JP6264096B2 - ガスバリアフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリア性を高めたガスバリアフィルム及びその製造方法に関する。
酸素や水蒸気等に対するバリア性を備えたガスバリアフィルムとして、基材フィルム上に、金属膜や無機酸化物膜をガスバリア膜として設けたものが提案されている。こうしたガスバリアフィルムは、食品や医薬品等の包装材料として、また電子部品や表示素子の保護材料として、また太陽電池バックカバーシート材料として、その需要が大いに期待されている。
ガスバリアフィルムには、より高いガスバリア性が要求されており、従来から種々の提案がされている。例えば特許文献1には、従来のアルミナ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルムのガスバリア性を上回る高度なガスバリアフィルムとして、基材フィルム上に、必要に応じてプライマー層を介し、金属酸化物の薄膜層とガスバリア性樹脂(ポリシラザン)からなるオーバーコート層とからなる超高ガスバリア性層を積層した複合フィルムが提案されている。この複合フィルムでは、オーバーコート層が薄膜層の微細孔を充填するガスバリア性樹脂で構成されており、そのオーバーコート層の作用によって高度なガスバリア性を示しているとされている。また、特許文献2にも、従来品に比べ、より高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムが提案されている。このガスバリアフィルムでは、前記同様のオーバーコート層として、シランカップリング剤及びそのシランカップリング剤と反応する官能基を有する架橋剤化合物を原料とする組成物を塗布形成することにより、高いガスバリア性を得ることができるとしている。
また、特許文献3には、高いガスバリア性と透明性を有するガスバリアフィルムが提案されている。このガスバリアフィルムでは、無機化合物からなるガスバリア層と、有機化合物からなる層とを交互に積層することにより、高いガスバリア性を得ることができるとしている。
特開2003−89165号公報 特開2003−260749号公報 特開2006−297737号公報
特許文献1で提案されたガスバリアフィルムは、オーバーコート層を形成するガスバリア性樹脂であるポリシラザンが薄膜層の微細孔を充填してガスバリア性を高めるとしているが、水蒸気透過率(g/m/day)で10−2レベルまでしか得られていない。また、特許文献2で提案されたガスバリアフィルムは、薄膜層の表面の密度の低い部分に、シランカップリング剤を原料とする組成物が浸透して、ガスバリア性を低下させている欠陥部分を補うため、ガスバリア性が向上すると考えられているが、水蒸気透過率(g/m/day)で10−2レベルまでしか得られていない。これら特許文献1,2では、樹脂が微細孔を充填したり、組成物が浸透して欠陥部分を補うとしているが、いずれも表面を被覆しただけで内部まで十分に入り込んでおらず、内部に空隙等が残っており、十分に高いガスバリア性が得られていない。また、特許文献3で提案されたガスバリアフィルムは、特許文献1,2のような微細孔を充填しようとするものではなく、無機化合物層と有機化合物層とを交互に積層することによって水蒸気透過率(g/m/day)で10−3レベルの高いガスバリア性を得ているが、製造コストが著しく嵩むという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高いガスバリア性を有した低コストのガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係るガスバリアフィルムは、基材と、該基材上に設けられたガスバリア膜と、該ガスバリア膜上に設けられた補修膜とを少なくとも有し、前記補修膜は、前記ガスバリア膜が有する平均直径0.1μm以上の欠陥を充填するとともに前記ガスバリア膜を被覆して前記ガスバリア膜を補修していることを特徴とする。
本発明に係るガスバリアフィルムにおいて、(ア)前記ガスバリア膜が有する欠陥が、水蒸気が透過する孔又は水蒸気が透過する部分である、(イ)前記ガスバリア膜が、無機化合物膜又は有機化合物膜であり、前記補修膜が、前記ガスバリア膜の構成材料と同じ又は同種のもので形成されている、(ウ)前記ガスバリア膜は、物理的気相析出法によって前記欠陥を生じ易い条件で形成され、前記補修膜は、同じ物理的気相析出法によって前記欠陥を埋めることができる条件で形成される、の(ア)〜(ウ)のいずれかであるように構成することができる。
(2)上記課題を解決するための本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法は、基材上にガスバリア膜を形成するガスバリア膜形成工程と、前記ガスバリア膜上に補修膜を形成する補修膜形性工程とを少なくとも有し、前記補修膜形成工程において、前記補修膜は、前記ガスバリア膜が有する平均直径0.1μm以上の欠陥を充填するとともに前記ガスバリア膜を被覆して補修することを特徴とする。
本発明に係るガスバリアフィルムの製造方法は、(a)前記ガスバリア膜形成工程において、前記ガスバリア膜の成膜条件が、水蒸気を透過する孔又は水蒸気を透過する部分からなる欠陥を形成する条件である、(b)前記ガスバリア膜形成工程と前記補修膜形成工程との間に、前記ガスバリア膜が有する平均直径で0.1μm未満の欠陥を、平均直径で0.1μm以上の前記欠陥に拡大するための欠陥拡大工程を有する、(c)前記欠陥拡大工程が、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、超音波処理、湿式処理、及びエッチング処理から選ばれる1又は2以上の処理である、(d)前記ガスバリア膜形成工程において、前記ガスバリア膜を、物理的気相析出法によって前記欠陥を生じ易い条件で形成し、前記補修膜形成工程において、前記補修膜を、前記ガスバリア膜と同じ物理的気相析出法によって前記欠陥を埋めることができる条件で形成する、の(a)〜(d)のいずれかであるように構成することができる。
本発明によれば、高いガスバリア性を有した低コストのガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することができる。
本発明に係るガスバリアフィルムの一例を示す模式的な断面図である。 本発明に係るガスバリアフィルムの他の例を示す模式的な断面図である。 本発明に係るガスバリアフィルムの製造工程の一例を示す説明図である。 本発明に係るガスバリアフィルムの製造工程の他の一例を示す説明図である。
本発明に係るガスバリアフィルム及びその製造方法について詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ガスバリアフィルム]
本発明に係るガスバリアフィルム10は、図1〜図4に示すように、基材1と、基材1上に設けられたガスバリア膜2と、ガスバリア膜2上に設けられた補修膜3とを少なくとも有している。そして、その補修膜3は、ガスバリア膜2が有する平均直径(D2)0.1μm以上の欠陥6を充填するとともにガスバリア膜2を被覆してガスバリア膜2を補修していることに特徴がある。
このガスバリアフィルム10では、ガスバリア膜2上に設けられた補修膜3は、ガスバリア膜2が有する前記平均直径D2の欠陥6を充填し、さらにガスバリア膜2を被覆してガスバリア膜2を補修するので、欠陥6を通過しやすい水蒸気の透過や拡散を抑えることができ、水蒸気透過性を抑制することができる。その結果、簡単な手段でガスバリア性を高めたガスバリアフィルム10を提供することができる。
本発明者は、ガスバリア膜2が有する欠陥6,6’とガスバリア性との関係を検討している過程で、その欠陥6の大きさを平均直径D2で0.1μm以上にしたとき、そのガスバリア膜2上にその欠陥6を埋めることを目的とした補修膜3を形成したときに、はじめてガスバリア性が顕著に高まることを見つけた。この知見は、従来のように、樹脂が微細孔を充填したり、組成物が浸透して欠陥部分を補うことを意図した手段では、いずれも表面を被覆しただけで内部まで十分に入り込んでおらず、内部に空隙等が残っており、十分に高いガスバリア性が得られていないことを突き止めた。そして、この知見を基に、従来の考えとは逆の発想、すなわち、ガスバリア膜2の欠陥6があえて大きくなるように形成したり、ガスバリア膜2を成膜した後の別工程で、欠陥6’を意図的に拡大する工程を付加し、大きい欠陥6を設けた上でその欠陥6を補修することが効果的であることを見つけ、本発明を完成させた。なお、「欠陥」とは、孔であっても部分であってもよく、いずれも水蒸気が透過しやすい孔又は部位のことであり、以下では水蒸気透過孔又は水蒸気透過部分という。
以下、ガスバリアフィルムの構成要素について詳しく説明する。
(基材)
基材1は、ガスバリア膜2を成膜することができる樹脂シート又は樹脂フィルムであれば特に制限はない。基材1の構成材料としては、例えば、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン(APO)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、シクロポリオレフィン(COP)樹脂、シクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロ−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル共重合体(EPA)等を挙げることができる。
また、上記の樹脂材料以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物、上記アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メタクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解した樹脂組成物等の光硬化性樹脂、及びこれらの混合物等を用いることもできる。さらに、これらの樹脂の1種又は2種以上をラミネート、コーティング等の手段により積層させたものを基材1として用いることもできる。また、樹脂シート又は樹脂フィルム以外でも、ガラスやシリコンウエハを基材1として用いることもできる。
基材1の厚さは、3μm以上、500μm以下、好ましくは12μm以上、300μm以下である。この範囲内の厚さの基材1は、フレキシブルであるとともに、ロール状に巻き取ることもできる点でロールトゥロールの製造工程で用いることができるので好ましい。
基材1は、長尺材であってもよいし枚葉材であってもよいが、長尺の基材1を好ましく用いることができる。長尺の基材1の長手方向の長さは特に限定されないが、例えば10m以上の長尺フィルムが好ましく用いられる。なお、長さの上限は限定されず、例えば10km程度のものであってもよい。
基材1には、種々の性能確保のために添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等を挙げることができる。なお、基材1を、透明性が必要とされるOLED等の発光素子の基板として用いる場合には、基材1は無色透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm以上、700nm以下の範囲内での基材1の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は基材1の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
基材1の表面は、必要に応じて、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、及び易接着処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。また、ガスバリア膜2を形成しない側の面には、他の機能膜を設けてもよい。機能膜の例としては、マット剤膜、保護膜、帯電防止膜、平滑化膜、密着改良膜、遮光膜、反射防止膜、ハードコート膜、応力緩和膜、防曇膜、防汚膜、被印刷膜、及び易接着膜等が挙げられる。
(平坦化膜)
平坦化膜5は、図2(B)に示すように、任意に設けることができる膜である。この平坦化膜5は、基材1の表面が有する凹凸、突起、傷等を小さくして平坦面にすることができるので、基材1の表面に影響されないガスバリア膜2を形成できる点で有利である。なお、本発明においては、この平坦化膜5を設けず、基材1の表面の影響によってガスバリア膜2に大きな欠陥6が発生してもよく、後に成膜する補修膜3でその欠陥6を補修することができるので、平坦化膜5は必ずしも必要ではない。
平坦化膜5としては、従来公知のものを適宜用いればよく、その材料としては、例えば、ゾルゲル材料、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、及びフォトレジスト材料等を挙げることができる。こうした有機材料で形成した平坦化膜5は、応力緩和機能も兼ね備えることから好ましい。より具体的な材料としては、アクリレートを含む高分子化合物が汎用的なものとして挙げられるが、他には、スチレン、フェノール、エポキシ、ニトリル、アクリル、アミン、エチレンイミン、エステル、シリコーン、カルドポリマー、アルキルチタネート化合物、イオン高分子錯体等、光硬化又は熱硬化性のもの、高分子化合物と金属アルコキシドの加水分解生成物の混合物等を含む、高分子化合物が適宜使用される。
特にガスバリア機能を保持させつつ膜の形成を容易にする観点からは、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。より具体的には、アクリレート基やエポキシ基をもつ反応性のプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した電離放射線硬化型樹脂;その電離放射線硬化型樹脂に必要に応じてウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ビニル系等の熱可塑性樹脂を混合して液状とした液状組成物のような、分子中に重合性不飽和結合を有し、紫外線(UV)や電子線(EB)を照射することにより、架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂;を好ましく用いることができる。
平坦化膜5は、こうした樹脂を、例えば、ロールコート法、ミヤバーコート法、及びグラビアコート法等の従来公知の塗布方法で塗布、乾燥、硬化させることにより形成することができる。また、平坦化膜5の形成材料として、ガスバリア膜2との良好な密着性を確保する観点からは、ガスバリア膜2と同じ材料系の塗膜を形成できるゾルゲル法を用いたゾルゲル材料を用いることも好ましい。ゾルゲル法とは、有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤と、このシランカップリング剤が有する有機官能基と反応する有機官能基を有する架橋性化合物とを少なくとも原料として構成された塗料組成物の塗工方法、及び塗膜のことをいう。有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤としては、従来公知のものを適宜用いることができる。また、平坦化膜5の材料として、耐熱性の観点からは、従来公知のカルドポリマーを用いることも好ましい。なお、平坦化膜5の厚さは、0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、10μm以下、好ましくは5μm以下である。
(ガスバリア膜)
ガスバリア膜2は、図1〜図4に示すように、基材1上、又は平坦化膜5上に形成されている。ガスバリア膜2は、無機化合物膜であってもよいし、有機化合物膜であってもよいが、無機化合物膜が好ましい。
無機化合物膜の構成材料としては、通常、無機酸化物(MO)、無機窒化物(MN)、無機炭化物(MC)、無機酸化炭化物(MO)、無機窒化炭化物(MN)、無機酸化窒化物(MO)、及び無機酸化窒化炭化物(MO)から選ばれるいずれかの材料を挙げることができる。Mとしては、珪素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素、ハフニウム、バリウム等の金属元素を挙げることができる。Mは単体でもよいし2種以上の元素であってもよい。各無機化合物は、具体的には、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化珪素等の炭化物;硫化物;等を挙げることができる。また、これらの無機化合物から選ばれた2種以上の複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物)であってもよい。また、SiOZnのように金属元素を2種以上含む複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物も含む)であってもよい。
好ましいMとしては、珪素、アルミニウム、チタン等の金属元素を挙げることができる。特にMが珪素の酸化珪素からなるガスバリア膜2は、透明で高いガスバリア性を発揮し、また、窒化珪素からなるガスバリア膜2はさらに高いガスバリア性を発揮する。特に酸化珪素と窒化珪素の複合体(無機酸化窒化物(MO))であることが好ましく、酸化珪素の含有量が多いと透明性が向上し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリア性が向上する。また、Mが珪素と亜鉛のSiOZnやMが珪素と錫のSiOSnからなるガスバリア膜2は、透明で高いガスバリア性を発揮する。
無機化合物膜は、イオンプレーティング法、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD法等の方法で成膜できる。無機化合物で形成されたガスバリア膜2の厚さは、5nm以上、500nm以下の範囲内である。この範囲とすれば、ガスバリア性、フレキシビリティを確保しつつ、色味の調整もしやすくなり、生産性も確保しやすいという利点がある。
有機化合物膜の構成材料としては、無機粒子含有ポリマー、鱗片状粒子含有ポリマー、ナノ粒子混合ポリマー、マイクロ粒子混合ポリマー、吸湿材料混合ポリマー、高緻密性架橋ポリマー等を挙げることができる。ベースポリマーとしては、アクリレートを含む高分子化合物や、スチレン、フェノール、エポキシ、ニトリル、アクリル、アミン、エチレンイミン、エステル、シリコーン、カルドポリマー、アルキルチタネート化合物、イオン高分子錯体等、光硬化又は熱硬化性のもの、高分子化合物と金属アルコキシドの加水分解生成物の混合物等を含む、高分子化合物を使用することができる。なかでも、吸湿材料混合ポリマーが好ましい。
これらのポリマーにおいて、無機粒子、鱗片状粒子、ナノ粒子、マイクロ粒子、吸湿材料等は、ガスバリア性を発現するものとしてポリマー中に含まれる。無機粒子としては、平均粒径が0.001μm〜5μm程度のシリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の粒子又は反応性粒子等を挙げることができ、鱗片状粒子としては、長径の平均長さが0.01μm〜1μm程度で厚さが0.001μm〜1μm程度の例えば雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等の粘土鉱物、リン酸ジルコニウム、及び層状複水酸化物(LDH)等を層分離(層間剥離、Exfoliate)することで得られる等のものを挙げることができ、ナノ粒子としては、平均粒径が0.5nm〜500nm程度のサイズの金属粒子やセラミック粒子、ポリマー粒子等を挙げることができ、マイクロ粒子としては、平均粒径が0.5μm〜10μm程度のサイズの金属粒子やセラミック粒子、ポリマー粒子等を挙げることができる。また、吸湿材料は、ポリアルキレンオキサイド、アクリレートナノ粒子及び有機金属錯体等の透明な吸湿性を有する材料等を挙げることができる。また、高緻密性架橋ポリマーについては、架橋性を高めたポリマーを挙げることができる。
有機化合物膜は、塗布法、インクジェット法等の一般的な方法で成膜できる。有機化合物で形成されたガスバリア膜2の厚さは、0.2μm以上、50μm以下の範囲内である。この範囲は、ガスバリア性や透明性の点で好ましい。
(欠陥及び欠陥の拡大)
ガスバリア膜2は、欠陥6,6’を有している。この欠陥6,6’の形態は、孔、窪み、傷、凹み、凹凸等の形態であってもよく、特に限定されない。本発明では、水蒸気が透過しやすい部分を「欠陥」と呼んでおり、便宜的に、水蒸気透過孔又は水蒸気透過部分ともいう。本発明においては、図3及び図4に示すように、欠陥6の大きさが平均直径D2で0.1μm以上であり、その欠陥6を有するガスバリア膜2上に、その欠陥6の内部まで充填して埋めるとともにガスバリア膜2を被覆することを目的とした補修膜3が設けられている。
こうした平均直径D2の欠陥6を有するガスバリア膜2は、その後に補修膜3を形成することにより、水蒸気透過率が(g/m/day)で10−3レベルまで到達し、良好なガスバリア性を示すことができる。平均直径D2が0.1μm未満では、その後に補修膜3を形成した場合であっても、水蒸気透過率が(g/m/day)で10−3レベルまで到達せず、10−2レベルまでにしかならない。この理由は、補修膜3が欠陥6の中に入り込んで欠陥6を埋めることができず、欠陥6の奥の方に空間が残ってしまうためである。
平均直径D2の上限は、特に限定されないが、例えば100μmや50μmとすることができる。その上限は、欠陥6の密度に関係し、例えば平均直径が100μm程度の欠陥であっても、それが全体の大部分を占める場合には、欠陥6を補修した部分は本来のガスバリア膜2の構成部分ではなく、補修膜3で構成された部分ということができる。その結果、そのような大きい欠陥を補修した部分は、補修膜3の透過係数がガスバリア性を支配することになるので、例えば100μmであってもそれが全体の大部分を占めるときは、例えば50μmを上限とすることが好ましい。また、欠陥の平均直径が1000μm程度の大きさになると、その1000μmのエリアにおいては本来のガスバリア膜の材質ではないと同様にみなされ、十分なガスバリア性が得られない。したがって、微細な構造物に対してガスバリア性を与える場合には、局所的な欠陥を発生することになり、好ましくないことから、その上限を小さくし、例えば50μm程度とすることができる。
欠陥6には、上記のように種々の形態が考えられる。本発明では、その大きさの特定を、平均直径D2で特定し、その平均直径(D2)を0.1μm以上としている。欠陥6の形状が円形である場合はよいが、欠陥6が円形でない場合、例えば欠陥6が平面視で細長い形状である場合は、長径と短径との和の半分の値で表すことができる。また、それ以外の形態の場合は、欠陥の断面積を円形に換算して平均直径(D2)を算出し、その値が0.1μm以上であるか否かで評価する。また、なお、欠陥の形態、平均直径の算出、平均直径に換算するための断面積の算出等は、光学顕微鏡、白色干渉顕微鏡、共焦点顕微鏡、電子顕微鏡等で得られた画像情報から得ることができる。
欠陥6は、ガスバリア膜2を成膜した時点で0.1μm以上の平均直径D2を持つものであってもよいし、ガスバリア膜2を成膜したときは平均直径D1が0.1μm未満の欠陥を、平均直径D2で0.1μm以上の欠陥に拡大する処理(欠陥拡大工程)を加えたものであってもよい。
ガスバリア膜2を成膜した時点で0.1μm以上の平均直径D2を持つようにするためには、例えばイオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法等の場合においては、例えばスパッタではアーキング、蒸着ではスプラッシュ、また、基材上に付着したゴミによるリフトオフ等が原因で大きい欠陥(孔、穴、傷等)が開く場合や、成膜速度を増すような条件を設定した場合や、搬送時の傷、剥離等を挙げることができる。これらの場合は、いずれも大きい欠陥が生じやすい。
そうした成膜条件としては、例えば、イオンプレーティング法では、蒸着材料の状態、パワー密度、磁場等を調整する手段を挙げることができ、スパッタリング法では、スパッタ圧、ターゲット状態、パワー密度、磁場等を調整する手段を挙げることができ、プラズマCVD法等の場合においては、プラズマ状態、残渣処理状態、等を調整する手段を挙げることができる。これらは、いずれも成膜原料の供給を高めて成膜速度を上げる手段であり、効率的に製造できるという利点を有するが、反面、欠陥が多くて望ましくないと言われてもいる手段である。しかし、本発明においては、従来とは逆の発想から、大きい欠陥を持つことが高いガスバリア性を示すガスバリア膜2を形成するためには必要である。
ガスバリア膜2を成膜した時点では、欠陥が0.1μm以上の平均直径D2を持たずに0.1μm未満の平均直径D1の場合であっても、ガスバリア膜2を成膜した後に0.1μm以上の平均直径D2にする欠陥拡大処理(欠陥拡大工程)を行うことが好ましい。そうした処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、超音波処理、水や薬品等の湿式処理(浸漬処理ともいう。)、及び、酸やアルカル等によるエッチング処理から選ばれる1又は2以上の処理を挙げることが好ましい。
例えば、プラズマ処理では、電圧、処理ガス、放電方法(ダイレクトプラズマ・リアクティブイオンエッチング等)を調整して処理することにより欠陥6’を拡大することができ、コロナ処理では、パワーをコントロールして処理することにより欠陥6’を拡大することができ、紫外線照射処理では、照射密度や照射パワーをコントロールして処理することにより欠陥6’を拡大することができ、水や薬品等の湿式処理では、温度、濃度、時間、添加剤等を調整して処理することにより欠陥6’を拡大することができる。いずれの場合も、その処理に応じた手段をコントロールすることにより、欠陥の拡大の程度を調整することができる。
こうした欠陥6の密度(欠陥密度)は、観察領域を直径90mmとした場合、例えば直径20μm以下の欠陥の数が10万個以下、好ましくは1万個以下の範囲内である。この範囲内の欠陥密度を有することにより、補修が可能で、補修効果があり、かつガスバリア特性の劣化を抑えることが可能となる。例えば、欠陥数が50万個を超えると、原形をとどめず、補修不可能となることがある。
(補修膜)
補修膜3は、ガスバリア膜2上に設けられ、無機化合物膜であっても有機化合物膜であってもよい。補修膜3は、無機化合物膜及び有機化合物膜のいずれであっても、ガスバリア膜2に設けられた平均直径D2が0.1μm以上の欠陥6の内部に入り込んでその欠陥を埋めるとともに、ガスバリア膜2を覆うように被覆する。こうした内部への入り込みと被覆とによって、ガスバリア膜2のガスバリア性を水蒸気透過率(g/m/day)で10−3レベルまで高めることができる。
補修膜3の構成材料としては、ガスバリア膜2の構成材料と同じ又は同種の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。例えば、ガスバリア膜2としてイオンプレーティング法で酸化ケイ素膜を成膜した場合、同じイオンプレーティング法で成膜条件を変えた酸化ケイ素膜を補修膜3としてそのまま連続して成膜してもよい。また、例えば、ガスバリア膜2としてイオンプレーティング法で酸化ケイ素膜を成膜した場合、同じイオンプレーティング法で成膜条件を変えるとともに窒素を加えた酸窒化ケイ素膜を補修膜3として連続して成膜してもよい。
一例として、例えば後述の実施例で示すように、0.5Paのスパッタ圧でガスバリア膜2を成膜し、1オーダー低いスパッタ圧力(例えば0.05Pa)で補修膜3を成膜することにより、ガスバリア膜2で形成された欠陥6を補修膜3が埋め且つ覆うことができる。また、成膜ゾーンを複数有するマルチカソードを備えたPVD成膜装置では、個々の成膜ゾーンで多層化したり、個々の成膜ゾーンで高圧、低圧、高圧等の順で成膜できるので、ガスバリア膜2と補修膜3とを同じ装置での一連の工程で積層することができる。また、そのPVD成膜装置がスイッチバック機能を有する場合は、そのスイッチバック機能を利用して反転させることができ、往路と復路で成膜条件を変えて、ガスバリア膜2と補修膜3とを成膜することができる。
また、無機化合物からなるガスバリア膜2上に、有機化合物膜を補修膜3として設けてもよいし、有機化合物からなるガスバリア膜2上に、有機化合物膜を補修膜3として設けてもよいし、有機化合物からなるガスバリア膜2上に、無機化合物膜を補修膜3として設けてもよい。
有機化合物で補修膜3を形成する場合の材料としては、シロキサン、シラザン、シランカップリング剤等を任意に適用することができる。これらの有機化合物で補修膜3を形成する場合は、有機化合物とガスバリア膜2の構成材料との親和性を考慮して選択することが望ましい。親和性の高い有機化合物を用いた場合、有機化合物がガスバリア膜2の欠陥6に入り込みやすくなる。
補修膜3の厚さは、無機化合物で形成した場合は、5nm以上、5μm以下の範囲内であり、有機化合物で形成した場合は、5nm以上、50μm以下の範囲内である。この範囲内にすれば、ガスバリア膜2の欠陥6を埋めるとともに、ガスバリア膜2を覆うことができる。
(その他の膜)
ガスバリアフィルム10には、上記した平坦化膜5の他、必要に応じて各種の膜や部材を設けることができる。例えば、オーバーコート膜、保護膜、透明導電膜、ハードコート膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ部材等から選ばれるいずれかを挙げることができる。これらのうち、オーバーコート膜、保護膜、透明導電膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ部材を、ガスバリアフィルム10の構成要素として設けることが好ましい。
上記した平坦化膜5と同様の平坦化膜をガスバリア膜2上に形成してもよい。ガスバリア膜2上に平坦化膜を形成すれば、ガスバリア膜2表面が有する凹凸や突起をなくして平坦面にすることができるので、特に有機EL素子や電子ペーパー素子等のディスプレイ用途に適用した場合に、ムラやぎらつき等をなくすことができるという利点がある。ガスバリア膜2上に形成する平坦化膜については、上記した平坦化膜5の構成(材料、成膜方法、厚さ等)と同じにできるのでここではその説明は省略する。
オーバーコート膜5は、必須の構成ではないが、ガスバリアフィルム上に設ける他の機能膜との密着性を高めるためのプライマー機能を有するものであることが好ましい。プライマー機能を持つオーバーコート膜5は、重合性化合物で構成される。重合性化合物は、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ウレタン−アクリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独、又は2種以上の混合物として使用することができる。これらのうち、特にウレタン−アクリル共重合体樹脂が、柔軟性、強靭性及び弾性を兼ね備えており好ましい。なお、環境を考慮した場合には、塩素を含有する樹脂系は使用しないことが好ましい。なお、オーバーコート膜5は、紫外線吸収剤又は光安定剤の一方又は両方を含有してもよい。
なお、上記の平坦化膜やオーバーコート膜以外の機能膜や機能部材である透明導電膜、ハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ部材等についての説明は省略するが、それらの膜や部材については、従来公知の技術を適用できる。また、バックカバーシートの場合においては、耐加水分解膜やシーラント膜を設けてもよい。この説明も省略するが、それらの膜についても従来公知の技術を適用できる。
[ガスバリアフィルムの製造方法]
本発明に係るガスバリアフィルム10の製造方法は、図3及び図4に示すように、基材1上にガスバリア膜2を形成するガスバリア膜形成工程と、ガスバリア膜2上に補修膜3を形成する補修膜形性工程とを少なくとも有し、その補修膜形成工程において、補修膜3は、ガスバリア膜2が有する平均直径0.1μm以上の欠陥6を充填するとともにガスバリア膜2を被覆して補修することに特徴がある。この製造方法は、(a)ガスバリア膜形成工程において、ガスバリア膜2の成膜条件が、水蒸気を透過する孔又は水蒸気を透過する部分からなる欠陥を形成する条件である、(b)ガスバリア膜形成工程と補修膜形成工程との間に、ガスバリア膜2が有する平均直径D1で0.1μm未満の欠陥6’を、平均直径D2で0.1μm以上の欠陥6に拡大するための欠陥拡大工程を有する、(c)欠陥拡大工程が、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、超音波処理、湿式処理、及びエッチング処理から選ばれる1又は2以上の処理である、(d)ガスバリア膜形成工程において、ガスバリア膜2を、物理的気相析出法によって欠陥6,6’を生じ易い条件で形成し、補修膜形成工程において、補修膜3を、ガスバリア膜2と同じ物理的気相析出法によって欠陥6,6’を埋めることができる条件で形成する、の(a)〜(d)のいずれかであるように構成することができる。
以下、本発明のガスバリアフィルムの製造方法について説明する。
最初に、基材1を準備する。基材1は、上記したガスバリアフィルムの説明欄に記載の各種の基材を任意に選択して用いることができる。
次に、基材1上(平坦化膜5等が設けられている場合にはその上)に、ガスバリア膜2及び補修膜3を成膜する。
ガスバリア膜2は、イオンプレーティング法;DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、高電力パルススパッタリング法等のスパッタリング法;プラズマCVD法や大気圧プラズマCVD法等のCVD法;を挙げることができる。これらの成膜方法は、成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して選択すればよい。なお、ガスバリア膜の材料やガスバリア膜の厚さ等についてはすでに説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
補修膜3もガスバリア膜2と同じ方法で成膜することができる。また、異なる方法で成膜してもよい。有機化合物からなる補修膜3を形成する場合は、ゾルゲル法、塗布法等で成膜することができる。
以上説明したように、本発明に係るガスバリアフィルム及びその製造方法によれば、ガスバリア膜2上に設けられた補修膜3は、ガスバリア膜2が有する前記寸法の欠陥6に充填されてそのガスバリア膜2を補修するので、欠陥6を通過しやすい水蒸気の拡散を抑えることができ、水蒸気透過性を抑制することができる。その結果、簡単な手段でガスバリア性を高めたガスバリアフィルムを提供することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
ロールトゥロール巻取機能を備えたスパッタリング装置を用い、平坦化膜付きPETフィルム(厚さ100μm)のフィルムロールをセットし、そのフィルムロールから平坦化膜が成膜側になるようにしてPETフィルムを繰り出した。繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、ガスバリア膜2としての酸化ケイ素膜を、成膜圧力0.4Paで、厚さ30nmになるように成膜した。その後、その酸化ケイ素膜上に、成膜圧力0.06Paに変更して補修膜3としての酸化ケイ素膜を、厚さ30nmになるように成膜して、実施例1のガスバリアフィルムを得た。なお、成膜圧力0.06Paでの放電を維持させるため、Arガス流量は変えず、コンダクタンスバルブを開放した。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.007g/m/dayであった。なお、水蒸気透過率の測定は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、装置名:PERMATRAN−W3/31)を用い、温度38℃、湿度100%RHで行った。こうした高いガスバリア性は、0.4Paで成膜した酸化ケイ素膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6の平均直径が0.1μm以上になっており、その欠陥6を0.06Paで成膜した酸化ケイ素膜(補修膜3)が埋め且つ被覆できたことにより実現された。なお、この実施例及び下記の実施例と比較例において、欠陥の平均直径は、画像情報から観察して求めた。
[実施例2]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、Cu膜を、成膜圧力0.4Paで、厚さ100nmになるように成膜した。その後、そのCu膜に、波長172nmの真空紫外線を照射した。その紫外線照射処理の後、有機化合物膜形成用樹脂(株式会社DNPファインケミカル製、商品名:OELV22)を厚さ1μmになるように塗工、硬化して、補修膜3としての有機化合物膜を成膜し、実施例2のガスバリアフィルムを得た。なお、真空紫外線は、有機化合物膜形成用樹脂が欠陥内に入りやすくするために行った処理であり、その処理を施した後のCu膜の表面をコンピューター数値制御画像システム(NEXIV VMRH3030)で得た画像情報を観察したところ、欠陥6の平均直径が約10μmのものが4243個/90mmφであった。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.002g/m/dayであった。こうした高いガスバリア性は、0.4Paで成膜したCu膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6の平均直径が0.1μm以上の約10μmになっており、さらに真空紫外線を照射してその欠陥6内に有機化合物膜形成用樹脂が入り込みやすくしたことにより実現された。
[実施例3]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、ガスバリア膜2としての酸化ケイ素膜を、成膜圧力0.1Paで、厚さ30nmになるように成膜した。その後、その酸化ケイ素膜に、プラズマ処理(Ar:酸素=20:1、全圧2.5Pa、放電電圧1500V、処理速度10kW・sec/m)を行った。プラズマ処理後の酸化ケイ素膜上に、上記同様の成膜圧力0.1Paで補修膜3としての酸化ケイ素膜を、厚さ30nmになるように成膜して、実施例3のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.004g/m/dayであった。こうした高いガスバリア性は、0.1Paで成膜した酸化ケイ素膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6’の平均直径が0.1μm未満になっていたものを、プラズマ処理によって0.1μm以上になるように拡大したことにより、その後に成膜した酸化ケイ素膜(補修膜3)が拡大された欠陥6内に入り込みやすくなったことにより実現された。
[実施例4]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、ガスバリア膜2としての酸化ケイ素膜を、成膜圧力0.1Paで、厚さ30nmになるように成膜した。その後、その酸化ケイ素膜に、コロナ処理(60W・min/m)を行った。コロナ処理後の酸化ケイ素膜上に、実施例2で用いた有機化合物膜形成用樹脂(株式会社DNPファインケミカル製、商品名:OELV22)を厚さ1μmになるように塗工、硬化して、補修膜3としての有機化合物膜を成膜し、実施例4のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.008g/m/dayであった。こうした高いガスバリア性は、0.1Paで成膜した酸化ケイ素膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6’の平均直径が0.1μm未満になっていたものを、コロナ処理によって0.1μm以上になるように拡大したことにより、その後に塗布した有機化合物膜形成用樹脂が入り込んだことにより実現された。
[実施例5]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、ガスバリア膜2としての酸化ケイ素膜を、成膜圧力0.1Paで、厚さ30nmになるように成膜した。その後、その酸化ケイ素膜に、紫外線照射処理(波長172nmの真空紫外線を30秒間照射)を行った。紫外線照射処理後の酸化ケイ素膜上に、上記同様の成膜圧力0.1Paで補修膜3としての酸化ケイ素膜を、厚さ30nmになるように成膜して、実施例5のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.006g/m/dayであった。こうした高いガスバリア性は、0.1Paで成膜した酸化ケイ素膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6’の平均直径が0.1μm未満になっていたものを、紫外線照射処理によって0.1μm以上になるように拡大したことにより、その後に成膜した酸化ケイ素膜(補修膜3)が拡大された欠陥6内に入り込みやすくなったことにより実現された。
[実施例6]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、Cu膜を、成膜圧力0.4Paで、厚さ100nmになるように成膜した。その後、そのCu膜に、実施例2のような真空紫外線を照射しないで、有機化合物膜形成用樹脂(株式会社DNPファインケミカル製、商品名:OELV22)を厚さ1μmになるように塗工、硬化して、補修膜3としての有機化合物膜を成膜し、実施例6のガスバリアフィルムを得た。なお、Cu膜の表面をコンピューター数値制御画像システム(NEXIV VMRH3030)で観察したところ、欠陥の平均直径が約10μmのものが2274個/90mmφの頻度で存在していた。
得られたガスバリアフィルムは、欠陥数が実施例2よりも少ないにもかかわらず、その水蒸気透過率はあまり高くはないが、有機化合物でガスバリア膜を形成したものとしては十分実用可能な0.01g/m/dayであった。こうしたガスバリア性は、0.4Paで成膜したCu膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6の平均直径が0.1μm以上の約10μmになっており、実施例2のような真空紫外線を照射していないためにその欠陥6内に有機化合物膜形成用樹脂が十分には入り込んでいないが、ある程度は入り込んでいるためであると考えられる。
[実施例7]
ロールトゥロール巻取機能を備えた塗布装置を用い、平坦化膜付きPETフィルム(厚さ100μm)のフィルムロールをセットし、そのフィルムロールから平坦化膜が塗布側になるようにしてPETフィルムを繰り出した。繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、有機化合物膜形成用樹脂(有限会社エクスシア製、商品名:パーハイドロポリシラザン)を厚さ5μmになるように塗工、硬化して、ガスバリア膜2としての有機化合物膜を成膜した。その後、その有機化合物膜に、超音波処理を行い、PETフィルムに付着していたゴミや不純物によって有機化合物膜がリフトオフされる現象を利用して欠陥を拡大した。その後、その有機化合物膜上に、さらに有機化合物膜形成用樹脂(有限会社エクスシア製、商品名:パーハイドロポリシラザン)を厚さ5μmになるように塗工、硬化して、補修膜3としての有機化合物膜を成膜し、実施例7のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.009g/m/dayであった。こうした高いガスバリア性は、超音波洗浄によるリフトオフ現象で生じさせた欠陥6の平均直径が0.1μm以上になっており、その欠陥6内に有機化合物膜形成用樹脂を入り込ませたことにより実現された。
[比較例1]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、ガスバリア膜2としての酸化ケイ素膜を、成膜圧力0.4Paで、厚さ30nmになるように成膜した。その後、その酸化ケイ素膜上に、成膜圧力0.2Paに変更して補修膜3としての酸化ケイ素膜を、厚さ30nmになるように成膜して、比較例1のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.05g/m/dayであった。こうしたガスバリア性は、0.4Paで成膜した酸化ケイ素膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6の平均直径が0.1μm以上になっていたが、その欠陥6を0.2Paで成膜した酸化ケイ素膜(補修膜3)では十分に埋めることができていない結果であった。
[比較例2]
実施例1と同じ装置を用い、繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、ガスバリア膜2としての酸化ケイ素膜を、成膜圧力0.4Paで、厚さ60nmになるように成膜した。その後、補修膜3を形成しないで比較例2のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.05g/m/dayであった。こうしたガスバリア性は、0.4Paで成膜した酸化ケイ素膜(ガスバリア膜2)に存在する欠陥6の平均直径が0.1μm以上になっていたが、その欠陥を埋めていないことによる結果であった。
[比較例3]
ロールトゥロール巻取機能を備えた塗布装置を用い、平坦化膜付きPETフィルム(厚さ100μm)のフィルムロールをセットし、そのフィルムロールから平坦化膜が塗布側になるようにしてPETフィルムを繰り出した。繰り出したPETフィルムの平坦化膜上に、有機化合物膜形成用樹脂(有限会社エクスシア製、商品名:パーハイドロポリシラザン)を厚さ6μmになるように塗工、硬化して、ガスバリア膜2としての有機化合物膜を成膜した。その後、超音波処理等の欠陥拡大処理を行わないで、引き続き、その有機化合物膜上に、さらに有機化合物膜形成用樹脂(有限会社エクスシア製、商品名:パーハイドロポリシラザン)を厚さ6μmになるように塗工、硬化して、補修膜3としての有機化合物膜を成膜し、比較例3のガスバリアフィルムを得た。
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、0.08g/m/dayであった。こうしたガスバリア性は、ガスバリア膜2である有機化合物膜の欠陥の平均直径が0.1μm未満になっており、その欠陥内に有機化合物膜形成用樹脂を十分に入り込ませることができなかったことによる。
1 基材
2 ガスバリア膜
3 補修膜
4 オーバーコート膜
5 平坦化膜
6 補修される欠陥
6’ 拡大前の欠陥
10(10A〜10C) ガスバリアフィルム
D1 初期欠陥のサイズ
D2 補修前の欠陥のサイズ

Claims (4)

  1. 基材上にガスバリア膜を形成するガスバリア膜形成工程と、前記ガスバリア膜上に補修膜を形成する補修膜形性工程とを少なくとも有し、
    前記補修膜形成工程において、前記補修膜は、前記ガスバリア膜が有する平均直径0.1μm以上の欠陥を充填するとともに前記ガスバリア膜を被覆して補修するガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記ガスバリア膜形成工程と前記補修膜形成工程との間に、前記ガスバリア膜が有する平均直径で0.1μm未満の欠陥を、平均直径で0.1μm以上の前記欠陥に拡大するための欠陥拡大工程を有することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  2. 前記ガスバリア膜形成工程において、前記ガスバリア膜の成膜条件が、水蒸気を透過する孔又は水蒸気を透過する部分からなる欠陥を形成する条件である、請求項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  3. 前記欠陥拡大工程が、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、超音波処理、湿式処理、及びエッチング処理から選ばれる1又は2以上の処理である、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  4. 前記ガスバリア膜形成工程において、前記ガスバリア膜を、物理的気相析出法によって前記欠陥を生じ易い条件で形成し、前記補修膜形成工程において、前記補修膜を、前記ガスバリア膜と同じ物理的気相析出法によって前記欠陥を埋めることができる条件で形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
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