JP6252902B2 - 生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法 - Google Patents

生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6252902B2
JP6252902B2 JP2014007118A JP2014007118A JP6252902B2 JP 6252902 B2 JP6252902 B2 JP 6252902B2 JP 2014007118 A JP2014007118 A JP 2014007118A JP 2014007118 A JP2014007118 A JP 2014007118A JP 6252902 B2 JP6252902 B2 JP 6252902B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strain
tarda
fishes
live
thai
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014007118A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015134734A (ja
Inventor
彩奈 村上
彩奈 村上
耕平 福田
耕平 福田
良子 高野
良子 高野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyoritsu Seiyaku Corp
Original Assignee
Kyoritsu Seiyaku Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyoritsu Seiyaku Corp filed Critical Kyoritsu Seiyaku Corp
Priority to JP2014007118A priority Critical patent/JP6252902B2/ja
Publication of JP2015134734A publication Critical patent/JP2015134734A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6252902B2 publication Critical patent/JP6252902B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A40/00Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production
    • Y02A40/80Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production in fisheries management
    • Y02A40/81Aquaculture, e.g. of fish

Landscapes

  • Farming Of Fish And Shellfish (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)

Description

本発明は、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対するワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法などに関連する。より詳細には、Edwardsiella tarda定型株の生菌を含有する生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法などに関連する。
タイ科魚類は、スズキ目スズキ亜目に属し、マダイ、チダイ、クロダイなどを含む。アジ科魚類は、同じくスズキ目スズキ亜目に属し、ブリ属のブリ、ヒラマサ、カンパチや、マアジ属のマアジなどを含む。
タイ科魚類やアジ科魚類には、食用として利用されているものが多く、また、養殖が実用化されているものも多い。特に、ブリ類やマダイは生産量も高く、養殖が広く普及している。
一般に、魚類の養殖では、比較的狭い領域で多くの魚を飼育するため、感染症が発生・流行しやすい。養殖過程で感染症が流行すると、経済的に多大な被害を生むことがある。そのため、感染症発生予防の観点から、各疾患に対し、ワクチンの開発が試みられており、実用化されているものも多い。
Edwardsiella tarda(学名、以下同じ)は、腸内細菌科Edwardsiella属に分類される細菌である。E. tardaの宿主域は広く、魚類のほか、無脊椎動物、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類などでも分離報告がある。
E. tardaは、定型株(wild-type)と非定型株(biogroup 1)に大きく分類される。定型株は、運動性を有し、マンニトール、アラビノース、サッカロースを発酵しない株であり、ウナギ、ヒラメ、ナマズ、ティラピア、ターボット、ストライプドバス、マスノスケ、ヒトなどで分離例がある。非定型株は、運動性がなく、マンニトール、アラビノース、サッカロースを発酵する株であり、ティラピア、マダイ、チダイで分離例がある。なお、定型株と非定型株の両方で分離例があるのは、ティラピアのみである。
E. tardaによって引き起こされる魚類の細菌感染症は、エドワジエラ症と呼ばれる。例えば、ヒラメのエドワジエラ症では、定型株が分離され、摂食不良、体色黒化、腹部膨満、脱腸、腹水貯留などの症状を呈し、ウナギのエドワジエラ症(パラコロ病)では、同じく定型株が分離され、腎臓後部に膿瘍病巣が形成され、肛門の拡大突出、その周囲の発赤腫脹などの症状を呈する。一方、マダイのエドワジエラ症では、非定型株が分離され、緩慢遊泳、体表や鰾腔内の潰瘍形成などの症状を呈する。
魚類のエドワジエラ症に対するワクチンの研究は、ヒラメ用のものを中心に広く行われており、現時点で、ヒラメ用の不活化ワクチンが実用化されているが、マダイ用のワクチンは実用化されていない。魚類のエドワジエラ症に対する生ワクチンとして、例えば、非特許文献1には、ティラピアに対して病原性を示す定型変異株を用いてティラピアを免疫した例が、非特許文献2には、ヒト由来の標準株を用いてヒラメを免疫した例が、非特許文献3には、ウナギから分離された株を用いてヒラメを免疫した例が、それぞれ開示されている。また、マダイに対する不活化ワクチンとして、非特許文献4には、マダイ由来株の不活化菌液で腹腔内注射免疫を行った後、ホモ株で腹腔内注射攻撃を行った結果、ワクチン効果が認められたことが報告されている。その他、特許文献1には、定型株の不活化菌体を含有する、非定型株によるエドワジエラ症に対する不活化ワクチン、若しくは非定型株の不活化菌体を含有する、定型株によるエドワジエラ症に対する不活化ワクチンが、特許文献2には、投与対象の魚種には病原性を示さないE. tarda由来の抗原を含有する、E. tardaに起因する魚類感染症に対する不活化ワクチンが、それぞれ開示されている。
特許第4892296号公報 特開2007-238505号公報 Arisa Igarashi and Takaji Iida, "A Vaccination Trial Using Live Cells of Edwardsiella tarda in Tilapia"; Fish pathology, 37(3),145-148,2002.9 Shuang Cheng, Yong-hua Hu, Min Zhang and Li Sun, "Analysis of the vaccine potential of a natural avirulent Edwardsiella tarda isolate"; Vaccine 28(2010)2716-2721 Tomokazu Takano, Tomomasa Matsuyama, Norihisa Oseko, Takamitsu Sakai, Takashi Kamaishi, Chihaya Nakayasu, Motohiko Sano and Takaji Iida, "The efficacy of five avirulent Edwardsiella tarda strains in a live vaccine against Edwardsiellosis in Japanese flounder, Paralichtyhs olivaceus"; Fish & Shellfish Immunology Tomokazu Takano, Tomomasa Matsuyama, Takamitsu Sakai and Chihaya Nakayasu, "Protective Efficacy of a Formalin-Killed Vaccine against Atypical Edwardsiella tarda Infection in Red Sea Bream Pagrus major" ; Fish pathology, 46(4),120-122,2011.12
本発明は、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対する有効な予防手段を提供することなどを目的とする。
本発明者らは、Edwardsiella tarda定型株、即ち、ウナギ、ヒラメなど、タイ科魚類又はアジ科魚類以外の魚類由来のE. tardaの生菌が、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性であり、かつ強い免疫原性を有することを実証するとともに、E. tarda定型株の生菌を弱毒化又は不活化せずにタイ科魚類又はアジ科魚類に接種することにより、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症を有効に予防できることを新規に見出した。
そこで、本発明は、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対するワクチン製剤であって、Edwardsiella tarda定型株の生菌を含有する生ワクチン製剤を提供する。
E. tarda定型株の生菌は、ウナギ、ヒラメなど、タイ科魚類又はアジ科魚類以外の魚類では強い病原性を示す。一方、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性であり、かつタイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対する強い免疫原性を有する。従って、E. tarda定型株の生菌は、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対する生ワクチンとして有効であり、かつ弱毒化又は不活化せずにワクチンとして適用可能である。
本発明では、E. tarda定型株の生菌を弱毒化又は不活化せずに適用できるため、製剤の製造・調製を簡易かつ低コストで行うことができる。また、生ワクチンとして適用できるため、ワクチンとしての効果が高く、また、少量の接種で免疫することができる。
なお、本発明は、例えば、種苗生産施設など、自然環境中の海域から隔離された区域内で適用する製剤として用いることにより、海域がこの生菌で汚染される懸念を解消でき、自然環境中に存在するタイ科魚類又はアジ科魚類以外の魚類がこの生菌に感染する危険性を抑止できる。
本発明により、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症を有効に予防できる。
<本発明に係る生ワクチン製剤について>
本発明に係る生ワクチン製剤は、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対するワクチン製剤であって、E. tarda定型株の生菌を含有するものをすべて包含する。
上記の通り、E. tarda定型株(wild-type)は、運動性を有し、マンニトール、アラビノース、サッカロースを発酵しない株であり、ウナギ、ヒラメ、ナマズ、ティラピア、ターボット、ストライプドバス、マスノスケ、ヒトなどのエドワジエラ症罹患個体より分離できる。本発明は、E. tarda定型株の生菌が、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性であり、かつタイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対して免疫原性を有するものを広く適用できる。
例えば、E. tarda株のゲノムのうち繊毛遺伝子群上流域の配列に、配列番号1に記載された配列、又は、該配列と好適には92%以上、より好適には95%以上、最も好適には97%以上の相同性を有する配列を含む株は、本発明で用いるE. tarda定型株の生菌に適している。
即ち、E. tarda株のゲノムのうちの繊毛遺伝子群上流域の配列では、定型株(wild-type)と非定型株(biogroup 1)とで相違がみられるため、例えば、候補株のゲノムの繊毛遺伝子群上流域の一部配列と、配列番号1に記載された配列との相同性に基づいて、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性である株を適切に選択できる。
また、菌体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号2及び配列番号3のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅し、配列番号4及び配列番号5のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅しない株は、本発明で用いるE. tarda定型株の生菌に適している。
配列番号2及び配列番号3のプライマーを用いてPCRを行っても繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅しない場合は、E. tardaの定型株と非定型株のいずれにも該当しないため、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対する免疫原性が低い可能性がある。一方、配列番号4及び配列番号5のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅しない場合は、E. tardaの非定型株に該当する可能性があるため、タイ科魚類又はアジ科魚類に対する病原性が高い可能性がある。従って、配列番号2〜5のプライマーを用いてPCRを行うことにより、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して免疫原性を有し、かつ低病原性又は非病原性である株を適切に選択できる。
本発明では、弱毒化又は不活化したE. tarda定型株の菌体を用いることも可能であるが、E. tarda定型株の生菌を含有させたものが最も好適である。E. tarda定型株の生菌を含有することにより、弱毒株の樹立、製剤の製造・調製など、弱毒化又は不活化する際に生じる労力を低減でき、不活化剤などの薬剤のコストを低減できる。また、弱毒化又は不活化による免疫原性の低下を防止でき、ワクチンとしての効果を高く、若しくは接種量を少なくできる。その他、不活化処理の際に用いる薬剤が魚体へ残留する懸念を排除できる。
タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性であり、かつタイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対して免疫原性を有するE. tarda定型株として、例えば、Edwardsiella tarda HET-1株 (受託番号NITE BP-01759、寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター、所在地:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、受託日:2013年11月28日、日本において採取された菌株)を用いてもよい。
HET-1株の形態的性状としては、通常のE. tarda定型株の形態と一致し、グラム陰性通性嫌気性桿菌の形状を示す。周毛性鞭毛を持ち、運動性を有し、芽胞形成はない。培養的性質としては、SS寒天培地、DHL寒天培地などで硫化水素により中心部が黒色の菌集落を形成する。また、乳糖を分解しないため、マッコンキー培地で無色のコロニーを形成する。至適培養温度は25〜30℃である。
HET-1株の生化学的性状を以下に示す。
(1)グラム染色性:グラム陰性
(2)カタラーゼ:+
(3)チトクロームオキシダーゼ:−
(4)ブドウ糖分解性:発酵
(5)TSI斜面培地による糖発酵性:斜面で乳糖及び白糖のどちらも分解せず、高層でブドウ糖発酵及びガス産生、硫化水素産生あり。
(6)β-ガラクトシダーゼ活性:−
(7)アルギニンジヒドロラーゼ:−
(8)リジンデカルボキシラーゼ:+
(9)オルニチンデカルボキシラーゼ:+
(10)クエン酸利用性:−
(11)硫化水素産生:+
(12)ウレアーゼ:−
(13)トリプトファンデアミナーゼ:−
(14)インドール産生:+
(15)アセトイン産生:−
(16)ゼラチナーゼ:−
(17)グルコースの利用:+
(18)マンニトールの利用:−
(19)イソシトール1の利用:−
(20)ソルビトールの利用:−
(21)ラムノースの利用:−
(22)サッカロースの利用:−
(23)メリビオースの利用:−
(24)アミグダリンの利用:−
(25)アラビノースの利用:−
(26)二酸化窒素の産生:+
(27)窒素ガスへの還元:−
(28)マッコンキー培地での発育:+
本発明に係る生ワクチン製剤では、目的・用途などに応じて、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、抗菌剤、抗酸化剤などを適宜添加してもよい。
緩衝剤の好適な例として、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液などを用いることができる。
等張化剤の好適な例として、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどを用いることができる。
防腐を目的とした薬剤の好適な例として、例えば、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、その他、各種防腐剤、抗生物質、合成抗菌剤などを用いることができる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などを用いることができる。
その他、この薬剤には、補助成分、例えば、保存・効能の助剤となる光吸収色素(リボフラビン、アデニン、アデノシンなど)、安定化のためのキレート剤・還元剤(ビタミンC、クエン酸など)、炭水化物(ソルビトール、ラクトース、マンニトール、デンプン、シュークロース、グルコース、デキストランなど)、カゼイン消化物、各種ビタミンなどを含有させてもよい。
ワクチン製剤の剤型などについては、公知のものを採用でき、特に限定されない。例えば、液体製剤として用いてもよいし、凍結乾燥などの処置の後、餌などに混入させて経口投与したり、凍結乾燥したものを使用時に水を加えて溶解し、浸漬法・注射法・経口法・スプレー法・経肛門法などにより接種したりしてもよい。
<本発明に係るエドワジエラ症予防方法について>
本発明は、上述の生ワクチン製剤をタイ科魚類又はアジ科魚類に接種する手順を少なくとも含む、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症予防方法をすべて包含する。
上述の通り、本発明に係る生ワクチン製剤は、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性であり、かつ強い免疫原性を有するため、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症の予防に有効である。
適用対象には、E. tarda非定型株(biogroup 1)感受性の魚類、即ち、E. tarda非定型株に感染することによりエドワジエラ症を発症する魚類がすべて包含される。例えば、マダイ、チダイ、クロダイなどのタイ科魚類、ブリ属魚類(ブリ、カンパチ、ヒラマサなど)、マアジ属魚類(マアジなど)などのアジ科魚類などが適用対象に包含される。
本発明に係る生ワクチン製剤の接種方法として、例えば、注射法、浸漬法、経口法、スプレー法、経肛門法などが挙げられる。
注射法、経口法、スプレー法、又は経肛門法による場合、例えば、注射法、経口法、スプレー法、又は経肛門法により、一回当たり、101〜107CFU/尾を投与することが好適であり、103〜106CFU/尾を投与することがより好適であり、103〜105CFU/尾を投与することがもっとも好適である。
浸漬法による場合、例えば、浸漬法により、一回当たり、103〜108CFU/mLのワクチン液に浸漬することが好適であり、103〜107CFU/mLのワクチン液に浸漬することがより好適であり、103〜106CFU/mLのワクチン液に浸漬することがもっとも好適である(使用時の濃度)。浸漬する時間については、例えば、1〜120分間浸漬することが好適であり、1〜90分間浸漬することがより好適であり、1〜60分間浸漬することが最も好適である。
このうち、注射法による腹腔内投与が、感染予防効果が高く、免疫持続期間が長いため、最も好適である。
ワクチン製剤の接種回数は、その作用が持続する限り1回でよいが、対象魚類の大きさ、ワクチン効果の度合いなどに応じて、1〜60日間隔で複数回接種してもよい。その他、複数の接種方法を適宜組み合わせて、対象魚類にワクチン製剤を接種してもよい。
本発明は、例えば、種苗生産施設など、自然環境中の海域から隔離された区域内で適用してもよい。これにより、海域がこの生菌で汚染される懸念を解消でき、自然環境中に存在するタイ科魚類又はアジ科魚類以外の魚類がこの生菌に感染する危険性を抑止できる。
実施例1では、ヒラメ由来のE. tarda(定型株)のマダイに対する病原性を検討した。
マダイ(n=25〜27)に、ヒラメから分離されたE. tardaの定型株(HET-1株を含む計7株)を、104〜105CFU/尾、腹腔内注射投与した。その結果、いずれの株を投与した場合でも、感染の13日後において、ほとんど死亡例は観察されなかった。
また、マダイ(n=25〜27)に、ヒラメから分離されたE. tardaの定型株(HET-1株を含む計7株)を、105〜106CFU/mLの濃度で浸漬感染させた。その結果、腹腔内注射投与の場合と同様、いずれの株を感染させた場合でも、感染の14日後において、ほとんど死亡例は観察されなかった。
その他、マダイ(n=25〜27)に、ヒラメから分離されたE. tardaの定型株(HET-1株を含む計7株)を、106〜107CFU/尾と高用量で腹腔内注射投与した。その結果、いずれの株を投与した場合においても、感染の9日後において、累積死亡率が80〜100%であった。死亡した個体のほとんどは投与後2日以内に死亡した。
このように、104〜105CFU/尾の用量での腹腔内注射投与、若しくは105〜106CFU/mLの濃度での浸漬感染では、ほとんど死亡例は観察されなかった。また、高用量での腹腔内注射投与についても、ほとんどが投与後2日以内に死亡しているため、大量の菌体が体内に投与されたことによる敗血症性ショック死であると推測される。従って、これらの結果は、ヒラメ由来の定型株のE. tardaが、マダイに対しては低病原性であることを示唆する。
実施例2では、マダイに対して低病原性であるヒラメ由来E. tardaが、マダイのエドワジエラ症に対し、ワクチンとしての効果を有するか検討した。
マダイ(n=20)に、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株の生菌を1.1×104CFU/尾、筋肉内注射投与し、免疫した。また、比較例として、マダイ(n=20)に、マダイから分離されたE. tardaのUT-1株の不活化菌液を5.5×108CFU/尾、筋肉内注射投与し、免疫した。その他、無投与群として、マダイ(n=20)を準備した。
免疫から14日後、マダイ由来E. tardaのETE1005株を4.4×104CFU/尾、各個体に腹腔内注射投与し、攻撃した。
マダイ由来E. tardaで攻撃した日から30日間観察を続け、生残率を求めた。
結果を図1に示す。図1は、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株で免疫した後、マダイ由来E. tarda株で腹腔内注射攻撃した場合における生残率を示すグラフである。図中、横軸はマダイ由来E. tarda株で攻撃した日からの日数を、縦軸は生残率(%)を、それぞれ表す。図中、「HET-1(生)」はヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株の生菌で免疫した場合の結果を、「UT-1(不活化)」はマダイから分離されたE. tardaのUT-1株のホルマリン不活化菌液で免疫した場合の結果を、「対照群」は無投与群(免疫していない群)の結果を、それぞれ表す。なお、図1の結果では、各群相互において、Fisher直接確率計算法の片側検定(p<0.025)による統計学的有意差が認められた。
図1に示す通り、無投与群ではマダイ由来E. tardaによる攻撃に対する生残率が0%であったのに対し、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株で免疫した群では、生残率が65.0%であり、高い免疫効果が認められた。また、マダイ由来E. tarda株の不活化菌液で免疫した場合と比較しても、少量で顕著に高い免疫効果が認められた。
この結果は、ヒラメから分離されたE. tarda株の生菌が、マダイのエドワジエラ症の予防に有効であることを示す。
実施例3では、ヒラメから分離されたE. tarda株で免疫した場合において、浸漬攻撃を行った場合における生残率を調べた。
マダイ(n=23)に、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株の生菌を8.8×103CFU/尾、筋肉内注射投与し、免疫した。また、無投与群のマダイ(n=26)を別に準備した。
免疫から14日後、マダイ由来E. tardaのETE1005株を2.6×105CFU/mL又は2.6×106CFU/mLの濃度に調製し、そこにマダイを浸漬させて攻撃した。
マダイ由来E. tardaで攻撃した日から30日間観察を続け、生残率を求めた。
結果を図2A及び図2Bに示す。図2Aはヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株で免疫した後、2.6×105CFU/mLの濃度で浸漬攻撃した場合における生残率を示すグラフ、図2Bは、同じく2.6×106CFU/mLの濃度で浸漬攻撃した場合における生残率を示すグラフである。図中、横軸はマダイ由来E. tarda株で攻撃した日からの日数を、縦軸は生残率(%)を、それぞれ表す。図中、「HET-1(生)」はヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株で免疫した場合の結果を、「対照群」は無投与群(免疫していない群)の結果を、それぞれ表す。なお、図2A及び図2Bの結果では、各群相互において、Fisher直接確率計算法の片側検定(p<0.025)による統計学的有意差が認められた。
図2A及び図2Bに示す通り、マダイ由来E. tarda株による浸漬攻撃を行った場合でも、ヒラメから分離されたE. tarda株で免疫した群では、無投与群と比較して顕著に生残率が高かった。
一般に、浸漬攻撃は、通常の養殖環境で感染する場合と同等の条件で攻撃を試験することができるとともに、ワクチンとしての効果が高くないと良好な結果が得られない。それに対し、本実施例では、浸漬攻撃を行った場合でも、顕著に生残率が高かった。この結果は、ヒラメから分離されたE. tarda株が、マダイのエドワジエラ症用の生ワクチンとして高い効力を有することを示す。
実施例4では、ヒラメ由来E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域の塩基配列を決定した。
ヒラメ由来E. tarda株であるHET-1株をSCDb寒天培地に接種し、28℃で20時間培養した。1.5mLチューブに超純水1mLを入れ、寒天培地から供試菌株を1コロニー釣菌してその中に入れ、懸濁し、遠心処理後、上清を除去した。「InstaGene Matrix(BioRad社製)」を200μL加え、56℃で15分間加熱し、激しく混合し、100℃で8分間加熱し、激しく混合した後、遠心分離により集菌し、上清をDNA含有液として回収した。
そのDNA含有液を鋳型とし、プライマーとして配列番号2の配列(フォワード)及び配列番号3(リバース)の配列を用いて、PCRにより、E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域の配列を増幅した。「MinElute PCR Purification Kit(Qiagen社製)」を用いてそのPCR産物を精製し、「TOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen社製)」を用いてTAクローニングを行った。PCR産物のインサートが確認されたコロニーを再度釣菌し、LB液体培地5mLに接種し、37℃で16時間振とう培養した後、「QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen社製)」を用いて培養菌液からプラスミドDNAを抽出した。抽出したプラスミドDNAについて、サイクルシーケンス法により、増幅部分(E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域)の塩基配列を決定した。
ヒラメ由来E. tarda株であるHET-1株の繊毛遺伝子群上流域の塩基配列を配列番号1に示す。HET-1株の繊毛遺伝子群上流域の塩基配列は、既知のヒラメ由来E. tarda株の当該領域の塩基配列と100%一致した。一方、マダイ由来E. tarda株であるUT-1株の当該領域の塩基配列と比較した結果、相同性は91.4%(775/848bp)であった。
実施例5では、ヒラメ由来E. tarda株のDNAを鋳型にし、マダイ由来E. tarda株特異的プライマーを用いてPCRを行った場合に、増幅が見られるか検討した。
ヒラメ由来E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域の塩基配列を含むDNAとして、実施例4で調製したHET-1株由来のプラスミドDNAを鋳型とし、プライマーとして配列番号4の配列(フォワード)及び配列番号5(リバース)の配列を用いて、PCRにより、E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域の配列の増幅を試みた。同時に、陽性対照として、マダイ由来E. tarda株であるUT-1株の繊毛遺伝子群上流域の塩基配列を含むDNAを実施例4と同じ方法で調製し、そのDNAを鋳型として、同じプライマーを用いて、PCRにより、E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域の配列を増幅した。両PCR産物をアガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイド染色し、E. tarda株の繊毛遺伝子群上流域の配列の増幅の有無を検出した。
その結果、配列番号4及び配列番号5のプライマーを用いてPCRを行った場合、陽性対照であるUT-1株の繊毛遺伝子群上流域の増幅は検出されたのに対し、HET-1株の繊毛遺伝子群上流域の増幅は検出されなかった。
この結果は、マダイに対する病原性が低く、かつ免疫原性が高いE. tarda株が、配列番号2及び配列番号3のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅し、配列番号4及び配列番号5のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅しないものであること、即ち、配列番号2及び配列番号3のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅し、配列番号4及び配列番号5のプライマーを用いてPCRを行うと繊毛遺伝子群上流域の配列が増幅しないE. tarda株が、マダイのエドワジエラ症に対する生ワクチンに適用可能であることを示唆する。
実施例2において、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株の生菌で免疫した後、マダイ由来E. tarda株で腹腔内注射攻撃した場合における生残率を示すグラフ。 実施例3において、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株の生菌で免疫した後、2.6×105CFU/mLの濃度で浸漬攻撃した場合における生残率を示すグラフ。 実施例3において、ヒラメから分離されたE. tardaのHET-1株の生菌で免疫した後、2.6×106CFU/mLの濃度で浸漬攻撃した場合における生残率を示すグラフ。

Claims (6)

  1. タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症に対するワクチン製剤であって、
    Edwardsiella tarda定型株の生菌を含有する生ワクチン製剤。
  2. 前記Edwardsiella tarda定型株の生菌が、タイ科魚類又はアジ科魚類に対して低病原性又は非病原性である請求項1記載の生ワクチン製剤。
  3. 前記Edwardsiella tarda株のゲノムのうち繊毛遺伝子群上流域の配列に、配列番号1に記載された配列又は該配列と92%以上の相同性を有する配列を含む請求項1又は請求項2記載の生ワクチン製剤。
  4. 前記Edwardsiella tarda定型株が、Edwardsiella tarda HET-1株(受託番号NITE BP-01759)である請求項1〜3のいずれか一項記載の生ワクチン製剤。
  5. 注射法、経口法、スプレー法、又は経肛門法により、一回当たり、101〜107CFU/尾を投与するか、若しくは浸漬法により、一回当たり、103〜108CFU/mLのワクチン液に1〜120分間浸漬する請求項1〜4のいずれか一項記載の生ワクチン製剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項記載の生ワクチン製剤をタイ科魚類又はアジ科魚類に接種する、タイ科魚類又はアジ科魚類のエドワジエラ症予防方法。
JP2014007118A 2014-01-17 2014-01-17 生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法 Active JP6252902B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014007118A JP6252902B2 (ja) 2014-01-17 2014-01-17 生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014007118A JP6252902B2 (ja) 2014-01-17 2014-01-17 生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015134734A JP2015134734A (ja) 2015-07-27
JP6252902B2 true JP6252902B2 (ja) 2017-12-27

Family

ID=53766886

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014007118A Active JP6252902B2 (ja) 2014-01-17 2014-01-17 生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6252902B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4905649B2 (ja) * 2006-03-08 2012-03-28 国立大学法人 長崎大学 魚用ワクチン、その製造方法、および魚類感染症の予防方法
JP4892296B2 (ja) * 2006-08-24 2012-03-07 川崎製薬株式会社 魚類のエドワジェラ症及び連鎖球菌症用ワクチン

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015134734A (ja) 2015-07-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0555366B1 (en) Bacterial attenuation method and vaccine
CN1360594A (zh) 用于治疗感染的减毒微生物
CN102271693B (zh) 保护动物对抗由属于诺卡氏菌型放线菌组的细菌感染引起的疾病的药物组合物
CN102140430A (zh) 一种不含抗性标记的鼠伤寒沙门氏菌基因缺失突变菌株、疫苗及应用
CN106906141B (zh) 一种嗜水气单胞菌活菌疫苗菌株的筛选方法
EP2424974B1 (en) Mutants of francisella tularensis and uses thereof
KAPPERUD ENTEROTOXIN PRODUCTION AT 4°, 22°, AND 37° C AMONG YERSINIA ENTEROCOLITICA AND Y. ENTEROCOLITICA‐LIKE BACTERIA
Joh et al. Characterization of Yersinia ruckeri isolated from the farm-cultured eel Anguilla japonica in Korea
JP6252902B2 (ja) 生ワクチン製剤、並びにエドワジエラ症予防方法
JP4716542B2 (ja) ワクチンに使用するための生きた弱毒細菌
Marshall et al. Vaccination against piscirickettsiosis
CN101962625A (zh) 一种不含抗性标记的猪霍乱沙门氏菌基因缺失突变菌株及其疫苗
KR101717281B1 (ko) 스쿠티카증에 대한 어류 복합 백신 조성물
WO2016193161A1 (en) Multivalent immunogenic composition for inducing an immune response against yersinia species
JP4705573B2 (ja) 弱毒細菌生ワクチン
WO2024171316A1 (ja) 不活化ワクチン製剤、並びに感染症予防方法
KR101976764B1 (ko) 활주세균의 병원성 약독화 기술 및 활주세균병 예방을 위한 생약독화 백신 조성물
KR101992455B1 (ko) 활주세균의 병원성 약독화 기술 및 활주세균병 예방을 위한 생약독화 백신 조성물
CN117305191B (zh) 一株大菱鲆来源的耐药杀鱼爱德华氏菌
Kutu Biochemical and genetic characterization of bacteria isolated from diseased rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) farmed in Lesotho and Mpumalanga province of South Africa
CN104919036A (zh) 迟钝爱德华氏菌突变株及其应用
JP2023080057A (ja) 不活化ワクチン製剤、並びに感染症予防方法
KR101774863B1 (ko) 살모넬라증 치료를 위한 변이 균주 hid2092와 hid2114 및 이를 포함하는 살모넬라증 약제학적 조성물
KR100436740B1 (ko) 살모넬라 갈리나룸 약독주 및 이를 포함하는 가금티푸스예방용 백신 조성물
CN114854654A (zh) 一种肠炎沙门氏菌活疫苗

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171031

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171116

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6252902

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250