JP6259310B2 - 亜鉛電極、亜鉛空気電池および電析方法 - Google Patents

亜鉛電極、亜鉛空気電池および電析方法 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛電極、亜鉛空気電池および電析方法に関する。
亜鉛空気電池は高いエネルギー密度を有するため、次世代の電池として注目されている。亜鉛空気電池は、電極活物質である金属亜鉛を含みアルカリ性電解液中に配置される亜鉛電極をアノードとし、多孔性の空気極をカソードとすることにより放電する。
亜鉛空気電池を二次電池として用いると、充電時に亜鉛電極にデンドライト結晶が成長し、アノード−カソード間をショートさせる問題が生じる(例えば、特許文献1参照)。
そこで、アノードとなる亜鉛電極を交換し電極活物質である金属亜鉛を亜鉛空気電池に供給することにより、亜鉛空気電池を再放電可能にする機械式充電が知られている(例えば、特許文献2参照)。機械式充電の亜鉛空気電池では、電池反応により金属亜鉛から生成された酸化亜鉛を亜鉛空気電池から取り出し、取り出した酸化亜鉛を電気化学的に還元し金属亜鉛を製造し、この製造した金属亜鉛を亜鉛電極の交換により亜鉛空気電池に供給する。
また、一般的に、酸化亜鉛は、酸性電解液中で電析させることにより金属亜鉛に還元される(例えば、特許文献3参照)。
米国特許第4842963号明細書 特開平7−45270号公報 特開平10−46274号公報
しかし、酸性電解液中における電析により酸化亜鉛を還元する場合、亜鉛空気電池が備える電解液槽とは別の還元用電解液槽が必要になる。また、亜鉛空気電池から取り出した酸化亜鉛にアルカリ性電解液が残留している場合、還元用電解液槽内の酸性電解液と反応する場合があり危険である。また、電極基板が酸性電解液に対する耐食性とアルカリ性電解液に対する耐食性との両方を有する必要がある。さらに、製造した金属亜鉛に酸性電解液が残留している場合、亜鉛空気電池内のアルカリ性電解液と反応する場合があり危険である。また、酸性電解液では、電極基板やセル材からの不純物が混入しやすく、クロム、銅などが検出されることがある。
また、アルカリ性電解液中における電析により酸化亜鉛を還元する場合、製造される金属亜鉛が多孔質やデンドライト結晶となる場合が多い。多孔質やデンドライト結晶の金属亜鉛は、表面積が大きいため酸化されやすく、効率よく輸送や保存することが難しい。また、多孔質である金属亜鉛を電極活物質として放電すると、電極活物質の一部が亜鉛電極から脱落し電極活物質を効率よく放電反応に利用できない場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アルカリ性電解液中で製造することができ、緻密な金属亜鉛層を有する亜鉛電極を提供する。
本発明は、インジウムと主成分である亜鉛とを含む金属亜鉛層を備え、前記金属亜鉛層は、その表面からの距離が50nm以下の表層領域と、前記表面からの距離が100nm以上の深層領域とを有し、前記表層領域のインジウム濃度は、前記深層領域のインジウム濃度よりも大きいことを特徴とする亜鉛電極を提供する。
本発明によれば、インジウムと主成分である亜鉛とを含む金属亜鉛層を備えるため、電極活物質である金属亜鉛を含む亜鉛電極を提供することができる。
本発明によれば、金属亜鉛層は、その表面からの距離が50nm以下の表層領域と、表面からの距離が100nm以上の深層領域とを有し、表層領域のインジウム濃度は、深層領域のインジウム濃度よりも大きいため、表層領域を金属亜鉛層の保護層とすることができる。また、金属亜鉛層を緻密な金属亜鉛の層とすることができる。また、金属亜鉛層に含まれる不純物の濃度を低くすることができる。このため、本発明の亜鉛電極は高い体積エネルギー密度を有することができる。なお、このことは、本発明者等が行った実験により実証された。
また、本発明によれば、表層領域を金属亜鉛層の保護層とすることができるため、金属亜鉛層に含まれる金属亜鉛の酸化が進行することを抑制することができる。このため、保管や運搬に伴う亜鉛電極の劣化を抑制することができ、電析した金属亜鉛を電池の電極活物質として効率よく利用することができる。このことは、本発明者等が行った実験により実証された。
また、本発明によれば、亜鉛電極をアルカリ性電解液中に浸漬しても亜鉛の腐食による水素ガスの発生を抑制することができるため、本発明の亜鉛電極を電池の電極として利用した際に電池内において水素ガスが発生することを抑制することができ、電池の安全性の低下や電池の放電特性の低下を抑制することができる。また、金属亜鉛を電池の電極活物質として効率よく利用することができる。このことは、本発明者等が行った実験により実証された。
また、本発明によれば、金属亜鉛層は緻密な金属亜鉛の層であるため、本発明の亜鉛電極を電池の電極として利用した際に、金属亜鉛層の一部が脱落することを抑制することができ、亜鉛電極の電極活物質の利用効率を高くすることができる。
また、本発明の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層はアルカリ性電解液中において電析できるため、電極基板に酸性電解液に対する耐食性を有さない材料も使用可能である。
(a)は本発明の一実施形態の亜鉛電極の概略断面図であり、(b)は(a)の点線で囲んだ範囲Aにおける亜鉛電極の拡大断面図である。 本発明の一実施形態の亜鉛空気電池の概略断面図である。 本発明の一実施形態の亜鉛電極の製造に用いる電析装置の概略断面図である。 実施例1の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層のXRD測定により得られた回折パターンである。 実施例1の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層の表面の段差測定の結果を示すグラフである。
本発明の亜鉛電極は、インジウムと主成分である亜鉛とを含む金属亜鉛層を備え、前記金属亜鉛層は、その表面からの距離が50nm以下の表層領域と、前記表面からの距離が100nm以上の深層領域とを有し、前記表層領域のインジウム濃度は、前記深層領域のインジウム濃度よりも大きいことを特徴とする。
本発明の亜鉛電極において、表層領域は、金属亜鉛層が含有するインジウム総量に対し77%以上100%以下のインジウムを含有することが好ましい。
このような構成によれば、表層領域を金属亜鉛層の保護膜として機能させることができ、金属亜鉛層の酸化や自己腐食を抑制することができる。
本発明の亜鉛電極において、前記表層領域は、5原子%以上15原子%以下のインジウム濃度を有し、前記深層領域は、95原子%以上100原子%以下の亜鉛濃度を有することが好ましい。
このような構成によれば、深層領域を緻密な金属亜鉛の層とすることができるため、亜鉛電極の体積エネルギー密度を大きくすることができる。また、表層領域を保護膜とすることができるため、金属亜鉛層の酸化や自己腐食を抑制することができる。
また、本発明は、アノードとなる本発明の亜鉛電極と、亜鉛電極およびアルカリ性電解液を収容する電解液槽と、カソードとなる空気極とを備えた亜鉛空気電池も提供する。
本発明の亜鉛空気電池よれば、本発明の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛を電極活物質として放電電流を出力することができる。
また、本発明は、亜鉛含有イオンおよびインジウム含有イオンを含むアルカリ性電解液中に配置した電極基板上に、インジウムと主成分である金属亜鉛とを含む金属亜鉛層を電析させる電析方法も提供する。
本発明の電析方法によれば、本発明の亜鉛電極を製造することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
亜鉛電極および亜鉛電極の製造方法
図1(a)は本実施形態の亜鉛電極の概略断面図であり、図1(b)は図1(a)の点線で囲んだ範囲Aにおける亜鉛電極の拡大断面図である。図2は、本実施形態の亜鉛電極を備えた本実施形態の亜鉛空気電池の概略断面図である。図3は、本実施形態の亜鉛電極の製造に用いる電析装置の概略断面図である。
本実施形態の亜鉛電極5は、インジウムと主成分である亜鉛とを含む金属亜鉛層4を備え、金属亜鉛層4は、その表面12からの距離が50nm以下の表層領域15と、表面12からの距離が100nm以上の深層領域17とを有し、表層領域15のインジウム濃度は、深層領域17のインジウム濃度よりも大きいことを特徴とする。
また、本実施形態の亜鉛電極5は、電極基板6を有してもよい。
本実施形態の亜鉛電極の製造方法は、特に限定しないが、亜鉛含有イオンおよびインジウム含有イオンを含むアルカリ性電解液25中に配置した電極基板6上に、インジウムと主成分である金属亜鉛とを含む金属亜鉛層を電析させる製造方法が好ましい。この電析方法により、本実施形態の亜鉛電極5を製造することができる。
なお、電析による製造方法は、本発明の亜鉛電極の製造方法の一例である。本発明の亜鉛電極の製造方法は、電析による製造方法には限定されない。本発明の亜鉛電極の製造方法は、電析による製造方法以外に、例えば、金属亜鉛にディップコーティング法でコートする方法、イオン注入で表層領域にインジウムイオンを注入して製造する方法が挙げられる。
以下、本実施形態の亜鉛電極5および亜鉛電極5の製造方法の一例である電析による製造方法について説明する。
1.亜鉛電極
亜鉛電極5は、金属亜鉛を含む電極である。また、亜鉛電極5に含まれる金属亜鉛は、亜鉛空気電池30の電極活物質であってもよい。
亜鉛電極5は、亜鉛空気電池30による放電容量が2000Ah/L以上である電極であってもよい。このことにより、亜鉛電極5に含まれる金属亜鉛を効率よく亜鉛空気電池30による放電に利用することができる。
2.電極基板
電極基板6は、導電性を有する基板であり、電極基板6の表面上に金属亜鉛層4が設けられる。また、電極基板6は、金属亜鉛層4を電析させる際に母材として利用されてもよい。また、電極基板6は、亜鉛空気電池30により放電する際に亜鉛極集電体として利用されてもよい。また、電極基板6は、前記母材と前記亜鉛極集電体の両方に利用されてもよい。
電極基板6の形状は、板状であることが好ましい。このことにより、電極基板6の主要面上に金属亜鉛層4を設けることができる。
電極基板6が板状である場合、電極基板6の両主要面上に金属亜鉛層4が設けられてもよく、一方の主要面上に金属亜鉛層4が設けられてもよい。
電極基板6の厚さは特に限定されないが、例えば、100μm以上10000μm以下であることが好ましく、200μm以上5000μm以下であることがより好ましい。
電極基板6の材料は、アルカリ性電解液に対する耐食性を有する金属とすることができる。例えば、ニッケル、金、銀、銅、ステンレスなどである。また、電極基板6は、ニッケルめっき処理、金めっき処理、銀めっき処理、銅めっき処理された導電性基材などであってもよい。この導電性基材には、鉄、ニッケル、ステンレスなどを用いることができる。また、電極基板6の材料は、酸性電解液に対する耐食性を有さない材料であってもよい。
電極基板6の材料は、金属亜鉛とすることが好ましい。このことにより、電極基板6と金属亜鉛層4の接合性を高くすることができる。また、電極基板6に含まれる金属亜鉛も電極活物質として利用することができる。また、金属亜鉛層4のインジウムを含む表層領域15を保護皮膜とすることができ、電極基板6および金属亜鉛層4が酸化すること又は自己腐食することを抑制することができる。
3.金属亜鉛層の形成
金属亜鉛層4は、電析で製造する場合、電析により形成された金属亜鉛の層である。金属亜鉛層4は、電析時に母材として用いる電極基板6と接合した状態であってもよく、電極基板6から剥離した状態であってもよい。また、金属亜鉛層4は表面12を有する。表面12は、金属亜鉛層4を電析する際に最後に金属亜鉛層4が析出した面である。
金属亜鉛層4は、インジウムと主成分である金属亜鉛とを含む金属亜鉛の層である。また、金属亜鉛層4の亜鉛含有量は、90原子%以上であり100原子%より小さくてもよく、93%以上であり100原子%より小さくてもよく、95%原子%以上であり100原子%より小さくてもよく、97%以上であり100原子%より小さくてもよい。
また、金属亜鉛層4のインジウム含有量は、原子の数量の比率で5ppm以上500ppm以下であってもよく、10ppm以上300ppm以下であってもよい。
また、金属亜鉛層4は、亜鉛とインジウムと不可避不純物とからなる金属組成を有してもよい。
金属亜鉛層4の厚さは、例えば20μm以上10000μm以下であってもよく、30μm以上1000μm以下であってもよい。また、金属亜鉛層4に含まれる金属亜鉛の電極活物質としての放電容量は、1.0Ah以上100Ah以下であってもよい。
金属亜鉛層4は、表面12からの距離が50nm以下の表層領域15と、表面12からの距離が50nmより大きく100nmより小さい中間領域16と、表面12からの距離が100nm以上の深層領域17とを有し、表層領域15のインジウム濃度は、深層領域17のインジウム濃度よりも大きい。このことにより、金属亜鉛層4を緻密な金属亜鉛の層とすることができる。また、表層領域15のインジウム濃度が高い領域を金属亜鉛層4の保護層として機能させることができ、金属亜鉛層4に含まれる金属亜鉛の酸化又は自己腐食を抑制することができる。
また、中間領域16のインジウム濃度は、表層領域15のインジウム濃度よりも小さく、深層領域17のインジウム濃度よりも大きくてもよい。
表層領域15のインジウム濃度は、2原子%以上20原子%以下であってもよい。表層領域15がこのような金属組成を有することにより、表層領域15を金属亜鉛層4の保護層として機能させることができる。また、表層領域15のインジウム濃度は、5原子%以上15原子%以下であってもよく、5原子%以上10原子%以下であってもよい。
5原子%以上15原子%以下であれば、放電時の亜鉛利用効率を低下させないため好ましい。
また、表層領域15は、0.1原子%以上2原子%より小さい電解液に使用されるカチオン物質の濃度を有してもよい。カチオン物質とは、例えば、カリウムやナトリウムなど、電解液に含まれるイオン物質が挙げられる。
また、表層領域15の亜鉛濃度は、80原子%以上98原子%以下であってもよい。
中間領域16では、インジウム濃度が1原子%以上5原子%以下であり、かつ亜鉛濃度が95%以上99%以下であってもよい。
また、表層領域15および中間領域16は、金属亜鉛層4が含有するインジウム総量に対し77%以上のインジウムを含有してもよい。このことにより、表層領域15および中間領域16を金属亜鉛層4の保護層とすることができる。
77%以上であれば、空気中での亜鉛の酸化を抑制できるため好ましい。77%未満であると、長時間空気中に保管した際に、酸化し、不動態が形成される恐れがある。
また、表層領域15又は中間領域16は、インジウムと亜鉛の共晶体を有してもよい。
深層領域17では、インジウム濃度が1原子%より小さく、かつ亜鉛濃度が95%以上100原子%以下であってもよい。深層領域17がこのような金属組成を有することにより、金属亜鉛層4の大部分を占める深層領域17を緻密な金属亜鉛の領域とすることができる。また、深層領域17では、インジウム濃度が0.5原子%より小さく、かつ亜鉛濃度が97%以上100原子%以下であってもよい。
また、深層領域17の酸素濃度は、3原子%以下であってもよい。
深層領域17は、配向性を有する金属亜鉛結晶から構成されてもよい。このことにより、金属亜鉛層4を緻密な金属亜鉛の層とすることができる。また、前記金属亜鉛結晶は、(101)配向であってもよい。また、金属亜鉛層4は、XRDパターンにおいて一定の配向性を有してもよい。また、金属亜鉛層4のXRDパターンは(101)配向を有してもよい。
金属亜鉛層4の表面12は、1μm以上50μm以下の算術平均粗さRaを有してもよい。Raを1μm以上とすることにより、表面12と電解液の接触面積を広くすることができる。このことにより、亜鉛電極5を亜鉛空気電池30に組み込んだ際、界面抵抗を小さくすることができ、亜鉛空気電池30の出力特性を向上させることができる。また、Raを50μm以下とすることにより、亜鉛電極5を亜鉛空気電池30に組み込んだ際、電極集中が生じることを抑制することができ、金属亜鉛層4に含まれる金属亜鉛が電極活物質として利用されずに亜鉛電極5から剥落することを抑制することができる。このことにより、金属亜鉛層4に含まれる金属亜鉛の電極活物質としての利用効率を向上させることができる。また、算術平均粗さRaは、2μm以上30μm以下であってもよく、4μm以上10μm以下であってもよい。
また、金属亜鉛層4は、インジウム添加アルカリ性電解液中で電析された金属亜鉛の層であってもよい。このことにより、亜鉛電極5をアルカリ性水溶液に浸漬した場合、金属亜鉛層4が自己腐食し水素ガスが発生することを抑制することができる。なお、酸性電解液中において電析した亜鉛板をアルカリ性水溶液に浸漬すると、480μmL/day/cm2の水素ガスが発生した。これに対し、インジウム添加アルカリ性電解液中において電析した亜鉛板をアルカリ性水溶液に浸漬すると、水素ガスの発生量を30μmL/day/cm2に抑えることができた。
3.電析方法
本実施形態の電析方法は、亜鉛含有イオンおよびインジウム含有イオンを含むアルカリ性電解液(電析用電解液25)中に配置した電極基板6上に、インジウムと主成分である金属亜鉛とを含む金属亜鉛層4を電析させる。このことにより、本実施形態の亜鉛電極5を作製することができる。
例えば、図3に示した電析装置40のように、めっき槽24に収容した電析用電解液25中に作用極27および対極28を配置し、作用極27と対極28との間に直流電流を流すことにより、作用極27に金属亜鉛層4を析出させることができる。
めっき槽24は、亜鉛空気電池30に含まれる電解液槽2であってもよい。この場合、亜鉛電極5が作用極27となり、空気極9又は充電用電極が対極28となる。また、電解液3が電析用電解液25となる。
電析用電解液25は、亜鉛含有イオンおよびインジウム含有イオンを含むアルカリ性電解液である。電析用電解液25は、例えば、水酸化カリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液であってもよい。このことにより、電析用電解液25を強アルカリとすることができる。また、電析用電解液25の水酸化カリウム濃度又は水酸化ナトリウム濃度は、6M以上10M以下であってもよい。
また、電析用電解液25に含まれる金属原子であって水溶液中で電析可能な原子は、実質的に亜鉛原子とインジウム原子だけであってもよい。
また、電析用電解液25は、酸化亜鉛が溶解したアルカリ性電解液であってもよい。このことにより、電析用電解液25は、亜鉛含有イオンを有することができる。また、電析用電解液25の亜鉛含有イオン濃度は、0.4M以上0.7M以下であってもよい。また、電析用電解液25の亜鉛含有イオン濃度は、飽和濃度であってもよい。
また、金属亜鉛層4を電析中に、酸化亜鉛を電析用電解液25に連続的に溶解させてもよい。例えば、図3に示した電析装置40のようにめっき槽24中の電析用電解液25を循環させ、循環流路中に攪拌槽32を設け、この攪拌槽32において酸化亜鉛を電析用電解液25に連続的に溶解させてもよい。このことにより、電析による亜鉛含有イオンの消費により電析用電解液25の亜鉛含有イオン濃度が低下することを抑制することができる。
また、亜鉛空気電池30の電解液槽2において電析する場合、亜鉛空気電池30の電池反応により電解液3中に析出した酸化亜鉛を電解液3に溶解させてもよい。
また、電析用電解液25は、硝酸インジウム、塩化インジウム、酸化インジウム、水酸化インジウムが溶解したアルカリ性電解液であってもよい。このことにより、電析用電解液25は、インジウム含有イオンを有することができる。また、電析用電解液25は、硝酸インジウムが溶解したアルカリ性電解液であることが好ましい。硝酸インジウムはアルカリ性電解液に対する溶解度が大きいためである。
電析用電解液25に含まれるインジウム含有イオンは、インジウムイオンであってもよく、インジウム原子を含むイオンであってもよい。
硝酸インジウム、塩化インジウム、酸化インジウム、水酸化インジウムなどは、例えば、図3に示した電析装置40に含まれる攪拌槽32において電析用電解液25に溶解させることができる。このことにより、インジウム含有イオンをめっき槽24内に効率よく供給することができる。
電析用電解液25のインジウム含有イオン濃度(電解液量に対する濃度)は、例えば、5ppm以上500ppm以下であり、また10ppm以上200ppm以下であることが好ましい。このことにより、金属亜鉛層4の表層領域15にインジウム含有領域を形成することができる。また、金属亜鉛層4に含まれる金属亜鉛量を多くすることができる。
金属亜鉛層4を電析させる際、めっき槽24中の電析用電解液25を攪拌又は循環してもよい。このことにより、電析中、電析用電解液25を流動させることができ、電解液25に亜鉛含有イオンの濃度分布またはインジウム含有イオンの濃度分布が生じることを抑制することができる。このことにより、金属亜鉛層4の深層領域17を均質化することができる。また、金属亜鉛層4の表面にデンドライトが生じることを抑制することができる。
電析用電解液25は、例えば、図3に示した電析装置40のように電解液流路34とポンプ35により循環させることができる。電解液25の循環速度は、例えば、20mL/min以上600mL/min以下とすることができる。
また、例えば、図3に示した電析装置40のように、電解液25を循環させる流路中に攪拌槽32を設けることができる。このことにより、電解液25を均質化することができる。
電析に用いる対極28は、対極28における電極反応を進行させることができる電極であれば特に限定されないが、例えば、ニッケル電極であってもよく、白金電極であってもよい。なお、めっき槽24に、亜鉛空気電池30に含まれる電解液槽2を利用する場合、対極28は、空気極9であってもよい。また、電解液槽2中に充電用電極を設け、対極28として機能させてもよい。
電析に用いる作用極27は、電極基板6を含む。この電極基板6上に金属亜鉛層4が電析する。電極基板6は、電析用電解液25中においてその主要面上に金属亜鉛層4を電析することができれば特に限定されないが、例えば、亜鉛板であってもよく、ステンレス板であってもよく、ニッケル板であってもよい。
電析に用いた電極基板6は、亜鉛電極5に含まれてもよく、含まれなくてもよい。亜鉛電極5が電極基板6を含まない場合、電析後金属亜鉛層4は、電極基板6から剥離される。
なお、めっき槽24に、亜鉛空気電池30に含まれる電解液槽2を利用する場合、作用極27は電解液槽2中の亜鉛電極5とすることができる。このことにより、電析した金属亜鉛層4をすぐに放電に利用することができる。
電析では、作用極27がカソードとなり対極28がアノードとなるように作用極27と対極28との間に直流電流を流す。このことにより、作用極27で電析反応を進行させることができ、電極基板6の主要面上に金属亜鉛層4を析出させることができる。
作用極27と対極28との間に流す電流の電流密度は、例えば、30mA/cm2以上90mA/cm2以下とすることができる。
電析時間は、例えば、10分以上100時間以下とすることができる。
亜鉛空気電池
本実施形態の亜鉛空気電池30は、アノードとなる本実施形態の亜鉛電極5と、亜鉛電極5およびアルカリ性電解液3を収容する電解液槽2と、カソードとなる空気極9とを備えることを特徴とする。
1.亜鉛空気電池
本実施形態の亜鉛空気電池30は、電極活物質となる金属亜鉛を含む本実施形態の亜鉛電極5を負極(アノード)とし、空気極9を正極(カソード)とする電池である。また、本実施形態の亜鉛空気電池30は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよい。また、本実施形態の亜鉛空気電池30は、亜鉛電極5を交換することにより繰り返し放電できる電池であってもよい。
また、亜鉛空気電池30は、電解液槽2、空気極9などからなる亜鉛空気電池本体と、亜鉛空気電池本体に着脱可能な構造を有し、亜鉛電極5、亜鉛極端子などからなる亜鉛電極ホルダーとから構成されてもよい。
2.セル
セル31は、亜鉛空気電池30の構成単位であり、電解液槽2(電解液室)中に設けられかつアノードとなる亜鉛電極5と、カソードとなる空気極9とからなる電極対を有する。セル31は、例えば、1つの空気極9と1つの亜鉛電極5とが電解液3を挟むように設けられた電極対を有してもよく、図2に示した亜鉛空気電池30のように2つの空気極9が1つの亜鉛電極5を挟むように設けられた電極対を有してもよい。
また、セル31は充電用電極を有してもよい。
また、セル31は、気体排出口を有してもよい。このことにより、セル内において水素ガスや酸素ガスが発生した場合でも、気体排出口から排出することができ、亜鉛空気電池30の内圧が上昇することを抑制することができる。このことにより、亜鉛空気電池の安全性を向上させることができる。気体排出口は、例えば、電解液槽2の上部に設けられてもよく、電解液槽2の蓋部材に設けられてもよい。
3.セル集合体
セル集合体は、複数のセル31を重ねたスタック構造を有する。セル集合体は、複数のセル31が1つの電解液槽2内に設けられてもよく、それぞれのセル31が電解液槽2または電解液室を有してもよい。なお、セル集合体を構成するセル31の数は特に限定されず、必要となる発電能力に応じてセル31の数量を決定すればよい。
また、セル集合体を構成する複数のセル31がそれぞれ電解液槽2を有する場合、各セル31が有する電解液槽2は共通の筐体1に設けられてもよく、各セル31が筐体1を有し、この筐体1に電解液槽2が設けられてもよい。
セル集合体に含まれる複数のセル31の電極対は、直列接続してもよく、並列接続してもよい。
4.電解液、電解液槽
電解液3は、アルカリ性水溶液である。例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などである。
また、電解液槽2において、金属亜鉛層4を電析させる場合、電解液3が電析用電解液25となる。この場合、放電反応により電解液3中に溶解した亜鉛含有イオンを原料として金属亜鉛層4を電析することができる。また、この場合、電解液3は、インジウム含有イオンを含むことができる。また、電解液3に含まれる金属原子であって水溶液中で電析可能な原子は、実質的に亜鉛原子とインジウム原子だけであってもよい。
電解液槽2は、電解液3を溜める又は流通させる電解槽であり、 電解液に対して耐食性を有する。また、電解液槽2は、電解液室を有することができる。
電解液槽2または電解液室は、その中に亜鉛電極5を取り出し可能に設置することができる構造を有することができる。電解液槽2は、亜鉛空気電池本体に設けることができる。また、電解液槽2は、複数の電解液室を有してもよい。
亜鉛空気電池30が電解液槽2内の電解液3を流動させる機構を有してもよい。電解液3を流動させる機構としては、例えば、ポンプおよび電解液流路を用いて電解液3を循環させ、電解液槽2内の電解液3を流動させてもよい。このことにより、亜鉛電極5の周りの亜鉛含有イオン濃度が一定になるよう電解液3を供給できるため、電池特性を高くすることができ、放電容量も大きくすることができる。
また、電解液槽2において、金属亜鉛層4を電析させる場合、電析時に電解液3を流動させる機構により電解液3を流動させることができる。このことにより、金属亜鉛層4を均質化することができる。
電解液槽2を構成する筐体1の材料は、電解液に対して耐食性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などである。
5.亜鉛電極
亜鉛電極5は、アノードとなる電極であり、本実施形態の亜鉛電極5である。また、亜鉛電極5は、電解液槽2中に取り出し可能に設けられてもよい。
亜鉛電極5が電極基板6を有する場合、電極基板6は亜鉛極集電体として機能させることができる。
また、電解液槽2において、金属亜鉛層4を電析させる場合、亜鉛電極5は作用極27になる。
亜鉛電極5の詳細については上述したため、ここでは省略する。
6.空気極
空気極9は、空気極触媒を有しかつ放電反応においてカソードとなる多孔性の電極である。また、空気極9は、多孔性のガス拡散層8と、ガス拡散層8上に設けられた多孔性の空気極触媒層7とを有してもよい。
放電反応において、空気極9では、空気極触媒上において電解液3などから供給される水と大気から供給される酸素ガスと電子とが反応し水酸化物イオン(OH-)を生成する(カソード反応)。つまり、空気極9の三相界面においてカソード反応が進行する。
また、電解液槽2において金属亜鉛層4を電析させる場合、空気極9は対極28となってもよい。
また、空気極9は、空気極9に大気に含まれる酸素ガスが拡散できるように設けられる。例えば、空気極9は、少なくとも空気極9の表面の一部が大気に曝されるように設けることができる。
空気極触媒層7は、例えば、導電性の多孔性担体と多孔性担体に担持された空気極触媒とを含んでもよい。このことにより、空気極触媒上において、酸素ガスと水と電子を共存する三相界面を形成することが可能になり、カソード反応を進行させることが可能になる。
また、空気極触媒層7とガス拡散層8とから構成される空気極9は、空気極触媒を担持した多孔性担体を導電性多孔性基材(ガス拡散層8)に塗布することにより作製されてもよい。
亜鉛空気電池30は、空気極触媒層7に生じた電荷を集電する空気極集電体を備えてもよい。このことにより、空気極触媒層7で生じた電荷を効率よく外部回路へと取り出すことができる。
空気極触媒層7に含まれる多孔性担体には、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、活性炭等の導電性カーボン粒子が挙げられる。また、気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー等の炭素繊維を用いることもできる。
空気極触媒には、たとえば、白金、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銀、ルテニウム、イリジウム、モリブデン、マンガン、ランタン、これらの金属化合物、およびこれらの金属の2種以上を含む合金からなる微粒子が挙げられる。この合金は、白金、鉄、コバルト、ニッケルのうち少なくとも2種以上を含有する合金が好ましく、たとえば、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、鉄−コバルト合金、コバルト−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金等、鉄−コバルト−ニッケル合金が挙げられる。
7.充電用電極
亜鉛空気電池30は、電解液槽2内に充電用電極を有してもよい。充電用電極は、電解液槽2内において電析する場合、対極28となる。亜鉛電極5を作用極27とし空気極9を対極28として、亜鉛電極5に金属亜鉛層4を析出させると、空気極9の劣化速度が速い。従って、電解液槽2中に充電用電極を設け充電時に対極28として機能させると、亜鉛空気電池30の寿命特性を向上させることができる。
電析実験、金属亜鉛層の分析および金属亜鉛層の特性評価
図3に示したような電析装置40を用いて電極基板6上に金属亜鉛層4を析出させ、実施例1〜7の亜鉛電極および比較例1〜3の亜鉛電極を作製した(電析実験)。また、析出させた金属亜鉛層4についてオージェ電子分光装置により元素分析実験を行った。また、実施例1において析出させた金属亜鉛層4について、XRD測定および金属亜鉛層表面の段差測定を行った。
また、作製した亜鉛電極および比較例4である市販の亜鉛板について放置実験、アルカリ浸漬実験および亜鉛空気電池による放電実験を行った。
なお、比較例3では、金属亜鉛層4が形成されなかったため、元素分析実験、放置実験、アルカリ浸漬実験および放電実験は行っていない。
なお、電析実験、元素分析実験、放置実験、アルカリ浸漬実験および放電実験の実験条件および実験結果を表1、2にまとめて示している。
1.電析実験
実施例1〜7および比較例1〜3の電析実験では、表面処理を行った厚さ1mmの電極基板6をめっき槽24内の電析用電解液25に浸漬し、電極基板6上に金属亜鉛層4を室温で、60分間電析させた。電析では、対極28から作用極27に、電流密度30mA/cm2で定電流を流した。なお、電流効率100%で、約1.83g相当の金属亜鉛が電析される。
電析後、水洗い及び乾燥を行い、亜鉛電極を作製した。なお、電析実験における対極28には、ニッケル電極を用いた。
電極基板6は、表1、2に示したように実施例1、比較例1、3では、ステンレス板を用い、実施例2〜4では亜鉛板を用い、実施例5〜7、比較例2ではニッケル板を用いた。
電極基板6の表面処理は、実施例1、比較例1、3では、電極基板6を7%H2SO4水溶液に約60分間浸漬することにより行い、実施例2〜4では、電極基板6を7%H2SO4水溶液に約1秒間浸漬することにより行い、実施例5〜7、比較例2では、電極基板6を7%H2SO4水溶液に約20分間浸漬することにより行った。
実施例1〜7では、飽和濃度(0.7M)のZnOを溶解させた7MのKOH水溶液に添加剤であるIn(NO3)3・3H2Oを加えた電析用電解液25を用いた。In(NO3)3・3H2Oの添加量は、実施例1、2、5〜7では100ppmとし、実施例4では30ppmとし、実施例3では10ppmとした。なお、In(NO3)3・3H2Oは、攪拌槽32において電解液25に加えた。
比較例1、2では、電析用電解液25に飽和濃度(0.7M)のZnOを溶解させた7MのKOH水溶液を用いた。また、比較例3では電析用電解液25に0.7MのZnOを溶解させた7MのH2SO4水溶液を用いた。なお、比較例1〜3では、電析用電解液25に添加剤であるIn(NO3)3・3H2Oを加えていない。
また、めっき槽24内の電解液25は、ポンプ35により循環させた。循環速度は、実施例1〜5、比較例1、2では400mL/minとし、実施例6では100mL/minとし、実施例7では20mL/minとした。なお、比較例3では電解液25を循環させていない。
また、電解液量は、実施例1〜7、比較例1、2では100mLと、比較例3では45mLとした。
なお、比較例3では、金属亜鉛層4が形成されなかった。
2.放置実験
放置実験は、電析実験により作製した実施例1〜7及び比較例1、2の亜鉛電極を室温の空気中で1日放置することにより行い、実験後の金属亜鉛層4の表面観察により表面酸化の有無を判断した。また、比較例4の市販の亜鉛板についても放置実験を行った。
比較例1、2の亜鉛電極では表面が青黒く変化し表面酸化を確認できたが、実施例1〜7および比較例4の亜鉛電極では表面が変色せず表面酸化は確認できなかった。このことから、実施例1〜7の亜鉛電極では金属亜鉛層4の酸化が抑制できることがわかった。この理由は明らかではないが、金属亜鉛層4のインジウムを含有した表層が金属亜鉛層4の酸化を抑制していると考えられる。
3.XRD測定
放置実験後の実施例1の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4のXRDパターンを図4に示す。このXRDパターンは、金属亜鉛の強い(101)ピークを有していた。このため、この金属亜鉛層4は、(101)面に一定の配向をしながら析出されたことがわかった。
4.元素分析実験
元素分析実験は、オージェ電子分光装置である日本電子製JAMP-9500Fを用い、以下の測定条件で、放置実験後の実施例1〜7および比較例1、2の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4の元素分析を行った。
電子線照射条件:10kV10nA(サーベイ)、10kV40nA(深さ方向分析)
エネルギー分解能:0.35%(サーベイ)、0.15%(深さ方向分析)
スパッタエッチング条件:Arイオン銃1keV
試料傾斜角度:30度
検出ピーク:サーベイ;Zn, In, O, C, K
実施例1〜7および比較例1、2の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4の元素分析結果を表1、2に示している。比較例3では金属亜鉛層4が析出されなかったため元素分析実験も行っていない。なお、表1、2において金属亜鉛層4の第1層は、金属亜鉛層4の深層であり金属亜鉛層4の大部分を占める領域である。金属亜鉛層4の第3層は、金属亜鉛層4の電析面12から距離が約50nm以下の表層であり、金属亜鉛層4の第2層は、第1層と第3層との間の中間層である。第1〜3層の厚さの和が金属亜鉛層4の厚さとなるが、実質的に第1層の厚さが金属亜鉛層4の厚さとなる。
また、第1〜3層の厚さは、日本電子製JAMP-9500FのArスパッタ銃において、SiO2換算で、20nm/minのスパッタ回数で測定した。
実施例1〜7の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4では、表層である第3層ではインジウム濃度が7〜13原子%と高かったが、中間層である第2層では、インジウム濃度が1〜2原子%と低くなり、深層である第1層では、インジウム濃度が0原子%であった。このことから実施例1〜7の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4では、表層にインジウム元素が多く含まれ、深層にはインジウム元素がほとんど含まれていないことがわかった。
このようなインジウム元素の濃度分布が生じる理由は明らかではないが、次のように考えられる。インジウムは亜鉛よりもイオン化傾向が低いため、電析中は優先的にインジウムが析出しているが、亜鉛がインジウムの存在によって、(101)面に一定の配向をしながら析出されるため、亜鉛の析出に伴って、既に析出していたインジウムが電解液中に溶出すると考えられる。このため、インジウムは深層には含まれず、表層にインジウムと亜鉛の共晶体が残存すると考えられる。
ただし、電析による製造方法以外の製造方法で製造した本発明の亜鉛電極では、亜鉛が(101)面の配向を有しているとは限らない。
また、実施例1〜7の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4では、電解液25に含まれるカリウム元素および酸素元素が第3層では約10%検出されたが、第1層、第2層では、1〜3%の酸素元素が検出されただけであった。このため、実施例1〜7の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4は、緻密な金属亜鉛の層であると考えられる。
比較例1、2の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4では、カリウム元素および酸素元素が第1〜第3層において約24%検出された。このため、比較例1、2の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4では、深層においても金属亜鉛の酸化が進行していると考えられる。また、比較例1、2の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4には電解液が残留していると考えられる。
金属亜鉛層4の厚さは、実施例1では113μmであり、実施例2では84μmであり、実施例3では95μmであり、実施例4では90μmであり、実施例5では88μmであり、実施例6では95μmであり、実施例7では100μmであり、比較例1では134μmであり、比較例2では154μmであった。実施例1〜7の亜鉛電極の金属亜鉛層4の厚さは、比較例1、2よりも薄かったが十分な厚さであった。実施例1〜7の亜鉛電極の金属亜鉛層4は、緻密な金属亜鉛の層であると考えられるため、比較例1、2よりも厚さが薄かったと考えられる。
なお、表1、2に示した金属亜鉛層4の厚さは、電極基板6の一方の主要面上に形成された金属亜鉛層4の厚さであり、電極基板6の他方の主要面上に同様の金属亜鉛層4が形成されている。
5.段差測定
放置実験後の実施例1の亜鉛電極に含まれる金属亜鉛層4の表面について行った段差測定の測定結果を図5に示す。この測定結果から、金属亜鉛層4の表面は、約20μm程度の凹凸が形成されており、大きい表面積を有していた。
6.アルカリ浸漬実験
アルカリ浸漬実験は、放電実験を行う前に亜鉛空気電池30が備える電解液槽2内のKOH水溶液に、放置実験後の実施例1〜7、比較例1、2の亜鉛電極及び比較例4の市販の亜鉛板を96時間浸漬することにより行い、亜鉛電極表面又は亜鉛板表面の気泡の有無により水素ガス発生の有無を判断した。
表1、2に示しているように、比較例4の市販の亜鉛板では水素ガスの発生が確認されたが、実施例1〜7及び比較例1、2の亜鉛電極では、水素ガスの発生が確認されなかった。このことから、アルカリ性電解液中で電析させた金属亜鉛は、アルカリ性電解液中における自己腐食による水素ガスの発生を抑制できることがわかった。
7.放電実験
放電実験では、放置実験後の実施例1〜7、比較例1、2の亜鉛電極および比較例4の市販の亜鉛板を用いて図2に示したような亜鉛空気電池30を作製し、作製した亜鉛空気電池30を30mA/cm2の定電流で放電させた。
実施例1、5〜7の亜鉛電極を用いて作製した亜鉛空気電池30の放電時間は、実施例1では約57分間であり、実施例5では約55分間であり、実施例6では53分間であり、実施例7では53分間であった。
実施例2〜4の亜鉛電極を用いて作製した亜鉛空気電池30では、金属亜鉛層4および電極基板6を電極活物質として放電することができた。なお、金属亜鉛層4に含まれる金属亜鉛は、利用率100%で放電に利用することができた。
比較例1、2の亜鉛電極を用いて作製した亜鉛空気電池30では、金属亜鉛層4の表面が酸化され不動態になっていたため放電することができなかった。
1:筐体 2:電解液槽 3:電解液 4:金属亜鉛層 5:亜鉛電極 6:電極基板 7:空気極触媒層 8:ガス拡散層 9:空気極 10:空気極端子 11:亜鉛極端子 12:表面 14:セパレータ 15:表層領域 16:中間領域 17:深層領域 23:空孔 24:めっき槽 25:電析用電解液 26:めっき浴 27:作用極 28:対極 30:亜鉛空気電池 31:セル 32:攪拌槽 33:攪拌子 34:電解液流路 35:ポンプ 40:電析装置

Claims (3)

  1. インジウムと主成分である亜鉛とを含む金属亜鉛層を備え、
    前記金属亜鉛層は、その表面からの距離が50nm以下の表層領域と、前記表面からの距離が100nm以上の深層領域とを含み
    前記表層領域は、5原子%以上15原子%以下のインジウム濃度を有し、
    前記深層領域は、95原子%以上100原子%以下の亜鉛濃度を有し、
    前記表層領域のインジウム濃度は、前記深層領域のインジウム濃度よりも大きいことを特徴とする亜鉛電極。
  2. 前記表層領域は、前記金属亜鉛層が含有するインジウム総量に対し77%以上100%以下のインジウムを含有する請求項1に記載の亜鉛電極。
  3. アノードとなる請求項1または請求項2に記載の亜鉛電極と、前記亜鉛電極およびアルカリ性電解液を収容する電解液槽と、カソードとなる空気極とを備えた亜鉛空気電池。
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