以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(画像形成装置の全体構成について)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置17を備えた画像形成装置1の概略構成を示す正面図である。
図1に示す画像形成装置1は、原稿読取り装置(図示せず)により読取られた原稿の画像又は外部から受信した画像データによって示される画像をカラーもしくは単色で用紙等の記録シートPに記録形成する画像形成部10を備えている。
画像形成部10は、露光装置11、現像装置12〜12、像担持体として作用する感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、転写部として作用する中間転写ローラ24〜24を含む中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙部として作用する給紙トレイ18、及び、排紙部として作用する排紙トレイ19、シート搬送装置20を備えている。
画像形成部10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、又は、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。従って、現像装置12〜12、感光体ドラム13〜13、クリーナ装置14〜14、帯電器15〜15、中間転写ローラ24〜24は各色に応じた4種類の画像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられている。
感光体ドラム13〜13は、画像形成装置1の本体1aの上下方向におけるほぼ中央に配置されている。帯電器15〜15は、感光体ドラム13〜13の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。露光装置11は、ここでは、レーザダイオード及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニットであり、帯電された感光体ドラム13〜13表面を画像データに応じて露光して、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置12〜12は、感光体ドラム13〜13上に形成された静電潜像を(K,C,M,Y)のトナーにより現像する。クリーナ装置14〜14は、現像及び画像転写後に感光体ドラム13〜13表面に残留したトナーを除去及び回収する。
感光体ドラム13〜13の上方に配置されている中間転写ベルト装置16は、中間転写ローラ24〜24に加えて、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ベルトクリーニング装置25及びテンションローラ26を備えている。
中間転写ベルト駆動ローラ22、従動ローラ23、中間転写ローラ24〜24、テンションローラ26は、中間転写ベルト21を張架して支持し、中間転写ベルト21を所定のシート搬送方向(図中矢印C方向)に周回移動させる。中間転写ローラ24〜24は、中間転写ベルト21内側に回転可能に支持され、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム13〜13に圧接されている。中間転写ベルト21は、各感光体ドラム13〜13に接触するように設けられており、各感光体ドラム13〜13表面のトナー像を中間転写ベルト21に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(各色のトナー像)を形成する。感光体ドラム13〜13から中間転写ベルト21へのトナー像の転写は、中間転写ベルト21内側(裏面)に圧接されている中間転写ローラ24〜24によって行われる。中間転写ローラ24〜24には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
画像形成部10は、転写部として作用する転写ローラ27aを含む2次転写装置27をさらに備えている。転写ローラ27aは、中間転写ベルト21の外側に接触している。上述の様に各感光体ドラム13〜13表面のトナー像は、中間転写ベルト21で積層され、画像データによって示されるカラーのトナー像となる。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト21と共に搬送され、2次転写装置27によって記録シートP上に転写される。中間転写ベルト21と2次転写装置27の転写ローラ27aとは、相互に圧接されて転写ニップ域を形成する。また、2次転写装置27の転写ローラ27aには、中間転写ベルト21上の各色のトナー像を記録シートPに転写させるための電圧(例えば、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。
中間転写ベルトクリーニング装置25は、中間転写ベルト21上の残留トナーを除去及び回収する。中間転写ベルトクリーニング装置25には、 例えばクリーニング部材として中間転写ベルト21に接触するクリーニングブレードが備えられており、このクリーニングブレードで残留トナーを除去及び回収することができる。
給紙トレイ18は、記録シートPを格納しておくためのトレイであり、画像形成装置1の本体1aにおける画像形成部10の下側に設けられている。また、画像形成部10の上側に設けられている排紙トレイ19は、印刷済みの記録シートPをフェイスダウンで載置するためのトレイである。
また、画像形成装置1の本体1aには、給紙トレイ18の記録シートPを2次転写装置27や定着装置17を経由させて排紙トレイ19に送るためのシート搬送装置20が設けられている。シート搬送装置20は、Sの字形状のシート搬送経路Sを有し、シート搬送経路Sに沿って、ピックアップローラ31、一対の分離ローラ31a,31b、レジストローラ32、レジスト前ローラ33、定着装置17及び排紙ローラ34が配置されている。
ピックアップローラ31は、給紙トレイ18のシート搬送方向における下流側端部に設けられ、給紙トレイ18から記録シートPを1枚ずつシート搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。一方の分離ローラ31aは、他方の分離ローラ31bとの間に記録シートPを通過させて1枚ずつ分離しつつシート搬送経路Sへと搬送する。レジストローラ32は、停止状態において、搬送されて来た記録シートPの先端を突き当てて、記録シートPの先端を揃え、中間転写ベルト21と2次転写装置27との間の転写ニップ域で中間転写ベルト21上のトナー像が記録シートPに転写されるように、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像と同期をとって、記録シートPをタイミングよく搬送する。レジスト前ローラ33は、記録シートPの搬送を促進補助するための小型のローラである。
定着装置17は、ベルト定着方式の定着装置とされており、複数のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)に定着ベルト173(回転定着部材の一例)が巻き掛けられている。定着ベルト173は、加熱ローラ172から定着ローラ171へ熱伝達できるようになっている。定着装置17は、定着ベルト173を介して定着ローラ171に加圧ローラ174が押圧されるようになっている。また、定着ベルト173は、予め定めた所定の厚み(例えば250μm)を有しており、幅が最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPの搬送領域の搬送方向に直交する幅よりも少し大きめ(例えば350mm程度)になっている。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された記録シートPを受け取り、記録シートPを定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟み込んで搬送する。各色のトナー像の定着後の記録シートPは、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。なお、定着装置17については、のちほど詳述する。
以上説明した画像形成装置1では、給紙トレイ18から給紙された記録シートPをシート搬送経路Sに沿って搬送している途中で、記録シートPに対して感光体ドラム13〜13で形成されて中間転写ベルト21に搬送されたトナー像(未定着画像)を2次転写装置27によって転写させ、さらに定着装置17によって定着させることで印刷処理を行う。
詳しくは、感光体ドラム13〜13は、一方向に回転駆動され、除電装置(図示せず)により除電された表面がクリーナ装置14〜14によりクリーニングされた後、帯電器15〜15により均一に帯電される。露光装置11は、画像データに基づいて変調したレーザ光によって感光体ドラム13〜13の表面を主走査方向に繰り返し走査して、感光体ドラム13〜13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12〜12は、トナーを感光体ドラム13〜13の表面に供給して静電潜像を現像(顕像化)し、感光体ドラム13〜13の表面にトナー像を形成する。中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13〜13上に形成されたトナー像を中間転写ベルト21に転写する。2次転写装置27は、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像を中間転写ベルト21と転写ローラ27aとの間を通過する記録シートPに転写する。定着装置17は、トナー像が形成された記録シートPを加熱及び加圧して記録シートP上のトナー像を記録シートPに定着させる。こうして、画像形成装置1は、一連の印刷動作を完了する。
尚、4つの画像形成ステーションのうち少なくとも一つを用いて、モノクロ画像を形成し、モノクロ画像を中間転写ベルト装置16の中間転写ベルト21に転写することも可能である。このモノクロ画像も、カラー画像と同様に、中間転写ベルト21から記録シートPに転写され、記録シートP上に定着される。
(定着装置について)
次に、本発明に係る定着装置の実施の形態について、ベルト定着方式の定着装置17を例にとって以下に説明する。
図2及び図3は、それぞれ、本実施の形態に係る定着装置17の概略構成を示す正面図及び斜視図である。なお、定着装置17の背面図は正面図とは左右が反転するだけで実質的に同じ図であるために、図2では正面図のみを示し、背面図は図示を省略している。また、図3並びに後述する図4及び図5において加圧ローラ174は図示を省略している。
定着装置17は、図2及び図3に示すように、定着ローラ171を含む複数(ここでは二つ)のローラ(ここでは定着ローラ171及び加熱ローラ172)と、定着ローラ171及び加熱ローラ172に巻き掛けられた無端状の定着ベルト173とを備えている。
定着装置17は、さらに加圧ローラ174(図2参照)を備えており、定着ベルト173を間にして定着ローラ171と加圧ローラ174とを相互に押圧した状態で、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に定着ニップ域(定着ニップ部)N(図2参照)を形成するようになっている。なお、定着装置17は、図示を省略したが、加圧ローラ174を定着ローラ171に向けて押圧する押圧手段として作用する押圧装置をさらに備えている。この押圧装置は、従来公知の構成とすることができ、ここでは説明を省略する。
そして、定着ローラ171は、定着ベルト173を介して記録シートP上における未定着のトナーTに対向するようになっており、加熱ローラ172は、定着ベルト173を加熱するようになっている。
具体的には、定着ローラ171は、定着ベルト173を介在させた状態で記録シートP上における未定着のトナーTに対向し、加圧ローラ174に対して定着ベルト173を介在させた状態で定着ベルト173と加圧ローラ174との間の記録シートP上における未定着のトナーTに対向して未定着のトナーTを加圧ローラ174と共に押圧する。また、加熱ローラ172は、ハロゲンヒータ等の熱源177を備えており、熱源177によって加熱されることで定着ベルト173を加熱する。加熱ローラ172は、筒状の芯金を備えている。加熱ローラ172の内側には、加熱ローラ172を加熱する熱源(ここではハロゲンヒータランプ)177が設けられている。これにより、加熱ローラ172が熱源177によって加熱され、加熱ローラ172の熱が定着ベルト173に伝導され、さらに、定着ベルト173を介して定着ローラ171の表面に伝導されて定着ローラ171が加熱される。
定着ローラ171は、定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F)に回転自在に設けられており、回転軸171aと、芯金171b(図2参照)と、弾力性(クッション性、柔軟性)を有する弾力層171c(図2参照)を備えている。
詳しくは、定着ローラ171は、芯金171bの外表面に弾力層171cが設けられている。すなわち、定着ローラ171は、外表面に弾力層171cが形成されたローラとされている。
芯金171bは、円柱状(中実)の金属製芯材からなっている。芯金171bとしては、例えば、快削鋼材(SUM材)、ステンレス鋼材(SUS材)、アルミニウム、鉄、銅等の金属或いはそれらの合金等の材料を用いることができる。芯金171bは、ここでは、快削鋼材(SUM材)からなっている。
弾力層171cとしては、例えば、多孔質の樹脂材料、発泡樹脂材料を用いることができる。発泡樹脂材料としては、代表的には、ウレタンゴム(発泡ウレタン)、シリコーンゴム(発泡シリコーン)等の発泡ゴムを例示できる。弾力層171cは、ここでは、発泡ウレタンからなっている。
定着ベルト173は、柔軟性を有する筒状の基体の表面に、離型層として、耐熱性及び離型性に優れた合成樹脂材料(例えばPFAやPTFE等のフッ素系樹脂)が形成された2層構成となっている。また、定着ベルト173の寄り力を低減するために、ベルト基材の内面に、フッ素系樹脂等のコーティングを施してもよい。
加圧ローラ174は、定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F)に回転自在に設けられており、芯金174a(図2参照)と、離型性を有する離型層174b(図2参照)とを備えている。加圧ローラ174は、芯金174a上に離型層174bが設けられている。
芯金174aは、中空円筒状の金属製芯材からなっている。芯金174aとしては、定着ローラ171と同様の材料、例えば、快削鋼材(SUM材)、ステンレス鋼材(SUS材)、アルミニウム、鉄、銅等の金属或いはそれらの合金等の材料を用いることができる。芯金423は、ここでは、快削鋼材(SUM材)からなっている。
離型層174bとしては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂を用いることができる。離型層174bは、ここでは、PFAからなっている。
定着装置17では、画像形成装置1の本体1a(図1参照)に装着された状態において、本体1a側のギア等の駆動機構(図示せず)が定着ローラ171の回転軸171aに設けられたギア(図示せず)に噛合され、本体1a側の駆動機構からの回転駆動力がギアを介して定着ローラ171の回転軸171aに伝達されて、定着ローラ171が所定の回転方向E1に回転駆動される。定着ローラ171の回転に伴い、定着ベルト173が定着ローラ171の回転方向E1と同じ周回りの回転方向Eに周回移動して加熱ローラ172が回転方向E1に回転し、さらに加圧ローラ174が定着ローラ171の回転方向E1とは逆方向E2に従動回転する。そして、記録シートPは、定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟まれつつ搬送されて、定着ニップ域Nで加熱及び加圧される。これにより、記録シートP上における未定着のトナーTが溶融、混合、圧接されて熱定着される。
なお、定着装置17は、定着ベルト173の内側又は外側に配置され、かつ、定着ベルト173の張り力を付与するように定着ベルト173に対して外側又は内側へ押圧するテンションローラを備えていてもよい。定着装置17は、テンションローラに代えて或いは加えて、加熱ローラ172の回転軸172aにおける両端部に対して定着ローラ171とは反対側へ付勢力を付与する付勢部材(例えばコイルバネ)を備えていてもよい。また、定着ローラ171及び/又は加圧ローラ174に、熱源177が設けられていてもよい。また、テンションローラが設けられる場合、テンションローラに熱源177が設けられていてもよい。また、定着ベルト173がさらに他のローラに巻き掛けられる場合、他のローラの少なくとも一つに熱源177が設けられていてもよい。また、図2及び図3に示す保持部材180、付勢機構183及び剥離板175等については、のちほど説明する。
図4及び図5は、それぞれ、本実施の形態に係る定着装置17における定着ローラ171部分を示す概略側面図及び概略断面図である。図6は、本実施の形態に係る定着装置17における保持部材180及びそれに保持された剥離板175の概略構成を示す分解斜視図である。また、図7は、保持部材180における架設部材182及びそれに保持された剥離板175の一端部を拡大して示す斜視図である。
定着装置17は、長手方向Xに延びた剥離板175(剥離部材の一例)と、剥離板175を保持する保持部材180とをさらに備えている。
剥離板175は、加圧ローラ174(図2参照)及び定着ベルト173により形成される定着ニップ域N(図2参照)において記録シートP上における未定着のトナーを定着するにあたり、定着ニップ域Nの回転方向Eにおける下流側に配設されて定着ベルト173に対して予め定めた所定の間隔d(図5参照)を設けた状態(非接触の状態)で定着ベルト173から記録シートPを剥離する構成とされている。保持部材180は、周回りの回転方向Eに回転される定着ベルト173の回転軸線α1の方向における両端部(記録シートPの有効画像領域Gにおける外側の部分)173a,173a(図3及び図4参照)の定着ベルト173の表面に摺接された状態で両端部173a,173a間において回転方向Eにおける上流側の側面180a(図3から図5参照)で剥離板175を保持する構成とされている。ここで、有効画像領域Gは、最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPに対して画像形成するときに感光体ドラム13〜13に画像が形成されるべき最大の領域(具体的には310mm)に相当する。剥離板175の先端175b(図2及び図5から図7参照)と定着ベルト173の表面との隙間(間隔d、図5参照)は、狭ければ狭い方がよいが、ここでは0.5mm程度とされている。
そして、剥離板175は、離型性を有し、かつ、回転方向Eにおける上流側の側面175aにおいて側面175aに対して交差(具体的には直交又は略直交)する方向に向けて突出した複数(ここでは5個)の突起部176〜176が設けられている。突起部176〜176は、剥離板175の側面175aに対して長手方向Xに間隔をおいて設けられている。突起部176〜176は、高さ方向Zに延びる長尺な突起部(いわゆるリブ)とされている。突起部176〜176は、嵌入部176a(図5参照)を有し、嵌入部176aが剥離板175の複数(ここでは二つ)の嵌入孔175c,175c及び架設部材182の複数(ここでは二つ)の嵌入孔182d,182d(図5参照)に対して嵌入されるようになっている。突起部176〜176は、結露による水蒸気が頂点部にできるだけ付着しないように、頂点部の面積をできるだけ小さくした形状とされ、長手方向Xの幅(強度を維持できる程度にできるだけ小さくした幅)が基端部から頂点部にかけて一定又は略一定とされている。そして、頂点部が山形の形状とされるか、或いは、先鋭化されている。また、突起部176は、頂点部が記録シートPの搬送路に沿って延びており、該搬送路に対向している。
離型性を有する剥離板175は、金属材料からなっている。剥離板175に用いることができる金属材料としては、代表的にはステンレス鋼(SUS)などの鋼材を例示できる。剥離板175は、長手方向Xに延びる板状の部材(例えば板金)とされており、ここでは、長手方向Xから視てL字状に形成されている(図2、図3、図5及び図6参照)。具体的には、剥離板175は、記録シートPを剥離する側の第1側板175d(図3、図5及び図6参照)と、第1側板175dに対して屈曲(例えば90°又は略90°に屈曲)した第2側板175e(図3、図5及び図6参照)とを有している。剥離板175の表面には、フッ素系樹脂(具体的にはPFA:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)が塗布されている。また、剥離板175に設けられた突起部176は、フッ素系樹脂(具体的にはPFA)からなっている。フッ素系樹脂としては、PFAの他、それには限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを挙げることができる。
本実施の形態では、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における剥離板175の両端部175f,175f(図3、図4、図6及び図7参照)を支持する構成とされている。
詳しくは、保持部材180は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における両端部173a,173aの表面に接触して定着ベルト173に対して剥離板175を位置決めする一対の接触部材181,181と、一対の接触部材181,181に架け渡すように設けられて一対の接触部材181,181を支持する架設部材182とを備えている。
架設部材182は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向において中央部で剥離板175を支持する一方、両端部182a,182a(図3、図4、図6及び図7参照)で一対の接触部材181,181にビス等の固定部材SC(図3、図4、図6及び図7参照)によって固定されるようになっている。本実施の形態では、剥離板175は、架設部材182に対してカシメ等により密着した状態で固定されている。
また、保持部材180は、一対の接触部材181,181が定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F、図2参照)に定着ベルト173の回転軸線α1の方向に沿った回動軸線回りに揺動自在に設けられ、かつ、定着ベルト173に向けて付勢される構成とされている。
具体的には、保持部材180は、一対の接触部材181,181を定着ベルト173側に向けてそれぞれ付勢する一対の付勢部材(ここではコイルバネ)183a,183a(図2参照)を含む付勢機構183を備えている。なお、図3から図5において付勢部材183aは図示を省略している。
付勢機構183は、一対の付勢部材183a,183aの付勢力によって一対の接触部材181,181をそれぞれ定着ベルト173に対して予め定めた所定の荷重で押圧する。詳しくは、付勢機構183は、一対の付勢部材183a,183aに加えて、一対の接触部材181,181にそれぞれ固定された一対の支持軸183b,183bを備えている。一対の支持軸183b,183bは、回転軸線α1の方向である長手方向Xに沿って延びており、定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F、図2参照)にそれぞれ回動自在に支持されている。なお、一対の支持軸183b,183bは、それぞれ、定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F)に長手方向Xに沿って固定され、かつ、一対の接触部材181,181を回動自在に支持するようになっていてもよい。
一対の接触部材181,181は、先端側に定着ベルト173にそれぞれ摺接する摺接部181a,181a(定着ベルト173に対向して定着ベルト173に接触する面)を有している。一対の付勢部材183a,183a(図2参照)は、それぞれ、一対の接触部材181,181を定着ベルト173に対して所定の荷重で押圧するように、一端が定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F)に係止され、他端が一対の接触部材181,181(具体的には係止部181h,181h、図2及び図5参照)に係止されている。各摺接部181a,181aは、有効画像領域G以外の摺接領域とされている。よって、定着ベルト173の表面が各摺接部181a,181a部分でたとえ削れたとしても、記録シートPに記録されるトナー画像への影響はない。
具体的には、剥離板175は、長手方向Xの長さH(図3及び図4参照)が最大サイズ(具体的には330.2mm[13インチ])の記録シートPの搬送領域の搬送方向に直交する幅よりも少し大きめ(例えば340mm程度)の幅とされており、長手方向X及び高さ方向Zの双方に直交する厚み方向Yの厚みが回転方向Eの上流側に行くに従って小さくなるように先鋭化した先端175b(図2及び図5参照)を有している。
各摺接部181a,181aは、定着ベルト173の表面に摺接する摺接面とされている。一対の接触部材181,181は、耐熱性を有する樹脂材料からなっている。一対の接触部材181,181に用いることができる耐熱性を有する樹脂材料としては、代表的にはポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を例示できる。
一対の接触部材181,181は、架設部材182の長手方向Xにおける両端部182a,182aにそれぞれ設けられている。架設部材182は、金属材料からなっている。架設部材182に用いることができる金属材料としては、代表的にはステンレス鋼(SUS)などの鋼材を例示できる。架設部材182は、長手方向Xに延びる板状の部材(例えば板金)とされており、ここでは、長手方向Xから視てL字状に形成されている(図2、図3及び図5参照)。具体的には、架設部材182は、剥離板175における第1側板175d(図3から図6参照)が設けられる側の第1側板182bと、第1側板182bに対して屈曲(例えば90°又は略90°に屈曲)して剥離板175における第2側板175e(図3、図5及び図6参照)が設けられる側の第2側板182cとを有している。
ところで、非接触型の剥離板を用いた従来の定着装置では、次のような不都合がある。図10は、非接触型の剥離板175Xを保持する従来の保持構成を備えた定着装置17Xの不都合を説明するための説明図であって、剥離板175Xの剥離部分を定着ローラ171、定着ベルト173及び加圧ローラ174と共に示す図である。なお、図10に示す定着装置17Xにおいて定着ローラ171、定着ベルト173及び加圧ローラ174は、本実施の形態の定着ローラ171、定着ベルト173及び加圧ローラ174と実質的に同じものとし、同じ参照符号を付している。また、図10において想像線は定着ベルト173及び定着ローラ171が弾性変形する前の状態を示している。
図10に示すように、加圧ローラ174により圧接された定着ベルト173が定着ローラ171と共に弾性変形した場合、定着ベルト173の剥離板175Xの回転方向Eにおける上流側の先端175Yに対応する位置から離れている位置では、定着ベルト173及び定着ローラ171の弾性変形による影響(形状変化)がないために、定着ベルト173の回転軸線の方向における両端部の表面に接触する接触部材(図示省略)の接触位置が剥離板175Xの先端175Yに対応する位置から離れて定着ベルト173及び定着ローラ171の弾性変形による影響(形状変化)がない位置にあると、加圧ローラ174により圧接された定着ベルト173及び定着ローラ171が弾性変形しても(図10の実線参照)それに追従して接触部材が移動しないため、剥離板175と定着ベルト173との間隔d2は、定着ベルト173及び定着ローラ171が弾性変形していないとき(図10の想像線参照)の間隔d1(例えば0.5mm)に比べて広く(例えば0.5mmよりも大きく)なる。このことは、弾力性を有する弾力層171cを備えた定着ローラ171を用いる場合に特に顕著となる。
この点、本実施の形態では、次のように構成している。図8は、本実施の形態の定着装置17において剥離板175の剥離部分を定着ローラ171、定着ベルト173及び加圧ローラ174と共に示す概略断面図である。また、図9は、図8に示す状態において剥離板175の剥離部分をさらに拡大した概略拡大図である。なお、図8では、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されている状態を示している。また、図9では、実線で示す先端領域181f,181f及び剥離板175は、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されていない状態を示しており、想像線で示す定着ベルト173及び定着ローラ171並びに先端領域181f,181fは、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されている状態を示している。
図8に示すように、一対の接触部材181,181は、摺接部181a,181aで摺接される。ここで、摺接部181a,181aは、回転方向Eに回転される定着ベルト173の回転軸線α1(図2及び図5参照)の方向における記録シートPの有効画像領域G(図3及び図4参照)よりも外側の表面に対して剥離板175の回転方向Eにおける上流側の先端175bに対応する位置β(図8参照)を含む領域である。詳しくは、一対の接触部材181,181は、各摺接部181a,181aが剥離板175の先端175bに対応する位置βを含む領域となるように一対の支持軸183b,183b(図3から図7参照)を介して定着装置17の本体(具体的には本体フレームF,F、図2参照)にそれぞれ支持されている。ここで、剥離板175の先端175bに対応する位置βは、剥離板175の定着ベルト173と最も近接する近接点175g(図9参照)に対する定着ベルト173の表面との最短距離(間隔d)にある点の位置をいう。また、摺接部181a,181aとしては、位置βを基準とした回転方向Eにおける下流側の予め定めた長さの第1領域β1、位置βを基準とした回転方向Eにおける上流側の予め定めた長さの第2領域β2、或いは、第1領域β1及び第2領域β2の双方を合わせた第3領域β3を例示できる。ここでは、摺接部181a,181aは、第3領域β3とされている。
以上説明したように、定着装置17及び画像形成装置1によれば、一対の接触部材181,181は、定着ベルト173の回転軸線α1の方向における記録シートPの有効画像領域G(図3及び図4参照)よりも外側の表面に対して剥離板175の先端175bに対応する位置βを含む摺接部181a,181aで摺接されることで、たとえ加圧ローラ174により圧接された定着ベルト173及び定着ローラ171が弾性変形してもそれに追従して一対の接触部材181,181を移動させることができる。これにより、加圧ローラ174により圧接された定着ベルト173及び定着ローラ171の弾性変形にかかわらず、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d、図8及び図9参照)を維持することができる。
また、本実施の形態では、一対の接触部材181,181は、定着ベルト173と剥離板175との間において内側に延設されて剥離板175を保持する延設部181c,181c(図7から図9参照)を備えている。延設部181c,181cは、摺接部181a,181aを有している。延設部181c,181cは、剥離板175の長手方向Xにおける両側の端面175h,175h(図7参照)より予め定めた所定の距離h(図7参照)だけ内側に延びている。
こうすることで、延設部181c,181cにより、剥離板175の先端175bの定着ベルト173との接触を効果的に防止することができる。
また、本実施の形態では、延設部181c,181cは、定着ベルト173と剥離板175との間において内側に延設されていると共に、回転方向Eにおける上流側にも延設されている。詳しくは、延設部181c,181cは、回転方向Eにおける上流側の先端181e,181e(図7及び図9参照)を含む予め定めた所定長さL(図8参照)とされた先端領域181f,181f(図7から図9参照)を有している。
ところで、剥離板175が記録シートPを剥離するにあたっては、一対の接触部材181,181は、定着ベルト173を介して定着ローラ171に対し予め定めた所定の荷重で押し当てられている。そして、剥離板175が延設部181c,181cに隙間がない状態で支持されている場合においては、延設部181c,181cの回転方向Eにおける上流側の先端領域181f,181f(図7から図9参照)が剥離板175側への弾性変形や保持部材180全体の歪み等によって剥離板175側へ変位すると、延設部181c,181cに保持されている剥離板175の回転軸線α1の方向における両端部175f,175fが定着ベルト173から遠ざかる方向に反りやすい。そうすると、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)が剥離板175の回転軸線α1の方向における両端部175f,175fで広がる一方、中央部で狭くなり、ひいては、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)の長手方向Xにおける均一性が低下する。
この点、本実施の形態では、延設部181c,181cは、少なくとも一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されていない状態では回転方向Eにおける上流側の先端領域181f,181fと剥離板175との間に隙間e(図9参照)が設けられている。詳しくは、延設部181c,181cは、剥離板175と先端領域181f,181fとの間で隙間eを有する状態で回転方向Eにおける下流側の基端部181d,181d(図7及び図8参照)で剥離板175を片持ち支持している。ここでは、隙間eは、最も広いところ(先端)で0.1mmとされている。
こうすることで、延設部181c,181cの先端領域181f,181fと剥離板175との間に設けられた隙間eにより、先端領域181f,181fの剥離板175側への弾性変形や保持部材180全体の歪み等による延設部181c,181cにおける先端領域181f,181fの剥離板175側への変位を吸収することができ、これにより、延設部181c,181cに保持されている剥離板175の回転軸線α1の方向における両端部175f,175fの定着ベルト173から遠ざかる方向への反りを効果的に防止でき、ひいては、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)を長手方向Xの全域にわたって維持することが可能となる。なお、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されている状態では、先端領域181f,181fは、間隔が狭くなるものの依然として隙間eが存在するようになってもよいし、先端領域181f,181fにより剥離板175を変位させない程度に隙間eが存在しないよう(e=0)に先端領域181f,181fが剥離板175に接触するようになっていてもよい。
また、本実施の形態では、先端領域181f,181fは、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されていない状態では回転方向Eにおける上流側の先端181e,181eにいくに従って隙間eが次第に広がるように形成されている。換言すれば、延設部181c,181cは、剥離板175に対向する側の側面181g,181g(図8及び図9参照)が基端部181d,181dから先端181e,181eにかけて剥離板175に対して次第に遠ざかるように形成されている。
こうすることで、先端領域181f,181fの厚みを先端181e,181eから基端部181d,181dに向かうにつれて厚くすることができ、従って、延設部181c,181cの強度を向上させることができ、これにより、延設部181c,181cが剥離板175を安定的に保持することが可能となる。
また、本実施の形態では、延設部181c,181cは、回転方向Eにおける上流側の先端181e,181eが剥離板175の先端175bよりも突出した突出部181i,181i(図9参照)を有している。
こうすることで、延設部181c,181cにおける突出部181i,181iにより、剥離板175の先端175bの定着ベルト173との接触をさらに効果的に防止することができる。
また、本実施の形態では、先端領域181f,181fは、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接され、かつ、先端領域181f,181fと剥離板175とが接触した状態において回転方向Eにおける上流側の先端181e,181e部分における外周の形状が定着ベルト173の回転軸線α1の方向から視た断面視で剥離板175の先端175bの定着ベルト173との隙間を構成する点(近接点175g)を中心点にして予め定めた所定の半径r(図9参照)とする円弧形状δ(図9参照)に形成されている。ここで、半径rは、先端領域181f,181fと剥離板175とが接触した状態において剥離板175の先端181e,181e部分における外周と中心点(近接点175g)との間の距離とされている。本実施の形態では、半径rは、定着ベルト173と剥離板175との間の隙間(間隔d)の予め定めた値と同じ値(ここでは0.5mm)とされている。
このように、先端領域181f,181fと剥離板175とが接触した状態において先端領域181f,181fの先端181e,181e部分における外周の形状を円弧形状δとすることで、たとえ定着ベルト173が先端領域181f,181fに沿って弾性変形しても、円弧形状δの先端181e,181e部分を間にした状態において剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)を少なくとも円弧形状δの半径rとして維持することが可能となる。例えば、先端領域181f,181fの剥離板175側への弾性変形や保持部材180全体の歪み等によって先端領域181f,181fが剥離板175に接触したきには(図8参照)、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)を円弧形状δの半径rとして一定に維持することができる。
また、本実施の形態では、延設部181c,181cは、一対の接触部材181,181が定着ベルト173を介して定着ローラ171に圧接されている状態において先端領域181f,181fの一部が摺接部181a,181aとされている。延設部181c,181cは、摺接部181a,181aから回転方向Eにおける下流側に向かうに従って定着ベルト173から次第に離れる離間領域181j,181j(図8参照)を有している。
こうすることで、加圧ローラ174により圧接されて定着ベルト173及び定着ローラ171の弾性変形しない部分への接触部分をできるだけ少なくする或いは無くすことができる。従って、たとえ加圧ローラ174により圧接された定着ベルト173及び定着ローラ171が弾性変形してもそれに一対の接触部材181,181を確実に追従させることができ、これにより、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)を所望の値に精度よく設定することができる。
また、本実施の形態では、延設部181c,181cは、摺接部181a,181aからさらに回転方向Eにおける上流側の先端181e,181eに向かうにつれて定着ベルト173から次第に遠ざかる非摺接部181b,181b(図9参照)を有している。具体的には、非摺接部181b,181bは、摺接部181a,181aと先端181e,181eとの間の定着ベルト173に接触しない曲面とされている。
こうすることで、定着ベルト173に対して延設部181c,181cにおける摺接部181a,181aを回転方向Eにおける上流側の先端181e,181eに向けて円滑に摺接させることができる。
また、本実施の形態では、定着ローラ171が弾力層171cを備えていることから、加圧ローラ174による圧接により定着ベルト173を介して定着ローラ171における弾力層171cの弾性変形の凹み具合が大きくなっても、剥離板175と定着ベルト173との隙間(間隔d)を確実に維持することができる。
また、本実施の形態では、保持部材180において定着ベルト173の回転軸線α1の方向において中央部で剥離板175を支持する一方、両端部182a,182aで一対の接触部材181,181に架設される架設部材182を用いることで保持部材180を簡単にかつ容易に構成することが可能となる。しかも、剥離板175を保持する機能と、一対の接触部材181,181を定着ベルト173に接触させる機能と、一対の接触部材181,181の定着ベルト173への接触により磨耗や傷などの発生を低減する機能の3つの機能を一つの部材にもたせることができる。
なお、本実施の形態では、定着装置17として、定着ローラ171を含む複数のローラに巻き掛けられて加圧ローラ174との間に挟持された状態で加圧ローラ174との間で記録シートPを挟持しつつ記録シートPを搬送することで未定着のトナーTを定着する定着ベルト(回転定着部材の一例)を用いたベルト方式の定着装置を用いたが、加圧ローラ174との間で記録シートPを挟持しつつ記録シートPを搬送することで未定着のトナーTを定着する定着ローラ171を用いたローラ方式の定着装置を用いてもよい。この場合、定着ローラ171が回転定着部材とされる。ローラ方式の定着装置では、加圧ローラ174による圧接により弾力層171cを備えた定着ローラ171における弾力層171cの弾性変形の凹み具合がたとえ大きくなっても、剥離板175と定着ローラ171との隙間を確実に維持することができる。
また、本実施の形態では、剥離部材として剥離板175を用いたが、剥離爪(具体的には架設部材182上に長手方向Xに間隔をおいて配設した複数の剥離爪)を用いてもよい。