JP3560357B2 - 窒化アルミニウム焼結体の製造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、電子部品のパワーモジュール等に使用される窒化アルミニウム焼結体とその製造方法及びこの窒化アルミニウム焼結体を窒化アルミニウム基板として用いてなる耐熱衝撃性に優れた回路基板に関するものである。
【0002】
近年、ロボットやモーター等の産業機器の高性能化に伴い、大電力・高能率インバーター等大電力モジュールの変遷が進んでおり、半導体素子から発生する熱も増加の一途をたどっている。この熱を効率よく放散するため、大電力モジュール基板では従来より様々な方法がとられてきた。特に最近、良好な熱伝導を有するセラミックス基板が利用できるようになったため、基板上に銅板等の金属板を接合し回路を形成後、そのままあるいはメッキ等の処理を施してから半導体素子を実装し、回路の反対側には放熱フィンを取り付けるための放熱板を接合する構造も採用されつつある。
【0003】
このようなモジュールは、当初は簡単な工作機械に使用されてきたが、ここ数年、溶接機、電車の駆動部、電気自動車等に使用されるようになったのでより厳しい環境条件と更なる小型化が要求され、セラミックス基板に対しても電流密度を上げるために銅回路の厚みを増大させたり、熱衝撃等に対する耐久性の向上が要求されてきている。
【0004】
このような厳しい要求に対応が可能である現今のセラミックスは窒化アルミニウムのみであるので、その焼結体自体の性能向上と回路基板としての構造改善等が早急に求められている。
【0005】
窒化アルミニウム焼結体を製造するには、窒化アルミニウム粉末に例えばイットリア等の希土類酸化物、カルシア等のアルカリ土類酸化物等の焼結助剤を配合し、その配合物を成形した後焼成する常圧焼結法、上記配合物又は窒化アルミニウム粉末単独をホットプレス焼結する方法が一般的に採用されている。
【0006】
一方、回路基板を形成するための金属とセラミックスを接合する方法としては、Mo−Mn 法、活性金属ろう付け法、硫化銅法、DBC法、銅メタライズ法等があるが、中でも銅板と窒化アルミニウム基板との接合には、両者間に活性金属を含むろう材(以下、単に「ろう材」という)を介在させ加熱処理して接合体とする活性金属ろう付け法(例えば特開昭60−177634 号公報)と、表面が酸化処理された窒化アルミニウム基板と銅板を銅の融点以下でCu−Oの共晶温度以上で加熱接合するDBC法(例えば特開昭56−163093 号公報)がある。
【0007】
活性金属ろう付け法は、DBC法に比べて以下の利点がある。
(1)窒化アルミニウム基板と銅板との接合体を得るための熱処理温度が低いので両者の熱膨張差によって生じる残留熱応力が小さい。
(2)ろう材が延性金属であるのでヒートショックやヒートサイクルに対して耐久性が大である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、活性金属ろう付け法を用いてもヒートショックやヒートサイクル等の熱衝撃、熱履歴によって生じる損傷に対して十分な耐久性があるとはいえず新しい技術の提案が待たれていた。そこで、金属回路(通常はセラミックス基板の上面に設けられる)の体積を反対面の金属放熱板の体積の50から90%となるように調整したり(特開昭63−24815号公報)、放熱側銅板の厚さを回路側銅板の厚さの50%以下とすること(特開平5−170564号公報)等が提案されているが、これらの工夫だけではこれからの厳しい要求に対して十分に応じることはできず、窒化アルミニウム焼結体自体の改善が不可欠となっている。
【0009】
窒化アルミニウムの焼結は、液相焼結であるため、焼結体の粒界層は全て焼結助剤で形成されることになる。常圧焼結法はホットプレス法に比べて簡単かつ量産的に窒化アルミニウム焼結体を製造することができる。しかしながら、この方法では焼結体にポアなどの欠陥を生じやすく、また窒化アルミニウムとの相反応によって発生する第2、第3相が比較的高い蒸気圧を持つため偏析を生じやすく、ホットプレス法で製造した焼結体に比べると熱衝撃性が小さくなる傾向にある。特に、板状の窒化アルミニウム焼結体からなる窒化アルミニウム基板を製造する場合にはこの傾向は顕著であった。
【0010】
本発明者らは、以上の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、焼成条件特に焼成後の冷却速度を制御すると、得られた窒化アルミニウム焼結体の粒界層の分布すなわち焼結助剤の分布が著しく偏り、その結果熱衝撃性が著しく向上することを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、窒化アルミニウム粉末に対して焼結助剤として3〜5重量%のイットリアを含んでなるグリーンシートを非酸化性雰囲気下に焼成して窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、焼結温度を1900〜2000℃とし、温度1500℃から1700℃までの昇温速度を5〜10℃/分、温度1700℃から焼結温度までの昇温速度を1〜2℃/分として昇温し、焼成後、温度1700℃までを冷却速度を8℃/分以下にして冷却することを特徴とする、焼結体表面から100μm以内の部分に存在する粒界層の割合Esが8〜20%で、厚み方向の中心部分から±100μm以内の部分に存在する粒界層の割合Eiが16%以下であり、しかもEs/Eiが1.25以上である耐熱衝撃性に優れた窒化アルミニウム焼結体の製造方法である。
【0012】
以下、さらに詳しく本発明について説明すると、本発明の窒化アルミニウム焼結体(請求項1の発明)の特徴は、粒界層を偏析させたことである。すなわち、焼結体表面から100μm以内の部分に存在する粒界層の割合Esが8〜20%で、厚み方向の中心部分から±100μm以内の部分に存在する粒界層の割合Esが16%以下であり、しかもEs/Eiが1.25以上としたものである。
【0013】
本発明において、Es/Eiを1.25以上とすると熱衝撃性が向上する理由は、窒化アルミニウム基板と金属回路との熱膨張差によって生じる熱応力に対し、粒界層を窒化アルミニウム基板表面に多く存在させることによって、マイクロクラックが生じ易い層を基板表面に形成させ、その熱応力を分散させて基板内部まで熱応力が伝達しないような構造となっていることである。つまり、Es/Eiが1.25よりも小さいと、熱応力をマイクロクラックとして吸収する層がないので熱応力が直接窒化アルミニウム基板内部にまで達してしまい、基板の破壊が生じてしまう。
【0014】
熱応力をマイクロクラックとして吸収する層とするには、粒界層の割合Esが8〜20%で好ましくは13〜17%でなければならない。Esが20%をこえるとこの部分の熱伝導率が低下する。一方、粒界層の割合Eiは、窒化アルミニウム焼結体の機械的強度を左右する因子であり、それが小さいほど機械的強度が向上するので好ましいが、本発明においては16%以下好ましくは7〜8%である。Eiが余りにも小さいと靱性が低下し、16%をこえると機械的強度が低下する。
【0015】
粒界層の割合Es又はEiを測定するには、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)におけるCOMPO像を撮影し、それを画像処理することによって行うことができる。例えば、粒界成分(焼結助剤成分)の分子量が窒化アルミニウムのそれよりも大きい場合には、粒界成分は白く見える。写真のコントラストを統一するために粒界層白く窒化アルミニウム粒子が黒くなるように画像処理を行う。この画像処理された写真の色度(L値)を色差計で測定し、全面白の場合が100、全面黒の場合が0となるように値を補正してその写真のL値を求め、そのL値からあらかじめ作成された検量線にしたがって粒界層の割合Es又はEiを求める。粒界成分と窒化アルミニウムとの分子量の差では識別しにくい場合には、EPMA装置を用いて面分析を行い、同様にL値を求めることによって行うことができる。
【0016】
走査型電子顕微鏡又はEPMA装置における倍率としては500倍程度が適当であり、色差計の測定範囲として直径100μm程度の円が納まるように写真の大きさを調節することが望ましい。
【0017】
本発明の窒化アルミニウム焼結体の酸素含有量は1.5〜3重量%であることが好ましい。酸素含有量が1.5重量%未満では、焼結体を構成するAlN粒子の隙間を埋める働きをする粒界層が少なくなり、靱性が低下して脆くなる。一方、酸素含有量が3重量%をこえると不純物酸素が増大することとなり熱伝導率が低下する。本発明の窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率としては、高いものほど好ましいが60W/mKもあれば十分である。
【0018】
次に、本発明の窒化アルミニウム焼結体の製造方法(請求項2の発明)について説明すると、本発明の大きな特徴は窒化アルミニウムに対し3〜5重量%の焼結助剤を含むグリーンシートを常法により焼成した後、温度1700℃までを8℃/分以下の冷却速度で冷却することである。
【0019】
温度1700℃までの冷却速度を8℃/分をこえて冷却すると、粒界層が窒化アルミニウム焼結体内部に閉じこめられてしまい、本発明のように粒界層を偏析させた窒化アルミニウム焼結体を製造することができなくなる。
【0020】
本発明で使用されるグリーンシートの製造及びその焼成条件は、焼成後の冷却条件を除いて従来法を採用することができる。その概要は以下のとおりである。窒化アルミニウム粉末としては、粒径2μm程度、金属不純物の合計が300ppm以下、不純物炭素1000ppm以下のものが使用される。
【0021】
本発明で使用される焼結助剤としては、例えばイットリア、セリア等の希土類酸化物、例えばカルシア、マグネシア等のアルカリ土類酸化物等であるが特にイットリアが望ましい。その使用量は、窒化アルミニウム粉末中に3〜5重量%を含む割合とする。3重量%未満では十分な粒界層を形成させることはできず、また常圧焼結することも困難となるので製造コストが増大する。一方、5重量%をこえると焼結体の不純物酸素量が多くなって熱伝導率が低下する。
【0022】
有機結合剤としては、エチルセルロース等のようなセルロース類も使用できるがポリビニルブチラール(PVB)が最適である。有機溶剤としては、アルコール類、トルエン、キシレンが好ましい。分散剤については、ダイナマイトグリセリン、グリセリントリオレート等が使用される。
【0023】
スラリーの混練方法としては、ボールミルが一般的であるが、ミキサー類を使用することもできる。グリーンシートの成形方法としては、ドクターブレード法が最適であるが、これに限られることはなくカレンダーロールや押出し成形機を使用することもできる。
【0024】
以上のようにして製造されたグリーンシートは、脱脂後非酸化性雰囲気下で焼成後、1700℃までの温度を冷却速度8℃/分以下にして冷却されて本発明の窒化アルミニウム焼結体が製造される。脱脂工程は、非酸化性雰囲気下で行う必要はないが、より高い熱伝導率を望む場合には、窒素ガスを導入した非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。焼成は、アルゴン、N2 等の非酸化性雰囲気下で行われ、温度1500℃から1700℃までの昇温速度を5〜10℃/分、温度1700℃から焼結温度までのそれを1〜2℃/分として昇温し、焼結温度を1900〜2000℃とすることが望ましい。
【0025】
本発明の窒化アルミニウム焼結体が焼結される際の焼結助剤の働きを考察すると、まず焼結前の段階では焼結助剤は窒化アルミニウム粒子の隙間に固体として存在しているが、やがて焼結が始まる段階になってくると粒子同士の接触部分から反応が始まる。そして、焼結助剤は液相となり窒化アルミニウム粒子の表面を這うようにして窒化アルミニウム粒子表面に存在する酸素(アルミナとして存在する)と反応し複合酸化物を生成する。このとき、窒化アルミニウム粒子の隙間にある粒界層が焼結助剤によって埋め尽くされる。更にこの状態で時間が進むと窒化アルミニウム粒子が粒成長し、粒子間の隙間が少なくなって粒界層の居場所がなくなり表面へと押し出されていくことになる。これらの一連の粒界層の働きについては、上記したグリーンシートの焼成条件特に冷却速度の制御によって調節することができる。
【0026】
焼結助剤が上記挙動を示すには、適正な焼結助剤量3〜5重量%と適正な窒化アルミニウム分の中に存在する酸素含有量が重要であり、その量としては焼結体となった状態で1.5〜3重量%の酸素含有量であることが好ましい。酸素含有量が1.5重量%よりも少ない場合には、粒界層の移動は余り起こらず、窒化アルミニウム粒子間の隙間に固定されたままの状態になりやすい。一方、酸素含有量が3重量%よりも多い場合には、熱伝導率が低下する。
【0027】
次に、本発明の窒化アルミニウム焼結体を窒化アルミニウム基板として使用した回路基板(請求項3及び請求項4の発明)について説明する。
【0028】
まず、請求項3に記載された回路基板について説明すると、本発明において、窒化アルミニウム基板の厚みは0.3mm以上であることが望ましい。0.3mmよりも薄いと熱衝撃に対し構造的に耐久力がなくなる。また、あまりにも厚すぎると熱抵抗を下げる原因となるので0.8mm以下であることが望ましい。
【0029】
窒化アルミニウム基板の表面に形成される金属回路及び/又は金属放熱板の材質としては、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン等が使用されるが、銅が一般的である。金属回路の厚みとしては、近年、電流密度が向上していく傾向から0.3mmよりも厚いことが好ましく、また金属放熱板の厚みとしては0.2mm以下であることが好ましい。
【0030】
次に、請求項4に記載された回路基板について説明する。通常、この分野で用いられる銅回路を有する回路基板は、銅回路側の厚みが裏側の金属放熱板の厚みよりも厚い(例えば特公平3−51119 号公報)のでヒートサイクル試験を行うと銅と窒化アルミニウムとの熱膨張係数の差から銅回路側に引っ張り応力がかかり、銅回路側が凸になって窒化アルミニウム基板から剥がれやすくなる。
【0031】
そこで、本発明では、ヒートサイクル時にかかる熱応力とは逆の、すなわち金属回路側に圧縮の応力を付与することによってヒートサイクル時の熱応力を打ち消し、耐ヒートサイクル性を向上させたものである。具体的には、金属回路側が凹となるような反りをもたせたものである。
【0032】
金属回路側に凹の方向にもたせる反りが大きいほど残留応力も大きくなるが、あまりにも反りが大きすぎると裏側の金属放熱板にヒートシンクとなるベース銅板を半田付けする際にボイドが発生する危険があるので、反りの値は400μm以下特に300μm以下であることが好ましい。
【0033】
このような反りをもたせる具体的な手段としては、例えば窒化アルミニウム基板の厚みが0.635mm、金属回路の厚みが0.3〜0.5mm、金属放熱板の厚みが0.1〜0.25mmとしてそれらを接合すればよい。なお、窒化アルミニウム基板の表面に形成される金属回路及び/又は金属放熱板の材質と厚みについては、上記したものと同様なものが使用される。
【0034】
上記請求項3及び請求項4に記載されたいずれの回路基板においても、窒化アルミニウム基板の一方の面に金属回路、他方の面には金属放熱板を形成する方法としては、窒化アルミニウム基板と金属板との接合体をエッチングする方法、金属板から打ち抜かれた金属回路及び/又は金属放熱板のパターンを窒化アルミニウム基板に接合する方法等によって行うことができ、これらの際における金属板又はパターンと窒化アルミニウム基板との接合方法としては、活性金属ろう付け法やDBC法等を採用することができる。
【0035】
活性金属ろう付け法におけるろう材の金属成分は、銀と銅を主成分とし、溶融時の窒化アルミニウム基板との濡れ性を確保するために活性金属を副成分とする。この活性金属成分は、窒化アルミニウム基板と反応して酸化物や窒化物を生成させ、それらの生成物がろう材と窒化アルミニウム基板との結合を強固なものにする。活性金属の具体例をあげれば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムやこれらの化合物である。これらの比率としては、銀69〜75重量部と銅25〜31重量部の合計量100重量部あたり活性金属3〜35重量部である。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例をあげて具体的に説明する。
【0037】
実施例1〜24、比較例1〜24
窒化アルミニウム粉末96〜98重量部と焼結助剤(イットリア)2〜4重量部の合計100重量部に対し、有機結合剤としてポリビニルブチラール6重量部、可塑剤としてブチルフタレート3重量部、分散剤としてグリセリントリオレート1重量部及び溶剤としてキシレン60重量部をナイロンポットにて24時間混合して得られたスラリーをドクターブレーディングによりPETフィルム上に広げ、風乾後、120℃で3時間乾燥して所定の厚みを持つグリーンシートを成形した。このグリーンシートを60mm×35mmの大きさに打ち抜き、25枚を重ねてタングステンの重しをのせ、空気中500℃で1時間加熱して有機結合剤を除去した後、表1に示す条件で常圧焼結した。
【0038】
得られた窒化アルミニウム焼結体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)におけるCOMPO像を撮影し、イットリア相が白く窒化アルミニウム粒子が黒くなるように画像処理を行い、上記方法にしたがい粒界層のEsとEiを測定した。また、窒化アルミニウム焼結体の酸素含有量をO/N分析計(LECO社製)を用いて測定した。それらの結果を表1と表2に示す。
【0039】
銀粉末75重量部、銅粉末25重量部、ジルコニウム粉末15重量部、 及びテルピネオール15重量部と有機結合剤としてポリイソブチルメタアクリレートのトルエン溶液を固形分で1重量部をよく混練しろう材ペーストを調製した。このろう材ペーストを上記で製造された窒化アルミニウム焼結体を窒化アルミニウム基板とし、その表裏両面に全面塗布した。その際の塗布量(乾燥後)を6〜8mg/cm2 とした。
【0040】
次に、ろう材ペーストの塗布された窒化アルミニウム基板の片面に基板と同サイズで厚み0.3mm又は0.5mmの銅板を接触配置し、反対面には基板と同サイズで厚み0.15mm又は0.25mmの銅板を接触配置してから、真空度1×10−5Torr以下の真空下、温度900℃で30分加熱した後、2 ℃/分の降温速度で冷却して接合体を製造した。
【0041】
次いで、この接合体の銅板上にUV硬化タイプのエッチングレジストをスクリーン印刷で塗布後、塩化第2銅溶液を用いてエッチング処理を行って銅板不要部分を溶解除去し、更にエッチングレジストを5%苛性ソーダ溶液で剥離した。このエッチング処理後の接合体には、銅回路パターン間に残留不要ろう材や活性金属成分と窒化アルミニウム基板との反応物があるので、それを除去するため、温度60℃、10%フッ化アンモニウム溶液に10分間浸漬した。
【0042】
これら一連の処理を経て作製された銅回路を有する回路基板について、ダイヤルゲージにより反りを測定してから、ヒートサイクル(熱衝撃)試験を行った。ヒートサイクル試験は、気中、−40℃×30分保持後、25℃×10分間放置、更に125℃×30分保持後、25℃×10分間放置を1サイクルとして行い、回路路基板10枚の少なくとも1枚に銅板が剥離したヒートサイクル回数を銅板剥離開始回数として測定した。それらの結果を表1と表2に示す。なお、反りの「+」は銅回路側に凹、「−」は凸であることを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明のように、粒界層を窒化アルミニウム焼結体の内面よりも表面に多く存在させることによって、ヒートショックやヒートサイクル等の熱衝撃、熱履歴に対して十分に高い耐久性をもった窒化アルミニウム焼結体が提供される。また、この窒化アルミニウム焼結体を基板として用い、その表裏面に形成される金属回路と金属放熱板の厚みを調節して回路基板の反りを金属回路側に凹とすることによってヒートショックやヒートサイクル等の熱衝撃、熱履歴に対する耐久性が更に高められた回路基板が提供される。
Claims (1)
- 窒化アルミニウム粉末に対して焼結助剤として3〜5重量%のイットリアを含んでなるグリーンシートを非酸化性雰囲気下に焼成して窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、焼結温度を1900〜2000℃とし、温度1500℃から1700℃までの昇温速度を5〜10℃/分、温度1700℃から焼結温度までの昇温速度を1〜2℃/分として昇温し、焼成後、温度1700℃までを冷却速度を8℃/分以下にして冷却することを特徴とする、焼結体表面から100μm以内の部分に存在する粒界層の割合Esが8〜20%で、厚み方向の中心部分から±100μm以内の部分に存在する粒界層の割合Eiが16%以下であり、しかもEs/Eiが1.25以上である耐熱衝撃性に優れた窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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