JP6263983B2 - アルカリ蓄電池及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はアルカリ蓄電池及びその製造方法に関する。
ニッケル−水素蓄電池やニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池は、高出力性能や耐久性・高信頼性が必要なハイブリッド自動車(HEV)やアイドリングストップ自動車のような車両用等において広範囲に渡り採用されている。
このようなアルカリ蓄電池の正極は、焼結式の多孔性ニッケル基板の孔内に硝酸ニッケル等のニッケル塩を化学的に含浸させた(含浸処理)後、アルカリ水溶液で処理して硝酸ニッケル塩を水酸化ニッケルに変化させて活物質化(アルカリ処理)させ、所定量の活物質を充填させる焼結式ニッケル正極が一般的に使用されている。
しかしながら、この焼結式ニッケル正極は、活物質利用率が低いという課題があり、また車両用途においては、エンジンルーム近くで60℃以上の環境となる箇所に電池が使用されることがあり、一般的にアルカリ蓄電池は高温充電時にニッケル正極の酸素過電圧が低下するため、酸素ガス発生反応と充電反応との競争反応が生じ、充電効率が低下するという課題があった。
このような活物質利用率と高温充電効率を向上させる方法として、正極活物質表面にコバルト酸化物被膜層を形成させることが提案されている。(特許文献1)
また、含浸処理の際、ニッケルとコバルトの酸性混合溶液に浸漬して、アルカリ処理した後、アルカリ溶液と酸素の存在下で加熱処理(アルカリ熱処理)することで、活物質内部に導電性の優れた高次コバルト酸化物を形成させ、活物質利用率を向上させることが提案されている。(特許文献2、特許文献3)
さらに、アルカリ電解液にタングステン等の元素を添加して、正極の酸素ガス発生電位を上昇させ高温での充電効率を向上させる方法が提案されている。(特許文献4)
特開2000−277097号公報 特開2000−285912号公報 特開2012−033404号公報 特開2012−248494号公報
上記特許文献1のような方法では、60℃以上の高温環境下では、充放電効率の向上効果がほとんどないことが判明した。
上記特許文献2、3のような方法でも活物質利用率が不十分であり、多孔性ニッケル焼結基板の表面に活物質が析出して汚れが生じるという課題があり、また、この方法だけでは、60℃以上の高温環境下では充電効率が不十分であるとい課題を生じる。
上記特許文献4の方法では常温の活物質利用率が低下するという課題を生じる。
上記課題を解決するために、本願発明のアルカリ蓄電池は、正極と、負極と、セパレータからなる電極群と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池において、前記正極は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有し、前記正極活物質内には、コバルト化合物が、前記水酸化ニッケルに対して3〜12質量%固溶されており、前記コバルト化合物の30〜50質量%が、価数が2価よりも大きい高次コバルト酸化物であり、前記正極は、タングステン、モリブデン、ニオブから選択された少なくとも1種の元素が、前記水酸化ニッケルに対して0.1〜0.7質量%含有していることを特徴とする。
また、本願発明のアルカリ蓄電池の製造方法は、ニッケルメッキ鋼板を導電性芯体とする多孔性ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする正極活物質が充填されている正極と、負極と、セパレータとからなる電極群とを備えたアルカリ蓄電池の製造方法において、前記多孔性ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬した後、アルカリ処理して、ニッケルとコバルトの水酸化物層を形成して、前記水酸化ニッケルに対してコバルト化合物を3〜12質量%固溶させる工程と、前記ニッケルとコバルトの水酸化物層を形成した多孔性ニッケル焼結基板を、2.0〜4.5mol/Lのアルカリ水溶液に浸漬させ、前記多孔性ニッケル焼結基板中のアルカリ量を調整する工程と、前記アルカリ量を調整した多孔性ニッケル焼結基板を、酸素存在下で加熱処理して、前記コバルト化合物の30〜50質量%を、価数が2よりも大きい高次コバルト酸化物とする工程と、前記正極は、タングステン、モリブデン、ニオブから選択された少なくとも1種の元素を前記水酸化ニッケルに対して0.1〜0.7質量%含有させる工程と、からなることを特徴とする。
本願発明者が鋭意検討した結果、正極活物質内の水酸化ニッケルに対するコバルト化合物の固溶量と、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率を制御することにより、導電性が向上し、活物質利用率の飛躍的な向上と、高温充電効率の向上の両方が可能になると考えられる。
さらに、コバルト化合物量と、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率を制御した正極活物質中に、タングステン、モリブデン、ニオブから選択されたいずれか1種以上の元素が含有されていることにより、活物質利用率及び高温充電効率の両方に優れたアルカリ蓄電池を提供することができる。
また、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率は、アルカリ熱処理の際の多孔性ニッケル焼結基板をアルカリ水溶液に浸漬させ、多孔性ニッケル焼結基板内のアルカリ量を調整する工程(アルカリ量調整工程)により高次コバルト酸化物の含有率を向上できる。
さらに、前記アルカリ量調整工程では、多孔性ニッケル焼結基板を浸漬させるアルカリ水溶液の濃度が2.0mol/L〜4.5mol/Lとすることにより、活物質利用率、高温充電効率の両方が向上するとともに、極板に汚れがない高品質なニッケル正極を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、各種実験例により詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を理解するために例示するものであって、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
[実験例1]
[焼結式ニッケル正極の作製]
ニッケル粉末に増粘剤となるMC(メチルセルロース)と、孔径が60μmの高分子中空微小球体と、水とを混合・混練してニッケルスラリーを調整した。次いで、ニッケルメッキ鋼板からなるパンチングメタルの両面にニッケルスラリーを途着した後、還元性雰囲気中で1000℃に加熱して、増粘剤や高分子中空微小球体を溶解・消失させるとともにニッケル粉末同士を焼結し、多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板を得た。
なお、多孔性ニッケル焼結基板の多孔度は、水銀圧入式ポロシメータ(ファイソンズ インスツルメンツ製 Pascal 140)で測定した。
得られた多孔性ニッケル焼結基板を以下の含浸第1〜第3工程を所定回数繰り返すことにより正極活物質が充填された焼結式ニッケル正極を作製した。
(1)含浸第1工程
多孔性ニッケル焼結基板を、比重が1.75の硝酸ニッケルと硝酸コバルトからなる含浸液に浸漬し、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内にニッケル塩及びコバルト塩を保持させた。次いで、この多孔性ニッケル焼結基板を25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して、ニッケル塩及びコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケル及び水酸化コバルトに転換させるアルカリ処理を行った。
(2)含浸第2工程
含浸第1工程後の多孔性ニッケル焼結基板を、2.0mol/Lのアルカリ水溶液に3分間浸漬させて、多孔性ニッケル焼結基板中にアルカリを保持させた。
なお、保持させるアルカリ量は、アルカリ水溶液に浸漬させる時間により調整した。
(3)含浸第3工程
含浸第2工程後の多孔性ニッケル焼結基板を酸素の存在下で、110℃で60分間加熱処理することで、多孔性ニッケル焼結基板中の水酸化コバルトの一部を、価数が2価よりも大きい高次コバルト酸化物へ酸化させた。
上記含浸第1工程〜含浸第2工程〜含浸第3工程を1サイクル実施した後、含浸第1工程のみを5サイクル行い、多孔性ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を所定量充填させ、焼結式ニッケル正極Aを作製した。
なお、この焼結式ニッケル正極Aを原子吸光分析で測定したところ、正極活物質内に固溶するコバルト化合物の固溶量は、正極活物質の水酸化ニッケルに対して3質量%であり、正極活物質内に固溶するコバルト化合物の内、30質量%が、価数2価よりも大きい高次コバルト酸化物であった。
[水素吸蔵合金の作製]
水素吸蔵合金粉末は、次のようにして作製した。ネオジム(Nd)100質量%に対して、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を所定のモル比の割合となるように混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気中での高周波誘導炉で1000℃の温度で10時間の熱処理を行って溶解した。これを溶融急冷して、組成式がNd0.9Mg0.1Ni3.3Al0.2で表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。
この水素吸蔵合金をアルゴン雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400メッシュ〜200メッシュの間に残る水素吸蔵合金粉末を選別した。
なお、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定すると、質量積分50%に該当する平均粒径は25μmであった。
次いで、得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に対し、結着材としてのSBR(スチレンブタジエンゴム)を0.5質量部、及び増粘剤としてのCMC(カルボキシメチルセルロース)を0.03質量部、添加材としてのカーボンブラックを0.5質量部に適量の水を加えて混練し、負極活物質スラリーを調整した。
次いで、得られた負極活物質スラリーを、パンチングメタル(ニッケルメッキ鋼板製)からなる負極芯体の両面に塗布し、100℃で乾燥させた後、所定の厚みに圧延し、所定の寸法に裁断して水素吸蔵合金負極を作製した。
[アルカリ電解液の調整]
アルカリ電解液としては、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化リチウムと酸化タングステンからなる濃度が7.0mol/Lの混合溶液を用いた。
なお、正極活物質内の水酸化ニッケルに対してタングステン量が0.25質量%となるように混合溶液を調整している。
[ニッケル水素蓄電池の作製]
上述のようにして作製された負極と正極とを用い、これらの間にポリオレフィン製不織布からなるセパレータを介在させ渦巻状に巻回して渦巻電極群を作製した。
得られた渦巻電極群の上部には正極芯体が露出しており、下部には負極芯体が露出している。正極芯体の露出部には正極集電体が、負極芯体の露出部には負極集電体がそれぞれ溶接されている。
これをニッケルメッキを施した鉄製の有底筒状の外装缶内に収容し、負極集電体を外装缶の底面の内側に溶接した。正極集電体より延出する集電リード部を正極端子を兼ねるとともに外周部に絶縁ガスケットが装着された封口体の底部に溶接した。
なお、封口体には正極キャップが設けられており、この正極キャップ内に所定の圧力になると変形する弁体とスプリングよりなる安全弁が配置されている。
次いで、外装缶の上部外周部に環状溝部を形成した後、アルカリ電解液を注液し、外装缶の上部に形成された環状溝部の上に封口体の外周部に装着された絶縁ガスケットを載置した。この後、外装缶の開口端縁をかしめ、ニッケル水素蓄電池を作製した。
次いで、このニッケル水素蓄電池を9.6Aの電流で1時間充電し、熟成した後、9.6Aの電流で終止電圧が0.9Vになるまで放電するというサイクルを2回繰り返した。
これを完成電池とした。
この完成電池において、正極活物質細孔内のタングステン含有量をICP分析で測定したところ、正極活物質内の水酸化ニッケルに対して0.1質量%であった。
このことから、アルカリ電解液中のタングステンの40%が正極活物質表面に付着していることになる。
このようにして作製したニッケル水素蓄電池をA1とする。
[実験例2、3]
実験例1において、含浸第2工程で多孔性ニッケル焼結基板を浸漬させるアルカリ水溶液の濃度を1.0mol/Lとし、アルカリ電解液中の酸化タングステン量を調整して、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有比率を0質量%(アルカリ電解液中に酸化タングステンを含有しない)、0.1質量%とする以外は、実験例1と同
様にしてニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれB1、B2とする。
[実験例4]
実験例1の正極活物質充填工程において、含浸第1工程のみを5回繰り返し、多孔性ニッケル焼結基板を70℃で45分間熱処理し、完全に乾燥させた後、含浸第1工程〜含浸第2工程〜含浸第3工程を1サイクル実施して所定量の活物質を充填させる以外は、実験例1と同様にしてニッケル水素蓄電池を作製し、B3とする。
なお、上記のように作製された電池B3の正極は、正極活物質の表面に存在するコバルト化合物のみが高次コバルト酸化物に酸化しており、正極活物質細孔内のコバルト化合物は高次コバルト酸化物に酸化していない。
[実験例5〜8]
実験例1において、含浸第1工程の含浸液の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合比を変えて、正極活物質内の水酸化ニッケルに対するコバルト化合物の固溶比率を1質量%(実験例5)、6質量%(実験例6)、12質量%(実験例7)、15質量%(実験例8)とする以外は、実験例1と同様にしてニッケル水素蓄電池を作製し、それそれB4、A2、A3、B5とする。
[実験例9]
実験例1において、含浸第2工程のアルカリ水溶液の濃度を4.5mol/Lとする以外は、実験例1と同様にして、ニッケル水素蓄電池を作製し、A4とする。
[実験例10、11]
実験例1において、含浸第1工程〜含浸第2工程〜含浸第3工程を2サイクル実施した後、含浸第1工程のみを4サイクル行うことで、多孔性ニッケル焼結基板に所定量の活物質を充填させる以外は、実験例1と同様にし、ニッケル水素蓄電池を作製し、A5とする。
実験例1において、含浸第1工程〜含浸第2工程〜含浸第3工程を3サイクル実施した後、含浸第1工程のみを3サイクル行うことで、多孔性ニッケル焼結基板に所定量の活物質を充填させる以外は、実験例1と同様にし、ニッケル水素蓄電池を作製し、B6とする。
なお、原子吸光分析により、正極活物質内のコバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率を測定したところ、A5は50質量%、B6は65質量%であった。
<電池試験>
上記電池A1〜A5、B1〜B6を用いて、以下に示す性能評価試験をおこなった。
<活物質利用率>
25℃の雰囲気下において、0.5Itの充電電流でSOC(充電深度)が120%になるまで充電し、1時間の休止後、1Itの放電電流で終止電圧が0.9Vになるまで放電を行い、1.0V時点での放電容量を測定した。
この放電容量から以下に定義される計算式により、活物質利用率(%)を算出した。この結果を表1に示す。
活物質利用率(%)=放電容量(mAh)/(活物質質量(g)×理論容量289.1(mAh/g))
<高温充電効率>
65℃の雰囲気下において、0.5Itの充電電流でSOC(充電深度)が80%になるまで充電し、直後に1Itの放電電流で終止電圧が0.9Vになるまで放電を行い、1
.0V時点での放電容量を求めた。この時の充電容量に対する放電容量の割合を充電効率(%)として算出した。この結果を表1、表2、表3に示す。
Figure 0006263983
Figure 0006263983
Figure 0006263983
なお、表1、表2、表3における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
<高次コバルト酸化物の存在状態>
表1の結果から、高次コバルト酸化物の存在状態について、検討する。
電池A1、電池B1〜B3は、コバルト化合物量はいずれも3質量%で同じであるが、電池B1は、タングステンが含まれておらず、電池B2は、コバルト酸化物に占める高次コバルト酸化物の含有率が5質量%と少ない。
これに対して、電池A1および電池B3は、コバルト酸化物に占める高次コバルト酸化物の含有率が30質量%と高く、かつタングステンを含んでいる。
ただし、電池A1は、コバルト化合物が正極活物質内に固溶された状態であり、固溶されたコバルト化合物の30質量%が高次コバルト酸化物である。また、電池B3は、正極活物質の表面に存在するコバルト化合物のみが高次コバルト酸化物に酸化している状態であり、正極活物質細孔内のコバルト化合物は高次コバルト酸化物に酸化されていない。
コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率が5質量%である電池B1は、高温充電効率が不十分であることが判る。
また、電池B2のように正極活物質細孔内にタングステンを、水酸化ニッケルに対して0.10質量%添加すると、不十分ではあるが電池B1よりも高温充電効率は向上する。しかしながら、電池B2の活物質利用率は、電池B1よりも低下していることがわかる。
この結果から、コバルト酸化物に占める高次コバルト酸化物の含有率が少ないと、活物質利用率及び高温充電効率の両方の特性は向上しないことが判る。
これに対して、含浸第3工程の前の含浸第2工程において、2.0mol/Lのアルカリ水溶液に多孔性ニッケル焼結基板を浸漬させ、多孔性ニッケル焼結基板中のアルカリ量を調整することで、正極活物質内のコバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率が30質量%とした電池A1では、活物質利用率及び高温充電効率の両方が向上している。
ここで、電池A1と電池B3とを対比する。電池A1と電池B3の相違点は、高次コバルト酸化物の存在状態であるが、電池B3のように正極活物質表面のみに高次コバルト酸化物を形成させても、高温充電効率は向上しない。
これは、電池A1は、活物質内部に固溶されたコバルト化合物が酸化されて、高次コバルト酸化物になっているため、高次コバルト酸化物が活物質内部に固溶されていることになり、静電作用により正極活物質である水酸化ニッケル結晶のC軸長が伸長することで、正極活物質内のプロトンの移動が容易になるためであると推測される。
これに対して、電池B3は、活物質表面のコバルト化合物のみが高次コバルト酸化物になり被覆しており、活物質内部に固溶されたコバルト化合物は酸化されていないため、電池A1のような静電作用による水酸化ニッケル結晶のC軸長の伸長は発現せず、高温充電効率が向上しないと推測される。
以上のことから、高次コバルト酸化物を活物質内部に固溶させなければ、活物質利用率及び高温充電効率の両方の特性を向上させることができないことが判る。
<コバルト化合物量>
表2の結果から、コバルト化合物量について、検討する。
電池A1〜A3、電池B4、B5は、コバルト化合物量が異なるだけで、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率やタングステン量は同じである。
コバルト化合物量が増加すると、活物質利用率が向上することが判る。ただし、電池B5のようにコバルト化合物が15質量%になると、充放電反応物質である水酸化ニッケルの活物質内に占める比率が減少し、さらに水酸化ニッケルの反応面の阻害により活物質利用率が低下している。
したがって、活物質利用率及び高温充電効率の両方を向上させるためには、コバルト化合物量は3〜12質量%とする必要がある。
<高次コバルト酸化物の含有率>
表3の結果から、高次コバルト酸化物の含有率について、検討する。
電池A1、A4、A5、電池B2、B6は、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率が異なるだけである。
コバルト化合物量に占める高次コバルト酸化物の含有率は、電池A4のようにアルカリ量調整時のアルカリ水溶液の濃度を高くする、または、電池A5、電池B6のように活物質充填時に含浸第1工程→含浸第2工程→含浸第3工程のサイクル回数を増加させることで、調整することができる。
ただし、電池B6のように高次コバルト酸化物の含有率が多いと、正極活物質の結晶性が低下し、高温充電効率が低下するため、正極活物質中の全コバルト化合物に対する高次コバルト酸化物量は30質量%〜50質量%とする必要がある。
また、電池A4のようにアルカリ量調整時のアルカリ水溶液の濃度を高くすることにより、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率を上昇させる場合、アルカリ調整時のアルカリ水溶液の濃度高すぎると、ニッケル焼結基板の表面に活物質が沈着して汚れが発生するため、アルカリ水溶液の濃度は、2.0mol/L〜4.5mol/Lとする必要がある。
<タングステン含有量>
[実験例12〜14]
実験例1において、アルカリ電解液中の酸化タングステン量を調整することで、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有量を調整した。
タングステン含有量を、0.05質量%(実験例12)、0.70質量%(実験例13)、0.90質量%(実験例14)とする以外は、実験例1と同様にし、ニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれ電池B7、電池A6、電池B8とする。
活物質利用率、高温充電効率を算出し、電池A6、電池B7、電池B8の結果を電池A1と共に表4に示す。
なお、表4における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
Figure 0006263983
表4の結果から、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有量が、0.05質量%と少ないと、高温充電効率が95.2%と不十分であることが判る。
また、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有量が、0.90質量%と多くなると、活物質利用率が99%と不十分である。
したがって、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有量は、0.10質量%〜0.70質量%とすると、活物質利用率及び高温充電効率の両方が向上することが判る。
<モリブデン含有量>
[実験例15〜18]
実験例1において、アルカリ電解液として、水酸化ナトリウムと水酸化リチウムと酸化モリブデンからなる濃度7.0mol/Lの混合溶液も用い、アルカリ電解液中のモリブ
デン量が正極活物質内の水酸化ニッケルに対して、0.13質量%、0.25質量%、1.75質量%、2.25質量%となるように調整した電解液を使用する以外は、実験例1と同様にして、ニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれ電池B9、電池A7、電池A8、電池B10とする。
電池A7、A8、電池B9、B10の正極活物質細孔内のモリブデン含有量をICPで測定したところ、水酸化ニッケルに対して0.10質量%(電池A7)、0.70質量%(電池A8)、0.05質量%(電池B9)、0.90質量%(電池B10)であった。
活物質利用率、高温充電効率を算出し、電池A7、電池A8、電池B9、電池B10の結果を表5に示す。
なお、表5における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
Figure 0006263983
表5の結果から、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のモリブデン含有量が、0.05質量%と少ないと、高温充電効率が94.9%と不十分であることが判る。
また、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のモリブデン含有量が、0.90質量%と多くなると、活物質利用率が98%と不十分である。
したがって、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のモリブデン含有量は、0.10質量%〜0.70質量%とすると、活物質利用率及び高温充電効率の両方が向上することが判る。
<ニオブ含有量>
[実験例19〜22]
実験例1において、アルカリ電解液として、水酸化ナトリウムと水酸化リチウムと酸化ニオブからなる濃度7.0mol/Lの混合溶液も用い、アルカリ電解液中のニオブ量が正極活物質内の水酸化ニッケルに対して、0.25質量%、0.50質量%、3.50質量%、4.50質量%となるように調整した電解液を使用する以外は、実験例1と同様にして、ニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれ電池B11、電池A9,電池A10.電池B12とする。
電池A9、A10、電池B11、B12の正極活物質細孔内のニオブ含有量をICPで測定したところ、水酸化ニッケルに対して0.10質量%(電池A9)、0.70質量%(電池A10)、0.05質量%(電池B11)、0.90質量%(電池B12)であった。
活物質利用率、高温充電効率を算出し、電池A9、電池A10、電池B11、電池B12の結果を表6に示す。
なお、表6における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
Figure 0006263983
表6の結果から、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のニオブ含有量が、0.05質量%と少ないと、高温充電効率が95.3%と不十分であることが判る。
また、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のニオブ含有量が、0.90質量%と多くなると、活物質利用率が99%と不十分である。
したがって、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のニオブ含有量は、0.10質量%〜0.70質量%とすると、活物質利用率及び高温充電効率の両方が向上することが判る。

Claims (2)

  1. 正極と、負極と、セパレータからなる電極群と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池において、
    前記正極は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有し、
    前記正極活物質内には、コバルト化合物が、前記水酸化ニッケルに対して3〜12質量%固溶されており、
    前記コバルト化合物の30〜50質量%が、価数が2価よりも大きい高次コバルト酸化物であり、
    前記正極は、タングステン、モリブデン、ニオブから選択された少なくとも1種の元素が、前記水酸化ニッケルに対して0.1〜0.7質量%含有していることを特徴とするアルカリ蓄電池。
  2. ニッケルメッキ鋼板を導電性芯体とする多孔性ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする正極活物質が充填されている正極と、負極と、セパレータとからなる電極群とを備えたアルカリ蓄電池の製造方法において、
    前記多孔性ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬した後、アルカリ処理して、ニッケルとコバルトの水酸化物層を形成して、前記水酸化ニッケルに対してコバルト化合物を3〜12質量%固溶させる工程と、
    前記ニッケルとコバルトの水酸化物層を形成した多孔性ニッケル焼結基板を、2.0〜4.5mol/Lのアルカリ水溶液に浸漬させ、前記多孔性ニッケル焼結基板中のアルカリ量を調整する工程と、
    前記アルカリ量を調整した多孔性ニッケル焼結基板を、酸素存在下で加熱処理して、前記コバルト化合物の30〜50質量%を、価数が2よりも大きい高次コバルト酸化物とする工程と、
    前記正極は、タングステン、モリブデン、ニオブから選択された少なくとも1種の元素を前記水酸化ニッケルに対して0.1〜0.7質量%含有させる工程と、
    からなることを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
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