以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。また、以下の各実施形態で示す材質や形状、寸法等は、一例であって特に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。インクジェット記録装置1はインク滴を吐出して、用紙P(被記録媒体の一例)に画像を記録する。
インクジェット記録装置1は、装置筐体100と、装置筐体100の内部の下方に配置された給紙部2と、給紙部2の上方に配置された記録部3と、記録部3の一側方(図1では右側)に配置された用紙搬送部4と、記録部3の他側方(図1では左側)に配置された用紙排出部5とを備える。
給紙部2は、用紙Pを用紙搬送部4へ給紙する。給紙部2は、装置筐体100に着脱自在の給紙カセット21と、給紙ローラー22と、ガイド板23とを備える。給紙ローラー22は給紙カセット21の一端側(図1では右側端)の上方に配置される。ガイド板23は給紙ローラー22と用紙搬送部4との間に配置される。
給紙カセット21は、複数枚の用紙Pを収納可能である。給紙ローラー22(ピックアップローラー)は、用紙Pを給紙カセット21から1枚ずつ取り出し、ガイド板23へ向けて送る。ガイド板23は、給紙ローラー22が取り出した用紙Pを用紙搬送部4へ案内する。
用紙搬送部4は、用紙Pを記録部3へ搬送する。用紙搬送部4は、略C字形の用紙搬送路41と、用紙搬送路41の入口側に設けられた第1搬送ローラー対42と、用紙搬送路41の途中に設けられた第2搬送ローラー対43と、用紙搬送路41の出口側に設けられたレジストローラー対44とを備える。
用紙搬送路41は、ガイド板によって構成される。第1搬送ローラー対42は、給紙部2から給紙される用紙Pを挟んで用紙搬送路41内に送出する。第2搬送ローラー対43は、第1搬送ローラー対42が送出した用紙Pを挟んでレジストローラー対44へ向けて送出する。
レジストローラー対44は、第2搬送ローラー対43が送出した用紙Pの斜行補正を行う。また、レジストローラー対44は、用紙Pへの画像の記録タイミングと、記録部3への用紙Pの搬送タイミングとを同期させるために、用紙Pを一時的に停止させた後、用紙Pを画像記録タイミングに合わせて記録部3に送出する。具体的には、用紙Pがレジストローラー対44に当接して停止する。この当接により、用紙Pの斜行補正が行われる。その後、レジストローラー対44が、用紙Pを画像記録タイミングに合わせて記録部3へ送出する。
記録部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を記録する。記録部3は、搬送部31と、搬送板32(ガイド部材の一例)と、搬送ガイド33と、4種類の記録ヘッド34a、34b、34c、34dと、板状部材35(空間形成部材の一例)と、吸引部36とを備える。4種類の記録ヘッド34a、34b、34c、34dは、略同一の構成を有するため、記録ヘッド34と総称することもある。
搬送部31は、レジストローラー対44から送出された用紙Pを搬送する。搬送部31は、搬送ベルト310(無端ベルトの一例)を備える。搬送部31は、搬送ベルト310を所定の回転方向(図1では反時計回り方向)に回転させる。レジストローラー対44が送出した用紙Pは、搬送ベルト310上に導かれる。搬送ベルト310が回転することにより、用紙Pが搬送される。
搬送板32は、搬送ベルト310を支持すると共に、搬送ベルト310を介して用紙Pを支持する。搬送板32は、搬送部31(搬送ベルト310)が搬送する用紙Pを、矢印Xで示す方向(副走査方向)へ案内する。以下、搬送部31(搬送ベルト310)によって用紙Pが搬送される方向を、用紙搬送方向Xと記載する。
搬送ガイド33は、用紙搬送方向Xに対して搬送板32よりも下流側(図1では左側)に配置される。したがって搬送板32は、用紙Pを搬送ガイド33へ案内する。つまり、搬送部31は、用紙Pを搬送ガイド33へ送出する。搬送ガイド33は、搬送部31が送出した用紙Pを用紙排出部5に案内する。
記録ヘッド34は、搬送部31の上方に配置され、搬送ベルト310を介して搬送板32に対向する。記録ヘッド34は、搬送部31(搬送ベルト310)が用紙Pを搬送している間に、用紙Pに画像を記録する。詳しくは、記録ヘッド34は、記録ヘッド34に対向する位置を通過する用紙Pへ向けてインク滴を吐出する。これにより、用紙Pに文字、図形のような画像が記録される。
板状部材35は、用紙搬送方向Xに対して記録ヘッド34よりも上流側(図1では右側)に配置される。詳しくは、記録ヘッド34a、34b、34c、34dのうち、用紙搬送方向Xに対して最も上流側に位置する記録ヘッド34aよりも上流側に板状部材35が配置される。したがって用紙Pは、板状部材35の下方を通過した後、記録ヘッド34の下方を通過して、搬送ガイド33に至る。以下、記録ヘッド34aを最上流記録ヘッド34aと記載する場合がある。
また板状部材35は、搬送部31の上方に配置されている。つまり、板状部材35は、搬送ベルト310を介して搬送板32に対向する。これにより、搬送ベルト310と板状部材35との間に狭隙空間351(異物回収空間の一例)が形成される。
吸引部36は、搬送板32の下方に配置される。吸引部36は、搬送板32及び搬送ベルト310を介して、用紙Pを搬送ベルト310へ向けて吸引する。その結果、用紙Pが搬送ベルト310に吸着される。
用紙排出部5は、用紙Pを装置筐体100の外部に排出する。用紙排出部5は、排出ローラー対51と、排出トレイ52とを備える。排出トレイ52は、装置筐体100に形成された排出口11から外部に突出するように装置筐体100に固定される。排出口11は、装置筐体100の一方側面(図1では左側面)に形成されている。
排出ローラー対51は、搬送ガイド33を通過した用紙Pを排出口11の方向に送出する。排出ローラー対51が送出した用紙Pは、排出トレイ52によって案内されて、排出口11を介して装置筐体100の外部に排出され、排出トレイ52上に載置される。複数枚の用紙Pに連続して画像が記録された場合、複数枚の用紙Pは、排出トレイ52上に積載される。
本実施形態では、板状部材35が、用紙搬送方向Xに対して最上流記録ヘッド34aよりも上流に狭隙空間351を形成する。これにより、狭隙空間351に風を発生させることができる。そして、その風によって、紙粉のような異物を用紙Pから剥離させることができる。つまり、レジストローラー対44から記録部3へ送出された用紙Pには異物が付着している可能性がある。これに対し、板状部材35を設けることにより、最上流記録ヘッド34aに対向する位置に用紙Pが到達するよりも前に用紙Pから異物を剥離させて、記録ヘッド34の下方へ搬送される異物の量を減らすことができる。その結果、記録ヘッド34のノズルへの異物の付着を抑制することができる。
異物は、製紙工程中に発生する可能性がある。具体的には、裁断工程において用紙Pの切断面に切り粉(紙粉)が発生して、用紙Pに付着する可能性がある。また、梱包時に用紙Pの表面同士が擦れて、紙粉や炭酸カルシウム、タルクのような異物が用紙Pから剥離し、用紙Pに付着する可能性がある。
また紙粉は、インクジェット記録装置1内で用紙Pを搬送する際に発生する可能性がある。例えば、用紙Pが給紙ローラー22と摺擦することにより、用紙Pから繊維や填料が剥離し、紙粉となって用紙Pに付着する可能性がある。同様に、用紙Pが第1搬送ローラー対42等の搬送ローラーと摺擦して紙粉が発生する可能性がある。また、用紙搬送部4を構成するガイド板に用紙Pが摺擦して紙粉が発生する可能性がある。更に、給紙ローラー22が用紙Pをピックアップする際に、ピックアップされる用紙Pが、給紙カセット21に収納されている用紙Pと摺擦して紙粉が発生する可能性がある。
また、用紙Pに付着している紙粉のような異物が、第1搬送ローラー対42等の搬送ローラーに付着する可能性がある。この場合、搬送ローラーに付着した異物が、後から搬送される用紙Pに再度付着し、その結果、用紙Pによって一度に搬送される異物の量が多くなる可能性がある。
また、インクジェット記録装置1の装置筐体100の内部には、様々な空気の流れが発生している。例えば、搬送ベルト310の上方から吸引部36の内部へ空気が流れる。また、用紙Pが搬送されることで、用紙搬送方向Xへの空気の流れが発生する。したがって、用紙Pは風に当たりながら記録ヘッド34の下方を通過する。また、記録ヘッド34と搬送ベルト310との間の空間は狭いため、記録ヘッド34と搬送ベルト310との間では、比較的強い風が発生し易い。したがって、記録ヘッド34の下方は、風によって用紙Pから異物が吹き飛ばされやすい(舞い上がりやすい)環境になっている。そのため、用紙Pから吹き飛ばされた異物が記録ヘッド34のノズルに付着する可能性がある。
また、紙粉の付着力は、一般的にクーロン力が支配的となる。このため、搬送板32と記録ヘッド34との間に電界が生じた場合、その電気的な力によって、紙粉が飛翔し、記録ヘッド34へ引き寄せられる可能性がある。その結果、紙粉が記録ヘッド34のノズルに付着する可能性がある。
本実施形態では、狭隙空間351に風を発生させることによって、紙粉のような異物を用紙Pから剥離させる。狭隙空間351に流れる空気は、用紙Pから異物を剥離させるために十分な風速で流れる必要がある。具体的には、用紙Pが狭隙空間351に進入した際に、狭隙空間351の空気流入口に6.0m/秒以上の風速の風(空気の流れ)を発生させることにより、用紙Pから異物を剥離することができる。用紙Pから剥離した異物は、その大部分が吸引部36の内部へ吸引されるが、僅かながら板状部材35の下面(搬送ベルト310に対向する面)に付着することがある。
板状部材35に異物が付着した場合、カールした用紙Pが搬送されて、用紙Pが板状部材35の下面に接触すると、板状部材35から異物が掻き落とされるおそれがある。掻き落とされた異物は、用紙搬送方向Xへの空気の流れに乗って記録ヘッド34のノズルまで運ばれ、ノズルに付着するおそれがある。あるいは、掻き落とされた異物が用紙Pに再度付着して、記録ヘッド34の下方まで搬送され、ノズルに付着するおそれがある。更には、板状部材35に付着している異物の量の増加に伴い、板状部材35への異物の付着力が低下し、その結果、板状部材35から異物が剥がれ落ちる可能性がある。用紙Pへの画像の記録時に板状部材35から異物が剥がれ落ちると、用紙搬送方向Xへの空気の流れに乗って異物が記録ヘッド34のノズルまで運ばれるおそれがある。また、剥がれ落ちた異物が、板状部材35の下方を通過中の用紙Pに付着するか、又は、回転している搬送ベルト310の外周面に付着して、記録ヘッド34の下方まで搬送されるおそれがある。したがって、板状部材35に異物が付着することに起因して、ノズルに異物が付着する可能性がある。この問題を解決する手段として、本実施形態のインクジェット記録装置1は、振動発生部37を備える。
振動発生部37は、板状部材35を振動させる。板状部材35が振動することにより、板状部材35から異物を剥離させることができる。本実施形態のインクジェット記録装置1は、非記録時に振動発生部37を作動させる。即ち、用紙Pへの画像の記録動作が実行されていない期間に、振動発生部37が板状部材35を振動させる。また本実施形態では、振動発生部37が作動している間、吸引部36が吸引動作を実行する。これにより、板状部材35から剥離した異物を吸引部36の内部に吸引することができる。したがって、本実施形態によれば、板状部材35に異物が付着することに起因するノズルへの異物の付着を抑制することができる。
また本実施形態では、振動発生部37が作動している間、搬送ベルト310が回転する。これにより、搬送ベルト310の表面の一部分に異物が集中して付着することを抑制できる。
また、板状部材35の振動は、定期的に実施することが好ましい。これにより、板状部材35に異物が付着することに起因するノズルへの異物の付着を更に抑制することができる。具体的には、所定枚数の用紙P(所定数の被記録媒体)に画像が記録される毎に、振動発生部37が作動してもよい。例えば、用紙Pの記録枚数が3000枚又は5000枚に達するごとに、振動発生部37によって板状部材35が振動され得る。なお、振動発生部37を作動させる間隔は、ユーザーによって任意に設定されてもよい。
続いて図2を参照して、搬送ベルト310について説明する。図2は、搬送ベルト310を示す平面図である。図2に示すように、搬送ベルト310には複数の吸引孔311が穿孔されている。吸引孔311の直径は、2mmであり得る。また、隣接する吸引孔311間の間隔は、8mmであり得る。
複数の吸引孔311は、用紙搬送方向X、及び、用紙搬送方向Xに直交する方向(主走査方向)に沿って配列される。以下、用紙搬送方向Xに直交する方向を用紙幅方向と記載する。複数の吸引孔311は、図2に示すように、千鳥状に配置され得る。
続いて図3及び図4を参照して、搬送板32について説明する。図3は、搬送板32を示す平面図である。詳しくは、図3は、搬送板32の記録ヘッド34(図1参照)側の面320の一部を示す。以下、搬送板32の記録ヘッド34側の面320を支持面320と記載する場合がある。搬送板32は支持面320により、搬送ベルト310(図1参照)を介して用紙Pを支持する。
搬送板32は、金属材料から構成される。具体的には、搬送板32の材料として、アルミダイキャスト、プレス加工板等を使用できる。あるいは、搬送板32の材料として、搬送ベルト310との摺動性に優れた樹脂を選択することも可能である。搬送板32が金属材料から構成される場合、搬送板32は接地され得る。
図3に示すように、支持面320に複数の溝321が形成されている。各溝321は、記録ヘッド34(図1参照)側が開口する長溝である。詳しくは、各溝321の形状は、用紙搬送方向Xに延伸する長円状である。
複数の溝321は、用紙搬送方向X及び用紙幅方向に沿って配列される。複数の溝321は、図3に示すように、千鳥状に配置され得る。詳しくは、複数の溝321は、搬送ベルト310の吸引孔311(図2参照)と対向し得る位置に配列される。つまり複数の溝321は、吸引孔311と連通できる位置に配列される。この配列により、搬送ベルト310の進行(回転)に伴って、各溝321に対向する吸引孔311が1つずつ入れ替わってゆく。各溝321は、少なくとも2つの吸引孔311と対向し得るように形成される。
また搬送板32には、複数の貫通孔322が形成されている。複数の貫通孔322は、複数の溝321内に位置する。詳しくは、各溝321内に1つの貫通孔322が位置する。各貫通孔322は、対応する溝321に連通する。各貫通孔322の断面は、円形状であり得る。複数の貫通孔322は、図3に示すように、千鳥状に配置され得る。
図4(a)は、搬送板32の溝321及び貫通孔322を示す平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示すA−A線に沿った溝321及び貫通孔322の断面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、貫通孔322は、搬送板32をその厚み方向に貫通しており、貫通孔322の一方端は、対応する溝321内に開口する。
続いて、図1、図2、及び図5を参照して、記録部3の構成を説明する。図5は、記録部3の構成を示す図である。図5は、理解を容易にするために、搬送板32の断面及び吸引部36の一部(箱状部材361)の断面を示している。
搬送部31は、装置筐体100(図1参照)内において、記録ヘッド34に対向する。搬送部31は、搬送ベルト310の内周側に配置された駆動ローラー312、ベルト速度検知ローラー313、テンションローラー314、及び一対のガイドローラー315を備える。搬送部31は更に、搬送ベルト310の外周側に配置された吸着ローラー316を備える。
搬送ベルト310は、駆動ローラー312、ベルト速度検知ローラー313、テンションローラー314、及び一対のガイドローラー315に張架される。張架された搬送ベルト310の内周側に、搬送板32及び吸引部36が配置される。搬送板32は、搬送ベルト310を介して、記録ヘッド34及び板状部材35に対向する。吸引部36は、搬送ベルト310の内周側において、搬送板32の下方に配置される。
駆動ローラー312は、用紙搬送方向Xに対して搬送板32よりも下流側(図5では左側)に配置される。駆動ローラー312はモーター(図示せず)によって回転駆動され、所定の回転方向(図5では反時計回り方向)に搬送ベルト310を回転させる。搬送ベルト310が回転することにより、用紙Pが用紙搬送方向Xに搬送される。
ベルト速度検知ローラー313は、用紙搬送方向Xに対して搬送板32よりも上流側(図5では右側)に配置され、搬送ベルト310との間に発生する摩擦によって回転する。好ましくは、ベルト速度検知ローラー313は、駆動ローラー312と共に、記録ヘッド34と対面する箇所の搬送ベルト310の平面性を維持するように配置される。
ベルト速度検知ローラー313はパルス板(図示せず)を含み、パルス板は、ベルト速度検知ローラー313と一体になって回転する。パルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト310の回転速度が検知される。
テンションローラー314は、搬送ベルト310が撓まないように、搬送ベルト310に張力を与える。一対のガイドローラー315は、搬送ベルト310が吸引部36の下方を通過するように、搬送ベルト310を案内する。
吸着ローラー316は従動ローラーである。吸着ローラー316は、用紙搬送方向Xにおける搬送板32の上流側の端部に、搬送ベルト310を介して対向する。吸着ローラー316は、レジストローラー対44(図1参照)が送出した用紙Pを搬送ベルト310上へ誘導して、搬送ベルト310に吸着させる。
吸引部36は、搬送板32の溝321及び貫通孔322と、搬送ベルト310の吸引孔311(図2参照)とを介して、空気を吸引する。この吸引により、記録ヘッド34の下方の空間、及び狭隙空間351に風が発生する。用紙Pが搬送ベルト310上に案内されて搬送ベルト310の一部を覆うと、用紙Pに吸引力(負圧)が作用して、用紙Pが搬送ベルト310に吸着される。吸引部36は、上面が開口した箱状部材361と、吸引装置362と、ダクト363とを備える。
搬送板32は、箱状部材361の上面開口を覆うように配置される。搬送板32と箱状部材361とにより、圧力室364が区画される。圧力室364は、搬送板32の貫通孔322及び溝321を介して、搬送ベルト310の吸引孔311に連通する。
吸引装置362は、箱状部材361の下面に固定される。詳しくは、箱状部材361の底壁に開口365が形成されており、吸引装置362は開口365に対応して配置される。また、吸引装置362の下面にダクト363が接続されている。吸引装置362は、ファンである。但し、吸引装置362はファンに限定されるものではなく、例えば真空ポンプであってもよい。
吸引装置362が駆動することによって、圧力室364内に、500Paの負圧(ゲージ圧)が発生する。この負圧により、貫通孔322を介して溝321に吸引力が発生し、溝321を介して搬送ベルト310の吸引孔311に吸引力が発生する。その結果、搬送ベルト310の吸引孔311、搬送板32の溝321、及び搬送板32の貫通孔322を介して、圧力室364内に空気が吸引される。圧力室364内に吸引された空気は、吸引装置362及びダクト363を介して排気される。また、用紙Pが搬送ベルト310上に案内されて、複数の吸引孔311のうちの一部を塞ぐと、用紙Pによって塞がれた吸引孔311から用紙Pに吸引力(負圧)が作用して、用紙Pが搬送ベルト310に吸着される。
4種類の記録ヘッド34a、34b、34c、34dはそれぞれ、互いに異なる色のインク滴を吐出し得る。具体的には、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色のインク滴が、それぞれ、各記録ヘッド34a、34b、34c、34dから吐出され得る。
また、記録ヘッド34は、搬送ベルト310との間に所定の間隔(1mm)が形成されるような高さに支持され得る。なおインクジェット記録装置1は、搬送ベルト310によって搬送される用紙P(被記録媒体)の厚みに応じて記録ヘッド34を昇降させる機構を備え得る。斯かる構成により、記録ヘッド34と用紙Pとの間に所定の距離(1mm)が形成されるような高さに、記録ヘッド34を支持することが可能となる。
4種類の記録ヘッド34a、34b、34c、34dは、用紙搬送方向Xの上流側から下流側に向けて(図5では左向きに)並設される。記録ヘッド34は、用紙幅方向(図5では、紙面に直交する方向)に配列された複数のノズル(図示せず)を備える。複数のノズルからインク滴が吐出されて、用紙Pに文字、図形のような画像が記録される。
なお、記録ヘッド34はラインヘッドと呼ばれる。即ち、インクジェット記録装置1は、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置である。本実施形態において、記録ヘッド34の用紙幅方向の長さは、搬送板32が案内可能な(つまり、インクジェット記録装置1が記録可能な)被記録媒体の最大幅以上である。
板状部材35は、最上流記録ヘッド34aと吸着ローラー316との間に配置される。板状部材35の用紙搬送方向Xの長さは、60mmである。板状部材35の少なくとも下面は、導電体から構成され得る。導電体としては、ステンレス等を使用し得る。板状部材35の全部、又は板状部材35を部分的に構成する導電体は、接地され得る。
上述したように、本実施形態では、狭隙空間351に風を発生させることにより、紙粉のような異物を用紙Pから剥離させる。剥離した異物は、圧力室364内へ吸引され、吸引装置362を介してダクト363から排出される。
続いて図6を参照して、板状部材35と用紙P(被記録媒体)との間の距離TDについて説明する。図6は、板状部材35の近傍の構成を示す図である。
本実施形態において、板状部材35と用紙Pとの間の距離TDは、1.5mm以上3.0mm以下である。距離TDは、例えば2mmである。距離TDをこのように設定し、圧力室364内に500Paの負圧(ゲージ圧)を発生させることで、狭隙空間351の空気流入口(具体的には、板状部材35と用紙Pとの間)に6.0m/秒以上の風速の風を発生させることができる。
続いて図1〜図8を参照して、用紙Pへの画像の記録時における記録部3の動作について説明する。図7は、狭隙空間351に用紙Pが進入する際の様子を示す図である。詳しくは、図7は、用紙Pが狭隙空間351に進入する際に、用紙Pの前端部(図7では左側の端部)から異物mが剥離する様子を示す。図8は、狭隙空間351から用紙Pが離れる際の様子を示す図である。詳しくは、図8は、用紙Pが狭隙空間351から離れる際に、用紙Pの後端部(図8では右側の端部)から異物mが剥離する様子を示す。
用紙Pに画像を記録する際には、駆動ローラー312が回転駆動されるとともに、吸引装置362が駆動される。これにより、搬送ベルト310が回転し、圧力室364に負圧が発生する。この負圧により、各貫通孔322を介して各溝321に吸引力が発生する。そして、回転する搬送ベルト310の各吸引孔311に、各溝321を介して吸引力が発生する。詳しくは、回転する搬送ベルト310のうち、搬送板32によって支持される箇所に位置する各吸引孔311(搬送板32の上に位置する各吸引孔311)に吸引力が発生する。その結果、搬送板32及び搬送ベルト310を介して圧力室364へ空気が吸引される。
レジストローラー対44により記録部3へ送出された用紙Pは、吸着ローラー316によって搬送ベルト310上に導かれる。この際、用紙Pの用紙幅方向の中心が、搬送ベルト310の用紙幅方向の中心と一致するように、用紙Pが搬送ベルト310に導かれることが好ましい。用紙Pは、搬送ベルト310の一部を覆う。換言すれば、複数の吸引孔311の一部を覆う。その結果、吸引力(負圧)が用紙Pに作用して、用紙Pが搬送ベルト310に吸着される。そして、用紙Pは、搬送ベルト310の回転に伴って用紙搬送方向Xに搬送される。
用紙Pは、搬送ベルト310によって、板状部材35の下方を通過した後、記録ヘッド34の下方を通過する。板状部材35の下方、つまり狭隙空間351に用紙Pが進入すると、図7に示すように、用紙Pの前端部が、矢印D1で示す風に曝される。矢印D1で示す風は、用紙搬送方向Xに対して板状部材35よりも上流側の位置から、狭隙空間351へ向けて流入する空気の流れである。よって、矢印D1で示す風は、用紙搬送方向Xの上流側から下流側に向けて(図7では左向きに)吹く。この風によって、用紙Pの前端部に付着している異物mが、用紙Pから剥離される。剥離された異物mの大部分は、板状部材35の下方に位置する吸引孔311から、板状部材35の下方に位置する溝321へ導かれ、対応する貫通孔322を介して圧力室364内へ導かれる。そして、圧力室364を通り、吸引装置362及びダクト363を通過して、外部に排出される。また、僅かではあるが、剥離された異物mの一部が板状部材35に付着する。
用紙Pが狭隙空間351から離れる際には、図8に示すように、用紙Pの後端部が、矢印D2で示す風に曝される。矢印D2で示す風は、用紙搬送方向Xに対して板状部材35よりも下流側の位置から、狭隙空間351へ向けて流入する空気の流れである。よって、矢印D2で示す風は、用紙搬送方向Xの下流側から上流側に向けて(図8では右向きに)吹く。この風によって、用紙Pの後端部に付着している異物mが、用紙Pから剥離される。剥離された異物mの大部分は、板状部材35の下方に位置する吸引孔311から、板状部材35の下方に位置する溝321へ導かれ、対応する貫通孔322を介して圧力室364内へ導かれる。そして、圧力室364を通り、吸引装置362及びダクト363を通過して、外部に排出される。また、僅かではあるが、剥離された異物mの一部が板状部材35に付着する。
用紙Pが板状部材35の下方を通過した後、4種類の記録ヘッド34a、34b、34c、34dにそれぞれ対向する位置へ、用紙Pの各部分が連続して搬送される。この間に、4種類の記録ヘッド34a、34b、34c、34dから、それぞれ、各色のインク滴が用紙Pへ向けて吐出される。これによって、用紙Pに画像が記録される。
続いて図9(a)〜図9(c)を参照して、振動発生部37の構成について説明する。図9(a)は、振動発生部37の構成を示す断面図である。図9(b)は、振動発生部37の動作を示す断面図である。図9(c)は、図9(b)に示すC−C線に沿った断面を示す図である。
図9(a)に示すように、振動発生部37は、回転型モーター371と、衝突部材372とを備える。衝突部材372は、回転型モーター371の出力軸371aに取り付けられる。詳しくは、衝突部材372の外形は、図9(c)に示すように長円状であり、衝突部材372の長軸方向の一方の端部が、回転型モーター371の出力軸371aに取り付けられる。
また、板状部材35の用紙幅方向の両端部が、弾性部材381を介して、一対のガイドレール38によって支持されている。一対のガイドレール38は、用紙搬送方向Xに直交し、且つ用紙幅方向にも直交する方向への板状部材35の移動を案内する。一対のガイドレール38は、装置筐体100(図1参照)に固定され得る。
また、一対のガイドレール38のうちの一方に、回転型モーター371を支持する支持板382が固定されている。支持板382は、板状部材35の上方に位置している。これにより、回転型モーター371が板状部材35の上方に配置される。詳しくは、回転型モーター371が衝突部材372を回転させることにより、図9(b)に示すように衝突部材372を板状部材35に衝突させることが可能な位置に、回転型モーター371を配置する。なお、ガイドレール38と支持板382とは一体に形成されてもよい。
各弾性部材381は、対応するガイドレール38と板状部材35との間に配置される。詳しくは、各ガイドレール38は、支持部38aを有する。各支持部38aは、対応するガイドレール38の搬送板32(図5参照)側の端部に形成されている。各支持部38aはそれぞれ、板状部材35の端から中心へ向かう方向へ突出して、板状部材35の搬送板32側の面を支持する。各弾性部材381は、対応する支持部38aと板状部材35との間に配置される。なお、各弾性部材381は、対応するガイドレール38、及び板状部材35の少なくとも一方に固着され得る。
各弾性部材381は、衝突部材372が板状部材35に衝突する際に、図9(b)に示すように圧縮される。また、各弾性部材381は、衝突部材372が板状部材35から離れると、図9(a)に示す状態に復元する。各弾性部材381の素材は、弾性を有する素材であれば特に限定されない。例えば、各弾性部材381として、ゴム素材のような弾性を有する樹脂、又はバネを使用し得る。なお本実施形態では、支持板382は、回転型モーター371を支持する機能に加えて、搬送板32から離れる方向への板状部材35の移動を規制する機能も有する。即ち、支持板382は、ストッパーとして機能し得る。
続いて図9(a)〜図9(c)を参照して、振動発生部37の動作について説明する。板状部材35を振動させる前段階では、図9(a)に示すように、衝突部材372は、板状部材35から離れている。板状部材35を振動させるには、回転型モーター371が衝突部材372を回転させる。その結果、図9(b)に示すように、衝突部材372が板状部材35と衝突する。この衝突により、板状部材35が揺れて、即ち振動して、板状部材35から異物mが剥がれ落ちる。なお、衝突部材372と板状部材35との衝突回数は少なくとも1回である。板状部材35の振動処理を終了する際には、衝突部材372を図9(a)に示すように位置させて、板状部材35から衝突部材372が離れた状態を維持する。
以上説明したように、本実施形態によれば、簡易な構成で記録ヘッド34のノズルへの異物の付着を抑制できる。また、板状部材35を振動させることにより、板状部材35から異物を剥離させることができる。これにより、板状部材35に異物が付着することに起因するノズルへの異物の付着を抑制することができる。
また、板状部材35の少なくとも下面が導電体から構成される。斯かる構成によれば、帯電している紙粉が板状部材35に付着し難くなる。また、板状部材35を構成する導電体を接地することにより、帯電している紙粉が板状部材35に更に付着し難くなる。したがって、板状部材35に異物が付着することに起因するノズルへの異物の付着を更に抑制することができる。
また本実施形態では、所定枚数の用紙Pに画像が形成された後に、振動発生部37が板状部材35を振動させる。これにより、板状部材35から異物が突発的に剥がれて、その剥がれた異物がノズルに付着する事態を起こし難くすることができる。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
例えば、本発明の実施形態では、板状部材35の用紙幅方向の両端部が、弾性部材381を介して、一対のガイドレール38によって支持される構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。板状部材35を支持する構成は、板状部材35の振動(揺れ)を許容可能な構成であればよい。例えば、板状部材35の用紙搬送方向Xの両端部が一対のガイドレールによって支持されてもよい。あるいは、板状部材35の四隅がそれぞれゴム紐状部材によって吊り下げられてもよい。
また、本発明の実施形態では、回転型モーター371が衝突部材372を回転させることによって板状部材35が振動する構成について説明したが、板状部材35を振動させる構成はこれに限定されない。例えば、板状部材35を振動させる駆動源として、ボイスコイルモーターのような振動型モーターが使用されてもよい。この場合、振動子の振動に連動して、板状部材35を振動させることができる。
また、本発明の実施形態では、板状部材35を振動させる間に吸引部36が作動して、板状部材35から剥がれた異物を吸引部36の内部へ吸引する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インクジェット記録装置1が、搬送ベルト310をクリーニングするベルトクリーニング機構を備えてもよい。斯かる構成によれば、板状部材35から剥がれて搬送ベルト310上に落下した異物を、ベルトクリーニング機構によって回収することが可能となる。
また、本発明の実施形態では、搬送ベルト310が用紙Pを搬送する形態について説明したが、その他の方法で用紙Pを搬送する形態でもよい。例えば、複数の搬送ローラーによって用紙Pを搬送する形態でもよい。この場合には、互いに隣接する搬送ローラーの間から空気の吸引を行うことが好ましい。
また、本発明の実施形態では、複数の溝321が形成された搬送板32を使用する形態について説明したが、複数の溝321が形成されていない搬送板を使用する形態でもよい。この場合、より確実に用紙Pを搬送ベルト310に吸着させるために、複数の溝321が形成された搬送板32よりも貫通孔322の数が多い搬送板を使用することが好ましい。
また、本発明の実施形態では、搬送板32と箱状部材361とが別部材である形態について説明したが、搬送板32と箱状部材361とが一体に形成されている形態でもよい。この場合には、圧力室364からの負圧のリーク、即ち搬送板32と箱状部材361との間の隙間からの圧力室364への空気の流入を防止することができる。
また、本発明の実施形態では、フルカラーで画像を記録可能なインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、モノクロで画像を記録するインクジェット記録装置にも適用可能である。
なお、本発明の実施形態で説明された各事項は適宜組み合わせることが可能である。