以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(画像形成装置の全体構成について)
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置17を備えた画像形成装置1の概略構成を示す正面図である。
図1に示す画像形成装置1は、原稿読取り装置(図示せず)により読取られた原稿の画像又は外部から受信した画像データによって示される画像をカラーもしくは単色で用紙等の記録シートPに記録形成する画像形成部10を備えている。
画像形成部10は、露光装置11、現像装置12〜12、像担持体として作用する感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、転写部として作用する中間転写ローラ24〜24を含む中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙部として作用する給紙トレイ18、及び、排紙部として作用する排紙トレイ19、シート搬送装置20を備えている。
画像形成部10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、又は、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。従って、現像装置12〜12、感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、中間転写ローラ24〜24は各色に応じた4種類の画像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられている。
感光体ドラム13〜13は、画像形成装置1の本体1aの上下方向におけるほぼ中央に配置されている。帯電器15〜15は、感光体ドラム3〜3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。露光装置11は、ここでは、レーザダイオード及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニットであり、帯電された感光体ドラム3〜3表面を画像データに応じて露光して、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置12〜12は、感光体ドラム13〜13上に形成された静電潜像を(K,C,M,Y)のトナーにより現像する。クリーナ装置14〜14は、現像及び画像転写後に感光体ドラム13〜13表面に残留したトナーを除去及び回収する。
感光体ドラム13〜13の上方に配置されている中間転写ベルト装置16は、中間転写ローラ24〜24に加えて、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ベルトクリーニング装置25及びテンションローラ26を備えている。
中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ローラ24〜24、テンションローラ26は、中間転写ベルト21を張架して支持し、中間転写ベルト21を所定のシート搬送方向(図中矢印C方向)に周回移動させる。中間転写ローラ24〜24は、中間転写ベルト21内側に回転可能に支持され、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム13〜13に圧接されている。中間転写ベルト21は、各感光体ドラム13〜13に接触するように設けられており、各感光体ドラム13〜13表面のトナー像を中間転写ベルト21に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(各色のトナー像)を形成する。感光体ドラム13〜13から中間転写ベルト21へのトナー像の転写は、中間転写ベルト21内側(裏面)に圧接されている中間転写ローラ24〜24によって行われる。中間転写ローラ24〜24には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
画像形成部10は、転写部として作用する転写ローラ27aを含む2次転写装置27をさらに備えている。転写ローラ27aは、中間転写ベルト21の外側に接触している。上述の様に各感光体ドラム13〜13表面のトナー像は、中間転写ベルト21で積層され、画像データによって示されるカラーのトナー像となる。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト21と共に搬送され、2次転写装置27によって記録シートP上に転写される。中間転写ベルト21と2次転写装置27の転写ローラ27aとは、相互に圧接されて転写ニップ域を形成する。また、2次転写装置27の転写ローラ27aには、中間転写ベルト21上の各色のトナー像を記録シートPに転写させるための電圧(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
中間転写ベルトクリーニング装置25は、中間転写ベルト21上の残留トナーを除去及び回収する。
給紙トレイ18は、記録シートPを格納しておくためのトレイであり、画像形成装置1の本体1aにおける画像形成部10の下側に設けられている。また、画像形成部10の上側に設けられている排紙トレイ19は、印刷済みの記録シートPをフェイスダウンで載置するためのトレイである。
また、画像形成装置1の本体1aには、給紙トレイ18の記録シートPを2次転写装置27や定着装置17を経由させて排紙トレイ19に送るためのシート搬送装置20が設けられている。シート搬送装置20は、Sの字形状のシート搬送経路Sを有し、シート搬送経路Sに沿って、ピックアップローラ31、一対の分離ローラ31a,31b、レジストローラ32、レジスト前ローラ33、定着装置17及び排紙ローラ34が配置されている。
ピックアップローラ31は、給紙トレイ18から記録シートPを1枚ずつシート搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。一方の分離ローラ31aは、他方の分離ローラ31bとの間に記録シートPを通過させて1枚ずつ分離しつつシート搬送経路Sへと搬送する。レジストローラ32は、停止状態において、搬送されて来た記録シートPの先端を突き当てて、記録シートPの先端を揃え、中間転写ベルト21と2次転写装置27との間の転写ニップ域で中間転写ベルト21上のトナー像が記録シートPに転写されるように、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像と同期をとって、記録シートPをタイミングよく搬送する。レジスト前ローラ33は、記録シートPの搬送を促進補助するための小型のローラである。
定着装置17は、ベルト定着方式の定着装置とされており、複数のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)に定着ベルト173(回転定着部材の一例)が巻き掛けられている。定着ベルト173は、加熱ローラ172から定着ローラ171へ熱伝達できるようになっている。定着装置17は、定着ベルト173を介して定着ローラ171に加圧ローラ174が押圧されるようになっている。また、定着ベルト173は、予め定めた所定の厚み(例えば250μm)を有しており、幅が最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPの搬送領域の搬送方向に直交する幅よりも少し大きめ(例えば350mm程度)になっている。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された記録シートPを受け取り、記録シートPを定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟み込んで搬送する。各色のトナー像の定着後の記録シートPは、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。なお、定着装置17については、のちほど詳述する。
以上説明した画像形成装置1では、給紙トレイ18から給紙された記録シートPをシート搬送経路Sに沿って搬送している途中で、記録シートPに対して感光体ドラム13〜13で形成されて転写ベルト21に搬送されたトナー像(未定着画像)を2次転写装置27によって転写させ、さらに定着装置17によって定着させることで印刷処理を行う。
(定着装置について)
(1)実施の形態1
次に、本発明に係る定着装置の実施の形態1について、ベルト定着方式の定着装置17を例にとって以下に説明する。
図2及び図3は、それぞれ、実施の形態1に係る定着装置17の概略構成を示す正面図及び斜視図である。なお、定着装置17の背面図は正面図とは左右が反転するだけで実質的に同じ図であるために、図2では正面図のみを示し、背面図は図示を省略している。また、図3並びに後述する図4及び図5において加圧ローラ174は図示を省略している。
定着装置17は、図2及び図3に示すように、定着ローラ171を含む複数(ここでは二つ)のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)と、定着ローラ171及び加熱ローラ172に巻き掛けられた無端状の定着ベルト173とを備えている。
定着装置17は、さらに加圧ローラ174(図2参照)を備えており、定着ベルト173を間にして定着ローラ171と加圧ローラ174とを相互に押圧した状態で、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に定着ニップ域(定着ニップ部)N(図2参照)を形成するようになっている。なお、定着装置17は、図示を省略したが、加圧ローラ174を定着ローラ171に向けて押圧する押圧手段として作用する押圧装置をさらに備えている。この押圧装置は、従来公知の構成とすることができ、ここでは説明を省略する。
そして、定着ローラ171は、定着ベルト173を介して記録シートP上における未定着のトナーTに対向するようになっており、加熱ローラ172は、定着ベルト173を加熱するようになっている。
具体的には、定着ローラ171は、定着ベルト173を介在させた状態で記録シートP上における未定着のトナーTに対向し、加圧ローラ174に対して定着ベルト173を介在させた状態で定着ベルト173と加圧ローラ174との間の記録シートP上における未定着のトナーTに対向して未定着のトナーTを加圧ローラ174と共に押圧する。また、加熱ローラ172は、ハロゲンヒータ等の熱源177を備えており、熱源177によって加熱されることで定着ベルト173を加熱する。加熱ローラ172は、筒状の芯金を備えている。加熱ローラ172の内側には、加熱ローラ172を加熱する熱源(ここではハロゲンヒータランプ)177が設けられている。これにより、加熱ローラ172が熱源177によって加熱され、加熱ローラ172の熱が定着ベルト173に伝導され、さらに、定着ベルト173を介して定着ローラ171の表面に伝導されて定着ローラ171が加熱される。
定着ローラ171は、定着装置17の本体(具体的には本体フレーム)に回転自在に設けられており、回転軸171aと、芯金171bと、弾力性(クッション性、柔軟性)を有する弾力層171cとを備えている。
詳しく説明すると、定着ローラ171は、芯金171bの外表面に弾力層171cが設けられている。すなわち、定着ローラ171は、外表面に弾力層171cが形成されたローラとされている。
芯金171bは、円柱状(中実)の金属製芯材からなっている。芯金171bとしては、例えば、快削鋼材(SUM材)、ステンレス鋼材(SUS材)、アルミニウム、鉄、銅等の金属或いはそれらの合金等の材料を用いることができる。芯金171bは、ここでは、快削鋼材(SUM材)からなっている。
弾力層171cとしては、例えば、多孔質の樹脂材料、発泡樹脂材料を用いることができる。発泡樹脂材料としては、代表的には、ウレタンゴム(発泡ウレタン)、シリコーンゴム(発泡シリコーン)等の発泡ゴムを例示できる。弾力層171cは、ここでは、発泡ウレタンからなっている。
定着ベルト173は、柔軟性を有する筒状の基体の表面に、離型層として、耐熱性及び離型性に優れた合成樹脂材料(例えばPFAやPTFE等のフッ素系樹脂)が形成された2層構成となっている。また、定着ベルト173の寄り力を低減するために、ベルト基材の内面に、フッ素系樹脂等のコーティングを施してもよい。
加圧ローラ174は、定着装置17の本体(具体的には本体フレーム)に回転自在に設けられており、芯金174aと、離型性を有する離型層174bとを備えている。加圧ローラ174は、芯金174a上に離型層174bが設けられている。
芯金174aは、中空円筒状の金属製芯材からなっている。芯金174aとしては、定着ローラ171と同様の材料、例えば、快削鋼材(SUM材)、ステンレス鋼材(SUS材)、アルミニウム、鉄、銅等の金属或いはそれらの合金等の材料を用いることができる。芯金423は、ここでは、快削鋼材(SUM材)からなっている。
離型層174bとしては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂を用いることができる。離型層171bは、ここでは、PFAからなっている。
定着装置17では、画像形成装置1の本体1a(図1参照)に装着された状態において、本体1a側のギア等の駆動機構(図示せず)が定着ローラ171の回転軸171aに設けられたギア(図示せず)に噛合され、本体1a側の駆動機構からの回転駆動力がギアを介して定着ローラ171の回転軸171aに伝達されて、定着ローラ171が所定の回転方向E1に回転駆動される。定着ローラ171の回転に伴い、定着ベルト173が定着ローラ171の回転方向E1と同じ周回りの回転方向Eに周回移動して加熱ローラ172が回転方向E1に回転し、さらに加圧ローラ174が定着ローラ171の回転方向E1とは逆方向E2に従動回転する。そして、記録シートPは、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟まれつつ搬送されて、定着ニップ域Nで加熱及び加圧される。これにより、記録シートP上における未定着のトナーTが溶融、混合、圧接されて熱定着される。
なお、定着装置17は、定着ベルト173の内側又は外側に配置され、かつ、定着ベルト173の張り力を付与するように定着ベルト173に対して外側又は内側へ押圧するテンションローラを備えていてもよい。定着装置17は、テンションローラに代えて或いは加えて、加熱ローラ172の回転軸172aにおける両端部に対して定着ローラ171とは反対側へ付勢力を付与する付勢部材(例えばコイルバネ)を備えていてもよい。また、定着ローラ171及び/又は加圧ローラ174に、熱源177が設けられていてもよい。また、テンションローラが設けられる場合、テンションローラに熱源177が設けられていてもよい。また、定着ベルト173がさらに他のローラに巻き掛けられる場合、他のローラの少なくとも一つに熱源177が設けられていてもよい。また、図2及び図3に示す保持部材180、圧接部材190、付勢部194及び剥離板175等については、のちほど説明する。
図4及び図5は、実施の形態1に係る定着装置17における定着ローラ171部分を示す概略側面図及び概略断面図である。図6は、実施の形態1に係る定着装置17における圧接部材190、保持部材180及びそれに保持された剥離板175の概略構成を示す分解斜視図である。図7は、保持部材180における架設部材182及びそれに保持された剥離板175の一端部を拡大して示す斜視図である。図8は、一方の保持部材180と一方の圧接部材190との配置位置関係を分解して示す斜視図である。図9は、他方の保持部材180と他方の圧接部材190との配置位置関係を分割して示す斜視図である。
定着装置17は、剥離部材の一例である長手方向Xに延びた剥離板175と、剥離板175を保持する保持部材180と、剥離板175を保持した保持部材180を回転定着部材の表面に圧接させる一対の圧接部材190と、をさらに備えている。
剥離板175は、加圧ローラ174及び定着ベルト173により形成される定着ニップ域N(図2参照)において記録シートP上における未定着のトナーを定着するにあたり、定着ニップ域Nの回転方向Eにおける下流側に配設されて定着ベルト173に対して予め定めた所定の間隔d(図5参照)を設けた状態(非接触の状態)で、定着ベルト173から記録シートPを剥離する構成とされている。剥離板175の先端175bと定着ベルト173の表面との隙間(間隔d、図5参照)は、狭ければ狭い方がよいが、ここでは0.5mm程度とされている。
保持部材180は、周回りの回転方向Eに回転される定着ベルト173の回転軸線α1の方向における両端部(記録シートPの有効画像領域Gにおける外側の部分)173a,173a(図3及び図4参照)の定着ベルト173の表面に接触部材181(これについては後述する。)を接触させた状態で、両端部173a,173a間において回転方向Eにおける上流側の側面(図5では右側の側面)で剥離板175を保持する構成とされている。ここで、有効画像領域Gは、最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPに対して画像形成するときに感光体ドラム13〜13に画像が形成されるべき最大の領域(具体的には310mm)に相当する。
以下、剥離板175及び保持部材180についてさらに具体的に説明する。
剥離板175は、離型性を有する金属材料からなっており、代表的にはステンレス鋼(SUS)などの鋼材を例示できる。剥離板175は、長手方向Xに延びる板状の部材(例えば板金)とされており、ここでは、長手方向Xから視てL字状に形成されている(主に図5,図6参照)。具体的には、剥離板175は、記録シートPを剥離する側の第1側板175dと、第1側板175dに対して屈曲(例えば90°又は略90°に屈曲)した第2側板175eとを備えている。
一方、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における剥離板175の両端部175f,175fを支持する構成とされている。
詳しくは、主に図3,図6に示すように、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における両端部173a,173aの表面に接触して定着ベルト173に対して剥離板175を位置決めする一対の接触部材181,181と、一対の接触部材181,181に架け渡すように設けられて一対の接触部材181,181を支持する架設部材182(図6参照)とを備えている。
架設部材182は、長手方向Xに延びる板状の部材(例えば板金)とされており、ここでは、長手方向Xから視てL字状に形成されている(主に図5,図6参照)。具体的には、架設部材182は、剥離板175の第1側板175dが添設される第1側板182bと、第1側板182bに対して屈曲(例えば90°又は略90°に屈曲)した、剥離板175の第2側板175eが添設される第2側板182cとを備えている。
また、架設部材182の長手方向Xの両端部は、対向配置されたプレート状の支持板180a,180aとなっている。支持板180aは例えば板金で形成されている。すなわち、架設部材182と支持板180aとは、金属材料からなっており、代表的にはステンレス鋼(SUS)などの鋼材を例示できる。
すなわち、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向において架設部材182で剥離板175を支持する一方、架設部材182の両端部の支持板180a,180aに一対の接触部材181,181が支持固定されている(図8,図9を併せて参照)。接触部材181は、耐熱性を有する樹脂材料からなっており、代表的にはポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を例示できる。
接触部材181を支持板180aに支持固定する方法としては、実施の形態1では、支持板180aに形成された係止穴(図示せず)に、接触部材181に形成された突起部(図示せず)を挿入係止することで支持固定されている。この他にも、例えばカシメ等によって支持固定してもよいし、ビス等の固定部材によって支持固定してもよい。また、剥離板175は、架設部材182に対してカシメ等により密着した状態で固定されている。
また、剥離板175は、主に図3、図5及び図6に示すように、第1側板175dの回転方向Eにおける上流側の側面において、第1側板175dに対して交差(具体的には直交又は略直交)する方向に向けて突出した複数(ここでは5個)の突起部176〜176を備えている。突起部176〜176は、剥離板175の第1側板175dに対して長手方向Xに間隔をおいて設けられている。突起部176〜176は、高さ方向Zに延びる長尺な突起部(いわゆるリブ)とされている。突起部176〜176は、複数(ここでは二つ)の嵌入部176a,176aを有し、嵌入部176a,176aが剥離板175の第1側板175dに設けられた複数(ここでは二つ)の嵌入孔175c,175c及び架設部材182の第1側板182bに設けられた複数(ここでは二つ)の嵌入孔182d,182dに対して嵌入されるようになっている。突起部176〜176は、結露による水蒸気が頂点部にできるだけ付着しないように、頂点部の面積をできるだけ小さくした形状とされ、長手方向Xの幅(強度を維持できる程度にできるだけ小さくした幅)が基端部から頂点部にかけて一定又は略一定とされている。そして、頂点部は、山形の形状とされるか、或いは、先鋭化されている。また、突起部176は、頂点部が記録シートPの搬送路に沿って延びており、該搬送路に対向している。
剥離板175の表面には、フッ素系樹脂(具体的にはPFA:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)が塗布されている。また、剥離板175に設けられた突起部176は、フッ素系樹脂(具体的にはPFA)からなっている。フッ素系樹脂としては、PFAの他、それには限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを挙げることができる。
一方、保持部材180は、一対の接触部材181,181を保持した一対の支持板180a,180aが、定着装置17の本体(具体的には長手方向Xに対向している本体フレームF,F、図3及び図4参照)に対して定着ベルト173の回転軸線α1の方向に沿った回動軸線回りに揺動自在に設けられ、かつ、一対の接触部材181,181が定着ベルト173に向けて付勢される構成とされている。
詳しく説明すると、主に図8及び図9に示すように、長手方向Xに対向している本体フレームF,Fには、定着ベルト173の回転軸線α1と平行に配置された一対のフレーム軸F1,F1が設けられており、一対の支持板180a,180aには、この一対のフレーム軸F1,F1に回転自在に嵌入支持される一対の嵌入穴183,183がそれぞれ設けられている。そして、この一対のフレーム軸F1,F1を回転軸として、各支持板180a,180aに支持された各接触部材181,181が定着ベルト173の表面に接触される構成とされている。
一対の接触部材181,181は、先端側に定着ベルト173にそれぞれ摺接する摺接部181a,181a(定着ベルト173に対向して定着ベルト173に接触する面)を有している。すなわち、各摺接部181a,181aは、有効画像領域G以外の摺接領域に設けられている。従って、定着ベルト173の表面が各摺接部181a,181a部分でたとえ削れたとしても、記録シートPに記録されるトナー画像への影響はない。
具体的には、剥離板175は、長手方向Xの長さH(図3及び図4参照)が最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPの搬送領域の搬送方向に直交する幅よりも少し大きめ(例えば340mm程度)の幅とされており、長手方向X及び高さ方向Zの双方に直交する厚み方向Yの厚みが回転方向Eの上流側に行くに従って小さくなるように先鋭化した先端175b(図5参照)を有している。
各摺接部181a,181aは、定着ベルト173の表面に摺接する摺接面とされている。また、この摺接部181aの上部の支持板180aは切欠き状の平坦面181m(図8,図9参照)に形成されており、この平坦面が後述する圧接部材190の当接部193が当接される当接面181mとされている。また、支持板180aの上部には、回転軸線α1と直交する方向に沿って切り込み部181n(図8,図9参照)が形成されている。この切り込み部181nには、後述する圧接部材190の係止片195が係止される。
圧接部材190は、保持部材180の支持板180aの外側(又は内側)に添設される板状の本体部191と、フレーム軸F1に回転自在に嵌入支持される本体部191に形成された嵌入穴192と、本体部191を付勢することで、本体部191に設けられた当接部193を介して接触部材181を定着ベルト173の表面に圧接させる付勢部(ここでは一例としてコイルバネを例示)194とを備えている。なお、図3から図5において付勢部194は図示を省略している。本体部191は、例えば板金等の金属材料からなる。
当接部193は、本体部191の延設部分を平面視コ字状に屈曲して形成されており、摺接部181aの切欠き部分に横から挟み込むように配置して、摺接部181aの当接面181mを上方から当接する。
また、本体部191の上部には、保持部材180に形成された切り込み部181nに差し込んで、該保持部材180に係止するための係止片195が設けられている。係止片195は、回転軸線α1の方向に延設されており、切り込み部181nからの回転軸線α1方向への抜けを防止する。なお、切り込み部181nと係止片195との係合関係はあくまで圧接部材190の抜け防止であり、圧接部材190と保持部材180との位置固定に寄与するものではない。
付勢部194は、接触部材181を定着ベルト173に対して予め定めた所定の荷重で押圧するように、一端194aが定着装置17の本体フレームF(図2参照)に係止され、他端194bが本体部191に設けられた係止部191aに係止されている。これにより、付勢部194の付勢力によって圧接部材190の本体部191をフレーム軸F1を中心に回転させることで、当接部193によって摺接部181aの当接面181mを上方から押し下げるように付勢する。
上記構成から明らかなように、実施の形態1では、保持部材180の支持板180a及び圧接部材190の本体部191は、それぞれの嵌入穴183,192が共に同じフレーム軸F1に嵌入支持される構造となっている。すなわち、保持部材180及び圧接部材190は共に、同じフレーム軸F1を回転軸として回転するようになっている。
この場合、剥離板175の先端175bと定着ベルト173の表面との隙間を長手方向Xにわたって一定の間隔dに保持するためには、一対の接触部材181,181の摺接部(摺接面)181a,181aが、定着ベルト173の両端部においてそれぞれ所定の位置で接触している必要があるが、支持板180aの嵌入穴183の中心から接触部材181の摺接部(摺接面)181aまでの距離は一義的に決まることから、支持板180aの嵌入穴183及び圧接部材190の嵌入穴192の穴径をフレーム軸F1の径(外径)と同径(厳密には、回転自在であるがガタつきの無い程度の若干の径差は有する。)とすると、次のような問題が生じる。
上記構成の定着装置17では、一対の接触部材181,181の定着ベルト173への接触位置は次のようにして決まる。すなわち、一対の接触部材181,181は、フレーム軸F1,F1を中心に回転可能であるため、フレーム軸F1,F1によってまず2点の位置が決まる。そして、この2点を中心に保持部材180が回転して各摺接部181a,181aが定着ベルト173の長手方向両端部の表面にそれぞれ摺接することで3点目と4点目が決まる。つまり、一対の摺接部181a,181aが定着ベルト173の長手方向両端部の表面の所定の位置に位置決めされる。
しかし、定着装置の本体フレームの成型時の誤差やその後の経年変化等により、例えばフレーム軸F1の中心がばらつきによりずれた場合には、これに嵌入される支持板180aの嵌入穴183の位置もずれることから、支持板180aに設けられた接触部材181の摺接部181aの摺接位置がずれる(場合によっては、摺接せずに若干浮く状態になる)ことになり、これに伴って剥離板175の先端175bと定着ベルト173の表面との隙間dも変化してしまう。すなわち、隙間dを長手方向Xにわたって均一に保つことができなくなる可能性があるといった問題がある。
この問題は、一対のフレーム軸F1,F1で、保持部材180の一対の支持板180a,180aに設けられた一対の嵌入穴183,183の位置(2点の位置)が決まってしまうことに起因する。
そこで、実施の形態1では、このような問題を解消するため、接触部材181,181の摺接部181a,181aを定着ベルト173の表面の所定位置に圧接させるための圧接部材190を保持部材180とは別に設け、この圧接部材190の一対の嵌入穴192,192の穴径をフレーム軸F1と同径とする一方、保持部材180の一対の支持板180a,180aの嵌入穴183,183の穴径は一方をフレーム軸F1と同径とし、他方をフレーム軸F1より大きな径としたものである。
図8は、一方のフレーム軸F1に圧接部材190の一方の嵌入穴192と保持部材180の一方の嵌入穴183とを嵌入支持する状態を示しており、図9は、他方のフレーム軸F1に圧接部材190の他方の嵌入穴192と保持部材180の他方の嵌入穴183とを嵌入支持する状態を示している。
図8に示すように、一方のフレーム軸F1の軸径D1に対し、圧接部材190の一方の嵌入穴192の内径D2と保持部材180の一方の嵌入穴183の内径D3とが同径(D1≒D2,D3(ただし、厳密には、上記したように回転自在であるがガタつきの無い程度の若干の径差は有する。))となっている。
これに対し、図9に示すように、他方のフレーム軸F1の軸径D1に対し、圧接部材190の他方の嵌入穴192の内径D2は同径(D1≒D2)とされ、保持部材180の他方の嵌入穴183の内径D3はフレーム軸F1より大きな径(D3>D1)となっている。
この構成によると、フレーム軸F1の中心がばらつきによりずれている場合でも、圧接部材190の嵌入穴192の穴径D2はフレーム軸F1の軸径D1と同径とされているため、この圧接部材190によって保持部材180に設けられた接触部材181,181を定着ベルト173の表面に圧接させた場合、フレーム軸F1の中心に対する接触部材181の摺接部181aの摺接位置は固定される。つまり、一対の接触部材181,181の一対の摺接部181a,181aが定着ベルト173の長手方向X両端部の表面に接触することで、保持部材180及び剥離部材175の2点の位置がまず決まる。
次に、保持部材180の一対の嵌入穴183,183の穴径は、一方の嵌入穴183の穴径D2がフレーム軸F1の軸径D1と同径(D1≒D2)とされているため、この一方のフレーム軸F1にて保持部材180及び剥離部材175の3点目の位置が決まる。このとき、他方のフレーム軸F1の中心がばらつきによりずれていても、保持部材180の他方の嵌入穴183の穴径D3はフレーム軸F1の軸径D1より大きな径(D3>D1)とされているため、この嵌入穴183とフレーム軸F1との径差(D3−D1)分だけ、保持部材180及び剥離部材175は一体となってフレーム軸F1に対して揺動可能となる。
これにより、他方のフレーム軸F1においても保持部材180及び剥離部材175がずれることなく(フレーム軸F1のずれに影響されることなく)4点目の位置が決まることになる。つまり、この4点目の位置決めに際し、接触部材181,181の摺接部181a,181aの摺接位置は圧接部材190の圧接力によってすでに固定の位置となっており、ずれることはないため、フレーム軸F1の中心がばらつきによりずれている場合でも、剥離部材175の先端175bと定着ベルト173表面との隙間dを、回転軸線α1方向の全長にわたってほぼ均一に保つことが可能となる。
なお、上記実施の形態1では、定着装置17の回転軸線α1方向における一方側と他方側において、圧接部材190は支持板180aの外側に添設される構成としているが、一方の支持板180aに対しては外側に添設し、他方の支持板180aに対しては内側に添設する構成としてもよい。すなわち、回転軸線α1方向に沿う一方向から見た場合、圧接部材190と支持板180aとが同じ並び順となるように構成してもよい。この構成によると、一方側と他方側の2種類の圧接部材190を作製する必要がなく、1種類の圧接部材190のみで両方を兼用できるので、部品点数を削減することができる。
(2)実施の形態2
図10は、実施の形態2に係る定着装置17の概略構成を示す正面図である。
実施の形態2に係る定着装置17では、定着ベルト173が巻き掛けられた定着ローラ171側に設けられている剥離板175(剥離部材の一部)、保持部材180及び圧接部材190を、加圧部材である加圧ローラ174の側にも同様に配置した構成としたものである。
ここで、加圧ローラ174に対する剥離板175、保持部材180及び圧接部材190の配置位置関係は、実施の形態1で説明した定着ローラ171(より正確には、定着ベルト173)に対する剥離板175、保持部材180及び圧接部材190の配置位置関係と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
このように、剥離板175、保持部材180及び圧接部材190を定着ローラ171側と加圧ローラ174側の両方に配置することで、定着後の記録シートを定着ベルト173または加圧ローラ174から確実に剥離することができる。
(3)実施の形態3
図11は、実施の形態3に係る定着装置17の概略構成を示す正面図である。
実施の形態3に係る定着装置17では、実施の形態1で定着ベルト173が巻き掛けられた定着ローラ171側に配置されていた剥離板175(剥離部材の一部)、保持部材180及び圧接部材190を、加圧部材である加圧ローラ174の側にのみ配置した構成としたものである。
ここで、加圧ローラ174に対する剥離板175、保持部材180及び圧接部材190の配置位置関係は、実施の形態1で説明した定着ローラ171(より正確には、定着ベルト173)に対する剥離板175、保持部材180及び圧接部材190の配置位置関係と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
このように、剥離板175、保持部材180及び圧接部材190を加圧ローラ174側に配置することで、定着後の記録シートを加圧ローラ174から確実に剥離することができる。
なお、今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。