JP7264608B2 - 電磁波吸収フィルム、電磁波吸収シート - Google Patents
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Description
例えば、自動車等の産業分野においてはミリ波領域の電磁波を利用するミリ波レーダー等の装置が普及している。しかし、ミリ波領域の電磁波の干渉は、種々の電気機器の誤作動の原因となる。そこで、特定のミリ波領域の電磁波を選択的に吸収する電磁波吸収フィルムが求められている。
本発明は、ミリ波領域の電磁波の吸収性能を容易に調整でき、製造が容易な電磁波吸収フィルムを提供する。
[1] 電磁波吸収層を2つ以上有し、前記電磁波吸収層のそれぞれは、平板状である樹脂層と、前記樹脂層の一方の面に形成された電磁波吸収パターンとを有し、2つ以上の前記電磁波吸収層のうちの少なくとも1つは、ミリ波領域の電磁波を吸収しない、電磁波吸収フィルム。
[2] 2つ以上の前記電磁波吸収層は、互いに異なる電磁波吸収パターンを有する、[1]の電磁波吸収フィルム。
[3] [1]又は[2]の電磁波吸収フィルムと、前記電磁波吸収フィルムの一方の面に設けられ、前記電磁波を反射する反射フィルムと、を有する、電磁波吸収シート。
[4] 前記反射フィルムが、透明かつ平板状である基材層と、前記基材層の一方の面に配置され、同じ方向に延びる2本以上の導電性線状体とを有し、前記2本以上の導電性線状体は、各導電性線状体が延びる方向と交わる方向に間隔をもって並び、かつ、互いに交差しない、[3]の電磁波吸収シート。
[5] 前記樹脂層が透明である、[3]又は[4]の電磁波吸収シート。
本明細書において「ミリ波領域の電磁波を吸収しない」とは、波長が3~8mmの領域において、電磁波の吸収率が55%以下であることを意味する。電磁波の吸収率は例えば、フリースペース型Sパラメータ法により測定される。
本明細書において「電磁波吸収パターン」とは、幾何学的な図形である単位の集合体であり、ある周波数の電磁波を選択的に透過又は反射する物体を意味する。なお、本明細書においては「電磁波吸収パターン」を単に「吸収パターン」と記載することがある。
本明細書において「導電性線状体」とは導電性を具備し、かつ形状が線状である物体を意味する。
本発明の電磁波吸収フィルムは、電磁波吸収層を2つ以上有する。そして、電磁波吸収層の少なくとも1つはミリ波領域の電磁波を吸収しない。
以下、本発明を適用した一実施形態例について説明する。以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じ値であるとは限らない。
図1は、第1実施形態に係る電磁波吸収フィルム1の平面図である。図2は、電磁波吸収フィルム1を図1に示すy軸方向から見たときの側面図である。図1に示すように、電磁波吸収フィルム1は、x軸方向を長手方向とする平面状の長方形である。
図2に示すように、電磁波吸収フィルム1は第1の電磁波吸収層2と第2の電磁波吸収層3と第3の電磁波吸収層4とを有する。電磁波吸収フィルム1においては、第1の電磁波吸収層2と第2の電磁波吸収層3と第3の電磁波吸収層4がz軸方向に沿ってこの順で積層されている。
図3に示すように第1の電磁波吸収層2は、第1の樹脂層5と、第1の樹脂層5の一方の面に形成された第1の電磁波吸収パターン6とを有する。
長さL1、間隔A1及び間隔B1は、吸収対象となる電磁波の波長に合わせてそれぞれ適宜変更可能である。そのため、長さL1、間隔A1及び間隔B1は特に限定されない。長さL1は、例えば、13~20mmでもよい。間隔A1は、例えば、0.2~0.5mmでもよい。間隔B1は、例えば、3~10mmでもよい。
各図形単位u1のy軸方向の太さR1は、吸収対象となる電磁波の波長に合わせてそれぞれ適宜変更可能である。太さR1は、例えば、5~1000μmでもよく、8~500μmでもよく、10~200μmでもよい。太さR1が細いほど、電磁波吸収フィルム1の透明性及び曲面追従性を高くすることができる。
図4に示すように第2の電磁波吸収層3は、第2の樹脂層7と、第2の樹脂層7の一方の面に形成された第2の電磁波吸収パターン8とを有する。
第2の電磁波吸収パターン8は、x軸方向に3列に配置された直線状の5つの図形単位u2とy軸方向に5行に配置された3つの直線状の図形単位u2とで構成されている。すなわち、第2の電磁波吸収パターン8は、5行×3列に配列された合計15個の図形単位u2で構成される電磁波吸収パターンである。図形単位u2は、x軸方向に延びる直性状の図形である。
長さL2、間隔A2及び間隔B2は、吸収対象となる電磁波の波長に合わせてそれぞれ適宜変更可能である。そのため、長さL2、間隔A2及び間隔B2は特に限定されない。長さL2は、例えば、8~13mmでもよい。間隔A2は、例えば、0.2~0.5mmでもよい。間隔B2は、例えば、3~10mmでもよい。
各図形単位u2のy軸方向の太さR2は、吸収対象となる電磁波の波長に合わせてそれぞれ適宜変更可能である。太さR2は、例えば、例えば、5~1000μmでもよく、8~500μmでもよく、10~200μmでもよい。太さR2が細いほど、電磁波吸収フィルム1の透明性及び曲面追従性を高くすることができる。
図5に示すように第3の電磁波吸収層4は、第3の樹脂層9と、第3の樹脂層9の一方の面に形成された第3の電磁波吸収パターン10とを有する。
第3の電磁波吸収パターン10は、x軸方向に4列に配置された直線状の5つの図形単位u3とy軸方向に5行に配置された4つの直線状の図形単位u3とで構成されている。すなわち、第3の電磁波吸収パターン10は、5行×4列に配列された合計20個の図形単位u3で構成される電磁波吸収パターンである。図形単位u3は、x軸方向に延びる直性状の図形である。
長さL3、間隔A3及び間隔B3は、吸収対象となる電磁波の波長に合わせてそれぞれ適宜変更可能である。そのため、長さL3、間隔A3及び間隔B3は特に限定されない。長さL3は、例えば、1~8mmでもよい。間隔A3は、例えば、0.2~0.5mmでもよい。間隔B3は、例えば、3~10mmでもよい。
各図形単位u3のy軸方向の太さR3は、吸収対象となる電磁波の波長に合わせてそれぞれ適宜変更可能である。太さR3は、例えば、5~1000μmでもよく、8~500μmでもよく、10~200μmでもよい。太さR3が細いほど、電磁波吸収フィルム1の透明性及び曲面追従性を高くすることができる。
長さL1,L2,L3、間隔A1,A2,A3及び間隔B1,B2,B3のそれぞれは、所望する電磁波の吸収特性に応じて適宜変更可能である。
このように、複数の電磁波吸収層のうち、少なくとも一つをミリ波領域の電磁波を吸収しない電磁波吸収層とすることで、電磁波吸収フィルム1がミリ波領域の電磁波を吸収できることは全く意外な効果である。
なお、第1の電磁波吸収層2、第2の電磁波吸収層3、第3の電磁波吸収層4のうち、ミリ波領域の電磁波を吸収しない層は、少なくとも2つが好ましく、3つすべてがより好ましい。
本実施形態では、第1~第3の電磁波吸収パターン6,8,10は、それぞれ同一の形状の図形単位で構成されているが、各電磁波吸収パターンを構成する図形単位の形状は互いに異なってもよい。
本実施形態では、第1~第3の電磁波吸収層2~4にはすべて同一の形状の図形単位で構成される電磁波吸収パターンが形成されているが、各電磁波吸収層に形成される図形単位の形状は互いに異なってもよい。
すなわち、電磁波吸収フィルム1においては、形状、寸法が異なる2種類以上の図形単位を各電磁波吸収層において任意に組み合わせてもよい。この場合、2種類以上の周波数の電磁波を選択して吸収できる。
金属の材質としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金又はこれらの金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等)が挙げられる。
導電性薄膜の材質としては、金属粒子、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー等が挙げられる。
第1の樹脂層5、第2の樹脂層7、第3の樹脂層9を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。ただし、電磁波吸収フィルム1の三次元成形性を考慮する場合、各樹脂層は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂と硬化剤とを含む組成物である。
エポキシ樹脂の具体例としては、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
硬化剤の具体例としては、アミン化合物、フェノール系硬化剤等が挙げられる。
ウレタン反応により硬化する樹脂組成物としては、例えば、(メタ)アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、反応性基を有するビニル単量体の重合体と、ビニル単量体由来の反応性基と反応し得る基を有しかつラジカル重合性基を有する単量体とを反応させて得られる樹脂;エポキシ樹脂の末端に(メタ)アクリル酸等を反応させた(メタ)アクリル基を有するエポキシアクリレートが挙げられる。
反応性基を有するビニル単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体が挙げられる。
ビニル単量体由来の反応性基と反応し得る基を有しかつラジカル重合性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イソシアナート基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和ポリエステルとしては、不飽和基を有するカルボン酸(フマル酸等)をジオールと縮合した不飽和ポリエステルが挙げられる。
各樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂以外の任意成分を含んでもよい。任意成分の例としては、例えば、無機充填材、着色剤、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
着色剤の具体例としては、無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられる。
これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
接着剤としては、熱により接着するヒートシールタイプの接着剤;湿潤させて貼付性を発現させる接着剤;圧力により接着する感圧性接着剤(粘着剤)等が挙げられる。これらの中でも、簡便さの観点から、粘着剤(感圧性接着剤)が好ましい。
粘着剤の具体例としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
吸収対象となる電磁波の電気的特性を考慮する場合、第1~第3の樹脂層5,7,9は高誘電率の層であってもよい。各樹脂層が高誘電率の層であると、電磁波吸収フィルムの厚さを相対的に薄くできる。
第1~第3の樹脂層5,7,9の各樹脂層の厚さD1,D2,D3は、例えば、5~500μmでもよく、15~200μmでもよく、25~100μmでもよい。
第1~第3の電磁波吸収パターン6,8,10の高さH1,H2,H3は特に限定されず、所望する特性に応じて任意に変更可能である。第1~第3の電磁波吸収パターン6,8,10の各電磁波吸収パターンの高さH1,H2,H3は、例えば、1~100μmでもよく、5~50μmでもよく、10~30μmでもよい。高さH1,H2,H3が厚いほど、電磁波吸収性がよくなる一方、製造コストが高くなる。この点を考慮して、高さH1,H2,H3を設定してもよい。
そして、第1の電磁波吸収層2、第2の電磁波吸収層3、第3の電磁波吸収層4は、互いに異なる第1~第3の電磁波吸収パターン6,8,10を有する。
そのため、各電磁波吸収層を積層することで、図2に示すように、z軸方向で立体的な三次元形状の吸収パターンが形成される。その結果、各電磁波吸収層間で電気的な相互作用が生じ、各吸収パターンの相互インダクタンス、静電容量等の電気的な性質が影響を受ける。その結果、電磁波吸収フィルム1全体として、全く異なる吸収パターンが形成され、ミリ波領域の電磁波を吸収できるという吸収特性を発現する。
電磁波吸収フィルム1は、例えば、下記の記載に従って製造できる。
まず、第1~第3の樹脂層5,7,9を準備する。次いで、各樹脂層のそれぞれの一方の面に電磁波吸収パターンを形成する。電磁波吸収パターンを形成する際には、2つ以上の電磁波吸収層のうちの少なくとも1つが、ミリ波領域の電磁波を吸収しないように形成する。
・導電性ペーストを用いて各樹脂層のそれぞれの一方の面に電磁波吸収パターンを印刷する方法。
・各樹脂層のそれぞれの一方の面に電磁波吸収パターンを現像する方法。
・スパッタ法、真空蒸着又は金属箔の積層によって各樹脂層のそれぞれの一方の面に金属薄膜を設け、フォトリソグラフィによって金属薄膜のパターンを各樹脂層のそれぞれの一方の面に形成する方法。
・金属ワイヤーを各樹脂層のそれぞれの一方の面に配置する方法。
印刷に使用する導電性ペーストとしては、例えば、金属粒子、カーボンナノ粒子及びカーボンファイバーからなる群より選ばれる少なくとも1種以上とバインダーである樹脂成分とを含むペースト状の組成物が挙げられる。金属粒子としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属の粒子が挙げられる。バインダーである樹脂成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。ただし、金属粒子及び樹脂成分はこれらの例示に限定されない。
導電性ペーストは、さらにカーボンブラック等の黒色顔料を含んでもよい。導電性ペーストが黒色顔料をさらに含むと、印刷された電磁波吸収パターンを構成する金属粉末の金属光沢を抑え、外光の反射を抑制できる。
現像方法としては、露光マスクに覆われず、露光された部分に現像物が発現するネガ型の現像方法と露光マスクに覆われ、未露光の部分には現像物が発現するポジ型の現像方法がある。すなわち、ネガ型の現像方法では、露光マスクと反対の形に現像物として図形単位が形成される。一方、ポジ型の現像方法では、露光マスクと同じ形に現像物として図形単位が形成される。現像物に用いる金属としては通常、銀が使用される。
まず、各樹脂層のそれぞれの表面にレジストを塗布し、熱処理した後、レジストから溶媒を除去する。次に、レジストに所望のパターンを露光し、レジストパターンを現像してレジストパターンからなる層を形成する。次に、基材とレジストパターンからなる層の上に、全面に渡って蒸着膜を形成し、レジスト剥離剤を用いてレジストパターンからなる層とその上に乗っている蒸着膜とを同時に除去する。その他、各樹脂層上に金属薄膜を設け、金属薄膜上にレジストを塗布し、熱処理する。次に、エッチング処理によりレジストが塗布されていない部分の金属薄膜を除去する。その次に、必要に応じレジストを除去し、電磁波吸収パターンを形成する。
電磁波吸収パターンを形成する図形単位の表面には、図示略の金属メッキ層をさらに設けてもよい。
金属ワイヤーの詳細及び好ましい態様については<電磁波吸収シート>の項で後述する。
以上説明した本実施形態の電磁波吸収フィルムでは、各電磁波吸収層に形成された各吸収パターン間のz軸方向の立体的な位置関係が重要である。各電磁波吸収層における各吸収パターンの集合体として、電磁波吸収フィルム全体では立体的な吸収パターンが形成される。その結果、電磁波吸収フィルムがミリ波領域の電磁波を吸収できるようになる。そのため、各樹脂層に形成された各吸収パターンの微細化及び複雑化をせずとも、例えば、各樹脂層及び各吸収パターンの電気特性を考慮する等して、ミリ波領域の電磁波の吸収性能を容易に調整できる。このように本実施形態の電磁波吸収フィルムでは、電磁波の吸収性能の改良が容易である。そして、各吸収パターンを微細化及び複雑化する必要がなくなるため、本実施形態の電磁波吸収フィルムは、製造が容易である。
これに対し、本実施形態の電磁波吸収フィルムによれば、電磁波吸収フィルムの厚さ方向(図2のz軸方向)に各吸収パターンを分散して形成することで、吸収パターンの電気的特性を決定する電気定数(インピーダンス、静電容量、相互インダクタンス等)を制御できる。その結果、各電磁波吸収層に形成される吸収パターンのそれぞれを単純化でき、電磁波吸収フィルムの必要面積も相対的に少なくでき、小型化が可能となる。
以下、第2実施形態に係る電磁波吸収フィルムについて説明する。以下の説明において、電磁波吸収フィルム1について説明した構成と同一又は類似の機能を有する構成には同一の符号を付し、同一の符号の構成について、説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る電磁波吸収フィルム11の平面図である。電磁波吸収フィルム11においては、第1~第3の電磁波吸収パターン6,8,10がz軸方向で同一直線状に配置されるように、各電磁波吸収層が積層されている。そのため、図6に示すように、電磁波吸収フィルム11を平面視すると、y軸方向に一致して第1~第3の電磁波吸収パターン6,8,10が配置されていることが視認される。
以下、本発明の電磁波吸収シートについて説明する。本発明の電磁波吸収シートは、本発明の電磁波吸収フィルムと反射フィルムとを有する。
図7は、本実施形態の電磁波吸収シート50を示す断面図である。図7に示すように、電磁波吸収シート50は電磁波吸収フィルム1と反射フィルム21とをこの順で有する。
電磁波吸収シート50においては、電磁波吸収フィルム1の代わりに、電磁波吸収フィルム11を適用してもよい。
電磁波吸収シート50の透明性を考慮する場合、電磁波吸収フィルム1(11)における第1~第3の樹脂層5,7,9の各樹脂層は透明であることが好ましい。
なお、反射フィルムは、吸収対象となる電磁波を反射できる形態であれば、特に限定されない。
反射フィルム21は電磁波吸収シート50の吸収対象となる電磁波を反射する。反射フィルム21は電磁波吸収フィルム1の一方の面1aに設けられている。
基材層22は透明であり、導電性線状体23が配置される少なくとも2つの面を有する形態であれば、特に限定されない。透明性が優れ、三次元成形性が向上することから、基材層22の表面は好ましくは平滑である。
図8は、反射フィルム21の平面図である。図8に示すように、2本以上の導電性線状体23は、基材層22の一方の面に設けられ、かつ、同じ方向(図8中x軸方向)に延びている。そして、2本以上の導電性線状体23は各導電性線状体が延びる方向と交わる方向(x軸方向)に間隔Gをもって並び、かつ、互いに交差しない。
図8に示すように、反射フィルム21を平面視すると、導電性線状体23が周期的に正弦波の波形状に湾曲している。ただし、他の実施形態において、導電性線状体23は不規則に湾曲又は屈曲していてもよい。導電性線状体23を平面視した際の形状は、例えば、矩形波、三角波、のこぎり波等の波形状でもよい。
図8中、λは正弦波の波形1周期分のx軸方向の長さである。波長λは、導電性線状体23が形成する波形において、隣あう山同士又は隣り合う谷同士の間のx軸方向の長さである。
図8中、Kは正弦波の波形の振幅であり、正弦波の波形0.5周期分のy軸方向の変異幅である。振幅Kは、波形一個分の山から谷までのy軸方向の長さである。
図8中、Gは、2本以上の導電性線状体23の各導電性線状体の間隔である。間隔Gは、隣り合う2本の導電性線状体23の近接する山同士又は近接する谷同士の頂点間の距離である。
このように、反射フィルム21を平面視した際に、導電線が波形状であると、電磁波吸収シートを曲面に適用した場合でも、反射フィルム21が容易に伸長でき、曲面追従性がさらに向上する。
反射フィルム21の伸長不良、導電性線状体23の破損を抑制する観点から、波形状の導電性線状体23の振幅Kは、0.3~200mmが好ましく、0.5~160mmがより好ましい。
波長λ及び振幅Kは、デジタル顕微鏡を用いて観察することで測定できる。波長λ及び振幅Kについて、任意に選択される10か所でデータを測定し、10か所の波長λ、振幅Kの測定値の平均値を採用してもよい。
金属ワイヤーを構成する金属としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金又はこれらの金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等)が挙げられる。
金属ワイヤーは錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、はんだ等でめっきされてもよく、炭素材料、ポリマー等により表面が被覆されていてもよい。この場合、炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の非晶質炭素;グラファイト;フラーレン;グラフェン;カーボンナノチューブ等が挙げられる。
導電性糸としては、導電性繊維(金属繊維(ただし、金属ワイヤーを除く。)、炭素繊維、イオン導電性ポリマーの繊維等)を含む糸、表面に金属(銅、銀、ニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、金属酸化物を含浸させた糸等が挙げられる。
カーボンナノチューブ線状体は、例えば、国際公開第2018/097321号に記載の製造方法で製造できる。他にも、カーボンナノチューブの分散液から紡糸して、カーボンナノチューブ線状体を得てもよい。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造方法は、例えば、米国公開公報US 2013/0251619(日本国特開2011-253140号公報)に開示されている。
カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと金属とを含む複合線状体でもよい。複合線状体としては、例えば、下記の(1)~(3)が挙げられる。
(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シートもしくは束又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体。
(2)金属単体の線状体もしくは金属合金の線状体又は複合線状体とともに、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体。
(3)金属単体の線状体もしくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛等の金属単体、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
金属ワイヤーの断面の形状が多角形状である場合、多角形の外接円の直径が金属ワイヤーの直径である。
反射フィルム21は、導電性線状体23を基材層22に接着するための接着層をさらに有してもよい。基材層22の一方の面(22b)に接着層を設けることによって反射フィルム21を電磁波吸収フィルム1の表面に貼り付けやすくなる。
本実施形態の電磁波吸収シート50は、例えば、電磁波吸収フィルム1と反射フィルム21とを積層することで製造できる。
反射フィルム21は例えば、下記の記載に従って製造できる。
まず、樹脂基体を準備する。次いで、樹脂基体の一方の面に導電性線状体を配置する。この際、2本以上の導電性線状体が同じ方向に延び、各導電性線状体が延びる方向と直交する方向に間隔Gをもって並び、かつ、互いに交差しないように配置する。
以上説明した本実施形態の電磁波吸収シートは、本実施形態の電磁波吸収フィルムを有するため、電磁波の吸収性能を容易に調整でき、製造が容易である。
この場合、より複雑な立体形状である物品に適用する際でも、反射フィルムの各部位における導電性線状体の密度が均一となり、透明度のばらつき及び電磁波の吸収性能のばらつきを抑制できる。
本実施形態の電磁波吸収フィルムは、ミリ波領域の電磁波の干渉に起因する種々の電気機器の誤作動を抑制する用途に好適に適用できる。
本実施形態の電磁波吸収フィルムは、例えば、自動車用部品、道路周辺部材、建築外壁関連材、窓、通信機器、電波望遠鏡等に用いることができる。
厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを準備した。このPETフィルム上に、図3に示すような第1の電磁波吸収パターン6を形成し、第1の電磁吸収層E1を製造した。このとき、長さL1:14mm、間隔A1:0.35mm、間隔B1:20mmとした。
新たに準備したPETフィルム上に、図4に示すような第2の電磁波吸収パターン8を形成し、第2の電磁吸収層E2を製造した。このとき、長さL2:10mm、間隔A2:0.35mm、間隔B2:20mmとした。
次いで、新たに準備したPETフィルム上に、図5に示すような第3の電磁波吸収パターン10を形成し、第3の電磁吸収層E3を製造した。このとき、長さL3:5mm、間隔A3:0.35mm、間隔B3:20mmとした。
次いで、下から順に、各吸収パターンを形成する図形単位がz軸方向に同一直線状に一致して存在するように、第1の電磁吸収層E1と第2の電磁波吸収層E2と第3の電磁波吸収層E3とを積層し、実施例1の電磁波吸収フィルムを製造した。
第1の電磁波吸収層E1をそのまま比較例1の電磁波吸収フィルムとした。
第2の電磁波吸収層E2をそのまま比較例2の電磁波吸収フィルムとした。
第3の電磁波吸収層E3をそのまま比較例3の電磁波吸収フィルムとした。
下記の各例で作製した電磁波吸収フィルムについて、フリースペース型Sパラメータ法を用いて、40~60GHzの帯域で電磁波の反射特性(S11)及び透過特性(S21)を測定し、次式(1)により吸収量を算出し、電磁波吸収特性を求めた。
吸収量=入力信号-反射特性(S11)-透過特性(S21) ・・・(1)
実施例1の電磁波吸収フィルムは、40~60GHzの周波数帯において、45~50GHzの周波数のミリ波を吸収する吸収特性を具備することが判った。
比較例1~3の電磁波吸収フィルムは、40~60GHzの周波数帯において、電磁波の吸収率が50%未満であり、ミリ波を吸収する吸収特性を具備しなかった。
したがって、いずれもミリ波領域の電磁波を吸収しない電磁波吸収層(各比較例の電磁波吸収フィルム)を3層備えた実施例1の電磁波吸収フィルムが、ミリ波を吸収するという特異な性能を具備することがわかった。
2 第1の電磁波吸収層
3 第2の電磁波吸収層
4 第3の電磁波吸収層
5 第1の樹脂層
6 第1の電磁波吸収パターン
7 第2の樹脂層
8 第2の電磁波吸収パターン
9 第3の樹脂層
10 第3の電磁波吸収パターン
21 反射フィルム
50 電磁波吸収シート
Claims (5)
- 電磁波吸収層を3つ有し、
前記電磁波吸収層のそれぞれは、平板状である樹脂層と、前記樹脂層の一方の面に形成された幾何学的な図形である単位の集合体である電磁波吸収パターンとを有し、
3つの前記電磁波吸収層のすべては、ミリ波領域の電磁波を吸収しない、ミリ波領域の電磁波吸収フィルム。 - 2つ以上の前記電磁波吸収層は、互いに異なる電磁波吸収パターンを有する、請求項1に記載の電磁波吸収フィルム。
- 請求項1又は2に記載の電磁波吸収フィルムと、
前記電磁波吸収フィルムの一方の面に設けられ、前記電磁波を反射する反射フィルムと、
を有する、電磁波吸収シート。 - 前記反射フィルムが、透明かつ平板状である基材層と、前記基材層の一方の面に配置され、同じ方向に延びる2本以上の導電性線状体とを有し、
前記2本以上の導電性線状体は、各導電性線状体が延びる方向と交わる方向に間隔をもって並び、かつ、互いに交差しない、請求項3に記載の電磁波吸収シート。 - 前記樹脂層が透明である、請求項3又は4に記載の電磁波吸収シート。
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