JP2004119196A - ニッケル−水素蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温雰囲気下で充放電を繰り返しても、コバルトの電解液への溶出を抑制するとともに、マンガンの電解液への溶出を抑制して、放電容量の低下が少ないニッケル−水素蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明のニッケル−水素蓄電池は、正極はCo化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、W化合物、Ta化合物のいずれか一方あるいは両方が添加されており、負極は組成式がMmNiaCobMncAldで表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、NiとCoとMnとAlの組成の和(a+b+c+d)が4.4≦a+b+c+d≦5.4で、Mnの組成(c)が0.05≦c≦0.2の関係を有している。これにより、高温下で充放電を繰り返してもCoが電解液中へ溶出するのが抑制され、導電ネットワークが崩壊するのが防止できて、放電容量が低下するのを防止できるようになる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のニッケル−水素蓄電池は、正極はCo化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、W化合物、Ta化合物のいずれか一方あるいは両方が添加されており、負極は組成式がMmNiaCobMncAldで表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、NiとCoとMnとAlの組成の和(a+b+c+d)が4.4≦a+b+c+d≦5.4で、Mnの組成(c)が0.05≦c≦0.2の関係を有している。これにより、高温下で充放電を繰り返してもCoが電解液中へ溶出するのが抑制され、導電ネットワークが崩壊するのが防止できて、放電容量が低下するのを防止できるようになる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極と、水素吸蔵合金を主成分とする負極活物質を含有した負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル−水素蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ニッケル−水素蓄電池をはじめとするアルカリ蓄電池においては、市場が拡大するに伴って、小型の機器のみならず、電動工具、アシスト自転車、電気自動車などの大電流用途にも需要が拡大し、大型化、高容量化、ハイパワー化の需要、要望が高まった。このような用途の拡大に伴い、この種のアルカリ蓄電池においては、必然的に高温雰囲気下で使用される機会が増大するようになった。ところが、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極を用いたアルカリ蓄電池にあっては、高温時に充電効率が低下するという問題があった。
【0003】
そこで、正極活物質である水酸化ニッケルにタンタル化合物やタングステン化合物を添加することにより、高温時における充電効率を向上させる方法が特許文献1にて提案されるようになった。この特許文献1にて提案された方法においては、酸素発生電位を貴にシフトさせるため、アルカリ蓄電池の充電末期に発生する競争反応である水の電気分解を抑制することができるようになる。この結果、高温時の充電効率をより効果的に高めることが可能となる。
【特許文献1】
特開2001−202956号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、水酸化ニッケルを正極活物質とするニッケル正極の活物質利用率を向上させて高容量化を達成するために、水酸化ニッケルの表面を金属コバルトやコバルト化合物や高次コバルト化合物で被覆することが行われている。このように、水酸化ニッケルの表面を導電性が高い金属コバルトやコバルト化合物で被覆したり、コバルト化合物よりもさらに導電性が高い高次コバルト化合物で被覆すると、活物質間に導電ネットワークが形成されるようになる。これにより、活物質の利用率が向上して、高容量化が達成できるようになる。
【0005】
しかしながら、上述のように水酸化ニッケルにタンタル化合物やタングステン化合物を添加したニッケル正極を用いたニッケル−水素蓄電池を高温雰囲気下で充放電を繰り返すと、水酸化ニッケル表面を被覆している金属コバルトやコバルト化合物が水酸化コバルトに還元されることとなる。金属コバルトやコバルト化合物が水酸化コバルトに還元されると、金属コバルトやコバルト化合物が電解液中に溶出するようになる。このため、導電ネットワークが崩壊して、活物質間の導電性が低下することとなる。
【0006】
また、負極に用いられる水素吸蔵合金においては、水素吸蔵合金中にマンガン(Mn)やアルミニウム(Al)等が添加されているが、このような水素吸蔵合金電極を用いたニッケル−水素蓄電池を高温雰囲気下で充放電を繰り返すと、特に、マンガン(Mn)が電解液中に溶出するようになる。そして、溶出したマンガン(Mn)は水素吸蔵合金表面あるいはセパレータに水酸化物として再析出して内部抵抗が増大し、導電性が低下する。このように、高温サイクル時には、正極、負極の導電性の低下に伴い、放電容量が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はこのような高温雰囲気下で充放電を繰り返すと放電容量が低下するという問題点を解消するためになされたものであって、高温雰囲気下で充放電を繰り返しても、コバルトの電解液への溶出を抑制するとともに、マンガンの電解液への溶出を抑制して、放電容量の低下が少ないニッケル−水素蓄電池を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のニッケル−水素蓄電池は、正極はコバルト化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、タングステン化合物、タンタル化合物のいずれか一方あるいは両方が添加されており、負極は組成式がMmNiaCobMncAldで表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、NiとCoとMnとAlの組成の和(a+b+c+d)が4.4≦a+b+c+d≦5.4で、Mnの組成(c)が0.05≦c≦0.2の関係を有していることを特徴とする。
【0009】
ここで、正極活物質にタングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方が添加されていると、正極中にW−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されることとなる。このようにW−Mn化合物、Ta−Mn化合物がコバルト近傍に存在するようになると、コバルトの導電ネットワークが強固なものとなり、高温下で充放電を繰り返した場合でも、コバルトが電解液中へ溶出するのが抑制されて、導電ネットワークが崩壊するのを保護できるようになる。この結果、活物質間の導電性が維持できて、放電容量が低下するのを防止できるようになる。また、活物質の表面がコバルト化合物で被覆されていると、活物質粒子の導電性が向上するので、高容量のニッケル−水素蓄電池が得られるようになる。
【0010】
この場合、負極の水素吸蔵合金中のMn量(水素吸蔵合金をMmNiaCobMncAldで表した場合のc値でMnの含有割合となる)が0.05未満(c<0.05)であると、水素吸蔵合金から溶出するMn量が減少し、コバルトの導電ネットワークの崩壊を抑制するW−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されなく、もしくは不足するようになって、コバルトの導電ネットワークの崩壊を抑制する効果が得られない。一方、Mn量(c値)が0.2を超える(c>0.2)ようになると、WやTaと化合物を生成できない過剰のMnが水素吸蔵合金から溶出するようになり、例えば正極にZnを含む場合、溶出したZnと化合物を作り、Zn−Mn化合物が形成されるようになる。さらに、これがセパレータ等に再析出して、内部抵抗が増大するようになって、放電性が低下する。このため、負極の水素吸蔵合金中のMn量(c値)は0.05以上で0.2以下(0.05≦c≦0.2)に規制する必要がある。
【0011】
なお、タングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方の添加量が、水酸化ニッケル(正極活物質)に対して0.1質量%未満であると、コバルトが電解液中へ溶出するのを抑制する効果を発揮することができなく、導電性を維持することができなくなる。一方、タングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方の添加量が、水酸化ニッケル(正極活物質)に対して3.0質量%を超えるようになると、正極活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に減少して、放電容量が減少するようになる。このため、タングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方の添加量は、水酸化ニッケルの質量に対して0.1質量%以上で3.0質量%以下であるのが望ましい。
【0012】
また、タングステン化合物は三酸化タングステン、二酸化タングステのいずれか一方あるいは両方から選択して用いるのが望ましい。また、タンタル化合物は五酸化二タンタルであるのが望ましい。さらに、コバルト化合物が結晶性が乱れたアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物(Coの平均価数が2を越える化合物)であると、このアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物はさらに導電性に優れているので、さらに高容量のニッケル−水素蓄電池が得られるようになるので好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0014】
1.正極活物質の調製
金属ニッケル100に対して亜鉛4質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケルと硫酸亜鉛と硫酸コバルトとを混合して混合水溶液とした。この混合水溶液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、反応溶液中のpHを13〜14に安定させて、水酸化ニッケルを主体とする水酸化物を析出させた。この水酸化ニッケルを主体とする水酸化物が析出した水溶液中に、反応中のpHを9〜10に維持するようにして、硫酸コバルト水溶液を添加した。
【0015】
これにより、主成分が水酸化ニッケルである球状水酸化物粒子を結晶核として、この結晶核の周囲に水酸化コバルト化合物が析出した複合粒子となる。なお、この複合粒子は球状水酸化物粒子に対して、水酸化コバルト化合物の質量割合が10質量%となるように析出させている。ついで、この複合粒子を採取して水洗、乾燥して水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトの析出層を形成した複合粒子粉末を得た。
【0016】
この後、100℃の加熱空気の雰囲気中で、この複合粒子粉末に対して、25質量%の水酸化ナトリウム溶液を噴霧した。これにより、水酸化コバルトは結晶性が乱れて高次化されたナトリウムイオンを含む高次コバルト化合物になる。ついで、この複合粒子粉末を10倍量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥することにより、アルカリカチオン(ナトリウムイオン)を含有するコバルト被覆層を有する複合粒子粉末を調製し、正極活物質とした。
【0017】
2.ニッケル電極の作製
ついで、上述のようにして調製された正極活物質に所定量の三酸化タングステン(WO3)を添加し、これに結着剤としての40質量%のHPCディスパージョン液を混合して活物質スラリーを調製した。ついで、発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる多孔性電極基板に、上述のように調製した活物質スラリーを所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル電極a1〜a7を作製した。
【0018】
ここで、正極活物質質量に対して、0.05質量%のWO3を添加して作製した非焼結式ニッケル電極を正極a1とした。同様に、0.1質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a2とし、0.3質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a3とし、0.5質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a4とし、1.0質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a5とし、3.0質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a6とし、5.0質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a7とした。また、三酸化タングステン(WO3)が無添加の非焼結式ニッケル電極を作製し、これを正極xとした。
【0019】
3.水素吸蔵合金電極の作製
まず、ミッシュメタル(Mm)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびアルミニウム(Al)を所定のモル比になるようにそれぞれ混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉で誘導加熱して合金溶湯とした。この合金溶湯を公知の方法で鋳型に流し込み、冷却して、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。この水素吸蔵合金インゴットを機械的粉砕法により、平均粒子径が約60μmになるまで粉砕した。
【0020】
この場合、MmNiaCobMncAldにおいて、a+b+c+d=5.0となるように配合量を調整した。ついで、これらの各水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、結着剤としての5質量%のポリエチレンオキサイド(PEO)の水溶液を20質量部とを混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストをパンチングメタルからなる芯体の両面に塗布し、室温で乾燥させた後、所定の厚みに圧延し、所定の寸法に切断して水素吸蔵合金負極をそれぞれ作製した。
【0021】
なお、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:4.05:0.60:0.05(c=0.05):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi4.05Co0.60Mn0.05Al0.30)を用いたものを負極e1とした。同様に、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:4.00:0.60:0.10(c=0.10):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi4.00Co0.60Mn0.10Al0.30)を用いたものを負極e2とし、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.90:0.60:0.20(c=0.20):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi3.90Co0.60Mn0.20Al0.30)を用いたものを負極e3とした。
【0022】
4.ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した非焼結式ニッケル正極a1〜a7およびxを用い、これらと上述のように作製した水素吸蔵合金負極e1〜e3とをポリプロピレン製あるいはナイロン製の不織のセパレータを介して巻回して、渦巻状の電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量1000mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池をそれぞれ作製した。
【0023】
ここで、負極e1を用いるとともに、正極a1を用いたものを電池A1とした。同様に、a2を用いたものを電池A2とし、a3を用いたものを電池A3とし、a4を用いたものを電池A4とし、a5を用いたものを電池A5とし、a6を用いたものを電池A6とし、a7を用いたものを電池A7とした。また、負極e2を用いるとともに、a1を用いたものを電池B1とし、a2を用いたものを電池B2とし、a3を用いたものを電池B3とし、a4を用いたものを電池B4とし、a5を用いたものを電池B5とし、a6を用いたものを電池B6とし、正極a7を用いたものを電池B7とした。
【0024】
さらに、負極e3を用いるとともに、a1を用いたものを電池C1とし、a2を用いたものを電池C2とし、a3を用いたものを電池C3とし、a4を用いたものを電池C4とし、a5を用いたものを電池C5とし、a6を用いたものを電池C6とし、正極a7を用いたものを電池C7とした。また、三酸化タングステン(WO3)が無添加の正極xを用いるとともに、負極e1を用いたものを電池Xとし、負極e2を用いたものを電池Yとし、負極e3を用いたものを電池Zとした。
【0025】
ついで、上述のように作製した電池A1〜A7,B1〜B7,C1〜C7およびX,Y,Zを用いて、これらの各電池を25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池の初期放電容量(mAh)を求めると下記の表1に示すような結果が得られた。また、上述のように作製した電池A1〜A7,B1〜B7,C1〜C7およびX,Y,Zを用いて、これらの各電池を60℃の高温雰囲気で、100mAの充電電流で16時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、これを1サイクルとする充放電サイクル試験を行った。
【0026】
そして、その放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を求めて、これを容量維持率(高温サイクル特性)として求めると、下記の表1に示すような結果が得られた。また、表1の結果に基づいて、三酸化タングステン(WO3)の添加量(質量%)を横軸にプロットし、容量維持率(サイクル)を縦軸にプロットして、三酸化タングステン(WO3)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係をグラフにして表すと図1に示すような結果となった。なお、図1において、電池A1〜A7をAで表し、電池B1〜B7をBで表し、電池C1〜C7をCで表している。
【0027】
【表1】
【0028】
上記表1および図1の結果から明らかなように、三酸化タングステン(WO3)が無添加の正極xを用いた電池X,Y,Zにおいては、容量維持率(高温サイクル特性)が252〜265サイクルと小さいのに対して、三酸化タングステン(WO3)を添加した正極a1〜a7を用いた電池A1〜A7,B1〜B7,C1〜C7においては、容量維持率(高温サイクル特性)が大きいことが分かる。
これは、正極活物質に三酸化タングステン(WO3)が添加されていると、W−Mn化合物が生成されて、高温雰囲気下において充放電させた場合においても、放電時にナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されるのが抑制されて、電解液中に溶出するのが抑制され、導電ネットワークが維持できて、容量維持率が向上したと考えられる。
【0029】
この場合、三酸化タングステン(WO3)の添加量が0.05質量%の正極a1を用いた電池A1,B1,C1においては、容量維持率(高温サイクル特性)が390,402,387サイクルと電池A2〜A7,B2〜B7,C2〜C7に比べて低下していることが分かる。これは、三酸化タングステン(WO3)の添加量が0.1質量%よりも減少すると、コバルト化合物が酸化されたオキシ水酸化コバルトが水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶解し、導電ネットワークが崩れやすくなって容量維持率が低下したと考えられる。
【0030】
また、三酸化タングステン(WO3)の添加量が5.0質量%の正極a7を用いた電池A7,B7,C7においては、初期放電容量が825,817,816mAhと電池A1〜A6,B1〜B6,C1〜C6に比べて低下していることが分かる。これは、三酸化タングステン(WO3)の添加量が3.0質量%よりも増加すると、正極活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に減少して、初期放電容量が減少したと考えられる。
これらのことから、三酸化タングステン(WO3)の添加量は、正極活物質となる水酸化ニッケル量に対して、0.1質量%以上で、3.0質量%以下にするのが望ましいということができる。
【0031】
5.水素吸蔵合金(MmNiaCobMncAld)のMn量(c値)の検討
ついで、水素吸蔵合金(MmNiaCobMncAld)中のMnの含有量(c値)について検討した。そこで、まず、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:4.07:0.60:0.03(c=0.03):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi4.07Co0.60Mn0.03Al0.30)を用いて負極e4を作製するとともに、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.80:0.60:0.30(c=0.30):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi3.80Co0.60Mn0.30Al0.30)を用いて負極e5を作製した。
【0032】
ついで、これらの負極e4,e5を用いるとともに、三酸化タングステン(WO3)の添加量が0.5質量%の正極a4を用いて、上述と同様にしてニッケル−水素蓄電池D1(負極e4を用いたもの)およびニッケル−水素蓄電池D2(負極e5を用いたもの)を作製した。そして、これらの電池D1,D2を用いて、上述と同様に25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池の初期放電容量(mAh)を求めると下記の表2に示すような結果が得られた。
【0033】
また、上述と同様に60℃の高温雰囲気で、100mAの充電電流で16時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を求めて、これを容量維持率(高温サイクル特性)として求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、下記の表2には、上述した電池A4,B4,C4の結果も併せて示している。また、表2の結果に基づいて、Mnの含有量(c値)を横軸にプロットし、容量維持率(サイクル)を縦軸にプロットして、Mnの含有量(c値)と容量維持率(サイクル)の関係をグラフにして表すと図2に示すような結果となった。
【0034】
【表2】
【0035】
上記表2および図2の結果から明らかなように、Mnの含有量(c値)が0.03である水素吸蔵合金(MmNi4.07Co0.60Mn0.03Al0.30)を含有する負極e4を用いた電池D1およびMnの含有量(c値)が0.30である水素吸蔵合金(MmNi3.80Co0.60Mn0.30Al0.30)を含有する負極e5を用いた電池D2においては、容量維持率が405サイクルおよび398サイクルと小さいことが分かる。これは、組成式MmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のMnの含有量(c値)が0.05未満であると、W−Mn化合物が生成されにくいために、ナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶出するようになる。このため、導電ネットワークが崩壊して、容量維持率が低下したと考えられる。
【0036】
また、組成式MmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のMnの含有量(c値)が0.20を超えるようになると、Zn−Mn化合物が生成されるようになって、これがセパレータに析出するようになる。このため、内部抵抗が増大して放電性が低下し、結局、容量維持率が低下したと考えられる。
これらのことから、組成式MmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のMn量(c値)は0.05以上で、0.20以下であるのが望ましいということができる。
【0037】
6.添加化合物の検討
上述した例においては、タングステン化合物として三酸化タングステン(WO3)を正極活物質に添加する例について説明したが、タングステン化合物として二酸化タングステン(WO2)、タンタル化合物として五酸化二タンタル(Ta2O5)を正極活物質に添加した場合についても検討した。そこで、上述と同様にして調製された正極活物質に所定量の二酸化タングステン(WO2)を添加し、これに結着剤としての40質量%のHPCディスパージョン液を混合して活物質スラリーを調製した。ついで、発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる多孔性電極基板に、上述のように調製した活物質スラリーを所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル電極b1〜b7を作製した。
【0038】
ここで、正極活物質質量に対して、0.05質量%のWO2を添加して作製した非焼結式ニッケル電極を正極b1とした。同様に、0.1質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b2とし、0.3質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b3とし、0.5質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b4とし、1.0質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b5とし、3.0質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b6とし、5.0質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b7とした。
【0039】
また、上述と同様にして調製された正極活物質に所定量の五酸化二タンタル(Ta2O5)を添加し、これに結着剤としての40質量%のHPCディスパージョン液を混合して活物質スラリーを調製した。ついで、発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる多孔性電極基板に、上述のように調製した活物質スラリーを所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル電極c1〜c7を作製した。
【0040】
ここで、正極活物質質量に対して、0.05質量%のTa2O5を添加して作製した非焼結式ニッケル電極を正極c1とした。同様に、0.1質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c2とし、0.3質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c3とし、0.5質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c4とし、1.0質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c5とし、3.0質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c6とし、5.0質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c7とした。
さらに、上述と同様にして調製された正極活物質に0.5質量%のWO2と0.5質量%のTa2O5を添加して非焼結式ニッケル電極を作製し、これを正極d1とした。
【0041】
ついで、上述のように作製した非焼結式ニッケル正極b1〜b7,c1〜c7およびd1を用い、これらと水素吸蔵合金負極e2とを用いて、上述と同様にして公称容量1000mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池E1〜E2,F1〜F7およびG1をそれぞれ作製した。ここで、正極b1を用いたものを電池E1とし、正極b2を用いたものを電池E2とし、正極b3を用いたものを電池E3とし、正極b4を用いたものを電池E4とし、正極b5を用いたものを電池E5とし、正極b6を用いたものを電池E6とし、正極b7を用いたものを電池E7とした。
【0042】
また、正極c1を用いたものを電池F1とし、正極c2を用いたものを電池F2とし、正極c3を用いたものを電池F3とし、正極c4を用いたものを電池F4とし、正極c5を用いたものを電池F5とし、正極c6を用いたものを電池F6とし、正極c7を用いたものを電池F7とした。さらに、正極d1を用いたものを電池G1とした。そして、これらの電池E1〜E2,F1〜F7およびG1を用いて、上述と同様に25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池の初期放電容量(mAh)を求めると下記の表3に示すような結果が得られた。
【0043】
また、上述と同様に60℃の高温雰囲気で、100mAの充電電流で16時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を求めて、これを容量維持率(高温サイクル特性)として求めると、下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3には、上述した電池Yの結果も併せて示している。また、表3の結果に基づいて、二酸化タングステン(WO2)および五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量(質量%)を横軸にプロットし、容量維持率(サイクル)を縦軸にプロットして、二酸化タングステン(WO2)および五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係をグラフにして表すと図3に示すような結果となった。なお、図3において、電池E1〜E7をEで表し、電池F1〜F7をFで表している。
【0044】
【表3】
【0045】
上記表3および図3の結果から明らかなように、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)が無添加の正極xを用いた電池Yにおいては、容量維持率(高温サイクル特性)が265サイクルと小さいのに対して、二酸化タングステン(WO2)を添加した正極b1〜b7を用いた電池E1〜E7、五酸化二タンタル(Ta2O5)を添加した正極c1〜c7を用いた電池F1〜F7および二酸化タングステン(WO2)と五酸化二タンタル(Ta2O5)を添加した正極d1を用いた電池G1においては、容量維持率(高温サイクル特性)が大きいことが分かる。
【0046】
これは、正極活物質に二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)が添加されていると、三酸化タングステン(WO3)の場合と同様に、W−Mn化合物あるいはTa−Mn化合物が生成されて、高温雰囲気下において充放電させた場合においても、放電時にナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されるのが抑制されて、電解液中に溶出するのが抑制され、導電ネットワークが維持できて、容量維持率が向上したと考えられる。
【0047】
この場合、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が0.05質量%の正極b1,c1を用いた電池E1,F1においては、容量維持率(高温サイクル特性)が393,370サイクルと電池E2〜E7,F2〜F7に比べて低下していることが分かる。これは、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が0.1質量%よりも減少すると、コバルト化合物が酸化されたオキシ水酸化コバルトが水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶解し、導電ネットワークが崩れやすくなって容量維持率が低下したと考えられる。
【0048】
また、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が5.0質量%の正極b7,c7を用いた電池E7,F7においては、初期放電容量が815,812mAhと電池E1〜E6,F1〜F6に比べて低下していることが分かる。これは、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が3.0質量%よりも増加すると、正極活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に減少して、初期放電容量が減少したと考えられる。
【0049】
これらのことから、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量は、三酸化タングステン(WO3)の場合と同様に、正極活物質となる水酸化ニッケル量に対して、0.1質量%以上で、3.0質量%以下にするのが望ましいということができる。なお、二酸化タングステン(WO2)と五酸化二タンタル(Ta2O5)を同時に添加した正極d1を用いた電池G1においても、良好な高温サイクル特性を得ることができた。このことから、正極活物質にタングステン化合物とタングステン化合物の両方を添加しても効果が得られることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
上述したように、本発明のニッケル−水素蓄電池においては、正極活物質にタングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方が添加されているので、W−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されることとなる。このため、高温下で充放電を繰り返した場合でも、コバルトが電解液中へ溶出するのが抑制されて、導電ネットワークが崩壊するのを保護できるようになる。この結果、活物質間の導電性が維持できて、放電容量が低下するのを防止できるようになる。また、活物質の表面がコバルト化合物で被覆されていると、活物質粒子の導電性が向上するので、高容量のニッケル−水素蓄電池が得られるようになる。
【0051】
この場合、負極の水素吸蔵合金中のMnの含有量(水素吸蔵合金をMmNiaCobMncAldで表した場合のc値)が0.05未満(c<0.05)であると、W−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されなくなって、ナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶出するようになる。このため、導電ネットワークが崩壊して、容量維持率が低下する。一方、Mnの含有量(c値)が0.2を超える(c>0.2)ようになると、Zn−Mn化合物が生成されるようになって、これがセパレータに再析出して内部抵抗が増大するようになって、放電性が低下する。このため、負極の水素吸蔵合金中のMnの含有量(c値)は0.05以上で0.2以下(0.05≦c≦0.2)に規制している。
【0052】
なお、上述した実施の形態においては、負極に用いられる水素吸蔵合金としては、MmNiaCobMncAldにおいてa+b+c+d=5.0となるように各金属の配合量を調整したものを用いる例について説明したが、負極に用いられる水素吸蔵合金としては、MmNiaCobMncAldにおいて4.4≦a+b+c+d≦5.5となるように各金属の配合量を調整したものを用いるようにすればよい。
【0053】
また、上述した実施の形態においては、正極活物質として水酸化ニッケルを用い、この水酸化ニッケルの表面に水酸化コバルトの被覆を設けるようにした例について説明したが、正極活物質として水酸化ニッケルを高次化した高次水酸化ニッケルを用いるようにするとさらに高容量が得られるようになる。この場合、水酸化ニッケルを溶出させた後、60℃の温度に維持された水酸化ナトリウム水溶液中で撹拌しながら、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(酸化剤)を所定量滴下して、主成分の水酸化ニッケルを酸化(高次化)させて高次水酸化ニッケルとすればよい。
【0054】
また、上述した実施の形態においては、水酸化ニッケルの表面に水酸化コバルトを高次化した高次水酸化コバルトの被覆層を設ける例について説明したが、単に水酸化コバルトの被覆層を設けるようにしてもよい。また、上述した実施の形態においては、非焼結式ニッケル電極とするために、導電性芯体として発泡ニッケルを用いる例について説明したが、発泡ニッケル以外の導電性芯体として、フェルト状金属繊維多孔体あるいはパンチングメタルを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】三酸化タングステン(WO3)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係を示す図である。
【図2】水素吸蔵合金をMmNiaCobMncAldで表した場合のMnの含有量(c値)と容量維持率(サイクル)の関係を示す図である。
【図3】二酸化タングステン(WO2)、五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極と、水素吸蔵合金を主成分とする負極活物質を含有した負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル−水素蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ニッケル−水素蓄電池をはじめとするアルカリ蓄電池においては、市場が拡大するに伴って、小型の機器のみならず、電動工具、アシスト自転車、電気自動車などの大電流用途にも需要が拡大し、大型化、高容量化、ハイパワー化の需要、要望が高まった。このような用途の拡大に伴い、この種のアルカリ蓄電池においては、必然的に高温雰囲気下で使用される機会が増大するようになった。ところが、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極を用いたアルカリ蓄電池にあっては、高温時に充電効率が低下するという問題があった。
【0003】
そこで、正極活物質である水酸化ニッケルにタンタル化合物やタングステン化合物を添加することにより、高温時における充電効率を向上させる方法が特許文献1にて提案されるようになった。この特許文献1にて提案された方法においては、酸素発生電位を貴にシフトさせるため、アルカリ蓄電池の充電末期に発生する競争反応である水の電気分解を抑制することができるようになる。この結果、高温時の充電効率をより効果的に高めることが可能となる。
【特許文献1】
特開2001−202956号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、水酸化ニッケルを正極活物質とするニッケル正極の活物質利用率を向上させて高容量化を達成するために、水酸化ニッケルの表面を金属コバルトやコバルト化合物や高次コバルト化合物で被覆することが行われている。このように、水酸化ニッケルの表面を導電性が高い金属コバルトやコバルト化合物で被覆したり、コバルト化合物よりもさらに導電性が高い高次コバルト化合物で被覆すると、活物質間に導電ネットワークが形成されるようになる。これにより、活物質の利用率が向上して、高容量化が達成できるようになる。
【0005】
しかしながら、上述のように水酸化ニッケルにタンタル化合物やタングステン化合物を添加したニッケル正極を用いたニッケル−水素蓄電池を高温雰囲気下で充放電を繰り返すと、水酸化ニッケル表面を被覆している金属コバルトやコバルト化合物が水酸化コバルトに還元されることとなる。金属コバルトやコバルト化合物が水酸化コバルトに還元されると、金属コバルトやコバルト化合物が電解液中に溶出するようになる。このため、導電ネットワークが崩壊して、活物質間の導電性が低下することとなる。
【0006】
また、負極に用いられる水素吸蔵合金においては、水素吸蔵合金中にマンガン(Mn)やアルミニウム(Al)等が添加されているが、このような水素吸蔵合金電極を用いたニッケル−水素蓄電池を高温雰囲気下で充放電を繰り返すと、特に、マンガン(Mn)が電解液中に溶出するようになる。そして、溶出したマンガン(Mn)は水素吸蔵合金表面あるいはセパレータに水酸化物として再析出して内部抵抗が増大し、導電性が低下する。このように、高温サイクル時には、正極、負極の導電性の低下に伴い、放電容量が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はこのような高温雰囲気下で充放電を繰り返すと放電容量が低下するという問題点を解消するためになされたものであって、高温雰囲気下で充放電を繰り返しても、コバルトの電解液への溶出を抑制するとともに、マンガンの電解液への溶出を抑制して、放電容量の低下が少ないニッケル−水素蓄電池を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のニッケル−水素蓄電池は、正極はコバルト化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、タングステン化合物、タンタル化合物のいずれか一方あるいは両方が添加されており、負極は組成式がMmNiaCobMncAldで表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、NiとCoとMnとAlの組成の和(a+b+c+d)が4.4≦a+b+c+d≦5.4で、Mnの組成(c)が0.05≦c≦0.2の関係を有していることを特徴とする。
【0009】
ここで、正極活物質にタングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方が添加されていると、正極中にW−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されることとなる。このようにW−Mn化合物、Ta−Mn化合物がコバルト近傍に存在するようになると、コバルトの導電ネットワークが強固なものとなり、高温下で充放電を繰り返した場合でも、コバルトが電解液中へ溶出するのが抑制されて、導電ネットワークが崩壊するのを保護できるようになる。この結果、活物質間の導電性が維持できて、放電容量が低下するのを防止できるようになる。また、活物質の表面がコバルト化合物で被覆されていると、活物質粒子の導電性が向上するので、高容量のニッケル−水素蓄電池が得られるようになる。
【0010】
この場合、負極の水素吸蔵合金中のMn量(水素吸蔵合金をMmNiaCobMncAldで表した場合のc値でMnの含有割合となる)が0.05未満(c<0.05)であると、水素吸蔵合金から溶出するMn量が減少し、コバルトの導電ネットワークの崩壊を抑制するW−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されなく、もしくは不足するようになって、コバルトの導電ネットワークの崩壊を抑制する効果が得られない。一方、Mn量(c値)が0.2を超える(c>0.2)ようになると、WやTaと化合物を生成できない過剰のMnが水素吸蔵合金から溶出するようになり、例えば正極にZnを含む場合、溶出したZnと化合物を作り、Zn−Mn化合物が形成されるようになる。さらに、これがセパレータ等に再析出して、内部抵抗が増大するようになって、放電性が低下する。このため、負極の水素吸蔵合金中のMn量(c値)は0.05以上で0.2以下(0.05≦c≦0.2)に規制する必要がある。
【0011】
なお、タングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方の添加量が、水酸化ニッケル(正極活物質)に対して0.1質量%未満であると、コバルトが電解液中へ溶出するのを抑制する効果を発揮することができなく、導電性を維持することができなくなる。一方、タングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方の添加量が、水酸化ニッケル(正極活物質)に対して3.0質量%を超えるようになると、正極活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に減少して、放電容量が減少するようになる。このため、タングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方の添加量は、水酸化ニッケルの質量に対して0.1質量%以上で3.0質量%以下であるのが望ましい。
【0012】
また、タングステン化合物は三酸化タングステン、二酸化タングステのいずれか一方あるいは両方から選択して用いるのが望ましい。また、タンタル化合物は五酸化二タンタルであるのが望ましい。さらに、コバルト化合物が結晶性が乱れたアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物(Coの平均価数が2を越える化合物)であると、このアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物はさらに導電性に優れているので、さらに高容量のニッケル−水素蓄電池が得られるようになるので好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0014】
1.正極活物質の調製
金属ニッケル100に対して亜鉛4質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケルと硫酸亜鉛と硫酸コバルトとを混合して混合水溶液とした。この混合水溶液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、反応溶液中のpHを13〜14に安定させて、水酸化ニッケルを主体とする水酸化物を析出させた。この水酸化ニッケルを主体とする水酸化物が析出した水溶液中に、反応中のpHを9〜10に維持するようにして、硫酸コバルト水溶液を添加した。
【0015】
これにより、主成分が水酸化ニッケルである球状水酸化物粒子を結晶核として、この結晶核の周囲に水酸化コバルト化合物が析出した複合粒子となる。なお、この複合粒子は球状水酸化物粒子に対して、水酸化コバルト化合物の質量割合が10質量%となるように析出させている。ついで、この複合粒子を採取して水洗、乾燥して水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトの析出層を形成した複合粒子粉末を得た。
【0016】
この後、100℃の加熱空気の雰囲気中で、この複合粒子粉末に対して、25質量%の水酸化ナトリウム溶液を噴霧した。これにより、水酸化コバルトは結晶性が乱れて高次化されたナトリウムイオンを含む高次コバルト化合物になる。ついで、この複合粒子粉末を10倍量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥することにより、アルカリカチオン(ナトリウムイオン)を含有するコバルト被覆層を有する複合粒子粉末を調製し、正極活物質とした。
【0017】
2.ニッケル電極の作製
ついで、上述のようにして調製された正極活物質に所定量の三酸化タングステン(WO3)を添加し、これに結着剤としての40質量%のHPCディスパージョン液を混合して活物質スラリーを調製した。ついで、発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる多孔性電極基板に、上述のように調製した活物質スラリーを所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル電極a1〜a7を作製した。
【0018】
ここで、正極活物質質量に対して、0.05質量%のWO3を添加して作製した非焼結式ニッケル電極を正極a1とした。同様に、0.1質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a2とし、0.3質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a3とし、0.5質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a4とし、1.0質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a5とし、3.0質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a6とし、5.0質量%のWO3を添加した非焼結式ニッケル電極を正極a7とした。また、三酸化タングステン(WO3)が無添加の非焼結式ニッケル電極を作製し、これを正極xとした。
【0019】
3.水素吸蔵合金電極の作製
まず、ミッシュメタル(Mm)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびアルミニウム(Al)を所定のモル比になるようにそれぞれ混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉で誘導加熱して合金溶湯とした。この合金溶湯を公知の方法で鋳型に流し込み、冷却して、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。この水素吸蔵合金インゴットを機械的粉砕法により、平均粒子径が約60μmになるまで粉砕した。
【0020】
この場合、MmNiaCobMncAldにおいて、a+b+c+d=5.0となるように配合量を調整した。ついで、これらの各水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、結着剤としての5質量%のポリエチレンオキサイド(PEO)の水溶液を20質量部とを混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストをパンチングメタルからなる芯体の両面に塗布し、室温で乾燥させた後、所定の厚みに圧延し、所定の寸法に切断して水素吸蔵合金負極をそれぞれ作製した。
【0021】
なお、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:4.05:0.60:0.05(c=0.05):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi4.05Co0.60Mn0.05Al0.30)を用いたものを負極e1とした。同様に、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:4.00:0.60:0.10(c=0.10):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi4.00Co0.60Mn0.10Al0.30)を用いたものを負極e2とし、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.90:0.60:0.20(c=0.20):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi3.90Co0.60Mn0.20Al0.30)を用いたものを負極e3とした。
【0022】
4.ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した非焼結式ニッケル正極a1〜a7およびxを用い、これらと上述のように作製した水素吸蔵合金負極e1〜e3とをポリプロピレン製あるいはナイロン製の不織のセパレータを介して巻回して、渦巻状の電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量1000mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池をそれぞれ作製した。
【0023】
ここで、負極e1を用いるとともに、正極a1を用いたものを電池A1とした。同様に、a2を用いたものを電池A2とし、a3を用いたものを電池A3とし、a4を用いたものを電池A4とし、a5を用いたものを電池A5とし、a6を用いたものを電池A6とし、a7を用いたものを電池A7とした。また、負極e2を用いるとともに、a1を用いたものを電池B1とし、a2を用いたものを電池B2とし、a3を用いたものを電池B3とし、a4を用いたものを電池B4とし、a5を用いたものを電池B5とし、a6を用いたものを電池B6とし、正極a7を用いたものを電池B7とした。
【0024】
さらに、負極e3を用いるとともに、a1を用いたものを電池C1とし、a2を用いたものを電池C2とし、a3を用いたものを電池C3とし、a4を用いたものを電池C4とし、a5を用いたものを電池C5とし、a6を用いたものを電池C6とし、正極a7を用いたものを電池C7とした。また、三酸化タングステン(WO3)が無添加の正極xを用いるとともに、負極e1を用いたものを電池Xとし、負極e2を用いたものを電池Yとし、負極e3を用いたものを電池Zとした。
【0025】
ついで、上述のように作製した電池A1〜A7,B1〜B7,C1〜C7およびX,Y,Zを用いて、これらの各電池を25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池の初期放電容量(mAh)を求めると下記の表1に示すような結果が得られた。また、上述のように作製した電池A1〜A7,B1〜B7,C1〜C7およびX,Y,Zを用いて、これらの各電池を60℃の高温雰囲気で、100mAの充電電流で16時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、これを1サイクルとする充放電サイクル試験を行った。
【0026】
そして、その放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を求めて、これを容量維持率(高温サイクル特性)として求めると、下記の表1に示すような結果が得られた。また、表1の結果に基づいて、三酸化タングステン(WO3)の添加量(質量%)を横軸にプロットし、容量維持率(サイクル)を縦軸にプロットして、三酸化タングステン(WO3)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係をグラフにして表すと図1に示すような結果となった。なお、図1において、電池A1〜A7をAで表し、電池B1〜B7をBで表し、電池C1〜C7をCで表している。
【0027】
【表1】
【0028】
上記表1および図1の結果から明らかなように、三酸化タングステン(WO3)が無添加の正極xを用いた電池X,Y,Zにおいては、容量維持率(高温サイクル特性)が252〜265サイクルと小さいのに対して、三酸化タングステン(WO3)を添加した正極a1〜a7を用いた電池A1〜A7,B1〜B7,C1〜C7においては、容量維持率(高温サイクル特性)が大きいことが分かる。
これは、正極活物質に三酸化タングステン(WO3)が添加されていると、W−Mn化合物が生成されて、高温雰囲気下において充放電させた場合においても、放電時にナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されるのが抑制されて、電解液中に溶出するのが抑制され、導電ネットワークが維持できて、容量維持率が向上したと考えられる。
【0029】
この場合、三酸化タングステン(WO3)の添加量が0.05質量%の正極a1を用いた電池A1,B1,C1においては、容量維持率(高温サイクル特性)が390,402,387サイクルと電池A2〜A7,B2〜B7,C2〜C7に比べて低下していることが分かる。これは、三酸化タングステン(WO3)の添加量が0.1質量%よりも減少すると、コバルト化合物が酸化されたオキシ水酸化コバルトが水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶解し、導電ネットワークが崩れやすくなって容量維持率が低下したと考えられる。
【0030】
また、三酸化タングステン(WO3)の添加量が5.0質量%の正極a7を用いた電池A7,B7,C7においては、初期放電容量が825,817,816mAhと電池A1〜A6,B1〜B6,C1〜C6に比べて低下していることが分かる。これは、三酸化タングステン(WO3)の添加量が3.0質量%よりも増加すると、正極活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に減少して、初期放電容量が減少したと考えられる。
これらのことから、三酸化タングステン(WO3)の添加量は、正極活物質となる水酸化ニッケル量に対して、0.1質量%以上で、3.0質量%以下にするのが望ましいということができる。
【0031】
5.水素吸蔵合金(MmNiaCobMncAld)のMn量(c値)の検討
ついで、水素吸蔵合金(MmNiaCobMncAld)中のMnの含有量(c値)について検討した。そこで、まず、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:4.07:0.60:0.03(c=0.03):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi4.07Co0.60Mn0.03Al0.30)を用いて負極e4を作製するとともに、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.80:0.60:0.30(c=0.30):0.30となる水素吸蔵合金粉末(MmNi3.80Co0.60Mn0.30Al0.30)を用いて負極e5を作製した。
【0032】
ついで、これらの負極e4,e5を用いるとともに、三酸化タングステン(WO3)の添加量が0.5質量%の正極a4を用いて、上述と同様にしてニッケル−水素蓄電池D1(負極e4を用いたもの)およびニッケル−水素蓄電池D2(負極e5を用いたもの)を作製した。そして、これらの電池D1,D2を用いて、上述と同様に25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池の初期放電容量(mAh)を求めると下記の表2に示すような結果が得られた。
【0033】
また、上述と同様に60℃の高温雰囲気で、100mAの充電電流で16時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を求めて、これを容量維持率(高温サイクル特性)として求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、下記の表2には、上述した電池A4,B4,C4の結果も併せて示している。また、表2の結果に基づいて、Mnの含有量(c値)を横軸にプロットし、容量維持率(サイクル)を縦軸にプロットして、Mnの含有量(c値)と容量維持率(サイクル)の関係をグラフにして表すと図2に示すような結果となった。
【0034】
【表2】
【0035】
上記表2および図2の結果から明らかなように、Mnの含有量(c値)が0.03である水素吸蔵合金(MmNi4.07Co0.60Mn0.03Al0.30)を含有する負極e4を用いた電池D1およびMnの含有量(c値)が0.30である水素吸蔵合金(MmNi3.80Co0.60Mn0.30Al0.30)を含有する負極e5を用いた電池D2においては、容量維持率が405サイクルおよび398サイクルと小さいことが分かる。これは、組成式MmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のMnの含有量(c値)が0.05未満であると、W−Mn化合物が生成されにくいために、ナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶出するようになる。このため、導電ネットワークが崩壊して、容量維持率が低下したと考えられる。
【0036】
また、組成式MmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のMnの含有量(c値)が0.20を超えるようになると、Zn−Mn化合物が生成されるようになって、これがセパレータに析出するようになる。このため、内部抵抗が増大して放電性が低下し、結局、容量維持率が低下したと考えられる。
これらのことから、組成式MmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のMn量(c値)は0.05以上で、0.20以下であるのが望ましいということができる。
【0037】
6.添加化合物の検討
上述した例においては、タングステン化合物として三酸化タングステン(WO3)を正極活物質に添加する例について説明したが、タングステン化合物として二酸化タングステン(WO2)、タンタル化合物として五酸化二タンタル(Ta2O5)を正極活物質に添加した場合についても検討した。そこで、上述と同様にして調製された正極活物質に所定量の二酸化タングステン(WO2)を添加し、これに結着剤としての40質量%のHPCディスパージョン液を混合して活物質スラリーを調製した。ついで、発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる多孔性電極基板に、上述のように調製した活物質スラリーを所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル電極b1〜b7を作製した。
【0038】
ここで、正極活物質質量に対して、0.05質量%のWO2を添加して作製した非焼結式ニッケル電極を正極b1とした。同様に、0.1質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b2とし、0.3質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b3とし、0.5質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b4とし、1.0質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b5とし、3.0質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b6とし、5.0質量%のWO2を添加した非焼結式ニッケル電極を正極b7とした。
【0039】
また、上述と同様にして調製された正極活物質に所定量の五酸化二タンタル(Ta2O5)を添加し、これに結着剤としての40質量%のHPCディスパージョン液を混合して活物質スラリーを調製した。ついで、発泡ニッケル(例えば、多孔度が95%で、平均孔径が200μmのもの)からなる多孔性電極基板に、上述のように調製した活物質スラリーを所定の充填密度になるように充填し、乾燥後、所定の厚みになるように圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル電極c1〜c7を作製した。
【0040】
ここで、正極活物質質量に対して、0.05質量%のTa2O5を添加して作製した非焼結式ニッケル電極を正極c1とした。同様に、0.1質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c2とし、0.3質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c3とし、0.5質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c4とし、1.0質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c5とし、3.0質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c6とし、5.0質量%のTa2O5を添加した非焼結式ニッケル電極を正極c7とした。
さらに、上述と同様にして調製された正極活物質に0.5質量%のWO2と0.5質量%のTa2O5を添加して非焼結式ニッケル電極を作製し、これを正極d1とした。
【0041】
ついで、上述のように作製した非焼結式ニッケル正極b1〜b7,c1〜c7およびd1を用い、これらと水素吸蔵合金負極e2とを用いて、上述と同様にして公称容量1000mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池E1〜E2,F1〜F7およびG1をそれぞれ作製した。ここで、正極b1を用いたものを電池E1とし、正極b2を用いたものを電池E2とし、正極b3を用いたものを電池E3とし、正極b4を用いたものを電池E4とし、正極b5を用いたものを電池E5とし、正極b6を用いたものを電池E6とし、正極b7を用いたものを電池E7とした。
【0042】
また、正極c1を用いたものを電池F1とし、正極c2を用いたものを電池F2とし、正極c3を用いたものを電池F3とし、正極c4を用いたものを電池F4とし、正極c5を用いたものを電池F5とし、正極c6を用いたものを電池F6とし、正極c7を用いたものを電池F7とした。さらに、正極d1を用いたものを電池G1とした。そして、これらの電池E1〜E2,F1〜F7およびG1を用いて、上述と同様に25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から各電池の初期放電容量(mAh)を求めると下記の表3に示すような結果が得られた。
【0043】
また、上述と同様に60℃の高温雰囲気で、100mAの充電電流で16時間充電した後、500mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%に低下するまでのサイクル数を求めて、これを容量維持率(高温サイクル特性)として求めると、下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3には、上述した電池Yの結果も併せて示している。また、表3の結果に基づいて、二酸化タングステン(WO2)および五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量(質量%)を横軸にプロットし、容量維持率(サイクル)を縦軸にプロットして、二酸化タングステン(WO2)および五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係をグラフにして表すと図3に示すような結果となった。なお、図3において、電池E1〜E7をEで表し、電池F1〜F7をFで表している。
【0044】
【表3】
【0045】
上記表3および図3の結果から明らかなように、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)が無添加の正極xを用いた電池Yにおいては、容量維持率(高温サイクル特性)が265サイクルと小さいのに対して、二酸化タングステン(WO2)を添加した正極b1〜b7を用いた電池E1〜E7、五酸化二タンタル(Ta2O5)を添加した正極c1〜c7を用いた電池F1〜F7および二酸化タングステン(WO2)と五酸化二タンタル(Ta2O5)を添加した正極d1を用いた電池G1においては、容量維持率(高温サイクル特性)が大きいことが分かる。
【0046】
これは、正極活物質に二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)が添加されていると、三酸化タングステン(WO3)の場合と同様に、W−Mn化合物あるいはTa−Mn化合物が生成されて、高温雰囲気下において充放電させた場合においても、放電時にナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されるのが抑制されて、電解液中に溶出するのが抑制され、導電ネットワークが維持できて、容量維持率が向上したと考えられる。
【0047】
この場合、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が0.05質量%の正極b1,c1を用いた電池E1,F1においては、容量維持率(高温サイクル特性)が393,370サイクルと電池E2〜E7,F2〜F7に比べて低下していることが分かる。これは、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が0.1質量%よりも減少すると、コバルト化合物が酸化されたオキシ水酸化コバルトが水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶解し、導電ネットワークが崩れやすくなって容量維持率が低下したと考えられる。
【0048】
また、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が5.0質量%の正極b7,c7を用いた電池E7,F7においては、初期放電容量が815,812mAhと電池E1〜E6,F1〜F6に比べて低下していることが分かる。これは、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量が3.0質量%よりも増加すると、正極活物質となる水酸化ニッケル量が相対的に減少して、初期放電容量が減少したと考えられる。
【0049】
これらのことから、二酸化タングステン(WO2)や五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量は、三酸化タングステン(WO3)の場合と同様に、正極活物質となる水酸化ニッケル量に対して、0.1質量%以上で、3.0質量%以下にするのが望ましいということができる。なお、二酸化タングステン(WO2)と五酸化二タンタル(Ta2O5)を同時に添加した正極d1を用いた電池G1においても、良好な高温サイクル特性を得ることができた。このことから、正極活物質にタングステン化合物とタングステン化合物の両方を添加しても効果が得られることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
上述したように、本発明のニッケル−水素蓄電池においては、正極活物質にタングステン化合物、タンタル化合物あるいはその両方が添加されているので、W−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されることとなる。このため、高温下で充放電を繰り返した場合でも、コバルトが電解液中へ溶出するのが抑制されて、導電ネットワークが崩壊するのを保護できるようになる。この結果、活物質間の導電性が維持できて、放電容量が低下するのを防止できるようになる。また、活物質の表面がコバルト化合物で被覆されていると、活物質粒子の導電性が向上するので、高容量のニッケル−水素蓄電池が得られるようになる。
【0051】
この場合、負極の水素吸蔵合金中のMnの含有量(水素吸蔵合金をMmNiaCobMncAldで表した場合のc値)が0.05未満(c<0.05)であると、W−Mn化合物やTa−Mn化合物が生成されなくなって、ナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されて、アルカリ電解液中に溶出するようになる。このため、導電ネットワークが崩壊して、容量維持率が低下する。一方、Mnの含有量(c値)が0.2を超える(c>0.2)ようになると、Zn−Mn化合物が生成されるようになって、これがセパレータに再析出して内部抵抗が増大するようになって、放電性が低下する。このため、負極の水素吸蔵合金中のMnの含有量(c値)は0.05以上で0.2以下(0.05≦c≦0.2)に規制している。
【0052】
なお、上述した実施の形態においては、負極に用いられる水素吸蔵合金としては、MmNiaCobMncAldにおいてa+b+c+d=5.0となるように各金属の配合量を調整したものを用いる例について説明したが、負極に用いられる水素吸蔵合金としては、MmNiaCobMncAldにおいて4.4≦a+b+c+d≦5.5となるように各金属の配合量を調整したものを用いるようにすればよい。
【0053】
また、上述した実施の形態においては、正極活物質として水酸化ニッケルを用い、この水酸化ニッケルの表面に水酸化コバルトの被覆を設けるようにした例について説明したが、正極活物質として水酸化ニッケルを高次化した高次水酸化ニッケルを用いるようにするとさらに高容量が得られるようになる。この場合、水酸化ニッケルを溶出させた後、60℃の温度に維持された水酸化ナトリウム水溶液中で撹拌しながら、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(酸化剤)を所定量滴下して、主成分の水酸化ニッケルを酸化(高次化)させて高次水酸化ニッケルとすればよい。
【0054】
また、上述した実施の形態においては、水酸化ニッケルの表面に水酸化コバルトを高次化した高次水酸化コバルトの被覆層を設ける例について説明したが、単に水酸化コバルトの被覆層を設けるようにしてもよい。また、上述した実施の形態においては、非焼結式ニッケル電極とするために、導電性芯体として発泡ニッケルを用いる例について説明したが、発泡ニッケル以外の導電性芯体として、フェルト状金属繊維多孔体あるいはパンチングメタルを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】三酸化タングステン(WO3)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係を示す図である。
【図2】水素吸蔵合金をMmNiaCobMncAldで表した場合のMnの含有量(c値)と容量維持率(サイクル)の関係を示す図である。
【図3】二酸化タングステン(WO2)、五酸化二タンタル(Ta2O5)の添加量(質量%)と容量維持率(サイクル)の関係を示す図である。
Claims (4)
- 水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極と、水素吸蔵合金を主成分とする負極活物質を含有した負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル−水素蓄電池であって、
前記正極はコバルト化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、タングステン化合物、タンタル化合物のいずれか一方あるいは両方が添加されており、
前記負極は組成式がMmNiaCobMncAldで表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、NiとCoとMnとAlの組成の和(a+b+c+d)が4.4≦a+b+c+d≦5.4で、Mnの組成(c)が0.05≦c≦0.2の関係を有していることを特徴とするニッケル−水素蓄電池。 - 前記タングステン化合物、タンタル化合物のいずれか一方あるいは両方の添加量は水酸化ニッケルの質量に対して0.1質量%以上で3.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池。
- 前記タングステン化合物は三酸化タングステン、二酸化タングステのいずれか一方あるいは両方であり、
前記タンタル化合物は五酸化二タンタルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のニッケル−水素蓄電池。 - 前記コバルト化合物は結晶性が乱れ、かつアルカリカチオンを含有する高次コバルト化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のニッケル−水素蓄電池。
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-
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