続する帯域幅が80GHzもの広帯域に対応する電磁波吸収体が得られた。該電磁波吸収体は表面が極めて平滑なシート状の電磁波吸収体であり、電磁波吸収層に空隙は全く見られなかった。
Figure 0006266242
[実施例2]
熱可塑性ポリマーとして日本ポリプロ株式会社製ポリプロピレン(タイプ ノバテックPP MA3、融点162℃、以下PP)を用いて、このペレットを50℃10時間真空乾燥した後、2軸エクストルーダを用いて、溶融したPPに窒素雰囲気下で製造例1において得られた薄層黒鉛Aと製造例2で得られた薄層黒鉛Cをそれぞれ30体積%、18体積%となるように添加/混練した後、吐出されたガットを水道水で冷却したのちカッターで切断して混練ペレットA,混練ペレットCを得た。混練ペレットを50℃10時間真空乾燥した後、190℃の加熱プレスで混練ペレットAを使ったものは5.0mm(A層)、混練ペレットCを使ったものは2.5mm(C層)の厚さにプレスしてシート状の電磁波吸収層を得た。そして該シート状の電磁波吸収層を50℃10時間真空乾燥した後、これらを重ねて、SUS平板上で170℃で5分間加熱して結合して平板状の電磁波吸収帯を得た。該シート状の電磁波吸収帯に、混練ペレットCを用いたシートの面にマグネトロンRFスパッタ装置を用いて、銅からなる厚み0.5μmの電磁波を反射する基材層を設けて、総厚み7500.5μmの表面が極めて平滑な電磁波吸収体を得た。電磁波吸収性能を測定したところ、32GHz、50GHz、69GHzに大きな吸収ピークを有する、22GHz以上100GHzの周波数帯(測定上限が100GHz)で25dB以上の吸収量が連続する帯域幅が78GHz以上の広帯域に対応する電磁波吸収体が得られた。
[実施例3]
熱可塑性ポリマーとして実施例2のPPを用いて、このペレットを50℃10時間真空乾燥した後、2軸エクストルーダを用いて、溶融したPPに窒素雰囲気下で製造例2において得られた薄層黒鉛Bを15体積%となるように添加/混練した後、吐出されたガットを水道水で冷却したのちカッターで切断して混練ペレットBを得た。該混練ペレットBを50℃10時間真空乾燥した後、190℃の加熱プレスで1.0mmの厚さにプレスしながら30分保持して、厚み方向に薄層黒鉛の濃度が連続的に変化している(上部から下部に徐々に薄層黒鉛の濃度が高くなり、密度勾配が形成されている)シート状の電磁波吸収帯を得た。該電磁波吸収帯のプレス時に下面だった面にマグネトロンRFスパッタ装置を用いて、銅からなる厚み0.5μmの電磁波を反射する基材層を設けて、総厚み1000.5μmの表面が極めて平滑な電磁波吸収体を得た。電磁波吸収性能を測定したところ、24GHz、42GHz、58GHzに大きな吸収ピークを有する、21GHz以上100GHzの周波数帯(測定上限が100GHz)で25dB以上の吸収量が連続する帯域幅が79GHz以上の広帯域に対応する電磁波吸収体が得られた。
[比較例1]
黒鉛(XGscience社製、タイプM−5)を1.15gとポリビニルブチラール(以下、PVB)3.25gをN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMP)11.7ml中に分散させた混合液とをヒールッシャー製超音波ホモジナイザー(タイプUP400S−T)で、60W,1時間処理し、薄層黒鉛混合分散液(樹脂に対する薄層黒鉛含有量:10体積%)を得た。該分散液を実施例1と同様の方法により銅箔上に塗布したところ、塗布斑が頻発し、表面がざらざらかつ部分的に凹凸を有する膜厚均質性の劣る電磁波吸収体を得た。電磁波吸収層内部には多数の空隙が見られた。また電磁波吸収性能も低いものであった。
[比較例2]
参考例1で得た薄層黒鉛Aを1.15gとポリビニルブチラール(以下、PVB)3.25gをN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMP)11.7ml中に分散させた混合液とを、株式会社レッチェミキサーミルMM100の容量50mlのSUS容器に入れ、直径5mmのSUSボール10個入れて、45分処理し、薄層黒鉛分散液A(PVBに対する薄層黒鉛含有量:15体積%;薄層黒鉛Aの比重2.0、PVBの比重1.0として算出)を得た。得られた薄層黒鉛分散液Aを福田金属箔粉社製33μm厚の圧延銅箔(基盤)上に、コーティングテスター社製マルチアプリケーターを用いて塗布した。マルチアプリケーターは乾燥後の厚みが30ないし40μmとなるように、クリアランスを調節し、塗工速度は50mm/分で動かした。これにより厚み34μmの電磁波吸収帯を有するシート状の電磁波吸収体を得た。電磁波吸収層に空隙は全く見られなかったが25dB以上の電磁波吸収量を示す連続する帯域幅が0.9GHz分であり電磁波吸収帯域が狭いものであった。
[比較例3]
実施例3において190℃の加熱プレスを行ってシート状の電磁波吸収帯を得る際に、3分保持した以外は実施例3と同様の手法により厚み1.0mmの電磁波吸収帯を有する電磁波吸収体を得た。該電磁波吸収帯は厚み方向に均質な薄層黒鉛分散構造を1層形成するのみで、電磁波吸収層に空隙は全く見られなかったが25dB以上の電磁波吸収量を示す連続する帯域幅が0.9GHz分であり電磁波吸収帯域が狭いものであった。
本発明の電磁波吸収体は、現在あるいは将来的に、情報量の多いGHz帯電磁波向けの障害となりうる不要電磁波を高性能で吸収する電磁波吸収体として、コンピューターの無線通信や携帯電話等の情報通信機器分野、自動料金収受システム(ETC)や車載レーダーに代表される高度道路交通システム(ITS)、高精細ハイビジョン放送など幅広い用途において優れた性能や機能を十分に発現しうる。
1:電磁波を反射する基板
2〜4:電磁波吸収層
5:電磁波吸収帯
6:電磁波吸収体

Claims (12)

  1. 平板状の電磁波吸収帯を備える電磁波吸収体であって、
    前記電磁波吸収帯は、平均酸化度の異なる複数種の薄層黒鉛を含有することにより、厚み方向に電磁波吸収性能の不均一性を有するものである、
    電磁波吸収体。
  2. 前記電磁波吸収帯が、2層以上の電磁波吸収層から構成されるとともに、
    前記電磁波吸収帯における電磁波吸収性能の不均一性が、それぞれ平均酸化度の異なる薄層黒鉛を含有する2層以上の電磁波吸収層を備えることにより発現するものである、
    請求項1に記載の電磁波吸収体。
  3. 前記電磁波吸収帯の電磁波吸収性能の不均一性が、該電磁波吸収帯の厚み方向に、含有する前記薄層黒鉛の連続的な平均酸化度の変化を有することにより発現するものである、
    請求項1に記載の電磁波吸収体。
  4. 前記電磁波吸収帯の電磁波吸収性能の不均一性が、さらに、前記電磁波吸収帯の厚み方向の、薄層黒鉛の密度変化によっても発現するものである、
    請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  5. シート状の形状を有する、請求項1〜のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  6. 前記電磁波吸収帯が、10%以下の空隙率を有する、
    請求項1〜のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  7. 前記電磁波吸収帯が、さらにポリマーを含有する、請求項1〜のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  8. さらに、電磁波を反射する基板を有し、
    前記電磁波吸収帯が、前記基板上に設けられている、
    請求項1〜のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  9. 電磁波吸収性能測定により得られた吸収スペクトルにおいて、1GHz以上の周波数帯域で、25dB以上の電磁波吸収性能を有する周波数が1GHz以上の帯域にわたり連続する、請求項1〜のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  10. 平板状の電磁波吸収帯を備える電磁波吸収体の製造方法であって、
    層以上の、それぞれ平均酸化度の異なる薄層黒鉛を含有する電磁波吸収層を積層することで、前記電磁波吸収帯を形成するステップを有する、
    電磁波吸収体の製造方法。
  11. さらに、積層した電磁波吸収層同士を結合させて、厚み方向に連続的な電磁波吸収性能の変化を有する電磁波吸収帯を形成するステップを有する、請求項10に記載の電磁波吸収体の製造方法。
  12. 前記2層以上の、薄層黒鉛を含有する電磁波吸収層が、熱可塑性ポリマーを含有するものであり、
    前記電磁波吸収層同士の結合が、前記熱可塑性ポリマーの融点または軟化点温度以上に加熱することによる溶融結合により行われるものである、
    請求項11に記載の電磁波吸収体の製造方法。
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