JP6262202B2 - ブレーキ制御装置およびそれを備える鞍乗型車両 - Google Patents

ブレーキ制御装置およびそれを備える鞍乗型車両 Download PDF

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Description

本発明は、車輪に与える制動力を調整するブレーキ制御装置およびそれを備える鞍乗型車両に関する。
ABS(Antilock Brake System:アンチロックブレーキシステム)は、車輪の回転を自動制御することにより、急ブレーキ時のスリップを回避し、車両の制動距離の短縮と制動時のハンドル操作とを可能にする。近年では、自動四輪車に限らず、自動二輪車等の種々の車両にABSが搭載されている。
車両の旋回走行時には、車輪と路面との間に横力が発生する。十分な横力が発生しない場合には、車両の横滑りが発生する。特に、自動二輪車は、旋回走行時に横方向に傾斜する。自動二輪車の傾斜角(バンク角)が大きくなるほど、横滑りが発生しやすい。そこで、自動二輪車等の車両の旋回走行時に横滑りの発生を抑制するための種々の技術が提案されている。
特許文献1のブレーキ制御装置においては、ヨーレートセンサにより測定されるヨーレートが時間積分されることにより自動二輪車の横方向の傾斜角(バンク角)が決定される。アンチロックブレーキ動作に用いられる滑りしきい値は、自動二輪車の傾斜角が大きくなるほど小さくなるように設定される。この場合、自動二輪車の傾斜角が増加したときにブレーキ作用が早めに低下する。
また、特許文献2のアンチロックブレーキ装置においては、アンチロックブレーキ動作に用いられる目標スリップ率が、自動二輪車のバンク角が大きくなるほど小さくなるように設定される。この場合、バンク角が大きくなるにつれて目標スリップ率が抑制される。
また、特許文献3のABSにおいては、オートバイの傾斜位置の測定結果に応答してアンチロックブレーキ動作に用いられる有効限界値(ブレーキ時にブレーキ圧を減圧させ始めるための値)が変化する。例えば、オートバイの傾斜の増大に伴って、ABSの有効限界値が小さく設定される。この場合、オートバイの横方向の傾斜がより大きくなる前にブレーキ圧が徐々に減少される。
さらに、特許文献4の滑り防止制御システムにおいては、自動二輪車の傾斜姿勢角度が算出される。算出された傾斜姿勢角度が危険なしきい値以上になる場合に、期待すべきロック圧力に達する前に、アンチロックブレーキシステムの調整器により前輪の制動圧力が保持される。
特開2004−155412号公報 実登2590024号公報 特開平2−216355号公報 特開平7−2077号公報
上記の特許文献1〜4に記載された技術によれば、自動二輪車の傾斜角に応じてABSが制御される。しかしながら、自動二輪車の旋回走行時に車輪と路面との間に発生可能な最大横力は、路面および車輪の状態に依存して変化する。例えば、路面が濡れている場合または車輪の表面が磨耗している場合には最大横力が小さくなる。そのため、特許文献1〜4に記載された技術によりABSが制御された場合でも、路面または車輪の状態によっては、車両の横滑りが抑制されない場合がある。したがって、旋回走行時の制動操作には、乗員の熟練度が要求される。
本発明の目的は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことを可能にするブレーキ制御装置およびそれを備える鞍乗型車両を提供することである。
(1)第1の発明に係るブレーキ制御装置は、第1の車輪を有するとともに傾斜して走行可能な鞍乗型車両のブレーキ制御装置であって、第1の車輪に制動力を与える第1の制動装置と、第1の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成される縦滑り検出装置と、鞍乗型車両の傾斜角、車体速度、ヨーレート、ロールレートおよび横加速度に基づいて第1の車輪の横滑り加速度を算出するように構成される横滑り算出装置と、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪の縦滑りの程度が目標となる縦滑りの程度である第1の目標縦滑り程度に近づくように第1の制動装置を制御する第1のアンチロックブレーキ動作を実行する制御部とを備え、制御部は、第1の車輪の横滑りを抑制するように第1のアンチロックブレーキ動作を補正する第1の補正処理として、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように第1のアンチロックブレーキ動作を補正する。
そのブレーキ制御装置においては、縦滑り検出装置により第1の車輪の縦滑りの程度が検出され、横滑り算出装置により第1の車輪の横滑り加速度が算出される。第1の車輪の制動時に制御部により第1のアンチロックブレーキ動作が実行される。第1のアンチロックブレーキ動作においては、検出される第1の車輪の縦滑りの程度が第1の目標縦滑り程度に近づくように第1の制動装置が制御される。
このとき、第1の補正処理が行われる。第1の補正処理では、横滑り算出装置の算出結果に基づいて第1の車輪の横滑りが抑制されるように第1のアンチロックブレーキ動作が補正される。
第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きい場合には、第1の補正処理における補正量を大きくすることにより、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを抑制することができる。また、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが小さい場合には、第1の補正処理における補正量を小さくすることにより、第1の車輪の横滑りを抑制しつつ第1の車輪に対する制動力を十分に確保することができる。さらに、直進走行における制動時には、横滑りが発生しにくい。この場合、第1の補正処理における補正量を小さくすることにより、直進走行における制動時に十分な減速を行うことができる。
したがって、車両の傾斜状態ならびに路面および第1の車輪の状態に関らず第1の車輪の横滑りを抑制するとともに、第1の車輪に対する制動力を確保することができる。その結果、乗員は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
制御部は、第1の補正処理として、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑りの加速度の大きさが大きいほど第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように第1のアンチロックブレーキ動作を補正する。
第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなると、第1の車輪が横滑りしないために必要な横力に対する第1の車輪と路面との間に発生可能な最大横力の余裕度が増加する。それにより、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど横滑りを大きく抑制することができる。このように、第1の車輪の加速度の大きさに応じて横滑りを適切に抑制することができる。
(2)制御部は、第1の補正処理として、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の目標縦滑り程度が小さくなるように第1の目標縦滑り程度を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きい場合には、第1の目標縦滑り程度が小さくなるので、第1の車輪が横滑りしないために必要な横力に対する第1の車輪と路面との間に発生可能な最大横力の余裕度が増加する。それにより、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを抑制することができる。また、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが小さい場合には、第1の目標縦滑り程度が大きくなるので、第1の車輪に対する制動力の減少量が小さい。それにより、第1の車輪の横滑りを抑制しつつ第1の車輪に対する制動力を確保することができる。
また、直進走行における制動時には、横滑りが発生しにくい。この場合、第1の目標縦滑り程度が大きくなるので、第1の車輪に対する制動力の減少量が小さい。それにより、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。
したがって、車両の傾斜状態ならびに路面および第1の車輪の状態に関らず第1の車輪の横滑りを抑制することができるとともに、第1の車輪に対する制動力を確保することができる。
また、第1の目標縦滑り程度を変更することにより最大横力の余裕度および制動力を制御することができる。それにより、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第1の補正処理を容易に実行することができる。
さらに、第1の車輪の横滑り加速度の大きさは、第1の車輪の横滑りが発生しないために必要な横力の不足分に相当し、この不足分により横滑りが発生する。したがって、第1の車輪の横滑り加速度の大きさに基づいて横滑りを正確に算出することができる。そのため、第1の車輪の横滑り加速度の大きさに基づいて最大横力の余裕度および制動力が確保されるように第1の目標縦滑り程度を正確に変更することができる。それにより、第1の車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
(3)制御部は、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値とその第1の値よりも大きい第2の値との間の範囲内にある場合に、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが増加するにつれて第1の目標縦滑り程度が第3の値からその第3の値よりも小さい第4の値に減少するように第1の目標縦滑り程度を変更してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度が一定の範囲内にある場合に、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の目標縦滑り程度が低くなる。それにより、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
(4)制御部は、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値以下である場合に、第1の目標縦滑り程度を第3の値に設定してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値以下であるときに、第1の目標縦滑り程度が第3の値で一定に保持される。それにより、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが小さい場合に、第1の車輪の横滑りを抑制しつつ第1の車輪に対する制動力を十分に確保することができる。
(5)制御部は、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第2の値以上である場合に、第1の目標縦滑り程度を第4の値に設定してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第2の値以上であるときに、第1の目標縦滑り程度が第4の値で一定に保持される。それにより、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きい場合に、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを抑制することができる。
(6)ブレーキ制御装置は、第1の車輪の横滑り加速度の大きさと目標縦滑り程度との対応関係を記憶する記憶部をさらに備え、対応関係は、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが増加するにつれて目標縦滑り程度が第3の値から第4の値に減少するように予め設定され、制御部は、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさに対応する目標縦滑り程度を記憶部に記憶される対応関係から取得し、第1の補正処理として、取得した目標縦滑り程度を第1の目標縦滑り程度として設定してもよい。
この場合、記憶部に第1の車輪の横滑り加速度と目標縦滑り程度との対応関係が記憶されるので、演算処理を行うことなく第1の車輪の横滑り加速度に対応する第1の目標縦滑り程度を容易に設定することができる。
(7)鞍乗型車両は、第2の車輪をさらに有し、第2の車輪に制動力を与える第2の制動装置をさらに備え、縦滑り検出装置は、第2の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成され、横滑り算出装置は、鞍乗型車両の傾斜角、車体速度、ヨーレート、ロールレートおよび横加速度に基づいて第2の車輪の横滑り加速度を算出するように構成され、制御部は、縦滑り検出装置により検出される第2の車輪の縦滑りの程度が目標となる縦滑りの程度である第2の目標縦滑り程度に近づくように第2の制動装置を制御する第2のアンチロックブレーキ動作を実行し、横滑り算出装置により算出される第2の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第2の目標縦滑り程度が小さくなるように第2の目標縦滑り程度を変更することにより第2のアンチロックブレーキ動作を補正する第2の補正処理を行ってもよい。
この場合、第2の車輪の制動時に制御部により第2のアンチロックブレーキ動作が実行されるとともに、第2の補正処理が行われる。第2の補正処理では、横滑り算出装置により算出される第2の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第2の目標縦滑り程度が小さくなるように第2の目標縦滑り程度が変更される。それにより、車両の傾斜状態ならびに路面および第2の車輪の状態に関らず第2の車輪の横滑りが抑制されるとともに、第2の車輪に対する制動力が確保される。
また、第2の目標縦滑り程度を変更することにより最大横力の余裕度および制動力を制御することができる。それにより、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第2の補正処理を容易に実行することができる。
)制御部は、第1のアンチロックブレーキ動作の実行時でかつ第2のアンチロックブレーキ動作の非実行時に、第1の補正処理を行うことにより生じる第1の制動装置による制動力の減少量の少なくとも一部を補うように、第2の制動装置による制動力を増加させてもよい。
この場合、第1のアンチロックブレーキ動作時に、第1の補正処理による第1の車輪に対する制動力の減少が、第2の車輪に対する制動力の増加により補償される。その結果、鞍乗型車両の全体に作用する制動力の低下を抑制することができる。
)制御部は、第2のアンチロックブレーキ動作の実行時でかつ第1のアンチロックブレーキ動作の非実行時に、第2の補正処理を行うことにより生じる第2の制動装置による制動力の減少量の少なくとも一部を補うように、第1の制動装置による制動力を増加させてもよい。
この場合、第2のアンチロックブレーキ動作時に、第2の補正処理による第2の車輪に対する制動力の減少が、第1の車輪に対する制動力の増加により補償される。その結果、鞍乗型車両の全体に作用する制動力の低下を抑制することができる。
(10)縦滑り検出装置は、第1の車輪のスリップ率を第1の車輪の縦滑りの程度として検出するように構成され、制御部は、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ率が第1の目標縦滑り程度としての第1の目標スリップ率に近づくように第1の制動装置を制御することにより第1のアンチロックブレーキ動作を実行し、第1の補正処理として、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の目標スリップ率が小さくなるように第1の目標スリップ率を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
車輪のスリップ率は、車輪の周速度および車体速度に基づいて単純な演算式により算出することができる。したがって、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第1のアンチロックブレーキ動作を容易に実行するとともに、第1の補正処理を容易に行うことができる。
(11)縦滑り検出装置は、第1および第2の車輪のスリップ率を第1および第2の車輪の縦滑りの程度としてそれぞれ検出するように構成され、制御部は、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ率が第1の目標縦滑り程度としての第1の目標スリップ率に近づくように第1の制動装置を制御することにより第1のアンチロックブレーキ動作を実行し、縦滑り検出装置により検出される第2の車輪のスリップ率が第2の目標縦滑り程度としての第2の目標スリップ率に近づくように第2の制動装置を制御することにより第2のアンチロックブレーキ動作を実行し、第1の補正処理として、横滑り算出装置により算出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の目標スリップ率が小さくなるように第1の目標スリップ率を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正し、第2の補正処理として、横滑り算出装置により算出される第2の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第2の目標スリップ率が小さくなるように第2の目標スリップ率を変更することにより第2のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
上記のように、車輪のスリップ率は、車輪の周速度および車体速度に基づいて単純な演算式により算出することができる。したがって、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第1および第2のアンチロックブレーキ動作を容易に実行するとともに、第1および第2の補正処理を容易に行うことができる。
(12) 第2の発明に係るブレーキ制御装置は、第1の車輪を有するとともに傾斜して走行可能な鞍乗型車両のブレーキ制御装置であって、第1の車輪に制動力を与える第1の制動装置と、第1の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成される縦滑り検出装置と、第1の車輪のスリップ角を検出するように構成される横滑り検出装置と、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪の縦滑りの程度が目標となる縦滑りの程度である第1の目標縦滑り程度に近づくように第1の制動装置を制御する第1のアンチロックブレーキ動作を実行する制御部とを備え、制御部は、第1の車輪の横滑りを抑制するように第1のアンチロックブレーキ動作を補正する第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように第1のアンチロックブレーキ動作を補正する。
そのブレーキ制御装置においては、縦滑り検出装置により第1の車輪の縦滑りの程度が検出され、横滑り検出装置により第1の車輪のスリップ角が検出される。第1の車輪の制動時に制御部により第1のアンチロックブレーキ動作が実行される。第1のアンチロックブレーキ動作においては、検出される第1の車輪の縦滑りの程度が第1の目標縦滑り程度に近づくように第1の制動装置が制御される。
このとき、第1の補正処理が行われる。第1の補正処理では、横滑り検出装置の検出結果に基づいて第1の車輪の横滑りが抑制されるように第1のアンチロックブレーキ動作が補正される。
第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように第1のアンチロックブレーキ動作が補正される。第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなると、第1の車輪が横滑りしないために必要な横力に対する第1の車輪と路面との間に発生可能な最大横力の余裕度が増加する。それにより、第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど横滑りを大きく抑制することができる。このように、第1の車輪のスリップ角の大きさに応じて横滑りを適切に抑制することができる。
(13)制御部は、第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど第1の目標縦滑り程度が小さくなるように第1の目標縦滑り程度を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
この場合、第1の車輪のスリップ角の大きさに基づいて最大横力の余裕度および制動力が確保されるように第1の目標縦滑り程度を正確に変更することができる。それにより、第1の車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
(14)第3の発明に係る鞍乗型車両は、第1の車輪と、第1の発明に係るブレーキ制御装置とを備えるとともに傾斜して走行可能なものである。
上記のブレーキ制御装置においては、第1の車輪の横滑り加速度に基づいて第1のアンチロックブレーキ動作が補正される。それにより、車両の傾斜状態ならびに路面および第1の車輪の状態に関らず第1の車輪の横滑りが抑制されるとともに、第1の車輪に対する制動力が確保される。また、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。その結果、乗員は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
(15)第4の発明に係る鞍乗型車両は、第1および第2の車輪と、第2の発明に係るブレーキ制御装置とを備えるとともに傾斜して走行可能なものである。
上記のブレーキ制御装置においては、第1および第2の車輪の横滑り加速度に基づいて第1および第2のアンチロックブレーキ動作が補正される。それにより、車両の傾斜状態ならびに路面および第1および第2の車輪の状態に関らず第1および第2の車輪の横滑りが抑制されるとともに、第1および第2の車輪に対する制動力が確保される。また、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。
その結果、乗員は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
本発明によれば、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
図1は本発明の一実施の形態に係る自動二輪車を左側方から見た概略側面図である。 図2は図1の自動二輪車を上方から見た場合の概略平面図である。 図3は図1の自動二輪車が備えるブレーキ制御装置の構成を示すブロック図である。 図4は図3の前輪液圧回路におけるWC液圧の調整動作を説明するための模式図である。 図5は図3の横滑り加速度検出装置の構成および動作を説明するためのブロック図である。 図6は自動二輪車の車体速度の推定方法を説明するための図である。 図7は第1の実施の形態の基本思想を説明するためのグラフである。 図8は目標スリップ率テーブルの一例を示すグラフである。 図9は第1の実施の形態に係るABS制御プログラムに基づくABS制御処理のフローチャートである。 図10は第1の実施の形態に係るABS制御プログラムに基づくABS制御処理のフローチャートである。 図11は第1の実施の形態において制動操作が行われることにより自動二輪車の車体速度が減少する場合のABS制御処理の一例を示す図である。 図12は第2の実施の形態に係る自動二輪車が備えるブレーキ制御装置の構成を示すブロック図である。 図13は第2の実施の形態の基本思想を説明するためのグラフである。 図14は第2の実施の形態に係るABS制御プログラムに基づくABS制御処理のフローチャートである。 図15は第2の実施の形態に係るABS制御プログラムに基づくABS制御処理のフローチャートである。 図16は図15のステップS37の制動力補償処理のフローチャートである。 図17は第2の実施の形態において制動操作が行われることにより自動二輪車の車体速度が減少する場合のABS制御処理の一例を示す図である。 図18はWC液圧減少速度テーブルの一例を示すグラフである。 図19は他の実施の形態において制動操作が行われることにより自動二輪車の車体速度が減少する場合のABS制御処理の一例を示す図である。
[1]第1の実施の形態
第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置およびそれを備える鞍乗型車両について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、鞍乗型車両の一例としてブレーキ制御装置を備える自動二輪車を説明する。
(1)自動二輪車の概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車を左側方から見た概略側面図である。
図1の自動二輪車100においては、本体フレーム11の前端にヘッドパイプ12が設けられる。ヘッドパイプ12にフロントフォーク13が左右方向に揺動可能に設けられる。フロントフォーク13の下端に前輪14およびブレーキロータBR1が回転可能に支持される。また、フロントフォーク13の下端近傍にホイールシリンダWC1および前輪速度センサ44が固定される。ブレーキロータBR1は1または複数のディスク(図示せず)を含む。ホイールシリンダWC1は、前輪14の制動時にブレーキロータBR1のディスクに押圧されるブレーキパッド(図示せず)とともにブレーキキャリパに内蔵される。前輪速度センサ44は、前輪14の回転速度を検出し、検出結果を後述する横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU(Electronic Control Unit for Antilock Brake System:アンチロックブレーキシステム用電子制御ユニット)60およびECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)70に与える。ヘッドパイプ12の上端にはハンドル15が設けられる。
図2は、図1の自動二輪車100を上方から見た場合の概略平面図である。図2では、図1の自動二輪車100の外形とともにその自動二輪車100の一部の構成要素が示される。図2に示すように、ハンドル15の右側部分にはブレーキレバー16および前輪マスタシリンダ16sが設けられる。
図1に示すように、本体フレーム11の中央部には、エンジン17が設けられる。エンジン17の吸気ポートに吸気管17aの一端が取り付けられる。エンジン17の排気ポートに排気管17bの一端が取り付けられる。排気管17bの他端には、マフラー17cが取り付けられる。
エンジン17の下部には、クランクケース18が取り付けられる。クランクケース18の後方部分にミッションケース19が連結される。ミッションケース19は、本体フレーム11の下部に位置する。
図1および図2に示すように、ミッションケース19の左側部には、シフトペダル21が設けられる。シフトペダル21の後方にはバックステップ22が設けられる。バックステップ22は、本体フレーム11により支持される。図2に示すように、ミッションケース19の右側部には、ブレーキペダル23および後輪マスタシリンダ23sが設けられる。ブレーキペダル23の後方にはバックステップ24が設けられる。バックステップ24は、図1の本体フレーム11により支持される。
図1に示すように、ミッションケース19の後方に延びるように、本体フレーム11にリアアーム81が接続される。リアアーム81の後端に後輪82、後輪ドリブンスプロケット83およびブレーキロータBR2が回転可能に支持される。後輪ドリブンスプロケット83にはチェーン84が取り付けられる。リアアーム81の後端近傍にホイールシリンダWC2および後輪速度センサ45が固定される。ブレーキロータBR2は1または複数のディスク(図示せず)を含む。ホイールシリンダWC2は、後輪82の制動時にブレーキロータBR2のディスクに押圧されるブレーキパッド(図示せず)とともにブレーキキャリパに内蔵される。後輪速度センサ45は、後輪82の回転速度を検出し、検出結果を後述する横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU60およびECU70に与える。
エンジン17の上部には燃料タンク25が設けられ、燃料タンク25の後方には2つのシート26,27が前後に並ぶように設けられる。燃料タンク25および2つのシート26,27の下部には、液圧制御ユニット30、ジャイロスコープ41、横加速度センサ42、縦加速度センサ43、横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU60およびECU70が設けられている。
図2に示すように、液圧制御ユニット30は、前輪マスタシリンダ16s、後輪マスタシリンダ23sおよびホイールシリンダWC1,WC2に接続されている。液圧制御ユニット30の詳細については後述する。
ジャイロスコープ41は自動二輪車100のヨーレートおよびロールレートを検出し、検出結果を横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU60およびECU70に与える。
横加速度センサ42は、自動二輪車100の左右方向に生じる横加速度を検出し、検出結果を横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU60およびECU70に与える。
縦加速度センサ43は、自動二輪車100の前後方向に生じる縦加速度を検出し、検出結果を横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU60およびECU70に与える。
横滑り加速度検出装置50は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータにより構成される。横滑り加速度検出装置50は、ジャイロスコープ41、横加速度センサ42、縦加速度センサ43、前輪速度センサ44および後輪速度センサ45から与えられる検出結果に基づいて自動二輪車100の左右方向に生じる横滑りの程度の一例として横滑り加速度を検出する。また、横滑り加速度検出装置50は検出結果をABS用ECU60に与える。横滑り加速度検出装置50の詳細および横滑り加速度の定義については後述する。
ABS用ECU60は、後述する図3に示すように、CPU(中央演算処理装置)61、ROM(リードオンリメモリ)62、RAM(ランダムアクセスメモリ)63およびインターフェース回路64を含む。CPU61は、後述するようにジャイロスコープ41、横加速度センサ42、縦加速度センサ43、前輪速度センサ44、後輪速度センサ45および横滑り加速度検出装置50から与えられる検出結果に基づいて液圧制御ユニット30を制御する。ROM62は、後述するABS制御プログラムおよび目標スリップ率テーブル等を記憶する。RAM63は、後述するABSフラグおよび種々のデータを記憶するとともにCPU61の作業領域として機能する。
ECU70は、図示しないCPU、ROM、RAMおよびインターフェース回路を含む。ECU70のCPUには、種々のセンサから検出結果が与えられる。ECU70のCPUは、それらの検出結果に基づいてエンジン17および図示しない変速機等の動作を制御する。ECU70のROMは、ECU70のCPUの制御プラグラム等を記憶する。ECU70のRAMは、種々のデータを記憶するとともにECU70のCPUの作業領域として機能する。
本実施の形態においては、上記のブレーキレバー16、前輪マスタシリンダ16s、ブレーキペダル23、後輪マスタシリンダ23s、液圧制御ユニット30、ジャイロスコープ41、横加速度センサ42、縦加速度センサ43、後輪速度センサ45、横滑り加速度検出装置50、ABS用ECU60、ホイールシリンダWC1,WC2、ブレーキロータBR1,BR2およびブレーキホースL1〜L4によりブレーキ制御装置が構成される。
(2)ブレーキ制御装置
図3は図1の自動二輪車100が備えるブレーキ制御装置の構成を示すブロック図である。図3の液圧制御ユニット30は、前輪液圧回路30A、後輪液圧回路30B、モータ30Cおよび第1〜第4のポートp1〜p4を含む。
液圧制御ユニット30の第1のポートp1と前輪マスタシリンダ16sとの間にブレーキホースL1が接続され、第2のポートp2と前輪14のホイールシリンダWC1との間にブレーキホースL2が接続される。液圧制御ユニット30の第3のポートp3と後輪マスタシリンダ23sとの間にブレーキホースL3が接続され、第4のポートp4と後輪82のホイールシリンダWC2との間にブレーキホースL4が接続される。
前輪液圧回路30Aは、主として保持弁31a、減圧弁32a、ポンプ33aおよびリザーバ34aを含み、第1のポートp1と第2のポートp2との間に設けられる。それにより、前輪液圧回路30Aは、ブレーキホースL1,L2を介して前輪マスタシリンダ16sと前輪14のホイールシリンダWC1とを接続する。
前輪液圧回路30Aにおいては、第1のポートp1と第2のポートp2との間に保持弁31aが設けられ、第2のポートp2とリザーバ34aとの間に減圧弁32aが設けられる。保持弁31aおよび減圧弁32aの各々は、2つのポートを有する2位置切替型の電磁弁である。また、第1のポートp1とリザーバ34aとの間にポンプ33aが設けられる。ポンプ33aの吸入ポートはリザーバ34aに接続され、ポンプ33aの吐出ポートは第1のポートp1に接続される。
前輪マスタシリンダ16s、前輪液圧回路30AおよびブレーキホースL1,L2内には、ブレーキ液が充填される。
前輪液圧回路30Aと同様に、後輪液圧回路30Bは、主として保持弁31b、減圧弁32b、ポンプ33bおよびリザーバ34bを含み、第3のポートp3と第4のポートp4との間に設けられる。それにより、後輪液圧回路30Bは、ブレーキホースL3,L4を介して後輪マスタシリンダ23sと後輪82のホイールシリンダWC2とを接続する。
後輪液圧回路30Bにおいては、第3のポートp3と第4のポートp4との間に保持弁31bが設けられ、第4のポートp4とリザーバ34bとの間に減圧弁32bが設けられる。保持弁31bおよび減圧弁32bの各々は、2つのポートを有する2位置切替型の電磁弁である。また、第3のポートp3とリザーバ34bとの間にポンプ33bが設けられる。ポンプ33bの吸入ポートはリザーバ34bに接続され、ポンプ33bの吐出ポートは第3のポートp3に接続される。
後輪マスタシリンダ23s、後輪液圧回路30BおよびブレーキホースL3,L4内には、ブレーキ液が充填される。
モータ30Cは前輪液圧回路30Aのポンプ33aおよび後輪液圧回路30Bのポンプ33bをそれぞれ駆動するために用いられる。
上記のように、ABS用ECU60には、ジャイロスコープ41、横加速度センサ42、縦加速度センサ43、前輪速度センサ44、後輪速度センサ45および横滑り加速度検出装置50の検出結果が与えられる。ABS用ECU60のCPU61は、与えられた検出結果に基づいて、前輪液圧回路30A、後輪液圧回路30Bおよびモータ30Cの動作を制御する。それにより、後述するABSフラグがオン状態である場合に、ホイールシリンダWC1,WC2に与えられるブレーキ液の圧力(以下、WC液圧と表記する。)が調整される。
図4は、図3の前輪液圧回路30AにおけるWC液圧の調整動作を説明するための模式図である。以下の説明では、ブレーキレバー16が操作されることにより、前輪マスタシリンダ16sに一定の液圧が与えられている場合を想定する。
図4(a)にWC液圧の調整が行われない場合の前輪液圧回路30Aの状態が示される。この場合、図3のCPU61は、保持弁31aを開き、減圧弁32aを閉じるとともにポンプ33aを停止させる。それにより、前輪マスタシリンダ16sとホイールシリンダWC1とが保持弁31aを通して連通する。したがって、ブレーキレバー16の操作により前輪マスタシリンダ16sに与えられる液圧がホイールシリンダWC1に伝達される。
図4(b)にWC液圧が減少するように調整される場合の前輪液圧回路30Aの状態が示される。この場合、図3のCPU61は、保持弁31aを閉じ、減圧弁32aを開くとともにポンプ33aを作動させる。それにより、前輪マスタシリンダ16sとリザーバ34aとが連通する。このとき、ポンプ33aは、リザーバ34a内のブレーキ液を第1のポートp1に向かって汲み上げる。したがって、ホイールシリンダWC1内のブレーキ液がリザーバ34aに流れる。その結果、ブレーキレバー16が操作されているにもかかわらずWC液圧が減少する。
図4(c)にWC液圧が増加するように調整される場合の前輪液圧回路30Aの状態が示される。この場合、図3のCPU61は、保持弁31aを開き、減圧弁32aを閉じるとともにポンプ33aを作動させる。それにより、前輪マスタシリンダ16sとリザーバ34aとが連通する。このとき、ポンプ33aは、リザーバ34a内のブレーキ液を第1のポートp1に向かって汲み上げる。したがって、ブレーキレバー16の操作により前輪マスタシリンダ16sに与えられる液圧がホイールシリンダWC1に伝達されるとともに、リザーバ34a内のブレーキ液がホイールシリンダWC1に向かって流れる。その結果、WC液圧の調整が行われない場合に比べてWC液圧が増加する。
図3の後輪液圧回路30BにおけるWC液圧の調整動作も前輪液圧回路30AにおけるWC液圧の調整動作と同様に行われる。
(3)横滑り加速度検出装置
図5は、図3の横滑り加速度検出装置50の構成および動作を説明するためのブロック図である。図5に示すように、横滑り加速度検出装置50は、傾斜角算出部51、車体速度算出部52および横滑り加速度算出部53を備える。図5の傾斜角算出部51、車体速度算出部52および横滑り加速度算出部53は、それぞれアプリケーションプログラムにより構成される。なお、これらの構成要素の一部または全てが論理回路等の電子回路により構成されてもよい。
横滑り加速度検出装置50においては、ジャイロスコープ41により検出されるロールレートwrが傾斜角算出部51に与えられる。傾斜角算出部51は、与えられたロールレートwrを時間積分することにより得られるロール角(バンク角)を自動二輪車100の傾斜角θとして算出し、算出結果を横滑り加速度算出部53に与える。本実施の形態においては、傾斜角θは、自動二輪車100の前後方向に平行な鉛直面に対する自動二輪車100の横方向の傾きを表す。
また、横滑り加速度検出装置50においては、縦加速度センサ43により検出される縦加速度Axが車体速度算出部52に与えられる。また、前輪速度センサ44により検出される前輪14の回転速度Vfおよび後輪速度センサ45により検出される後輪82の回転速度Vrが車体速度算出部52に与えられる。
車体速度算出部52は、前輪14の回転速度Vfと前輪14の周長(タイヤの外周部の長さ)とを乗算することにより前輪周速度を算出する。また、車体速度算出部52は、後輪82の回転速度Vrと後輪82の周長とを乗算することにより後輪周速度を算出する。
本実施の形態に係る自動二輪車100には図示しないブレーキセンサが設けられている。ブレーキセンサは、乗員によるブレーキレバー16およびブレーキペダル23の操作量を検出するとともに検出した操作量を図3のCPU61および車体速度算出部52に与える。この場合、車体速度算出部52は、与えられた操作量に基づいて、ブレーキレバー16およびブレーキペダル23がそれぞれ操作されているか否かを判定する。
車体速度算出部52は、縦加速度Ax、前輪周速度、後輪周速度、ブレーキレバー16の操作状態およびブレーキペダル23の操作状態に基づいて自動二輪車100の車体速度Vを推定する。
図6は、自動二輪車100の車体速度Vの推定方法を説明するための図である。図6(a)に乗員がブレーキレバー16のみを操作することによる自動二輪車100の制動状態が示される。この場合、図6(a)に太い実線の矢印bf1で示すように、前輪14と路面との間に制動力が発生する。一方、後輪82と路面との間には制動力が発生しない。そのため、車体速度Vは後輪周速度とほぼ等しいと考えられる。そこで、車体速度算出部52は、算出された後輪周速度を車体速度Vとして横滑り加速度算出部53に与える。
図6(b)に乗員がブレーキペダル23のみを操作することによる自動二輪車100の制動状態が示される。この場合、図6(b)に太い実線の矢印bf2で示すように、後輪82と路面との間に制動力が発生する。一方、前輪14と路面との間には制動力が発生しない。そのため、車体速度Vは前輪周速度とほぼ等しいと考えられる。そこで、車体速度算出部52は、算出された前輪周速度を車体速度Vとして横滑り加速度算出部53に与える。
図6(c)に乗員がブレーキレバー16およびブレーキペダル23を操作することによる自動二輪車100の制動状態が示される。この場合、図6(c)に太い実線の矢印bf3で示すように、前輪14と路面との間に制動力が発生する。また、太い実線の矢印bf4で示すように、後輪82と路面との間に制動力が発生する。この場合、車体速度Vは、前輪周速度よりも大きく、後輪周速度よりも大きいと考えられる。そこで、車体速度算出部52は、縦加速度センサ43から与えられる縦加速度Axを、ブレーキレバー16およびブレーキペダル23の操作開始時点から時間積分し、その積分値を車体速度Vとして横滑り加速度算出部53に与える。
図5に示すように、横滑り加速度検出装置50の横滑り加速度算出部53には、上記の傾斜角θおよび車体速度Vに加えて、ジャイロスコープ41により検出されるヨーレートωおよびロールレートwrが与えられる。さらに、横加速度センサ42により検出される横加速度Ayが与えられる。
横滑り加速度検出装置50においては、横加速度センサ42の取り付け位置と前輪14の中心との水平距離If(図1)、および横加速度センサ42の取り付け位置と後輪82の中心との水平距離Ir(図1)が予め記憶されている。
横滑り加速度算出部53は、与えられた傾斜角θ、車体速度V、ヨーレートω、ロールレートwrおよび横加速度Ayならびに上記の水平距離If,Irに基づいて前輪14および後輪82の横滑り加速度を算出し、算出結果をABS用ECU60に与える。
前輪14の横滑り加速度dfy/dtは、重力加速度をgで表した場合に例えば下記式(1)により算出することができる。
dfy/dt=−V・ω・secθ−g・tanθ+Ay・secθ+If・dω/dt・secθ+If・wr・ω・tanθ・secθ・・・(1)
また、後輪82の横滑り加速度dry/dtは、重力加速度をgで表した場合に例えば下記式(2)により算出することができる。
dry/dt=−V・ω・secθ−g・tanθ+Ay・secθ−Ir・dω/dt・secθ−Ir・wr・ω・tanθ・secθ・・・(2)
なお、前輪14および後輪82の横滑り加速度を公知の他の方法を用いて推定してもよい。
(4)第1の実施の形態の基本思想
図3のCPU61は、図5の車体速度算出部52と同様に縦加速度センサ43、前輪速度センサ44および後輪速度センサ45から与えられる検出結果に基づいて前輪周速度、後輪周速度および車体速度Vを算出する。
CPU61は、前輪周速度をVwfで表した場合に下記式(3)により前輪14の現在の縦滑りの程度の一例としてスリップ率SLfを算出し、後輪周速度をVwrで表した場合に下記式(4)により後輪82の現在の縦滑りの程度の一例としてスリップ率SLrを算出する。
SLf={(V−Vwf)/V}・100・・・(3)
SLr={(V−Vwr)/V}・100・・・(4)
また、CPU61は、前輪14のスリップ率が目標スリップ率に近づくように液圧制御ユニット30の前輪液圧回路30Aを制御し、後輪82のスリップ率が目標スリップ率に近づくように液圧制御ユニット30の後輪液圧回路30Bを制御する。このようにして、CPU61により前輪14のアンチロックブレーキ動作が行われ、後輪82のアンチロックブレーキ動作が行われる。
図7は、第1の実施の形態の基本思想を説明するためのグラフである。図7(a)に摩擦係数が高い路面(例えば乾燥したアスファルトの路面)上でのスリップ率と制動力および最大横力との関係が示される。ここで、最大横力とは、車輪(前輪14または後輪82)と路面との間に発生可能な横力の最大値をいう。図7(b)に摩擦係数が低い路面(例えば濡れているアスファルトの路面)上でのスリップ率と制動力および最大横力との関係が示される。図7(a),(b)のグラフでは、縦軸が制動力または横力を表し、横軸がスリップ率を表す。また、車輪(前輪14または後輪82)と路面との間に発生する制動力が一点鎖線で示される。さらに、最大横力が実線で示される。
図7(a),(b)に示すように、制動力はスリップ率が大きくなるほど大きくなり、最大横力はスリップ率が大きくなるほど小さくなる。また、摩擦係数が低い路面上での制動力は、摩擦係数が高い路面上での制動力よりも小さい。摩擦係数が低い路面上での最大横力は、摩擦係数が高い路面上での最大横力よりも小さい。
以下の説明では、「車輪が横滑りしないために必要な横力」から「現在のスリップ率において車輪と路面との間に発生可能な最大横力」を減算した場合の減算値を横力の余裕度と呼ぶ。
図7(a)に示すように、摩擦係数が高い路面上での旋回走行時に、現在のスリップ率が値αである場合、最大横力はf1である。このとき、車輪が横滑りしないために必要な横力F1が最大横力f1よりも大きいと、横力の余裕度mr1は負の値となる。この場合、車輪と路面との間に発生する横力が不足することにより、車輪の横滑りが発生する。そのため、車輪の横滑りを抑制するためには、横力の余裕度を0以上の値まで増加させる必要がある。そこで、目標スリップ率を現在のスリップ率よりも小さく設定する。
目標スリップ率が過剰に小さくなると、車輪と路面との間に発生する制動力が低下する。そのため、制動力の過大な低下を抑制するために、目標スリップ率を横力の余裕度がほぼ0になるような値βに設定することが好ましい。
一方、図7(b)に示すように、摩擦係数が低い路面上での旋回走行時に、現在のスリップ率が値αである場合、最大横力は上記のf1よりも小さいf2である。このとき、車輪が横滑りしないために必要な横力F1は最大横力f2よりも大きいので、横力の余裕度mr2は負の値となる。
上記のように、摩擦係数が低い路面上での最大横力は、摩擦係数が高い路面上での最大横力よりも小さい。そのため、スリップ率が仮に値αから値βまで小さくなっても、最大横力は車輪が横滑りしないために必要な横力F1よりも小さいf3である。それにより、横力の余裕度mr3は負の値となる。したがって、摩擦係数が低い路面上で前輪14の横滑りを抑制するためには、目標スリップ率を横力の余裕度がほぼ0となるような値γに設定することが好ましい。
一方、自動二輪車100の直進走行時にはほとんど横滑りが発生しないので、大きい制動力が得られるように車輪の目標スリップ率が変更される。それにより、目標スリップ率の変更による車輪に対する制動力の減少量が小さくなる。したがって、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。
このように、横力の余裕度および制動力は、自動二輪車100の傾斜状態および路面の状態に応じて変化する。また、横力の余裕度および制動力は、車輪の状態によっても変化する。
そこで、本実施の形態では、後述するように、横滑り加速度検出装置50により検出される前輪14の横滑り加速度dfy/dtの大きさに基づいて、横力の余裕度が増加するようにかつ制動力の過大な低下を抑制するように前輪14の目標スリップ率を変更する。このようにして、前輪14のアンチロックブレーキ動作が補正される。
それにより、自動二輪車100の旋回走行時に前輪14の制動操作が行われる場合には、自動二輪車100の傾斜状態ならびに路面および前輪14の状態に関らず前輪14の横滑りが抑制される。また、自動二輪車100の直進走行時のように、前輪14の横滑り加速度dfy/dtが小さい場合には、高い制動力を得ることができる。
同様に、本実施の形態では、後述するように、横滑り加速度検出装置50により検出される後輪82の横滑り加速度dry/dtの大きさに基づいて、横力の余裕度が増加するようにかつ制動力の過大な低下を抑制するように後輪82の目標スリップ率を変更する。このようにして、後輪82のアンチロックブレーキ動作が補正される。
それにより、自動二輪車100の旋回走行時に後輪82の制動操作が行われる場合には、自動二輪車100の傾斜状態ならびに路面および後輪82の状態に関らず後輪82の横滑りが抑制される。また、自動二輪車100の直進走行時のように、後輪82の横滑り加速度dry/dtが小さい場合には、高い制動力を得ることができる。
(5)ABS制御プログラム
本実施の形態に係るブレーキ制御装置においては、前輪14および後輪82についてのABS制御プログラムが図3のCPU61によりそれぞれ独立に実行される。それにより、各ABS制御プログラムに基づくABS制御処理が行われる。各ABS制御処理は、目標スリップ率を変更する補正処理を含む。
ABS制御処理における補正処理には、目標スリップ率テーブルが用いられる。図8は、目標スリップ率テーブルの一例を示すグラフである。図8のグラフにおいて、縦軸は車輪の目標スリップ率を表し、横軸は車輪の横滑り加速度の絶対値を表す。目標スリップ率テーブルには、太い実線で示されるように、車輪の横滑り加速度の絶対値と車輪の目標スリップ率との関係が予め設定される。上記のように、目標スリップ率テーブルは、図3のROM62に記憶される。
図8の目標スリップ率テーブルによれば、横滑り加速度の絶対値が値a1と値a2との間の範囲では、目標スリップ率は横滑り加速度の絶対値が増加するにつれて値b1から値b2へ減少するように設定される。ここで、値a2は値a1よりも大きい。また、値b2は値b1よりも小さい。横滑り加速度の絶対値が値a1以下の範囲では、目標スリップ率は一定の値b1に設定される。横滑り加速度の絶対値が値a2以上の範囲では、目標スリップ率は一定の値b2に設定される。目標スリップ率の値b1は例えば15%であり、目標スリップ率の値b2は例えば5%である。
このように目標スリップ率が設定されることにより、車輪の横滑り加速度の絶対値が値a1と値a2との間の範囲内にある場合に、横滑り加速度の絶対値が大きいほど目標スリップ率が低くなる。それにより、車輪に対する制動力を確保しつつ車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
また、横滑り加速度の絶対値が値a2以上である場合に、目標スリップ率が最小の値b2に保持される。それにより、車輪の横滑り加速度の絶対値が大きい場合に、車輪に対する制動力が小さくなりすぎることを防止しつつ車輪の横滑りを抑制することができる。
また、横滑り加速度の絶対値が値a1以下である場合に、目標スリップ率が最大の値b1に保持される。それにより、車輪の横滑り加速度の絶対値が小さい場合に、車輪の横滑りを抑制しつつ車輪に対する制動力を確保することができる。
図9および図10は、第1の実施の形態に係るABS制御プログラムに基づくABS制御処理のフローチャートである。図9および図10のABS制御処理は、例えば1msec以上20msec以下の周期で繰り返し実行される。
まず、CPU61は、図5の横滑り加速度算出部53から与えられる車輪の横滑り加速度の絶対値に対応する目標スリップ率を図3のROM62に記憶されている目標スリップ率テーブルから取得することにより、車輪の目標スリップ率を設定する(ステップS11)。この場合、CPU61は、目標スリップ率を算出するための演算処理を行う必要がない。それにより、目標スリップ率が容易かつ短時間で設定される。
続いて、CPU61は、図5の車体速度算出部52と同様に、縦加速度センサ43、前輪速度センサ44および後輪速度センサ45から与えられる検出結果、ならびにブレーキレバー16およびブレーキペダル23の操作量に基づいて車体速度Vを算出する(ステップS12)。
また、CPU61は、車輪の現在のスリップ率を算出する(ステップS13)。具体的には、CPU61は、例えば前輪速度センサ44から与えられる検出結果に基づいて前輪周速度Vwfを算出する。その後、CPU61は、車体速度Vおよび前輪周速度Vwfに基づいて上記の式(3)により現在の前輪14のスリップ率SLfを算出する。または、CPU61は、例えば後輪速度センサ45から与えられる検出結果に基づいて後輪周速度Vwrを算出する。その後、CPU61は、車体速度Vおよび後輪周速度Vwrに基づいて上記の式(4)により現在の後輪82のスリップ率SLrを算出する。
その後、CPU61は、図3のRAM63に記憶されているABSフラグがオン状態であるか否かを判定する(ステップS14)。本例のABSフラグは、図3の液圧制御ユニット30により車輪に対応して設けられるホイールシリンダの液圧が調整中(本例では液圧の増加中または減少中)であるか否かを判定するために用いられる。ABSフラグのオン状態は、液圧制御ユニット30によりホイールシリンダの液圧が調整中(本例では液圧の増加中または減少中)である状態に対応する。すなわち、ABSフラグのオン状態は、ABSが作動していること(アンチロックブレーキ動作中であること)を示す。ABSフラグのオフ状態は、液圧制御ユニット30によりホイールシリンダの液圧が調整されていない状態に対応する。すなわち、ABSフラグのオフ状態は、ABSが作動していないこと(アンチロックブレーキ動作が停止中であること)を示す。初期状態では、ABSフラグはオフ状態である。
ABSフラグがオフ状態である場合、CPU61は、直前のステップS13で算出された車輪の現在のスリップ率が、直前のステップS11で設定された目標スリップ率よりも大きいか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15において、現在のスリップ率が目標スリップ率以下である場合には、横力の余裕度は正の値となる。それにより、車輪と路面との間には十分な横力が発生するので、車輪の横滑りが発生しない。この場合、CPU61は、ABSが作動していない状態を維持し、ステップS11の処理に戻る。
上記のステップS15において、現在のスリップ率が目標スリップ率よりも大きい場合には、横力の余裕度は負の値となる。それにより、車輪と路面との間に発生する横力が不足することにより、車輪の横滑りが発生する。そのため、車輪の横滑りを抑制するためには、横力の余裕度を0以上の値まで増加させる必要がある。そこで、CPU61は、ABSフラグをオン状態に設定する(ステップS16)。それにより、ABSが作動する。
ステップS14においてABSフラグがオン状態である場合およびステップS16においてABSフラグがオン状態に設定された場合、CPU61は、直前のステップS13で算出された車輪の現在のスリップ率が、直前のステップS11で設定された目標スリップ率よりも大きいか否かを判定する(ステップS21)。
上記のように、現在のスリップ率が目標スリップ率以下である場合には、横力の余裕度は正の値となる。それにより、車輪と路面との間には十分な横力が発生するので、車輪の横滑りが発生しない。そこで、CPU61は、液圧制御ユニット30を制御することにより車輪のWC液圧を増加させる(ステップS22)。それにより、車輪と路面との間に大きな制動力を発生させることができる。
ここで、CPU61は、ステップS22において、WC液圧が増加されない状態からWC液圧が増加される状態に移行する場合に、内蔵のタイマをスタートさせる。
次に、CPU61は、WC液圧の増加の開始から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS23)。
CPU61は、WC液圧の増加の開始から所定時間が経過した場合に、ABSフラグをオフ状態に設定し(ステップS24)、ステップS11の処理に戻る。それにより、ABSが停止する。このとき、CPU61は、内蔵のタイマをリセットする。一方、CPU61は、WC液圧の増加の開始から所定時間が経過していない場合には、ステップS11の処理に戻る。
ステップS21において、現在のスリップ率が目標スリップ率よりも大きい場合には、上記のステップS15の処理において説明したように、車輪の横滑りが発生する。そこで、CPU61は、液圧制御ユニット30を制御することにより車輪のWC液圧を減少させる(ステップS25)。それにより、車輪の横滑りを抑制することができる。その後、CPU61は、ステップS11の処理に戻る。
このようにして、車輪のスリップ率がステップS11で設定された目標スリップ率に近づくようにABS制御処理により液圧制御ユニット30が制御される。車輪のスリップ率が目標スリップ率以下になってから所定時間が経過したときにABSが停止する。
(6)制御例
図11は、第1の実施の形態において制動操作が行われることにより自動二輪車100の車体速度が減少する場合のABS制御処理の一例を示す図である。図11の上段のグラフは、車輪の横滑り加速度と時間との関係を示す。図11の上段のグラフにおいては、縦軸が横滑り加速度の絶対値を表し、横軸が時間を表す。
図11の中段のグラフは、車輪の周速度および車体速度と時間との関係を示す。図11の中段のグラフにおいては、縦軸が速度を表し、横軸が時間を表す。また、車体速度が太い実線で示され、車輪の周速度が実線で示される。さらに、車輪の周速度に換算された目標スリップ率(以下、換算目標スリップ率と呼ぶ。)が一点鎖線で示される。
図11の下段のグラフは、WC液圧と時間との関係を示す。図11の下段のグラフにおいては、縦軸が車輪の制動に用いられるWC液圧を表し、横軸が時間を表す。
図11の例では、図11の上段のグラフに示すように、時点t1〜t5,t11〜t13の期間において車輪にほぼ一定の低い横滑り加速度が発生する。一方、時点t5〜t7の期間においては、時点t1〜t5,t11〜t13の期間における横滑り加速度に比べて大きい横滑り加速度が発生する。
まず、時点t1で乗員により車輪の制動操作が開始される。この場合、図11の下段のグラフに示すように、時点t1から時点t2にかけてWC液圧が増加する。このとき、車輪の周速度は、車体速度から徐々に離れるようにかつ換算目標スリップ率に近づくように減少する。すなわち、車輪のスリップ率が大きくなる。
続いて、車輪の周速度が時点t2で換算目標スリップ率と等しくなり、時点t2の後に換算目標スリップ率よりも低くなる。この場合、現在のスリップ率が目標スリップ率よりも大きくなるので、上記のステップS16,S21,S25の処理が実行される。それにより、時点t2から時点t3にかけてWC液圧が減少し、車輪の周速度が換算目標スリップ率に近づくように上昇する。
続いて、車輪の周速度が時点t3で換算目標スリップ率と等しくなり、時点t3の後に換算目標スリップ率よりも高くなる。この場合、現在のスリップ率が目標スリップ率よりも小さくなるので、上記のステップS22の処理が実行される。それにより、時点t3から時点t4にかけてWC液圧が増加し、車輪の周速度が換算目標スリップ率に近づくように低下する。
続いて、車輪の周速度が時点t4で換算目標スリップ率と等しくなり、時点t4の後に換算目標スリップ率よりも低くなる。この場合、時点t2から時点t3までの動作と同様に、WC液圧が減少し、車輪の周速度が換算目標スリップ率に近づくように上昇する。
以降、時点t5〜t13の期間においては、車輪の周速度と換算目標スリップ率との大小関係が切り替わるごとにWC液圧の増加および減少が繰り返され、車輪の周速度が換算目標スリップ率に近づくように変化する。すなわち、車輪のスリップ率が目標スリップ率に近づくように変化する。
本例では、時点t5〜t11の期間において横滑り加速度が大きくなる。そのため、時点t5〜t11の期間においては、他の時点t1〜t5,t11〜t13の期間に比べて換算目標スリップ率が大きくなる。すなわち、目標スリップ率が小さくなる。
それにより、時点t5〜t11の期間においては、車輪の周速度の振幅の中心が換算目標スリップ率とともに車体速度に近づくように変化する。すなわち、車輪のスリップ率が減少する。このように、ABS制御処理においては、横滑り加速度が小さい場合に換算目標スリップ率が低くなり、目標スリップ率が大きくなる。一方、横滑り加速度が大きい場合に換算目標スリップ率が高くなり、目標スリップ率が小さくなる。
なお、目標スリップ率が小さくなると、車輪に与えられる制動力が小さくなる。そのため、時点t5〜t11の期間においては、制動力が小さくなることにより車体速度の減速度が一時的に小さくなっている。
(7)第1の実施の形態の効果
本実施の形態に係るブレーキ制御装置200においては、ABSの作動中に、車輪のスリップ率が目標スリップ率に近づくように液圧制御ユニット30が制御される。CPU61は、車輪の横滑り加速度の大きさに基づいて最大横力の余裕度が確保されるように補正処理により目標スリップ率を変更する。それにより、車輪の横滑りを適切に抑制することができる。また、直進走行における制動時のように車輪の横滑り加速度の大きさが小さい場合には、目標スリップ率が高くなるので、車輪に対する制動力の減少量が小さくなる。したがって、制動時に十分な減速が行われる。
このように、自動二輪車100の傾斜状態ならびに路面および車輪の状態に関らず車輪の横滑りが抑制されるとともに車輪に対する制動力が確保される。その結果、乗員は、自動二輪車100の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
[2]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る自動二輪車について第1の実施の形態に係る自動二輪車100と異なる点を説明する。
(1)ブレーキ制御装置
図12は、第2の実施の形態に係る自動二輪車が備えるブレーキ制御装置の構成を示すブロック図である。図12に示すように、第2の実施の形態に係るブレーキ制御装置200は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置200の構成(図3)に加えて前輪液圧センサ46および後輪液圧センサ47をさらに含む。
前輪液圧センサ46は、ホイールシリンダWC1に取り付けられる。前輪液圧センサ46は、ホイールシリンダWC1のWC液圧を検出し、検出結果をABS用ECU60のCPU61に与える。後輪液圧センサ47は、ホイールシリンダWC2に取り付けられる。後輪液圧センサ47は、ホイールシリンダWC2のWC液圧を検出し、検出結果をABS用ECU60のCPU61に与える。
CPU61は、前輪液圧センサ46から与えられる検出結果に基づいて、ホイールシリンダWC1およびブレーキロータBR1により前輪14に与えられる制動力を算出する。同様に、CPU61は、後輪液圧センサ47から与えられる検出結果に基づいて、ホイールシリンダWC2およびブレーキロータBR2により後輪82に与えられる制動力を算出する。
ホイールシリンダWC1のWC液圧をPWCfで表し、ホイールシリンダWC1の断面積をAWCfで表し、ホイールシリンダWC1とともにブレーキキャリパに内蔵されるブレーキパッドの摩擦係数をμfで表す。ブレーキロータBR1のディスクの枚数をnDfで表し、ブレーキロータBR1のディスクの有効半径をRDfで表し、前輪14のタイヤの有効半径をRWfで表す。この場合、前輪14に与えられる制動力BFfは、下記式(5)により算出することができる。
BFf=(PWCf・AWCf・μf・nDf・RDf)/RWf・・・(5)
また、ホイールシリンダWC2のWC液圧をPWCrで表し、ホイールシリンダWC2の断面積をAWCrで表し、ホイールシリンダWC2とともにブレーキキャリパに内蔵されるブレーキパッドの摩擦係数をμrで表す。ブレーキロータBR2のディスクの枚数をnDrで表し、ブレーキロータBR2のディスクの有効半径をRDrで表し、後輪82のタイヤの有効半径をRWrで表す。この場合、後輪82に与えられる制動力BFrは、下記式(6)により算出することができる。
BFr=(PWCr・AWCr・μr・nDr・RDr)/RWr・・・(6)
CPU61は、上記のようにして算出される制動力BFf,BFrに基づいて、前輪液圧回路30Aおよび後輪液圧回路30Bを制御する。
(2)第2の実施の形態の基本思想
図13は、第2の実施の形態の基本思想を説明するためのグラフである。図13には所定の路面(例えば乾燥したアスファルトの路面)上でのスリップ率と制動力および最大横力との関係が示される。図13の例においても、図7の例と同様に、最大横力とは、車輪(前輪14または後輪82)と路面との間に発生可能な横力の最大値をいう。図13のグラフでは、縦軸が制動力または横力を表し、横軸がスリップ率を表す。また、車輪(前輪14または後輪82)と路面との間に発生する制動力が一点鎖線で示される。さらに、最大横力が実線で示される。
図13に示すように、制動力はスリップ率が大きくなるほど大きくなり、最大横力はスリップ率が大きくなるほど小さくなる。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ABS用ECU60のROM62に図8の目標スリップ率テーブルが記憶される。図8の目標スリップ率テーブルを用いてABS制御処理が行われる場合、目標スリップ率は車輪の横滑り加速度の絶対値に応じて値b1〜b2の範囲で変化する。
そのため、図13に示すように、車輪の横滑り加速度の絶対値が図8の値a1以下である場合、目標スリップ率は最大の値b1に設定される。目標スリップ率が値b1に設定されているとき、車輪と路面との間に作用する制動力はほぼ最大となる。この場合の制動力の値をBFmaxとする。
ここで、図13に太い点線で示すように、スリップ率の値b1〜b2の範囲で車輪と路面との間に作用する制動力を、原点から座標(b1,BFmax)に延びる直線により近似する。この場合、スリップ率が値b3であるときに車輪と路面との間に作用する制動力は値BFcとみなすことができる。値b3は、値b1よりも小さい。
それにより、制動力の最大値BFmaxと値BFcとの差分値DFは、目標スリップ率が最大の値b1から値b3まで小さくなったときの制動力の減少量(不足量)とみなすことができる。
本実施の形態では、CPU61は、前輪14のアンチロックブレーキ動作時に、前輪14に対する制動力の減少量を算出する。上記式(5)により算出される制動力BFfを前輪14と路面との間に作用する制動力とみなし、目標スリップ率テーブルにより設定可能な目標スリップ率の最大値(上記の値b1)をSLmaxで表し、現在設定されている目標スリップ率の値(上記の値b3)をSLで表す。この場合、前輪14に対する制動力の減少量DFfは、下記式(7)により算出することができる。
DFf={(SLmax/SL)−1}・BFf・・・(7)
同様に、CPU61は、後輪82のアンチロックブレーキ動作時に、後輪82に対する制動力の減少量を算出する。上記式(6)により算出される制動力BFrを後輪82と路面との間に作用する制動力とみなし、目標スリップ率テーブルにより設定可能な目標スリップ率の最大値(上記の値b1)をSLmaxで表し、現在設定されている目標スリップ率の値(上記の値b3)をSLで表す。この場合、後輪82に対する制動力の減少量DFrは、下記式(8)により算出することができる。
DFr={(SLmax/SL)−1}・BFr・・・(8)
アンチロックブレーキ動作が行われていない車輪のスリップ率は目標スリップ率以下である。そのため、アンチロックブレーキ動作が行われていない車輪のスリップ率が目標スリップ率を超えない範囲で、その車輪に与えられる制動力を大きくすることができる。
そこで、CPU61は、前輪14のABSが作動しかつ後輪82のABSが作動していない場合に、前輪14のABSの補正処理(目標スリップ率の減少)により生じる前輪14に対する制動力の減少量DFfの一部または全てを補うように後輪液圧回路30Bを制御する。
また、CPU61は、後輪82のABSが作動しかつ前輪14のABSが作動していない場合に、後輪82のABSの補正処理(目標スリップ率の減少)により生じる後輪82に対する制動力の減少量DFrの一部または全てを補うように前輪液圧回路30Aを制御する。
(3)ABS制御プログラム
本実施の形態に係るブレーキ制御装置においては、第1の実施の形態と同様に、前輪14および後輪82についてのABS制御プログラムが図12のCPU61によりそれぞれ独立に実行される。それにより、各ABS制御プログラムに基づくABS制御処理および後述する制動力補償処理が行われる。各ABS制御処理は、目標スリップ率を変更する補正処理を含む。
以下の説明では、前輪14および後輪82についてのそれぞれのABS制御処理の理解を容易にするために、前輪14および後輪82のうちの一方の車輪を第1輪と呼び、前輪14および後輪82のうちの他方の車輪を第2輪と呼ぶ。前輪14が第1輪に相当する場合、後輪82が第2輪に相当する。また、後輪82が第1輪に相当する場合、前輪14が第2輪に相当する。
第1の実施の形態と同様に、ABS制御処理における補正処理には、目標スリップ率テーブルが用いられる。目標スリップ率テーブルとして、例えば図8の目標スリップ率テーブルを用いることができる。
図14および図15は、第2の実施の形態に係るABS制御プログラムに基づくABS制御処理のフローチャートである。図14および図15のABS制御処理は、例えば1msec以上20msec以下の周期で繰り返し実行される。また、以下の説明では、第1輪についてのABS制御処理のみを説明するが、第1輪についてのABS制御処理とは独立に第2輪についてのABS制御処理が実行される。
まず、CPU61は、図5の横滑り加速度算出部53から与えられる第1輪の横滑り加速度の絶対値に対応する目標スリップ率を図12のROM62に記憶されている目標スリップ率テーブルから取得することにより、第1輪の目標スリップ率を設定する(ステップS31)。
続いて、CPU61は、図9のステップS12の処理と同様に、車体速度Vを算出する(ステップS32)。また、CPU61は、図9のステップS13の処理と同様に、第1輪の現在のスリップ率を算出する(ステップS33)。
その後、CPU61は、図12のRAM63に記憶されている第1輪のABSフラグがオン状態であるか否かを判定する(ステップS34)。本実施の形態においては、第1輪のABSフラグのオン状態は、第1輪についてABSが作動していることを示す。第1輪のABSフラグのオフ状態は、第1輪についてABSが作動していないことを示す。初期状態では、第1輪のABSフラグはオフ状態である。
第1輪のABSフラグがオフ状態である場合、CPU61は、直前のステップS33で算出された第1輪の現在のスリップ率が、直前のステップS31で設定された第1輪の目標スリップ率よりも大きいか否かを判定する(ステップS35)。
ステップS35において、現在の第1輪のスリップ率が第1輪の目標スリップ率以下である場合には、第1輪の横力の余裕度は正の値となる。それにより、第1輪と路面との間には十分な横力が発生するので、第1輪の横滑りが発生しない。この場合、CPU61は、第1輪についてABSが作動していない状態を維持し、第1輪の制動力減少量として0をRAM63に記憶する(ステップS36)。また、CPU61は、制動力補償処理を行う(ステップS37)。ステップS37の制動力補償処理の詳細については後述する。その後、CPU61は、ステップS31の処理に戻る。
ステップS35において、現在の第1輪のスリップ率が第1輪の目標スリップ率よりも大きい場合には、第1輪の横力の余裕度は負の値となり、第1輪の横滑りが発生する。そこで、CPU61は、第1輪の横滑りを抑制するために、図10のステップS16と同様に、第1輪のABSフラグをオン状態に設定する(ステップS38)。それにより、第1輪についてABSが作動する。
ステップS34において第1輪のABSフラグがオン状態である場合およびステップS38において第1輪のABSフラグがオン状態に設定された場合、CPU61は、直前のステップS33で算出された第1輪の現在のスリップ率が、直前のステップS31で設定された第1輪の目標スリップ率よりも大きいか否かを判定する(ステップS41)。
ステップS41において、現在の第1輪のスリップ率が第1輪の目標スリップ率以下である場合には、CPU61は、図10のステップS22,S23と同様の処理を行う。すなわち、CPU61は、第1輪のWC液圧を増加させ(ステップS42)、第1輪のWC液圧の増加の開始から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS43)。
CPU61は、第1輪のWC液圧の増加の開始から所定時間が経過した場合に、図10のステップS24と同様に、第1輪のABSフラグをオフ状態に設定し(ステップS44)、ステップS31の処理に戻る。それにより、第1輪についてのABSが停止する。
ステップS41において現在の第1輪のスリップ率が第1輪の目標スリップ率よりも大きい場合、CPU61は、図10のステップS25と同様に、第1輪のWC液圧を減少させる(ステップS45)。
ステップS43において第1輪のWC液圧の増加の開始から所定時間が経過していない場合またはステップS45の処理後、CPU61は、上記の式(7)を用いて第1輪に対する制動力の減少量を算出し、その算出結果を第1輪の制動力減少量としてRAM63に記憶する(ステップS46)。この場合の算出結果は0よりも大きい。その後、CPU61は、ステップS31の処理に戻る。
第2輪についてのABS制御処理では、上記の第1輪についてのABS制御処理における各ステップの「第1輪」を「第2輪」に変更した処理が実行される。それにより、CPU61は、第2輪についてABSが作動していない場合に、上記のステップS36に相当するステップで第2輪の制動力減少量として0をRAM63に記憶する。その後、CPU61は、制動力補償処理を行う。また、CPU61は、第2輪についてABSが作動している場合に、上記のステップS46に相当するステップで上記の式(8)を用いて第2輪に対する制動力の減少量を算出する。この場合の算出結果は0よりも大きい。また、CPU61は、その算出結果を第2輪の制動力減少量としてRAM63に記憶する。
上記のように、第1輪および第2輪についてのABS制御処理が行われることにより、第1輪についてABSが作動していない場合には、第1輪の制動力減少量として0がRAM63に記憶される。また、第1輪についてABSが作動している場合には、0よりも大きい第1輪の制動力減少量の算出結果がRAM63に記憶される。同様に、第2輪についてABSが作動していない場合には、第2輪の制動力減少量として0がRAM63に記憶される。また、第2輪についてABSが作動している場合には、0よりも大きい第2輪の制動力減少量の算出結果がRAM63に記憶される。
図16は、図15のステップS37の制動力補償処理のフローチャートである。第1輪についてのABS制御処理においては、図15のステップS37の制動力補償処理が開始されると、CPU61は、上記の式(5)を用いることにより、RAM63に記憶されている第2輪の制動力減少量に基づいて第2輪の制動力減少量に相当する制動力を得るために必要なホイールシリンダWC1のWC液圧を算出する(ステップS51)。その後、CPU61は、算出されたWC液圧に基づいて第1輪のスリップ率が目標スリップ率を超えない範囲でホイールシリンダWC1のWC液圧を増加させ(ステップS52)、図14のステップS31の処理に戻る。
ステップS51において、RAM63に記憶されている第2輪の制動力減少量が0である場合、第2輪についてABSが作動していない。この場合、第2輪の制動力減少量に相当する制動力を得るために必要なホイールシリンダWC1のWC液圧は0になる。そのため、ステップS52では第1輪のWC液圧が増加されない。
このようにして、第2輪についてABSが作動しかつ第1輪についてABSが作動していない場合に、第2輪のABSの補正処理により生じる第2輪の制動力減少量の一部または全てが第1輪に与えられる制動力により補償される。その結果、自動二輪車100の全体に作用する制動力の低下が抑制される。
一方、CPU61は、第2輪についての上記のステップS51に相当するステップで、上記の式(6)を用いることにより、RAM63に記憶されている第1輪の制動力減少量に基づいて第1輪の制動力減少量に相当する制動力を得るために必要なホイールシリンダWC2のWC液圧を算出する。その後、CPU61は、上記のステップS52に相当するステップで、算出されたWC液圧に基づいて第2輪のスリップ率が目標スリップ率を超えない範囲でホイールシリンダWC2のWC液圧を増加させ、図14のステップS31の処理に戻る。
上記のステップS51に対応するステップで、RAM63に記憶されている第1輪の制動力減少量が0である場合、第1輪についてABSが作動していない。この場合、第1輪の制動力減少量に相当する制動力を得るために必要なホイールシリンダWC2のWC液圧は0になる。そのため、後続のステップでは第2輪のWC液圧が増加されない。
このようにして、第1輪についてABSが作動しかつ第2輪についてABSが作動していない場合に、第1輪のABSの補正処理により生じる第1輪の制動力減少量の一部または全てが第2輪に与えられる制動力により補償される。その結果、自動二輪車100の全体に作用する制動力の低下が抑制される。
(4)制御例
図17は、第2の実施の形態において制動操作が行われることにより自動二輪車100の車体速度が減少する場合のABS制御処理の一例を示す図である。図17の最上段のグラフは、第1輪の横滑り加速度と時間との関係を示す。図17の最上段のグラフにおいては、縦軸が横滑り加速度の絶対値を表し、横軸が時間を表す。
図17の上から2段目のグラフは、第1輪および第2輪に与えられる制動力と時間との関係を示す。図17の上から2段目のグラフにおいては、縦軸が制動力を表し、横軸が時間を表す。また、第1輪に与えられる制動力が実線で示され、第2輪に与えられる制動力が太い点線で示される。
図17の上から3段目のグラフは、第1輪の周速度および車体速度と時間との関係を示す。図17の上から3段目のグラフにおいては、縦軸が速度を表し、横軸が時間を表す。また、車体速度が太い実線で示され、第1輪の周速度が実線で示される。さらに、第1輪の換算目標スリップ率が一点鎖線で示される。
図17の最下段のグラフは、第1輪および第2輪のWC液圧と時間との関係を示す。図17の下段のグラフにおいては、縦軸がWC液圧を表し、横軸が時間を表す。また、第1輪のWC圧が実線で示され、第2輪のWC圧が太い点線で示される。
図17の例においても、図11の例と同様に、時点t1〜t5,t11〜t13の期間で第1輪にほぼ一定の低い横滑り加速度が発生する。一方、時点t5〜t7の期間においては、時点t1〜t5,t11〜t13の期間における横滑り加速度に比べて大きい横滑り加速度が第1輪に発生する。それにより、時点t1〜t13の期間で、図11の例と同様に、第1輪に発生する横滑り加速度、第1輪の周速度、第1輪の換算目標スリップ率、第1輪のWC液圧が変化する。
ここで、図17の上から3段目のグラフに示されるように、時点t5〜t11の期間においては、第1輪の換算目標スリップ率が大きくなる。すなわち、第1輪の目標スリップ率が小さくなる。それにより、図17の上から2段目のグラフに示されるように、第1輪に与えられる制動力も小さくなる。本実施の形態では、第2輪についてABSが作動していない場合に、上記のステップS37の制動力補償処理により第1輪の制動力減少量が第2輪に与えられる制動力により補償される。
そのため、図17の例では、最下段のグラフに示されるように、第2輪のWC液圧が時点t5〜t11の期間において一時的に増加される。それにより、上から2段目のグラフに示されるように、第2輪に与えられる制動力が時点t5〜t11の期間において一時的に大きくなる。その結果、自動二輪車100の全体に作用する制動力の低下が抑制され、自動二輪車100の減速度が低下することが抑制される。
(5)第2の実施の形態の効果
上記のように、本実施の形態においては、後輪82についてABSが作動しかつ前輪14についてABSが作動していない場合に、後輪82のABSの補正処理により生じる後輪82の制動力減少量が第1輪に与えられる制動力により補償される。その結果、自動二輪車100の全体に作用する制動力の低下が抑制される。
同様に、前輪14についてABSが作動しかつ後輪82についてABSが作動していない場合に、前輪14のABSの補正処理により生じる前輪14の制動力減少量が後輪82に与えられる制動力により補償される。その結果、自動二輪車100の全体に作用する制動力の低下が抑制される。
[3]他の実施の形態
(1)上記の実施の形態では、ABS制御処理により横滑り加速度検出装置50により検出される車輪の横滑り加速度の絶対値が大きいほど低くなるように目標スリップ率が変更される。このようにして、車輪のアンチロックブレーキ動作が補正されるが、アンチロックブレーキ動作の補正は上記の例に限定されない。
目標スリップ率を変更することによりアンチロックブレーキ動作の補正を行う代わりに、以下の方法でアンチロックブレーキ動作の補正を行ってもよい。
本例では、アンチロックブレーキ動作における目標スリップ率は一定である。以下の説明では、上記の実施の形態で用いられる目標スリップ率を区別することができるように、本例の目標スリップ率を固定目標スリップ率と呼ぶ。また、本例では、図8の目標スリップ率テーブルに代えて、WC液圧減少速度テーブルがABS用ECU60のROM62に記憶される。
ABS用ECU60のCPU61は、WC液圧減少速度テーブルに基づいて、液圧制御ユニット30を制御する。図18は、WC液圧減少速度テーブルの一例を示すグラフである。図18のグラフにおいて、縦軸はWC液圧の減少速度を表し、横軸は車輪の横滑り加速度の絶対値を表す。WC液圧減少速度テーブルには、太い実線で示されるように、横滑り加速度の絶対値と車輪のWC液圧の減少速度との関係が予め設定される。
図18のWC液圧減少速度テーブルによれば、横滑り加速度の絶対値が値a1と値a2との間の範囲では、WC液圧の減少速度は横滑り加速度の絶対値が増加するにつれて値c1から値c2へ増加するように設定される。ここで、値a2は値a1よりも大きい。また、値c2は値c1よりも大きい。横滑り加速度の絶対値が値a1以下の範囲では、WC液圧の減少速度は一定の値c1に設定される。横滑り加速度の絶対値が値a2以上の範囲では、WC液圧の減少速度は一定の値c2に設定される。
このようにWC液圧の減少速度が設定されることにより、車輪の横滑り加速度の絶対値が値a1と値a2との間の範囲内にある場合に、横滑り加速度の絶対値が大きいほどWC液圧の減少速度が高くなる。具体的には、CPU61は、横滑り加速度の絶対値が大きくなるほどWC液圧を減少させるときのポンプ33a,33bの回転速度を上昇させる。
この場合、横滑り加速度の絶対値が大きくなる場合に、WC液圧の減少速度がWC液圧の増加速度よりも大きくなるので、車輪のスリップ率の振幅の中心値(以下、平均スリップ率と呼ぶ。)は固定目標スリップ率よりも低くなるように変化する。このように、車輪の平均スリップ率が固定目標スリップ率よりも低くなる場合には、上記の実施の形態と同様に、最大横力の余裕度が増加する。それにより、目標スリップ率を変更することによりアンチロックブレーキ動作の補正を行う場合と実質的に等しい効果を得ることができる。
図19は、他の実施の形態において制動操作が行われることにより自動二輪車100の車体速度が減少する場合のABS制御処理の一例を示す図である。図19の上段のグラフは、車輪の横滑り加速度と時間との関係を示す。図19の上段のグラフにおいては、縦軸が横滑り加速度の絶対値を表し、横軸が時間を表す。
図19の中段のグラフは、車輪の周速度および車体速度と時間との関係を示す。図19の中段のグラフにおいては、縦軸が速度を表し、横軸が時間を表す。また、車体速度が太い実線で示され、車輪の周速度が実線で示される。また、車輪の周速度に換算された固定目標スリップ率(以下、換算固定目標スリップ率と呼ぶ。)が一点鎖線で示される。さらに、車輪の周速度の振幅の中心(以下、平均周速度と呼ぶ。)が太い点線で示される。
図19の下段のグラフは、WC液圧と時間との関係を示す。図19の下段のグラフにおいては、縦軸が車輪の制動に用いられるWC液圧を表し、横軸が時間を表す。
図19の例では、図19の上段のグラフに示すように、時点t1〜t5の期間において車輪にほぼ一定の低い横滑り加速度が発生する。一方、時点t5〜t12の期間においては、時点t1〜t5の期間における横滑り加速度に比べて大きい横滑り加速度が発生する。
まず、時点t1で乗員により車輪の制動操作が開始される。その後、時点t1〜t5の期間において車輪の周速度と換算固定目標スリップ率との大小関係が切り替わるごとにWC液圧の増加および減少が繰り返され、車輪の周速度が換算固定目標スリップ率に近づくように変化する。このとき、WC液圧の増加速度および減少速度の大きさはほぼ等しい。そのため、時点t1〜t5の期間において、車輪の平均周速度は、換算固定目標スリップ率とほぼ一致する。すなわち、車輪の平均スリップ率は固定目標スリップ率とほぼ一致する。
上記のように、時点t5〜t12の期間において横滑り加速度が大きくなる。そのため、時点t5〜t12の期間においては、時点t1〜t5の期間に比べてWC液圧の減少速度が高くなり、車輪の平均周速度が高くなる。すなわち、車輪の平均スリップ率が小さくなる。
それにより、時点t5〜t12の期間においては、車輪の平均周速度が換算固定目標スリップ率によらず車体速度に近づくように変化する。すなわち、車輪の平均スリップ率が減少する。このように、本例では横滑り加速度が小さい場合に車輪の平均周速度が低くなり、車輪の平均スリップ率が大きくなる。一方、横滑り加速度が大きい場合に車輪の平均周速度が高くなり、車輪の平均スリップ率が小さくなる。
なお、車輪の平均スリップ率が小さくなると、車輪に与えられる制動力が小さくなる。そのため、時点t5〜t12の期間においては、制動力が小さくなることにより車体速度の減速度が時点t1〜t5の期間に比べて小さくなっている。
(2)上記の実施の形態においては、横滑り加速度検出装置50は、自動二輪車100の左右方向に生じる横滑りの程度の一例として横滑り加速度を検出する。これに限らず、横滑りの程度の他の例として、スリップ角が検出されてもよい。スリップ角とは、路面上での自動二輪車100の進行方向に対するタイヤの中心軸を通る面の傾きをいう。この場合、検出されたスリップ角に基づいてアンチロックブレーキ動作の補正が行われてもよい。例えば、スリップ角が検出される場合には、車輪のスリップ角の大きさが大きいほど目標スリップ率が小さくなるように目標スリップ率が変更されてもよい。さらに、これに限らず、横滑りの程度の他の例として、スリップ角微分値(単位時間当たりのスリップ角変化量)が検出されてもよい。この場合、検出されたスリップ角微分値に基づいてアンチロックブレーキ動作の補正が行われてもよい。
また、上記の実施の形態においては、図3および図12のCPU61は、前輪14および後輪82の現在の縦滑りの程度の一例としてスリップ率SLf,SLrを算出する。これに限らず、縦滑りの程度の他の例として、スリップ量(車輪の周速度と車体速度との差)または車輪加速度差(車体加速度と車輪加速度との差)が算出されてもよい。この場合、算出されたスリップ量または車輪加速度差等に基づいてABSが作動してもよい。
(3)上記の実施の形態においては、前輪14および後輪82に制動力を与えるために液圧制御ユニット30およびブレーキホースL1〜L4により前輪14および後輪82のWC液圧が調整される。このようなブレーキ液の圧力を調整する液圧式のブレーキに代えて、電気モータを作動させることによりブレーキパッドをブレーキロータに押圧する機械式のブレーキを用いてもよい。この場合、電気モータを制御することにより、車輪に与える制動力を調整することができる。
(4)上記の実施の形態においては、図3および図12のCPU61は、図4(b),(c)に示されるように、ABSの作動中にWC液圧を減少および増加させる。この場合、図11の下段および図17の最下段に示すように、ABSの作動中のWC液圧は減少および増加する。
これに限らず、ABSの作動中にWC液圧が減少する期間およびWC液圧が増加する期間に加えて、WC液圧が一定の圧力に保持される期間が設けられてもよい。WC液圧を一定の圧力に保持する場合、CPU61は、例えば図3の保持弁31aを閉じ、減圧弁32aを閉じるとともにポンプ33aを停止させる。この場合、前輪マスタシリンダ16sとホイールシリンダWC1との間、およびリザーバ34aとホイールシリンダWC1との間のブレーキ液の経路が保持弁31aおよび減圧弁32aにより遮断される。それにより、ホイールシリンダWC1におけるブレーキ液の圧力が一定に保持される。
上記のように、ABSの作動中にWC液圧が減少する期間、WC液圧が増加する期間およびWC液圧が一定に保持される期間を組み合わせることにより、WC液圧を任意の傾きで変化させることができる。この場合、スリップ率の振幅が小さくなるように、WC液圧を変化させることが可能になる。
(5)第2の実施の形態においては、図13に太い点線で示すように、スリップ率の値b1〜b2の範囲で車輪と路面との間に作用する制動力が、原点から座標(b1,BFmax)に延びる直線により近似される。これに限らず、スリップ率の値b1〜b2の範囲で車輪と路面との間に作用する制動力は、例えば路面の状態に応じて異なる直線または曲線により近似されてもよい。
この場合、図12のCPU61は、例えば、スリップ率の変化率に基づいて路面の状態を判定する。その後、CPU61は、判定結果に応じて近似される直線または曲線に基づいて上記の式(7)および式(8)とは異なる式を用いることにより前輪14および後輪82における制動力の減少量を算出する。
(6)上記の実施の形態で用いられる図8の目標スリップ率テーブルにおいては、横滑り加速度の絶対値が値a1から値a2まで大きくなるにつれて、目標スリップ率が値b1から値b2へ直線状に減少する。これに限らず、目標スリップ率テーブルにおいては、目標スリップ率が値b1から値b2へ階段状に減少してもよいし、曲線状に減少してもよい。また、横滑り加速度の絶対値の値a1は0であってもよい。
(7)上記の図18のWC液圧減少速度テーブルにおいては、横滑り加速度の絶対値が値a1から値a2まで大きくなるにつれて、WC液圧の減少速度は値c1から値c2へ直線状に増加する。これに限らず、WC液圧減少速度テーブルにおいては、WC液圧の減少速度が値c1から値c2へ階段状に減少してもよいし、曲線状に減少してもよい。また、横滑り加速度の絶対値の値a1は0であってもよい。
(8)第1および第2の実施の形態においては、前輪14および後輪82について、それぞれABS制御処理が実行される。これに限らず、前輪14および後輪82のうちのいずれか一方にのみ上記のABS制御処理が実行されてもよい。
(9)上記の実施の形態においては、鞍乗型車両の一例として自動二輪車100について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は自動三輪車または自動四輪車等の他の鞍乗型車両にも適用可能である。この場合、車輪ごとに上記のABS制御処理が実行されてもよい。
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態においては、前輪14または後輪82が第1の車輪の例であり、自動二輪車100が鞍乗型車両の例であり、ブレーキ制御装置200がブレーキ制御装置の例であり、前輪液圧回路30Aまたは後輪液圧回路30Bが第1の制動装置の例である。
また、前輪14または後輪82のスリップ率および第1輪または第2輪のスリップ率が第1の車輪のスリップ率および第1の車輪の縦滑りの程度の例であり、CPU61が縦滑り検出装置および制御部の例であり、横滑り加速度検出装置50が横滑り算出装置および横滑り検出装置の例であり、前輪14または後輪82の目標スリップ率および第1輪または第2輪の目標スリップ率が第1の目標スリップ率および第1の目標縦滑り程度の例である。
また、値a1が第1の値の例であり、値a2が第2の値の例であり、値b1が第3の値の例であり、値b2が第4の値の例であり、目標スリップ率テーブルが第1の車輪の横滑り加速度の大きさと目標スリップ率との対応関係の例であり、ABS用ECU60のROM62が記憶部の例である。
また、後輪82または前輪14が第2の車輪の例であり、後輪液圧回路30Bまたは前輪液圧回路30Aが第2の制動装置の例であり、後輪82または前輪14のスリップ率および第2輪または第1輪のスリップ率が第2の車輪のスリップ率および第2の車輪の縦滑りの程度の例であり、後輪82または前輪14の目標スリップ率および第2輪または第1輪の目標スリップ率が第2の目標スリップ率および第2の目標縦滑り程度の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
[5]参考形態
(1)第1の参考形態に係るブレーキ制御装置は、第1の車輪を有する鞍乗型車両のブレーキ制御装置であって、第1の車輪に制動力を与える第1の制動装置と、第1の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成される縦滑り検出装置と、第1の車輪の横滑りの程度を検出するように構成される横滑り検出装置と、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪の縦滑りの程度が第1の目標縦滑り程度に近づくように第1の制動装置を制御する第1のアンチロックブレーキ動作を実行する制御部とを備え、制御部は、横滑り検出装置の検出結果に基づいて第1の車輪の横滑りを抑制するように第1のアンチロックブレーキ動作を補正する第1の補正処理を行うものである。
そのブレーキ制御装置においては、縦滑り検出装置により第1の車輪の縦滑りの程度が検出され、横滑り検出装置により第1の車輪の横滑りの程度が検出される。第1の車輪の制動時に制御部により第1のアンチロックブレーキ動作が実行される。第1のアンチロックブレーキ動作においては、検出される第1の車輪の縦滑りの程度が第1の目標縦滑り程度に近づくように第1の制動装置が制御される。
このとき、第1の補正処理が行われる。第1の補正処理では、横滑り検出装置の検出結果に基づいて第1の車輪の横滑りが抑制されるように第1のアンチロックブレーキ動作が補正される。
第1の車輪の横滑りの程度が大きい場合には、第1の補正処理における補正量を大きくすることにより、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを抑制することができる。また、第1の車輪の横滑りの程度が小さい場合には、第1の補正処理における補正量を小さくすることにより、第1の車輪の横滑りを抑制しつつ第1の車輪に対する制動力を十分に確保することができる。さらに、直進走行における制動時には、横滑りが発生しにくい。この場合、第1の補正処理における補正量を小さくすることにより、直進走行における制動時に十分な減速を行うことができる。
したがって、車両の傾斜状態ならびに路面および第1の車輪の状態に関らず第1の車輪の横滑りを抑制するとともに、第1の車輪に対する制動力を確保することができる。その結果、乗員は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
(2)制御部は、第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑りの程度が大きいほど第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなると、第1の車輪が横滑りしないために必要な横力に対する第1の車輪と路面との間に発生可能な最大横力の余裕度が増加する。それにより、第1の車輪の横滑りの程度が大きいほど横滑りを大きく抑制することができる。このように、第1の車輪の横滑りの程度に応じて横滑りを適切に抑制することができる。
(3)横滑り検出装置は、第1の車輪の横滑り加速度を第1の車輪の横滑りの程度として検出し、制御部は、第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の目標縦滑り程度が小さくなるように第1の目標縦滑り程度を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑りの程度が大きい場合には、第1の目標縦滑り程度が小さくなるので、第1の車輪が横滑りしないために必要な横力に対する第1の車輪と路面との間に発生可能な最大横力の余裕度が増加する。それにより、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを抑制することができる。また、第1の車輪の横滑りの程度が小さい場合には、第1の目標縦滑り程度が大きくなるので、第1の車輪に対する制動力の減少量が小さい。それにより、第1の車輪の横滑りを抑制しつつ第1の車輪に対する制動力を確保することができる。
また、直進走行における制動時には、横滑りが発生しにくい。この場合、第1の目標縦滑り程度が大きくなるので、第1の車輪に対する制動力の減少量が小さい。それにより、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。
したがって、車両の傾斜状態ならびに路面および第1の車輪の状態に関らず第1の車輪の横滑りを抑制することができるとともに、第1の車輪に対する制動力を確保することができる。
また、第1の目標縦滑り程度を変更することにより最大横力の余裕度および制動力を制御することができる。それにより、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第1の補正処理を容易に実行することができる。
さらに、第1の車輪の横滑り加速度の大きさは、第1の車輪の横滑りが発生しないために必要な横力の不足分に相当し、この不足分により横滑りが発生する。したがって、第1の車輪の横滑り加速度の大きさに基づいて横滑りの程度を正確に検出することができる。そのため、第1の車輪の横滑り加速度の大きさに基づいて最大横力の余裕度および制動力が確保されるように第1の目標縦滑り程度を正確に変更することができる。それにより、第1の車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
(4)制御部は、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値とその第1の値よりも大きい第2の値との間の範囲内にある場合に、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが増加するにつれて第1の目標縦滑り程度が第3の値からその第3の値よりも小さい第4の値に減少するように第1の目標縦滑り程度を変更してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度が一定の範囲内にある場合に、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど第1の目標縦滑り程度が低くなる。それにより、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
(5)制御部は、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値以下である場合に、第1の目標縦滑り程度を第3の値に設定してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値以下であるときに、第1の目標縦滑り程度が第3の値で一定に保持される。それにより、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが小さい場合に、第1の車輪の横滑りを抑制しつつ第1の車輪に対する制動力を十分に確保することができる。
(6)制御部は、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第2の値以上である場合に、第1の目標縦滑り程度を第4の値に設定してもよい。
この場合、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第2の値以上であるときに、第1の目標縦滑り程度が第4の値で一定に保持される。それにより、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きい場合に、第1の車輪に対する制動力を確保しつつ第1の車輪の横滑りを抑制することができる。
(7)ブレーキ制御装置は、第1の車輪の横滑り加速度の大きさと目標縦滑り程度との対応関係を記憶する記憶部をさらに備え、対応関係は、第1の車輪の横滑り加速度の大きさが増加するにつれて目標縦滑り程度が第3の値から第4の値に減少するように予め設定され、制御部は、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑り加速度の大きさに対応する目標縦滑り程度を記憶部に記憶される対応関係から取得し、第1の補正処理として、取得した目標縦滑り程度を第1の目標縦滑り程度として設定してもよい。
この場合、記憶部に第1の車輪の横滑り加速度と目標縦滑り程度との対応関係が記憶されるので、演算処理を行うことなく第1の車輪の横滑り加速度に対応する第1の目標縦滑り程度を容易に設定することができる。
(8)横滑り検出装置は、第1の車輪のスリップ角を第1の車輪の横滑りの程度として検出し、制御部は、第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど第1の目標縦滑り程度が小さくなるように第1の目標縦滑り程度を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
この場合、第1の車輪のスリップ角の大きさに基づいて最大横力の余裕度および制動力が確保されるように第1の目標縦滑り程度を正確に変更することができる。それにより、第1の車輪の横滑りを適切に抑制することができる。
(9)鞍乗型車両は、第2の車輪をさらに有し、ブレーキ制御装置は、第2の車輪に制動力を与える第2の制動装置をさらに備え、縦滑り検出装置は、第2の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成され、横滑り検出装置は、第2の車輪の横滑りの程度を検出するように構成され、制御部は、縦滑り検出装置により検出される第2の車輪の縦滑りの程度が第2の目標縦滑り程度に近づくように第2の制動装置を制御する第2のアンチロックブレーキ動作を実行し、横滑り検出装置により検出される第2の車輪の横滑りの程度が大きいほど第2の目標縦滑り程度が小さくなるように第2の目標縦滑り程度を変更することにより第2のアンチロックブレーキ動作を補正する第2の補正処理を行ってもよい。
この場合、第2の車輪の制動時に制御部により第2のアンチロックブレーキ動作が実行されるとともに、第2の補正処理が行われる。第2の補正処理では、横滑り検出装置により検出される第2の車輪の横滑りの程度が大きいほど第2の目標縦滑り程度が小さくなるように第2の目標縦滑り程度が変更される。それにより、車両の傾斜状態ならびに路面および第2の車輪の状態に関らず第2の車輪の横滑りが抑制されるとともに、第2の車輪に対する制動力が確保される。
また、第2の目標縦滑り程度を変更することにより最大横力の余裕度および制動力を制御することができる。それにより、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第2の補正処理を容易に実行することができる。
(10)制御部は、第1のアンチロックブレーキ動作の実行時でかつ第2のアンチロックブレーキ動作の非実行時に、第1の補正処理を行うことにより生じる第1の制動装置による制動力の減少量の少なくとも一部を補うように、第2の制動装置による制動力を増加させてもよい。
この場合、第1のアンチロックブレーキ動作時に、第1の補正処理による第1の車輪に対する制動力の減少が、第2の車輪に対する制動力の増加により補償される。その結果、鞍乗型車両の全体に作用する制動力の低下を抑制することができる。
(11)制御部は、第2のアンチロックブレーキ動作の実行時でかつ第1のアンチロックブレーキ動作の非実行時に、第2の補正処理を行うことにより生じる第2の制動装置による制動力の減少量の少なくとも一部を補うように、第1の制動装置による制動力を増加させてもよい。
この場合、第2のアンチロックブレーキ動作時に、第2の補正処理による第2の車輪に対する制動力の減少が、第1の車輪に対する制動力の増加により補償される。その結果、鞍乗型車両の全体に作用する制動力の低下を抑制することができる。
(12)縦滑り検出装置は、第1の車輪のスリップ率を第1の車輪の縦滑りの程度として検出するように構成され、制御部は、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ率が第1の目標縦滑り程度としての第1の目標スリップ率に近づくように第1の制動装置を制御することにより第1のアンチロックブレーキ動作を実行し、第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑りの程度が大きいほど第1の目標スリップ率が小さくなるように第1の目標スリップ率を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
車輪のスリップ率は、車輪の周速度および車体速度に基づいて単純な演算式により算出することができる。したがって、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第1のアンチロックブレーキ動作を容易に実行するとともに、第1の補正処理を容易に行うことができる。
(13)縦滑り検出装置は、第1および第2の車輪のスリップ率を第1および第2の車輪の縦滑りの程度としてそれぞれ検出するように構成され、制御部は、縦滑り検出装置により検出される第1の車輪のスリップ率が第1の目標縦滑り程度としての第1の目標スリップ率に近づくように第1の制動装置を制御することにより第1のアンチロックブレーキ動作を実行し、縦滑り検出装置により検出される第2の車輪のスリップ率が第2の目標縦滑り程度としての第2の目標スリップ率に近づくように第2の制動装置を制御することにより第2のアンチロックブレーキ動作を実行し、第1の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第1の車輪の横滑りの程度が大きいほど第1の目標スリップ率が小さくなるように第1の目標スリップ率を変更することにより第1のアンチロックブレーキ動作を補正し、第2の補正処理として、横滑り検出装置により検出される第2の車輪の横滑りの程度が大きいほど第2の目標スリップ率が小さくなるように第2の目標スリップ率を変更することにより第2のアンチロックブレーキ動作を補正してもよい。
上記のように、車輪のスリップ率は、車輪の周速度および車体速度に基づいて単純な演算式により算出することができる。したがって、複雑な構成を設けることなくかつ複雑な処理を行うことなく第1および第2のアンチロックブレーキ動作を容易に実行するとともに、第1および第2の補正処理を容易に行うことができる。
(14)第2の参考形態に係る鞍乗型車両は、第1の車輪と、上記のブレーキ制御装置とを備えるものである。
上記のブレーキ制御装置においては、第1の車輪の横滑りの程度に基づいて第1のアンチロックブレーキ動作が補正される。それにより、車両の傾斜状態ならびに路面および第1の車輪の状態に関らず第1の車輪の横滑りが抑制されるとともに、第1の車輪に対する制動力が確保される。また、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。その結果、乗員は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
(15)第3の参考形態に係る鞍乗型車両は、第1および第2の車輪と、上記のブレーキ制御装置とを備えるものである。
上記のブレーキ制御装置においては、第1および第2の車輪の横滑りの程度に基づいて第1および第2のアンチロックブレーキ動作が補正される。それにより、車両の傾斜状態ならびに路面および第1および第2の車輪の状態に関らず第1および第2の車輪の横滑りが抑制されるとともに、第1および第2の車輪に対する制動力が確保される。また、直進走行における制動時に十分な減速が行われる。
その結果、乗員は、鞍乗型車両の制動操作を円滑かつ容易に行うことが可能になる。
本発明は種々の車両の制動システムとして有効に利用することができる。

Claims (15)

  1. 第1の車輪を有するとともに傾斜して走行可能な鞍乗型車両のブレーキ制御装置であって、
    前記第1の車輪に制動力を与える第1の制動装置と、
    前記第1の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成される縦滑り検出装置と、
    前記鞍乗型車両の傾斜角、車体速度、ヨーレート、ロールレートおよび横加速度に基づいて前記第1の車輪の横滑り加速度を算出するように構成される横滑り算出装置と、
    前記縦滑り検出装置により検出される前記第1の車輪の縦滑りの程度が目標となる縦滑りの程度である第1の目標縦滑り程度に近づくように前記第1の制動装置を制御する第1のアンチロックブレーキ動作を実行する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記第1の車輪の横滑りを抑制するように前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する第1の補正処理として、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど前記第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する、ブレーキ制御装置。
  2. 前記制御部は、前記第1の補正処理として、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど前記第1の目標縦滑り程度が小さくなるように前記第1の目標縦滑り程度を変更することにより前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する、請求項1記載のブレーキ制御装置。
  3. 前記制御部は、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが第1の値とその第1の値よりも大きい第2の値との間の範囲内にある場合に、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが増加するにつれて前記第1の目標縦滑り程度が第3の値からその第3の値よりも小さい第4の値に減少するように前記第1の目標縦滑り程度を変更する、請求項2記載のブレーキ制御装置。
  4. 前記制御部は、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが前記第1の値以下である場合に、前記第1の目標縦滑り程度を前記第3の値に設定する、請求項3記載のブレーキ制御装置。
  5. 前記制御部は、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが前記第2の値以上である場合に、前記第1の目標縦滑り程度を前記第4の値に設定する、請求項3または4記載のブレーキ制御装置。
  6. 前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさと目標縦滑り程度との対応関係を記憶する記憶部をさらに備え、
    前記対応関係は、前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが増加するにつれて目標縦滑り程度が前記第3の値から前記第4の値に減少するように予め設定され、
    前記制御部は、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさに対応する目標縦滑り程度を前記記憶部に記憶される前記対応関係から取得し、前記第1の補正処理として、前記取得した目標縦滑り程度を前記第1の目標縦滑り程度として設定する、請求項3〜5のいずれか一項に記載のブレーキ制御装置。
  7. 前記鞍乗型車両は、第2の車輪をさらに有し、
    前記第2の車輪に制動力を与える第2の制動装置をさらに備え、
    前記縦滑り検出装置は、前記第2の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成され、
    前記横滑り算出装置は、前記鞍乗型車両の傾斜角、車体速度、ヨーレート、ロールレートおよび横加速度に基づいて前記第2の車輪の横滑り加速度を算出するように構成され、
    前記制御部は、前記縦滑り検出装置により検出される前記第2の車輪の縦滑りの程度が目標となる縦滑りの程度である第2の目標縦滑り程度に近づくように前記第2の制動装置を制御する第2のアンチロックブレーキ動作を実行し、前記横滑り算出装置により算出される前記第2の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど前記第2の目標縦滑り程度が小さくなるように前記第2の目標縦滑り程度を変更することにより前記第2のアンチロックブレーキ動作を補正する第2の補正処理を行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブレーキ制御装置。
  8. 前記制御部は、
    前記第1のアンチロックブレーキ動作の実行時でかつ前記第2のアンチロックブレーキ動作の非実行時に、前記第1の補正処理を行うことにより生じる前記第1の制動装置による制動力の減少量の少なくとも一部を補うように、前記第2の制動装置による制動力を増加させる、請求項7記載のブレーキ制御装置。
  9. 前記制御部は、
    前記第2のアンチロックブレーキ動作の実行時でかつ前記第1のアンチロックブレーキ動作の非実行時に、前記第2の補正処理を行うことにより生じる前記第2の制動装置による制動力の減少量の少なくとも一部を補うように、前記第1の制動装置による制動力を増加させる、請求項7または8記載のブレーキ制御装置。
  10. 前記縦滑り検出装置は、前記第1の車輪のスリップ率を前記第1の車輪の縦滑りの程度として検出するように構成され、
    前記制御部は、前記縦滑り検出装置により検出される前記第1の車輪のスリップ率が前記第1の目標縦滑り程度としての第1の目標スリップ率に近づくように前記第1の制動装置を制御することにより前記第1のアンチロックブレーキ動作を実行し、前記第1の補正処理として、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど前記第1の目標スリップ率が小さくなるように前記第1の目標スリップ率を変更することにより前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブレーキ制御装置。
  11. 前記縦滑り検出装置は、前記第1および第2の車輪のスリップ率を前記第1および第2の車輪の縦滑りの程度としてそれぞれ検出するように構成され、
    前記制御部は、前記縦滑り検出装置により検出される前記第1の車輪のスリップ率が前記第1の目標縦滑り程度としての第1の目標スリップ率に近づくように前記第1の制動装置を制御することにより前記第1のアンチロックブレーキ動作を実行し、前記縦滑り検出装置により検出される前記第2の車輪のスリップ率が前記第2の目標縦滑り程度としての第2の目標スリップ率に近づくように前記第2の制動装置を制御することにより前記第2のアンチロックブレーキ動作を実行し、前記第1の補正処理として、前記横滑り算出装置により算出される前記第1の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど前記第1の目標スリップ率が小さくなるように前記第1の目標スリップ率を変更することにより前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正し、前記第2の補正処理として、前記横滑り算出装置により算出される前記第2の車輪の横滑り加速度の大きさが大きいほど前記第2の目標スリップ率が小さくなるように前記第2の目標スリップ率を変更することにより前記第2のアンチロックブレーキ動作を補正する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のブレーキ制御装置。
  12. 第1の車輪を有するとともに傾斜して走行可能な鞍乗型車両のブレーキ制御装置であって、
    前記第1の車輪に制動力を与える第1の制動装置と、
    前記第1の車輪の縦滑りの程度を検出するように構成される縦滑り検出装置と、
    前記第1の車輪のスリップ角を検出するように構成される横滑り検出装置と、
    前記縦滑り検出装置により検出される前記第1の車輪の縦滑りの程度が目標となる縦滑りの程度である第1の目標縦滑り程度に近づくように前記第1の制動装置を制御する第1のアンチロックブレーキ動作を実行する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記第1の車輪の横滑りを抑制するように前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する第1の補正処理として、前記横滑り検出装置により検出される前記第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど前記第1の車輪の縦滑りの程度が小さくなるように前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する、ブレーキ制御装置。
  13. 前記制御部は、前記第1の補正処理として、前記横滑り検出装置により検出される前記第1の車輪のスリップ角の大きさが大きいほど前記第1の目標縦滑り程度が小さくなるように前記第1の目標縦滑り程度を変更することにより前記第1のアンチロックブレーキ動作を補正する、請求項12記載のブレーキ制御装置。
  14. 前記第1の車輪と、
    請求項1〜6、10、12および13のいずれか一項に記載のブレーキ制御装置とを備えるとともに傾斜して走行可能な鞍乗型車両。
  15. 前記第1および第2の車輪と、
    請求項7〜9および11のいずれか一項に記載のブレーキ制御装置とを備えるとともに傾斜して走行可能な鞍乗型車両。
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