JP7232394B1 - 窒化珪素基板、及び窒化珪素回路基板 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007232394000001
【課題】色むらが生じ難い窒化珪素基板、窒化珪素基板の評価方法、評価装置、及び評価システムを提供すること。
【解決手段】第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板である。前記第1面と前記第2面とのうちの一方の面である測定面において以下の測定方法で測定された平均半値幅Caveの値が0cm-1より大きく5.32cm-1より小さい。平均半値幅Caveの測定方法:前記測定面の中央部1点と縁部4点とを測定点とする。前記測定点のそれぞれでラマンスペクトルを測定する。測定したそれぞれの前記ラマンスペクトルにおいて、850cm-1以上875cm-1以下の範囲内で最大強度をとるスペクトルピークの半値幅Cを算出する。算出した前記半値幅Cの平均値を平均半値幅Caveとする。
【選択図】図7

Description

本開示は、窒化珪素基板、窒化珪素基板の評価方法、評価装置、及び評価システムに関する。
特開2003-267786号公報(特許文献1)には、焼結体の色を従来材に比べて黒色化し、かつ、色むらを少なくするとともに、充分な強度を有する窒化珪素系セラミックス焼結体を提供するための技術が記載されている。
特開2005-214659号公報(特許文献2)には、配線基板の色に対してコントラストが小さい色の異物も判別できる異物検査装置に関する技術が記載されている。
特開2016-204206号公報(特許文献3)、特開2016-204207号公報(特許文献4)、特開2016-204209号公報(特許文献5)及び特開2016-204210号公報(特許文献6)には、軽量、かつ、高硬度であり、研磨等の加工に対する耐性に優れ、さらには、外観品質に優れた窒化珪素系セラミック部材を提供するための技術が記載されている。
特開平9-227240号公報(特許文献7)には、窒化珪素セラミックス焼結体における表面色調層部の厚さを薄くして、さらに、表面層及び内部層の破壊強度特性を均一にすることができる技術が記載されている。
特開2003-267786号公報 特開2005-214659号公報 特開2016-204206号公報 特開2016-204207号公報 特開2016-204209号公報 特開2016-204210号公報 特開平9-227240号公報
窒化珪素基板の表面に付着した異物や汚れは、窒化珪素基板とろう材との接触不良や窒化珪素基板自体の絶縁不良を引き起こす。窒化珪素基板の表面に付着した異物や汚れを検出するために、外観検査が行われている。外観検査の方法として、窒化珪素基板の表面をCCDカメラ等の撮像装置で撮像した後、撮像された画像のデータと予め登録された基準データとを比較することにより、異物や汚れを検出する方法がある。
窒化珪素基板の表面に色むらが生じることがある。色むらは、例えば、窒化珪素基板の中央部と縁部とで色が異なる現象である。窒化珪素基板の表面に色むらがあると、外観検査を行ったとき、色むらを異物や汚れとして誤検出するおそれがある。
また、窒化珪素基板の反りが大きくなると、窒化珪素基板にろう材で接合される金属回路板及び金属放熱板との密着性が低下し、接合工程における降温過程やパワーモジュール稼働時のヒートサイクルにおいて発生する熱応力により、窒化珪素基板から金属回路基板及び金属放熱板が剥離しやすくなるといった問題があった。
本開示の1つの局面では、色むらが生じ難い窒化珪素基板、窒化珪素基板の評価方法、評価装置、及び評価システムを提供することが好ましい。
また、本開示の1つの局面では、反りが抑制されていると共に色むらが生じ難い窒化珪素基板、窒化珪素基板の評価方法、評価装置、及び評価システムを提供することが好ましい。
(1)本開示の1つの局面は、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板であって、前記第1面と前記第2面とのうちの一方の面である測定面において以下の測定方法で測定された平均半値幅Caveの値が0cm-1より大きく5.32cm-1より小さい窒化珪素基板である。
平均半値幅Caveの測定方法:前記測定面の中央部1点と縁部4点とを測定点とする。前記測定点のそれぞれでラマンスペクトルを測定する。測定したそれぞれの前記ラマンスペクトルにおいて、850cm-1以上875cm-1以下の範囲内で最大強度をとるスペクトルピークの半値幅Cを算出する。算出した前記半値幅Cの平均値を平均半値幅Caveとする。
本開示の1つの局面である窒化珪素基板は、色むらが生じ難い。また、反りが抑制されていると共に色むらが生じ難い。
(2)本開示の別の局面は、窒化珪素基板の色むらを評価する窒化珪素基板の評価方法であって、前記窒化珪素基板上の測定点でラマンスペクトルを測定し、前記ラマンスペクトルに含まれる、窒化珪素の格子振動に帰属されるスペクトルピークの半値幅を測定し、前記半値幅に基づき、前記窒化珪素基板の色むらを評価する、窒化珪素基板の評価方法である。
本開示の別の局面である窒化珪素基板の評価方法は、測定点の面積が小さくても、色むらを評価することができる。また、反りと共に色むらを評価することができる。
(3)本開示の別の局面は、窒化珪素基板の色むらを評価する評価装置であって、窒化珪素基板上の測定点で測定されたラマンスペクトルを取得するように構成されたデータ取得部と、前記データ取得部が取得した前記ラマンスペクトルに含まれる、窒化珪素の格子振動に帰属されるスペクトルピークの半値幅を測定するように構成された半値幅測定部と、を備える評価装置である。
本開示の別の局面である評価装置は、測定点の面積が小さくても、色むらを評価することができる。また、反りと共に色むらを評価することができる。
(4)本開示の別の局面は、窒化珪素基板の色むらを評価する評価システムであって、前記窒化珪素基板上の測定点でラマンスペクトルを測定するラマン測定装置と、上記(3)に記載の評価装置とを備える窒化珪素基板の評価システムである。
パワーモジュール及び窒化珪素回路基板の構成を表す側面図である。 窒化珪素基板の製造方法を表す説明図である。 成形体を積層配置した状態を示す説明図である。 窒化工程直後の窒化珪素基板3Yと同一ロット内の色むらが発生した窒化珪素基板の表面を示す写真である。 窒化珪素回路基板の製造方法を表す説明図である。 窒化珪素基板の評価システムの構成を表す説明図である。 測定面における測定点の配置を表す説明図である。 フィッティング後のスペクトルピークにおける半値幅を表す説明図である。 窒化珪素基板3X、3Yのスペクトルピークの波数、高さ、半値幅、面積を表す表である。 窒化珪素基板3X、3Yの1回目の評価処理における各測定点での明度L、緑色から赤色にわたる色度a、黄色から青色にわたる色度b、彩度C、半値幅を表す表である。 窒化珪素基板3X、3Yの2回目の評価処理における各測定点での明度L、緑色から赤色にわたる色度a、黄色から青色にわたる色度b、彩度C、半値幅を表す表である。 窒化珪素基板3X、3Yの1回目及び2回目の評価処理における平均半値幅と明度Lとを示すグラフである。 窒化珪素基板3X、3Yの1回目及び2回目の評価処理における平均半値幅と彩度Cとを示すグラフである。 実施例の所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示すグラフである。 比較例の所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示すグラフである。 窒化珪素基板3A、3Bのスペクトルピークの波数、高さ、半値幅、面積を表す表である。 窒化珪素基板3A、3Bの評価処理における各測定点での明度L*、緑色から赤色にわたる色度a*、黄色から青色にわたる色度b*、彩度C*、半値幅を表す表である。
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.パワーモジュール1及び窒化珪素回路基板2の構成
図1に基づき、パワーモジュール1及び窒化珪素回路基板2の構成を説明する。窒化珪素回路基板2は、窒化珪素基板3と、金属回路5と、金属放熱板7と、ろう材層9、11と、を備える。パワーモジュール1は、窒化珪素回路基板2と、半導体チップ13と、ヒートシンク15と、を備える。
窒化珪素基板3は、例えば、第1面と、第2面とを有する。第1面は、後述する成形体作製工程S2中、及び燒結工程S3中の上面である。第2面は、第1面とは反対側の面である。窒化珪素基板3の平面形状は、例えば、矩形形状である。平面形状とは、窒化珪素基板3の厚さ方向から見たときの形状である。例えば、窒化珪素基板3のそれぞれの辺の長さは100mm以上である。
金属回路5は銅板から成る。金属回路5は、ろう材層9により、窒化珪素基板3の第1面に取り付けられている。金属放熱板7は銅板から成る。金属放熱板7は、ろう材層11により、窒化珪素基板3の第2面に取り付けられている。半導体チップ13は金属回路5に取り付けられている。ヒートシンク15は金属放熱板7に取り付けられている。
2.窒化珪素基板3の製造方法
例えば、図2に示す方法で窒化珪素基板3を製造することができる。製造方法は、スラリー作製工程S1、成形体作製工程S2、焼結工程S3、及び窒化工程S4を含む。
(2-1)スラリー作製工程S1
例えば、珪素粉末に焼結助剤を添加して原料粉末を得る。焼結助剤として、例えば、希土類元素酸化物、マグネシウム化合物等が挙げられる。原料粉末を使用してスラリーを作製する。
珪素粉末として、例えば、工業的に入手可能なグレードの珪素粉末が挙げられる。粉砕前の珪素粉末のメジアン径D50は6μm以上であることが好ましく、7μm以上であることが一層好ましい。
粉砕前の珪素粉末のBET比表面積は3m/g以下であることが好ましく、2.5m/g以下であることが一層好ましい。粉砕前の珪素粉末の酸素量は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが一層好ましい。粉砕前の珪素粉末が含む不純物炭素量は0.15質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以下であることが一層好ましい。
珪素粉末の純度は、99%以上であることが好ましく、99.5%以上であることが一層好ましい。珪素粉末に含まれる不純物酸素は、反応焼結によって得られる窒化珪素基板の熱伝導を阻害する要因の1つである。珪素粉末の純度が高いほど、窒化珪素基板の熱伝導率が向上する。
マグネシウム化合物からの酸素量を制限することにより、珪素粉末に含まれる不純物酸素の量と、マグネシウム化合物からの酸素量との総量が、窒化珪素に換算した珪素の量に対して、0.1質量%以上1.1質量%以下の範囲となるように原料粉末を調製することが好ましい。
珪素粉末に含まれる不純物炭素は、反応焼結によって得られる窒化珪素基板において、窒化珪素粒子の成長を阻害する。窒化珪素粒子の成長が阻害されると、窒化珪素基板が緻密化し難い。窒化珪素基板が緻密化し難いと、窒化珪素基板の熱伝導率や絶縁特性が低下する。そのため、珪素粉末に含まれる不純物炭素は、できるだけ少ないことが好ましい。
なお、本明細書において、BET比表面積(m/g)とは、BET比表面積計を用い、BET一点法(JIS R 1626:1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」)によって求めた値である。また、メジアン径D50(μm)とは、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布において累積度数が50%となるときの粒径である。
本発明の製造方法においては必須ではないが、原料粉末に窒化珪素の粉末を含んでもよい。ただし、珪素に比べて窒化珪素を使用した場合はコストがかかるので、窒化珪素の使用量はできるだけ少ない方がよい。窒化珪素の使用量は、珪素(窒化珪素換算)の50mol%以下であるのが好ましく、10mol%以下であるのがより好ましく、5mol%以下であるのがさらに好ましい。なお、その場合の窒化珪素基板は、窒化珪素換算で窒化珪素が珪素の50mol%以下となるように前記珪素が含まれるシート状の成形体を窒化してなる窒化珪素基板である。
希土類元素酸化物として、例えば、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ルテチウム(Lu)等の酸化物が挙げられる。これらの希土類元素酸化物は、入手が容易であり、酸化物として安定している。希土類元素酸化物の具体例として、例えば、酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化エルビウム(Er)、酸化ルテチウム(Lu)等が挙げられる。
窒化珪素基板において、三価の酸化物(RE:REは希土類元素)に換算した希土類元素酸化物のモル数をM1とする。窒化珪素基板において、窒化珪素(Si)に換算した珪素のモル数をM2とする。M2は、珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素のモル数である。窒化珪素基板において、MgOに換算したマグネシウム化合物のモル数をM3とする。
M1、M2、及びM3の合計モル数に対するM1のモル比(以下では希土類酸化物のモル比とする)は、例えば、0.5mol%以上2mol%未満である。希土類酸化物のモル比が0.5mol%以上である場合、焼結助剤の効果が高くなり、窒化珪素基板の密度が充分に高くなる。希土類酸化物のモル比が2.0mol%未満である場合、低熱伝導率の粒界相が増加し難く、焼結体の熱伝導率が上がるとともに、高価な希土類元素酸化物の使用量が減少する。特に、希土類酸化物のモル比は、0.6mol%以上2mol%未満であることが好ましく、1mol%以上1.8mol%以下であることがさらに好ましい。
マグネシウム化合物として、「Si」、「N」又は「O」を含有するマグネシウム化合物を1種類又は2種類以上使用することができる。マグネシウム化合物として、酸化マグネシウム(MgO)、窒化珪素マグネシウム(MgSiN)、珪化マグネシウム(MgSi)、窒化マグネシウム(Mg)等が好ましい。
マグネシウム化合物の合計質量に対する、窒化珪素マグネシウムの質量の比率(以下では窒化珪素マグネシウム質量比とする)が87質量%以上であることが好ましい。窒化珪素マグネシウム質量比が87質量%以上である場合、得られる窒化珪素基板中の酸素濃度を低減することができる。窒化珪素マグネシウム質量比が87質量%未満である場合、焼結後の窒化珪素粒子内の酸素量が多くなるため、焼結後の窒化珪素基板の熱伝導率が低くなる。従って、窒化珪素基板の熱伝導率を向上させるためには、窒化珪素マグネシウム質量比が高いことが好ましい。窒化珪素マグネシウム質量比は、90質量%以上であることが一層好ましい。
M1、M2、及びM3の合計モル数に対するM3のモル比(以下ではマグネシウム化合物のモル比とする)は、例えば、8mol%以上15mol%未満である。マグネシウム化合物のモル比が8mol%以上である場合、焼結助剤の効果が高くなり、窒化珪素基板の密度が充分に高くなる。マグネシウム化合物のモル比が15mol%未満である場合、低熱伝導率の粒界相が増加し難く、焼結体の熱伝導率が高くなる。特に、マグネシウム化合物のモル比は、8mol%以上14mol%未満であることが好ましく、9mol%以上11mol%以下であることが一層好ましい。
スラリーを作製する方法として、例えば、以下の方法がある。珪素粉末に、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を、所定の比率となるように添加する。次に、分散媒を添加する。分散媒は、例えば、有機溶剤である。必要に応じて、分散剤も添加する。
次に、ボールミルで粉砕することにより、原料粉末の分散物であるスラリーを作製する。分散媒は、例えば、有機溶剤である。分散媒として、例えば、エタノール、n-ブタノール、トルエン等が挙げられる。分散剤として、例えば、ソルビタンエステル型分散剤、ポリオキシアルキレン型分散剤等が挙げられる。
分散媒の添加量は、例えば、原料粉末の総量に対して、40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。分散剤の添加量は、例えば、原料粉末の総量に対して、0.3質量%以上2質量%以下であることが好ましい。なお、分散後に、必要に応じて分散媒の除去、又は、他の分散媒への置換を行ってもよい。
(2-2)成形体作製工程S2
上述のようにして得られたスラリーに対し、例えば、分散媒、有機バインダ、分散剤等を加える。次に、必要に応じて真空脱泡を行う。次に、スラリーの粘度を所定の範囲に調整する。その結果、塗工用スラリーが得られる。
次に、得られた塗工用スラリーをシート成形機でシート状に成形する。次に、所定のサイズに切断し、乾燥する。その結果、シート状の成形体が得られる。
塗工用スラリーの作製に使用する有機バインダは特に限定されない。塗工用スラリーの作製に使用する有機バインダとして、例えば、PVB系樹脂、エチルセルロース系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。PVB系樹脂として、例えば、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。分散媒、有機バインダ、分散剤等の添加量は、塗工条件に応じて、適宜調整することができる。
塗工用スラリーをシート状に成形する方法は特に限定されない。塗工用スラリーをシート状に成形する方法として、例えば、ドクターブレード法、押出成形法等が挙げられる。
成形体作製工程S2において作製されるシート状の成形体の厚さは、例えば、0.15mm以上0.8mm以下である。作製されたシート状の成形体は、必要に応じて、例えば、打ち抜き機等を使用して所定のサイズに切断される。
(2-3)焼結工程S3、窒化工程S4
焼結工程S3は、成形体中に含まれる有機バインダを除去する脱脂工程と、成形体中に含まれる珪素と窒素とを反応させて窒化珪素を形成する窒化工程S4と、窒化工程S4の後に行われる緻密化焼結工程とを含む。
脱脂工程、窒化工程S4、及び緻密化焼結工程を、別々の炉で逐次的に実施してもよいし、同一の炉で連続的に実施してもよい。また、一つの炉内で、1600枚以上の成形体を一緒に熱処理する。同じ炉内で熱処理された成形体は、ロットが同じとなる。
焼結工程S3では、例えば、図3に示すように、セッタ200の上に複数枚の成形体100Aを積層する。セッタ200は窒化硼素(BN)から成る。成形体100Aと成形体100Aとの間には、図示しない分離材を挟む。複数枚の成形体100Aの上に重石300を配置する。
この状態で、複数枚の成形体100Aを電気炉内に設置する。次に、脱脂工程を実施する。次に、窒化装置において、900℃~1300℃の温度で脱炭素処理を実施する。次に、窒化工程S4を実施する。窒化工程S4では、窒素雰囲気で所定温度まで昇温させる。窒化工程S4での温度制御については後述する。
次に、焼結装置において、緻密化焼結工程を実施する。緻密化焼結工程は、例えば、重石300によって、成形体100Aに10Pa以上1000Pa以下の荷重をかけながら実施される。
なお、上述した分離材として、例えば、厚さが約3μm以上20μm以下の窒化硼素(BN)粉層が挙げられる。窒化硼素粉層は、緻密化焼結工程の後に、焼結体となった窒化珪素基板の分離を容易にする機能を有する。窒化硼素粉層は、例えば、それぞれの成形体100Aの片面に、スラリーの状態である窒化硼素粉を塗布することで形成される。スラリーの状態である窒化硼素粉を塗布する方法として、例えば、スプレー、ブラシ塗布、スクリーン印刷等の方法がある。窒化硼素粉は、例えば、95%以上の純度、及び、1μm以上20μm以下のメジアン径D50を有していることが好ましい。
以上の工程により、窒化珪素基板が完成する。上記の製造方法では、純度の高い珪素粉末を使用することにより、熱伝導率が110W/(m・K)以上の窒化珪素基板を製造することができる。本実施の形態における窒化珪素基板は、シート状の成形体に含まれる珪素を窒化してなる窒化珪素基板である。窒化珪素基板の厚さは、例えば、0.15mm以上0.8mm以下である。
(2-4)色むらと、窒化工程S4における温度制御との関係について
上述した窒化珪素基板の製造方法では、窒化珪素粉末ではなく、珪素粉末を使用していることから、窒化工程S4が必要となる。発明者は、窒化工程S4での加熱条件によっては、製造された窒化珪素基板の表面に色むらが生じることを新規に見出した。
本明細書において、「窒化珪素基板の表面」とは、窒化珪素基板の第1面であってもよいし、第2面であってもよい。第2面は、第1面とは反対側の面である。
また、本明細書において、「色むら」とは、例えば、矩形形状の窒化珪素基板の中央部の色合いと縁部の色合いとが異なることを意味する。図4は、窒化工程直後の、窒化珪素基板3Yと同一ロット内の色むらが発生した窒化珪素基板の表面を示す写真である。図4において、窒化珪素基板の中央部は白味を帯びているのに対し、窒化珪素基板の縁部は黒味を帯びている。すなわち、中央部の色合いと縁部の色合いとは異なっている。
発明者は、窒化珪素基板の表面に色むらが発生するメカニズムについて鋭意検討した。色むらは、以下のメカニズムにより発生すると推測される。
窒化工程S4は、窒素雰囲気中において、例えば、図3に示すように、セッタ200上に複数枚のシート状の成形体100Aを配置するとともに、積層された成形体100A上に重石300を配置した状態での加熱処理である。このとき、積層された成形体100Aのうち、上下の成形体100Aで挟まれた成形体100Aを特定成形体とする。
特定成形体の中央部には熱が籠りやすい。そのため、特定成形体の中央部の温度は高く、特定成形体の縁部の温度は低くなる。特定成形体の中央部では窒化反応が進み易く、特定成形体の縁部では窒化反応が進み難い。窒化反応は発熱反応であるので、窒化反応が進む中央部では、発熱量の正帰還が生じる結果、急激に温度が上昇する。中央部での温度上昇が大きい場合は、中央部の温度が珪素の融点を超えて珪素が溶融する現象(以下では熱暴走とする)が生じる。また、中央部と縁部との間の温度差が大きくなるため、縁部で窒化不足が生じる。縁部で窒化不足が生じた状態で焼結処理を実施すると、最終的に窒化しきらなかった珪素が縁部に残存する。以上の結果、色むらが発生すると推測される。
上記のメカニズムによれば、窒化珪素基板の表面に生じる色むらは、窒化工程S4における昇温工程に起因すると考えられる。中央部の温度と縁部の温度との温度差が小さくなるような温度分布を実現しながら昇温工程を実施することができれば、熱暴走を抑制し、色むらを抑制できると考えられる。
そのため、窒化工程S4における昇温工程は、中央部の温度と縁部の温度との温度差を小さくしながら徐々に昇温する工程であることが好ましい。
窒化工程S4における昇温工程では、最高加熱温度になるまで昇温する。最高加熱温度は1390℃以上1500℃以下であることが好ましい。窒化工程S4における昇温工程では、例えば、ステップ状に昇温する。昇温工程のうち、1270℃から1340℃までの範囲において、単位時間当たりの温度上昇量(以下では加熱温度の傾きとする)の平均は、3.1℃/h以下であることが好ましい。加熱温度の傾きの平均が3.1℃/h以下ある場合、色むらを抑制できる。
窒化珪素基板の反りを抑制するためには、窒化工程及び緻密化焼結工程のそれぞれの冷却条件を次のように制御するのが好ましい。窒化工程において、最高加熱温度から1100℃までの降温範囲における冷却速度を262.2℃/h以下で行うことが好ましい。緻密化焼結工程において、最高加熱温度から800℃までの降温範囲における冷却速度を280.7℃/h以下で行うことが好ましい。これにより、窒化珪素基板の反り量を0.1mmから1mmの範囲に抑制することができる。反り量は、SORIという規格に従い反り量を測定した数値である。具体的には、試料の上面の最小二乗平面を算出(規定)し、算出された最小二乗平面から試料の上面における最高点までの距離の絶対値と、試料の上面における最低点までの距離の絶対値との合計を反り量として算出する。
3.パワーモジュール1及び窒化珪素回路基板2の製造方法
図5に基づき、パワーモジュール1及び窒化珪素回路基板2の製造方法を説明する。工程S11では、ろう付けにより、金属板105と、金属放熱板107とを窒化珪素基板3に取り付ける。次に、工程S12では、金属板105の一部を除去し、金属回路5を形成する。次に、工程S13では、分割することにより、複数の窒化珪素回路基板2を得る。さらに、半導体チップ13及びヒートシンク15を窒化珪素回路基板2に取り付ける。窒化珪素回路基板2が備える窒化珪素基板3は、前記「2.窒化珪素基板3の製造方法」により製造されたものであるから、色むらが生じ難く、熱伝導率が高い。
4.評価システム201の構成
図6に基づき、評価システム201の構成を説明する。評価システム201は、窒化珪素基板3の評価に使用される。評価システム201は、ラマン測定装置203と、評価装置205とを備える。
ラマン測定装置203は、測定面301の一部である測定点Pにレーザ光206を照射し、測定点Pで発生するラマン散乱光208を検出する。よって、ラマン測定装置203は、測定点Pのラマンスペクトルを測定することができる。レーザ光206の照射径は、約1μmである。照射径とは直径である。よって、ラマン測定装置203は、狭い領域のラマンスペクトルを測定することができる。
ラマン測定装置203は、レーザ光206の照射位置を、x方向及びy方向に独立して移動させることができる。x方向及びy方向はそれぞれ、測定面301と平行な方向である。x方向はy方向と直交する。よって、ラマン測定装置203は、測定面301における複数の測定点Pでそれぞれラマンスペクトルを測定することができる。
評価装置205は、CPUと、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリと、を有するマイクロコンピュータを備える。評価装置205の各機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
評価装置205は、データ取得部207と、データ処理部209と、を備える。データ取得部207は、ラマン測定装置203からラマンスペクトルを取得する。データ処理部209は、データ取得部207が取得したラマンスペクトルに基づき、窒化珪素基板3の色むらを評価するための処理を行う。この処理については後述する。データ処理部209は半値幅測定部に対応する。
5.窒化珪素基板の評価方法
以下の方法で窒化珪素基板3の色むらを評価することができる。色むらの評価には、例えば、評価システム201を使用することができる。
まず、評価対象となる窒化珪素基板3を用意する。窒化珪素基板3は、例えば、第1面と、第2面とを有する。第2面は、第1面とは反対側の面である。窒化珪素基板3の平面形状は、例えば、矩形形状である。例えば、窒化珪素基板3のそれぞれの辺の長さは100mm以上である。
次に、第1面と第2面とのうちの一方の面を測定面301とする。次に、測定面301上に測定点Pを設定する。
設定する測定点Pの数は単数であってもよいし、複数であってもよい。例えば、図7に示すように、5つの測定点P1~P5を設定することができる。測定点P1は測定面301の中央部にある。測定点P2~P5は、それぞれ、測定面301の縁部にある。測定点P2~P5は、それぞれ、測定面301の四隅のうちの1つにある。測定点P2から長辺401までの距離は10mmである。測定点P2から短辺402までの距離は15mmである。測定点P3から長辺401までの距離は10mmである。測定点P3から短辺403までの距離は15mmである。測定点P4から長辺404までの距離は10mmである。測定点P4から短辺402までの距離は15mmである。測定点P5から長辺404までの距離は10mmである。測定点P5から短辺403までの距離は15mmである。
次に、ラマン測定装置203を用いて、測定点Pでラマンスペクトルを測定する。複数の測定点Pが設定されている場合は、複数の測定点Pのそれぞれでラマンスペクトルを測定する。
次に、データ取得部207は、測定点Pで測定されたラマンスペクトルをラマン測定装置203から取得する。ラマン測定装置203が複数の測定点Pのそれぞれでラマンスペクトルを測定した場合、データ取得部207は、それぞれの測定点Pのラマンスペクトルを取得する。
次に、データ処理部209は、データ取得部207が取得したラマンスペクトルに含まれる、窒化珪素の格子振動に帰属されるスペクトルピークの半値幅を測定する。ラマン測定装置203が複数の測定点Pのそれぞれでラマンスペクトルを測定した場合、データ処理部209は、複数の測定点Pで測定された複数のラマンスペクトルのそれぞれにおいて、スペクトルピークの半値幅を測定する。
例えば、測定点P1~P5のそれぞれでラマンスペクトルを測定した場合、データ処理部209は、測定点P1で測定されたラマンスペクトルに含まれるスペクトルピークの半値幅C1と、測定点P2で測定されたラマンスペクトルに含まれるスペクトルピークの半値幅C2と、測定点P3で測定されたラマンスペクトルに含まれるスペクトルピークの半値幅C3と、測定点P4で測定されたラマンスペクトルに含まれるスペクトルピークの半値幅C4と、測定点P5で測定されたラマンスペクトルに含まれるスペクトルピークの半値幅C5とを測定する。
図8に示すように、窒化珪素の格子振動に帰属されるスペクトルピーク305は、例えば、850cm-1以上875cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークである。
データ処理部209が半値幅を測定する方法は、例えば、以下のとおりである。図8に示すように、データ処理部209は、スペクトルピーク305に対し、統計分布関数を用いたフィッティングを行い、フィッティング後のスペクトルピーク307を得る。統計分布関数として、例えば、ローレンツ関数等が挙げられる。データ処理部209は、スペクトルピーク307において、半値幅Cを測定する。なお、図8においてAはスペクトルピーク307の波数である。Bはスペクトルピーク307の高さである。Dはスペクトルピーク307の面積である。
ラマン測定装置203が複数の測定点Pのそれぞれでラマンスペクトルを測定した場合、データ処理部209は、平均半値幅Caveを算出する。平均半値幅Caveは、複数の測定点Pで測定された複数のラマンスペクトルのそれぞれについて算出された半値幅Cの平均値である。例えば、測定点P1~P5のそれぞれでラマンスペクトルを測定した場合、平均半値幅Caveは、半値幅C1~C5の平均値である。
データ処理部209は、例えば、半値幅Cに基づき、色むらの程度を評価する。例えば、半値幅Cが0cm-1より大きく閾値より小さい場合は、色むらが抑制されていると判断し、半値幅Cが閾値以上である場合は、色むらが顕著であると判断する。閾値は、例えば、5.32cm-1である。なお、一般に販売されているラマン測定装置の測定波数分解能から、半値幅Cの下限値は、0.5cm-1とすることもできる。
データ処理部209は、例えば、平均半値幅Caveに基づき、色むらの程度を評価する。例えば、平均半値幅Caveが0cm-1より大きく閾値より小さい場合は、色むらが抑制されていると判断し、平均半値幅Caveが閾値以上である場合は、色むらが顕著であると判断する。閾値は、例えば、5.32cm-1である。なお、一般に販売されているラマン測定装置の測定波数分解能から、平均半値幅Caveの下限値は、0.5cm-1とすることもできる。
窒化珪素の格子間の歪量が大きいと半値幅の値が大きい値となる。シート状の成形体に含まれる珪素を窒化する際の窒化のばらつきに起因して、窒化珪素の格子間の歪量が変化するものと考えられる。すなわち、窒化珪素基板3における窒化のばらつきが大きいと、窒化珪素の格子間の歪量が大きくなり、半値幅の値が大きくなるものと考えられる。
6.窒化珪素基板が奏する効果
(6-1)本開示の窒化珪素基板は、色むらが生じ難い。また、反りが抑制されていると共に色むらが生じ難い。
(6-2)本開示の窒化珪素基板は、熱伝導率が高い。
7.窒化珪素基板の評価方法が奏する効果
(7-1)本開示の窒化珪素基板の評価方法は、測定点Pの面積が小さくても、色むらを評価することができる。そのため、例えば、マイクロデバイス等に使用される小さい窒化珪素基板の色むらを評価することができる。
(7-2)本開示の窒化珪素基板の評価方法では、例えば、スペクトルピークに対し、統計分布関数を用いたフィッティングを行い、フィッティングを行った後のスペクトルピークにおいて半値幅を算出することができる。この場合、半値幅を一層正確に算出することができる。
8.実施例
(8-1)窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bの製造
前記「2.窒化珪素基板3の製造方法」に記載の方法で窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bを製造した。窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bは、第1面と、第2面とを有していた。窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bの平面形状は、矩形形状であった。窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bの長辺の長さは200mmであり、短辺の長さは140mmであった。窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bの厚さは、0.32mmであった。
窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bを製造するとき、希土類酸化物のモル比は1.2mol%であり、マグネシウム化合物のモル比は9.8mol%であった。希土類酸化物のモル比とは、上述したように、M1、M2、及びM3の合計モル数に対するM1のモル比である。マグネシウム化合物のモル比とは、上述したように、M1、M2、及びM3の合計モル数に対するM3のモル比である。
窒化珪素基板3X、3A、3Bを製造するとき、窒化工程S4において、加熱時間の経過とともに順次ステップ状に加熱温度を上昇させる態様で、最高加熱温度まで加熱温度を上昇させた。最高加熱温度は1400℃であった。1270℃から1340℃までの昇温範囲における加熱温度の傾きの平均は、2.99℃/hであった。図14は、窒化珪素基板3Xと同一ロットの、所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示す。図14における横軸は、加熱温度となる炉の実測温度が1300℃付近に到達した基準時からの経過時間を示す。炉の実測温度が1300℃近傍のとき、炉の実測温度と炉内の成形体の温度との温度差は、20℃以下となっていた。同一ロットで熱処理された窒化珪素基板3Xでも、窒化処理における成形体の急激な昇温が生じず、「熱暴走」は生じていないものと推察される。また、窒化珪素基板3A、3Bは、窒化珪素基板3Xと同じ昇温条件で加熱処理しているため、同様に「熱暴走」は生じていないものと推察される。なお、窒化珪素基板3Aと3Bは、同一ロットで熱処理され試料であり、窒化珪素基板3Xと窒化珪素基板3A、3Bは、別ロットで熱処理された試料である。
窒化珪素基板3Yを製造するとき、窒化工程S4において、加熱時間の経過とともに順次ステップ状に加熱温度を上昇させる態様で、最高加熱温度まで加熱温度を上昇させた。最高加熱温度は1400℃であった。1270℃から1340℃までの昇温範囲における加熱温度の傾きの平均は、4.67℃/hであった。図15は、窒化珪素基板3Yと同一ロットの、所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示す。図15における横軸は、加熱温度となる炉の実測温度が1300℃付近に到達した基準時からの経過時間を示す。炉の実測温度が1300℃近傍のとき、炉の実測温度と炉内の成形体の温度との温度差は20℃を超え、最大で44.9℃となっていた。すなわち、同一ロットで熱処理された窒化珪素基板3Yでも、窒化処理における急激な成形体の昇温が生じて、「熱暴走」が発生することが推察される。
窒化珪素基板3Xの熱伝導率は129W/(m・K)であった。窒化珪素基板3Yの熱伝導率は120W/(m・K)であった。窒化珪素基板3A、3Bの熱伝導率は124.4W/(m・K)であった。
(8-2)色むらの評価
前記「5.窒化珪素基板の評価方法」に記載の方法により、窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bのそれぞれについて、半値幅Caveを算出した。測定面301は、窒化珪素基板3X、3A、3Bの第1面、窒化珪素基板3Yの第1面、及び窒化珪素基板3Yの第2面とした。いずれの測定面301においても、測定点Pは、図7に示す測定点P1~P5とした。
ラマンスペクトルの測定条件は以下のとおりとした。
ラマン測定装置:Nanophoton RAMANforce Standard VIS-NIR-HS
励起波長:532.06nm
励起出力密度:1.76×10W/Cm
NDフィルター:99.23%(240/255)
分光器の中心波長:520.00cm-1
グレーチング:1200gr/mm
スリット幅:50μm
露光時間:1sec
アベレージング:20回
対物レンズ:TU Plan Fluor 5x/ NA 0.15
窒化珪素の格子振動に帰属されるスペクトルピーク305は、850cm-1以上875cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークとした。スペクトルピーク305にフィッティングを行うときの統計分布関数として、ローレンツ関数を用いた。
また、測定点P1~P5のそれぞれにおいて、明度L、色度a、色度b、彩度Cを測定した。また、窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bについて、目視観察により、色むらの有無を判断した。明度L、色度a、色度b、彩度Cの測定には、色彩色差計(コニカミノルタ製、商品名:CR-400)を用いた。色彩色差計の光源はキセノンランプであった。測定計は直径8mmであった。照明径は11mmであった。明度L、色度a、色度b、彩度Cの測定方法は、JIS Z 8722に準拠した。明度L、色度a、色度b、彩度Cの測定は、正反射光を含む条件で行った。
ラマンスペクトルを測定してから半値幅Caveを算出するまでの処理と、明度L、色度a、色度b、彩度Cを測定する処理とを併せて評価処理とする。窒化珪素基板3X、3Yについては評価処理を2回行った。窒化珪素基板3A、3Bについては評価処理を1回行った。
スペクトルピーク307の波数A、高さB、半値幅C、面積Dを図9及び図16に示す。なお、「3X-1」は、測定面301が窒化珪素基板3Xの第1面であることを意味する。「3Y-1」は、測定面301が窒化珪素基板3Yの第1面であることを意味する。「3Y-2」は、測定面301が窒化珪素基板3Yの第2面であることを意味する。「3A-1」は、測定面301が窒化珪素基板3Aの第1面であることを意味する。3B-1」は、測定面301が窒化珪素基板3Bの第1面であることを意味する。
窒化珪素基板3X、3Yの1回目の評価処理における、各測定点での明度L、色度a、色度b、彩度C、半値幅Cを図10に示す。窒化珪素基板3X、3Yの2回目の評価処理における、各測定点での明度L、色度a、色度b、彩度C、半値幅Cを図11に示す。窒化珪素基板3A、3Bの評価処理における、各測定点での明度L*、色度a*、色度b*、彩度C*、半値幅Cを図17に示す。また、図10、図11、図17には、色むらの有無、及び、測定面ごと算出した各測定値の平均値も示す。
図12は、窒化珪素基板3X、3Yの1回目及び2回目の評価処理における平均半値幅Caveと、明度Lとを示す。図13は、窒化珪素基板3X、3Yの1回目及び2回目の評価処理における平均半値幅Caveと、彩度Cとを示す。図12、図13には、平均半値幅Caveを中心とする、半値幅Cの標準偏差の範囲も示す。
色むらがない窒化珪素基板3X、3A、3Bでの平均半値幅Caveは、5.32cm-1より小さかった。色むらがある窒化珪素基板3Yでの平均半値幅Caveは、5.32cm-1より大きかった。よって、色むらの有無と、平均半値幅Caveとは相関があった。この評価結果により、平均半値幅Caveに基づき色むらを評価できることが確認できた。また、平均半値幅Caveが小さい窒化珪素基板では色むらが生じ難いことが確認できた。なお、窒化珪素基板3Yの色むらは、目視にて基板の4辺のうち1辺において僅かな色むらがある程度であった。
(8-3)反りの評価
窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bのそれぞれについて、第1面側と第2面側から反りの測定を行った。反りの測定は、ソフトワークス株式会社製の反り測定装置を用いて行った。本反り測定装置は、板物状の被測定物にラインレーザー3本を配置して高解像度カメラで撮像し、被測定物の反り量を測定するものである。本反り測定装置では、被測定物の上面の最小二乗平面を算出(規定)した。そして、算出された最小二乗平面から被測定物の上面における最高点までの距離の絶対値と、被測定物の上面における最低点までの距離の絶対値との合計を反り量として算出した。当該算出方法は、SORI(SEMI M1,ASTM F 1451)の規格に基づくものである。
(1)第1面側からの反りの測定結果
窒化珪素基板3Xの反り量は、0.779mm、窒化珪素基板3Yの反り量は、0.999mm、窒化珪素基板3Aの反り量は、0.840mm、窒化珪素基板3Bの反り量は、0.751mmだった。
(2)第2面側からの反りの測定結果
窒化珪素基板3Xの反り量は、0.653mm、窒化珪素基板3Yの反り量は、0.879mm、窒化珪素基板3Aの反り量は、0.679mm、窒化珪素基板3Bの反り量は、0.581mmだった。
(3)考察
各窒化珪素基板3X、3Y、3A、3Bの反り量は、合格基準である「1mm以下」を全て満たしているが、平均半値幅Caveが5.32cm-1より小さい窒化珪素基板3X、3A、3Bにおいては、反り量がさらに0.840mm以下と低く抑えられていることが判った。
9.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
(1)本開示の窒化珪素基板の評価方法では、例えば、スペクトルピークに対し、統計分布関数を用いたフィッティングを行わなくてもよい。この場合、フィッティングを行っていないスペクトルピークの半値幅Cを測定することができる。
(2)窒化珪素基板3を用いて、パワーモジュール1以外のパワーモジュールを製造してもよい。
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
(4)上述した評価システム201の他、当該評価システム201を構成要素とするさらに上位のシステム、評価装置205としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、窒化珪素基板の品質管理方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
1…パワーモジュール、2…窒化珪素回路基板、3…窒化珪素基板、5…金属回路、7…金属放熱板、9、11…ろう材層、13…半導体チップ、15…ヒートシンク、100A…成形体、105…金属板、107…金属放熱板、200…セッタ、201…評価システム、203…ラマン測定装置、205…評価装置、206…レーザ光、207…データ取得部、208…ラマン散乱光、209…データ処理部、300…重石、301…測定面、305、307…スペクトルピーク、401、404…長辺、402、403…短辺

Claims (3)

  1. 第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する、珪素が含まれるシート状の成形体を窒化してなる窒化珪素基板であって、
    前記窒化珪素基板の平面形状は矩形形状であり、
    前記窒化珪素基板のそれぞれの辺の長さは100mm以上であり、
    前記第1面と前記第2面とのうちの一方の面である測定面において以下の測定方法で測定された平均半値幅Caveの値が0cm-1より大きく5.32cm-1より小さい窒化珪素基板。
    平均半値幅Caveの測定方法:前記測定面の中央部1点と縁部4点とを測定点とする。
    前記測定点のそれぞれでラマンスペクトルを測定する。測定したそれぞれの前記ラマンスペクトルにおいて、850cm-1以上875cm-1以下の範囲内で最大強度をとるスペクトルピークの半値幅Cを算出する。算出した前記半値幅Cの平均値を平均半値幅Caveとする。
  2. 請求項1記載の窒化珪素基板であって、
    熱伝導率が110W/(m・K)以上である窒化珪素基板。
  3. 請求項1又は2に記載の窒化珪素基板と、
    前記窒化珪素基板の一方の面に備えられた金属回路と、
    前記窒化珪素基板の反対側の面に備えられた金属放熱板と、
    を備える窒化珪素回路基板。
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