JP6256380B2 - 歪センサー及び歪量測定方法 - Google Patents
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Description
上記の歪センサーに対して、近年、構造物のモニタリングなどの目的から構造物全体に発生している歪みを測定したいというニーズが存在する。即ち、従来の歪点測定ではなく、被測定対象物に発生する歪みを場所毎に測定する歪場測定が可能な歪センサーが注目を集めている。
また、格子パターンを有するマーカーを被測定対象物に貼り付け、荷重による格子パターンの変位をカメラ等で撮影し、荷重前後の画像データを比較することで歪場の計測を可能とするモアレ法を用いた歪場計測が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
例えば、特許文献1記載の構成でナノメータースケールの変位による歪みを測定するには、ピコメータースケールの発光波長の変動量を測定する必要があるが、そのような微小な発光波長の変動量を現存の分光器で検出することは非常に難しい。
また、特許文献2記載の技術では、カメラを用いて歪みを測定するため、歪みの測定精度がカメラの解像度に依存する。現存のカメラの解像度を考慮すると、ノイズに埋もれることなく歪みを測定するには、マイクロメータースケールの変位による歪みを測定するのが限界であり、より微小なナノメータースケールの変位による歪みを測定することは困難である。
歪センサーにおいて、
光を射出する光源と、
被測定対象物の表面に設置され、前記光源から射出された光を反射又は透過するマーカーと、
前記マーカーにより反射又は透過された光の光強度を検出する検出部と、
前記検出部により検出された光強度に基づいて歪量を算出する信号処理部と、
を備え、
前記マーカーは、屈折率の異なる第1の媒質及び第2の媒質を有する平板薄膜状に形成され、
前記第2の媒質は、前記マーカーの設置面と平行な平面において前記第1の媒質と同時に存在するとともに、前記第1の媒質内に周期的に配列され、
前記第2の媒質の前記マーカーの設置面と平行な方向の最大長さは、前記光源から射出される光の波長よりも短くなるように形成され、
前記第1の媒質及び前記第2の媒質は、前記マーカーの設置面と平行な方向の荷重に対して変形し、
前記光源は、前記マーカーの設置面と平行な方向に偏光された、各々偏光方向が異なる複数の光を射出し、
前記検出部は、更に、前記マーカーにより反射又は透過された光の偏光方向を検出し、
前記信号処理部は、前記検出部により検出された光強度及び偏光方向に基づいて歪方向を算出し、
前記光源は、前記信号処理部により算出された歪方向に偏光された第1の光と、前記第1の光と垂直な方向に偏光された第2の光と、を射出することを特徴とする。
前記光源は、時間毎に偏光方向が異なる光を射出することを特徴とする。
前記光源は、複数配置され、
前記複数の光源は、各々偏光方向が異なる光を射出することを特徴とする。
前記信号処理部は、偏光方向毎に備えられた前記光強度と前記歪量との対応関係を示すテーブルデータに基づいて前記歪量を算出することを特徴とする。
前記信号処理部は、前記光強度と前記歪量との対応関係を示すテーブルデータに基づいて前記歪量を算出することを特徴とする。
前記第2の媒質が収容される領域は、平面視で前記マーカーの設置面と垂直な方向を中心軸とする真円形状に形成されることを特徴とする。
前記第2の媒質が収容される領域に、気体が収容されることを特徴とする。
前記光源及び前記検出部は、隣接して配置され、
前記光源は、前記マーカーの設置面と略垂直な方向に光を射出することを特徴とする。
前記マーカー及び前記被測定対象物は、透明体であり、
前記検出部は、前記マーカーにより透過された光のスペクトル強度を検出することを特徴とする。
前記マーカー及び前記被測定対象物の温度を測定する温度測定部を備え、
前記信号処理部は、前記温度測定部により測定された温度に基づいて、前記マーカー及び前記被測定対象物のヤング率を算出することを特徴とする。
前記光源は、1μm以下の波長の光束を射出することを特徴とする。
前記検出部により検出された光強度に基づいて歪量を算出する算出工程を有し、
前記算出工程は、前記検出部により検出された光強度及び偏光方向に基づいて歪方向を算出することを特徴とする。
第1の媒質31は、アルミ、金、銀、チタン、酸化チタン等の金属又は樹脂等により形成された略正方形状の板状部材である。第1の媒質31には、第2の媒質32が収容される領域が、平面視でZ方向を中心軸とする真円形状に形成されている。
第2の媒質32は、アクリル樹脂等により形成され、平面視でZ方向を中心軸とする真円形状に形成されている。第2の媒質32は、第1の媒質31と同一の厚さを有するとともに、第1の媒質31内に周期的に配列されている。また、第2の媒質32の径X0が、光源2のピーク波長よりも短くなるように形成されている。
例えば、図4(A)及び図4(B)に示すように、マーカー3にX方向の荷重(X荷重711)が生じた場合、マーカー3はX方向に変位する。図4(C)に示すように、X荷重711が負荷される前の第2の媒質を320、X荷重711が負荷された後の第2の媒質を321とし、荷重負荷前の第2の媒質320の径をX0、荷重負荷後の第2の媒質321の径をX1とすると、X荷重711によりマーカー3に発生した歪量εxは、数式(1)で算出することができる。
数式(1):εx=(X1−X0)/X0
また、図5(A)〜図5(C)は、マーカー3にY方向の荷重(Y荷重712)が生じた場合に、マーカー3がY方向に変位することを示す図である。図5(C)に示すように、Y荷重712が負荷される前の第2の媒質を320、Y荷重712が負荷された後の第2の媒質を321とし、荷重負荷前の第2の媒質320の径をY0、荷重負荷後の第2の媒質321の径をY1とすると、Y荷重712によりマーカー3に発生した歪量εyは、数式(2)で算出することができる。
数式(2):εy=(Y1−Y0)/Y0
図6は、歪量εと反射光強度との対応関係を示すテーブルデータである。反射光強度は、「反射光22の光量÷入射光21の光量」で算出される。実施例では、図6に示すように、荷重負荷(歪量εの増大)に伴い、反射光強度が単調に減少している。これは、マーカー3に荷重が発生すると、マーカー3に含まれる第2の媒質32の形状が荷重により歪み、マーカー3の表面に発生する表面プラズモンの特性が変化するためである。
信号処理部5で、図6に示すテーブルデータを予め用意しておくことで、検出部4により検出された反射光強度に基づいて、マーカー3に発生している歪量εを算出することができる。例えば、検出部4が検出した反射光強度が0.60であった場合、図6に示すテーブルデータを参照することで、反射光強度0.60に対応する歪量ε(≒0.10)を算出することができる。
従って、本実施形態に係る歪センサー1によれば、光源2の波長と第2の媒質32の径の長さをナノメータースケールに規定する(例えば、素子表面にナノメータースケールの均一な細孔が規則配列したナノホールアレイ構造材料を用いる)ことで、測定可能な変位量の範囲をナノメータースケールに規定することができるので、ナノメータースケールの変位による歪量を測定することができる。
なお、本実施形態に係る歪センサー1によれば、光源2の波長を1μm以上にすることで、測定可能な変位量の範囲をマイクロメータースケールに規定することができ、マイクロメータースケールの変位による歪量を精度よく測定することができる。
変形例に係る歪みセンサー1Aでは、例えば、図7〜図10に示すように、実施形態の歪センサー1と比べ、光源2A、検出部4A及び信号処理部5Aの構成が異なっている。なお、説明の簡略化のため、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
光源2Aは、図7に示すように、下方に固定されたマーカー3に向けて直線偏光の光束(入射光21A)を射出する。
検出部4Aは、マーカー3で反射された光束(反射光22A)の光強度及び偏光方向を検出する。
信号処理部5Aは、検出部4Aから出力された反射光22Aの光強度及び偏光方向に基づいて被測定対象物Wの歪方向及び歪量を算出する。具体的には、信号処理部5Aは、まず、検出部4Aから出力された反射光22Aの光強度及び偏光方向に基づいて、最大の光強度を有する偏光方向を被測定対象物Wの歪方向として算出する。次いで、信号処理部5Aは、算出された歪方向における光強度と歪量との対応関係を示すテーブルデータ(図10参照)に基づいて歪量を算出する。
変形例では、マーカー3として、第1の媒質31の厚さZ0が200nm、第2の媒質32の直径X0が200nm、第2の媒質32の周期C0が300nmのものを使用した。また、第1の媒質31としてアルミ(Al)を、第2の媒質32として二酸化ケイ素(SiO2)を使用した。また、光源2Aには、直線偏光であり且つピーク波長が約700nmのものを使用した。なお、変形例では、光源2Aから時間毎に偏光方向が異なる光を射出するようにして、各偏光方向における光強度を測定した。
図8は、偏光方向θ毎の反射光強度をグラフ化した図である。偏光方向θとは、図9に示すように、XY平面上でX方向から偏光した角度のことである。図8に示すように、XY平面上のいずれかの方向に一軸の荷重が生じると、その偏光方向によってマーカー3の反射光強度に差異が生じる。これは、荷重により第2の媒質32が真円形状から楕円形状に変位し、偏光方向によって第2の媒質32の径の大きさに違いが生じ、マーカー3の表面に発生する表面プラズモンの特性が変化するためである。変形例の条件では、第2の媒質32の径の大きさが増大すると、反射光強度が増大する。即ち、被測定対象物Wの歪方向は、第2の媒質32の径が最大となる方向であり、第2の媒質32の径が最大となる方向とは、最大の反射光強度を有する偏光方向のことである。例えば、図8に示すように、「荷重あり」のような反射光強度の特性が得られた場合、最大の反射光強度となる偏光方向θは45°であり、歪方向は45°と算出される。
図10は、歪量εと反射光強度との対応関係を示すテーブルデータである。信号処理部5Aで、図10に示すテーブルデータを偏光方向(歪方向)毎に予め用意しておくことで、検出部4Aにより検出された反射光強度及び偏光方向に基づいて、マーカー3に発生している歪量εを算出することができる。例えば、偏光方向θの偏光がマーカー3に照射された際に、検出部4Aが検出した反射光強度が0.70であった場合、図10に示す偏光方向θのテーブルデータを参照することで、反射光強度0.70に対応する歪量ε(≒0.10)を算出することができる。
従って、変形例に係る歪センサー1Aによれば、複数の偏光方向の反射光強度を検出することができるので、各偏光方向の反射光強度の差より最大歪み方向を測定することができる。また、測定された最大歪方向の光強度から最大歪方向の歪量を測定することができる。
なお、変形例では、光強度と歪量との対応関係を示すテーブルデータ(図10参照)に基づいて歪量を算出するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、検出部4Aにより検出された光強度に基づいて、所定の計算式により算出するようにしてもよい。
これにより、第2の媒質32の平面視形状である楕円の長軸の長さ(歪方向の歪量)、短軸の長さ(歪方向と垂直な方向の歪量)及び回転角度θを算出することができ、マーカー3全体の歪み具合を測定することができる。
この場合、検出部4Bは、マーカー3で反射された光束(反射光22B)の光強度及び偏光方向を検出する。信号処理部5Bは、検出部4Bから出力された反射光22Bの光強度及び偏光方向に基づいて被測定対象物Wの歪方向及び歪量を算出する。
これにより、偏光方向が異なる複数の光束をマーカー3に射出することができるので、一回の測定で多くのデータを得ることができ、歪方向及び歪量の測定精度を向上させることができる。また、一回の測定で歪方向及び歪量を算出することができるので、測定時間を短縮することができる。
また、上記実施形態では、光強度と歪量との対応関係を示すテーブルデータ(図6参照)に基づいて歪量を算出するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、検出部4により検出された光強度に基づいて、所定の計算式により算出するようにしてもよい。
第2の媒質32が収容される領域に気体を収容することで、マーカー3が変位した際に第1の媒質31と第2の媒質32の間に隙間が発生せず、また、マーカー3の温度が上昇した場合でも、第1の媒質31と第2の媒質32の熱膨張の差により発生する応力を小さくすることができるので、歪量の検出精度を更に向上させることができる。
これにより、マーカー3に対して略垂直に光束を入射することができるので、光束の入射角度による分光強度のバラツキを極力抑えることができ、歪量の測定精度の安定性を確保することができる。
これにより、マーカー3及び被測定対象物Wを透過した光を用いて歪量を測定することができるので、反射光を用いた測定と比べ、測定精度をより向上させることができる。
これにより、算出されたヤング率に基づいて測定値を補正することができるので、歪量の測定精度をより向上させることができる。また、歪量のみならず、荷重により発生する応力も算出することができる。
2、2A、2B 光源
21、21A、21B 入射光
22、22A、22B 反射光
3 マーカー
31 第1の媒質
32 第2の媒質
4、4A、4B 検出部
5、5A、5B 信号処理部
W 被測定対象物
Claims (12)
- 光を射出する光源と、
被測定対象物の表面に設置され、前記光源から射出された光を反射又は透過するマーカーと、
前記マーカーにより反射又は透過された光の光強度を検出する検出部と、
前記検出部により検出された光強度に基づいて歪量を算出する信号処理部と、
を備え、
前記マーカーは、屈折率の異なる第1の媒質及び第2の媒質を有する平板薄膜状に形成され、
前記第2の媒質は、前記マーカーの設置面と平行な平面において前記第1の媒質と同時に存在するとともに、前記第1の媒質内に周期的に配列され、
前記第2の媒質の前記マーカーの設置面と平行な方向の最大長さは、前記光源から射出される光の波長よりも短くなるように形成され、
前記第1の媒質及び前記第2の媒質は、前記マーカーの設置面と平行な方向の荷重に対して変形し、
前記光源は、前記マーカーの設置面と平行な方向に偏光された、各々偏光方向が異なる複数の光を射出し、
前記検出部は、更に、前記マーカーにより反射又は透過された光の偏光方向を検出し、
前記信号処理部は、前記検出部により検出された光強度及び偏光方向に基づいて歪方向を算出し、
前記光源は、前記信号処理部により算出された歪方向に偏光された第1の光と、前記第1の光と垂直な方向に偏光された第2の光と、を射出することを特徴とする歪センサー。 - 前記光源は、時間毎に偏光方向が異なる光を射出することを特徴とする請求項1に記載の歪センサー。
- 前記光源は、複数配置され、
前記複数の光源は、各々偏光方向が異なる光を射出することを特徴とする請求項1に記載の歪センサー。 - 前記信号処理部は、偏光方向毎に備えられた前記光強度と前記歪量との対応関係を示すテーブルデータに基づいて前記歪量を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の歪センサー。
- 前記信号処理部は、前記光強度と前記歪量との対応関係を示すテーブルデータに基づいて前記歪量を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の歪センサー。
- 前記第2の媒質が収容される領域は、平面視で前記マーカーの設置面と垂直な方向を中心軸とする真円形状に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の歪センサー。
- 前記第2の媒質が収容される領域に、気体が収容されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の歪センサー。
- 前記光源及び前記検出部は、隣接して配置され、
前記光源は、前記マーカーの設置面と略垂直な方向に光を射出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の歪センサー。 - 前記マーカー及び前記被測定対象物は、透明体であり、
前記検出部は、前記マーカーにより透過された光のスペクトル強度を検出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の歪センサー。 - 前記マーカー及び前記被測定対象物の温度を測定する温度測定部を備え、
前記信号処理部は、前記温度測定部により測定された温度に基づいて、前記マーカー及び前記被測定対象物のヤング率を算出することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の歪センサー。 - 前記光源は、1μm以下の波長の光束を射出することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の歪センサー。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の歪センサーを用いた歪量測定方法であって、
前記検出部により検出された光強度に基づいて歪量を算出する算出工程を有し、
前記算出工程は、前記検出部により検出された光強度及び偏光方向に基づいて歪方向を算出することを特徴とする歪量測定方法。
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