JP6263983B2 - アルカリ蓄電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
上記特許文献4の方法では常温の活物質利用率が低下するという課題を生じる。
[焼結式ニッケル正極の作製]
ニッケル粉末に増粘剤となるMC(メチルセルロース)と、孔径が60μmの高分子中空微小球体と、水とを混合・混練してニッケルスラリーを調整した。次いで、ニッケルメッキ鋼板からなるパンチングメタルの両面にニッケルスラリーを途着した後、還元性雰囲気中で1000℃に加熱して、増粘剤や高分子中空微小球体を溶解・消失させるとともにニッケル粉末同士を焼結し、多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板を得た。
多孔性ニッケル焼結基板を、比重が1.75の硝酸ニッケルと硝酸コバルトからなる含浸液に浸漬し、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内にニッケル塩及びコバルト塩を保持させた。次いで、この多孔性ニッケル焼結基板を25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して、ニッケル塩及びコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケル及び水酸化コバルトに転換させるアルカリ処理を行った。
含浸第1工程後の多孔性ニッケル焼結基板を、2.0mol/Lのアルカリ水溶液に3分間浸漬させて、多孔性ニッケル焼結基板中にアルカリを保持させた。
なお、保持させるアルカリ量は、アルカリ水溶液に浸漬させる時間により調整した。
含浸第2工程後の多孔性ニッケル焼結基板を酸素の存在下で、110℃で60分間加熱処理することで、多孔性ニッケル焼結基板中の水酸化コバルトの一部を、価数が2価よりも大きい高次コバルト酸化物へ酸化させた。
水素吸蔵合金粉末は、次のようにして作製した。ネオジム(Nd)100質量%に対して、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を所定のモル比の割合となるように混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気中での高周波誘導炉で1000℃の温度で10時間の熱処理を行って溶解した。これを溶融急冷して、組成式がNd0.9Mg0.1Ni3.3Al0.2で表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。
なお、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定すると、質量積分50%に該当する平均粒径は25μmであった。
アルカリ電解液としては、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムと水酸化リチウムと酸化タングステンからなる濃度が7.0mol/Lの混合溶液を用いた。
なお、正極活物質内の水酸化ニッケルに対してタングステン量が0.25質量%となるように混合溶液を調整している。
上述のようにして作製された負極と正極とを用い、これらの間にポリオレフィン製不織布からなるセパレータを介在させ渦巻状に巻回して渦巻電極群を作製した。
得られた渦巻電極群の上部には正極芯体が露出しており、下部には負極芯体が露出している。正極芯体の露出部には正極集電体が、負極芯体の露出部には負極集電体がそれぞれ溶接されている。
次いで、外装缶の上部外周部に環状溝部を形成した後、アルカリ電解液を注液し、外装缶の上部に形成された環状溝部の上に封口体の外周部に装着された絶縁ガスケットを載置した。この後、外装缶の開口端縁をかしめ、ニッケル水素蓄電池を作製した。
これを完成電池とした。
このことから、アルカリ電解液中のタングステンの40%が正極活物質表面に付着していることになる。
このようにして作製したニッケル水素蓄電池をA1とする。
実験例1において、含浸第2工程で多孔性ニッケル焼結基板を浸漬させるアルカリ水溶液の濃度を1.0mol/Lとし、アルカリ電解液中の酸化タングステン量を調整して、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有比率を0質量%(アルカリ電解液中に酸化タングステンを含有しない)、0.1質量%とする以外は、実験例1と同
様にしてニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれB1、B2とする。
実験例1の正極活物質充填工程において、含浸第1工程のみを5回繰り返し、多孔性ニッケル焼結基板を70℃で45分間熱処理し、完全に乾燥させた後、含浸第1工程〜含浸第2工程〜含浸第3工程を1サイクル実施して所定量の活物質を充填させる以外は、実験例1と同様にしてニッケル水素蓄電池を作製し、B3とする。
なお、上記のように作製された電池B3の正極は、正極活物質の表面に存在するコバルト化合物のみが高次コバルト酸化物に酸化しており、正極活物質細孔内のコバルト化合物は高次コバルト酸化物に酸化していない。
実験例1において、含浸第1工程の含浸液の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合比を変えて、正極活物質内の水酸化ニッケルに対するコバルト化合物の固溶比率を1質量%(実験例5)、6質量%(実験例6)、12質量%(実験例7)、15質量%(実験例8)とする以外は、実験例1と同様にしてニッケル水素蓄電池を作製し、それそれB4、A2、A3、B5とする。
実験例1において、含浸第2工程のアルカリ水溶液の濃度を4.5mol/Lとする以外は、実験例1と同様にして、ニッケル水素蓄電池を作製し、A4とする。
実験例1において、含浸第1工程〜含浸第2工程〜含浸第3工程を2サイクル実施した後、含浸第1工程のみを4サイクル行うことで、多孔性ニッケル焼結基板に所定量の活物質を充填させる以外は、実験例1と同様にし、ニッケル水素蓄電池を作製し、A5とする。
なお、原子吸光分析により、正極活物質内のコバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率を測定したところ、A5は50質量%、B6は65質量%であった。
上記電池A1〜A5、B1〜B6を用いて、以下に示す性能評価試験をおこなった。
<活物質利用率>
25℃の雰囲気下において、0.5Itの充電電流でSOC(充電深度)が120%になるまで充電し、1時間の休止後、1Itの放電電流で終止電圧が0.9Vになるまで放電を行い、1.0V時点での放電容量を測定した。
活物質利用率(%)=放電容量(mAh)/(活物質質量(g)×理論容量289.1(mAh/g))
65℃の雰囲気下において、0.5Itの充電電流でSOC(充電深度)が80%になるまで充電し、直後に1Itの放電電流で終止電圧が0.9Vになるまで放電を行い、1
.0V時点での放電容量を求めた。この時の充電容量に対する放電容量の割合を充電効率(%)として算出した。この結果を表1、表2、表3に示す。
表1の結果から、高次コバルト酸化物の存在状態について、検討する。
電池A1、電池B1〜B3は、コバルト化合物量はいずれも3質量%で同じであるが、電池B1は、タングステンが含まれておらず、電池B2は、コバルト酸化物に占める高次コバルト酸化物の含有率が5質量%と少ない。
ただし、電池A1は、コバルト化合物が正極活物質内に固溶された状態であり、固溶されたコバルト化合物の30質量%が高次コバルト酸化物である。また、電池B3は、正極活物質の表面に存在するコバルト化合物のみが高次コバルト酸化物に酸化している状態であり、正極活物質細孔内のコバルト化合物は高次コバルト酸化物に酸化されていない。
また、電池B2のように正極活物質細孔内にタングステンを、水酸化ニッケルに対して0.10質量%添加すると、不十分ではあるが電池B1よりも高温充電効率は向上する。しかしながら、電池B2の活物質利用率は、電池B1よりも低下していることがわかる。
表2の結果から、コバルト化合物量について、検討する。
電池A1〜A3、電池B4、B5は、コバルト化合物量が異なるだけで、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率やタングステン量は同じである。
表3の結果から、高次コバルト酸化物の含有率について、検討する。
電池A1、A4、A5、電池B2、B6は、コバルト化合物に占める高次コバルト酸化物の含有率が異なるだけである。
[実験例12〜14]
実験例1において、アルカリ電解液中の酸化タングステン量を調整することで、水酸化ニッケルに対する正極活物質細孔内のタングステン含有量を調整した。
なお、表4における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
[実験例15〜18]
実験例1において、アルカリ電解液として、水酸化ナトリウムと水酸化リチウムと酸化モリブデンからなる濃度7.0mol/Lの混合溶液も用い、アルカリ電解液中のモリブ
デン量が正極活物質内の水酸化ニッケルに対して、0.13質量%、0.25質量%、1.75質量%、2.25質量%となるように調整した電解液を使用する以外は、実験例1と同様にして、ニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれ電池B9、電池A7、電池A8、電池B10とする。
なお、表5における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
[実験例19〜22]
実験例1において、アルカリ電解液として、水酸化ナトリウムと水酸化リチウムと酸化ニオブからなる濃度7.0mol/Lの混合溶液も用い、アルカリ電解液中のニオブ量が正極活物質内の水酸化ニッケルに対して、0.25質量%、0.50質量%、3.50質量%、4.50質量%となるように調整した電解液を使用する以外は、実験例1と同様にして、ニッケル水素蓄電池を作製し、それぞれ電池B11、電池A9,電池A10.電池B12とする。
なお、表6における活物質利用率は、電池B1を100とした場合の相対値で示す。
Claims (2)
- 正極と、負極と、セパレータからなる電極群と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池において、
前記正極は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有し、
前記正極活物質内には、コバルト化合物が、前記水酸化ニッケルに対して3〜12質量%固溶されており、
前記コバルト化合物の30〜50質量%が、価数が2価よりも大きい高次コバルト酸化物であり、
前記正極は、タングステン、モリブデン、ニオブから選択された少なくとも1種の元素が、前記水酸化ニッケルに対して0.1〜0.7質量%含有していることを特徴とするアルカリ蓄電池。 - ニッケルメッキ鋼板を導電性芯体とする多孔性ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする正極活物質が充填されている正極と、負極と、セパレータとからなる電極群とを備えたアルカリ蓄電池の製造方法において、
前記多孔性ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬した後、アルカリ処理して、ニッケルとコバルトの水酸化物層を形成して、前記水酸化ニッケルに対してコバルト化合物を3〜12質量%固溶させる工程と、
前記ニッケルとコバルトの水酸化物層を形成した多孔性ニッケル焼結基板を、2.0〜4.5mol/Lのアルカリ水溶液に浸漬させ、前記多孔性ニッケル焼結基板中のアルカリ量を調整する工程と、
前記アルカリ量を調整した多孔性ニッケル焼結基板を、酸素存在下で加熱処理して、前記コバルト化合物の30〜50質量%を、価数が2よりも大きい高次コバルト酸化物とする工程と、
前記正極は、タングステン、モリブデン、ニオブから選択された少なくとも1種の元素を前記水酸化ニッケルに対して0.1〜0.7質量%含有させる工程と、
からなることを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
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