JP6375403B2 - 電磁波吸収体および電磁波吸収体付成形品 - Google Patents

電磁波吸収体および電磁波吸収体付成形品 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波障害を防止するための電磁波吸収体および電磁波吸収体付成形品に関するものである。
近年、ミリ波(波長が1〜10mm程度、周波数が30〜300GHz)又は準ミリ波の領域の電磁波の情報通信媒体としての利用が進んでいる。例えば、車両において、障害物を検知して自動でブレーキをかけたり、周辺車両の速度や車間距離を測定して自車の速度や車間距離を制御する、衝突予防システムにおける利用が進んでいる。このような衝突予防システムが正常に動作するには、誤認防止のため、不要な電磁波をできるだけ受信しないようにすることが重要である。したがって、これらの衝突予防システムには、通常、不要な電磁波を吸収する電磁波吸収体が用いられている。
上記電磁波吸収体には、その電磁波吸収の原理により様々なタイプがある。例えば、電磁波反射層と、λ/4(λは吸収対象とする電磁波の波長)に相当する厚みを有する誘電体層と、抵抗薄膜層と、を設けたタイプ(以下「λ/4型」という)の電磁波吸収体は、材料が比較的安価であり、設計が容易であるため、低コストで作製できることが知られている。このようなλ/4型の電磁波吸収体として、例えば、特許文献1には、入射角度の広い領域にわたって機能するという優れた特性を発揮する電磁波吸収体が提案されている。
特開2003−198179号公報
特許文献1に記載の技術において、電磁波吸収体を曲面に取り付ける場合に有利な電磁波吸収体の特性については何ら検討されていない。衝突予防システムの利用が進むと、電磁波吸収体を曲面に取り付ける必要に迫られることが予想される。
このような事情に鑑み、本発明は、曲面に取り付けるために有利な特性を有する電磁波吸収体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、抵抗層と、誘電体層と、導電層とを備えた電磁波吸収体であって、前記抵抗層のシート抵抗が220〜600Ω/□の範囲に設定され、前記導電層が前記抵抗層より低いシート抵抗を有し、前記抵抗層および前記導電層の少なくとも一方が支持体を有しており、当該電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されている、電磁波吸収体を提供する。
また、本発明は、上記の電磁波吸収体を備えた電磁波吸収体付成形品を提供する。
本発明の電磁波吸収体は、曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されているため、例えば、曲面に取り付けやすい。
図1は、本発明の実施形態の一つである電磁波吸収体の断面図である。 図2Aは、図1に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。 図2Bは、図1に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。 図3は、図1に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。 図4は、本発明の他の実施の形態である電磁波吸収体の断面図である。 図5Aは、図4に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。 図5Bは、図4に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。 図6は、図4に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。
本発明の電磁波吸収体は、抵抗層と、誘電体層と、導電層とを備えた電磁波吸収体であって、前記抵抗層のシート抵抗が220〜600Ω/□の範囲に設定され、前記導電層が前記抵抗層より低いシート抵抗を有し、前記抵抗層および前記導電層の少なくとも一方が支持体を有しており、当該電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されているλ/4型の電磁波吸収体である。よって、吸収対象とする電磁波の周波数に合わせた設計が容易であり、しかも比較的安価な材料を使用することができるため、低コストで製造することができる。また、曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されているため、例えば、曲面等に沿わせて取り付けることが可能となり、今までに取り付けることができなかったところに取り付け可能となる。
なかでも、前記抵抗層が、インジウム、スズ、および亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物からなる電磁波吸収体は、所望のシート抵抗を得るための膜厚を薄くすることができ、電磁波吸収体の透明性を高めやすい。
そして、前記抵抗層が、前記支持体を有する電磁波吸収体は、耐候性に優れ、均一な電磁波吸収性能を長期に渡って発揮することができる。
また、前記抵抗層の前記支持体が、ヤング率5〜400MPaの高分子シートからなる電磁波吸収体は、曲げ剛性が低く、柔軟性を有するため、電磁波吸収体の使用箇所の選択の幅を広げることができる。さらに、その高分子シートが、ポリウレタンからなる電磁波吸収体は、耐熱性にも優れるため、使用箇所の選択の幅をより一層広げることができる。
そして、波長550nmにおける透過率が60%以上である電磁波吸収体は、透明性が要求される箇所にも用いることができるため、より一層、電磁波吸収体の使用箇所の選択の幅を広げることができる。また、透明な電磁波吸収体越しに取り付け予定部位を確認できるため、位置決め精度を高めることができ、施工性の改善を図ることができる。
透明粘着剤層をさらに備えた電磁波吸収体は、取り付ける際に、別途、粘着剤を準備する必要がなく、利便性が高い。
また、前記導電層が、インジウム、スズ、および亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物、導電性高分子、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤー、およびメタルメッシュのいずれか一つからなる電磁波吸収体は、より確実に電磁波吸収体の透明性を高めやすい。このため、透明性がより一層要求される部位への電磁波吸収体の適用が可能となる。
さらに、前記抵抗層の厚みが、10〜100nmの範囲に設定されている電磁波吸収体は、所望のシート抵抗を有する抵抗層を厚み精度の高い状態で形成することができるため、電磁波吸収効果をより均一に有する電磁波吸収体とすることができる。
そして、前記誘電体層が、比誘電率2〜20の高分子シートからなる電磁波吸収体は、誘電体層を制御しやすい厚みに設定することができるため、電磁波吸収効果をより均一に有する電磁波吸収体とすることができる。
また、前記誘電体層の高分子シートが、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエチレン、およびシリコーン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つからなる電磁波吸収体は、コストと寸法精度のバランスのとれた使い勝手のよい電磁波吸収体とすることができる。
次に、本発明の実施形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態の一例である電磁波吸収体は、例えば、図1に示すように、抵抗層Aと、誘電体層Bと、導電層Cとを備え、抵抗層Aと、誘電体層Bと、導電層Cとがこの順で積層された積層体である。抵抗層Aのシート抵抗が220〜600Ω/□の範囲に設定されている。導電層Cは、抵抗層Aより低いシート抵抗を有する。抵抗層Aおよび導電層Cの少なくとも一方が支持体を有している。電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されている。本発明の電磁波吸収体において、抵抗層および導電層のシート抵抗は、例えば、接触式(4端針法)又は非接触式(渦電流法)の抵抗測定法によって測定できる。本発明の電磁波吸収体において、曲げ剛性EI[MPa・mm4]は、試験体の一端を固定して片持ちにし、試験体の他端におもりにより下向きの荷重を加えて試験体を曲げ変形させたときのたわみd[cm]を測定し、下記式(1)に基づいて算出できる。なお、下記式(1)において、W:試験体の坪量[g/m2]、L:試験体の長さ[cm]、b:試験体の幅[cm]、F:おもりの重量[g]、d:たわみ[cm]である。
EI={(WLb/8)×10‐4+(F/3)}×(L3/d)×(9.81/10) (式1)
電磁波吸収体の曲げ剛性は、好ましくは10MPa・mm4以上300MPa・mm4以下に設定され、より好ましくは70MPa・mm4以上200MPa・mm4以下に設定されている。
また、電磁波吸収体において、波長550nmにおける透過率が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、さらに70%以上であることが使い勝手の点からさらに好ましい。
電磁波吸収体は、好ましくは、60%以上の全光線透過率をさらに有する。これにより、電磁波吸収体が高い透明性を有し、電磁波吸収体の用途が広い。しかも、電磁波吸収体越しに取り付け予定部位を確認できるので、電磁波吸収体の位置決め精度を高めることができ、電磁波吸収体が施工性に優れる。
抵抗層Aは、例えば、インジウム、スズ、および亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物等の材料からなる層a1と、この層a1を支持する支持体(以下、「抵抗層支持体」という)である層a2とを有している。また、導電層Cは、例えば、導電性を有する金属酸化物、金属、およびそれらの金属の合金等の材料からなる層c1と、この層c1を支持する支持体(以下「導電層支持体」という)である層c2とを有している。なお、図1において、各部分は模式的に示したものであり、実際の厚み、大きさ等とは異なっている。このことは、他の図についてもあてはまる。本明細書において、「主成分」とは、その材料の特性に影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、材料全体の50重量%以上である。
例えば、抵抗層Aおよび導電層Cの少なくとも一方は、5〜4500MPaのヤング率を有する。この場合、より確実に、電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定される。
抵抗層Aの抵抗層支持体である層a2および導電層Cの抵抗層支持体である層c2の少なくとも一方は、例えば、5〜4500MPaのヤング率を有する高分子シートである。この場合、より確実に、電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定される。
抵抗層Aは、例えば、10nm〜500μmの厚みを有する。この場合、所望のシート抵抗を有する抵抗層を厚み精度の高い状態で形成できる。このため、電磁波吸収体において電磁波吸収効果が均一に発揮されやすい。
例えば、抵抗層Aは、5〜4500MPaのヤング率を有するとともに1〜500μmの厚みを有する、又は、4500MPaより高いヤング率を有するとともに38μm以下の厚みを有する。この場合、より確実に、電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定される。別の観点から、抵抗層Aにおいて、ヤング率と厚みとの積は、例えば、0.005〜2250MPa・mmである。
例えば、導電層Cは、5〜4500MPaのヤング率を有するとともに1〜500μmの厚みを有する、又は、4500MPaより高いヤング率を有するとともに38μm以下の厚みを有する。この場合、より確実に、電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定される。別の観点から、導電層Aにおいて、ヤング率と厚みとの積は、例えば、0.005〜2250MPa・mmである。
電磁波吸収体は、吸収対象の波長(λO)の電磁波が入射すると、抵抗層Aの表面での反射(表面反射)による電磁波と、導電層Cの表面での反射(裏面反射)による電磁波とが干渉するように設定されているλ/4型の電磁波吸収体である。なお、λ/4型の電磁波吸収体においては、下記式(2)に示すように、誘電体層Bの厚み(t)と比誘電率(εr)とに基づいて吸収対象の電磁波の波長(λO)が決定される。すなわち、誘電体層Bの材料および厚みを適宜設定することにより、吸収対象の波長の電磁波を設定することができる。sqrt(εr)は、比誘電率(εr)の平方根を意味する。なお、この実施形態では、抵抗層Aの表面(層a1)と導電層Cの表面(層c1)との間に、誘電体層B以外の層である抵抗層支持体(層a2)および導電層支持体(層c2)を備えているため、吸収対象の電磁波の設定には、これらの材料および厚みを考慮する必要がある。電磁波吸収体の各構成要素について、以下に順に説明する。
λO=4t×sqrt(εr) 式(2)
<抵抗層A>
抵抗層Aは、吸収対象の波長の電磁波を電磁波吸収体の表面近傍で反射させるために配置される。この抵抗層Aは、例えば、層a1と、この層a1を支持する抵抗層支持体である層a2とを有している。
〔層a1〕
層a1は、抵抗層Aのシート抵抗が220〜600Ω/□の範囲であることを担保するものであり、例えば、インジウム、スズ、および亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物、導電性高分子、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤー、およびメタルメッシュのいずれかからなっている。層a1は、好ましくは、インジウム(In)、スズ(Sn)、および亜鉛(Zn)からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物からなっている。層a1は、より好ましくは、シート抵抗の安定性、耐久性の観点から、酸化インジウムスズ(ITO)からなっている。なかでも、好ましくは5〜45重量%の酸化スズ(SnO2)を含有するITOが用いられ、より好ましくは20〜40重量%のSnO2を含有するITOが用いられ、さらに好ましくは25〜35重量%のSnO2を含有するITOが用いられる。SnO2の量がこのような範囲内であるITOは、非晶質構造が極めて安定であり、高温多湿の環境下においても抵抗層Aのシート抵抗の変動を抑えることができる。
層a1が、インジウム、スズ、および亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物からなる場合、層a1の厚みは、10〜100nmの範囲であることが好ましく、25〜50nmの範囲であることがより好ましい。層a1に関し、厚みが厚すぎても、逆に薄すぎても、経時的変化又は環境的変化が加えられた際に、シート抵抗値の信頼性が低下する可能性がある。層a1が、導電性高分子又はカーボンナノチューブからなる場合、層a1の厚みは、好ましくは1〜500μmであり、より好ましくは5〜50μmである。この場合、製造コストを低減しつつ、層a1において厚みのばらつきを抑えてシート抵抗を空間的に均一にしやすい。
〔層a2〕
層a2は、典型的には、層a1をスパッタリングおよびコーティング等の成膜方法により形成する際の支持体であり、誘電体層Bを形成する際に、その厚みを厳密に調節するための補助材として用いることができる。このような層a2は、層a1の形成に用いる蒸着、スパッタリング、およびコーティング等の成膜方法における高温に耐えうることが好ましい。なかでも、層a2は、ヤング率が5〜4500MPaの高分子シートであることが好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは400MPa以下のヤング率を有する高分子シートである。ヤング率が高すぎると、曲面に沿うように電磁波吸収体を取り付ける際に、電磁波吸収体が折れ曲がったり、皺が寄ったりする傾向がみられ、電磁波吸収特性が低下するとともに、外観が劣るおそれがある。層a2である高分子シートの材料には、例えば、ポリウレタン、ウレタンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリプロピレン、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、又は塩化ビニリデン樹脂が好ましく用いられる。層a2である高分子シートの材料には、とりわけポリウレタンが好ましく用いられる。また、層a2である高分子シートには、全光線透過率が70%以上である高分子シートが好ましく用いられる。抵抗層Aのヤング率は、抵抗層支持体(層a2)のヤング率の影響が大きいので、抵抗層支持体(層a2)のヤング率と等しいとみなして差し支えない。
抵抗層Aのシート抵抗は220〜600Ω/□に設定されており、好ましくは360〜500Ω/□の範囲に設定される。抵抗層Aのシート抵抗が上記範囲内であると、ミリ波レーダ又は準ミリ波レーダとして汎用される波長の電磁波を選択的に吸収しやすくなるためである。なお、上記シート抵抗は、抵抗層Aの層a1によって定まる面を測定した値である。
<誘電体層B>
誘電体層Bは、吸収対象の電磁波の波長(λO)を決定するのに重要な役割を有する。誘電体層Bは、例えば、1〜20の比誘電率(εr)を有する高分子シートである。誘電体層Bは、例えば、吸収対象の電磁波の波長(λO)に合わせ、1〜20の比誘電率(εr)を有する樹脂組成物を、硬化後に所定の厚み(t)となるように形成し、硬化させた層である。誘電体層Bに用いる樹脂組成物としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンおよびエポキシ樹脂等の合成樹脂、又は、ポリイソプレンゴム、ポリスチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、およびシリコーンゴム等の合成ゴム材料を樹脂成分として用いる組成物が挙げられる。誘電体層Bは、ヤング率を低くすることや、誘電率を高くしてその厚みを薄くすることにより、柔軟性をより高めることができる。ヤング率が低く、誘電率の高い樹脂としては、EVA、ポリウレタン、アクリル樹脂が挙げられ、成型性と比誘電率の点から、とりわけEVAを用いることが好ましい。上記の成分は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、より一層厚みを薄くするため、比誘電率の高い無機物を樹脂組成物に混合した誘電率の高い高分子シートを、誘電体層Bとして用いてもよい。
誘電体層Bは、好ましくは0.1〜1000MPaのヤング率を有する。これにより、より確実に、電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定される。誘電体層Bは、より好ましくは0.5〜500MPaのヤング率を有し、さらに好ましくは1〜100MPaのヤング率を有する。これにより、使用中の誘電体層Bの強度を所望の状態に保つことができ、かつ、電磁波吸収体が所望の曲げ剛性を有しやすい。
上記誘電体層Bの厚みは、好ましくは50〜2000μmであり、より好ましくは100〜1000μmである。薄すぎると厚み寸法精度の確保が困難であり、厚すぎると材料コストが高くなる。
なお、誘電体層Bの比誘電率は、例えば、自由空間法又は日本工業規格(JIS)R 1660-2:2004 ファインセラミックスのミリ波帯における誘電特性測定によって測定できる。
<導電層C>
導電層Cは、吸収対象の波長の電磁波を電磁波吸収体の裏面近傍で反射させるために配置され、そのシート抵抗は、抵抗層Aのシート抵抗より充分に低く設定されている。この導電層Cは、例えば、層c1と、この層c1を支持する導電層支持体である層c2とからなる。
〔層c1〕
層c1としては、例えば、(i)インジウム、スズ、および亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とする金属酸化物(例えば、ITO)、(ii)アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、又はこれらの金属の合金、(iii)導電性高分子、(iv)カーボンナノチューブ、(v)金属ナノワイヤー、および(vi)メタルメッシュのいずれかからなる。なかでも、層c1にITOを用いると、電磁波吸収体が60%以上の全光線透過率を有しやすく、透明な電磁波吸収体を供することができる。また、透明性が必要とされる部位への電磁波吸収体の適用が可能となるだけでなく、電磁波吸収体の施工性の改善を図ることができる。なお、充分な透明性を担保する点から、とりわけ5〜15重量%のSnO2を含有するITOが好ましく用いられる。また、層c1の厚みは、好ましくは20〜200nmであり、より好ましくは50〜150nmである。層c1の厚みが厚すぎると応力により導電層Cにクラックが入り易くなり、層c1が薄すぎると所望の低い抵抗値が得られ難くなる。
〔層c2〕
層c2は、典型的には、層c1をスパッタリング又はコーティング等の成膜方法により形成する際の支持体となる導電層支持体である。層c2は、誘電体層Bを形成する際に、その厚みを厳密に調節するための補助材として用いることができる。このような層c2の材料としては、層c1の形成を蒸着又はスパッタリング等で行う場合には、高温に耐えうるものであることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン、ウレタンアクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、CPP、塩化ビニリデン樹脂等があげられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。導電層Cは抵抗層Aよりも低抵抗であることから、層c1をスパッタリングにより形成する際に必要な時間が長く、支持体である層c2が高温に晒される時間が長くなる。このため、層c2の材料として、耐熱性が高い材料が好ましく、とりわけ寸法安定性とコストとのバランスがよいことからPETが好ましく用いられる。層c1の形成を蒸着やスパッタ等で行わない場合には、高熱に耐えうるものであることにこだわる必要がなく、例えば、ポリウレタンを用いてもよい。
導電層Cのヤング率は、導電層支持体(層c2)のヤング率の影響が大きいので、導電層支持体(層c2)のヤング率と等しいとみなして差し支えない。導電層Cのヤング率は、抵抗層Aのヤング率と同様に、好ましくは5〜4500MPaであり、より好ましくは500MPa以下であり、さらに好ましくは400MPa以下である。導電層Cのヤング率が高すぎると、曲面に沿うように電磁波吸収体を取り付ける際に、電磁波吸収体が折れ曲がったり、皺が寄ったりする傾向がみられ、電磁波吸収特性が低下するとともに、外観が劣る可能性がある。
導電層Cのシート抵抗は、好ましくは抵抗層Aのシート抵抗の1/500〜1/5であり、より好ましくは1/200〜1/15である。なお、上記のシート抵抗は、導電層Cの層c1によって定められた面を測定した値である。
この構成によれば、導電層Cが抵抗層Aより低いシート抵抗を有し、抵抗層Aが抵抗層支持体(層a2)を有するとともに、導電層Cが導電層支持体(層c2)を有し、電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されている。このため、今までに取り付けることができなかった、非平坦面等に沿わせて電磁波吸収体を取り付けることが可能となり、幅広い分野への応用が期待できる。
なお、上記の実施形態では、誘電体層Bが一層からなっているが、複数の層からなっていてもよい。誘電体層Bが複数の層からなる場合の比誘電率(εr)は、それぞれの層の比誘電率を測定し、得られた各比誘電率にその層の誘電体層全体に対する厚みの割合を乗じ、これらを加算することにより算出できる。
また、上記の実施形態では、抵抗層Aが層a1と層a2との2層からなっており、導電層Cが層c1と層c2との2層からなっている。抵抗層Aおよび抵抗層Bのそれぞれは、2層に限らず、3層以上であってもよい。また、抵抗層Aにおいて層a2(抵抗層支持体)は必ずしも設けなくてもよく、導電層Cにおいて層c2(導電層支持体)は必ずしも設けなくてもよい。ただし、誘電体層Bを一定の厚みに形成することの容易性や、層a1および層c1の形成のし易さを考慮すると、層a2および層c2の少なくとも一方の支持体を設けることが好ましく、とりわけ層a2(抵抗層支持体)を設けることが好ましい。
さらに、上記層a2と層c2は、同じ材料からなっていてもよいし、それぞれ異なる材
料からなっていてもよい。好ましくは、層a2がポリウレタンであり、層c2がPET又はポリウレタンである。そして、層a2および層c2のそれぞれの厚みは、10〜125μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましい。薄すぎると、層a1または層c1を形成する際に皺や変形が起こりやすいためであり、厚すぎると、電磁波吸収体としての屈曲性が低下するためである。また、層a2と層c2の厚みは、同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。より好ましくは、層a2の厚みが30〜50μmであり、層c2の厚みが20〜50μmである。
そして、上記の実施形態では、電磁波吸収体が、抵抗層A、誘電体層B、および導電層Cの積層体からなっているが、電磁波吸収体にはこれらの層以外の層を備えていてもよい。すなわち、電磁波吸収体は、抵抗層Aの外側、導電層Cの外側、抵抗層Aと誘電体層Bとの間、又は誘電体層Bと導電層Cとの間に別の層を備えていてもよい。例えば、抵抗層Aの外側にコート層を設けると、抵抗層Aの耐久性および耐候性を高めることができる。また、電磁波吸収体は、透明粘着剤層をさらに備えていてもよい。例えば、抵抗層Aおよび導電層Cの少なくとも一方の外側に透明粘着剤層を設けると、他の部材(被取り付け部材)への電磁波吸収体の取り付けが容易になる。透明粘着剤層には、透明粘着剤層を被覆するセパレータ層がくっついていてもよい。セパレータ層を設けると、保管時には透明粘着剤層が保護され、使用時にはセパレータ層を剥離するだけで透明粘着剤層が露出するため、さらに使い勝手がよいものとなる。ただし、使用時に剥離されるセパレータ層については、曲げ剛性の測定の対象とする電磁波吸収体には含めない。すなわち、セパレータ層を備えた電磁波吸収体については、セパレータ層が剥離された電磁波吸収体について曲げ剛性を測定する。また、層間に、別の層、例えば、アンダーコート層を設けると、層間の密着性が高めることができ、耐久性を高めることができる。
上記コート層の材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ニオブ(Nb25)、およびアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の材料を用いることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明に係る電磁波吸収体において、誤認防止のために不要な電磁波の受信を抑制する観点から、JIS R 1679に従って測定される76GHzのミリ波の反射減衰量は、例えば20dB以上であり、好ましくは30dB以上である。
上記透明粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル樹脂、合成ゴム、又はシリコーン樹脂等の材料を用いることができる。
本発明の電磁波吸収体において曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されている。電磁波吸収体が、抵抗層、誘電体層、および導電層以外の別の層を備える場合には、その別の層を備えた状態での電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されていることが必要である。
本発明の電磁波吸収体を用いて、電磁波吸収体を備えた電磁波吸収体付成形品を製造できる。電磁波吸収体付成形品は、例えば、所定の成形品に電磁波吸収体を取り付けることによって製造できる。
図1に示す、本発明の実施形態の一例に係る電磁波吸収体(図1参照)は、例えば、次のようにして製造できる。
まず、図2Aに示すように、シート状に成形された抵抗層支持体である層a2の上に、層a1を形成し、抵抗層Aを形成する。また、図2Bに示すように、上記とは別のシート状に成形された導電層支持体である層c2の一方の主面(図2Bでは下の主面)上に層c1を形成し、導電層Cを形成する。層a1および層c1は、スパッタリング、蒸着、およびコーティング等の成膜方法により形成できる。なかでも、層a1および層c1の形成には、抵抗値又は厚みを厳密に制御できる点から、スパッタリングを用いることが好ましい。しかし、層a1および層c1が高い導電性を有するために、層a1又は層c1にある程度の厚みが必要な場合、層a1および層c1は、スパッタリング以外の方法で形成してもよい。
次に、図3に示すように、導電層Cの層c2によって定められた面に、誘電体層Bを形成する樹脂組成物を、塗布、印刷、又は押出成形等の方法により積層する。そして、上記樹脂組成物の上に、図3に示すように、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、上記樹脂組成物の厚みを調整したのち、これを硬化させて誘電体層Bとする。これにより、図1に示す、抵抗層A(層a1および層a2)、誘電体層B、並びに導電層C(層c2および層c1)がこの順で積層された電磁波吸収体を得ることができる。
これによれば、誘電体層Bの厚みの制御が容易であるため、吸収対象とする波長の電磁波を効果的に吸収する電磁波吸収体を製造しやすい。また、抵抗層Aおよび導電層Cを別々に形成できるため、電磁波吸収体の製造にかかる時間を短縮でき、低コストで製造できる。
なお、抵抗層Aが層a1のみを有し、又は、導電層Cが層c1のみを有する場合には、例えば、予め所定の厚みのシート状に形成された誘電体層Bを用意し、このシート状の誘電体層Bに層a1または層c1を形成すればよい。
次に、本発明の別の実施形態を説明する。図4は、本発明の別の実施形態に係る電磁波吸収体を示す。この実施形態では、抵抗層Aの層a1によって定められた面が誘電体層Bに向けて配置され、導電層Cの層c1によって定められた面が誘電体層Bに向けて配置されている。図4に示す実施形態に係る電磁波吸収体は、それ以外の部分は、図1に示す実施形態に係る電磁波吸収体と同様に構成されており、図1に示す実施形態に係る電磁波吸収体と同様の効果を奏する。また、例えば、層a1および層c1が、シート状に形成された抵抗層支持体である層a2および導電層支持体である層c2の内側にそれぞれ配置され、層a2および層c2によって保護されているため、電磁波吸収体としての耐久性が高い。
なお、図4に示す実施形態の電磁波吸収体においても、図1に示す実施の形態と同様に、抵抗層A、誘電体層B、導電層C以外の層を設けてもよい。例えば、電磁波吸収体が抵抗層Aおよび導電層Cの少なくとも一方の外側に透明粘着剤層を備えていると、電磁波吸収体を別の部材に取り付けやすい。
図4に示す実施形態の電磁波吸収体は、例えば、次のようにして製造できる。
まず、図5Aに示すように、シート状に成形された抵抗層支持体である層a2の一方の主面(図5Aでは下の主面)上に層a1を形成し、抵抗層Aを形成する。また、図5Bに示すように、シート状に成形された導電層支持体である層c2の上に層c1を形成し、導電層Cを形成する。層a1および層c1は、スパッタリング、蒸着、およびコーティング等により形成できる。なかでも、層a1および層c1の抵抗値や厚みを厳密に制御できる点から、いずれもスパッタリングを用いることが好ましい。
次に、図6に示すように、導電層Cの層c1面に、誘電体層Bを形成する樹脂組成物を、塗布、印刷、又は押出成形等の方法により積層する。そして、上記樹脂組成物の上に、図6に示すように、抵抗層Aの層a1面を重ね、上記樹脂組成物の厚みを調整した後、これを硬化させて誘電体層Bとする。これにより、抵抗層A(層a2および層a1)、誘電体層B、並びに導電層C(層c1および層c2)がこの順で積層された図4に示す電磁波吸収体を得ることができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
<実施例1>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(クラボウ社製、製品名:クランジール、厚み:50μm)の上に、シート抵抗410Ω/□となるよう30重量%のSnO2を含有するITOを用いて層a1を形成し、抵抗層Aを作製した。また、シート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、製品名:三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗20Ω/□となるよう10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2の層c1が形成された面と反対の面に、580μmの厚みにプレス成型された樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物の上に、抵抗層Aの層a2の層a1が形成された面と反対の面を重ね、上記樹脂組成物を150℃で10分間加熱して架橋させ誘電体層Bを得た。このようにして、実施例1に係る電磁波吸収体を得た。実施例1に係る電磁波吸収体の誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。
<実施例2、実施例3、および比較例1>
実施例1における層a2(抵抗層支持体)を、それぞれ以下のシート状の層a2に変更して抵抗層Aを作製した以外は、実施例1と同様にして実施例2、実施例3、および比較例1に係る電磁波吸収体を得た。
実施例2:ポリウレタン製シート(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB)
実施例3:CPP製シート(東洋紡社製、パイレンCT P1153)
比較例1:PET製シート(東レ社製、ルミラーS10)
<実施例4>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB、厚み:80μm)の上に、シート抵抗が410Ω/□となるように、中京油脂社製のPEDOT/PSS分散液をバーコーターで塗布して層a1を形成し、抵抗層Aを作製した。また、PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗20がΩ/□となるよう10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2によって定められた面に、580μmの厚みにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、上記樹脂組成物を硬化させて誘電体層Bを得た。このようにして実施例4に係る電磁波吸収体を得た。誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。PEDOT/PSS分散液は、下記の原料を下記の添加量で混合して調製した。
導電性コーティング剤(導電コート R‐801の2質量%メタノール溶液):5.0g
メタノール:5.0g
硬化剤P‐795の1.0質量%メタノール希釈液:0.5g
硬化剤Q‐113の1.0質量%メタノール希釈液:2.0g
レベリング剤R−438の1.0質量%メタノール希釈液0.1g
<実施例5>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製 シンクロンNY97-CLB:厚み80μm)の上に、下塗り材としてアクリル樹脂(三井化学社製、RA3055BA)をバーコーターで塗布し、この塗膜を100℃で1分間乾燥させた後、引き続き高圧水銀を用いたUV硬化装置にて、600mJ/cm2の条件で硬化させた。アクリル樹脂の膜の上にシート抵抗410がΩ/□となるように、カーボンナノチューブ分散液(KH社製、製品名:Water Solution Gen2.3)を♯14のバーコーターで塗布し、この塗膜を130℃で3分間乾燥させた後、水洗いし、さらに90℃で3分間乾燥させ、抵抗層Aを作製した。また、PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗が20Ω/□となるよう10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2面に、580μmの厚みにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、樹脂組成物を硬化させて誘電体層Bを得た。このようにして、実施例5に係る電磁波吸収体を得た。実施例5に係る電磁波吸収体において誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。
<実施例6>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製 シンクロンNY97-CLB:厚み80μm)の上に、シート抵抗が410Ω/□となるよう30重量%のSnO2を含有するITOを用いて層a1を形成し、抵抗層Aを作製した。PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗が20Ω/□となるように♯34のバーコーターで銀ナノワイヤー溶液(C3 Nano Inc.製、製品名:C3 Nano Ink)を塗布し、この塗膜を130℃のオーブンの中で乾燥させた。引き続き、銀ナノワイヤーの膜の上にオーバーコート剤(C3nano top coat)を♯8のバーコーターで塗布し、この塗膜を130℃のオーブンで乾燥した後、引き続き高圧水銀を用いたUV硬化装置にて、600mJ/cm2の条件でオーバーコート剤を硬化させ、導電層Cを作製した。導電層Cの層c2によって定められた面に、580μmの厚みにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物の上に抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、樹脂組成物を硬化させて誘電体層Bを得た。このようにして、実施例6に係る電磁波吸収体を得た。実施例6に係る電磁波吸収体における誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。
<実施例7>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB:厚み80μm)の上に、シート抵抗が410Ω/□となるように、30重量%のSnO2を含有するITOを用いて層a1を形成し、抵抗層Aを作製した。東レKPフィルム社製の銅メッシュフィルム(層c2:厚み100μmのPETフィルム、シート抵抗:0.2Ω/□、銅線ピッチ:310μm、銅線サイズ:1.5μmの厚みおよび22μmの幅)を導電層Cとして使用した。導電層Cの層c2によって定められた面に、580μmの厚みにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、樹脂組成物を硬化させて誘電体層Bを得た。このようにして、実施例7に係る電磁波吸収体を得た。実施例7に係る電磁波吸収体における誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。
<実施例8>
PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗が20Ω/□となるよう10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2によって定められた面に、580μmの厚みにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物を硬化させて誘電体層Bを得た。このときの誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。引き続き誘電層Bの導電層Cと反対側の表面に、実施例4における中京油脂社製のPEDOT/PSS分散液を、シート抵抗が410Ω/□となるようにバーコーターで塗布し、抵抗層Aを作製した。このようにして、実施例8に係る電磁波吸収体を得た。
<実施例9>
アクリル樹脂(クラレ社製、クラリティ LA2330)を150℃でプレス機によってプレスし、厚み120μmのシート状の層a2を得た。層a2の上に、シート抵抗が410Ω/□となるように、実施例4における中京油脂社製PEDOT/PSS分散液をバーコーターで塗布し、抵抗層Aを作製した。また、PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗が20Ω/□となるよう10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2によって定められた面に、580μmの厚みにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)を載せ、樹脂組成物の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、樹脂組成物を硬化させて、誘電体層Bを得た。このようにして、実施例9に係る電磁波吸収体を得た。実施例9に係る電磁波吸収体における誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。
<実施例10>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB、厚み:80μm)の上に、シート抵抗が410Ω/□となるように、実施例4における中京油脂社製PEDOT/PSS分散液をバーコーターで塗布し、抵抗層Aを作製した。また、PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗が20Ω/□となるよう10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2によって定められた面に、150℃のプレス機にて560μmにプレス成型したアクリル樹脂(クラレ社製、クラリティ LA2330)を貼り合せ、アクリル樹脂の上に抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、実施例10に係る電磁波吸収体を得た。実施例10に係る電磁波吸収体における誘電体層Bの比誘電率は2.55であった。
<実施例11>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB、厚み:80μm)の上に、下塗り材としてアクリル樹脂(三井化学社製、RA3055BA)をバーコーターで塗布し、この塗膜を100℃で1分間乾燥させた後、引き続き高圧水銀を用いたUV硬化装置にて、600mJ/cm2の条件で硬化させた。アクリル樹脂の上にシート抵抗が410Ω/□となるように、カーボンナノチューブ分散液(KH社製、WaterSolution Gen2.3)を♯14のバーコーターで塗布し、この塗膜を130℃で3分間乾燥させた後、水洗いし、さらに90℃で3分間乾燥させ、抵抗層Aを作製した。また、PETからなるシート状の層c2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上に、シート抵抗が20Ω/□となるように、10重量%のSnO2を含有するITOを用いて層c1を形成し、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2によって定められた面に、150℃のプレス機にて560μmにプレス成型したアクリル樹脂(クラレ社製、クラリティLA2330)を貼り合せ、アクリル樹脂の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、実施例11に係る電磁波吸収体を得た。実施例11に係る電磁波吸収体における誘電体層Bの比誘電率は2.55であった。
<実施例12>
ポリウレタンからなるシート状の層a2(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB、厚み:80μm)の上に、シート抵抗が410Ω/□となるように、実施例4における中京油脂社製PEDOT/PSS分散液をバーコーターで塗布し、抵抗層Aを作製した。580μmにプレス成型した樹脂組成物(EVA組成物)の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、樹脂組成物を硬化させて誘電体層Bを得た。このときの誘電体層Bの比誘電率は2.45であった。引き続き、誘電層Bの抵抗層Aと反対側の表面にシート抵抗が20Ω/□となるように、実施例6と同様に、銀ナノワイヤー溶液(C3 Nano Inc.製、製品名:C3 Nano Ink)を塗布し、この塗膜を130℃のオーブンの中で乾燥させた。引き続き、オーバーコート剤(C3nano top coat)を銀ナノワイヤーの膜の上に♯8のバーコーターで塗布し、この塗膜を130℃のオーブンの中で乾燥した後、引き続き高圧水銀を用いたUV硬化装置にて、600mJ/cm2の条件でオーバーコート剤を硬化させ、導電層Cを作製した。このようにして、実施例12に係る電磁波吸収体を得た。
<実施例13>
PETからなるシート状の層a2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)の上にシート抵抗が410Ω/□となるよう30重量%のSnO2を含有するITOを用いて、抵抗層Aを作製した。シート状の樹脂層c2(大倉工業社製、シンクロンNY97-CLB、厚み:80μm)の上に銀ナノワイヤー溶液(C3 Nano Inc.製、C3Nano Ink)を塗布し、この塗膜を130℃のオーブンの中で乾燥させた。引き続き、オーバーコート剤(C3nano top coat)を♯8のバーコーターで塗布し、この塗膜を130℃のオーブンの中で乾燥した後、引き続き高圧水銀を用いたUV硬化装置にて、600mJ/cm2の条件でオーバーコート剤を硬化させ、導電層Cを作製した。この導電層Cの層c2によって定められた面に、150℃のプレス機にて560μmにプレス成型したアクリル樹脂(クラレ社製、クラリティLA2330)を貼り合せ、アクリル樹脂の上に、抵抗層Aの層a2によって定められた面を重ね、実施例13に係る電磁波吸収体を得た。実施例13に係る電磁波吸収体における誘電体層Bの比誘電率は2.55であった。
<比較例2>
PETからなるシート状の層a2(三菱化学ポリエステル社製、三菱ダイアホイル、厚み:38μm)にシート抵抗が380Ω/□となるよう30重量%のSnO2を含有するITOの層(層a1)を形成して、抵抗層Aを作製した。また、25μmの厚みを有するPETの層、7μmのアルミニウムの層、及び9μmの厚みを有するPETの層がこの順で積層されているアルミニウム箔付きPETフィルム(UACJ社製)を導電層Cとして準備した。アルミニウム箔付きPETフィルムの一方の主面に500μmの厚みを有するポリカーボネート(PC)の両面に0.05mm厚みのアクリル粘着シート(日東電工社製、CS9862UA)を貼り合せたものを重ねた。さらに、PCのシートに層a2を向けて抵抗層Aを重ね、比較例2に係る電磁波吸収体を得た。
実施例1〜13および比較例1の電磁波吸収体について、曲げ剛性、柔軟性、耐熱性、全光線透過率、および反射減衰量を、それぞれ、下記のように評価した。結果を表1に示す。
〔曲げ剛性〕
実施例又は比較例に係る電磁波吸収体の一端を固定して片持ちの状態にし、電磁波吸収体の他端におもりによって下向きの荷重を加えて曲げ変形させたときのたわみd[cm]を測定した。下記式(1)に基づいて曲げ剛性EI[MPa・mm4]を算出した。なお、下記式(1)において、W:試験体の坪量[g/m2]、L:試験体の長さ[cm]、b:試験体の幅[cm]、F:おもりの重量[g]、およびd:たわみ[cm]である。
EI={(WLb/8)×10‐4+(F/3)}×(L3/d)×(9.81/10) (式1)
〔柔軟性〕
R100(曲率半径:100mm)に曲げた鋼板に、0.05mmの厚みの透明粘着シート(日東電工社製、CS9862UA)を用いて取り付けた際の電磁波吸収体の外観を観察し、下記の指標にしたがって評価した。
a:電磁波吸収体が鋼板に密着しており、電磁波吸収体の外観に変化がみられない。
x:電磁波吸収体が鋼板から脱落するか、電磁波吸収体の外観に折れ、皺がみられる。
〔耐熱性〕
120℃の温度に設定した乾燥器で168分間保管した後の電磁波吸収体の外観を観察し、下記の指標にしたがって評価した。
a:電磁波吸収体の外観に変化がみられない。
b:電磁波吸収体の外観に若干のカールがみられる。
x:電磁波吸収体の外観に大きなカールおよびよれ等の変化がみられる。
〔全光線透過率〕
村上色彩研究所社製のヘーズ・透過率・反射計(商品名:HR−100)を用いて、25℃において全光線透過率(%)を測定した。なお、全光線透過率の測定は各実施例および比較例に係る電磁波吸収体について5回ずつ行い、その平均値を各実施例又は比較例に係る電磁波吸収体に関する全光線透過率の測定値と決定した。
〔反射減衰量〕
JIS R 1679(電波吸収体のミリ波帯における電波吸収特性測定方法)に準拠して、76GHzのミリ波に対する反射減衰量(dB)を測定し、下記の指標にしたがって評価した。なお、この測定は各実施例および比較例に係る電磁波吸収体について5回ずつ行い、その平均値を下記の指標に当てはめ、評価した。
a:反射減衰量が30dB以上
b:反射減衰量が20dB以上30dB未満
×:反射減衰量が20dB未満
Figure 0006375403
表1に示す通り、実施例1〜13に係る電磁波吸収体は、低い曲げ剛性を有し、柔軟性に優れるため、非平坦面に沿わせて取り付けやすいことが示唆された。実施例1〜13に係る電磁波吸収体は耐熱性にも優れるため、高温環境においても使用可能であることが示唆された。一方、比較例1に係る電磁波吸収体は、透過率に優れ、充分な反射減衰量を有しているが、高い曲げ剛性を有し、柔軟性に乏しいので、非平坦面に沿わせて取り付けることは難しいことが示唆された。
なお、実施例1〜13は、誘電体層Bの高分子シートとして、EVA又はアクリル樹脂からなるものを用いているが、EVA又はアクリル樹脂に代えて、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂、ポリエチレン、又はシリコーン樹脂を用いた電磁波吸収体も、実施例1〜13と同等の優れた効果を奏していた。
本発明に係る電磁波吸収体は、不要な電磁波を吸収する性能と柔軟性とを有するため、自動車衝突防止システムに用いるミリ波レーダの電磁波吸収体として、様々な部位に取り付けて利用できる。
A 抵抗層
B 誘電体層
C 導電層
a2 抵抗層支持体
c2 導電層支持体

Claims (10)

  1. 酸化インジウムスズを含む抵抗層と、誘電体層と、導電層とを備えた電磁波吸収体であって、前記抵抗層のシート抵抗が220〜600Ω/□の範囲に設定され、前記導電層が前記抵抗層より低いシート抵抗を有し、前記抵抗層および前記導電層の少なくとも一方が支持体を有しており、当該電磁波吸収体の曲げ剛性が300MPa・mm4以下に設定されている、電磁波吸収体。
  2. 前記抵抗層および前記導電層の少なくとも一方は、5〜4500MPaのヤング率を有する、請求項1に記載の電磁波吸収体。
  3. 前記抵抗層は、10nm〜500μmの厚みを有する、請求項1又は2に記載の電磁波吸収体。
  4. 前記抵抗層は、5〜4500MPaのヤング率を有するとともに1〜500μmの厚みを有する、又は、4500MPaより高いヤング率を有するとともに38μm以下の厚みを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  5. 前記導電層は、5〜4500MPaのヤング率を有するとともに1〜500μmの厚みを有する、又は、4500MPaより高いヤング率を有するとともに38μm以下の厚みを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  6. 前記誘電体層は、0.1〜1000MPaのヤング率を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  7. 60%以上の全光線透過率をさらに有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  8. 透明粘着剤層をさらに備えた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  9. 前記誘電体層は、1〜20の比誘電率を有する高分子シートである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁波吸収体を備えた電磁波吸収体付成形品。
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