JP6264129B2 - パワーモジュール用基板及びその製造方法 - Google Patents
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しかし、特許文献1に記載されるパワーモジュール用基板のように、回路層をアルミニウムにより形成した場合には、アルミニウムのエッチングレートが低いため、高精細化された回路パターンを形成することが難しい。また、放熱性能を確保するために回路層の厚みを厚く設定した場合には、さらにエッチングの処理時間が増加してファインパターンを形成しにくくなるという問題がある。
さらに、回路層と金属層とを同時にエッチングしようとしても、それぞれが必要とするエッチング量が異なるため、回路層と金属層とを同時に処理することができず、作業性が悪いことが問題であった。
また、回路層の表面部から接合界面部にかけて回路層中に含まれるSiの濃度が漸次増加するように勾配を設けることで、Si濃度が高い接合界面部のエッチングレートを高くできる一方で、表面部のエッチングレートを低く抑えることができる。これにより、回路層の表面部にダレが形成されることを防止することができ、回路パターンを垂直に切り立つように形成することができる。
したがって、アルミニウム又はアルミニウム合金の回路層を用いた場合においても、放熱特性を良好に維持することができる板厚を確保できるとともに、回路パターンの高精細化を図ることが可能となる。
この場合、エッチング量の多い回路層を、エッチング量の少ない金属層よりも確実に速く処理することができ、回路層にファインパターンを形成し易くなる。
したがって、Si濃度が高い接合界面部のエッチングレートを高くすることができるとともに、表面部のエッチングレートを低く抑えることができ、ファインパターンを形成することができる。
また、回路層とセラミックス基板との接合に用いるろう材が、金属層とセラミックス基板との接合に用いるろう材よりもSi濃度が高く設定されているので、回路層のSi濃度を、金属層のSi濃度よりも高くすることができる。これにより、回路層と金属層とで処理されるエッチング量に差を生じさせることができ、必要とするエッチング量の異なる回路層と金属層とを同時に処理することが可能となる。
なお、回路層及び金属層の板厚や接合前の回路層及び金属層に予め含有されているSi含有量等を考慮して、ろう材のSi含有量、ろう材の使用量、加熱時間等を調整することにより、Siの回路層及び金属層への拡散量及び拡散深さを調整することができる。
図1に示すパワーモジュール100は、パワーモジュール用基板10と、パワーモジュール用基板10の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品20と、パワーモジュール用基板10の裏面に接合されたヒートシンク30とから構成されている。
また、パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11の一方の面に、回路層12が厚さ方向に積層され、セラミックス基板11の他方の面に金属層13が厚さ方向に積層された状態で、Al‐Si系ろう材によって接合されている。
回路層12は、厚み0.1mm以上1.1mm以下のアルミニウム又はアルミニウム合金板からなり、本実施形態では厚み0.6mmに設定されている。そして、回路層12とセラミックス基板11との接合界面部15におけるSi濃度は、0.1質量%以上1.5%質量以下に設定されている。また、接合界面部15のSi濃度は、後述する金属層13とセラミックス基板11との接合界面部17とのSi濃度よりも高く設定されている。そして、回路層12のSi濃度は、表面部14から接合界面部15にかけて漸次増加するように設定されており、回路層12中に含まれるSiの濃度に勾配が設けられている。また、図1に示すパワーモジュール100においては、回路層12はエッチング等により所定の回路パターンに成形されており、その上に電子部品20がはんだ材等によって接合されている。
パワーモジュール100においては、金属層13の表面にヒートシンク30がろう付け等によって接合されている。
パワーモジュール用基板10の製造方法では、セラミックス基板11に回路層12及び金属層13をろう付けした後に、その回路層12に回路パターンを形成することによりパワーモジュール用基板10を製造する。
セラミックス基板11と接合前の回路層12は、好ましくは純度99.99質量%以上の4N‐Al板(Si含有量:0.006質量%以下)により形成されている。また、金属層13には、例えば純度99.0質量%以上のAl板が用いられる。
そして、回路層12とセラミックス基板11との接合に用いるろう材には、金属層13とセラミックス基板11との接合に用いるろう材よりもSi含有量が高く設定されたAl‐Si系ろう材を用い、回路層12、セラミックス基板11及び金属層13の積層体を加圧した状態のまま、真空中で635℃以上655℃以下の温度で加熱することにより回路層12及び金属層13とセラミックス基板11とを接合する。
また、回路層12とセラミックス基板11との接合に用いるろう材が、金属層13とセラミックス基板11との接合に用いるろう材よりもSi濃度が高く設定されているので、回路層12の接合界面部15のSi濃度を、金属層13の接合界面部17のSi濃度よりも高くすることができる。
なお、回路層12及び金属層13の板厚や接合前の回路層12及び金属層13に予め含有されているSi含有量等を考慮して、ろう材のSi含有量、ろう材の使用量、加熱時間等を調整することにより、Siの回路層12及び金属層13への拡散量及び拡散深さを調整することができる。
そして、塩化第二銅や塩化第二鉄等の水溶液を用いてエッチング処理を行い、回路層12及び金属層13にパターンを形成する。エッチングレジストは、回路層12及び金属層13へのパターンの形成後に水酸化ナトリウム水溶液等で剥離することにより、パワーモジュール用基板10を製造することができる。
また、回路層12の表面部14から接合界面部15にかけて回路層12中に含まれるSiの濃度勾配が設けられることで、Si濃度が高い接合界面部15のエッチングレートを高くできる一方で、表面部14のエッチングレートを低く抑えることができる。これにより、回路層12の表面部14にダレが形成されることを防止することができ、回路パターンを垂直に切り立つように形成することができる。
したがって、アルミニウム又はアルミニウム合金の回路層を用いた場合においても、放熱特性を良好に維持することができるような板厚を確保できるとともに、回路パターンの高精細化を図ることが可能となる。
また、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との接合界面部15,17のSi濃度が0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲内に設定されており、この範囲内であれば、これらは良好にろう付け接合される。一方、接合界面部15,17のSi濃度が0.1質量%未満の場合には、接合不良を引き起こすおそれがある。また、1.5質量%を超えるSi濃度では、ろう付けの際にろう材の融点が低下し、接合時にろう材が接合部から流れ出て、ろう瘤等の品質上の問題が発生し易くなることがある。
パワーモジュール用基板として、表1に示す構成を有するものを製作した。
回路層12として27mm×27mmで厚みが表1に示すアルミニウム又はアルミニウム合金を、セラミックス基板11として30mm×30mmで厚み0.635mmのAlN板を、金属層13として28mm×28mmで厚み1.6mmの純度99.99%以上の4Nアルミニウム板を、ろう材としてAl‐Si系ろう材(Si含有量5.5質量%〜10.5質量%)をそれぞれの板材の間に介在させて、ろう付けした。ろう付け接合条件としては、真空雰囲気中、表2に示す温度及び時間とし、回路層12、セラミックス基板11及び金属層13の積層体を荷重3.5kgf/cm2で加圧して行った。
接合性の評価は、超音波深傷装置を用いて回路層及び金属層とセラミックス基板との接合部の接合率を評価したもので、接合率=(接合面積−剥離面積)/接合面積×100の式から算出した。ここで、剥離面積は、接合面を撮影した超音波深傷像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を測定したものである。また、接合面積は、接合前における接合すべき面積である回路層及び金属層の接合面の面積とした。そして、接合率が95%以上の良好な結果が得られたものを「○」とし、95%未満を「×」と評価した。
また、ろう瘤の評価は、目視により回路層及び金属層の表面を観察し、ろう瘤が観察されなかったもの「○」、ろう瘤が観察されたものを「×」と評価した。
なお、これら接合率及びろう瘤の評価は、前述のエッチング処理を行う前に評価を行った。
図2からわかるように、Si含有量5.5質量%〜10.5質量%のAl‐Si系ろう材を用いて回路層12とセラミックス基板11との接合を行うことで、表面部14よりも接合界面部15のSi濃度を高く設定できるとともに、回路層12に表面部14から接合界面部15にかけて回路層12中に含まれるSiの濃度勾配を設けることができた。
また、表2からわかるように、上記のようにSiの濃度勾配が設けられた回路層12においては、回路層12の表面部14の幅A(0.5mm)と接合界面部15の幅Bとの差を0.02mm〜0.26mmの範囲に抑えて形成することができ、幅0.5mmのファインパターンを良好に形成することができることが確認できた。
また、回路層12の接合界面部15と金属層13の接合界面部17とのSi濃度差を0.2質量%以上に設定することで、回路層12にファインパターンを形成し易くすることができる。
11 セラミックス基板
12 回路層(金属層)
13 放熱層
14,16 表面部
15,17 接合界面部
20 電子部品
30 ヒートシンク
100 パワーモジュール
Claims (3)
- セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が積層され、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層が積層され、前記セラミックス基板と前記回路層及び前記金属層とがろう付接合されたパワーモジュール用基板であって、前記回路層と前記セラミックス基板との接合界面部におけるSi濃度が0.37質量%以上1.5質量%以下に設定され、前記金属層と前記セラミックス基板との接合界面部におけるSi濃度が0.1質量%以上1.5質量%以下に設定されており、前記回路層と前記セラミックス基板との接合界面部のSi濃度は、前記金属層と前記セラミックス基板との接合界面部とのSi濃度よりも高く設定されるとともに、前記回路層のSi濃度は表面部から前記接合界面部にかけて漸次増加するように設定されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
- 前記回路層の接合界面部と前記金属層の接合界面部とのSi濃度差が、0.2質量%以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用基板。
- セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層を積層し、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層を積層して、前記セラミックス基板と前記回路層及び前記金属層とをろう付けした後に、前記回路層に回路パターンを形成するパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記回路層及び前記金属層と前記セラミックス基板との接合にはAl‐Si系ろう材を用いるとともに、前記回路層と前記セラミックス基板との接合に用いるろう材は、前記金属層と前記セラミックス基板との接合に用いるろう材よりもSi含有量が高く設定されていることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
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