JP6255284B2 - ガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents
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Description
また、このガスシールドパルスアーク溶接方法に用いるワイヤとして、ワイヤの化学成分がワイヤ全重量に対して、重量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.2〜3.0%、P :0.05%以下、S :0.05%以下、Cu:1.5%以下を含有し、不可避成分を0.1%以下、且つ残部が実質的にFeよりなるガスシールドアーク溶接用ワイヤが開示されている。
さらには、ワイヤの化学成分がワイヤ全重量に対して、さらに重量%で、Ni:0.10〜5.00%、Cr:0.10〜3.00%、Mo:0.05〜2.00%、Ti:0.02〜0.50%、B:0.0010〜0.0300%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、不可避成分を0.1%以下、且つ残部が実質的にFeよりなるガスシールドアーク溶接用ワイヤが開示されている。
特許文献1に関しては、厚肉大径の鋼材の溶接には通常、溶接後熱処理(以後、適宜、PWHT(Post Weld Heat Treatment)と略記する)が実施されうるが、特許文献1には、溶着金属のPWHT後の機械的性質に関する言及がなされていない。また、溶着金属の靭性について、vE0℃あるいはvE-20℃≧47Jを良好な性能としているが、実際の要求性能に対しては不十分な閾値である。
特許文献2に関しては、厚肉大径の鋼材の溶接には通常PWHTが実施されうるが、特許文献2には、溶着金属のPWHT後の機械的性質に関する言及がなされていない。
また、溶接施工効率を重視した施工条件、特に立向上進姿勢を含む種々の溶接姿勢下で、かつ大入熱での溶接条件下でも優れた機械的特性を有する溶着金属を提供する技術についての知見は示されていない。
よって、先願特許群にて構成される何れの知見も、種々の溶接姿勢・入熱範囲で、かつPWHT後においても引張強度特性、靭性、および落重特性をすべて良好にするという問題を解決することは出来ない。
本願に関わるガスメタルアーク溶接(以後、適宜、GMAWと略記する)用ソリッドワイヤは、ワイヤ中に4.00〜5.00質量%のNiを含有するものである。大入熱施工かつPWHT後であっても、その溶着金属の引張強度特性、靭性、および落重特性をすべて良好にする手段として、発明者らは「固溶強化と析出強化とを同時に実現する合金元素の添加」および「溶接時の凝固過程で析出する介在物を活用したミクロ組織制御」という着想を得た。
本発明に係るガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤは、C:0.010〜0.100質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.025質量%以下、S:0.003〜0.025質量%、Cu:0.35質量%以下、Ni:4.00〜5.00質量%、Mo:0.10〜0.50質量%、Ti:0.025〜0.075質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
本発明のソリッドワイヤは、ガスメタルアーク溶接に用いられるソリッドワイヤであり、C:0.010〜0.100質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下、Cu:0.35質量%以下、Ni:4.00〜5.00質量%、Mo:0.10〜0.50質量%、Ti:0.025〜0.075質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。
以下、ソリッドワイヤの成分限定理由について説明する。
Cは、溶着金属中の炭化物の析出量に大きな影響を及ぼす。ソリッドワイヤ中のC含有量が0.010質量%未満では、溶着金属中のC含有量が低くなって炭化物の析出量が不十分となり、所定の強度が得られない。一方、ソリッドワイヤ中のC含有量が0.100質量%を超えると、溶着金属中のC含有量が過剰に高くなって焼入れ性が高まり、また炭化物析出量が増大して溶着金属の強度を高め、靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるC含有量は0.010〜0.100質量%とする。C含有量は、溶着金属の強度をより向上させる観点から、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上である。また、C含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.050質量%以下、より好ましくは0.040質量%以下である。
Siは、溶着金属の強度を高めると同時に、溶着金属を脱酸・清浄化して靭性を向上させる。ソリッドワイヤ中のSi含有量が0.20質量%未満では、溶着金属中のSi含有量が低くなってその強度が低下し、さらに溶着金属中の酸素量が増加して粗大な酸化物を形成するため、靭性および落重特性が低下する。一方、ソリッドワイヤ中のSi含有量が1.00質量%を超えると、Siの添加が過剰となって溶着金属の強度が著しく高くなり、靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるSi含有量は0.20〜1.00質量%とする。Si含有量は、溶着金属の強度、靭性、および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。また、Si含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.45質量%以下である。
Mnは、A1変態点およびベイナイト変態開始温度を低下させてベイナイト組織を微細化させ、溶着金属の靭性および落重特性を向上させる。また、MnはSi同様、溶着金属を脱酸・清浄化してその靭性を向上させる。ソリッドワイヤ中のMn含有量が1.00質量%未満では、これらの効果が得られない。一方、ソリッドワイヤ中のMn含有量が2.00質量%を超えると、Mnの添加が過剰となって溶着金属の強度が著しく高くなり、靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるMn含有量は1.00〜2.00質量%とする。Mn含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは1.10質量%以上、より好ましくは1.20質量%以上である。また、Mn含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは1.40質量%以下、より好ましくは1.30質量%以下である。
PおよびSは、その含有量が、それぞれ、0.025質量%を超えると、溶着金属を脆化させ、その靭性および落重特性を低下させる。よって、ソリッドワイヤ全体におけるP含有量およびS含有量は、いずれも0.025質量%以下とする。P含有量およびS含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、いずれも、好ましくは0.010質量%以下、より好ましくは0.008質量%以下である。なお、下限値は特に規定はないが、PおよびSは含有しない方が好ましく、0質量%であることが好ましい。ただし、PおよびSは不可避的に混入するため、実質的に0.001質量%が下限値となる。
Cuは、ワイヤ中に含まれるCuに由来するもの、および、溶接時のワイヤ送給性改善のために電気めっき等の手法でワイヤ表面にコーティングされるCuに由来するものである。ソリッドワイヤ中のCu含有量が0.35質量%を超えると、溶着金属中のCu含有量も増加し、その靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるCu含有量は0.35質量%以下とする。Cu含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下である。なお、下限値は特に規定はないが、Cuは含有しなくてもよく、0質量%であってもよい。ただし、Cuは不可避的に混入するため、実質的に0.01質量%が下限値となる。
Niは、本願に関わる溶接ワイヤの基本成分であり、A1変態点およびベイナイト変態開始温度を下げてベイナイト組織を微細化すると共にマトリクスの靭性を向上させ、溶着金属の靭性および落重特性を向上させる。ソリッドワイヤ中のNi含有量が4.00質量%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、ソリッドワイヤ中のNi含有量が5.00質量%を超えると、溶着金属の強度が著しく高くなり、靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるNi含有量は4.00〜5.00質量%とする。Ni含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは4.20質量%以上、より好ましくは4.30質量%以上である。また、Ni含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは4.50質量%以下、より好ましくは4.40質量%以下である。
Moは、PWHT時に炭化物を形成すると共に、マトリクス中に固溶して溶着金属の強度を向上させる。ソリッドワイヤ中のMo含有量が0.10質量%未満では、所定の引張強度が得られない。一方、ソリッドワイヤ中のMo含有量が0.50質量%を超えると、炭化物析出量、およびマトリクス中への固溶量が過剰に増加して溶着金属の強度が著しく高くなり、靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるMo含有量は0.10〜0.50質量%とする。Mo含有量は、溶着金属の強度をより向上させる観点から、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上である。また、Mo含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下である。
Tiは、溶接時の凝固過程においてTiNを形成し、そのピン留め効果によってγ粒の粗大化を抑制して旧γ粒径を微細化する。これにより、溶着金属の強度、靭性、および落重特性を向上させる。ソリッドワイヤ中のTi含有量が0.025質量%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、ソリッドワイヤ中のTi含有量が0.075質量%を超えると、溶着金属の強度が著しく高くなり、靭性および落重特性が低下する。よって、ソリッドワイヤ全体におけるTi含有量は0.025〜0.075質量%とする。Ti含有量は、溶着金属の強度、靭性、および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.050質量%以上、より好ましくは0.055質量%以上である。また、Ti含有量は、溶着金属の靭性および落重特性をより向上させる観点から、好ましくは0.070質量%以下、より好ましくは0.065質量%以下である。
ソリッドワイヤの成分の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、V、W、Nb、Co、Sn、Sb、As等が挙げられる。これらの不可避的不純物は、本発明の効果を妨げない範囲において含有することは許容され、その含有量は、それぞれ0.005質量%以下が好ましい。
本発明のソリッドワイヤは、常法により製造することができる。例えば、まず、転炉あるいは電気炉等を用いて、前記した成分組成を有する溶鋼を溶製し、得られた溶鋼から連続鋳造や造塊法等によって鋼材(ビレット等)を製造する。次に、製造した鋼材を加熱した後、熱間圧延(押出圧延)を施し、更に乾式の冷間圧延(冷間伸線)を施して、例えば、φ5.5mmの溶接ワイヤ用原線(鋼素線とも言う)を製造する。次いで、この溶接ワイヤ用原線を必要に応じて焼鈍や酸洗を実施して伸線加工を行い、最終ワイヤ径(例えば1.2mm)を有するソリッドワイヤとして製造する。
一方、本発明の範囲を満足しないNo.8〜22は、以下の結果となった。
No.10は、Si含有量が低いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性、「PWHT(615℃×10h)後」の引張強度特性に劣った。No.11は、Si含有量が高いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性に劣った。
No.12は、Mn含有量が低いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性に劣った。No.13は、Mn含有量が高いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性に劣った。
No.17は、Ni含有量が低いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性に劣った。No.18は、Ni含有量が高いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性、「PWHT(615℃×10h)後」の落重特性に劣った。
No.21は、Ti含有量が低いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性、「PWHT(615℃×10h)後」の引張強度特性に劣った。No.22は、Ti含有量が高いため、「溶接のまま」の靭性、落重特性、「PWHT(615℃×10h)後」の靭性、落重特性に劣った。
Claims (2)
- C:0.010〜0.100質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.025質量%以下、S:0.003〜0.025質量%、Cu:0.35質量%以下、Ni:4.00〜5.00質量%、Mo:0.10〜0.50質量%、Ti:0.025〜0.075質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤ。
- C:0.010〜0.050質量%、Si:0.20〜0.50質量%、Mn:1.10〜1.40質量%、P:0.010質量%以下、S:0.003〜0.010質量%、Cu:0.35質量%以下、Ni:4.00〜4.50質量%、Mo:0.10〜0.30質量%、Ti:0.050〜0.075質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤ。
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