JP6265860B2 - 複層塗膜の形成方法及び複層塗膜 - Google Patents

複層塗膜の形成方法及び複層塗膜 Download PDF

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Description

本発明は、複層塗膜の形成方法及び複層塗膜に関する。
従来、自動車車体の外板等の基材の表面には、種々の機能を有する複数の塗膜が積層されることが知られている。自動車車体の外板等の基材には、一般的に、下塗り塗料と中塗り塗料を塗装した後、上塗り塗装が施される。自動車外板の場合、上塗り塗装では、着色層となるベース塗料を塗装した後、焼付けを行わずに、ウェット・オン・ウェットでクリヤー塗料を塗り重ねて、上塗り塗膜が形成される。また、上塗り塗装によって高外観を得るためには、クリヤー塗料が塗り重ねられる。クリヤー塗料を塗り重ねる時には、1回目のクリヤー塗料(第1クリヤー塗料)の塗装の後に焼付けを行いベース塗膜と第1クリヤー塗膜を同時に硬化させ、次いで、2回目のクリヤー塗料(第2クリヤー塗料)を塗装して焼付け硬化することで、ベース塗膜と、第1クリヤー塗膜と、第2クリヤー塗膜と、を有する複層塗膜を得る。この塗装方法は、3コート2ベーク塗装法(3C2B塗装法)と呼ばれ、広く用いられている。
このようにして形成された複層塗膜において、第1クリヤー塗膜と、第2クリヤー塗膜と、の間のなじみが低く、第1クリヤー塗膜と、第2クリヤー塗膜と、の間の付着性が低くなってしまう場合もある。そこで、第1クリヤー塗膜と、第2クリヤー塗膜と、の間の付着性を向上させるために、第1クリヤー塗料にエポキシ基を有するアクリル樹脂を含有させる技術が知られている(例えば、特許文献1及び2)。この技術では、第1クリヤー塗料にエポキシ基を有するアクリル樹脂を含有させることで、形成された複層塗膜中の第1クリヤー塗膜の塗膜形成成分の有するエポキシ基が、第2クリヤー塗膜の塗膜形成成分の有する官能基と反応して、化学的に結合し、第1クリヤー塗膜と、第2クリヤー塗膜と、の間の付着性が向上すると考えられる。
特開2008−126140号公報 特開2000−136345号公報
ところで、塗料は、サーキュレーターによって循環させながら貯蔵され、塗装工程において用いられるが、サーキュレーターによる循環において、塗料に水分が混入する場合がある。
そのため、特許文献1及び2の技術では、第1クリヤー塗料に水が混入してエポキシ基が開環してしまう。このように、第1クリヤー塗料のアクリル樹脂の有するエポキシ基が開環すると、第1クリヤー塗膜と、第2クリヤー塗膜と、の間の付着性が低下する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、クリヤー塗料を塗り重ねた場合にエポキシ基を有する樹脂を含有する第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)に水が混入したとしても、第1クリヤー塗膜とその上層の第2クリヤー塗膜との間の付着性の低下を抑えることができる複層塗膜の形成方法及びその方法によって形成される複層塗膜を提供することを目的とする。
本発明は、自動車車体上に、ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成するベース塗膜形成工程と、前記ベース塗膜の上に、第1クリヤー塗料を塗装して第1クリヤー塗膜を形成する第1クリヤー塗膜形成工程と、前記ベース塗膜と前記第1クリヤー塗膜とを同時に加熱硬化する工程と、前記加熱硬化した第1クリヤー塗膜の上に、第2クリヤー塗料を塗装して第2クリヤー塗膜を形成する第2クリヤー塗膜形成工程と、前記第2クリヤー塗膜を加熱硬化する工程と、を有する複層塗膜の形成方法であって、前記第1クリヤー塗料は、水酸基を有するアクリルモノマー(a−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(a−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(a−3)を重合して得られるアクリル樹脂(a)と、水酸基を有するアクリルモノマー(b−1)、エポキシ基を有するアクリルモノマー(b−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(b−3)を重合して得られるアクリル樹脂(b)と、メラミン樹脂硬化剤(c)と、オルトギ酸トリエチル(d)と、を含有し、前記第1クリヤー塗料における前記オルトギ酸トリエチル(d)の含有量は、第1クリヤー塗料に含まれる全ての樹脂の固形分の合計質量100質量部に対して1.5〜8質量部であり、前記第2クリヤー塗料は、水酸基を有するアクリルモノマー(e−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(e−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(e−3)を重合して得られるアクリル樹脂(e)と、多官能イソシアネート化合物硬化剤(f)と、を含有する複層塗膜の形成方法に関する。
また、本発明は、前記複層塗膜の形成方法により形成された複層塗膜に関する。
第1クリヤー塗料の含有するオルトギ酸トリエチルは、第1クリヤー塗料(あるいは、塗膜形成後の第1クリヤー塗膜)に混入してしまった水と反応して、加水分解される。つまり、オルトギ酸トリエチルは、吸水剤としての役割を果たすと考えられる。本発明によれば、第1クリヤー塗膜がオルトギ酸トリエチルを含有する第1クリヤー塗料を用いて形成される。これにより、クリヤー塗料を塗り重ねた場合にエポキシ基を有する樹脂を含有する第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)に水が混入したとしても、オルトギ酸トリエチルが水と反応することで、第1クリヤー塗膜においてエポキシ基が開環してしまうことを抑制することができると考えられる。第1クリヤー塗膜においてエポキシ基が開環してしまうことを抑制することができれば、第1クリヤー塗膜とその上層の第2クリヤー塗膜との間の付着性の低下を抑えることができる。従って、本発明によれば、クリヤー塗料を塗り重ねた場合に第1クリヤー塗料に水が混入したとしても、第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜との間の付着性の低下を抑えることができる複層塗膜の形成方法及びその方法によって形成される複層塗膜を提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態に係る複層塗膜の形成方法は、自動車車体上に、ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成するベース塗膜形成工程と、未硬化の前記ベース塗膜の上に、第1クリヤー塗料を塗装して第1クリヤー塗膜を形成する第1クリヤー塗膜形成工程と、前記ベース塗膜と前記第1クリヤー塗膜とを同時に加熱硬化する工程と、前記加熱硬化した第1クリヤー塗膜の上に、第2クリヤー塗料を塗装して第2クリヤー塗膜を形成する第2クリヤー塗膜形成工程と、前記第2クリヤー塗膜を加熱硬化する工程と、を有する、いわゆる3C2B塗装法によるものである。
<自動車車体>
本実施形態に係る複層塗膜の形成方法における、ベース塗料が塗装される自動車車体としては、例えば、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板等の鋼板その他の金属からなる自動車車体用基材が挙げられる。上記鋼板その他の金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等及びこれらの金属を含む合金が挙げられる。本実施形態に係る複層塗膜の形成方法は、これらの鋼板その他の金属により構成される自動車車体の外板等に適用される。
被塗物としての自動車車体には、予めリン酸系又はジルコニウム系の化成処理剤で化成処理した後、水洗し、更に電着塗装を行うことが好ましい。これにより、被塗物に優れた防錆性が付与される。電着塗料としては、カチオン型及びアニオン型のいずれも使用可能であるが、より優れた防食性が得られる観点から、カチオン型電着塗料が好ましく用いられる。
本実施形態で用いる被塗物としての自動車車体は、電着塗膜上に、中塗り塗膜が形成されていることが好ましい。この中塗り塗膜は、中塗り塗料を塗装後、加熱硬化することにより形成される。中塗り塗料としては、水性型、溶剤型、粉体型等の中塗り塗料が挙げられる。
中塗り塗料は、着色顔料、体質顔料、主剤と硬化剤からなる塗膜形成性樹脂等を含有する。中塗り塗料により形成される中塗り塗膜は、下地を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性を確保して外観を向上させるとともに、耐衝撃性や耐チッピング性等の各種塗膜物性を付与する。
中塗り塗料に用いられる着色顔料としては、有機系及び無機系を問わず、種々の着色顔料が用いられる。体質顔料としては、従来公知の種々の体質顔料が用いられる。また、アルミニウム粉やマイカ粉等の扁平顔料を併用してもよい。例えば、カーボンブラックと酸化チタンを主要顔料としたグレー系中塗り塗料の他、上塗り塗色と明度や色相等を合わせたセットグレーや各種着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料としてもよい。
中塗り塗料に用いられる塗膜形成性樹脂を構成する主剤としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらは、アミノ樹脂やブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。顔料分散性や作業性の観点から、アルキド樹脂やポリエステル樹脂と、アミノ樹脂との組合せが好ましく用いられる。
このような中塗り塗料を塗装後、加熱することにより、硬化した中塗り塗膜が得られる。加熱温度は一般に100〜180℃であり、より好ましくは120〜160℃である。加熱時間は10〜30分であるのが好ましい。中塗り塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で20〜60μmが好ましく、30〜40μmがより好ましい。
<ベース塗膜形成工程>
ベース塗膜形成工程において、被塗物としての自動車車体に塗装されるベース塗料としては、樹脂成分、着色顔料及び溶剤を含有する既知の熱硬化性塗料を使用することができ、ソリッドカラー塗料、メタリック塗料、光干渉模様塗料等を挙げることができる。
具体的には、樹脂成分は、架橋性官能基(例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アルコキシシラン基等)を有するアクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等から選ばれる1種又はそれ以上の基体樹脂と、これらを架橋硬化させるためのアルキルエーテル化したメラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物等から選ばれた1種もしくはそれ以上の架橋剤成分とからなる。両成分の含有量はそれぞれ、基体樹脂及び架橋剤成分の合計質量に対して、基体樹脂は50〜90質量%、架橋剤成分は10〜50質量%であることが好ましい。
また、着色顔料としては、ソリッドカラー用、メタリック用、光干渉模様の顔料が包含され、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、イソインドリノン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の有機顔料;りん片状のアルミニウム、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母、雲母状酸化鉄等のメタリック顔料やカーボンブラック等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を組合せて使用することができる。
更に、溶剤としては有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、通常の塗料用溶剤を使用することができる。ベース塗料は水性塗料であっても良い。この場合、主な溶媒は水となるが、有機溶剤を含有しても良い。
ベース塗料は、必要に応じて更に、体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、流動調整剤、はじき防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有してもよい。
ベース塗膜形成工程では、ベース塗料を、エアスプレー、静電塗装等により、硬化したベース塗膜の膜厚が、10〜50μmになるように塗装することが好ましい。ベース塗膜形成工程では、ベース塗料を塗装後、必要により室温(25℃)〜100℃で、数分間放置してから、未硬化のベース塗膜上に、下記の第1クリヤー塗料を塗装する。
<第1クリヤー塗膜形成工程>
第1クリヤー塗膜形成工程において、ベース塗膜の上に塗装される第1クリヤー塗料は、透明の第1クリヤー塗膜を形成するものである。
第1クリヤー塗料は、第1クリヤー塗料は、アクリル樹脂(a)と、アクリル樹脂(b)と、硬化剤(c)と、オルトギ酸トリエチル(d)と、を含有する。
アクリル樹脂(a)は、水酸基を有するアクリルモノマー(a−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(a−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(a−3)を重合して得られる。
水酸基を有するアクリルモノマー(a−1)としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
カルボキシル基を有するアクリルモノマー(a−2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸を挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
その他のエチレン性不飽和モノマー(a−3)とは、水酸基を有するアクリルモノマー(a−1)とカルボキシル基を有するアクリルモノマー(a−2)以外のエチレン性不飽和モノマーであって、これらのアクリルモノマーとの共重合可能なモノマーを意味する。具体的にその他のエチレン性不飽和モノマー(a−3)としては、(メタ)アクリル酸エステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、及びジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)を挙げることができる。これらは目的により選択することができる。
アクリル樹脂(a)は、上記のモノマーを例えば、ラジカル重合触媒を使って通常の方法により溶液中で重合することによって調製することができる。
アクリル樹脂(a)を構成する各モノマーの構成比率は、アクリル樹脂(a)の水酸基価が80〜160mgKOH/gとなるように調整することが好ましく、90〜150mgKOH/gの範囲内となるようにすることがより好ましい。アクリル樹脂(a)の水酸基価が80mgKOH/g未満であると、得られる塗膜の硬化性が確保し難い傾向にあり、160mgKOH/gを上回ると塗膜の耐水性が低下する傾向にある。また、アクリル樹脂(a)の酸価は、好ましくは5〜40mgKOH/gであり、より好ましくは10〜35mgKOH/gである。アクリル樹脂(a)の酸価が、40mgKOH/gを上回ると架橋反応が進みすぎて得られる塗膜の可とう性が確保し難くなる傾向にあり、耐水性も低下する傾向にある。アクリル樹脂(a)の酸価が、5mgKOH/g未満であると、硬化性が低下する傾向にある。
アクリル樹脂(a)の数平均分子量は、2,000〜15,000の範囲内にあることが好ましく、下限を下回ると塗膜硬度が不十分となる傾向にあり、上限を上回ると塗膜外観の低下を招く恐れがある。特に好ましくは、2,500〜5,000である。数平均分子量は、スチレンポリマーを標準とするGPC法により決定される。下記においても同様である。
アクリル樹脂(b)は、水酸基を有するアクリルモノマー(b−1)、エポキシ基を有するアクリルモノマー(b−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(b−3)を重合して得られる
水酸基を有するアクリルモノマー(b−1)としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
エポキシ基を有するアクリルモノマー(b−2)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールの(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中でも、反応性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテルが好ましい。
その他のエチレン性不飽和モノマー(b−3)とは、水酸基を有するアクリルモノマー(b−1)とエポキシ基を有するアクリルモノマー(b−2)以外で、これらのアクリルモノマーとの共重合可能なモノマーを意味する。具体的にその他のエチレン性不飽和モノマー(b−3)としては、(メタ)アクリル酸エステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、及びジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)を挙げることができる。これらは目的により選択することができる。
アクリル樹脂(b)は、上記のモノマーを例えば、ラジカル重合触媒を使って通常の方法により溶液中で重合することによって調製することができる。
各モノマーの構成比率は、アクリル樹脂(b)の水酸基価が10〜150mgKOH/gとなるように調整することが好ましく、20〜130mgKOH/gの範囲内となるようにすることがより好ましい。アクリル樹脂(b)の水酸基価が10mgKOH/g未満であると、得られる塗膜の硬化性が確保し難い傾向にあり、150mgKOH/gを上回ると塗膜の耐水性が低下する傾向にある。また、アクリル樹脂(b)のエポキシ当量は、好ましくは230〜800g/eqであり、より好ましくは250〜700g/eqである。アクリル樹脂(b)のエポキシ当量が、800g/eqを上回ると第1クリヤー塗膜と後述する第2クリヤー塗膜の付着性が低下する傾向にある。アクリル樹脂(b)のエポキシ当量が、230g/eq未満であると、複層塗膜の耐水性が低下する傾向にある。
アクリル樹脂(b)の数平均分子量は、2,000〜15,000の範囲内にあることが好ましく、下限を下回ると塗膜硬度が不十分となる傾向にあり、上限を上回ると塗膜外観の低下を招く恐れがある。特に好ましくは、2,500〜5,000である。
第1クリヤー塗料の含有する硬化剤(c)は、アクリル樹脂(a)及びアクリル樹脂(b)と反応して、第1クリヤー塗料を硬化させて第1クリヤー塗膜を形成する。
硬化剤(c)としては、メラミン樹脂が用いられる。
硬化剤(c)の含有するメラミン樹脂は、アルキルエーテル化してアルキルエーテル化メラミン樹脂とすることができ、このうちメトキシ基及びブトキシ基の少なくとも一方で置換されたメラミン樹脂を用いることが好ましい。
メトキシ基を有するメラミン樹脂としては、サイメル325、サイメル327、サイメル370が、メトキシ基及びブトキシ基を両方有するメラミン樹脂としては、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(いずれも商品名、日本サイテックインダストリーズ社製)が、ブトキシ基を有するメラミン樹脂としては、マイコート506(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(いずれも商品名、三井化学株式会社製)が、それぞれ挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1クリヤー塗料の含有するオルトギ酸トリエチル(d)は、第1クリヤー塗料(あるいは、塗膜形成後の第1クリヤー塗膜)に混入してしまった水と反応して、加水分解されると考えられる。このように、オルトギ酸トリエチル(d)は、第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)中のアクリル樹脂(b)のエポキシ基を有するアクリルモノマー(5)に由来するエポキシ基が水と反応して開環してしまうことによる、第1クリヤー塗膜と後述する第2クリヤー塗膜の付着性の低下を抑えることができる。
第1クリヤー塗料中の樹脂固形分におけるアクリル樹脂(a)の含有量は、40〜70質量%であることが好ましく、45〜65質量%の範囲で含有されることがより好ましい。第1クリヤー塗料中の樹脂固形分におけるアクリル樹脂(a)の含有量が、70質量%を上回ると、第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜との付着性が低下する傾向にあり、40質量%を下回ると、第1クリヤー塗膜とベース塗膜との混層性が低下する傾向にある。
第1クリヤー塗料中の樹脂固形分におけるアクリル樹脂(b)の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%の範囲で含有されることがより好ましい。第1クリヤー塗料中の樹脂固形分におけるアクリル樹脂(b)の含有量が、30質量%を上回ると、第1クリヤー塗膜が硬く脆くなる傾向にあり、5質量%を下回ると、第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜との付着性が低下する。
第1クリヤー塗料中の樹脂固形分における硬化剤(c)の含有量は、10〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%の範囲で含有されることがより好ましい。第1クリヤー塗料中の樹脂固形分における硬化剤(c)の含有量が、50質量%を上回ると、塗膜が硬く脆くなる傾向にあり、10質量%を下回ると、第1クリヤー塗膜の硬化性が低下する傾向にある。
第1クリヤー塗料中におけるオルトギ酸トリエチル(d)の含有量は、第1クリヤー塗料に含まれる全ての樹脂の固形分の合計質量100質量部に対して1.5〜8質量部である。第1クリヤー塗料中におけるオルトギ酸トリエチル(d)の含有量が、1.5質量部未満だと、第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)中のアクリル樹脂(b)のエポキシ基を有するアクリルモノマー(5)に由来するエポキシ基が水と反応して開環しやすくなってしまう。第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)中のエポキシ基が開環すると、第1クリヤー塗膜と後述する第2クリヤー塗膜の付着性が低下する。第1クリヤー塗料中におけるオルトギ酸トリエチル(d)の含有量が、8質量部よりも多いと、第1クリヤー塗料に他の溶剤を配合するのが難しくなることから、塗膜にワキが発生しやすくなり、外観不良となる。第1クリヤー塗料中におけるオルトギ酸トリエチル(d)の含有量は、好ましくは2〜4質量部である。
本実施形態における第1クリヤー塗料は、溶剤型であることが好ましい。
第1クリヤー塗料は、更に必要に応じ、硬化触媒、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、流動調整剤、はじき防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有することができる。それによって、第1クリヤー塗膜は、着色顔料を全く含有していない無色透明塗膜であってもよいし、ベース塗料塗膜の色調を透視できる程度に着色した塗膜であってもよい。
第1クリヤー塗膜形成工程では、エアスプレー、静電塗装等により、硬化した第1クリヤー塗膜の膜厚が10〜50μmになるように、未硬化のベース塗膜の上に第1クリヤー塗料を塗装する。
本実施形態に係る複層塗膜の形成方法は、第1クリヤー塗膜形成工程の後に、前記ベース塗膜と第1クリヤー塗膜とを加熱硬化する工程を行う。当該加熱硬化工程における温度と時間は、好ましくは100〜180℃、より好ましくは120〜160℃で、10〜40分間とすることが好ましい。
ベース塗料の着色塗面に着色透明塗膜を形成する第1クリヤー塗料を塗装すると、該両塗膜のソリッドカラー調、メタリック調、光干渉調がそれぞれ相俟って、ベース塗料の単独塗膜に比べて意匠性、審美性が向上する。
<第2クリヤー塗膜形成工程>
第2クリヤー塗膜形成工程において、加熱硬化した第1クリヤー塗膜の上に塗装される第2クリヤー塗料は、透明の第2クリヤー塗膜を形成するものである。
第2クリヤー塗料は、アクリル樹脂(e)と、多官能イソシアネート化合物硬化剤(f)と、を含有する。
アクリル樹脂(e)は、水酸基を有するアクリルモノマー(e−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(e−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(e−3)を重合して得られる。水酸基を有するアクリルモノマー(e−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(e−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(e−3)は、アクリル樹脂(a)の原料となる、水酸基を有するアクリルモノマー(a−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(a−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(a−3)とそれぞれ同様であるので、説明を省略する。
多官能イソシアネート化合物硬化剤(f)は、アクリル樹脂(e)の水酸基を有するアクリルモノマー(e−1)に由来する水酸基と反応して第2クリヤー塗料を硬化させる。
多官能イソシアネート化合物硬化剤(f)としては、特に限定されないが、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族イソシアネート、これらのビューレット体、ヌレート体等の多量体及び混合物等を挙げることができる。
アクリル樹脂(e)に対するイソシアネート化合物の配合量は、目的により種々選択できるが、本実施形態における第2クリヤー塗料においては、多官能イソシアネート化合物硬化剤(f)のイソシアネート基(NCO)と、アクリル樹脂(e)の水酸基を有するアクリルモノマー(e−1)に由来する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が、0.5〜1.7の範囲内となるように構成するのが好ましい。上記含有量が下限を下回ると硬化性が不十分となり、上限を上回ると硬化膜が堅くなりすぎ脆くなる。上記下限は、0.7がより好ましく、上記上限は、1.5がより好ましい。第2クリヤー塗料は、溶剤型及び水性型のどちらでもよい。
第2クリヤー塗料組成物には塗装膜の耐候性向上のために、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤等を加えても良い。更に、流動調整剤として架橋樹脂粒子や、外観の調整の為表面調整剤を添加しても良い。また、必要に応じて、硬化触媒を含ませることが好ましい。
第2クリヤー塗膜形成工程では、エアスプレー、静電塗装等により、硬化した第2クリヤー塗膜の膜厚が20〜200μmになるように、硬化した第1クリヤー塗膜の表面に第1クリヤー塗料を塗装することが好ましい。
本実施形態に係る複層塗膜の形成方法は、第2クリヤー塗膜形成工程の後に、第2クリヤー塗膜を加熱硬化する工程を有する。当該加熱硬化工程の温度と時間としては、好ましくは100〜180℃、より好ましくは120〜160℃で、10〜40分間が好ましい。
第1クリヤー塗料及び第2クリヤー塗料の製造方法は、特に限定されず、当業者の周知の任意の方法を用いることができる。
<複層塗膜>
本実施形態に係る複層塗膜は、上述した複層塗膜の形成方法により形成された複層塗膜である。
本実施形態に係る複層塗膜は、オルトギ酸トリエチル(d)を含有する第1クリヤー塗料を用いて形成されるので、サーキュレーターによる第1クリヤー塗料の循環時に、第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)中のエポキシ基が開環することを抑えることができると考えられる。第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)中のエポキシ基の開環を抑えれば、第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜の付着性の低下を抑制することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記の「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
(製造例1:アクリル樹脂(a)の合成)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、撹拌翼を備えたセパラブルフラスコにキシレン70.0部及びn−ブタノール30.0部を仕込み、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。これにスチレン35.0部、アクリル酸n−ブチル18.3部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル19.3部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル15.5部、メタクリル酸ラウリル10.0部、アクリル酸1.9部、カヤエステル−O(化薬アクゾ株式会社製ラジカル重合開始剤)7.0部及びキシレン10.0部からなるモノマー混合溶液を、滴下ロートを用いて、3時間かけて等速で滴下した。そして、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を維持しつつ、30分撹拌した。その後、キシレン(10.0部)及びカヤエステル−O(1.0部)の混合溶液を、滴下ロートを用いて、30分かけて等速で滴下した。その後、窒素雰囲気下で温度を維持し、2時間撹拌することでアクリル樹脂(a)を得た。得られたアクリル樹脂(a)の水酸基価は150mgKOH/g、酸価は15mgKOH/g、樹脂固形分は45.5%であった。また、アクリル樹脂(a)の、ゲルパーミェーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値(数平均分子量(Mn))は、3,500であった。
(製造例2:アクリル樹脂(b)の合成)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、撹拌翼を備えたセパラブルフラスコにソルベッソ100(S−100、東燃ゼネラル石油株式会社製)70.0部及び酢酸ブチル30.0部を仕込み、窒素雰囲気下で130℃に昇温した。これにスチレン35.0部、アクリル酸n−ブチル1.3部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル25.7部、メタクリル酸グリシジル38.0部、カヤエステル−Oを8.0部及びS−100 10.0部からなるモノマー混合溶液を、滴下ロートを用いて、3時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を維持し、更に30分撹拌した。その後、S−100(10.0部)及びカヤエステル−O(1.0部)の混合溶液を、滴下ロートを用いて、30分かけて等速で滴下した。その後、窒素雰囲気下で温度を維持し、2時間撹拌することでアクリル樹脂(b)を得た。得られたアクリル樹脂(b)の水酸基価は100mgKOH/g、エポキシ基当量は374g/eq、樹脂固形分は45.5%であった。また、アクリル樹脂(b)の、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値(数平均分子量(Mn))は、3,500であった。
(製造例3:第1クリヤー塗料の製造)
製造例1で得たアクリル樹脂(a)を固形分で55部、製造例2で得たアクリル樹脂(b)を固形分で10部並びに硬化剤(c)としてのユーバン225を固形分で17.5部及びユーバン20N―60を固形分で17.5部、表1に記載された質量部のオルトギ酸トリエチル(OFE)をそれぞれ量りとり、ソルベッソ100/酢酸エチル=1/1(重量比)からなるシンナーを加えてディスパーで撹拌して、第1クリヤー塗料を得た。続いて第1クリヤー塗料の粘度がフォードカップNo.4/20℃の粘度となるように上記シンナーを用いて調整した。
(製造例4:アクリル樹脂(e)の合成)
温度計、撹拌羽根、窒素導入管、冷却コンデンサー及び滴下ロートを備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート44.8部を加え、窒素雰囲気下で120℃に加温した。その容器に、滴下ロートを用いてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10部、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート10.5部、スチレン20部、アクリル酸−n−ブチル6.7部、メタクリル酸アルキル10部、メタクリル酸イソボロニル27部、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル36部、メタクリル酸0.3部を3時間かけて等速で滴下した。その後、120℃で0.5時間保持し、5部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解したtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート1部を、30分かけて等速で滴下した。更に、120℃で1時間加温を続けることによって、アクリル樹脂(e)を得た。合成したアクリル樹脂(e)の、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値(数平均分子量(Mn))は4,600、重量平均分子量(Mw)は11,300であった。また、アクリル樹脂(e)の、酸価2mgKOH/g、水酸基価は140mgKOH/g、計算Tgは5.3℃、樹脂固形分は62.6%、であった。
(製造例5:第2クリヤー塗料組成物の製造法)
製造例4で得たアクリル樹脂(e)68.68部(固形分)、N3300(住化バイエルウレタンスミジュール社製ポリイソシアネート化合物、固形分)31.32部、チヌビン928(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製紫外線吸収剤)2部、光安定剤「チヌビン292」1部、モダフロー(モンサント社製表面調整剤)0.1部を混合して撹拌することによって第2クリヤー塗料組成物を得た。
上記クリヤー塗料組成物をプルピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/3−エトキシプロピオン酸エチル=1/2(質量比)からなるシンナーによってNo.4フォードカップで25秒/20℃となるように希釈した。
[塗板の作製]
リン酸亜鉛処理を行い、水洗した、厚さ0.8cmで20cm×30cmの大きさのSPCC−SD鋼板(ダル鋼板)に、日本ペイント株式会社製カチオン電着塗料の「パワートップU−80」を塗装し焼付乾燥の後、その上に日本ペイント株式会社製中塗り塗料の「オルガP−2」を塗装し、焼付乾燥した。中塗り塗装後の試験板に、日本ペイント株式会社製ベース塗料の「アクアレックスAR−2000 青マイカ色」を塗布後80℃で3分間プレヒートした。その後、第1クリヤー塗料を、上記プレヒートした試験板上にウェット・オン・ウェットで塗布し、160℃で30分間加熱硬化し、引き続き厳しい付着性評価をするために160℃で30分加熱した。ここで用いた第1クリヤー塗料は、製造例3によって製造した第1クリヤー塗料と、当該塗料量4Lに対して水分量が約0.5質量%となる量の水とを、サーキュレーターに仕込んで、表1の「サーキュレーターにおけるターン数」の項目で記載された所定回数循環させたものを用いた。
次いで、加熱硬化した第1クリヤー塗膜の上に、製造例5で得た第2クリヤー塗料を塗布し、130℃で30分間焼付乾燥を行うことで、実施例1〜4、比較例1〜3の複層塗膜(塗板)を得た。実施例1〜4、比較例1〜3のそれぞれについて、サーキュレーターを循環した回数の異なる数枚の塗板が作成された。
[付着性の評価]
実施例及び比較例の塗板を、80℃の水に1時間(Hr)、3時間、4時間又は5時間浸漬した後の塗膜の付着性を評価した。
具体的には、まず、塗膜の表面に、ユーティリティーナイフ(エヌティー株式会社製、S型又はA型)を用いて、間隔2mmで縦11本×横11本の塗膜を貫通して塗装板の素地に達するクロスカットを入れ、100個の正方形(2mm×2mm)の領域を塗膜に形成した。このクロスカットした塗膜の上に、幅24mmの粘着テープ(ニチバン株式会社製)を気泡が生じないように指先で均一に圧着した。直ちに粘着テープの一端を持ち、塗板に対して約45°の角度で急激に引っ張ることにより粘着テープを塗板の表面から剥離させた。このときの[粘着テープとともに剥がれたます目の数]/[ごばん目のます目の数=100]を目視で測定して塗膜の付着性を評価した。また、剥がれない場合でも、ます目周辺に若干の剥がれがあるます目をふちかけ(一部剥がれ)として評価した。結果を表1に示す。
なお、この評価における「剥がれ」は、第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜の剥がれである。また、剥がれたます目が1箇所でも発生した場合には、塗膜の付着性がかなり低下したものと判断し、その塗板よりも80℃の水に浸漬した時間が長い塗板については付着性の評価を行わなかった。
[外観の評価]
実施例及び比較例の塗板を目視にて評価した。外観の評価は、サーキュレーターによる循環を行っていない(ターン数:0)の第1クリヤー塗料を用いて作製した塗板について行った。外観の評価においては、塗板表面のラウンド感と、ワキの発生についてそれぞれ評価し、塗板の外観が良好なものを「A」、塗板表面のラウンド感が大きい(肌不良である)ものを「B」、焼付時に塗板にワキが発生したものを「C」とした。結果を表1に示す。
Figure 0006265860
表1に示すように、第1クリヤー塗料に水が混入した場合に、実施例1〜4の塗板は、塗膜の付着性(第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜の付着性)が維持されるのに対し、比較例1及び2の塗膜では、塗膜の付着性が悪化していることがわかった。この結果から、オルトギ酸トリエチルを1.5質量部以上含有する第1クリヤー塗料を用いて形成させた複合塗膜は、第1クリヤー塗料に水が混入したとしても、付着性(第1クリヤー塗膜と第2クリヤー塗膜の付着性)が維持されることが確認された。これは、サーキュレーターによって循環している際に第1クリヤー塗料に混入する水や、形成された複合塗膜に付着した水によって、第1クリヤー塗料(第1クリヤー塗膜)中のエポキシ基が開環してしまうのを、オルトギ酸トリエチルが抑制することによると推測される。
また、比較例3の塗板は、実施例1〜4の塗板に比べて、外観の評価が悪化していることが分かった。この結果と上記の結果から、オルトギ酸トリエチルを1.5〜8質量部含有する第1クリヤー塗料を用いて形成させた複合塗膜は、付着性と外観の向上が両立できることが確認された。

Claims (1)

  1. 自動車車体上に、ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成するベース塗膜形成工程と、
    前記ベース塗膜の上に、第1クリヤー塗料を塗装して第1クリヤー塗膜を形成する第1クリヤー塗膜形成工程と、
    前記ベース塗膜と前記第1クリヤー塗膜とを同時に加熱硬化する工程と、
    前記加熱硬化した第1クリヤー塗膜の上に、第2クリヤー塗料を塗装して第2クリヤー塗膜を形成する第2クリヤー塗膜形成工程と、
    前記第2クリヤー塗膜を加熱硬化する工程と、を有する複層塗膜の形成方法であって、
    前記第1クリヤー塗料は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルからなる群から選択される少なくとも一種である水酸基を有するアクリルモノマー(a−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(a−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(a−3)を重合して得られるアクリル樹脂(a)と、
    水酸基を有するアクリルモノマー(b−1)、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル及び3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールの(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種であるエポキシ基を有するアクリルモノマー(b−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(b−3)を重合して得られるアクリル樹脂(b)と、
    メラミン樹脂硬化剤(c)と、
    オルトギ酸トリエチル(d)と、を含有し、
    前記第1クリヤー塗料における前記オルトギ酸トリエチル(d)の含有量は、第1クリヤー塗料に含まれる全ての樹脂の固形分の合計質量100質量部に対して1.5〜8質量部であり、
    前記第2クリヤー塗料は、水酸基を有するアクリルモノマー(e−1)、カルボキシル基を有するアクリルモノマー(e−2)及びその他のエチレン性不飽和モノマー(e−3)を重合して得られるアクリル樹脂(e)と、
    多官能イソシアネート化合物硬化剤(f)と、を含有する複層塗膜の形成方法。
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