JP2023080057A - 不活化ワクチン製剤、並びに感染症予防方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なラクトコッカス・ガルビエを分離・同定するとともに、その菌を起因菌とする疾患に対する有効な予防手段を提供する。【解決手段】生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤などを提供する。ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンでは予防できない新型のレンサ球菌症に対し、その発生・伝播・蔓延を有効に予防できる可能性がある。【選択図】図4

Description

本発明は、新血清型のラクトコッカス・ガルビエ(学名「Lactococcus garvieae」、以下同じ)を起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤、魚類レンサ球菌症の予防方法、不活化ワクチン製剤製造方法などに関連する。より詳細には、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチン製剤、魚類レンサ球菌症の予防方法、不活化ワクチン製剤製造方法などに関連する。
魚類のレンサ球菌症は、特に養殖魚などにおいて、発生頻度が高く、経済的損失も大きい疾病の一つである。魚類のレンサ球菌症には、主に、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とするα溶血性レンサ球菌症と、ストレプトコッカス・イニエ(学名「Streptococcus iniae」)を起因菌とするβ溶血性レンサ球菌症などがある。
このうち、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症は、ブリ・カンパチ・ヒラマサなどのブリ属魚類などに多く発生しており、マダイ・チダイ・シマアジなどの海水魚、ウナギ、ニジマスなどでも発症する。ブリ属魚類などにおいては、眼球白濁・突出、躯幹の変形、鰓蓋内側の発赤、心外膜炎、狂奔遊泳などの症状を示し、水温の高い季節の前後に被害が大きい。
従来、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とするレンサ球菌症が養殖現場などで発生した際には、一週間以上の絶食による流行の鎮静化や、エリスロマイシンなどの抗生物質による治療などが行われてきた。しかし、特に抗生物質の使用については、薬剤耐性菌の出現や食品などへの残留への懸念などの問題が残る。そこで、近年、同疾患の予防対策として、ワクチンの開発が進められ、既に上市されている。
現在、魚類を対象としたラクトコッカス・ガルビエに対するワクチン製剤として、例えば、ホルマリンにより不活化した不活化ワクチン、ホルマリンで不活化したものを濃縮した不活化ワクチン、培養菌液を酵素処理した後ホルマリンで不活化した不活化ワクチンなどの単味ワクチン製剤、二種混合ワクチン製剤、三種混合ワクチン製剤などが用いられている。
従来、ラクトコッカス・ガルビエには、KG-型及びKG+型の2つの血清型が知られていた。KG-型は、抗KG-型血清による凝集反応がおこり、抗KG+型血清による凝集反応がおこらない株であり、夾膜を有し、病原性の高い型である。一方、KG+型は、抗KG-型血清と抗KG+型血清の両者による凝集反応がおきる株であり、夾膜がなく、KG-型よりも病原性の低い型である(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
ところが、近年、診断用の抗KG-型血清に凝集しない、血清型が非KG-型・非KG+型の株が養殖魚などから分離されるようになり(特許文献1参照)、ブリ類魚類養殖場などでその感染症が拡大して問題となった。そこで、現在、従来の診断用抗血清に凝集するラクトコッカス・ガルビエをI型、非凝集性の株をII型と分類している(非特許文献3参照)。即ち、I型は、従前のKG-型の株及びKG+型の株のことであり、II型は、近年発生した非KG-型・非KG+型の株のことである。II型は、従来の診断用抗血清(抗KG-型血清)に対して非凝集性であることに加え、II型の菌株で作製された抗血清に対して凝集性を有することによって診断される。
ラクトコッカス・ガルビエに関する魚類のワクチンとして、例えば、特許文献1には、非KG-型・非KG+型のラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有するワクチン製剤が、特許文献2には、莢膜が極薄いか若しくは莢膜を有しないことを特徴とするラクトコッカス・ガルビエに属する菌株を不活化させた菌体を含有する魚類の腸球菌症用ワクチンが、特許文献3には、新規株を利用した魚類のレンサ球菌症を予防治療するためのワクチンが、それぞれ開示されている。その他、非特許文献4には、PCR法を用いたI型とII型の判別方法が記載されている。
特許第6355512号 特開平11-332558号公報 特開2001-103961号公報 Yoshida, T., Eshima, T., Wada, Y., Yamada, Y., Kakizaki, E., Sakai, M., Kitao, T. and Inglis, V. (1996) "Phenotypic variation associated with an anti-phagocytic factor in the bacterial fish pathogen Enterococcus seriolicida." Dis Aquat Organ 25, 81-86. M. Kawanishi, T. Yoshida, M. Kijima, K. Yagyu, T. Nakai, S. Okada, A. Endo, M.Murakami, S.Suzuki and H.Morita; "Characterization of Lactococcus garvieae isolated from radish and broccoli sprouts that exhibited a KG+ phenotype, lack of virulence and absence of a capsule"; Letters in Applied Microbiology 44 (2007) 481-487. 吉田照豊, "レンサ球菌感染症およびラクトコッカス感染症"; Fish Pathology, 51(2), 44-48, 2016.6 Ohbayashi, K., Oinaka, D., Hoai, T.D., Yoshida, T. and Nishiki, I.; "PCR-mediated Identification of the Newly Emerging Pathogen Lactococcus garvieae Serotype II from Seriola quinqueradiata and S.dumerili; Fish Pathology, 52(1), 46-49, 2017.3
本発明は、新規なラクトコッカス・ガルビエを分離・同定するとともに、その菌を起因菌とする疾患に対する有効な予防手段を提供することなどを目的とする。
本発明者らは、日本国静岡県及び宮崎県の養殖現場において、ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンを投与したにもかかわらずαレンサ球菌症の発症が疑われたシマアジ、カンパチ、ブリより新規なラクトコッカス・ガルビエの菌株を独自に分離し、その菌株が、既知の血清型(I型及びII型)とは異なるものであることを新規に見い出した。そして、その菌株が生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性である株であることを同定することに成功するとともに、その新型レンサ球菌症に対する不活化ワクチンの開発に成功し、その有効性を実証した。
そこで、本発明では、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤などを提供する。
例えば、この不活化ワクチン製剤を魚類に投与などすることにより、血清型が既知のI型とII型のいずれにも分類されないラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症、即ち、ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンでは予防できない新型のレンサ球菌症に対し、その発生・伝播・蔓延を有効に予防できる可能性がある。
また、例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチンと、血清型がI型(KG-型及び/又はKG+型)及び/又はII型(非KG-型・非KG+型)のラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチンと、を含有する混合不活化ワクチン製剤を魚類に投与することにより、既知のレンサ球菌症及び既知のものとは異なる新型のレンサ球菌症の両者を同時に有効に予防できる可能性がある。
本発明により、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対し、その発生・伝播・蔓延を予防できる。
<ラクトコッカス・ガルビエLG21S株及びLG21M株について>
本発明者らは、日本国静岡県と宮崎県の養殖現場において、ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンを投与したにもかかわらずαレンサ球菌症の発症が疑われたシマアジ又はカンパチより、新規なラクトコッカス・ガルビエの菌株計8株を独自に分離し、その菌株が生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性である株であることを同定することに成功した。この分離・同定した菌株のうち、静岡県の養殖シマアジから分離された株のうちの一つをラクトコッカス・ガルビエLG21S株(Lactococcus garvieae LG21S)と、宮崎県の養殖カンパチから分離された株をラクトコッカス・ガルビエLG21M株(Lactococcus garvieae LG21M)と、それぞれ命名した。
LG21S株及びLG21M株の形態的性状としては、通常のラクトコッカス・ガルビエの形態と一致し、通性嫌気性のグラム陽性レンサ球菌の形状を示す。運動性、芽胞形成はない。培養的性質としては、一般的に用いられる肉エキス寒天平板培地、カゼイン・ダイズ混合ペプトン寒天平板培地などで白色のコロニーを形成する。また、一般的に用いられる肉エキス液状培地、カゼイン・ダイズ混合ペプトン液状培地などで振とう培養することにより増殖する。培養温度は20~30℃が好適である。
LG21S株及びLG21M株の生化学的性状を以下に示す。
(1)グラム染色性:グラム陽性
(2)硝酸塩の還元:-
(3)脱窒反応:-
(4)VPテスト:+
(5)インドールの生成:-
(6)硫化水素の生成:-
(7)クエン酸の利用:-
(8)色素産生:-
(9)ウレアーゼ:-
(10)オキシダーゼ:-
(11)アラニン-フェニルアラニル-プロリンアリルアミダーゼ活性:+
(12)ピログルタミン酸アリルアミダーゼ活性:-
(13)N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ活性:+
(14)グリシル-トリプトファン-アリルアミダーゼ活性:-
(15)生育の範囲:pH4.5~9.5、温度10~45℃
(16)酸素に対する態度:通性嫌気性
(17)炭素源の利用性; D-リボース:+、D-マンニトール:+、D-ソルビトール:-、ラクトース:-、D-トレハロース:+、D -ラフィノース:-、サッカロース:-、L-アラビノース:-、D -アラビトール:-、シクロデキストリン:+、グリコーゲン:-、プルラン:-、マルトース:+、D-メリビオース:-、メレチトース:-、タガトース:+
(18)糖類の分解:β-グルコシダーゼ活性:+、β-グルクロニダーゼ活性:+、β-ガラクトシダーゼ活性:-、α-ガラクトシダーゼ活性:-、βマンノシダーゼ活性:-
(19)馬尿酸の分解:-
(20)アルギニンの分解:+
(21)溶血性:α溶血型
(22)抗KG-抗血清:-
(23)抗KG+抗血清:-
ラクトコッカス・ガルビエLG21S株及びLG21M株の特許微生物寄託を行った(寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター、所在地:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、受託番号:NITE P-03560及びNITE P-03561、受領日:2021年11月19日、日本において採取された菌株)。
なお、本発明は、不活化することにより、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする新型のレンサ球菌感染症を有効に予防できるものであればよく、このLG21S株又はLG21M株を用いる場合のみに狭く限定されない。
<本発明に係るラクトコッカス・ガルビエの菌株について>
本発明は、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの菌株をすべて包含する。
本発明に係る菌体は、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエ、即ち、I型とII型のいずれにも分類されない新型のラクトコッカス・ガルビエであればよい。例えば、ラクトコッカス・ガルビエに対する既存の不活化ワクチンを投与したにもかかわらずαレンサ球菌症を発症した魚類から分離して用いてもよい。分離菌は、公知の固形培地・液体培地、例えば、肉エキス寒天平板培地、カゼイン・ダイズ混合ペプトン寒天平板培地、肉エキス液状培地、カゼイン・ダイズ混合ペプトン液状培地などで培養し、増殖させることができる。なお、本発明において、「生菌状態」とは、菌が生きている状態、若しくは菌抗原の立体的形状が、菌が生きている場合と同様に保持されている状態をいう。
本発明に係るラクトコッカス・ガルビエは、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であることに加え、加熱死菌の抗I型血清に対する凝集性が陽性であるという血清学的特徴を有したものも包含される。生菌状態では抗I型血清に対する凝集性が陰性であるにもかかわらず、加熱処理後には、抗I型血清に対する凝集性が陽性であることは、変異によって、生菌状態では抗I型血清の認識部位が莢膜様の何らかの構造で被覆され、加熱処理でその構造が除去されることで、抗I型血清が認識部位に到達できるようになる可能性を示唆しており、既存のI型又はII型のラクトコッカス・ガルビエに対するワクチンが新型レンサ球菌症に有効でない理由を、この点から裏付けることができる可能性がある。
本発明に係るラクトコッカス・ガルビエは、上記に加え、加熱死菌の抗KG-型血清及び抗KG+型血清に対する凝集性が陽性であるという血清学的特徴を有したものも包含される。この場合、新型レンサ球菌症の起因菌が、I型・KG+型のラクトコッカス・ガルビエの変異株である可能性が示唆される。
本発明に係るラクトコッカス・ガルビエは、ゲノム中のglxRコード領域及びその近傍中に、配列番号1に記載された配列が含まれたものを広く包含する。配列番号1に記載された配列中には、既存のI型又はII型のラクトコッカス・ガルビエの塩基配列と比較して、3つの塩基で変異が認められる(配列番号1の配列中の第62位がアデニンからシトシンに変異、同第118-119間の欠失、同第141-142間の欠失)。これらの変異が、新型ラクトコッカス・ガルビエにおける従来のものとの血清学的特徴の変化に寄与している可能性がある。
LG21S株又はLG21M株は、不活化することによりワクチンとして用いることができる点、特に濃縮や酵素処理などを行わなくてもワクチンとしての効力が高い点などより、本発明に用いるクトコッカス・ガルビエの菌体として好適である。
<本発明に係る不活化ワクチン製剤について>
本発明は、上述のいずれかのラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤をすべて包含する。また、本発明は、不活化菌体を有効成分として含有するもののみに狭く限定されず、例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの培養菌液を不活化処理することにより得られた菌体及び菌液を有効成分として含有する不活化ワクチン製剤、即ち、例えば、不活化菌体と培養液を分離せずに用いることにより、若しくは不活化菌体と培養液を分離しないまま濃縮することにより、不活化菌体と、該菌体以外の菌体由来成分とを含有した場合も広く包含する。
上述のいずれかの新型ラクトコッカス・ガルビエ株、例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエ株を不活化した不活化菌体は、新型の魚類レンサ球菌症を予防するための不活化ワクチン製剤として有用である。
不活化菌体として、例えば、上述のいずれかの新型ラクトコッカス・ガルビエ株を培養して増殖させ、その培養菌液を不活化したものを用いることができる。
菌体の不活化は、例えば、培養菌液に対し、物理的処理(紫外線照射、X線照射、熱処理、超音波処理など)、化学的処理(ホルマリン・クロロホルムなどによる有機溶媒処理、酢酸などの弱酸による酸処理、アルコール・塩素・水銀などによる処理)などを行うことにより作製できる。
例えば、培養菌液にホルマリンを0.001~2.0%、より好適には0.01~1.0%の容量濃度で添加し、培養菌液を4~30℃で、1~10日間感作することにより、ホルマリンによる不活化を行うことができる。例えば、緩衝液などで不活化処理菌体を洗浄してホルマリンなどの不活化剤を除去したり、不活化処理菌体に中和剤を添加して中和したりしてもよい。また、膜ろ過や遠心分離などにより不活化処理菌体を回収したり、菌体と培養液を分離しないまま培養菌液を濃縮したりしてもよい。
不活化ワクチン製剤に含まれる不活化菌体の量は、特に制限はないが、例えば、不活化前の菌体の量が103~1011CFU/mLの範囲が好適で、107~1011CFU/mLの範囲がより好適である。
本発明に係る不活化ワクチン製剤は、アジュバントを含有するもの、即ち、上述の不活化菌体とアジュバントとを有効成分として少なくとも含有するものであってもよい。
アジュバントには、公知のものを広く用いることができる。例えば、動物油(スクアレンなど)又はそれらの硬化油、植物油(パーム油、ヒマシ油など)又はそれらの硬化油、無水マンニトール・オレイン酸エステル、流動パラフィン、ポリブテン、カプリル酸、オレイン酸、高級脂肪酸エステルなどを含む油性アジュバント、PCPP、サポニン、グルコン酸マンガン、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸マンガン、可溶性酢酸アルミウム、サリチル酸アルミニウム、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、無水マレイン酸コポリマー、アルケニル誘導体ポリマー、水中油型エマルジョン、第四級アンモニウム塩を含有するカチオン脂質などの水溶性アジュバント、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、水酸化ナトリウムなどの沈降性アジュバント、コレラ毒素、大腸菌易熱性毒素などの微生物由来毒素成分、その他、ベントナイト、ムラミルジペプチド誘導体、インターロイキンなどが挙げられる。また、これらを混合したものでもよい。
本発明は、上記の不活化ワクチン、例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチンと、I型(KG-型及び/又はKG+型)及び/又はII型(非KG-型・非KG+型)のラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチンと、を含有する混合不活化ワクチン製剤であってもよい。この混合不活化ワクチン製剤を魚類に投与することにより、既知のレンサ球菌症及び既知のものとは異なる新型のレンサ球菌症の両者を同時に有効に予防できる可能性がある。
また、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチン、若しくは、その不活化ワクチンと、I型(KG-型及び/又はKG+型)及び/又はII型(非KG-型・非KG+型)のラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体とを含有する混合不活化ワクチンに加え、他の疾患に対するワクチン、例えば、β溶血性レンサ球菌症不活化ワクチン、ビブリオ病不活化ワクチン、イリドウイルス病不活化ワクチン、類結節症不活化ワクチン、ストレプトコッカス・ジスガラクチエ感染症不活化ワクチンなどのいずれか又は複数がさらに混合された混合ワクチン製剤であってもよい。
その他、目的・用途などに応じて、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、抗菌剤、抗酸化剤などを適宜添加してもよい。
緩衝剤の好適な例として、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液などを用いることができる。
等張化剤の好適な例として、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどを用いることができる。
無痛化剤の好適な例として、例えば、ベンジルアルコールなどを用いることができる。
防腐を目的とした薬剤の好適な例として、例えば、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、その他、各種防腐剤、抗生物質、合成抗菌剤などを用いることができる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などを用いることができる。
その他、この薬剤には、補助成分、例えば、保存・効能の助剤となる光吸収色素(リボフラビン、アデニン、アデノシンなど)、安定化のためのキレート剤・還元剤(ビタミンC、クエン酸など)、炭水化物(ソルビトール、ラクトース、マンニトール、デンプン、シュークロース、グルコース、デキストランなど)、カゼイン消化物、各種ビタミンなどを含有させてもよい。
ワクチン製剤の剤型などについては、公知のものを採用でき、特に限定されない。例えば、液体製剤として用いてもよいし、凍結乾燥などの処置の後、餌などに混入させてもよい。
<本発明に係る不活化ワクチン製剤製造方法について>
本発明は、上述のいずれかのラクトコッカス・ガルビエの菌体を不活化する工程を含む、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤製造方法をすべて包含する。
上述の通り、例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの菌体を不活化することにより、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする新型の魚類レンサ球菌症に有効な不活化ワクチン製剤を製造できる。
本発明に係る不活化ワクチン製剤は、例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの菌体を増殖する工程、その菌体を不活化する工程などにより行うことができる。また、不活化工程の後に、適宜、その不活化菌体にアジュバントなどを添加する工程を加えてもよい。
用いる菌体、及び、その菌体の不活化方法については、上記の通りである。また、目的・用途に応じて、上述のアジュバント、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜添加してもよい。
<不活化ワクチン製剤製造のための菌の使用について>
本発明は、上述のいずれかのラクトコッカス・ガルビエを起因菌とするレンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤製造のための該菌の使用を広く包含する。
例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエを起因菌とするレンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤製造のために、上述の例えば、生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエを広く用いることができる。
<本発明に係る魚類レンサ球菌症の予防方法>
上述の不活化ワクチン製剤、又は、上述の混合不活化ワクチン製剤を投与する、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症の予防方法を広く包含する。
上述の不活化ワクチン製剤を魚類に投与することにより、従来の不活化ワクチンでは予防できない新型の魚類レンサ球菌症の発生・伝播・蔓延を有効に予防できる。また、上述の混合不活化ワクチン製剤を魚類に投与することにより、既知のレンサ球菌症及び既知のものとは異なる新型のレンサ球菌症の両者を同時に有効に予防できる可能性がある。
適用対象となる魚類として、例えば、ブリ属魚類(ブリ、カンパチ、ヒラマサなど)、マダイ・チダイ・ヒラメ・シマアジ・マアジ・サバ・マグロなどの海水魚、ウナギ、ニジマスなど、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とするレンサ球菌症に罹患する魚類が挙げられる。
不活化ワクチン製剤の投与方法として、例えば、注射法、浸漬法、経口法などが挙げられる。
注射法の場合、例えば、不活化前の菌体の量を103~1011CFU/mLの範囲に調製した不活化ワクチン製剤を、0.05~3.0mL筋肉内又は腹腔内に投与する。即ち、不活化前の菌体の量が103~1011CFU/mLであり、一回当たりの投与量が0.05~3.0mLである不活化ワクチン製剤、その用量で筋肉内又は腹腔内に投与する不活化ワクチン製剤は、ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンでは予防できない新型の魚類レンサ球菌症の予防に有効である。
浸漬法の場合、例えば、不活化前の菌体の量を103~1011CFU/mLの範囲に調製した不活化ワクチン製剤含有液に、対象魚を0.05~48時間浸漬する。即ち、不活化前の菌体の量が103~1011CFU/mLであり、一回当たり0.05~48時間の浸漬を行う不活化ワクチン製剤は、ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンでは予防できない新型の魚類レンサ球菌症の予防に有効である。
経口法の場合、例えば、不活化前の菌体の量を103~1011CFU/mLの範囲に調製した不活化ワクチン製剤を混合した飼料を自由摂餌させ、1~20日間の連続投与を行う。即ち、不活化前の菌体の量が103~1011CFU/mLであり、1~20日間の経口連続投与を行う不活化ワクチン製剤は、ラクトコッカス・ガルビエに対する従来の不活化ワクチンでは予防できない新型のレンサ球菌症の予防に有効である。
このうち、注射法による腹腔内投与が、感染予防効果が高く、免疫持続期間が長いため、最も好適である。
不活化ワクチン製剤の投与回数は、その作用が持続する限り1回でよいが、対象魚類の大きさ、ワクチン効果の度合いなどに応じて、例えば、7~365日間隔で複数回投与してもよい。その他、複数の投与方法を適宜組み合わせて、対象魚類に不活化ワクチン製剤を投与してもよい。
実施例1では、Lactococcus garvieae I型及びII型に対する従来の混合不活化ワクチンを投与したにもかかわらずαレンサ球菌症の発症が疑われたシマアジ・カンパチより、原因菌の分離・同定を試みた。
日本国・静岡県のシマアジ養殖場、及び、日本国・宮崎県のシマアジ・カンパチ養殖場において、2021年7月頃より、L.garvieae I型及びII型に対する従来の混合不活化ワクチンを投与した養殖魚群中より、α溶血性レンサ球菌症が疑われる個体が複数発生したため、そのうちの6尾を捕獲し、検体に供した。
各検体の剖検所見では、顕著な所見として、外観検査では、眼球の白濁または発赤、眼球周囲の発赤、尾鰭基部の発赤及び潰瘍、背鰭や胸鰭の欠損、胸鰭、腹鰭及び臀鰭の発赤が、内部所見では、鰓蓋内側の発赤、鰓の退色、心外膜炎、脾臓の腫大が認められた。
検体の腎臓、脾臓、又は、脳に穿刺し、SCDb寒天培地(カゼイン・ダイズ混合ペプトン液体培地に寒天を加えた培地)に画線して、25℃で24時間培養し、さらに、単集落を釣菌し、新たなSCDb寒天培地に接種し、単集落分離を行った。この手順により、白色S型コロニーを形成する細菌として、静岡県の養殖シマアジから計6株、宮崎県の養殖シマアジから1株、宮崎県の養殖カンパチから1株の計8株を分離した。
分離菌の顕微鏡検査を行った結果、いずれの分離菌も、既知のL.garvieaeと同様、グラム陽性レンサ状球菌の形態であった。
分離菌の溶血性試験を行った。コロンビア5%ヒツジ血液寒天培地に分離菌を播種し、培養した結果、いずれの分離株でも、既知のL.garvieaeと同様の不完全溶血環が形成され、α溶血性を示した。
分離株について、生菌状態のままスライド凝集試験を行った。分離株のうち、静岡県の養殖シマアジから分離された株のうちの一つ、宮崎県の養殖カンパチから分離された株、比較例として、I型・KG-型(KS-7M株)、I型・KG+型(YT-3株)、及び、II型(LG13E株)の5つの株について、それぞれコロニーから釣菌し、診断用ウサギ抗血清に懸濁した。診断用ウサギ抗血清には、抗I型血清として、抗KG-型血清及び抗KG+型血清、並びに抗II型血清(抗非KG-/KG+血清)の三種類を用いた。結果を表1に示す。表1に示す通り、どちらの分離株についても、いずれの抗血清に対しても、凝集性は陰性であった。
Figure 2023080057000002
続いて、分離株の加熱死菌について、スライド凝集試験を行った。分離株のうち、静岡県の養殖シマアジから分離された株のうちの一つ、宮崎県の養殖カンパチから分離された株、比較例として、I型・KG-型(KS-7M株)、及び、I型・KG+型(YT-3株)の4つの株について、それぞれコロニーから釣菌して懸濁し、100℃で5分間加熱処理した後、診断用ウサギ抗血清に懸濁した。診断用ウサギ抗血清には、抗I型血清として、抗KG-型血清及び抗KG+型血清、並びに抗II型血清(抗非KG-/KG+血清)の三種類を用いた。結果を表2に示す。表2に示す通り、両分離株は、生菌状態で凝集させた場合とは異なり、抗I型血清を用いた場合には、抗KG-型血清及び抗KG+型血清のいずれの場合でも、凝集性は陽性であった。なお、抗II型血清(抗非KG-/KG+血清)を用いた場合では、凝集性は陰性であった。
Figure 2023080057000003
分離株の遺伝子検査を行った。非特許文献4に記載されたL.garvieae I型/II型判別用プライマーを用いて、PCR法により、I型又はII型に特異的な遺伝子の検出を試みた。その結果、いずれの分離株でも、L.garvieae I型に特異的な遺伝子の増幅が認められ、II型に特異的な遺伝子の増幅は認められなかった。
薬剤感受性試験を行った結果、脳から分離された細菌は、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、チアンフェニコール、フロルフェニコール、オキシテトラサイクリンに対して阻止円を形成した。
ウイルス検査を行った。検体の脾臓よりDNAを抽出し、リアルタイムPCR法によるマダイイリドウイルス(RSIV)特異的遺伝子の検出を試みた結果、いずれの検体からも、RSIV特異的遺伝子の増幅は認められなかった。
抗酸菌検査を行った。各検体の腎臓を穿刺し、1%小川培地に画線して28℃で7日間培養し、菌分離を試みた。その結果、1%小川培地における抗酸菌の発育は認められなかった。
分離菌の生化学的性状試験を行った。グラム陽性球菌同定キット「rapid ID32 STREP(日本ビオメリュー)」を用いて、スライド凝集試験で用いたものと同じ2株、宮崎県の養殖シマアジから分離した株の計3株について、試験した。結果を表3及び表4に示す。なお、試験に供した3株の結果は、全て同一であった。その他、表3及び表4中、「陽性率」はキットの添付文書に記載された既知のL.garvieaeの陽性率を表す。
Figure 2023080057000004
Figure 2023080057000005
比較例として、L.garvieae I型・KG-型(KS-7M株)とII型(LG13E株)についても、同一の生化学的性状試験を行い、その結果と比較した。L.garvieae I型・KG-型(KS-7M株)との比較では、同株がD-リボースとタガトースの発酵/酸化能の項目で陰性であったのに対し、分離株はいずれも陽性であった。L.garvieae II型(LG13E株)との比較では、同株がβNAGの項目で陰性であったのに対し、分離株はいずれも陽性であった。分離株では、乳糖の発酵/酸化能の項目は陽性/陰性の判別が困難であった。その他の項目は、いずれも、L.garvieae I型・KG-型(KS-7M株)、II型(LG13E株)、分離株(3つ)の計五者で同一であった。
以上の通り、生菌状態では抗L.garvieae I型血清(抗KG-型血清及び抗KG+型血清)及び抗L.garvieaeII型血清のいずれの抗血清に対しても凝集性が陰性であるのに対し、加熱死菌では抗L.garvieae I型血清に対し凝集性が陽性である、即ち、従来のI型・II型とは血清学的特徴の異なる新型株として、静岡県の養殖シマアジから計6株、宮崎県の養殖シマアジから1株、宮崎県の養殖カンパチから1株の計8株の分離・同定に成功した。このうち、静岡県の養殖シマアジから分離された株のうちの一つをLG21S株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号:NITE P-03560)。また、宮崎県の養殖カンパチから分離された株をLG21M株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号:NITE P-03561)。
実施例2では、実施例1で分離した株の病原性を確認した。
供試魚として、人工ブリ(2021年2月に搬入、平均体重25g前後)、人工カンパチ(2021年2月に搬入、平均体重28g前後)、人工シマアジ(2021年2月に搬入、平均体重29g前後)をそれぞれ60尾ずつ準備した。
実施例1で分離した株のうち、LG21S株及び、静岡県の養殖シマアジから分離した別株(LC2115株)について、-80℃で凍結保管していた各分離株をSCDb寒天培地に画線し、25℃で約24時間培養した。生育したコロニーをPBSに懸濁し、McFaland No.3~4程度に調製したものを9mLのSCDb液体培地に1mL接種し、同様に10-10倍まで10倍階段希釈した。25℃で約24時間静置培養し、濁度でピークに達している1つ前の希釈段階のものを選択し、PBSで10、100、1,000倍の三段階に希釈したものをそれぞれ供試菌液とした。
人工ブリ、人工カンパチ、人工シマアジについて、それぞれ10尾ずつの六群に分け、LG21S株接種用とLC2115株接種用とでそれぞれ三群ずつとし、麻酔下で、10倍ずつ三段階の濃度に調製された菌液を、1尾当たり0.1mL腹腔内に注射し、注射後25℃で14日間飼育して死亡率を比較した。
その結果、LG21S株(1.3×105~107CFU/尾)を注射した場合における14日後までの累積死亡率は、低濃度から順にブリで50、80、90%、カンパチ及びシマアジで100、90、100%であった。また、LC2115株(2.3×105~107CFU/尾)を注射場合における14日後までの累積死亡率は、低濃度から順にブリで40、50、100%、カンパチで90、100、100%、シマアジでいずれも100%であった。
各菌液の接種後生残したカンパチについては、α溶血性連鎖球菌症に特徴的な病変が観察された。
死亡魚の臓器より細菌を再分離した結果、感染に用いた菌株(LG21S株又はLC2115株)と同様の特徴を有していた。また、再分離菌について、スライド凝集試験を行った結果、感染に用いた菌株(LG21S株又はLC2115株)と同様、加熱処理をした場合のみ、抗I型血清を用いた場合の凝集性が陽性であった。
以上のように、本実施例により、実施例1で分離した株が、各魚種に対し、高い病原性を有し、各養殖場で発生した症状と同様の病態を引き起こすものであることが示された。
実施例3では、生菌状態では抗L.garvieae I型血清(抗KG-型血清及び抗KG+型血清)及び抗L.garvieaeII型血清のいずれの抗血清に対しても凝集性が陰性であるのに対し、加熱死菌では抗L.garvieae I型血清に対し凝集性が陽性である新血清型のL.garvieaeを起因菌とするαレンサ球菌症に対する不活化ワクチンを作製し、ワクチンとしての効力を検証した。
不活化菌液の調製を以下の通り行った。新血清型のLG21S株、I型・KG-型(KS-7M株)、II型(LG13E株)を供試株とした。-80℃で凍結保管している各供試株をSCDb寒天培地に画線し、25℃で約24時間培養した。生育したコロニーをPBSに懸濁し、McFaland No.3~4程度に調製したものを100mLのSCDb液体培地に100μL接種し、25℃で約24時間、約90rpmで振とう培養した。この培養菌液に0.5vol%となるようホルマリンを添加し、約48時間振とうして感作させ、不活化菌液とした。各不活化菌液を4℃、12,000Gで10分間遠心して上清を除去した後、ホルマリンを0.2vol%になるように添加したPBSで再懸濁し、株間で抗原量を同等になるよう調整したものを供試抗原とした。なお、抗原量は不活化前生菌数で1.6×109CFU/mLに調整した。
供試魚として、人工ブリ(2021年6月に搬入、平均体重25g前後)、及び、人工カンパチ(2021年6月に搬入、平均体重28g前後)をそれぞれ144尾ずつ準備した。
人工ブリ、人工カンパチを、それぞれ18尾ずつ六群に分け、各群に、麻酔下で、1尾あたりに供試抗原0.1mLを腹腔内へ注射し、それぞれ、LG21S株免疫群、KS-7M株免疫群、LG13E株免疫群とした。注射後25℃で14日間飼育した。なお、同様にPBSを注射して対照群とした。
攻撃株としてLG21S株を選択し、攻撃用に調製した。-80℃で凍結保管していた同株をSCDb寒天培地に画線し、25℃で約24時間培養した。生育したコロニーをPBSに懸濁し、McFaland No.3~4程度に調製したものを9mLのSCDb液体培地に1mL接種し、同様に10-10倍まで10倍階段希釈した。25℃で約24時間静置培養し、濁度でピークに達している1つ前の希釈段階のものを選択し、PBSで100倍又は1,000倍に希釈した菌液を攻撃用菌液とした。
免疫から14日間経過後、麻酔下で、1尾当たり攻撃用菌液0.1mLを腹腔内へ注射し、攻撃を行った。攻撃後14日間、設定水温25℃の水槽で飼育し、生残率を比較した。
結果を図1~図4に示す。それぞれ、図1は、人工ブリに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による低濃度攻撃(8.0×104CFU/0.1mL/尾)を行った場合における生存率を示すグラフ、図2は、人工ブリに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による高濃度攻撃(8.0×105CFU/0.1mL/尾)を行った場合における生存率を示すグラフ、図3は、人工カンパチに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による低濃度攻撃(8.0×104CFU/0.1mL/尾)を行った場合における生存率を示すグラフ、図4は、人工カンパチに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による高濃度攻撃(8.0×105CFU/0.1mL/尾)を行った場合における生存率を示すグラフである。各図におけるグラフの横軸(攻撃後日数)は、攻撃を行ってからの経過日数を、縦軸(生存率、単位:%)は、攻撃後の生存率を、それぞれ表す。同グラフ中、「LG21S」の折れ線は、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した場合の生存率を、「KS-7M」の折れ線は、比較例としてL.garvieae I型・KG-型(KS-7M株)の不活化菌体で免疫した場合の生存率を、「LG13E」の折れ線は、比較例としてL.garvieae II型(LG13E株)の不活化菌体で免疫した場合の生存率を、「対照群」の折れ線は対照としてPBSを投与した場合の生存率を、それぞれ表わす。
人工ブリに免疫した場合に関し、図1に示す通り、LG21S株による人工ブリに対する低濃度攻撃(8.0×104CFU/0.1mL/尾、腹腔内注射)後14日の生残率は、対照群で78%に対し、KS-7M株免疫群で78%、LG13E株免疫群で100%及びLG21S株免疫群で100%となり、対照群と各免疫群との間に有意な差は認められなかった。但し、攻撃後14日の生残魚のうち、対照群、KS-7M株免疫群及びLG13E株免疫群の各群では、死には至っていないものの外観にα溶血性レンサ球菌症を発症した個体が多く認められ、それらを差し引いたとき、対照群よりもLC2113株免疫群で有意に高い正常率を示した。また、図2に示す通り、LG21S株による人工ブリに対する高濃度攻撃(8.0×105CFU/0.1mL/尾、腹腔内注射)後14日の生残率は、対照群で67%に対し、KS-7M株免疫群で83%、LG13E株免疫群で83%及びLG21S株免疫群で100%となり、LG21S株免疫群で対照群よりも有意に高い生残率を示した(p<0.05、Fisherの直接確率計算法、片側検定)。
人工カンパチに免疫した場合に関し、図3に示す通り、LG21S株による人工カンパチに対する低濃度攻撃(8.0×104CFU/0.1mL/尾、腹腔内注射)後14日の生残率は、対照群で0%に対し、KS-7M株免疫群で11%、LG13E株免疫群で0%及びLG21S株免疫群で100%となり、LG21S株免疫群で対照群よりも有意に高い生残率を示した(p<0.05、Fisherの直接確率計算法、片側検定)。また、図4に示す通り、LG21S株による人工カンパチに対する高濃度攻撃(8.0×105CFU/0.1mL/尾、腹腔内注射)後14日の生残率は、対照群で0%に対し、KS-7M株免疫群で0%、LG13E株免疫群で0%及びLG21S株免疫群で100%となり、LG21S株免疫群で対照群よりも有意に高い生残率を示した。
このように、非加熱の生菌状態では抗L.garvieae I型血清(抗KG-型血清及び抗KG+型血清)及び抗L.garvieaeII型血清のいずれの抗血清に対しても凝集性が陰性であるのに対し、加熱死菌では抗L.garvieae I型血清に対し凝集性が陽性である新血清型・LG21S株の不活化抗原は、ホモ株の攻撃に対して高い有効性を示したのに対し、L.garvieaeI型・KG-型(KS-7M株)、L.garvieaeII型(LG13E株)の各不活化抗原では、いずれも同攻撃を防御することが出来なかった。これらの結果より、LG21S株が、血清型I型及びII型のいずれとも異なった、新しい抗原性を有するL.garvieaeであることが示され、さらに、「生菌状態では抗L.garvieae I型血清(抗KG-型血清及び抗KG+型血清)及び抗L.garvieaeII型血清のいずれの抗血清に対しても凝集性が陰性であるのに対し、加熱死菌では抗L.garvieae I型血清に対し凝集性が陽性であるL.garvieae」の不活化ワクチン製剤が、同菌を起因菌とするαレンサ球菌症の予防に有効であることが実証された。
実施例4では、実施例1で分離した新血清型の8株と既存株との遺伝子相同性について検討した。
L.garvieaeの標準株JCM10343、KS-7M株、並びに実施例1で分離した新血清型の8株について、16S rRNAのシーケンスを行い、解読可能であった約1,370bpについて、配列を比較した。その結果、解読可能であった部位については全ての配列が完全同一であり、新血清型の8株について、変異は認められなかった。
実施例1で分離した新血清型の8株について、非特許文献4に記載されたL.garvieae I型/II型判別用プライマーを用いて、PCR法により、glxRコード領域からその近傍にかけての領域の塩基配列を増幅し、そのPCR産物のシーケンスを行って、解読可能であった256bpの配列を取得した。その領域の塩基配列は、8株で完全同一であった。取得した配列を配列番号1に示す。
また、比較例として、KS-7M株についても、同様の手順でPCR産物のシーケンスを行い、解読可能であった258bpの配列を取得した。取得した配列を配列番号2に示す。なお、取得したKS-7M株の配列は、既知標準株Lg2、及び、既知のATCC49156におけるその領域の塩基配列と完全同一であった。
本実施例で増幅した領域に関し、KS-7M株の配列(配列番号2参照)や既知標準株Lg2、及び、既知のATCC49156と比較すると、新血清型の配列(配列番号1参照)では、3つの塩基で変異が認められた(配列番号2の配列中の第62位がアデニンからシトシンに変異、同第119位の欠失、同第143位の欠失)。
実施例5では、実施例3で作製した不活化ワクチンがシマアジの同感染症にも有効か、検証した。
供試魚として、人工シマアジ(2021年2月に搬入、平均体重26g)60尾を準備し、そのうち30尾には、麻酔下で、実施例3で作製した不活化ワクチンを1尾あたり0.1mL腹腔内へ注射してLG21S株免疫群とし、残りの30尾には、同様の条件でPBSを1尾あたり0.1mL腹腔内へ注射して対照群とした。注射後25℃で14日間飼育した。
実施例3と同様、攻撃株としてLG21S株を選択し、実施例3と同様の手順で、PBSで100倍又は1,000倍に希釈した菌液を攻撃用菌液として調製した。
免疫から14日間経過後、麻酔下で、1尾当たり攻撃用菌液0.1mLを腹腔内へ注射し、攻撃を行った。攻撃後14日間、設定水温25℃の水槽で飼育し、生残率を比較した。
結果を図5及び図6に示す。それぞれ、図5は、人工シマアジに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による低濃度攻撃(1.1×105CFU/尾)を行った場合における生存率を示すグラフ、図6は、人工シマアジに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による高濃度攻撃(1.1×104CFU/尾)を行った場合における生存率を示すグラフである。各図におけるグラフの横軸(攻撃後日数)は、攻撃を行ってからの経過日数を、縦軸(生存率、単位:%)は、攻撃後の生存率を、それぞれ表す。同グラフ中、「LG21S」の折れ線は、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した場合の生存率を、「対照群」の折れ線は対照としてPBSを投与した場合の生存率を、それぞれ表わす。
図5に示す通り、LG21S株による人工シマアジに対する低濃度攻撃(1.1×105CFU/尾、腹腔内注射)後14日の生残率は、対照群で20%に対し、免疫群では87%であり、両群間で有意差が認められた(p<0.05、Fisherの直接確率計算法、片側検定)。同様に、図6に示す通り、LG21S株による人工シマアジに対する高濃度攻撃(1.1×104CFU/尾、腹腔内注射)後14日の生残率は、対照群で7%に対し、免疫群では87%であり、両群間で有意差が認められた(p<0.05、Fisherの直接確率計算法、片側検定)。
以上の通り、本実施例により、「生菌状態では抗L.garvieae I型血清(抗KG-型血清及び抗KG+型血清)及び抗L.garvieaeII型血清のいずれの抗血清に対しても凝集性が陰性であるのに対し、加熱死菌では抗L.garvieae I型血清に対し凝集性が陽性であるL.garvieae」の不活化ワクチン製剤が、同菌を起因菌とするシマアジのαレンサ球菌症の予防にも有効であることが実証された。
実施例6では、実施例1で分離した株の感染による魚類レンサ球菌症が、既存のワクチンで予防効果の得られない感染症であることを確認した。
人工ブリ(2021年6月に搬入、平均体重26g)、及び、人工シマアジ(2021年6月に搬入、平均体重29g)に、既存のワクチン製剤「ピシバック注4(ピシバックは登録商標)」を用法・用量に従って投与し、免疫した(n=18)。陽性対照として、実施例1で分離された株を用いて実施例3に記載された手順で調製した供試抗原を代わりに投与し、陰性対照としてPBSを代わりに投与した。
実施例3と同様、攻撃株としてLG21S株を選択、攻撃用菌液として調製し、
免疫から14日間経過後、麻酔下で、1尾当たり攻撃用菌液0.1mLを腹腔内へ注射し、攻撃を行った(1.2×108CFU/尾)。攻撃後14日間、設定水温25℃の水槽で飼育し、生残率を比較した。
その結果、生残率が陰性対照で0%、陽性対照で100%の結果において、既存のワクチン製剤で免疫した群における生残率は、陰性対照と同じ0%であった。この結果より、実施例1及び実施例2で同定された新規な魚類レンサ球菌症が、既存のワクチンで予防効果の得られない感染症であることを確認された。
実施例7では、実施例3における供試株の培養上清にも免疫原性があるか、検証した。
実施例3と同様の手順で調製した不活化菌液(1.0×109CFU/mL)を4℃、12,000Gで10分間遠心し、分離した上清を0.22μmフィルターに通し、菌体を完全に除去したものを上清抗原とした。また、上清を除去した後に残った菌体について、2回のPBS懸濁・遠心洗浄を行い、ホルマリンを0.2vol%添加したPBSに再懸濁したものを菌体抗原とした(1.0×109CFU/mL)。
人工カンパチ(2021年6月に搬入、平均体重41g)に、それぞれ、上清抗原又は菌体抗原0.1mLを腹腔内へ注射して免疫し、注射後25℃で14日間飼育した(n=18)。陽性対照として、実施例3で調製した不活化菌液を代わりに投与し、陰性対照としてPBSを代わりに投与した。
実施例3と同様、攻撃株としてLG21S株を選択、攻撃用菌液として調製し、
免疫から14日間経過後、麻酔下で、1尾当たり攻撃用菌液0.1mLを腹腔内へ注射し、攻撃を行った(9.7×105CFU/尾)。攻撃後14日間、設定水温25℃の水槽で飼育し、生残率を比較した。
その結果、生残率が陰性対照で0%、陽性対照で100%の結果において、菌体抗原を投与した場合の生残率は陽性対照と同じ100%であったのに対し、上清抗原を投与した場合の生残率は陰性対照と同じ0%であった。本結果より、新血清型の株では、培養上清の免疫原性は低いことが分かり、培養菌液を濃縮した菌体の原液を用いることで、ワクチン効果・製造効率を高められることが示唆された。
実施例8では、実施例1・実施例2で分離・同定された原因菌を、ブリからも分離することを試みた。
当初、実施例1に示した新規なα溶血性レンサ球菌症は、主に、カンパチ及びシマアジで被害を確認していたが、2022年8月、日本国・宮崎県のブリ養殖場においても、同様のα溶血性レンサ球菌症を疑う個体が発見されたため、その原因菌の分離・同定を試みた。
罹患が疑われた同養殖場のブリの検体の腎臓、脾臓、又は、脳に穿刺し、実施例1と同様に分離・培養を試みた結果、ブリ由来の株の分離に成功した。同分離菌の溶血性試験、及び、生菌状態のままでスライド凝集試験を行った結果、LG21S株及びLG21M株と同様の結果であった。
また、分離菌の生化学的性状試験を行った結果、実施例1(表3及び表4)と同じ結果であったほか、PyrA(L-ピログルタミン酸-β-ナフチルアミド、陽性率74%)及びβNAG(6-ブロモ-2-ナフチル-N-アセチル-β-D-グルコサミニド、陽性率10%)の各項目について、LG21S株などと同様、ネガティブの評価であった。
このブリ由来の分離株を、実施例2と同様の手順で培養・調製した後、PBSで10、100、1,000倍の三段階に希釈した供試菌液とし、麻酔下で、10倍ずつ三段階の濃度に調製された菌液を、人工ブリ、人工カンパチ、人工シマアジに、1尾当たり0.1mL腹腔内に注射し、注射後25℃で14日間飼育して死亡率を比較した(n=10)。比較例として、実施例3で調製されたLG21S株の不活化菌液を代わりに注射した。
その結果、人工ブリでは、ブリ由来の分離株を注射した場合、注射から14日後における累積死亡率は、1,000倍希釈で50%、100倍希釈で56%、10倍希釈で80%であったのに対し、LG21S株の不活化菌液を注射した場合、1,000倍希釈で56%、100倍希釈で80%、10倍希釈で100%であった。人工カンパチでは、ブリ由来の分離株を注射した場合、注射から14日後における累積死亡率は、1,000倍希釈で100%、100倍希釈で90%、10倍希釈で100%であったのに対し、LG21S株の不活化菌液を注射した場合、1,000倍希釈で100%、100倍希釈で80%、10倍希釈で100%であった。人工シマアジでは、ブリ由来の分離株を注射した場合、注射から14日後における累積死亡率は、1,000倍希釈で80%、100倍希釈で70%、10倍希釈で80%であったのに対し、LG21S株の不活化菌液を注射した場合、1,000倍希釈で70%、100倍希釈で80%、10倍希釈で60%であった。
以上の通り、カンパチ及びシマアジだけではなく、ブリからも、この新規なα溶血性レンサ球菌症が確認され、その原因菌は、カンパチ又はシマアジ由来の分離菌と同様の性質・病原性を有していた。このことより、今後、ブリ養殖場においても、カンパチ・シマアジなどと同様、この新規なα溶血性レンサ球菌症が伝播・拡散・蔓延する可能性が示唆される。一方、実施例3において、本発明に係るワクチンの、ブリに対するワクチン効果を既に実証しており、本発明は、ブリ養殖場における本疾患の予防に非常に有用となる可能性がある。
実施例3において、人工ブリに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による低濃度攻撃を行った場合における生存率を示すグラフ。 実施例3において、人工ブリに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による高濃度攻撃を行った場合における生存率を示すグラフ。 実施例3において、人工カンパチに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による低濃度攻撃を行った場合における生存率を示すグラフ。 実施例3において、人工カンパチに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による高濃度攻撃を行った場合における生存率を示すグラフ。 実施例5において、人工シマアジに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による低濃度攻撃を行った場合における生存率を示すグラフ。 実施例5において、人工シマアジに対し、新血清型のL.garvieae LG21S株の不活化菌体で免疫した後、LG21S株による高濃度攻撃を行った場合における生存率を示すグラフ。

Claims (8)

  1. 生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエ(学名「Lactococcus garvieae」、以下同じ)の不活化菌体を含有する、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤。
  2. 加熱死菌の抗I型血清に対する凝集性が陽性であるラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する請求項1記載の不活化ワクチン製剤。
  3. ゲノム中のglxRコード領域及びその近傍中に、配列番号1に記載された配列が含まれたラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する請求項2記載の不活化ワクチン製剤。
  4. 請求項1記載の不活化ワクチンと、血清型がI型及び/又はII型のラクトコッカス・ガルビエの不活化菌体を含有する不活化ワクチンと、を含有する混合不活化ワクチン製剤。
  5. 請求項1記載の不活化ワクチン製剤を投与する、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症の予防方法。
  6. 生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの菌体を不活化する工程を含む、ラクトコッカス・ガルビエを起因菌とする魚類レンサ球菌症に対する不活化ワクチン製剤製造方法。
  7. 生菌状態で抗I型血清及び抗II型血清に対する凝集性が陰性であるラクトコッカス・ガルビエの菌株。
  8. 受託番号NITE P-03560又はNITE P-03561のラクトコッカス・ガルビエ株。
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