以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係る印字装置1の概略構成について説明する。印字装置1は、テープ70(図2参照)に、キャラクタ(文字、記号、数字および絵文字等)を印字してラベルを作成するラベルプリンタである。以下の説明では、図1および図2の右上側、左下側、右下側、左上側、上側、下側を、それぞれ、印字装置1の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
図1に示すように、印字装置1の上面の前側部分にはキーボード3が設けられている。キーボード3はキャラクタを入力する為の入力装置である。キャラクタは、例えば、文字、記号、図形、及び数字等である。キーボード3の後方には機能キー群4が設けられている。機能キー群4は、例えば電源キー、決定キー、及び印刷キーを含む入力装置である。なお以下説明において、キーボード3と機能キー群4とを総称する場合は入力部2と呼ぶ。
機能キー群4の後方にはディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5は例えば印字装置1のテープ排出方向に対して平行に延設した横長長方形状である。テープ排出方向は、例えば後述する排出口15(図2参照)から印字装置1の左側に向かう方向である。ディスプレイ5は、各種画像を表示可能である。
印字装置1の上面の後方部分にはカバー6が設けられている。カバー6は平面視略長方形状である。カバー6の後端部は印字装置1の上面の後部に軸支されている。図2に示すように、カバー6は後端部を中心に開閉可能である。カバー6を上方に開くと、カセット装着部8(図2参照)が露出する。使用者はカバー6を開いた状態で、カセット装着部8にテープカセット30を装着する。テープカセット30は、例えば感熱タイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類に実装可能な汎用カセットを備える。テープカセット30は例えばラミネートタイプのテープ70を排出する。テープカセット30は感熱タイプ、レセプタータイプ等を送出するものでもよい。
印字装置1の右側面の後方にはUSB接続部16が設けられている。USB接続部16には図示外のUSBケーブルの端子が接続可能である。印字装置1はUSBケーブルを介して、例えばPC等の外部装置200(図5参照)を接続可能である。図2に示すように、印字装置1の左側面の後方側には排出口15が設けられている。排出口15は後述するカット機構で切断された印字済みのテープ70を外部に排出する。排出口15の近傍にはテープトレイ7が設けられている。テープトレイ7は排出口15から送出された印刷済みのテープ70を受ける。
図2を参照して、カセット装着部8の内部構造について説明する。カセット装着部8の前部に、ヘッドホルダ11が立設されている。ヘッドホルダ11の前面に、サーマルヘッド10(図4参照)が設けられる。サーマルヘッド10は、カセット装着部8のヘッドホルダ11に支持されている。サーマルヘッド10は発熱素子10A(図4参照)を有し、テープカセット30から引き出された後述するフィルムテープ59の印字面にインクリボン60を圧接して画像を印刷する。印字装置1は、フィルムテープ59およびインクリボン60に付与するエネルギーを、個々の発熱素子10Aごとに制御し、フィルムテープ59にドット単位で黒色の画像を転写するモノクロ印刷を行う。以下、印刷実行時に印字装置1がフィルムテープ59およびインクリボン60に付与するエネルギーを、印字エネルギーという。プラテンホルダはヘッドホルダ11の前方に設けられている。プラテンホルダ(図示略)は、左端側にプラテンローラと搬送ローラとを回転可能に保持する。プラテンホルダは右端を中心に回動可能である。プラテンホルダが後方に回動すると、プラテンローラはサーマルヘッド10に圧接される。搬送ローラはテープカセット30のテープ駆動ローラ46(図3参照)に圧接される。
カセット装着部8の略中央には、リボン巻取軸9とテープ駆動軸(図示略)とが立設されている。リボン巻取軸9はテープ送りモータ24(図5参照)の駆動により駆動機構を介して回転する。リボン巻取軸9はテープ送りモータ24(図5参照)の駆動により駆動機構(図示略)を介して回転する。テープ駆動軸もテープ送りモータ24の駆動により駆動機構を介して回転するので、リボン巻取軸9とテープ駆動軸とは互いに同期して駆動する。テープ駆動軸にはテープカセット30のテープ駆動ローラ46が嵌挿される。印字装置1は、テープ駆動ローラ46と搬送ローラとの協働により、フィルムテープ59をテープカセット30から引き出してサーマルヘッド10で画像を印刷する。さらに印字装置1はフィルムテープ59の印字面に両面粘着テープ58を貼り合わせてテープ70を形成し、排出口15に向けて搬送する。
カセット装着部8の前方であって、サーマルヘッド10と排出口15との間であるテープ70の送り経路の途中には、濃度センサ33が設けられている。濃度センサ33は、サーマルヘッド10と排出口15との間を搬送されるフィルムテープ59の印字面に形成されたテストパターンの平均濃度を測定可能である。
濃度センサ33と排出口15との間には、固定刃(図示略)と、固定刃に対向して前後方向に移動可能に支持された移動刃(図示略)と、カッターモータ25(図5参照)とを備えるカット機構が設けられている。移動刃は、カッターモータ25の駆動によって固定刃に向けて移動され、移動刃と固定刃との間に位置する印刷済みのテープ70が幅方向に切断される。
図2および図3を参照して、テープカセット30の概略構成について説明する。図2に示すように、テープカセット30は、箱状のカセットケース31を備える。カセットケース31は、下ケース31Bと、下ケース31Bの上側に固定される上ケース31Aとを有する。カセットケース31の内部には、支持孔65,66,67が設けられている。支持孔65,66,67は、それぞれ、第一テープスプール40、第二テープスプール41、リボンスプール42を回転可能に支持する。第一テープスプール40は、例えば両面粘着テープ58を巻回する。両面粘着テープ58は、一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、剥離紙を外側に向けて第一テープスプール40に巻回される。第二テープスプール41は、透明なフィルムテープ59を巻回する。リボンスプール42は、インクリボン60を巻回する。以下の説明では、フィルムテープ59の搬送方向を、単に搬送方向という。
リボン巻取スプール44は、その内部に挿嵌されるリボン巻取軸9(図2参照)によって回転駆動される。後述するヘッド挿入部39の搬送方向の下流側には、テープ駆動ローラ46が回転可能に軸支されている。テープ駆動ローラ46は、その内部に挿嵌されるテープ駆動軸(図示略)によって回転駆動される。
カセットケース31は、テープカセット30の前面の右側角部から左側方に延びるアーム部34を備える。アーム部34内には、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが案内される。フィルムテープ59とインクリボン60とは、アーム部34の先端に設けられた開口34Aで重ね合わされ、露出部77に向けて排出される。
ヘッド挿入部39は、ヘッドホルダ11が挿入される部位である。露出部77では、開口34Aから排出されたフィルムテープ59の一面が前方に露出される。フィルムテープ59の他面はインクリボン60を挟んで、後方のサーマルヘッド10に対向する。露出部77では、サーマルヘッド10によるフィルムテープ59への印字がインクリボン60を介して行われる。
図4を参照して、サーマルヘッド10の構造について説明する。図4に示すように、サーマルヘッド10は、複数(例えば、1024個や2048個)の発熱素子10Aを一列に列設したラインヘッド10B等で構成される。サーマルヘッド10はプレート13に固定されている。プレート13は、プラテンローラ側の側面にサーマルヘッド10を配設する。発熱素子10Aが一列に並ぶ方向Aは、フィルムテープ59とインクリボン60の幅方向と同方向であり、サーマルヘッド10の主走査方向である。また、方向Aに直交する方向Bは、サーマルヘッド10の上をフィルムテープ59とインクリボン60とが移動する方向と同方向であり、サーマルヘッド10の副走査方向である。
次に、ラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合の、印字装置1による印字動作について、図2および図3を参照して簡単に説明する。まず、テープ駆動軸を介して回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、搬送ローラとの協働によって、第二テープスプール41からフィルムテープ59を引き出す。リボン巻取軸9を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。引き出されたフィルムテープ59は、リボンスプール42の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。
フィルムテープ59はその表面にインクリボン60が重ね合された状態で開口34Aからヘッド挿入部39に供給され、サーマルヘッド10とプラテンローラとの間に搬送される。この時、サーマルヘッド10に配列された複数の発熱素子10Aは、制御回路部400(図5参照)によって、印字データに基づいて選択的に通電(パルス印加)される。発熱素子10Aは、通電により発熱し、インクリボン60に塗布されているインクを溶融あるいは昇華させるので、インクリボン60に形成されたインク層のインクは、フィルムテープ59にドット単位で転写される。このようにして、フィルムテープ59の印字面に対して、搬送方向の下流側からキャラクタが印字される。その後、使用済みのインクリボン60は印字済みのフィルムテープ59から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。
一方、テープ駆動ローラ46と搬送ローラとの協働によって、第一テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。引き出された両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46と搬送ローラとの間にガイドされながら、印字済みのフィルムテープ59の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みのフィルムテープ59はテープ70となり、テープ排出口49に向かって搬送される。
図5を参照して、印字装置1の電気的構成について説明する。図5に示すように、印字装置1は、制御基板上に形成される制御回路部400を備えている。制御回路部400は、CPU401、ROM402、CGROM403、RAM404、フラッシュROM410、入出力インターフェース411などを備え、これらがデータバスを介して接続されている。また、制御回路部400には、電源32から電力が供給される。なお、電源としては、電池電源であってもよいし、商用電源を入力してその交流を整流し且つ降圧して直流を出力するACアダプタからなる直流電源でもよい。
CPU401は、印字装置1の動作を統括制御する。ROM402は、CPU401が印字装置1を制御するために実行する各種プログラムを記憶する。CGROM403は、キャラクタを印字するための印字用ドットパターンデータを記憶する。RAM404は、CPU401の処理実行時においてデータを一時的に記憶する。RAM404には、キーボード3の入力により生成された印字データ等も記憶される。フラッシュROM410は、後述するテストパターンを印刷するための印刷データ等、種々のデータを記憶する。
入出力インターフェース411には、上述の入力部2、液晶駆動回路(LCDC)405、駆動回路406,407,408、濃度センサ33、ヘッド駆動電圧測定部35などが接続されている。LCDC405は、ディスプレイ5を駆動する。駆動回路406は、CPU401からの制御信号に基づいて、サーマルヘッド10に駆動信号を供給し、サーマルヘッド10の駆動状態を制御する。このとき、駆動回路406は、発熱素子10Aごとに対応付けられたストローブ番号に関連付けられた信号(ストローブ(STB)信号)に基づいて、各発熱素子10Aの通電(パルス印加)の有無を制御することで、サーマルヘッド10全体の発熱態様を制御する。駆動回路407は、CPU401からの制御信号に基づいてテープ送りモータ24に駆動信号を供給し、テープ送りモータ24の駆動制御を行う。駆動回路408は、CPU401からの制御信号に基づいてカッターモータ25に駆動信号を供給し、カッターモータ25の駆動制御を行う。
濃度センサ33は、発光部と受光部とからなる光学センサとして構成されており、対象物を照明してその反射光量により光学反射濃度を測定するための光学式反射型濃度センサである。具体的には、濃度センサ33は、対象物を照明して得られた反射光に基づくアナログの光信号をアナログ電圧に変換して、入出力インターフェース411に出力する。入出力インターフェース411は、濃度センサ33から入力されたアナログ電圧をA/D変換することで、対象物の所定範囲の領域における平均濃度を示すOD(Optical Density)値をCPU401に出力する。濃度センサ33は、後述する最適エネルギー決定処理の際に、フィルムテープ59に形成されたテストパターンのOD値を、一定領域ごとに測定する。ヘッド駆動電圧測定部35は、サーマルヘッド10の電圧を所定の時間間隔で測定し、測定した電圧値を示すデジタル信号を入出力インターフェース411に出力する。
次に、上述した印字装置1で実行される本実施形態に係る印字濃度決定方法について説明する。印字濃度決定方法では、フィルムテープ59に形成した所定の二種類のテストパターンのそれぞれの濃度を比較することで、最適な印字エネルギーを決定して、印字装置1の印字濃度を決定する。
図6および図7を参照して、印字濃度決定方法において用いる二種類のテストパターンの一例について説明する。図6は、第一テストパターンP1が印刷されたフィルムテープ59の一部を示す。第一テストパターンP1がフィルムテープ59に印刷される場合、サーマルヘッド10においては、例えば主走査方向に並ぶ複数の発熱素子10Aが、フラッシュROM410に記憶されている第一テストパターンP1を示す第一データに基づいて、ラインごとにそれぞれ通電制御される。その結果、白黒のドットパターンから成る第一テストパターンP1がラインごとに形成される。なお、図6は、フィルムテープ59が副走査方向である方向Bへ搬送されながら、ドットラインが順に形成されることで、第一テストパターンP1が形成された様子を示す。ラインL1は最新に形成されたドットラインを、ラインL2はラインL1の直前に形成されたドットラインを、ラインL3はラインL2の直前に形成されたドットラインをそれぞれ示す。図6の1つ1つの丸印は、それぞれ1ドットに相当する。黒丸は、発熱素子10Aを加熱した結果、黒色に発色したドットを示す。以下、黒色に発色したドットを、黒色ドットKという。白丸は、発熱素子10Aを非加熱した結果、発色しなかったドットを示す。以下、発色しなかったドットを、無色ドットWという。図6に示すように、第一テストパターンP1は、1つの黒色ドットKと1つの無色ドットWとが千鳥掛け状に交互配置された第一最小パターンQ1を最小単位として、第一最小パターンQ1が繰り返し配列された構成を有する。即ち、第一テストパターンP1は、単位面積当たりの黒色ドットKの個数と無色ドットWの個数が1:1となるように構成されている。
図7は、第二テストパターンP2が印刷されたフィルムテープ59の一部を示す。第二テストパターンP2がフィルムテープ59に印刷される場合、サーマルヘッド10において、複数の発熱素子10Aが、フラッシュROM410に記憶されている第二テストパターンP2を示す第二データに基づいて、ラインごとにそれぞれ通電制御される。その結果、白黒のドットパターンから成る第二テストパターンP2がラインごとに形成される。なお、図7は、図6と同様に、フィルムテープ59が方向Bへ搬送されながら、ドットラインが順に形成されることで、第二テストパターンP2が形成された様子を示す。ラインL1は最新に形成されたドットラインを、ラインL2はラインL1の直前に形成されたドットラインを、ラインL3はラインL2の直前に形成されたドットラインを、ラインL4はラインL3の直前に形成されたドットラインをそれぞれ示す。図7に示すように、第二テストパターンP2は、4つの黒色ドットK群と4つの無色ドットW群とが千鳥掛け状に交互配置された第二最小パターンQ2を最小単位として、第二最小パターンQ2が繰り返し配列された構成を有する。第一最小パターンQ1における黒色ドットKと、第二最小パターンQ2における4つの黒色ドットK群とは、面積比が1:4である。第一最小パターンQ1における無色ドットWと、第二最小パターンQ2における4つの無色ドットW群とも、面積比が1:4である。即ち、第一最小パターンQ1と第二最小パターンQ2とは、相似比が1:2である相似パターンであるともいえる。第二テストパターンP2も、第一テストパターンP1と同様に、単位面積当たりの黒色ドットKの個数と無色ドットWの個数が1:1となるように構成されている。この場合、濃度センサ33の濃度測定領域に占める全ドット数に占める黒色ドットKの割合は、第一テストパターンP1と第二テストパターンP2とで同じになるので、第一テストパターンP1と第二テストパターンP2とは、理論上には、同じ平均濃度を示す。本実施形態では、第一テストパターンP1および第二テストパターンP2のいずれも、理想的な印刷において平均濃度がOD値で0.6程度になるように構成されている。以下、第一テストパターンP1と第二テストパターンP2を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単にテストパターンという。
図6から図8を参照して、印字エネルギーの変化に伴う第一テストパターンP1および第二テストパターンP2のOD値の変化特性について説明する。本願の発明者は、サーマルヘッド10に付与される電圧を20.6Vと、サーマルヘッド10に供給される電力を0.180Wとして、印字エネルギーを変化させた場合の第一テストパターンP1と第二テストパターンP2それぞれのOD値を測定する実験を行った。印字装置1による第一テストパターンP1および第二テストパターンP2の形成には、いずれも同一種類のラミネートタイプのテープカセット30を用いた。
図8は、上記の実験における、印字エネルギーの変化に伴う第一テストパターンP1および第二テストパターンP2のOD値の変化特性を示すグラフである。図8の横軸は、印字エネルギーを示し、縦軸はOD値を示す。図8によれば、印字エネルギーの変化に伴う第一テストパターンP1のOD値の変化と、第二テストパターンP2のOD値の変化とでは、実際にはそれぞれ異なる変化曲線を描くことが分かる。本実験の測定条件においては、印字エネルギーが約54μJよりも低い場合、第一テストパターンP1のOD値は、第二テストパターンP2のOD値よりも高い値を示す。そして、二つの変化曲線は、印字エネルギーが大きくなるにつれて互いに接近し、印字エネルギーが約54μJ、OD値が約0.61となる一点で交差する。その後、印字エネルギーが約54μJよりも大きくなると、第一テストパターンP1のOD値は、第二テストパターンP2のOD値よりも低い値を示すようになる。
OD値の変化特性が、第一テストパターンP1と第二テストパターンP2とで異なる要因として、テストパターンにおける、黒色ドットKと無色ドットWとの配置の均一性の違いによる影響が考えられる。第一テストパターンP1では、黒色ドットKと無色ドットWとが交互に配列されるので、黒色ドットKに隣接するドットは無色ドットWのみである。一方、第二テストパターンP2では、4つの黒色ドットKが隣接して配置される箇所と、4つの無色ドットWが隣接して配置される箇所が交互に繰り返される。即ち、第二テストパターンP2には、黒色ドットKが配列される密度が、第一テストパターンP1よりも高くなる箇所がある。このため、第二テストパターンP2内の位置によって、1つの黒色ドットKに他の黒色ドットKが隣接する箇所と、1つの黒色ドットKから他の黒色ドットKまでの距離が2つの無色ドットWを挟んだ距離となる箇所がある。
第一テストパターンP1の印刷においては、加熱される発熱素子10Aが、ラインごとに交互に切り替わる。図6のラインL1,L2、L3におけるN,N−1,N+1列目のドットに着目して説明する。黒色ドットKは、インクリボン60のインクが、発熱素子10Aの発熱によって溶融あるいは昇華されて形成される。発熱素子10Aの温度が高くなるほど、発熱素子10Aは近傍のインクに対しても影響を与えやすくなる。また、印字エネルギーが高くなるほど、発熱素子10Aは高温に発熱しやすくなる。つまり、1つの黒色ドットKの大きさは、印字エネルギーに比例して大きくなりやすい。第一テストパターンP1において、黒色ドットKは、隣接する1つの無色ドットWを挟んで、1ドットおきの一定間隔に配列する。ラインL2のN列目の黒色ドットKは、上下左右に隣接するラインL2のN+1列目、ラインL2のN−1列目、ラインL1のN列目、ラインL3のN列目の各無色ドットWに向けて、印字エネルギーに比例して大きくなる。周囲の無色ドットWに向けて大きくなる黒色ドットKは、無色ドットWの形成する無色の部分に対して黒色の部分を徐々に広げることとなる。よって、印字エネルギーが比較的低い場合、第一テストパターンP1のOD値は、印字エネルギーに比例して上昇しやすい。
一方、第二テストパターンP2の印刷においては、2ラインごとに、発熱素子10Aの加熱と非加熱が繰り返される。図7のラインL1,L2,L3におけるN,N+1,N+2列目のドットに着目して説明する。ラインL2のN+1列目の黒色ドットKの上側と左側には、ラインL2のN+2列目およびラインL1のN+1列目に示す黒色ドットKが配置され、右側と下側には、ラインL3のN+1列目およびラインL2のN列目に示す無色ドットWが配置される。ラインL2のN+1列目の黒色ドットKは、印字エネルギーに比例して大きくなり、周囲のドットに向けて黒色部分を広げていく。この場合、ラインL2のN+1列目の黒色ドットKは、右側と下側にあたるラインL3のN+1列目およびラインL2のN列目の無色ドットWに向けて、黒色部分を広げることができる。しかし、上側と左側に向けて広がるラインL2のN+1列目の黒色ドットKの黒色部分は、ラインL2のN+2列目およびラインL1のN+1列目の黒色ドットKの黒色部分と重複する。黒色部分同士の重複する部分がある場合、その部分については、第二テストパターンP2全体における黒色部分が増加しないので、テストパターンの平均濃度に影響が生じにくい。第二テストパターンP2には、黒色部分同士が重複する黒色ドットKが第一テストパターンP1よりも多く配置される。このため、印字エネルギーが比較的低い場合、第二テストパターンP2の印字エネルギーに対するOD値の上昇カーブは、第一テストパターンP1のD値の上昇カーブよりも緩やかになる。言い換えると、第一テストパターンP1の平均濃度は、第二テストパターンP2よりも低い印字エネルギーにおいて、テストパターン固有の平均濃度である約0.6のOD値に早く達しやすい。
図8に示すように、第一テストパターンP1のOD値は、テストパターン固有の平均濃度である約0.6のOD値に到達した後は、印字エネルギーが上昇しても飽和する傾向になる。第一テストパターンP1においては、各発熱素子10Aが1ラインごとに加熱と非加熱とが繰り返されるので、印字エネルギーが比較的高い場合には、複数の発熱素子10Aは、ほぼ一様に蓄熱する。このような場合、第一テストパターンP1における無色ドットWの形成する無色部分に対する黒色ドットKの黒色部分の広がりには一定の限度があるためである。
一方、印字エネルギーが比較的高い場合の第二テストパターンP2の印刷について、図7のラインL1〜L4におけるN,N−1,N−2列目のドットに着目して説明する。第二テストパターンP2の印刷においては、ラインL4およびラインL3のN,N−1列目で2ラインに亘り連続して加熱された発熱素子10Aは、蓄熱された状態になる。この発熱素子10Aは、その後、ラインL2において非加熱されるが、ラインL4およびラインL3の2ラインに亘る加熱により蓄熱した発熱素子10Aの温度は低下しにくくなる。また、ラインL2において、N列目の発熱素子10Aの真上に当たるN+1列目の発熱素子10A、およびN−1列目の発熱素子10Aの真下に当たるN−2列目の発熱素子10Aが加熱される。このため、ラインL4およびラインL3のN,N−1列目で2ラインに亘り連続して加熱された発熱素子10Aに蓄熱された熱は、ラインL2においてN+1,N−2列目に向けて逃げにくい。つまり、印字エネルギーが比較的高い場合の第二テストパターンP2には、第一テストパターンP1よりも、蓄熱の度合いの高い状態の発熱素子10Aによる黒色ドットKが含まれやすくなる。発熱素子10Aの発熱が過剰になるほど、テストパターンにおいて、黒色ドットKが潰れた状態で印刷されやすくなる。よって、印字エネルギーが比較的高い場合には、第二テストパターンP2は、第一テストパターンP1よりも黒色ドットKが全体的に潰れて印刷されやすくなる。即ち、印字エネルギーが比較的高い場合には、印字エネルギーの上昇に伴ってOD値が上昇する度合いは、第二テストパターンP2の方が第一テストパターンP1よりも高くなる。
このように、第一テストパターンP1と第二テストパターンP2とは、異なるOD値の変化特性を有する。このため、印字エネルギーを徐々に上昇させながらテストパターンを印刷した場合、第一テストパターンP1のOD値と、第二テストパターンのOD値との大小関係は、ある印字エネルギーにおいて逆転する。本願の発明者は、第一テストパターンP1のOD値の変化曲線と、第二テストパターンP2のOD値の変化曲線とが交差する点の示す印字エネルギーを、様々な印字に適した印字エネルギーであると考え、最適な印字エネルギーの指標とした。そして、この最適な印字エネルギーを印字装置1の使用される場面ごとに自動的に見出して、印字装置1の印字濃度を決定する方法を確立した。
本実施形態のテープカセット30は、インクリボン60を用いた熱転写タイプである。テープカセット30の製造後の経時によって、インクリボン60の品質は徐々に劣化するので、実際に印字に使用されるテープカセット30それぞれの感熱性には、ばらつきが生じ得る。この点、例えば、テープに感熱紙を用いた感熱タイプのテープカセットにおいても、本実施形態のテープカセット30と同様に感熱紙のテープに経時劣化が生じ得る。また、印字装置1に使用される複数の発熱素子10Aは、発熱素子10Aごとに特性のばらつきがあったり、印字装置1の使用を重ねることで発熱素子10Aが徐々に劣化したりする。本発明に係る印字濃度決定方法では、印字装置1による印字について、実際に使用するテープカセット30に収納されるテープを用いて最適な印字エネルギーを決定する。このため、印字装置1は、通電に対する発熱素子10Aの感度など印字装置1ごとに異なり得る印刷特性、テープカセット30に収納されるテープの感熱性の度合い等、実際の印字条件に対応した最適な印字エネルギーを決定できる。また、印字装置1は、新たに開発されたテープ種を収納するテープカセット30を使用して印字を行う場合にも、印字装置1との組合せにおいて最適な印字エネルギーを決定できる。また、例えば電源32が電池電源である場合などには、電池電源の使用による消耗に伴い、制御回路部400に供給される電力が漸減する場合がある。このような場合でも、既知のテープ種についての最適な印字エネルギー設定を印字装置1に記憶しておくことで、低下した電力に対応した発熱素子10Aへの通電(パルス印加)条件を適宜補正することもできる。このような印字濃度決定方法を具現化するために、印字装置1のCPU401が実行する処理について、以下、詳細を説明する。
図9を参照して、印字装置1のCPU401による最適エネルギー決定処理について説明する。最適エネルギー決定処理は、印字装置1における印字に最適な印字エネルギーである最適エネルギーEsを決定するための処理である。CPU401は、例えば印字装置1の電源が投入された場合に、ROM402に記憶された最適エネルギー決定処理のプログラムに基づいて動作することで、図9に示す最適エネルギー決定処理を開始する。
図9に示すように、まず、CPU401は、第一テストパターンP1および第二テストパターンP2を示す印刷データを、フラッシュROM410から読み出して取得する(S1)。印刷データは、濃度センサ33の濃度測定領域に対して、適した領域範囲のテストパターンをフィルムテープ59に印刷可能なデータである。CPU401は、テストパターンをフィルムテープ59に印刷するためにサーマルヘッド10に印加するエネルギーE(n)を、初期値に設定する(S2)。本実施形態においては、初期値を例えば30μJとする。
CPU401は、S1の処理で取得した第一テストパターンP1を示す印刷データに基づいて、S2の処理で設定したエネルギーE(n)をサーマルヘッド10に印加して、第一テストパターンP1をフィルムテープ59に印刷する(S3)。本実施形態において、サーマルヘッド10へのエネルギー印加は、印字周期(例えば14.1m秒)が単位時間(例えば250μ秒)で分割され、単位時間ごとにサーマルヘッド10の通電(パルス印加)がチョッピング・デューティー比によって制御される。印字周期とは、1つのドットが形成される時間である。単位時間とは、1回のパルス印加に準備される時間である。チョッピング・デューティー比は、単位時間に占める通電時間の割合である。CPU401は、印刷時のサーマルヘッド10の電圧値を、ヘッド駆動電圧測定部35を介して取得し、取得した電圧値に応じてパルス印加の回数あるいはチョッピング・デューティー比を決定することで、S2で設定したエネルギーE(n)をサーマルヘッド10に印加する。エネルギーE(n)とサーマルヘッド10の電圧値とに対応するパルス印加の回数あるいはチョッピング・デューティー比は、サーマルヘッド10を用いた印字の実験により、予め用意しておく。次いで、CPU401は、S3の処理で印刷した第一テストパターンP1のOD値である第一OD値を、濃度センサ33を介して取得する(S4)。
CPU401は、S1の処理で取得した第二テストパターンP2を示す印刷データに基づいて、S2の処理で設定したエネルギーE(n)をサーマルヘッド10に印加して、第二テストパターンP2をフィルムテープ59に印刷する(S5)。次いで、CPU401は、S45の処理で印刷した第二テストパターンP2のOD値である第二OD値を、濃度センサ33を介して取得する(S6)。CPU401は、S4およびS6の処理で取得した第一OD値および第二OD値を、S2の処理で設定したエネルギーE(n)に関連付けて、RAM404に記憶する(S7)。
CPU401は、S7の処理でエネルギーE(n)に関連付けてRAM404に記憶した第一OD値および第二OD値を参照し、第一OD値から第二OD値を減算した減算値を算出する(S8)。CPU401は、S8の処理で算出した減算値が「0」以下であるか否かを判断する(S9)。CPU401は、減算値が「0」よりも大きい場合(S9:NO)、エネルギーE(n)を次の設定値を示すエネルギーE(n+1)に更新する(S10)。本実施形態においては、エネルギーE(n)に例えば5μJを加算した値を、更新したエネルギーE(n+1)とする。CPU401は、処理をS3に戻し、その後、S9の判断において減算値が「0」以下となるまで、S3からS9の処理を繰り返す。これにより、CPU401は、サーマルヘッド10に印加するエネルギーを5μJずつ更新して、第一OD値と第二OD値とを比較して、最適エネルギーEsを決定できる。
CPU401は、減算値が「0」以下の場合(S9:YES)、RAM404に記憶したエネルギーE(n)および前回の設定値を示すエネルギーE(n−1)を参照し、エネルギーE(n)とエネルギーE(n−1)との和を2で割った値を、最適エネルギーEsと決定する(S11)。その後CPU401は、最適エネルギー決定処理を終了する。
以上説明したように、第一テストパターンP1および第二テストパターンP2は、理論上の平均濃度がそれぞれ同じになるように、単位面積当たりの黒色ドットKの個数と無色ドットWの個数が1:1に構成されたテストパターンである。第一テストパターンP1は黒色ドットKと無色ドットWとが交互に配列されるが、第二テストパターンP2は4つの黒色ドットKが隣接して配置される箇所がある。したがって、第二テストパターンP2には、黒色ドットKが配列される密度が、第一テストパターンP1よりも高くなる箇所がある(図6および図7参照)。このような第一テストパターンP1および第二テストパターンP2のそれぞれのOD値を測定すると、発熱素子10Aの蓄熱の影響のため、印字エネルギーが比較的低い場合には、第一OD値は、第二OD値よりも高くなる傾向がある。一方、印字エネルギーが比較的高い場合には、印字エネルギーの上昇に伴ってOD値が上昇する度合いは、第二テストパターンP2の方が第一テストパターンP1よりも高くなる傾向がある(図8参照)。印字装置1のCPU401は、サーマルヘッド10に印加するエネルギーE(n)設定する(S2およびS10)。CPU401は、設定したエネルギーE(n)をサーマルヘッド10に印加して、第一テストパターンP1および第二テストパターンP2のそれぞれをフィルムテープ59に印刷する(S3およびS5)。CPU401は、印刷した第一テストパターンP1の第一OD値、および第二テストパターンP2の第二OD値を取得する(S4およびS6)。CPU401は、第一OD値から第二OD値を減算した減算値を算出する(S8)。CPU401は、減算値が「0」以下であるか否かに応じて、最適エネルギーEsと決定する(S11)。これにより、印字装置1は、印字装置1の使用される場面ごとに、最適エネルギーEsを決定できる。
第一テストパターンP1と第二テストパターンP2は、共に同じ平均濃度を示すテストパターンであるので、第一OD値と第二OD値とが同じ値となる印刷条件が存在する。CPU401は、サーマルヘッド10に印加するエネルギーE(n)を段階的に変更して第一OD値および第二OD値を取得する(S10)。CPU401は、減算値が「0」よりも大きい場合、エネルギーE(n)を次の設定値を示すエネルギーE(n+1)に更新し(S10)、テストパターンの印刷とテストパターンのOD値に基づく減算値の算出を繰り返す。CPU401は、減算値が「0」以下の場合、エネルギーE(n)とエネルギーE(n−1)との和を2で割った値を、最適エネルギーEsと決定する(S11)。よって、印字装置1は、実際の印字に使用するテープカセット30と印字に使用する印字装置1との組合せにおける最適エネルギーEsを決定できる。
最適エネルギーEsを決定するために用いられるテストパターンは、それぞれのOD値の違いを比較するため、複数の黒色ドットKと複数の無色ドットWとが、一様に配列されることが好ましい。印字装置1は、一つの黒色ドットKと一つの無色ドットWとが千鳥掛けに繰り返し配置される第一テストパターンP1と、4つの黒色ドットK群と4つの無色ドットW群とが千鳥掛けに繰り返し配置される第二テストパターンP2をテストパターンに用いる。これにより、印字装置1は、最適エネルギーEsを決定するための減算値の算出に必要な第一OD値および第二OD値を適切に取得できる。
サーマルヘッド10の発熱素子10Aは、印加されるエネルギーE(n)が大きくなるほど蓄熱しやすくなる。発熱素子10Aの蓄熱状況によって、第一OD値と第二OD値との差が変化することがある。印字装置1は、第一OD値および第二OD値から算出される減算値と、印加されたエネルギーE(n)の値とに基づいて、最適エネルギーEsを決定できる。
本実施形態において、印字装置1が、本発明の「印刷装置」に相当する。サーマルヘッド10が、本発明の「印刷ヘッド」に相当する。濃度センサ33が、本発明の「濃度検出手段」に相当する。テープ送りモータ24が、本発明の「搬送手段」に相当する。第一テストパターンP1が、本発明の「第一印刷パターン」に相当する。第二テストパターンP2が、本発明の「第二印刷パターン」に相当する。S2およびS10の処理を行うCPU401が、本発明の「エネルギー設定手段」として機能する。S3およびS5の処理を行うCPU401が、本発明の「印刷制御手段」として機能する。S4およびS6の処理を行うCPU401が、本発明の「濃度取得手段」として機能する。S8の処理を行うCPU401が、本発明の「算出手段」として機能する。S11の処理を行うCPU401が、本発明の「決定手段」として機能する。S7の処理を行うCPU401および第一OD値および第二OD値をエネルギーE(n)に関連付けて記憶するRAM404が、本発明の「記憶手段」として機能する。
S2およびS10の処理が、本発明の「エネルギー設定工程」に相当する。S3およびS5の処理が、本発明の「印刷制御工程」に相当する。S4およびS6の処理が、本発明の「濃度取得工程」に相当する。S8の処理が、本発明の「算出工程」に相当する。S11の処理が、本発明の「決定工程」に相当する。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、S11の処理における最適エネルギーEsの決定手法は、上記実施形態の例に限られない。例えば、CPU401は、S2の処理において所定の印字エネルギーを設定して(S2)、第一テストパターンP1および第二テストパターンP2をフィルムテープ59に印刷する(S3およびS5)。そしてCPU401は、第一OD値および第二OD値を取得し(S4およびS6)、第一OD値から第二OD値を減算した減算値を算出する(S8)。CPU401は、減算値が「0」よりも大きい正の値を示す場合(S9:NO)、S2で設定した所定の印字エネルギーに一定のエネルギー(例えば5μJ)を加算したエネルギーを最適エネルギーEsと決定してもよい。また、CPU401は、減算値が「0」よりも小さい負の値を示す場合(S9:YES)、S2の処理で設定した所定の印字エネルギーに一定のエネルギー(例えば5μJ)を減算したエネルギーを最適エネルギーEsと決定してもよい。また、CPU401は、減算値が「0」に等しい場合、S2で設定した所定の印字エネルギーを最適エネルギーEsと決定してもよい。これにより、CPU401は、サーマルヘッド10に印加する印字エネルギーを段階的に変更して第一テストパターンP1および第二テストパターンP2を印刷することなく、簡易的に最適エネルギーEsを決定できる。
上記実施形態では、CPU401は、S11の処理において、最適エネルギーEsを、減算値が正の値となるエネルギーE(n−1)と、減算値が負の値となるエネルギーE(n)との間のエネルギー値と決定している。この他、最適エネルギーEsの決定手法として、CPU401は、S9の判断で減算値が「0」以下の場合(S9:YES)、エネルギーE(n)を最適エネルギーEsと決定してもよい。CPU401は、S10の処理においてエネルギーE(n)に所定のエネルギー値を加えて更新するが、加算するエネルギー値の幅を小さくする(例えば5μJ未満の値を加算する)ことで、減算値が「0」に最も近似する点を特定できる。これにより、CPU401は、上記実施形態のS11における演算を行わずに、最適エネルギーEsを決定できる。また、この場合、CPU401は、S9の判断で減算値が「0」以下の場合には(S9:YES)、直前の設定値であるエネルギーE(n−1)を最適エネルギーEsと決定しても、同様の効果が得られる。
上記実施形態では、S11の処理において、最適エネルギーEsをエネルギー値で決定している。CPU401は、S7の処理でエネルギーE(n)をRAM404に記憶するが、エネルギーE(n)を示す情報として、テストパターン印刷時のサーマルヘッド10の電圧値と、この電圧値に応じたパルス印加の回数あるいはチョッピング・デューティー比を記憶してもよい。そして、CPU401は、S11の処理において、最適エネルギーEsを、S7の処理で記憶した情報に基づいて、サーマルヘッド10の電圧値に対応するパルス印加の回数あるいはチョッピング・デューティー比等を決定してもよい。これにより、CPU401は、最適エネルギーEsを印字装置1において実際に導くためのサーマルヘッド10の電圧値と、この電圧値に対応するパルス印加の回数あるいはチョッピング・デューティー比等を直接決定できる。
上記実施形態の第一テストパターンP1および第二テストパターンP2のドット構成は、上記実施形態の例に限られない。第一最小パターンQ1と第二最小パターンQ2とは、相似比が1:2である相似パターンであるが、相似比はこれに限られない。また、第一最小パターンQ1と第二最小パターンQ2とは、相似パターンである必要はない。第一テストパターンP1および第二テストパターンP2とが同じ平均濃度を示し、且つ、複数の黒色ドットKが配列される密度が第一テストパターンP1よりも高くなる箇所が第二テストパターンP2に設けられていれば良い。
第一OD値と第二OD値との比較手法は、上記実施形態の最適エネルギー決定処理による手法に限定されない。印字装置1は、例えば、第一テストパターンP1と第二テストパターンP2との平均濃度の差を検出する濃度差検出回路を設けて、第一OD値と第二OD値を比較できる。濃度差検出回路は、例えば、2個の濃度センサと、OPアンプとによって構成される。2個の濃度センサの一方は、フィルムテープ59に形成された第一テストパターンP1の平均濃度を計測するための濃度センサであり、フィルムテープ59に形成された第二テストパターンP2の平均濃度を計測するための濃度センサである。OPアンプは、+側の入力ポートと−側の入力ポートとの電位差を検出し、検出した電位差を示す値をCPU401に通知するためのOPアンプである。OPアンプの+側の入力ポートには、第一テストパターンP1の平均濃度を計測するための濃度センサが接続される。OPアンプの−側の入力ポートには、第二テストパターンP2の平均濃度を計測するための濃度センサが接続される。2つの濃度センサは、計測したテストパターンに基づくアナログ電圧を、OPアンプの入力ポートにそれぞれ出力する。OPアンプの出力ポートは、CPU401に接続される。CPU401は、OPアンプから通知される+側の入力ポートと−側の入力ポートとの電位差に基づいて、上記実施形態ではS8の処理で算出する「減算値」を特定できる。
上記実施形態では、モノクロ印刷が可能な印字装置1とテープカセット30との組合せにおける印字濃度決定方法について記載しているが、カラー印刷が可能な印字装置とテープカセットとの組合せにおいても、本発明は適用できる。この場合、印字媒体にカラー印刷されたテストパターンのOD値を取得することで、最適エネルギーEsを導けばよい。
上記実施形態では、本発明の印刷ヘッドとしてラインヘッド10Bで構成されるサーマルヘッド10を採用しているが、印刷ヘッドはこれに限られない。印刷ヘッドは、印加されるエネルギーに応じて印刷媒体に1または複数のドットからなる印刷パターンを印刷可能なものであればよい。例えば、印刷ヘッドは、インクジェットプリンタにおいてインクを吐出するインクジェットヘッド等であってもよい。ピエゾ方式およびサーマル方式のいずれのインクジェットプリンタも、印刷ヘッドに電圧や熱によるエネルギーを印加して、印刷媒体にドットパターンを形成する。このようなインクジェットプリンタでは、印刷ヘッドに印加される印字エネルギーの変化に伴い、印刷媒体に形成されるドット径が変化しうる。この場合、印字エネルギーを変化させて第一テストパターンP1と第二テストパターンP2を印刷した場合、第一OD値と第二OD値とが異なる変化特性を示すことがある。したがって、本発明は、ライン型のサーマルヘッド以外の印刷ヘッドを備える印刷装置およびその印刷濃度決定方法に適用できる。