JP6124103B2 - 窒化珪素回路基板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、窒化珪素基板を用いた回路基板及びその製造方法に関する。
近年、例えば電動車両用およびハイブリッド車、電気自動車などのインバーター等に高電圧、大電流動作が可能なパワー半導体モジュール(IGBT、MOS−FETモジュール等)が広く利用されている。このような半導体モジュールでは、半導体チップが動作中は高温となり、絶縁性ならびに応答性などに劣化が生じて安定動作の確保が困難となる。このため、半導体チップからの放熱効率を高める必要があり、半導体チップを搭載する回路基板として、破壊靱性および強度の機械特性に優れ、熱伝導率も比較的高い窒化珪素(Si)基板が注目されている。
一般に半導体モジュールでは、窒化珪素基板の一面側に、アルミ合金あるいは銅合金等、比較的電気伝導率の高い金属で金属回路板が形成される。この金属回路板を構成する金属と、窒化珪素基板との接合は、直接接合法(DBC:Direct
Bonded Copper)あるいは活性金属ろう付け法(AMB:Active MetAl Bonding)等で行われる。前者は、予め銅又は銅合金板あるいは窒化珪素基板を熱処理することで、表面部に酸化膜を形成させ、続いてCu−Oの融点近傍にて加圧圧着する接合方法である。また、後者では、金属回路板を形成する金属箔又は金属板を窒化珪素基板の表面にろう材相を介して不活性ガス又は真空雰囲気中で加熱圧着接合する方法である。この接合の際に用いるろう材は、金属回路板の種類により異なり、アルミ又はアルミ合金の場合は、Al−Si系およびこれに防錆効果のあるGeまたは低融点化剤のMgを微量添加したAl−Si−Ge系またはAl−Si−Mg系のろう材金属が用いられる。また、金属回路板が無酸素銅または銅合金の場合には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等の活性金属とともに低融点合金を作る銀(Ag)、銅(Cu)等の金属を混合したもの、又はこれらの合金をろう材として用いる。
金属回路板にアルミ又はアルミ合金を用いた窒化珪素回路基板は、金属回路板に銅又は銅合金を用いた窒化珪素回路基板に比べて、アルミ又はアルミ合金の降伏応力が低いため、使用時の冷熱繰り返しで窒化珪素基板との接合界面、特に、金属回路板端部で発生する応力集中を軽減でき、これにより実装信頼性が確保され、安全規格の厳しい車載搭載用パワーモジュール用のセラミック回路基板として広く普及している。
これまで、アルミ又はアルミ合金を用いた窒化珪素回路基板およびその製造方法については、用いるろう材組成、ろう材ペースト種、合金粉末粒子径、接合温度など数多くの検討がなされている。
例えば、特許文献1には、セラミックス基板と金属回路板とをろう材層を介して接合したセラミックス回路基板において、ろう材層を降伏応力の低い軟質金属のAl−Si系ろう材とし、ろう材に含有されるSi量を7重量%以下とすることで高い接合強度を有するとともに、高耐熱サイクル性を有し、電子機器としての動作信頼性を向上させたセラミックス回路基板に関する発明がなされている。
また、本発明者らは、特許文献2においてセラミックス基板を窒化珪素とし、その表面性状を制御することによりCuまたはAlからなる金属回路板との接合性を向上させる手法を開示している。すなわち、窒化珪素基板は窒化珪素粒子と粒界相とからなる窒化珪素焼結体からなり、基板表面における中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜20μmの表面性状を有し、さらに前記窒化珪素粒子及び前記粒界相の合計面積率を100%としたとき、前記窒化珪素粒子の面積率が70〜100%である窒化珪素基板である。また、この窒化珪素基板では、基板表面に露出した窒化珪素粒子の最大高さの山頂部と、窒化珪素粒子又は粒界相の最低高さの谷底部との距離(L)が1〜40μmとなすことを特徴とし、接合強度および耐冷熱サイクル特性に優れた回路基板の製造に好適な表面性状を有する窒化珪素基板およびこれを用いたセラミックス回路基板が開示されている。
また、特許文献3には、Mgと、Cu、Si、Geからなる群の少なくとも1種以上の元素とを含み、残部がAlであることを特徴とし、好ましくは、Mgが0.05重量%〜3重量%であるろう材と、前記ろう材を用いて、セラミックス基板とアルミニウムを主成分とする金属板とを接合してなるセラミックス回路基板が開示されている。
さらに、特許文献4には、セラミックス板に、少なくとも前記セラミックス板に対向する面がアルミニウムを主成分とする金属からなる回路板を設けてなるセラミックス回路基板であって、セラミックス板に隣接してMgと酸素Oとを含む層が存在することを特徴とし、好ましくは、前記層の厚さが2nm以上20nm以下として、回路板とセラミックス基板との接合密着強度の強いセラミックス回路基板が開示されている。
特開2001−168482号公報 特開2002−201076号公報 特開2001−62588号公報 特開2001−102703号公報
特に、車載用インバーターに搭載されるパワー半導体モジュールは、エンジンルーム内に配置されるようになり、高温多湿の苛酷な環境下に晒される。また、パワー半導体モジュールの大容量化に伴う素子パワー密度の増大のため、素子発熱量が上昇し、素子下部に位置するセラミックス回路基板への熱負荷も上昇傾向にある。これにより、セラミック基板と金属回路板の間のより高い接合強度とより高い耐冷熱サイクル性が求められており、上記したような従来のセラミック回路基板では、十分な性能とはいえない場合があった。
そこで、本発明者らが、接合強度試験と冷熱サイクル試験において、セラミック基板と金属回路板の間で剥離した試料について、鋭意調査を行った結果、剥離はセラミック基板とろう材との接合部分で発生している場合が多いことを突き止めた。
そこで、本発明は上記実情に鑑みなされたもので、セラミック基板とろう材との接合界面の状態に着目し、接合界面の状態を改良し、接合強度と耐冷熱サイクル性を向上させた窒化珪素回路基板、その製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して0.6〜7.0wt%、さらに周期律表第3a族元素(3A)を酸化物(3AxOy)に換算して、酸化マグネシウムとの合計量が0.7〜8.0wt%、MgO/3AxOyで表される重量比が1〜70の割合で含有する窒化珪素基板と、Al又はAl合金からなる金属回路板とを、7wt%〜20wt%のSiを含み、Mgの含有量が0.05wt%以下のAl−Si系ろう材を介して接合した窒化珪素回路基板において、前記窒化珪素基板と前記ろう材との接合界面に少なくとも2層からなる厚さ10nm〜500nmの反応生成層が形成されていることを特徴とする。
前記反応生成層が、Al−Mg−Si系組成からなると好ましく、さらに前記反応生成層がMgおよびSiの生成比が異なる2層により構成されると好ましい。
前記反応生成層が、窒化珪素基板側にMgリッチ層、Al−Si系ろう材側にSiリッチ層のMgおよびSiの生成比が異なる2層により構成されると好ましい。
ろう付け前の窒化珪素基板の表面部の最大表面粗さが、3μm<Rmax<20μmであると好ましい。
また、本発明の窒化珪素回路基板の製造方法は、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して0.6〜7.0wt%、周期律表第3a族元素(3A)を酸化物(3AxOy)に換算して、酸化マグネシウムとの合計量が0.7〜8.0wt%、MgO/3AxOyで表される重量比が1〜70の割合で含有する窒化珪素基板とAl又はAl合金からなる金属回路板とを7wt%〜20wt%のSiを含み、Mgの含有量が0.05wt%以下のAl−Si系ろう材を介して接合する窒化珪素回路基板の製造方法において、焼成した窒化珪素基板に、900℃〜1,200℃の大気雰囲気中で熱処理を行った後、前記ろう材を介して450℃〜650℃で金属回路板と接合することを特徴とする。
前記焼成した窒化珪素基板の表面にブラスト処理を行った後に、前記熱処理を行うと好ましい。
前記ブラスト処理後の窒化珪素基板の表面粗さが、3μm<Rmax<20μmであると好ましい。
本発明によれば強固な接合強度を有するとともに、耐冷熱サイクル性に優れた窒化珪素回路基板とすることができる。
本発明の窒化珪素回路基板の模式図である。
以下、実施例により本発明を説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
図1に、本発明に係る窒化珪素回路基板の断面図を示す。
本発明に係る窒化珪素回路基板は、図1に示すように窒化珪素基板1の両面にAl又はAl合金からなる金属回路板3を、Si−Al系ろう材2により接合したものである。
本発明で使用される金属回路板は、Al又はAl合金であり、Al合金として、アルミニウム−
シリコン系合金(Al−Si)、アルミニウム−マグネシウム系合金(Al−Mg)、アルミニウム−銅−シリコン系合金(Al−Cu−Si)またはアルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金(Al−Mg−Si)などを使用することができる。高い放熱性が要求されるパワー半導体モジュール用の金属回路板は、純度が99.9%以上のAlがこれに適している。また、パワー半導体素子の発熱密度の増大に伴い、更なる高熱伝導性を有する金属回路板が必要となり、金属回路板が厚肉化の傾向にあるため、厚さ0.4mm以上のAl又はAl合金板を用いると好ましい。好ましいAl又はAl合金板の厚さは0.4mm〜2.0mmである。さらに好ましい厚さは、0.5mm〜1.2mmである。
本発明に用いられるセラミックス基板はMgを含む窒化珪素からなり、実装信頼性及び耐冷熱繰り返し特性の観点から、特に厚さ方向に対する高靭性を有し、かつ、高強度であって、放熱性の観点から高熱伝導性を備えたものを用いる。本発明に用いられる窒化珪素基板は、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して、0.6〜7.0wt%含有することから焼結性を維持し、かつ熱伝導を阻害しない量の液相生成を確保することで高強度かつ高靭性という高い機械特性ならびに高熱伝導性を有する窒化珪素基板とすることができる。
酸化マグネシウムの含有量が0.6wt%よりも少ないと焼結時の緻密化作用が不十分となり相対密度が95%未満となる場合があり、ミクロポアが生じるために、強度、熱伝導が低くなる場合があり、好ましくない。また、ろう材接合時に必要とされるMgの量が少なくなり、本願発明の特徴である反応生成層が形成されないために、接合強度が低くなる場合がある。合計量が7.0wt%よりも多いと窒化珪素質焼結体の第2のミクロ組織成分である熱伝導率の低い粒界相の量が過剰となり焼結体の熱伝導率が低くなる恐れがある。また、Mgの量が多いと反応生成層の厚さが厚くなりすぎ、逆に接合強度が低下する場合がある。より好ましい範囲は、1wt%〜5wt%である。
周期律表第3a族元素(3A)を酸化物(3AxOy)に換算して、酸化マグネシウムとの合計量が0.7〜8.0wt%の割合で含有することから焼結性を維持し、かつ熱伝導を阻害しない量の液相生成を確保することで高強度かつ高靭性という高い機械特性ならびに高熱伝導性を有する窒化珪素基板とすることができる。その合計量が0.7wt%よりも少ないと焼結時の緻密化作用が不十分となり相対密度が95%未満となる場合があり、ミクロポアが生じるために、強度、熱伝導が低くなる場合があり、好ましくない。合計量が8.0wt%よりも多いと窒化珪素質焼結体の第2のミクロ組織成分である熱伝導率の低い粒界相の量が過剰となり焼結体の熱伝導率が低くなる恐れがある。より好ましい範囲は、1wt%〜5wt%である。
さらに、前記窒化珪素基板中にマグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して、周期律表第3a族元素(3A)を酸化物(3AxOy)に換算して、MgO/3AxOyで表される重量比が1〜70の割合で含有しているので高密度でかつ外観ムラのない焼結体を得ることができる。重量比が1よりも小さいと粒界相中の希土類酸化物の割合が増大するため焼結過程で液相線温度が上昇し難焼結性となり緻密な焼結体が得られない場合があり、ミクロポアが生じるために、強度、熱伝導が低くなる場合がある。重量比が70より多いと主相Si3N4粒子間隙に位置する粒界ガラス相に加えて、MgSiN2、MgSiO3およびMg2SiO4などの粒界結晶相が生成し、その部分で色調むらが生じるとともに、これらの粒界結晶相には脆性相もあり、窒化珪素基板の強度が低くなる場合がある。さらに、焼結前の熱処理時に形成される酸化皮膜に部分的にMgの濃度が高い部分が出来、生成される反応生成層にムラが生じ、接合強度にもムラが生じ、安定した高接合強度の回路基板を得ることができない場合がある。より好ましい範囲は、1〜10である。
本発明の窒化珪素回路基板は、Al−Si系ろう材によって、窒化珪素基板と金属回路板を接合する。Al−Si系ろう材としては、そのSiの含有量が7wt%〜20wt%のものを用いる。Si量が7wt%未満では、金属回路板へ拡散するSi量が枯渇して、接合に必要な少なくとも2層からなる反応生成層を生成することができない。また、20wt%超では、少なくとも2層からなる反応生成層が厚くなり、反応生成層自身は脆性層であるため、過度に厚くなると逆に強度低下が生じて接合強度が低下する。したがって、Al−Si系ろう材のSiの含有量は7wt%〜20wt%であることが望ましい。さらに好ましいSiの含有量は9wt%〜18wt%である。
次に窒化珪素基板とろう材との間に形成される2層からなる反応生成層について、説明する。
本発明に係る反応生成層は、少なくとも2層からなる厚さ10nm〜500nmの反応生成層からなる。前記反応生成層は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において二次電子の放射率が他の部分と異なることからコントラストが異なり、容易に識別することが出来る。反応生成層の厚さが10nmよりも薄い場合には、Al−Si系ろう材と窒化珪素基板間の接合に寄与する効果が少なくなり金属回路板と窒化珪素基板の接合強度が低下し、ひいては冷熱サイクル性が低下するといった不具合が生じる。また、反応生成層の厚さが500nmよりも厚い場合には、当該反応層自身は脆性層であるため、過度に厚くなると反応生成層の強度低下が生じ接合強度が低下し、ひいては冷熱サイクル性が低下するといった不具合が生じる。その反応生成層は例えばAl−Mg−Si系組成からなり、Mg及びSiの生成比の異なる2層から構成されている。前記反応生成層は、窒化珪素基板側にMgリッチ層、Al−Si系ろう材側にSiリッチ層のMgおよびSiの生成比が異なる少なくとも2層からなると好ましい。反応生成層の組成については、透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型分析装置(TEM−EDX)などにより確認することが出来る。
従来、引用文献4に記載されているようにセラミック基板に隣接して、MgとOを含む層を介して接合することにより、接合強度が高くなることは知られていた。そのためにMg入りのろう材を用い、セラミック基板の表面にわずかに存在する酸化層とろう材中のMgを反応させて、反応生成層を形成していた。そこで、本発明者らはさらなる接合強度を得るために、セラミック基板とろう材との界面について鋭意検討を行った結果、従来の製造方法の場合にはろう材全体に多量のMgを分散させているために、接合強度が低下する場合があることを見出した。これはろう材中のMgはろう材の融点を下げるために添加されるが、Mgはろう材の全体に高い濃度で分散しており、ろう付けのための昇温過程において、形成されたAl−Mg−Si系溶融金属中でMg成分とSi成分が容易に反応して、MgSi2の偏析が生じる。このMgSi2は脆性相であるため、セラミック基板とろう材界面における接合強度が低下する場合があるためである。
そこで、高い接合強度を得るためにMgSi2の偏析が生じないようにするとともに、安定して反応生成層を形成する方法に関して本発明者らが鋭意検討した結果、Si、Mgの酸化層を窒化珪素基板表面にあらかじめ形成するとともに、ろう材中のMgの含有量を極力低減させた場合には、ろう付け時にろう材中のMgの含有量が少なくMgSi2の偏析が生じにくくなるとともに、ろう付け過程で窒化珪素基板表面部のMg成分がAl−Siろう材部に拡散し、Al−Si系ろう材と窒化珪素基板の接合界面における融点を低下させるとともに、前記窒化珪素基板と前記ろう材との接合界面に少なくとも2層からなる厚さ10nm〜500nmの反応生成層を形成するので強固な接合強度を得ることが可能となる。また、接合に寄与するMg量を供給することができ脆性相であるMgSi2の偏析を抑制することが可能となる。
また、例えば窒化珪素基板側にMgリッチ層、Al−Si系ろう材側にSiリッチ層のMgおよびSiの生成比が異なる少なくとも2層からなる反応生成層によりさらに接合強度が向上されることを見出した。
接合強度が向上する理由については、Si、Mgの酸化層をろう材と接合する部分、すなわち窒化珪素基板表面上に存在するために、表面からろう材側に向かいMgの割合が段階的に減少するような生成比の異なる複数の層を構成となることにより、反応生成層内部において熱膨張のミスマッチなどを著しく軽減することができ、これによりろう材と窒化珪素基板界面において安定な接合強度が得られるものと思われる。本発明のAl−Si系ろう材中に含まれるMgの量は0.05wt%以下とする。さらに好ましいMgの含有量は0.03wt%以下である。
次に、本発明の窒化珪素基板の製造方法について説明する。
例えば、平均粒子径が0.2〜4μmのα型窒化珪素粉末99〜50重量部と、所望の組成となるようにマグネシウム(Mg)と、周期律表第3a族元素(3A)のイットリウム(Y)及び希土類元素(RE)からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素とを含む焼結助剤と有機バインダー、可塑剤、溶剤等を混入しボールミル等で均一に混合する。混合した原料スラリーを脱泡・増粘した後、これをドクターブレード法で所定板厚にシート成形して成形体を得る。このシート成形の際、スラリーは例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムより成る厚み188μmの搬送用キャリヤフィルム上で搬送され、その後所定板厚に成形するため、ドクターブレードとの間の空隙により所定の厚みに仕上げられる。さらに乾燥室に搬送され、所定の温度に設定された乾燥室内を通過することにより、溶剤を蒸発させ成形体とする。
このシート成形体を焼結炉内で1800〜2000℃の温度、0.5〜1MPaの窒素加圧雰囲気中で2時間〜10時間焼結する。焼成温度は、1800℃未満の場合には、緻密化不足を起こし、2000℃より高い場合には、粒成長が進みすぎて、どちらにしても強度不足となる。望ましい焼成温度は、1850〜1950℃である。また、焼成雰囲気に関しては、窒化珪素の分解を抑えるため、窒素圧が高い方が好ましいが1MPaよりも高い場合には焼成炉の設備上のコスト負担が大きく好ましくない。0.5MPa未満では窒化珪素の分解が起こり易くなる。さらには、0.6〜0.95MPaの窒素加圧中が望ましい。
焼成時間は、2時間よりも短いと焼結が進行せず低密度の焼結体となり、窒化珪素の強度ならびに熱伝導率が低下する。また、10時間よりも長いと焼結過程で窒化珪素粒子の異常粒成長が起こり、窒化珪基板自体の強度低下を招くといった不具合が生じる。より好ましい焼成時間は4時間〜8時間である。
このようにして作成される窒化珪素基板の厚さは、0.2mmより厚く1.0mm以下であることが望ましい。窒化珪素基板の厚さが0.2mm以下である場合には、基板自身の剛性が低下し、冷熱繰り返しに伴う金属回路板の熱膨張・収縮挙動に追従して窒化珪素基板自身の変形量が大きくなり、このため金属回路板と窒化珪素基板との接合信頼性が低下する。また、金属回路板と窒化珪素基板の裏面に接合される金属放熱板との間、即ち、窒化珪素基板表裏間における絶縁耐圧が低下するため、窒化珪素回路基板としての使用範囲が限定されてしまう。これに対し、窒化珪素基板の厚さが1.0mmより厚い場合には、窒化珪素基板自体の熱伝導率は90W/m・Kと、金属回路板の熱伝導率(例えばアルミニウム(Al):220W/m・K)に比較して、低いため、窒化珪素回路基板としての放熱性を低下させてしまう場合がある。好ましい窒化珪素基板の厚さは0.25mm〜0.8mmである。
次に必要に応じて、窒化珪素基板を表面処理する。上記焼成した窒化珪素基板にブラスト処理を施し、窒化珪素基板の最大表面粗さRmaxを3μmより大きく20μm以下に制御するとよい。Rmaxが3μmよりも小さくなると、接合強度維持のための1要因である凹凸形状による噛む込み効果(アンカー効果)が発現できなくなり、所望の接合強度が得られなくなる場合がある。また、Rmaxが20μmよりも大きくなると、窒化珪素基板表面部における破壊起点として作用するため、冷熱繰り返しにおいて破壊確率が増大し、しいては金属回路板/窒化珪素基板間の接合強度が低下する場合がある。したがって、ブラスト処理後の窒化珪素基板の最大表面粗さが3μm<Rmax<20μmであることが好ましい。さらに、より接合信頼性を向上させるには、3μm<Rmax<10μmであることがより望ましい。
ブラスト処理には、コンプレッサーエアーで酸化アルミニウム(アルミナ)(Al)等の研磨材を被研磨品に吹き付ける乾式ブラスト処理やコンプレッサーエアーで研磨材と溶液の混合物を被研磨品に吹き付ける湿式ブラスト処理がある。ブラスト処理は、粒径20〜250μmの研磨剤が添加された溶液を0.1〜0.5MPaの吹き付け圧力で1〜10分間、セラミック基板の表面に吹き付けると良い。
焼成後の窒化珪素基板は、900℃〜1,200℃の大気雰囲気中で熱処理を行う。通常の窒化珪素基板の焼結工程より形成される窒化珪素基板表面の酸化膜は、窒化珪素基板の表面の主に粒界相部分のみに形成されるが、この熱処理を行うことにより、窒化珪素基板表面全面に、厚く均一なMg、Siの酸化膜が形成され、ろう付け時にこの膜の作用により、ろう材中のAlおよびSiが反応して、Al−Mg−Si系からなる少なくとも2層の反応生成層を形成するものと思われる。
この熱処理が900℃よりも低い場合には、Mg、Siの酸化膜の形成が十分ではなく、窒化珪素基板とろう材の接合強度を増加するためのAl−Mg−Si系からなる少なくとも2層の反応生成層を形成することが出来ない場合がある。
一方、1,200℃を超える場合、Mg、Siの酸化膜の形成は促進されるものの窒化珪素基板中の粒界ガラス相の融点に近づくため、窒化珪素基板自身が変形しやすくなり、反りやうねりが生じる可能性が高くなり、基板として使用出来なくなる場合がある。
また、熱処理時間については、0.5時間〜5時間の間で熱処理を行う。この熱処理時間についても窒化珪素基板と金属回路板の接合に寄与する窒化珪素基板表面のMg、Siの酸化膜の形成に関与しており、0.5時間未満では、Mg、Siの酸化膜の形成が十分ではなく、窒化珪素基板とろう材の接合強度を増加するためのAl−Mg−Si系からなる少なくとも2層の反応生成層を形成することが出来ない場合がある。
また、5時間超の場合には、Mg、Siの酸化膜の形成は促進されるものの、基板表面にMg成分が濃縮した偏析相が形成され、これにより、基板表面でMg成分が異なる部分ができ、窒化珪素基板とろう材の接合強度を増加するために、Mg成分が低くなった領域における窒化珪素基板とろう材界面において、Al−Mg−Si系からなる少なくとも2層の反応生成層を形成することが出来ない場合がある。また、Mg成分の濃縮は、基板外観上のムラとなって確認される。
したがって、熱処理時間については、0.5時間〜5時間が好ましい。さらに、1時間〜4時間での熱処理が望ましい。
次に、熱処理された窒化珪素基板の表面に前述のAl−Si系ろう材を用いて金属回路板を接合する。ろう材の形状としては、シートまたは粉末を用いる。前者の場合には、数段の圧延パスにより所定の厚さとしたシートとし、ろう付け接合時に金属回路板/ろう材シート/窒化珪素基板とを重ねて用いる。また、後者は用いるろう材粉末の粒径により厚さを調整し、金属回路板/ろう材粉末/窒化珪素基板とを重ねて用いる。
ろう材量の低減とエッチング工程の簡略化を意図する場合に、所定の回路パターン形状にろう材粉末を用いたペーストを窒化珪素基板上にスクリーン印刷する。スクリーン印刷後のろう材厚さの範囲を5μm〜100μmに調整するとよい。ろう材厚さが、5μmよりも薄い場合は、接合に寄与するろう材量が枯渇して、金属回路板/窒化珪素基板界面にボイドが散在し、接合強度が低下して耐冷熱サイクル性が著しく減少する。また、100μmよりも厚い場合は、接合に寄与するろう材量は潤沢にあり、これにより良好な金属回路板/窒化珪素基板の接合強度が得られる反面、セラミックス基板との接合に必要な量以上に余剰のろう材があるため、このろう材は、金属回路板の側面、さらには金属回路板表面に廻り込んでしまい、表面がAl−Si合金化するため、特に純Alを回路基板として用いる場合には、純Alと異なる収縮挙動をするために金属回路板が変形する不具合が生じる。このため、ろう材厚さの範囲を5μm〜100μmとすることが望ましい。さらに望ましいろう材厚さの範囲は5μm〜30μmである。
次に、ろう付け時の接合温度および時間について説明する。
窒化珪素基板の両面にろう材を塗布し、さらにろう材の上にAl又はAl合金からなる金属回路板を配置し、接合温度を450℃以上、650℃以下の範囲において加圧しながら接合する。接合温度が450℃より低い場合は、ろう材の溶融が不十分であり、接合に寄与するろう材量が不足して良好な接合状態が得られない。また、650℃を超える場合は、金属回路板の融点の660℃近傍となるため、ろう材との反応とともに金属回路板自身が軟化して変形する不具合が生じる。また、余剰のろう材分が金属回路板表面に廻り込みも頻発する。
次に、ろう付け時の時間は、接合温度での保持時間を0.5時間以上、7時間以下の範囲とする。保持時間が、0.5時間未満では、窒化珪素基板と金属回路板の接合強度向上に必要な少なくとも2層からなる反応生成層が不十分であり、良好な接合強度を得ることができない。また、7時間超の場合には、金属回路板の再結晶が促進され、軟化が進み金属回路板の形状が変形する不具合が生じる場合がある。
このため、接合温度での保持時間は0.5時間以上、7時間以下の範囲が好ましい。さらに、2時間以上5時間以下が望ましい。
このようにして得られた窒化珪素回路基板に対して、金属回路板の表面にエッチングレジストを所望の回路パターンに印刷する。続いて、例えば塩化第二鉄あるいは塩化第二銅溶液によってエッチング処理して回路パターンを有する金属回路板を形成する。他方の面に接合された金属板をそのままエッチング処理無しで金属放熱板としてもよいし、同様に所望の形状パターンを有する金属放熱板としてもよい。金属回路板と金属放熱板はその主成分が同一(AlおよびAl合金)である場合、これらのエッチングは同時に行われる。また、これによって露出した部分のろう材の除去は、別工程を用いる必要がなく、ろう材がAl−Si系であるために回路パターン形成と同時に行われる。
さらに必要に応じて回路パターン形成後の金属回路板及び金属放熱板にNi−Pメッキを施し、セラミックス回路基板が作製される。なお、用いるはんだ材などを適宜選定することにより、このめっき処理を施さない実装形態も可能であり、この場合には、回路パターン形成後に化学研磨を行い、ベンゾトリアゾール等などの防錆剤を塗布する。また、選択するはんだ材種に応じて、ロジンなどの濡れ性向上成分を含有した防錆剤を用いてもよい。
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
平均粒子径0.5μmの窒化珪素粉末の所定の重量に対し、表1、表2に示すように焼結助剤を添加した混合粉末を作製した。次に、アミン系の分散剤を2wt%添加したエタノール・ブタノール溶液を満たしたボールミルの樹脂製ポット中に、前記混合粉末および粉砕媒体の窒化珪素製ボールを投入し、48時間湿式混合した。次に、前記ポット中の混合粉末:80重量部に対しポリビニル系の有機バインダー(ポリビニルブチラール):15重量部および可塑剤(ジオクチルアジペート):5重量部を添加し、次いで48時間湿式混合しシート成形用スラリーを得た。この成形用スラリーをドクターブレード法を用いてグリーンシートを成形した。次に、成形したグリーンシートを空気中600℃で5時間加熱することにより前記有機バインダー成分を十分に除去し、脱脂したグリーンシートを0.9MPa(9気圧)の窒素雰囲気中で1850℃で5時間焼結し、次いで室温に冷却した。得られたシート状窒化珪素焼結体に必要に応じて、アルミナ砥粒を用いた湿式サンドブラストにより表面性状を調整し、縦50mm×横30mm×厚さ0.32mmの窒化珪素基板を得た。
次に得られた窒化珪素基板焼結体から、直径10mm×厚さ0.32mmの熱伝導率および密度測定用の試験片、ならびに縦4mm×長さ20mm×厚さ0.32mmの曲げ試験片を採取した。密度はマイクロメ−タにより寸法を測定し、重量を測定し、算出した。熱伝導率はレーザーフラッシュ法により常温での比熱および熱拡散率を測定し熱伝導率を算出した。3点曲げ強度は常温にてJIS
R1606に準拠して測定を行った。表面粗さは、表面粗さ測定機(東京精密製 SAFCOM 130A)にて、評価長さ12.5mm、評価速度:0.3mm/sec、カットオフ値:0.8mmにて粗さ曲線の最大高さ(Rz)を求めた。
また、窒化珪素基板表面の外観ムラについては、2倍の拡大鏡を用いて、マトリックの色調と異なる0.2mm以上の色調変色部が、10mm四方辺りに1個よりも少ない場合を○として、1個以上ある場合を×として表1、表2中に記した。
続いて、当該基板を表1、表2に示す温度範囲において、熱処理時間4時間で大気中にて熱処理を施し、基板表面部にMg、Siの酸化膜を生成させた。
続いて、窒化珪素基板の表裏面に、縦40mm×横20mmの範囲にスクリーン印刷法により表1、表2に示す厚さに調整したろう材を塗布した。ろう材厚さの調整は、用いるろう材粉末合金の粒度および印刷マスクの透過体積により制御した。
さらに、その両面に縦40mm×横20mm×厚さ0.5mmの純度99.9%のAl板を配置し、真空炉中において、1に示す接合温度と、ろう付け時間4時間で窒化珪素基板とAl板をろう付けし接合体を得た。
また、ピール試験用の試験片として、金属回路板の一端部を窒化珪素基板の側面に対し10mm突出するようにするとともに、接合面積を5mm×5mmとした試験片を作成した。
続いて、金属回路板と窒化珪素基板との接合強度を評価するためにピ−ル強度試験を行った。ピ−ル強度試験は、金属回路板の一端部を窒化珪素基板の側面に対し10mm突出するように予め接合しておき、その接合面積を5mm×5mmとして、これを90度上方に引張りあげるのに要する単位長さ当りの力で評価し、表1、表2中に示す。
また、冷熱サイクル試験は、−60℃×30分、+175℃×30分を1000サイクルまで行い、金属回路板と窒化珪素基板における金属回路板剥離の有無(耐冷熱サイクル性)を確認した。なお、冷熱サイクル試験の到達温度について、高温環境対応の高機能Si素子およびSiC素子を搭載する回路基板用途として、使用可否を判断するために、従来の−55℃⇔150℃あるいは−40℃⇔125℃よりも過酷な試験条件で実施した。また、金属回路板剥離の判定には、超音波探傷機(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope.exla)で金属回路板と窒化珪素基板の接合状態を観察した。冷熱サイクル試験後に剥離した面積が5%未満のものを合格として判断し○を、5%以上のものを不合格として×を表1、表2中に示す。
さらに、金属回路板と窒化珪素基板との接合界面に生成する反応生成層の観察には、FIB(FoucuSion Bea)装置(日立製作所製FIB-10)により評価試料を薄片化し、これを透過型電子顕微鏡(日立製作所製HF2000)にて観察倍率10、000倍から600、000倍で行い、その結果を表1、表2中に示す。更に、上記反応生成層の組成分析は付属のエネルギー分散型分析装置(TEM−EDX)にて評価した。
実施例および比較例についての結果をまとめて表1、表2に示す。
Figure 0006124103
Figure 0006124103
以下、表1、表2に、本発明の実施例と比較例を示す。先ず、表1、表2の実施例No.1〜51より以下の知見が得られた。
No.1〜6,は、窒化珪素基板中のMgO量を変更した場合の、No.9〜14は、窒化珪素基板中のY量を変更した場合の、No.15〜22は、3A酸化物をLa、CeO、Nd、Dy、Gd、Er,Yb,Luに変更した場合の、No.23〜27は、MgO+Y量およびMgO/Y量比を変更することにより、Al−Mg−SiおよびAl−Si−Mg界面反応層の生成とその厚さを制御した結果である。
また、No.28〜33は、用いるAl−Si系ろう材に含有するSi量を変更した場合の、No.34〜40は、ろう材に含有するMg量とろう材の厚さを変更させたものである。
また、No.41〜44は、ろう付け前の熱処理条件を変更した場合の、No45〜49は、ろう付け温度を変更させたものである。
さらに、No.50〜55は、サンドブラスト条件により窒化珪素基板の表面粗さを変更した場合のものである。
表1、表2に示した本願発明の実施例から、本願発明は接合強度が高く、耐ヒートサイクルに優れた窒化珪素回路基板を得ることが出来ることが分かる。
(比較例)
金属回路板は、上記実施例と同様に用い、表2に示す試料No.81〜99においては、MgO+3AxOyの合計量およびMgO/3AxOy比、ろう材組成および厚さ、ろう付け前熱処理およびろう付け温度、基板表面粗さを変更した。
No.81は、MgO+3AxOyの合計量が0.6wt%未満であり、焼結時の緻密化作用が不十分となり相対密度が低くなるとともに窒化珪素基板の曲げ強度も低下した。さらにAl−Mg−Si系相の厚さが、10nmよりも薄く、これによりろう材と窒化珪素基板の接合界面強度が低下するため、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.82は、MgO+3AxOyの合計量が8.0wt%超であり、窒化珪素焼結体の第2のミクロ組織成分である熱伝導率の低い粒界相の量が過剰となり窒化珪素基板の熱伝導率が低くなった。また、反応生成層の厚さが、500nmよりも厚くなり、破壊のモードは反応生成層内部にシフトした。この場合、ピール強度は維持できるものの、耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.83は、MgO/3AxOyの比が1未満であり、粒界相中の希土類酸化物の割合が増大するため焼結過程で液相線温度が上昇し難焼結性となり緻密な窒化珪素基板が得られず、曲げ強度も低下する。さらに反応生成層の厚さが、10nmよりも薄く、これによりろう材と窒化珪素基板の接合界面強度が低下するため、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.84は、MgOの量が7.0wt%超で、MgO/3AxOyの比が70超であり、焼結体表面に色むらの発生があった。反応生成層の厚さが、500nmよりも厚くなり、破壊のモードは反応生成層内部にシフトする。この場合、ピール強度は維持できるものの、耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.85は、ろう材のSi量が、7wt%未満であり、ろう付け接合時の融点が上昇するため、接合に寄与する溶融金属が不足し、ろう付け時に生成する反応生成層の厚さが10nmよりも薄くなる。これによりろう材と窒化珪素基板の接合界面強度が低下するため、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.86は、ろう材のSi量が20wt%超であり、ろう材の融点が上昇するため、反応生成層が厚くなりすぎる。これによりろう材と窒化珪素基板の接合界面強度が低下するため、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.87および88は、Al−Si系ろう材のMg含有量が、いずれも0.05wt%以上であり、この場合、ろう材部に脆性相のMgSiが生成するため、ろう材と窒化珪素基板の接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.89は、ろう材厚さを6μm、ろう付け前処理温度を850℃およびろう付け温度を430℃とした場合に、反応生成層厚さが8nmと薄く、ろう材と窒化珪素基板の接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.91はろう付け前熱処理温度が低いために、窒化珪素基板表面にMg、Siの酸化膜が十分に生成されずに、接合界面に1層のみの反応生成層しか生成されず、接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.92は、ろう付け前熱処理温度が1250℃と高いために、ろう材表面のMgSiが濃化し、反応生成層の厚さが580μmとなり、これにより接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.93は、ろう付け温度が440℃と低すぎるために、ろう材が十分には溶融されずにろう材と窒化珪素基板が接合されないという不具合が生じた。
No.94は、ろう付け温度が660℃と高すぎるために、接合界面強度が高くなり、ピール強度は高くなるとともに耐ヒートサイクル性は高くなるが、金属回路板が変形してしまうとともに、ろう材が流れる現象が生じているため、製品として使用できないという問題が生じた。
No.95は、窒化珪素板のMgO+3AxOyが11wt%と高いために、窒化珪素基板の表面粗さが高くなり、接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.96は、ろう付け前の熱処理を行わないことから、窒化珪素基板表面のMg、Siの酸化膜が生成されずに、接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.97は、ろう付け前の熱処理を行わないことから、窒化珪素板表面のMg、Siの酸化膜が生成されずに、接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.98へは、MgO/3AxOyで表される重量比が0.7と低いことと、ろう材中のMg含有量が高いことから、形成された窒化珪素基板の表面粗さが低く、またろう付け前の熱処理を行わないことから、1層の反応生成層しか形成されないため、接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
No.99へは、ろう材中のMg含有量が高いことと、ろう付け前の熱処理を行わないことから、1層の反応生成層しか形成されないため、接合界面強度が低下し、ピール強度および耐ヒートサイクル性が劣化する不具合が生じた。
1.窒化珪素基板
2.ろう材
3.金属板









Claims (12)

  1. マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して0.6〜7.0wt%、周期律表第3a族元素(3A)を酸化物(3AxOy)に換算して、酸化マグネシウムとの合計量が0.7〜8.0wt%、MgO/3AxOyで表される重量比が1〜70の割合で含有する窒化珪素基板と、Al又はAl合金からなる金属回路板とを、7wt%〜20wt%のSiを含み、Mgの含有量が0.05wt%以下のAl−Si系ろう材を介して接合した窒化珪素回路基板において、前記窒化珪素基板と前記ろう材との接合界面に2層からなる厚さ10nm〜500nmの反応生成層が形成されていることを特徴とする窒化珪素回路基板。
  2. 前記反応生成層は、厚さが24nm〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載の窒化珪素回路基板。
  3. 前記窒化珪素基板は、マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して2〜7.0wt%含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化珪素回路基板。
  4. 前記反応生成層が、Al−Mg−Si系組成からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の窒化珪素回路基板。
  5. 前記反応生成層がMgおよびSiの生成比が異なる2層により構成されることを特徴とする請求項4に記載の窒化珪素回路基板。
  6. 前記反応生成層が、前記窒化珪素基板側にMgリッチ層、前記ろう材側にSiリッチ層のMgおよびSiの生成比が異なる2層により構成されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の窒化珪素回路基板。
  7. ろう付け前の窒化珪素基板の表面部の最大表面粗さが、3μm<Rz<20μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の窒化珪素回路基板。
  8. マグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)に換算して0.6〜7.0wt%、周期律表第3a族元素(3A)を酸化物(3AxOy)に換算して、酸化マグネシウムとの合計量が0.7〜8.0wt%、MgO/3AxOyで表される重量比が1〜70の割合で含有する窒化珪素基板とAl又はAl合金からなる金属回路板とを7wt%〜20wt%のSiを含み、Mgの含有量が0.05wt%以下のAl−Si系ろう材を介して接合する窒化珪素回路基板の製造方法において、焼成した窒化珪素基板に、900℃〜1,200℃の大気雰囲気中で熱処理を行った後、前記ろう材を介して450℃〜650℃で金属回路板と接合することを特徴とする窒化珪素回路基板の製造方法。
  9. 焼成した窒化珪素基板に大気雰囲気中で熱処理を行う際に、温度範囲を900℃〜1,100℃とすることを特徴とする請求項8に記載の窒化珪素回路基板の製造方法。
  10. 焼成して熱処理を行った窒化珪素基板に前記ろう材を介して金属回路板を接合する際に、温度範囲を500℃〜650℃とすることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の窒化珪素回路基板の製造方法。
  11. 前記焼成した窒化珪素基板の表面にブラスト処理を行った後に、前記熱処理を行うことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載の窒化珪素回路基板の製造方法。
  12. 前記ブラスト処理後の窒化珪素基板の最大表面粗さが、3μm<Rz<20μmであることを特徴とする請求項11に記載の窒化珪素回路基板の製造方法。
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