JP6252990B2 - 光学物品の製造に用いられる型の製造方法及びこの型を用いた光学物品の製造装置 - Google Patents
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Description
また、「細孔の間隔」とは、隣接する細孔同士の中心間距離を意味する。
また、「突起」とは、成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凸部のことをいう。
また、「微細凹凸構造」は、隣接する凸部および隣接する凹部の平均間隔が10〜400nmである構造を意味する。
また、「凸部の高さ」は、型や成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凹部の最深部同士をつなぐ面を基準とした、凸部の頂部の高さを意味する。例えば、図3においてh1やh2が凸部の高さを示している。
また、「凹部の高さ」は、型や成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凹部の最深部同士をつなぐ面を基準とした、凹部の底部の高さを意味する。例えば、図3においてh0や、h0’、h3が凹部の高さを示している。
また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
また、「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
モールド(型)に微細凹凸構造を形成する方法は特に限定されないが、その具体例としては、電子ビームリソグラフィー法、レーザー光干渉法などが挙げられる。例えば、適当な支持基板上に適当なフォトレジスト膜を塗布し、紫外線レーザー、電子線、X線等の光で露光し、現像することによって微細凹凸構造を形成した型を得て、この型をそのままマザーモールドとして使用することもできる。また、フォトレジスト層を介して支持基板をドライエッチングにより選択的にエッチングし、前記レジスト層を除去することで支持基板そのものに直接微細凹凸構造を形成することも可能である。
また、陽極酸化ポーラスアルミナをモールドとして利用することも可能である。陽極酸化ポーラスアルミナとしては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化することにより形成される微細凹凸構造をモールドとして利用してもよい。以下に、陽極酸化ポーラスアルミナをモールドとして利用する場合の具体例を説明する。
(a)機械加工されたアルミニウム基材に電圧を印加し、前記アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)前記工程(a)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
(c)前記工程(b)または下記工程(d)の後、アルミニウム基材を陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)前記工程(c)の後、細孔の孔径を拡大する工程。
(e)前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
(f)酸化皮膜の一部を溶解し、モールド上にマーキング部を形成する工程。
工程(a)は、機械加工されたアルミニウム基材に電圧を印加し、前記アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する第一の酸化皮膜形成工程である。
工程(a)を行うと、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10の表面に複数の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
アルミニウム基材としては、機械加工されたものを用いる。
本発明において「機械加工」とは、アルミニウム基材の表面を物理的に切削または研磨して、電解研磨することなく鏡面化することである。なお、物理的な研磨には「テープ研磨」も含まれる。
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
図1に示すように、酸化皮膜14の少なくとも一部を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで細孔の規則性を向上することができる。
図1に示すように、酸化皮膜の少なくとも一部を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行うことにより、高い規則性を有する細孔を得ることができるが、陽極酸化の条件は種々に変更してもよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
図1に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液(エッチング液)に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
図1に示すように、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理とを繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド18が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
細孔12間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
細孔12間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔12間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔12のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
具体的には、例えば細孔間の平均間隔が100nmの場合は、細孔12の深さは80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。
ついで、図1に示すように、微細凹凸構造が形成された領域(転写部)に、マーキング部を形成する。マーキング部は、陽極酸化皮膜を溶解することのできるマーキング溶液と、陽極酸化皮膜とを所定時間接触させて酸化皮膜の一部を溶解することで微細凹凸構造の一部の凸部の高さを変化させ、その後マーキング溶液を洗浄等で除去することで形成される。
以上説明した本発明のモールドの製造方法にあっては、工程(f)において、成形体の表面に凸部および凹部を転写するため、相補的な寸法形状を有する凹部又は凸部が設けられた転写領域が形成され、この転写領域には、マーキング部が設けられ、このマーキング部は凹部の高さが転写領域の他の部分の凹部の高さと略同一であるが、凸部の高さが転写領域の他の部分の凸部の高さよりも低くなるように形成される。このモールドを用いれば、モールドの微細凹凸構造が転写された成形体の凹凸構造の凸部の高さは成形体の表面にわたって略同一であるが、マーキング部では凹凸構造の凹部の高さが他の凹部が形成された領域の凹部の高さよりも高くなった成形体を容易に製造することが可能となる。成形体の表面にわたって凹凸構造の頂部が略同一の高さであるために、成形体をロール状に巻き取った際にも、打痕などの欠陥が発生することが抑制される。また、成形体のマーキング部では凹部の高さが他の凹部が形成された領域の凹部の高さよりも高く、他の領域と光の反射率や透過率が異なるために、容易にマーキング部を識別することが可能となる。
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法は、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写する方法である。
透明基材としては、活性エネルギー線の照射を、該透明基材を介して行うため、活性エネルギー線の照射を著しく阻害しないものが好ましい。透明基材の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ガラス等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないため、短時間で微細凹凸構造を転写することができ、量産に好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の充填方法としては、モールドと透明基材の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給した後に圧延して充填する方法、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布したモールド上に透明基材をラミネートする方法、あらかじめ透明基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布してモールドにラミネートする方法等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
微細凹凸構造を表面に有する成形体は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
このようにして製造された成形体40は、図3に示すように、フィルム42(透明基材)の表面に硬化樹脂層44が形成されたものである。硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
本発明により得られた、微細凹凸構造を表面に有する成形体は、表面の微細凹凸構造によって、反射防止性能、撥水性能等の種々の性能を発揮する。
酸化皮膜が表面に形成されたモールドの一部を切り取って、表面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−6701F」)を用いて、加速電圧3.00kVで1万倍に拡大して観察した。細孔の平均間隔(ピッチ)は一直線上に並んだ6個の細孔の中心間距離を平均して求めた。
また、モールドの一部を異なる2箇所から切り取って、その縦断面に白金を1分間蒸着し、同じく電解放出型走査電子顕微鏡を用いて加速電圧3.00kVで観察した。各断面サンプルを5万倍に拡大して観察し、観察範囲で10個の細孔の深さを測定し、平均した。この測定を2点で行い、各観察点の平均値をさらに平均して細孔の平均深さを求めた。
成形体(フィルム)の表面および縦断面に白金を10分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−6701F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件で成形体の表面および断面を観察した。
粘度の測定には、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製 AR550)にて、60mmのコーンプレートを用いて、温度20℃、せん断速度を0.1〜1000(1/s)の範囲で測定を行い、せん断速度に対して粘度が変化しない値を本発明の粘度とした。
成形体を目視で観察し、マーキング部が容易に識別できる場合を○、注意しながら観察すると識別できる場合を△、識別が困難な場合を×とした。
(モールドの製造)
純度99.97質量%の塊状アルミニウムを直径200mm、幅320mmのロール状に切断し、表面を切削加工して鏡面化し、これをアルミニウム基材として用いた。基材の材質を表1に示す。なお、表中の「Al」はアルミニウムであり、「3N7」はアルミニウムの純度を表し、純度99.97質量%を意味する。
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で6時間陽極酸化を行った(工程(a))。
ついで、酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜を除去した(工程(b))。
ついで、該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で20秒間陽極酸化を行った(工程(c))。
ついで、酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った(工程(d))。
ついで、前記工程(c)および工程(d)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行い(工程(e))、平均間隔:100nm、深さ:220nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナを表面に形成した。
ついで、濃度85%(粘度47cP)のリン酸をベンコットンに染み込ませ、ゴム印をベンコットンに押しつけてリン酸を付けたゴム印を、陽極酸化アルミナの表面に押しつけて、マーキングを施した。20分間静置した後、マーキングを施した部位を水洗しリン酸を除去しマーキング部を形成し(工程(f))、ロール状モールドを得た。目視で確認したところ、マーキング部が形成されていることが確認された。
得られた金型を、オプツールDSX(ダイキン化成品販売社製)の0.1質量%希釈溶液に浸漬した後、一晩風乾して、離型剤で処理されたロール状の金型を得た。
離型処理したモールドと、透明基材であるアクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、「アクリプレン HBS010」)との間に、下記の組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填して、高圧水銀ランプで積算光量1000mJ/cm2の紫外線を照射することによって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。その後、モールドを剥離し、透明基材と硬化組成物の硬化物からなる成形体(フィルム)を得た。
このようにして製造した成形体の表面には微細凹凸構造が形成されており、突起の平均間隔(ピッチ)は100nm、突起の平均高さは約220nmであった。また、ロール状に成形体を巻き取ったが、巻きジワや打痕等は発生しなかった。
得られた成形体を目視で観察し、マーキング部の確認を行った。その結果を表1に示す。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製):25質量部、
ペンタエリスリトールトリアクリレート(第一工業製薬株式会社製):25質量部、
エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製):25質量部、
ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製):25質量部、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製):1質量部、
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製):0.5質量部、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸(日本ケミカルズ株式会社製):0.1質量部。
工程(f)において、ベンコットンにしみこませるリン酸の濃度、ゴム印を押しつけた後に静置する時間を表1の様にした以外は実施例1と同様に、成形体を製造し、目視で成形体を観察した。その結果を表1に示す。
工程(f)を行わなかった以外は、実施例1と同様に成形体を製造した。また、成形体の端部近傍に油性ペンでマークを施したが、エタノールで拭取ることによりマーキングが消えてしまった。
成形体にマーキングとしてヤスリでフィルム搬送方向に傷をつけた。この成形体をロール状に巻き取ると巻きシワになった。
工程(f)の代わりに、ヤスリでモールド表面に傷をつけた以外は、実施例1と同様に成形体を製造した。この成形体をロール状に巻き取ると巻きシワになった。
12 細孔
14 酸化皮膜
16 細孔発生点
18 モールド(型)
20 ロール状モールド
22 タンク
26 ニップロール
28 活性エネルギー線照射装置
30 剥離ロール
38 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
40 成形体
42 フィルム
44 硬化樹脂層
46 突起
Claims (8)
- 表面に周期が可視光の波長以下である複数の凸部と、隣接する該凸部の間に形成された複数の凹部とを有する型の製造方法であって、前記型の表面に、前記凸部および前記凹部を形成する凹凸形成工程と、前記凸部および前記凹部が形成された領域の一部分を、前記型を溶解する液体と接触させ、前記凸部の高さを前記凹凸形成工程で形成された凸部の高さよりも低くするマーキング工程とを有することを特徴とする、型の製造方法。
- 前記凹凸形成工程は、アルミニウム母材を陽極酸化し、前記アルミニウム母材の表面に微細凹構造を形成する陽極酸化処理、および前記微細凹構造をエッチング液と接触させ、前記微細凹構造の口径を拡大する拡大処理を含む、請求項1に記載の型の製造方法。
- 前記マーキング工程で用いられる液体と、前記拡大処理に用いられるエッチング液とが同一の組成であることを特徴とする、請求項2に記載の型の製造方法。
- 前記マーキング工程で用いられる液体と前記エッチング液とが、リン酸を含むことを特徴とする、請求項2に記載の型の製造方法。
- 前記マーキング工程で用いられる液体の、20℃における粘度が0.5〜5000cPであることを特徴とする、請求項1に記載の型の製造方法。
- 前記マーキング工程で用いられる液体の、20℃における粘度が1〜1500cPであることを特徴とする、請求項5に記載の型の製造方法。
- 前記マーキング工程は、前記液体が付着された部材と前記型とを接触させるものである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の型の製造方法。
- 請求項1に記載の方法により製造された、表面に微細凹凸構造を有するロール状モールドの表面の微細凹凸構造を、ロール状モールドの回転に同期してロール状モールドの表面の一部に沿って移動する帯状のフィルム本体の表面に転写して微細凹凸構造を表面に有するフィルムを得、前記フィルムを巻取りロールで巻取ることを特徴とする、微細凹凸構造を表面に有するフィルムの製造装置。
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