JP6265604B2 - 新規生理活性を有するマンネンタケの栽培方法 - Google Patents
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しかしながら、これらはすべて食用キノコであり、マンネンタケのような優れた生理活性を有するキノコの当該活性に対する効果は未知数であった。
そして、前記栽培方法によって栽培されたマンネンタケの子実体から得られる熱水抽出物を含むことを特徴とする、脳内セロトニンおよびドーパミン含有量増加剤の生産方法が提供される。
また、前記栽培方法によって栽培されたマンネンタケの子実体から得られる熱水抽出物を含むことを特徴とする、老化に伴う自発運動量低下の改善剤の生産方法が提供される。
また、前記栽培方法によって栽培されたマンネンタケの子実体から得られる熱水抽出物を含むことを特徴とする、ケモカイン遺伝子発現抑制剤の生産方法が提供される。
そして、クロレラ熱水抽出残渣および/またはコッコミクサ乾燥粉末を含む培地を用いて栽培されたマンネンタケの子実体から得られる熱水抽出物を含むことを特徴とする、老化に伴う自発運動量低下の改善剤が提供される。
・マンネンタケ
本発明に用いるマンネンタケは、野生のもの、株化されたもののいずれを用いてもよい。
本発明のクロレラ熱水抽出残渣は、クロレラ藻体を熱水処理して抽出物を分離した後に残る細胞残渣であり、クロレラを用いた機能性食品の製造工程では廃棄物として発生するものである。このクロレラ熱水抽出残渣は、これまでは産業廃棄物として焼却または海中投棄されてきた。このようなクロレラ熱水抽出残渣の例としては、出願人による特許文献4に記載の方法で得られる残渣等が挙げられる。
本発明で用いるコッコミクサ藻体は、緑色植物門、緑藻綱、クロロコッカム目、クロロコッカム科に属するコッコミクサ・グロエオボトリディフォルミス(Coccomyxa gloeobotrydiformis)であり、大きさ約10μmの円形の単細胞性植物である。この藻類は、特許文献5に記載されているように、無機液体培地中で安価且つ簡便に大量培養することが可能である。このコッコミクサ藻体を、乾燥後裁断して粉末化したものをコッコミクサ原粉末として用いることができる。
前記クロレラ熱水抽出残渣またはコッコミクサ原粉末を、広葉樹木粉の重量に対して7.5〜12.5%となるように広葉樹木粉に添加する。この混合物に対し、含水率が60〜75%となるように調整した後に滅菌処理を行い、クロレラ熱水抽出残渣添加培地またはコッコミクサ原粉末添加培地とする。
前記クロレラ熱水抽出残渣添加培地またはコッコミクサ原粉末添加培地にマンネンタケを接種し、25〜27℃、湿度75〜85%で24〜26日間培養を行う。
前記栽培方法で得られたマンネンタケから1番発生の子実体を収穫し、65℃以下の通風乾燥機で乾燥させた後に粉砕処理を行って乾燥粉末を得る。当該子実体乾燥粉末5gを80〜90℃の熱水100〜200mlに懸濁し、1.5〜2.5時間抽出操作を行った後、上清を回収してマンネンタケ熱水抽出物とする。
クロレラ熱水抽出残渣(株式会社日健総本社製、シイタケ抽出残渣とおからを含む)、またはコッコミクサ乾燥粉末(株式会社日健総本社製)を、広葉樹木粉の重量に対して10%となるように広葉樹木粉に添加した。当該混合物の含水率が65%となるように調整し、滅菌処理を行い、クロレラ熱水抽出残渣添加培地またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地とした。これらの培地にマンネンタケを接種し、26℃、湿度85%下で25日間培養を行った。
なお、コントロール培地には、広葉樹木粉の重量に対して20%となるようにフスマを添加した後、含水率を65%に調整し滅菌処理したものを用いた。
実施例1の方法で栽培したマンネンタケの子実体のアミノ酸分析を行った。
よって、本発明の栽培方法を用いることにより、アミノ酸総量および有益なアミノ酸に富んだマンネンタケが得られることが示された。
実施例1の方法で栽培したマンネンタケから1番発生の子実体を収穫し、65℃以下の通風乾燥機で乾燥させた後に、ワーリングミキサーを用いて粉砕処理を行った。当該子実体乾燥粉末5gを85℃の熱水200ml中で2時間攪拌した後、上清を回収してマンネンタケ熱水抽出物を得た。
実施例3の方法で調整したマンネンタケ子実体熱水抽出物について、下記(1)〜(6)の生理活性(効果)を評価した。
(1)血小板凝集抑制活性
(2)ケモカイン遺伝子発現抑制活性
(3)自発運動量に及ぼす効果
(4)脳内セロトニン・ドーパミン含有量に及ぼす効果
(5)血中A/G比および尿素窒素値に及ぼす効果
(6)血中クレアチニン値および白血球数に及ぼす効果
(1)、(2)については、3回の独立した解析を行い、平均値と標準誤差を算出した。 (3)〜(6)はラット(Crj:CD(SD))を用いた解析で、若齢ラット(8週齢、5匹/解析群)、および老齢ラット(60週齢、5匹/解析群)に対し、下記4種類の試験物質を4週間にわたり強制経口投与した(抽出物1ml/ラット体重1kgあたり、1回/日)。
<試験物質>
・蒸留水(=コントロール)
・コントロール培地で栽培したマンネンタケ子実体の熱水抽出物(実施例3)
・クロレラ残渣添加培地で栽培したマンネンタケ子実体の熱水抽出物(実施例3)
・コッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培したマンネンタケ子実体の熱水抽出物(実施例3)
投与期間終了後に、(3)自発運動量の測定を行った。その後、採血を行い血中成分(5)、(6)を分析するとともに、脳を摘出して(4)脳幹部のセロトニン・ドーパミン含有量を定量した。
(1)〜(6)のいずれの解析においてもStudent’s t−testを行い、コントロールに対して危険率5%未満を有意性あり(図1〜6においてアスタリスクで表示)と評価した。
血小板凝集反応の過剰な亢進は心筋梗塞や脳梗塞といった血栓症および炎症性・アレルギー性皮膚疾患の発症要因であるため、マンネンタケが有する血小板凝集抑制作用にはこれらの疾患に対する予防・症状改善効果が期待されている。そこで、本発明の栽培方法がマンネンタケの当該活性に及ぼす影響を解析した。
<試験方法>
・ヒト多血小板血漿(PRP)および乏血小板血漿(PPP)の調整
ヒト血液を遠心(1100rpm、20分間、室温)し、上清を多血小板血漿(Platelet Rich Plasma、PRPと略記)として採取した。PRPの一部に対してさらに遠心(3000rpm、5分間、室温)を行い、当該上清を乏血小板血漿(Platelet Poor Plasma、PPPと略記)として採取した。
・血小板凝集率の測定方法
前記方法で調整したPRP(各223μl)を37℃で予備加温した後、コントロール培地、クロレラ残渣添加培地、またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培したマンネンタケから調整した熱水抽出物を2μl添加し、さらに37℃で3分間保温した。その後、ADP、PAF、またはアラキドン酸ナトリウムをそれぞれ終濃度が1μM、50nM、50μMとなるように添加し、血小板凝集を惹起した。血小板が凝集するとPRPの濁度が低下して透過率が上昇するため、アグリゴメーター(MCMヘマトレーサー MCMメディカル株式会社製)を用いて透過率を測定した。凝集物質添加前のPRPの透過率を0%、PPPの透過率を100%に設定して、凝集物質添加後のPRPの透過率の最大値を最大凝集率(%)、すなわち、血小板凝集率(%)とした。
・血小板凝集抑制効果の評価
血小板凝集抑制効果は、前記熱水抽出物を添加したPRPにおいて得られた血小板凝集率を、熱水抽出物非添加PRPにおいて得られた血小板凝集率(=100%とする)と比較することで評価した(図1)。
よって、クロレラ残渣添加培地および/またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培することにより、マンネンタケの血小板凝集抑制活性が顕著に(約20%)亢進されることが示された。
ケモカインは炎症の形成に重要な役割を果たすサイトカインで、例えば炎症性皮膚疾患や炎症性腸疾患では、炎症部位でインターロイキン−8(Interleukin−8:IL−8と略記)等のケモカインの発現が誘導されるために、好中球等が浸潤・集積して組織破壊が引き起こされる。よって、ケモカインの発現抑制は、炎症性疾患の症状改善や予防に有効と考えられている。
前述したように、マンネンタケの子実体には、TNF−α等によるケモカイン(IL−8、および、Regulated on Activation Normal T Cell Expressed Aand Secreted:RANTESと略記)遺伝子発現誘導を抑制する活性があることが知られている。そこで、本発明の栽培方法がマンネンタケの当該活性に及ぼす影響を解析した。
<試験方法>
ヒト皮膚線維芽細胞(倉敷紡績株式会社より購入)を10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)を用いてコンフルエントになるまで培養した(培地量10ml/6cm培養皿)。コントロール培地、クロレラ残渣添加培地、またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培したマンネンタケから調整した熱水抽出物を50μl、あるいは、ハイドロコルチゾン(=陽性コントロール、終濃度:10−7M)を添加した後、腫瘍壊死因子TNF‐α(終濃度1ng/ml)を添加して37℃で6時間培養した。
その後、常法に従って細胞からRNA抽出・cDNA合成を行った。得られたcDNAを用いて定量的PCR法(TaqMan PCR法)を行い、IL−8およびRANTES遺伝子の発現量を解析した。当該遺伝子の発現量は、GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)を内部標準遺伝子として補正した。
よって、クロレラ残渣添加培地および/またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培することにより、マンネンタケのケモカイン遺伝子発現抑制効果を亢進し得ることが示された。
<測定方法>
ケージ内のラットに対し、自発運動データ解析システム(株式会社ブレインサイエンス・イデア社製)を用いて、焦電型赤外線検出により動物が発する体温を検出して、動物が移動するときに生じる温度の変化を自発運動量として計測した。24時間におけるラットの自発行動の回数を自発運動量として計測した。
よって、クロレラ残渣添加培地および/またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培することにより、老化に伴う自発運動量の低下に対して改善効果を奏するマンネンタケ、さらには、当該マンネンタケ子実体の熱水抽出物を有効成分とする老化に伴う自発運動量低下の改善剤が得られることが明らかとなった。
なお、このような老化に伴う自発運動量低下に対する改善効果はマンネンタケについてはまだ報告がなく、且つ、コントロール培地で栽培したマンネンタケにはみられないことから、本栽培方法を用いることによってマンネンタケに新たに付与される新規生理活性と考えられる。
神経伝達物質であるセロトニンおよびドーパミンは、加齢やストレス等によって脳内含有量が減少すること、および、これらの産生・伝達異常は種々の神経・精神疾患の発症要因であることが知られている。よって、脳内セロトニンおよびドーパミンの含有量を適正に保つことは、神経・精神疾患の予防のみならず、老化やストレスに対しても耐性を付与し得ることが期待されている。
<測定方法>
前記ラットから脳幹を摘出し、定法に従ってセロトニン(5−Hhydroxytryptamine、5−HT)およびドーパミン量を定量した。
よって、クロレラ残渣添加培地および/またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培することにより、脳内セロトニンおよびドーパミン含有量を高めることができるマンネンタケ、さらには、当該マンネンタケ子実体の熱水抽出物を有効成分とする脳内セロトニンおよびドーパミン含有量の増加剤が得られることが示された。
血中のA/G比は、肝炎、肝硬変、肝癌などの肝障害、ネフローゼ症候群に代表される腎障害、または栄養不良等によって低下することが知られている。また、尿素窒素値は、急性・慢性の腎不全、甲状腺機能亢進症、大量の消化管出血、または脱水症状等によって高くなることが知られている。
よって、クロレラ残渣添加培地および/またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培することにより、老化に伴う肝臓・腎臓機能低下を改善する効果に一段と優れるマンネンタケが得られることが示唆された。
クレアチニン値は急性・慢性の腎臓機能障害によって高まる傾向があるので、コッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培したマンネンタケには、老化に伴う腎臓機能低下を改善する効果があることが示唆された。また、クロレラ残渣添加培地および/またはコッコミクサ乾燥粉末添加培地で栽培することにより、老化に伴う白血球数の減少を改善する効果のあるマンネンタケが得られることが示唆された。
従って、本発明の栽培方法により、抗炎症作用に一段と優れ、老化に伴う運動量の減少や肝臓・腎臓・免疫機能の低下に対する改善効果に優れるマンネンタケが得られることが明らかとなった。
Claims (7)
- クロレラ熱水抽出残渣および/またはコッコミクサ乾燥粉末を7.5〜12.5重量%含む培地を菌床に用いることを特徴とするマンネンタケ子実体の栽培方法。
- 請求項1に記載の方法を用いてマンネンタケの子実体を栽培する工程と、該子実体から熱水抽出物を得る工程を含むことを特徴とする、前記熱水抽出物を有効成分とする脳内セロトニンおよびドーパミン含有量増加剤の生産方法。
- 請求項1に記載の方法を用いてマンネンタケの子実体を栽培する工程と、該子実体から熱水抽出物を得る工程を含むことを特徴とする、前記熱水抽出物を有効成分とする老化に伴う自発運動量低下の改善剤の生産方法。
- 請求項1に記載の方法を用いてマンネンタケの子実体を栽培する工程と、該子実体から熱水抽出物を得る工程を含むことを特徴とする、前記熱水抽出物を有効成分とする血小板凝集抑制剤の生産方法。
- 請求項1に記載の方法を用いてマンネンタケの子実体を栽培する工程と、該子実体から熱水抽出物を得る工程を含むことを特徴とする、前記熱水抽出物を有効成分とするケモカイン遺伝子発現抑制剤の生産方法。
- 請求項1に記載の栽培方法によって栽培されたマンネンタケの子実体から得られる熱水抽出物を含むことを特徴とする、老化に伴う自発運動量低下の改善剤。
- 請求項1に記載の栽培方法によって栽培されたマンネンタケの子実体から得られる熱水抽出物を含むことを特徴とする、脳内セロトニンおよびドーパミン含有量増加剤。
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