(発明の詳細な説明)
本開示は、例えば、本明細書に概説するような高い親和性でBST1に特異的に結合する、モノクローナル抗体を含むが、これに限定されない、単離された抗体に関する。特定の実施態様において、提供される抗体は、特定のアミノ酸配列を含んだCDR領域などの特定の構造的特徴を有する。本開示は、単離された抗体(下に概説するような、種々の周知の構造体、誘導体、模倣体及び結合体を含む。)、前述の分子を製造する方法、並びに、前述の分子と医薬用担体とを含む医薬組成物を提供する。また、本開示は、分子を使用して、BST1を検出するなどの方法に加え、本発明の疾患を含む、腫瘍及び炎症性疾患において発現するBST1などのBST1の発現に関連する疾患を治療する方法にも関する。
本開示をより容易に理解することができるように、特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、本詳細な説明の全体にわたって示される。
本開示に係るヒト化抗体及びマウス抗体は、特定の事例において、ヒト以外の種由来のBST1と交差反応することができる。特定の実施態様において、抗体は、1以上のヒトBST1に完全に特異的であり、非ヒトの種又は他の型の交差反応性を示し得ない。
「免疫応答」という用語は、例えば、病原体の侵入、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌細胞、又は、自己免疫若しくは病理学的炎症の場合には、正常なヒト細胞若しくは組織への選択的損傷、これらの破壊又はヒト身体からのこれらの排除をもたらす、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び細胞又は肝臓により生産される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む。)の作用をいう。
「シグナル伝達経路」とは、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす種々のシグナル伝達分子間の生化学的関係をいう。本明細書に使用する「細胞表面受容体」という表現には、例えば、シグナルを受信することが可能である分子及び分子の複合体、並びに、細胞の形質膜を介するかかるシグナルの伝達が含まれる。「細胞表面受容体」の例はBST1である。
本明細書に言及する「抗体」という用語には、少なくとも、免疫グロブリンの抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)が含まれる。
「抗体」の定義には、完全長抗体、抗体断片、単鎖抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書において「抗体模倣体」ということもある。)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合体(本明細書において「抗体結合体」ということもある。)と、それぞれの断片及び/又は誘導体が含まれるが、これらに限定されない。一般に、完全長抗体(本明細書において「全抗体」ということもある。)とは、ジスルフィド結合によって相互連結された、少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含み得る、糖タンパク質をいう。重鎖はそれぞれ、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される。)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3からなる。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(本明細書においてVL又はVKと略記される。)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。VH及びVL/VK領域は、フレームワーク領域(FR)と称するより保存された領域が組み込まれた、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域に更に細分化することができる。VH及びVL/VKはそれぞれ、3つのCDR及び4つのFRから構成され、次に示す順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系(例えば、エフェクター細胞)の種々の細胞、及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を仲介することができる。
一実施態様において、抗体は抗体断片である。特異的な抗体断片には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii) VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)単一の可変ドメインからなるdAb断片、(v)単離されたCDR領域、(vi)連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片、(vii) VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインを会合して抗原結合部位を形成させるペプチドリンカーによって連結する、単鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性単鎖Fv二量体、並びに、(ix)遺伝子融合によって構築した多価又は多重断片である、「ダイアボディ」又は「トリアボディ」が含まれるが、これらに限定されない。抗体断片は修飾することができる。例えば、分子は、VH及びVLドメインを結合するジスルフィド架橋の導入によって安定し得る。抗体フォーマット及びアーキテクチャの例は、Holliger及びHudsonの文献(2006), Nature Biotechnology 23(9): 1126-1136、Carterの文献(2006), Nature Reviews Immunology 6:343-357、並びにこれらに引用された参考文献に記載されており、これらは、引用によりそのすべてが明示的に組み込まれる。
本開示は、抗体類似体を提供する。かかる類似体は、完全長抗体、抗体断片、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書において「抗体模倣体」ということもある。)、抗体融合体、抗体結合体、及びそれぞれの断片を含むが、これらに限定されない、種々の構造体を含んでいてもよい。
一実施態様において、免疫グロブリンは抗体断片を含む。特異的な抗体断片には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii) VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)単一の可変ドメインからなるdAb断片、(v)単離されたCDR領域、(vi)連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片、(vii) VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインを会合して抗原結合部位を形成させるペプチドリンカーによって連結する、単鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性単鎖Fv二量体、並びに、(ix)遺伝子融合によって構築した多価又は多重断片である、「ダイアボディ」又は「トリアボディ」が含まれるが、これらに限定されない。抗体断片は修飾することができる。例えば、分子は、VH及びVLドメインを結合するジスルフィド架橋の導入によって安定し得る。抗体フォーマット及びアーキテクチャの例は、Holliger及びHudsonの文献(2006), Nature Biotechnology 23(9): 1126-1136、Carterの文献(2006), Nature Reviews Immunology 6:343-357、並びにこれらに引用された参考文献に記載されており、これらは、引用によりそのすべてが明示的に組み込まれる。
例えばヒトにおいて認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ(κ)、ラムダ(λ)及び重鎖遺伝子座が含まれ、これらはともに、無数の可変領域遺伝子と、IgM、IgD、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)、IgE並びにIgA(IgA1及びIgA2)アイソタイプをそれぞれコードする、定常領域遺伝子ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)及びアルファ(α)と、が含まれる。本明細書中の抗体は、完全長抗体及び抗体断片を含むものとし、いずれかの生物体由来の天然抗体、改変抗体、又は試験目的、治療目的若しくは他の目的のために、遺伝子組換えにより発生させた抗体をいう場合がある。
一実施態様において、本明細書に開示する抗体は、多重特異性抗体、特に、二重特異性抗体であり、また、「ダイアボディ」ということもある。これらは、2つの(又はこれよりも多い)異なる抗原に結合する抗体である。ダイアボディは、当技術分野で公知の種々の方法で生産(例えば、化学的に、又はハイブリッドハイブリドーマから調製)することができる。一実施態様において、抗体はミニボディである。ミニボディは、CH3ドメインに連結するscFvを含む最小化された抗体様タンパク質である。一部の事例において、scFvは、Fc領域に連結することができ、ヒンジ領域のうちの一部又はすべてを含み得る。多重特異性抗体についての記載は、Holliger及びHudsonの文献(2006):Nature Biotechnology 23(9): 1126-1136、及びこれに引用された文献を参照されたい(これらは、引用によりそのすべてが明示的に組み込まれる。)。
本明細書に使用する「CDR」とは、抗体可変ドメインの「相補性決定領域」を意味する。CDRに含まれる残基の体系的な同定は、Kabatにより開発され(Kabatらの文献(1991),「免疫学的関心対象のタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」, 第5版, United States Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda)、及び別法としてChothia(Chothia及びLeskの文献(1987), J. Mol. Biol. 196: 901-917;Chothiaらの文献(1989), Nature 342: 877-883;Al-Lazikaniらの文献(1997), J. Mol. Biol. 273: 927-948)によって開発されている。本発明の目的において、CDRは、Chothiaによって定義されたCDRよりわずかに少ない一連の残基として定義される。本明細書において、VL CDRは、位置27-32 (CDR1)、50-56 (CDR2)及び91-97 (CDR3)の残基を含むと定義され、その番号付けはChothiaによるものである。Chothia及びKabatによって明らかにされたVL CDRは、同一であるので、これらのVL CDRの位置の番号付けはKabatにもよるものである。本明細書において、VH CDRは、位置27-33 (CDR1)、52-56 (CDR2)及び95-102 (CDR3)の残基を含むと定義され、その番号付けはChothiaによるものである。これらのVH CDRの位置は、Kabatの位置27-35 (CDR1)、52-56 (CDR2)及び95-102 (CDR3)に対応する。
当業者に認識されるように、本明細書に開示するCDRには、例えば、本明細書に開示するCDRが、種々のフレームワーク領域に復帰突然変異する場合、変異体も含まれ得る。一般に、個々の変異CDR間の核酸同一性は、本明細書に描写した配列に対して少なくとも80%であり、好ましくは、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及びほぼ100%の同一性の増加が、より一般的である。同様に、本明細書で同定される結合タンパク質の核酸配列に対する「核酸配列同一性割合(%)」は、抗原結合タンパク質のコード配列におけるヌクレオチド残基と一致する候補配列におけるヌクレオチド残基の割合と定義される。特定の方法は、1及び0.125にそれぞれ設定し、フィルタ(fliter)を選択しないオーバーラップスパン及びオーバーラップフラクションで、デフォルトパラメータに設定したWU-BLAST-2のBLASTNモジュールを利用する。
一般に、個々の変異CDRをコードするヌクレオチド配列と本明細書に描写したヌクレオチド配列との間のヌクレオチド配列同一性は、少なくとも80%であり、好ましくは、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%、及びほぼ100%の同一性の増加が、より一般的である。
したがって、「変異CDR」は、本発明の親CDRと特定の相同性、類似性又は同一性を有するCDRであり、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の親CDRの特異性及び/又は活性を含むが、これらに限定されない、生物学的機能を共有する。
アミノ酸配列変異を導入する部位又は領域は、あらかじめ定められているが、突然変異自体をあらかじめ定める必要はない。例えば、所定の部位の突然変異能を最適化するために、標的コドン又は領域、及び所望の活性の最適な組合せのためにスクリーニングされたタンパク質CDR変異体に結合する発現抗原でランダム変異誘発を行うことができる。既知の配列を有するDNA中のあらかじめ定められた部位で置換突然変異を行うための技術は、周知である(例えば、M13プライマー変異誘発及びPCR変異誘発)。突然変異体のスクリーニングは、本明細書に記載されるように、抗原結合タンパク質活性のアッセイを用いて行う。
アミノ酸置換は通常、単一の残基であり、挿入は通常、約1個から約20個のアミノ酸残基の桁であるが、相当大きな挿入が許容され得る。欠失は、約1個から約20個のアミノ酸残基の範囲であるが、事例の中には、欠失は非常に大きい場合がある。
置換、欠失、挿入又はこれらのいずれかの組合せを、最終的な誘導体又は変異体に到達するのに使用することができる。一般に、これらの変更は、少数のアミノ酸で行い、分子の変化、特に、抗原結合タンパク質の免疫原性及び特異性の変化を最小限にする。しかし、大きな変更が特定の状況で許容され得る。
本明細書に使用する「Fab」又は「Fab領域」とは、VH、CH1、VL及びCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabとは、単独でこの領域をいうか、又は完全長抗体、抗体断片若しくはFab融合タンパク質、又は本明細書に概説する他の抗体の実施態様との関連でこの領域をいうこともある。
本明細書に使用する「Fv」又は「Fv断片」又は「Fv領域」とは、単一抗体のVL及びVHドメインを含むポリペプチドを意味する。
本明細書に使用する「フレームワーク」とは、CDRとして定義されるこれらの領域以外の抗体可変ドメインの領域を意味する。各抗体可変ドメインのフレームワークは、CDRによって分離された隣接領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に更に細分化することができる。
本明細書に使用する、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、BST1)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片をいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行できることが示された。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、次に示すものが挙げられる:(i) VL/VK、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片;(iii)実質的にヒンジ領域の一部を有するFabである、Fab'断片(基礎免疫学(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY)(Paul編、補訂第3版、1993)参照);(iv) VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(v)抗体の1つのアームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(vi) VHドメインからなるdAb断片(Wardらの文献(1989):Nature 341:544-546);(vii)単離された相補性決定領域(CDR);並びに、(viii) 1つの可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域である、ナノボディ。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL/VK及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法を用いて、VL/VK及びVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として公知)として作製することを可能にする合成リンカーによって連結することができる。例えば、Birdらの文献(1988):Science 242:423-426;及び、Hustonらの文献(1988):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883)を参照されたい。また、かかる単鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることも意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、断片は、インタクトな抗体と同様に有用性についてスクリーニングされる。
本明細書に使用する「単離された抗体」は、種々の抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、BST1に特異的に結合する単離された抗体は、BST1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかし、BST1に特異的に結合する単離された抗体は、他の種由来のBST1分子などの他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに及び/又は代替的に、単離された抗体は、自然界で通常みられない形態の他の細胞成分及び/又は化学物質を実質的に含まない。
一部の実施態様において、本発明の抗体は、組換えタンパク質、単離されたタンパク質、又は実質的に純粋なタンパク質である。「単離された」タンパク質は、その自然な状態で通常関係する物質のうちの少なくとも一部を伴わず、例えば、所定の試料中の全タンパク質の少なくとも約5重量%、又は少なくとも約50重量%を構成する。単離されたタンパク質は、環境に応じて、全タンパク質含量の5〜99.9重量%を構成し得ることが理解される。例えば、タンパク質は、誘導可能なプロモータ又は高い発現プロモータの使用によって顕著に高い濃度で生産することができ、そのため、増加した濃度レベルでタンパク質が生産される。組換えタンパク質の場合、定義には、自然に生産されない当技術分野で公知の種々の生物体及び/又は宿主細胞での抗体の生産が含まれる。
本明細書に使用する、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。本明細書に使用する「ポリクローナル抗体」とは、すべての動物の場合、Bリンパ球の複数のクローンによって生産された抗体をいう。
本明細書に使用する「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)をいう。
本明細書において、「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という表現は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
「抗体誘導体」という用語は、抗体の修飾形態をいう(例えば、抗体と別の物質又は抗体との結合体(一般的に化学結合))。例えば、本発明の抗体は、以下に十分に説明するように、ポリマー(例えば、PEG)、毒素、ラベルなどを含むが、これらに限定されない物質に結合することができる。本発明の抗体は、非ヒト、キメラ、ヒト化又は完全なヒトであり得る。キメラ及びヒト化抗体の概念についての記載は、Clarkらの文献(2000, Immunol Today 21 :397-402)、及びこれに引用された文献を参照されたい。キメラ抗体は、非ヒト抗体の可変領域(例えば、マウス又はラット由来のVH及びVLドメイン)を含み、これは、ヒト抗体の定常領域に操作可能に連結される(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。好適な実施態様において、本発明の抗体はヒト化されている。本明細書に使用する「ヒト化」抗体とは、ヒトフレームワーク領域(FR)と、非ヒト(通常、マウス又はラット)抗体の1以上の相補性決定領域(CDR's)とを含む抗体を意味する。CDR'sを提供する非ヒト抗体は、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプタ」と呼ばれる。ヒト化は、アクセプタ(ヒト)VL及びVHフレームワーク上のドナーCDRのグラフト化に主に依存する(米国特許第5,225,539号)。この戦略を「CDRグラフト化」という。対応するドナー残基への選択されたアクセプタフレームワーク残基の「復帰突然変異」は、初期グラフト化構造で失った親和性を回復する必要があることが多い(米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,761号;同5,693,762号;同6,180,370号;同5,859,205号;同5,821,337号;同6,054,297号;同6,407,213号)。また、ヒト化抗体は、少なくとも免疫グロブリン定常領域の一部(通常ヒト免疫グロブリンの一部)を最適に含み、そのため、通常ヒトFc領域を含む。非ヒト抗体のヒト化の方法は、当技術分野で周知であり、Winterとその協力者の方法に従って実質的に行うことができる(Jonesらの文献(1986):Nature 321 :522-525;Riechmannらの文献(1988):Nature 332:323-329;Verhoeyenらの文献(1988):Science, 239: 1534-1536)。さらに、ヒト化マウスモノクローナル抗体の更なる例も、当技術分野で周知であり、例えば、抗体結合ヒトプロテインC(O'Connorらの文献:1998, Protein Eng 11 :321-8)、インターロイキン2受容体(Queenらの文献(1989):Proc Natl Acad Sci, USA 86: 10029-33)、及びヒト上皮成長因子受容体2(Carterらの文献(1992):Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-9)がある。代替の実施態様において、本発明の抗体は完全なヒトであり得、すなわち、その抗体の配列は、完全に又は実質的にヒトである。完全ヒト抗体を作製する多くの方法が、当技術分野で公知であり、これには、トランスジェニックマウス(Bruggemannらの文献(1997):Curr Opin Biotechnol 8:455-458)、又は、選択方法と組合せたヒト抗体ライブラリ(Griffithsらの文献(1998):Curr Opin Biotechnol 9: 102-108)が含まれる。
「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むものとする。更なるフレームワーク領域修飾は、本明細書に記載するFcドメインアミノ酸修飾などのヒトフレームワーク配列内でなされ得る。
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列がある種に由来し、かつ定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、かつ定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体をいうものとする。
「特異的に結合する」(又は「免疫特異的に結合する」)という用語は、抗体がその意図する標的に専ら結合することを示すことを意図しないが、多くの実施態様において、このことは真実である。すなわち、抗体は、その標的に「特異的に結合し」、試料、細胞又は患者の他の成分に検出可能に又は実質的に結合しない。しかし、一部の実施態様において、非標的分子のその親和性と比較したときに、その意図した標的へのその親和性が約5倍高い場合は、抗体は「特異的に結合する」。適切には、望ましくない物質(特に、健常なヒト又は動物の天然起源のタンパク質又は組織)との顕著な交差反応又は交差結合は存在しない。標的分子に対する抗体の親和性は、例えば、非標的分子に対するその親和性の10倍、25倍、特に50倍、特に100倍以上などの、少なくとも約5倍高い。一部の実施態様において、抗体又は別の結合物質と抗原との間の特異的結合とは、少なくとも106 M-1の結合親和性を意味する。抗体は、例えば、約108 M-1〜約109 M-1、約109 M-1〜約1010 M-1、又は約1010 M-1〜約1011 M-1などの、少なくとも約107 M-1の親和性で結合する。抗体は、例えば、50 nM以下、10 nM以下、1 nM以下、100 pM以下、より好ましくは10 pM以下のEC50で結合する。
本明細書に使用する、タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質若しくは細胞に結合しない、又は高親和性で結合しないこと、すなわち、1×10-6 M以上、より好ましくは1×10-5 M以上、より好ましくは1×10-4 M以上、より好ましくは1×10-3 M以上、又はより更に好ましくは1×10-2 M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
本明細書に使用する「EC50」という用語は、50%の最大応答/効果をもたらす濃度を定量することによる化合物の効力をいうものとする。EC50は、Scratchard又はFACSによって決定する。
本明細書に使用する「Kassoc」又は「Ka」という用語は、特定の抗体‐抗原相互作用の会合速度をいうものとするのに対し、本明細書に使用する「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体‐抗原相互作用の解離速度をいうものとする。本明細書に使用する「KD」という用語は、親和定数をいうものとし、これは、Kaに対するKdの比(すなわち、Kd/Ka)から求められ、モル濃度(M)と表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を用いて決定することができる。抗体のKDを決定する好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用すること、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを使用することである。
本明細書に使用する、IgG抗体に対する「高親和性」という用語は、標的抗原に対し1×10-7 M以下、より好ましくは5×10-8 M以下、更により好ましくは1×10-8 M以下、更により好ましくは5×10-9 M以下、及び更により好ましくは1×10-9 M以下のKDを有する抗体をいう。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。例えば、IgMアイソタイプの「高親和性」結合とは、10-6 M以下、より好ましくは10-7 M以下、更により好ましくは10-8 M以下のKDを有する抗体をいう。
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原上の部位をいう。エピトープは、隣接するアミノ酸、又はタンパク質の三次フォールディングによって並置される非隣接アミノ酸の両方から形成され得る。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは通常、変性溶媒への曝露で保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは通常、変性溶媒による処理で失われる。エピトープには通常、固有の空間コンフォメーションに少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸が含まれる。エピトープの空間コンフォメーションを決定する方法には、例えば、X線結晶学及び二次元核磁気共鳴などの当技術分野の技術並びに本明細書に記載するものが含まれる(例えば、「分子生物学の方法におけるエピトープマッピングプロトコル(Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology)」, Vol. 66, G. E. Morris編(1996)参照)。
したがって、本発明に包含されるものはまた、本明細書に記載する抗体(すなわち、BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3)と同じエピトープに結合する(すなわち、認識する)抗体である。同じエピトープに結合する抗体は、標的抗原に対する参照抗体と統計的に有意に交差競合する(すなわち、競合的に当該参照抗体に結合するのを阻害する)これらの能力によって識別することができる。例えば、抗体が、同一であるか若しくは構造上類似するエピトープ(例えば、重複するエピトープ)、又は、結合時に抗体間の立体障害をもたらす、空間的に近位のエピトープに結合する場合、競合的阻害が生じ得る。
競合阻害は、試験中の免疫グロブリンが共通の抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するルーチンアッセイを用いて決定することができる。例えば、次に示す数多くの型の競合結合アッセイが知られている:固相直接又は間接放射免疫測定法(RIA)、固相直接又は間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahlらの文献(1983):Methods in Enzymology 9:242参照);固相直接ビオチン‐アビジンEIA(Kirklandらの文献(1986):J. Immunol. 137:3614参照);固相直接ラベルアッセイ、固相直接ラベルサンドイッチアッセイ(Harlow及びLaneの文献(1988):「抗体:研究室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Press参照);I-125ラベルを使用する固相直接ラベルRIA(Morelらの文献(1988):Mol. Immunol. 25(1):7参照);固相直接のビオチン‐アビジンEIA(Cheungらの文献(1990):Virology 176:546);及び、直接ラベルRIA(Moldenhauerらの文献(1990):Scand. J. Immunol. 32:77参照)。通常、かかるアッセイは、ラベルしていない試験免疫グロブリン及びラベルした参照免疫グロブリンのいずれかを有する固体表面又は細胞に結合された精製抗原の使用が関与する。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面又は細胞に結合するラベルの量を決定することによって測定する。通常、試験免疫グロブリンは、過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、これは、共通の抗原への参照抗体の特異的結合を少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、又はこれらを上回って阻害する。
他の技術には、例えば、エピトープの原子分解能を提供する、抗原:抗体複合体の結晶のX線解析などのエピトープマッピング法が含まれる。他の方法は、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の欠失が、エピトープ構成要素の指標とみなされることが多い、抗原断片又は抗原の突然変異させたバリエーションへの抗体の結合をモニタする。さらに、エピトープマッピングのためのコンピュータによるコンビナトリアル法も用いることもできる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリからの親和性単離特異的ショートペプチドに対する関心対象抗体の能力に依存する。そして、ペプチドは、ペプチドライブラリをスクリーニングするために使用される抗体に対応するエピトープの定義のためのリードとみなされる。また、エピトープマッピングについて、高次構造的に不連続なエピトープをマップすることを示すコンピュータによるアルゴリズムも開発されている。
本明細書に使用する「対象」という用語には、ヒト又は非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。
本開示の種々の態様を、次のサブセクションで更に詳細に説明する。
(抗BST1抗体)
本発明の抗体は、抗体の特定の機能的特徴又は特性に特徴がある。例えば、抗体は、ヒトBST1に特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体は、高親和性で、例えば、8×10-7 M以下、更により通常は1×10-8 M以下のKDでBST1に結合する。本発明の抗BST1抗体は、次に示す特徴の1以上を示し、また、特定の用途も示すことが好ましい。
50 nM以下、10 nM以下、1 nM以下、100 pM以下、又はより好ましくは10 pM以下のEC50でヒトBST1に結合すること;
BST1を発現するヒト細胞に結合すること。
一実施態様において、抗体は、BST1に存在し、他のタンパク質には存在しない抗原エピトープに結合することが好ましい。好ましくは、抗体は、関連するタンパク質には結合せず、例えば、抗体は、他の細胞接着分子に実質的に結合しない。一実施態様において、抗体は、BST1を発現する細胞に取り込まれ得る。抗体インターナリゼーションを評価する標準アッセイは、当技術分野において公知であり、例えば、MabZap又はHumZapインターナリゼーションアッセイを含む。
BST1に対する抗体の結合能を評価する標準アッセイは、タンパク質又は細胞レベルで行うことができ、当技術分野で公知であり、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIA、BIAcore(登録商標)アッセイ及びフローサイトメトリー解析を含む。適切なアッセイは、実施例において詳述する。また、抗体の結合カイネティクス(例えば、結合親和性)は、当技術分野で公知の標準アッセイによって、例えば、Biacore(登録商標)システム分析によっても評価することができる。Raji又はDaudi B細胞腫瘍細胞への結合を評価するために、Raji(ATCC保管番号CCL-86)又はDaudi(ATCC保管番号CCL-213)細胞は、米国培養細胞株保存機関などの一般利用可能な供給源から得ることができ、フローサイトメトリー解析などの標準アッセイに使用することができる。
(本発明のモノクローナル抗体)
本発明の好適な抗体は、実施例1〜4に記載するような、単離され、かつ構造が特徴付けられた、モノクローナル抗体BST1_A2及びBST1_A1である。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVHアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号2、1及び52に示す。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVKアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号4、3及び53に示す。
これらの抗体がそれぞれBST1に結合できる場合、VH及びVK配列を「混合して適合させ」、本発明の他の抗BST1結合分子を作製することができる。かかる「混合して適合させ」た抗体のBST1結合は、上述の結合アッセイ及び実施例に記載する結合アッセイ(例えば、ELISA)を用いて試験することができる。好ましくは、VH及びVK鎖を混合して適合させる場合、特定のVH/VK対からのVH配列は、構造的に類似のVH配列に置換される。同様に、好ましくは、特定のVH/VK対からのVK配列は、構造的に類似のVK配列に置換される。
したがって、一態様において、本発明は、配列番号2、1及び52からなる群より選択される配列番号に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4、3及び53からなる群より選択される配列番号に示すアミノ酸配列含む軽鎖可変領域とを含む抗体を提供し、この抗体は、BST1、好ましくはヒトBST1に特異的に結合する。
好適な重鎖と軽鎖の組合せには、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号53のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域が含まれる。
別の態様において、本発明は、BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3の重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せを含む抗体を提供する。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVH CDR1のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号10、9及び56に示される。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVH CDR2のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号12又は51、11及び57に示される。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVH CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号14、13及び58に示される。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVK CDR1のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号16、15及び59に示される。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVK CDR2のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号18、17及び60に示される。BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVK CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号20、19及び61に示される。CDR領域は、Kabatシステムを使用して描写される(Kabat, E. A.らの文献(1991)「免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」, 第5版, 米国保健社会福祉省, NIH公報第91-3242号)。
これらの抗体のそれぞれがBST1に結合し、抗原結合特異性がCDR1、CDR2及びCDR3領域により主に提供される場合、VH CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びにVK CDR1、CDR2及びCDR3配列を「混合して適合させ」(すなわち、異なる抗体由来のCDRを混合して適合させることができるが、各抗体は一般に、VH CDR1、CDR2及びCDR3、並びにVK CDR1、CDR2及びCDR3を含有する)、本発明の他の抗BST1結合分子を作製することができる。したがって、本発明は具体的には、重鎖及び軽鎖のCDRの考え得るあらゆる組合せを含む。
かかる「混合して適合させ」た抗体のBST1結合は、上述の及び実施例に記載した結合アッセイ(例えば、ELISA、Biacore(登録商標)分析)を用いて試験することができる。好ましくは、VH CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVH 配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似のCDR配列に置換される。同様に、VK CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVK 配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似のCDR配列に置換されることが好ましい。新規のVH及びVK配列は、1以上のVH及び/又はVL/VK CDR領域配列を、モノクローナル抗体BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3について本明細書に開示するCDR配列からの構造上類似した配列で、置換することにより作製できることが当業者に容易に理解される。
したがって、別の態様において、本発明は、すべての考えられ得る組合せで、次に示すものを含む、単離されたモノクローナル抗体又はこれらの抗原結合部分を提供し:
配列番号10、9及び56からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR1;
配列番号12又は51、11及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR2;
配列番号14、13及び58からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR3;
配列番号16、15及び59からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR1;
配列番号18、17及び60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR2;並びに、
配列番号20、19及び61からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR3、
ここで、抗体は、BST1、好ましくはヒトBST1に特異的に結合する。
別の好適な実施態様において、抗体は、次に示すものを有する:
配列番号10を含む、重鎖可変領域CDR1;
配列番号12又は配列番号51を含む、重鎖可変領域CDR2;
配列番号14を含む、重鎖可変領域CDR3;及び、
配列番号16を含む、軽鎖可変領域CDR1;
配列番号18を含む、軽鎖可変領域CDR2;
配列番号20を含む、軽鎖可変領域CDR3。
別の好適な実施態様において、抗体は、次に示すものを有する:
配列番号9を含む、重鎖可変領域CDR1;
配列番号11を含む、重鎖可変領域CDR2;
配列番号13を含む、重鎖可変領域CDR3;及び、
配列番号15を含む、軽鎖可変領域CDR1;
配列番号17を含む、軽鎖可変領域CDR2;
配列番号19を含む、軽鎖可変領域CDR3。
別の好適な実施態様において、抗体は、次に示すものを有する:
配列番号56を含む、重鎖可変領域CDR1;
配列番号57を含む、重鎖可変領域CDR2;
配列番号58を含む、重鎖可変領域CDR3;及び、
配列番号59を含む、軽鎖可変領域CDR1;
配列番号60を含む、軽鎖可変領域CDR2;
配列番号61を含む、軽鎖可変領域CDR3。
CDR1及び/又はCDR2ドメインから独立して、CDR3ドメインが単独で、同族の抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができ、かつ、共通のCDR3配列に基づき同じ結合特異性を有する複数の抗体を予測どおりに作製することができることは、当技術分野で周知である。例えば、次の文献を参照されたい:Klimkaらの文献(2000):British J. of Cancer 83(2)252-260(マウス抗CD30抗体Ki-4の重鎖可変ドメインCDR3のみを使用する、ヒト化抗CD30抗体の生産について記載している。);Beiboerらの文献(2000):J. Mol. Biol. 296:833-849(親マウスMOC-31抗EGP-2抗体の重鎖CDR3配列のみを使用する、組換え上皮糖タンパク質-2(EGP-2)抗体について記載している。);Raderらの文献(1998):Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8910-8915(マウス抗インテグリンαvβ3抗体LM609の重鎖及び軽鎖可変CDR3ドメインを使用するヒト化抗インテグリンαvβ3抗体のパネルについて記載しており、各抗体メンバーは、CDR3ドメインの外側に特徴的な配列を含み、親マウス抗体と同等の高い親和性で又は親マウス抗体よりも高い親和性を有する親マウス抗体と同じエピトープに結合することができる。);Barbasらの文献(1994):J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162(CDR3ドメインが、結合する抗原に最も顕著に寄与することについて記載している。);Barbasらの文献(1995):Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:2529-2533(抗破傷風トキソイドFabの重鎖へのヒト胎盤DNAに対する3つのFab(SI-1、SI-40及びSI-32)の重鎖CDR3配列をグラフト化し、これによって、既存の重鎖CDR3を置換することについて記載しており、このことは、CDR3ドメイン単独により結合特異性を与えたことを実証している。);並びに、Ditzelらの文献(1996):J. Immunol. 157:739-749(単一特異的IgG破傷風トキソイド結合Fab p313抗体の重鎖に対する親の多特異性Fab LNA3の重鎖CDR3のみの転移が、親Fabの結合特異性を保持するのに十分であったというグラフト化試験について記載している。)。これら参考文献はそれぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
したがって、本発明は、ヒト又は非ヒト動物に由来する抗体からの1以上の重鎖及び/又は軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供し、モノクローナル抗体は、BST1に特異的に結合することができる。特定の態様において、本発明は、マウス又はラット抗体などの非ヒト抗体由来の1以上の重鎖及び/又は軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供し、モノクローナル抗体は、BST1に特異的に結合することができる。一部の実施態様において、非ヒト抗体由来の1以上の重鎖及び/又は軽鎖CDR3ドメインを含む本発明の抗体は、対応する親非ヒト抗体と(a)競合的に結合することができ、(b)機能的特徴を保持し、(c)同じエピトープに結合し、及び/又は、(d)類似の結合親和性を有する。
他の態様において、本発明は、例えば、非ヒト動物から得られるヒト抗体などの、ヒト抗体由来の1以上の重鎖及び/又は軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供し、ヒト抗体は、BST1に特異的に結合することが可能である。他の態様において、本発明は、例えば、非ヒト動物から得られたヒト抗体などの、第1のヒト抗体由来の1以上の重鎖及び/又は軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供し、ここで第1のヒト抗体は、BST1に特異的に結合することができ、かつ第1のヒト抗体由来のCDR3ドメインは、BST1に特異的に結合することができる第2のヒト抗体を生成するように、BST1に対する結合特異性を欠くヒト抗体のCDR3ドメインを置換する。一部の実施態様において、第1のヒト抗体由来の1以上の重鎖及び/又は軽鎖CDR3ドメインを含む本発明の抗体は、対応する親の第1のヒト抗体と(a)競合的に結合することができ、(b)機能的特徴を保持し、(c)同じエピトープに結合し、及び/又は、(d)類似の結合親和性を有する。
(特定の生殖細胞系列配列を有する抗体)
特定の実施態様において、本発明の抗体は、特定の生殖細胞系列重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域、及び/又は特定の生殖細胞系列軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
例えば、好適な実施態様において、本発明は、マウスVH 1-39遺伝子、マウスVH 1-80遺伝子又はマウスVH 69-1遺伝子の産物であるか又はこれに由来する重鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、抗体はBST1に特異的に結合する。更に別の好適な実施態様において、本発明は、マウスVK 4-55遺伝子、マウスVK 4-74遺伝子又はマウスVK 44-1遺伝子の産物であるか又はこれに由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、抗体はBST1に特異的に結合する。
更に別の好適な実施態様において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、抗体は、
マウスVH 1-39遺伝子(遺伝子には、配列番号35及び36に示すヌクレオチド配列が含まれる。)の産物であるか又はこれに由来する重鎖可変領域を含み、マウスVK 4-55遺伝子(遺伝子には、配列番号40、41及び42に示すヌクレオチド配列が含まれる。)の産物であるか又はこれに由来する軽鎖可変領域を含み、かつBST1、好ましくはヒトBST1に特異的に結合する。上述の配列によりVH 1-39及びVK 4-55遺伝子を有する抗体の例は、BST1_A2である。
更に別の好適な実施態様において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、抗体は、
マウスVH 1-80遺伝子(遺伝子には、配列番号33及び34に示すヌクレオチド配列が含まれる。)の産物であるか又はこれに由来する重鎖可変領域を含み、マウスVK 4-74遺伝子(遺伝子には、配列番号37、38及び39に示すヌクレオチド配列が含まれる。)の産物であるか又はこれに由来する軽鎖可変領域を含み、かつBST1、好ましくはヒトBST1に特異的に結合する。上述の配列によりVH 1-80及びVK 4-74遺伝子を有する抗体の例は、BST1_A1である。
更に別の好適な実施態様において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、抗体は、
マウスVH 69-1遺伝子(遺伝子には、配列番号68及び69に示すヌクレオチド配列が含まれる。)の産物であるか又はこれに由来する重鎖可変領域を含み、マウスVK 44-1遺伝子(遺伝子には、配列番号70、71及び72に示すヌクレオチド配列が含まれる。)の産物であるか又はこれに由来する軽鎖可変領域を含み、かつBST1、好ましくはヒトBST1に特異的に結合する。上述の配列によりVH及びVK遺伝子を有する抗体の例は、BST1_A3である。
本明細書中で使用される抗体は、抗体の可変領域が、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムから得られる場合、特定の生殖細胞系列配列の「産物」であるか、又は特定の生殖細胞系列配列に「由来する」、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含む。かかるシステムには、関心対象の抗原を用いてファージに提示されるマウス免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることが含まれる。マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか又はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に「由来する」抗体自体は、抗体のヌクレオチド又はアミノ酸配列を、マウス生殖細胞系列免疫グロブリンのヌクレオチド又はアミノ酸配列と比較すること、及び抗体の配列に最も近い配列(すなわち、最も大きな%同一性)であるマウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することによって同定することができる。特定のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか又は特定のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列に「由来する」抗体は、例えば、天然存在型体細胞突然変異、又は部位特異的突然変異の意図的な導入に起因する、生殖細胞系列配列と比較したアミノ酸の相違を含み得る。しかしながら、選択された抗体は通常、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、かつ、他の種(例えば、ヒト生殖細胞系列配列)の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列と比較する場合、抗体をマウスのものであると同定するアミノ酸残基を含有する。特定の場合において、抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列において少なくとも95%、又は更に少なくとも96%、97%、98%又は99%同一であり得る。通常、特定のマウス生殖細胞系列配列に由来する抗体は、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10以下のアミノ酸の相違を示す。特定の場合において、抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と5以下、又は4、3、2以下若しくは1のアミノ酸の相違を示し得る。
(相同抗体)
更に別の実施態様において、本発明の抗体は、本明細書に記載する好ましい抗体のアミノ酸配列と相同性のあるアミノ酸配列を含んだ重鎖及び軽鎖可変領域を含み、抗体は、本発明の抗BST1抗体の所望の機能特性を保持する。
例えば、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、重鎖可変領域は、配列番号2、1及び52からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号4、3及び53からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、抗体はBST1に結合する。かかる抗体は、50 nM以下、10 nM以下、1 nM以下、100 pM以下、より好ましくは10 pM以下のEC50で、ヒトBST1に結合し得る。
また、抗体は、ヒトBST1をトランスフェクトしたCHO細胞に結合することもできる。
種々の実施態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。
他の実施態様において、VH及び/又はVKアミノ酸配列は、上述の配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。上述の配列のVH及びVK領域と高い同一性(すなわち、80%以上)であるVH及びVK領域を有する抗体は、配列番号6、5、8、7、54及び55をコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位特異的又はPCR媒介変異誘発)によって得ることができ、その後、本明細書に説明する機能的アッセイを用いて、保持された機能についてコードされた改変抗体を試験する。
2つの配列間の%同一性は、配列によって共有される同じ位置の数の関数(すなわち、%相同性=同じ位置の数/位置の総数×100)であり、これには、2つの配列の最適なアライメントのために導入されることが必要であるギャップの数及び各ギャップの長さが考慮される。2つの配列間の配列の比較及び%同一性の決定は、下記の非限定的な実施例において説明するように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
2つのアミノ酸配列間の同一性は、PAM120重み残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用し、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers及びW. Millerのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))を使用して決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の%同一性は、Blossum 62マトリクス又はPAM250マトリクス、並びに16、14、12、10、8、6若しくは4のギャップ重み及び1、2、3、4、5若しくは6の長さ重みを使用し、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)におけるGAPプログラムに組み込まれたNeedleman及びWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))を使用して決定することができる。
加えて又は代替的に、本発明のタンパク質配列は、更に公共データベースに対して検索を実行する「問合せ配列」として使用して、例えば、関連配列を同定することができる。かかる検索は、Altschulらの文献(1990)(J. Mol. Biol. 215:403-10)のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実行することができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、文字長=3を用いて実行し、本発明の抗体分子と相同性のあるアミノ酸配列を得ることができる。比較のためのギャップ付きアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschulらの文献(1997)(Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)で記載されているように、利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。
(保存的修飾を有する抗体)
特定の実施態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含んだ重鎖可変領域と、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含んだ軽鎖可変領域とを含み、これらのCDR配列の1以上は、本明細書に記載する好ましい抗体(例えば、BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3)に基づく特定のアミノ酸配列又はその保存的修飾を含み、抗体は、本発明の抗BST1抗体の所望の機能特性を保持する。したがって、本発明は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含んだ重鎖可変領域と、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含んだ軽鎖可変領域とを含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号14、13及び58のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、その保存的修飾とを含み、軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号20、19及び61のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、その保存的修飾とを含み、抗体は、50 nM以下、10 nM以下、1 nM以下、100 pM以下、又はより好ましくは10 pM以下のEC50で、ヒトBST1に結合することができる。
また、抗体は、ヒトBST1をトランスフェクトしたCHO細胞に結合することもできる。
好適な実施態様において、重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号12、51、11及び57のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、その保存的修飾とを含み、軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号18、17及び60のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含む。別の好適な実施態様において、重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号10、9及び56のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含み、軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号16、15及び59のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含む。別の好適な実施態様において、重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号14、13及び58のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、その保存的修飾とを含み、軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号20、19及び61のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と、その保存的修飾とを含む。
好適な実施態様において、重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号12又は51、11及び57のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含み、軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号18、17及び60のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含む。別の好適な実施態様において、重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号10、9、及び56のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含み、軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号16、15及び59のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列とその保存的修飾とを含む。
種々の実施態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。
本明細書に使用する「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に顕著な効果を及ぼさないか又は当該結合特性を変更しない、アミノ酸の修飾をいうものとする。かかる保存的修飾には、アミノ酸の置換、付加及び欠失が含まれる。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの、当技術分野で公知の標準的な方法によって本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーには、当技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーから他のアミノ酸残基に置換することができ、改変抗体は、本明細書に説明する機能的アッセイを用いて、保持された機能について試験することができる。
配列番号10、9又は56の重鎖CDR1配列は、1以上の保存的配列修飾(例えば、1、2、3、4、5若しくはこれらよりも多いアミノ酸の置換、付加又は欠失)を含み、配列番号16、15、及び59の軽鎖CDR1配列は、1以上の保存的配列修飾(例えば、1、2、3、4、5若しくはこれらよりも多いアミノ酸の置換、付加又は欠失)を含み、配列番号12又は51、11及び57に示す重鎖CDR2配列は、1以上の保存的配列修飾(例えば、1、2、3、4、5若しくはこれらよりも多いアミノ酸の置換、付加又は欠失)を含み、配列番号18、17及び60に示す軽鎖CDR2配列は、1以上の保存的配列修飾(例えば、1、2、3、4、5若しくはこれらよりも多いアミノ酸の置換、付加又は欠失)を含み、配列番号14、13及び58に示す重鎖CDR3配列は、1以上の保存的配列修飾(例えば、1、2、3、4、5若しくはこれらよりも多いアミノ酸の置換、付加又は欠失)を含み、及び/又は、配列番号20、19及び61に示す軽鎖CDR3配列は、1以上の保存的配列修飾(例えば、1、2、3、4、5若しくはこれらよりも多いアミノ酸の置換、付加又は欠失)を含み得る。
(本発明の抗BST1抗体と同じエピトープに結合する抗体)
別の実施態様において、本発明は、本発明のBST1モノクローナル抗体のいずれかと同じヒトBST1上のエピトープに結合する抗体(すなわち、BST1への結合において、本発明のモノクローナル抗体のいずれかと交差競合能を有する抗体)を提供する。好適な実施態様において、交差競合試験のための参照抗体は、モノクローナル抗体BST1_A2(それぞれ、配列番号2及び4に示すVH及びVK配列を有する。)、モノクローナル抗体BST1_A1(それぞれ、配列番号1及び3に示すVH及びVK配列を有する。)、モノクローナル抗体BST1_A3(それぞれ、配列番号52及び53に示すVH及びVK配列を有する。)であり得る。
かかる交差競合抗体は、標準的なBST1結合アッセイにおいて、BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3と交差競合するこれらの能力に基づいて同定することができる。例えば、BIAcore分析、ELISAアッセイ又はフローサイトメトリーを用いて、本発明の抗体との交差競合を実証することができる。例えば、ヒトBST1へのBST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3の結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体が、ヒトBST1への結合において、BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3と競合することができ、その結果、ヒトBST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3上のエピトープと同じエピトープに結合することを実証する。
(改変された及び修飾された抗体)
本発明の抗体は、本明細書に開示するVH及び/又はVL配列の1以上を有する抗体を使用して調製することができ、これは、修飾抗体を改変するための出発物質として使用することができ、修飾抗体は、出発抗体と比較して、特性を変更することができる。抗体は、一方又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)内、例えば1以上のCDR領域内、及び/又は1以上のフレームワーク領域内の1以上のアミノ酸を修飾することによって改変することができる。加えて又は代替的に、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能を変更するように、定常領域内の残基を修飾することによって改変することができる。
特定の実施態様において、CDRグラフト化を用いて、抗体の可変領域を操作することができる。抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。そのため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側配列より、個々の抗体間でより多様である。CDR配列は、大部分の抗体‐抗原相互作用の原因となるので、種々の特性を有する種々の抗体由来のフレームワーク配列上にグラフトされる特定の天然存在型抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然存在型抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L.らの文献(1998):Nature 332:323-327;Jones, P.らの文献(1986):Nature 321:522-525;Queen, C.らの文献(1989):Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86:10029-10033;Winterの米国特許第5,225,539号、並びにQueenらの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号及び同6,180,370号参照)。
したがって、本発明の別の実施態様は、それぞれ、配列番号10、9及び56;12又は51、11及び57;並びに14、13及び58からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3配列を含んだ重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号16、15及び59;18、17及び60;並びに20、19及び61からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3配列を含んだ軽鎖可変領域とを含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。したがって、かかる抗体は、モノクローナル抗体BST1_A2、BST1_A1及びBST1_A3のVH 及びVK CDR配列を含み、更にこれらの抗体由来の種々のフレームワーク配列を含み得る。
かかるフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共DNAデータベース又は公表文献から得ることが可能である。例えば、マウス重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子についての生殖細胞系列DNA塩基配列は、IMGT (international ImMunoGeneTics)マウス生殖細胞系列配列データベース(ハイパーテキスト・トランスファー・プロトコル//www.imgt.cines.fr/?で利用可能)、並びにKabat, E. A.らの文献(1991):「免疫学的関心対象のタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」,第5版, 米国保健社会福祉省, NIH公報番号91-3242で見出すことができ、これらの各内容は、引用によりそのすべてが明示的に本明細書中に組み込まれる。別の例として、マウス重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースに見出すことができる。
抗体タンパク質配列は、当業者に周知のGapped BLAST(Altschulらの文献(1997):Nucleic Acids Research 25:3389-3402)と称される配列類似性検索法のうちの一つを使用して、蓄積されたタンパク質配列データベースに対して比較される。BLASTは、抗体配列とデータベース配列との間の統計的に有意なアライメントが、整列配置された文字の高いスコアリングセグメント対(HSP)を含む可能性があるという点で、帰納的なアルゴリズムである。スコアが拡張又はトリミングによって改善することができないセグメント対は、ヒットと称される。簡潔にいえば、データベースのヌクレオチド配列は翻訳され、FR3フレームワーク領域を介するFR1間の及びこれを含む領域は保持される。データベース配列は、98残基の平均長を有する。タンパク質の全長にわたって正確に一致する重複配列は、除去される。低複雑性フィルタ(オフにする)以外のデフォルト標準パラメータでのプログラムblastp及びBLOSUM62の置換マトリクスを使用するタンパク質のBLAST検索は、トップ5ヒットについてフィルタリングし、配列マッチを得る。ヌクレオチド配列は6フレームすべてで翻訳され、データベース配列のマッチセグメントにおいて終止コドンがないフレームは、潜在的なヒットとみなされる。これは、6フレームすべての抗体配列を翻訳するBLASTプログラムtblastxを使用して順次確認し、これらの翻訳を、6フレームすべてで動的に翻訳されるデータベースのヌクレオチド配列と比較する。
その同一性は、配列の全長にわたる抗体配列とタンパク質データベースとの間の正確なアミノ酸マッチである。陽性(同一性+置換マッチ)は、同一ではないが、BLOSUM62置換マトリクスによってガイドされたアミノ酸置換である。抗体配列が、同じ同一性を有する2つのデータベース配列をマッチさせる場合、大部分の陽性を有するヒットは、マッチする配列ヒットであると決定される。
本発明の抗体における使用のための好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列に構造的に類似するもの、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体によって使用されるVH 1-80フレームワーク配列、VH 1-39フレームワーク配列、VK 4-74フレームワーク配列及び/又はVK 4-55フレームワーク配列に類似するものである。VH CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びにVK CDR1、CDR2及びCDR3配列は、そのフレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子に見出されるのと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトすることができるか、又は、CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1以上の突然変異を含むフレームワーク領域にグラフトすることができる。例えば、特定の事例において、抗体の抗原結合能を維持するか又は増強するためにフレームワーク領域内で残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、Queenらの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号及び同6,180,370号参照)。
別の型の可変領域修飾は、VH及び/又はVK CDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内でアミノ酸残基を変異させ、これによって、関心対象抗体の1以上の結合特性(例えば、親和性)を改良することである。部位特異的変異誘発又はPCR媒介変異誘発を行って突然変異を導入することができ、抗体結合に対する効果又は関心対象の他の機能特性は、本明細書に記載され、及び実施例において提供されるインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。一部の実施態様において、保存的修飾(先に論述した)が導入される。または、非保存的修飾がなされ得る。突然変異は、アミノ酸の置換、付加又は欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、通常、CDR領域内の1、2、3、4又は5以下の残基が変更されるが、当業者に理解されるように、他の領域(例えば、フレームワーク領域)の変異が大きくなり得る。
したがって、別の実施態様において、本開示は、次に示すものを含んだ重鎖可変領域を含む単離された抗BST1モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する:(a)配列番号10、9及び56からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は、配列番号10、9及び56と比較して1、2、3、4若しくは5のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1領域;(b)配列番号12又は51、11及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は、配列番号12又は51、11及び57と比較して1、2、3、4若しくは5のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR2領域;(c)配列番号14、13及び58からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は、配列番号14、13及び58と比較して1、2、3、4若しくは5のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR3領域;(d)配列番号16、15及び59からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は、配列番号16、15及び59と比較して1、2、3、4若しくは5のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVK CDR1領域;(e)配列番号18、17及び60からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は、配列番号18、17及び60と比較して1、2、3、4若しくは5のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVK CDR2領域;並びに、(f)配列番号20、19及び61からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は、配列番号20、19及び61と比較して1、2、3、4若しくは5のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVK CDR3領域。
本開示の改変抗体には、例えば、抗体の特性を改良するために、VH及び/又はVK内でフレームワーク残基に修飾がなされたものが含まれる。通常、かかるフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を減少させるためになされる。例えば、1つのアプローチは、対応する生殖細胞系列配列に1以上のフレームワーク残基を「復帰突然変異する」ことである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。かかる残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定することができる。
フレームワーク修飾の別の型は、フレームワーク領域内で、又は1以上のCDR領域内であっても、1以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去することを含み、これによって、抗体の潜在的免疫原性が低減される。このアプローチは、「脱免疫化(deimmunization)」とも呼ばれ、米国特許出願公開第2003/0153043号において更に詳細に記載されている。
フレームワーク又はCDR領域内でなされる修飾に加えて、又はそれとは別に、本発明の抗体は、Fc領域内に修飾を含むように操作し、通常、抗体の1以上の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害作用を変更することができる。さらに、本発明の抗体は、化学修飾し(例えば、1以上の化学的部分を抗体に結合することができる。)、又はそのグリコシル化を変更するように修飾して、再び抗体の1以上の機能特性を変更することができる。これらの実施態様はそれぞれ、更に下記に詳述されている。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。
一実施態様において、CH1のヒンジ領域は、このヒンジ領域におけるシステイン残基の数を変更する(例えば、増加させる又は減少させる)ように、修飾される。このアプローチは、米国特許第5,677,425号に更に記載されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖のアセンブリを促進する、又は抗体の安定性を増加させる若しくは減少させるように、変更される。
別の実施態様において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるために変異される。より具体的には、1以上のアミノ酸突然変異は、抗体が、未変性のFc‐ヒンジドメインSpA結合と比較して損なわれたブドウ球菌プロテインA(SpA)を有するように、Fc‐ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン境界領域に導入される。このアプローチは、米国特許第6,165,745号において更に詳細に記載されている。
別の実施態様において、抗体は、その生物学的半減期を増加させるように修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、次に示す突然変異体の1以上を導入することができる:米国特許第6,277,375号に記載されている、T252L、T254S、T256F。または、生物学的半減期を増加させるために、抗体は、米国特許第5,869,046号及び同6,121,022号に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取得されるサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、CH1又はCL領域内で変更することができる。
別の実施態様において、抗体は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる国際公開公報第2007/059782号に記載されるように、ユニボディとして生産される。
更なる他の実施態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変更するように、少なくとも1つのアミノ酸残基を種々のアミノ酸残基で置換することによって、変更される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320及び322から選択される1以上のアミノ酸は、抗体が、エフェクターリガンドに対して変更された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するように、種々のアミノ酸残基に置換することができる。親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のC1成分であり得る。このアプローチは、米国特許第5,624,821号及び同5,648,260号においてより詳細に記載されている。
別の例において、アミノ酸残基329、331及び322から選択される1以上のアミノ酸は、抗体が、改変されたC1q結合、及び/又は低減若しくは滅失された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を有するように、種々のアミノ酸残基に置換することができる。このアプローチは、米国特許第6,194,551号により詳細に記載されている。
別の例において、アミノ酸位231及び239における1以上のアミノ酸残基が変更され、これによって、補体を固定する抗体の能力が変更される。このアプローチは、国際公開公報第94/29351号により詳細に記載されている。
更なる別の例において、Fc領域は、次に示す位置で1以上のアミノ酸を修飾することによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増加させるように、及び/又はFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加させるように、修飾される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439。このアプローチは、Prestaによる国際公開公報第00/42072号により詳細に記載されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIII及びFcRnにおけるヒトIgG1上の結合部位がマップされ、改良型の結合を有する変異型が記載されている(Shields, R.L.らの文献(2001):J. Biol. Chem. 276:6591-6604参照)。位置256、290、298、333、334及び339での特定の突然変異は、FcγRIIIへの結合を改良することを示した。加えて、次に示す組合せ突然変異体は、FcγRIII結合を改良することを示した:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A、及びS298A/E333A/K334A。さらに、ADCC変異体は、例えば、国際公開公報第2006/019447号に記載されている。
更なる別の例において、Fc領域は、例えば、国際特許出願PCT/US2008/088053号、米国特許第7,371,826号、米国特許第7,670,600号、及び国際公開公報第97/34631号に記載されているように、一般に、FcRn受容体への結合を増加させることによって、抗体の半減期を増加させるように修飾される。別の実施態様において、抗体は、その生物学的半減期を増加させるように修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、次に示す突然変異体の1以上を導入することができる:Wardによる米国特許第6,277,375号に記載されている、T252L、T254S、T256F。または、生物学的半減期を増加させるために、抗体は、米国特許第5,869,046号及び同6,121,022号に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取得されるサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、CH1又はCL領域内で変更することができる。
更に別の実施態様において、抗体のグリコシル化が修飾される。例えば、アグリコシル化(aglycosylated)抗体を作製することができる(すなわち、グリコシル化を欠いている抗体)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるように、変更することができる。かかる炭水化物の修飾は、例えば、抗体配列内の1以上のグリコシル化部位を変更することによって達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去を生じる1以上のアミノ酸置換をすることができ、これによって、その部位でグリコシル化が除去される。かかるアグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させることができる。かかるアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号及び同6,350,861号により詳細に記載されており、位置297のアスパラギンを除去することによって達成することができる。
加えて又は代替的に、グリコシル化の改変型を有する抗体、例えば、減少したフコシル残基量を有する低フコシル化(hypofucosylated)抗体、又は増加した分岐GlcNac構造体を有する抗体などを作製することができる。これは、当技術分野において、「改変グリコフォーム」ともいう。かかる改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増大させることが実証された。かかる炭水化物の修飾は、一般に、2つの方法で、例えば、一部の実施態様において、改変グリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって達成することができる。改変グリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野において説明されており、本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用し、これによって、改変グリコシル化を有する抗体を生産することができる。POTELLIGENT(登録商標)技術を参照されたい。例えば、細胞株Ms704、Ms705及びMs709は、Ms704、Ms705及びMs709細胞株において発現した抗体が、これらの炭水化物においてフコースを欠失するように、フコシル基転移酵素遺伝子であるFUT8(α(1,6)フコシル基転移酵素)を欠失する。Ms704、Ms705、及びMs709 FUT8-/-細胞株は、2つの置換ベクターを使用して、CHO/DG44細胞のFUT8遺伝子の標的破壊によって作製される(米国特許出願公開第2004/0110704号、米国特許第7,517,679号及びYamane-Ohnukiらの文献(2004):Biotechnol Bioeng 87:614-22参照)。別の例として、Hanaiらによる欧州特許第1,176,195号は、機能的に破壊されたフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞株について記載し、かかる細胞株において発現する抗体は、α1,6結合関連酵素を減少させるか又は除去することによって、低フコシル化を示す。Hanaiらの文献はまた、抗体のFc領域に結合するN‐アセチルグルコサミンにフコースを添加することで低い酵素活性を有する細胞株、又は酵素活性を有しない細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)についても記載している。または、改変グリコフォーム、特にアフコシル化(afucosylation)は、グリコシル化経路酵素の低分子阻害剤を使用して行うことができる(例えば、Rothmanらの文献(1989):Mol. Immunol. 26(12): 113-1123;Elbeinの文献(1991):FASEB J. 5:3055;国際特許出願PCT/US2009/042610号、及び米国特許第7,700,321号参照)。国際公開公報第03/035835号は、フコースをAsn(297)結合した炭水化物に結合させる能力が低下した変異CHO細胞株であるLec13細胞について記載し、さらに、宿主細胞において発現する抗体には低フコシル化が生じる(Shields, R.L.らの文献(2002):J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。国際公開公報第99/54342号は、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII))を発現するように改変された細胞株について記載し、改変された細胞株において発現された抗体は、抗体のADCC活性の増加をもたらす分岐GlcNac構造の増加を示す(Umanaらの文献(1999):Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。
または、抗体のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を使用して切断することができる。例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino, A.L.らの文献(1975):Biochem. 14:5516-23)。
本発明により意図される本明細書の抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体をペグ化し、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させることができる。抗体をペグ化するために、抗体又はその断片は通常、1以上のポリエチレングリコール(PEG)基が抗体又は抗体断片に結合する条件下で、PEG、例えば、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などと反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(又は、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して行われる。本明細書に使用する「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1-C10)アルコキシ‐ポリエチレングリコール又はアリールオキシ‐ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール‐マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGのあらゆる形態を含むものとする。特定の実施態様において、ペグ化される抗体は、アグリコシル化された抗体である。タンパク質をペグ化する方法は、当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、欧州特許第0154316号及び同0401384号を参照されたい。
追加的な実施態様において、例えば、診断目的又は検出目的のための本発明の抗体の使用において、抗体はラベルを含み得る。本明細書において「ラベルされた」とは、化合物が、化合物の検出を可能にするように結合した少なくとも1つの元素、同位体又は化合物を有することを意味する。一般に、ラベルは次に示す3つに分類される:a)放射性又は重同位元素であり得る同位体ラベル;b)磁気的、電気的、熱的ラベル;及び、c)着色色素又は発光色素。ただし、ラベルには、酵素、及び磁気粒子などの粒子が含まれる。好ましいラベルとしては、蛍光性ランタニド錯体(ユウロピウムとテルビウムのものを含む)、並びに、量子ドット、フルオレスセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリトロシン、クマリン、メチル‐クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシフェルイエロー、カスケードブルー、テキサスレッド、Alexa色素、Cy色素、及びRichard P. Hauglandの文献:「分子プローブハンドブック(Molecular Probes Handbook)」、第6版(引用により本明細書中に明示的に組み込まれる。)に記載されている他のものを含むがこれらに限定されない蛍光ラベルが挙げられるが、これらに限定されない。
(リンカー)
本発明は、抗体が化学リンカーを介してパートナーに連結された、抗体‐パートナー結合体を提供する。一部の実施態様において、リンカーはペプチジルリンカーであり、他のリンカーには、ヒドラジン及びジスルフィドリンカーが含まれる。また、本開示は、パートナーに結合されているリンカーに加え、本質的にいずれかの分子種への結合に適した切断可能なリンカーアームも提供する。本発明のリンカーアームの態様は、その治療的部分への結合を参照することによって、本明細書に例示される。しかし、リンカーが、診断剤、分析剤、生体分子、標的化剤、検出可能なラベルなどを含むがこれらに限定はされない、多様な種に結合可能であることが当業者に容易に理解される。
抗体‐パートナー結合体におけるペプチジル及び他のリンカーの使用については、米国仮特許出願第60/295,196号;同60/295,259号;同60/295342号;同60/304,908号;同60/572,667号;同60/661,174号;同60/669,871号;同60/720,499号;同60/730,804号;同60/735,657号、及び、米国特許出願第10/160,972号;同10/161,234号;同11/134,685号;同11/134,826号;同11/398,854号;及び、米国特許第6,989,452号、並びに国際特許出願PCT/US2006/37793号に記載され、これらはすべて、引用により本明細書中に組み込まれる。更なるリンカーが、米国特許第6,214,345号、米国特許出願公開第2003/0096743号及び米国特許出願公開第2003/0130189号、de Grootらの文献:Chem. 42, 5277 (1999);de Grootらの文献:J. Org. Chem. 43, 3093 (2000);de Grootらの文献:J. Med. Chem. 66, 8815, (2001);国際公開公報第02/083180号;Carlらの文献:J. Med. Chem. Lett. 24, 479, (1981);Dubowchikらの文献:Bioorg & Med. Chem. Lett. 8, 3347 (1998);及び、米国仮特許出願第60/891,028号に記載されている。
一態様において、本開示は、治療物質及びマーカーに標的基を結合するのに有用なリンカーに関する。別の態様において、本開示は、化合物に安定性をもたらすか、そのインビボでの毒性を低減するか、又はその薬動力学、バイオアベイラビリティ及び/又は薬力学に好ましい作用をもたらす、リンカーを提供する。かかる実施態様において、一旦薬剤がその作用部位に送達されると、リンカーが切断され、活性薬剤が放出されることが一般に好ましい。したがって、一実施態様において、本発明のリンカーは、トレースレスであり、そのため、一旦治療物質又はマーカーから除去されると(活性化時など)、リンカーの存在の痕跡が全く残らない。別の実施態様において、リンカーは、治療作用又はマーカー活性の部位など、標的細胞内又はその近傍の部位におけるその切断能が特徴である。かかる切断は、本質的に酵素によるものであり得る。この特徴は、治療物質又はマーカーの全身活性化の低減、毒性及び全身性副作用の低減を補助する。酵素的切断に好ましい切断可能な基には、ペプチド結合、エステル結合及びジスルフィド結合が含まれる。他の実施態様において、リンカーはpHに対して感受性があり、pHの変化により切断される。
本開示の一態様は、リンカーの切断速度を制御する能力である。多くの場合、迅速に切断されるリンカーが望ましい。しかし、一部の実施態様では、より緩やかに切断されるリンカーが好ましい場合がある。例えば、徐放製剤、又は高速放出成分と低速放出成分をともに有する製剤では、より緩やかに切断されるリンカーを提供することが有用である場合がある。国際公開公報第02/096910号は、ヒドラジンリンカーを有する複数の特異的リガンド‐薬剤複合体を提供する。しかしながら、必要な環化速度に応じてリンカー組成物を「調節する(tune)」方法はなく、リガンドを、記載されている特定の化合物よりも緩やかな速度で薬剤から切断することが、多くの薬剤‐リンカー結合体に好ましい。これに対して、本発明のヒドラジンリンカーが、環化速度の非常に高速から非常に低速までの範囲を備えることにより、所望の環化速度に基づく特定のヒドラジンリンカーの選択が可能になる。
例えば、切断時に単一の5員環を生成するヒドラジンリンカーにより、非常に高速な環化を達成することができる。細胞毒性薬剤の細胞への標的送達に好ましい環化速度は、切断時に一対の位置(geminal position)に2つのメチル基を有したリンカーから得られる、2つの5員環又は単一の6員環のいずれかを生成するヒドラジンリンカーを使用して達成される。gem-ジメチル効果により、一対の位置に2つのメチル基を有しない単一の6員環の場合と比べて、環化反応の速度が加速されることが示されている。これは、環内に解放されている株から生じる。しかしながら、置換基は、反応速度を高めるのではなく、低下させる場合がある。遅延の理由については、立体障害に原因がある場合が多い。例えば、gemジメチル置換により、一対の炭素がCH2である場合よりも極めて速い環化反応が生じる。
しかし、一部の実施態様では、より緩やかに切断されるリンカーが好ましい場合があることに留意することが重要である。例えば、徐放製剤、又は高速放出成分と低速放出成分をともに有する製剤では、より緩やかに切断されるリンカーを提供することが有用である場合がある。特定の実施態様では、低速の環化が、切断時にgem-ジメチル置換基を有しない単一の6員環、又は単一の7員環のいずれかを生成するヒドラジンリンカーを使用して達成される。また、リンカーは、治療物質又はマーカーを循環時の分解に対して安定化させるのにも有用である。この特徴は、かかる安定化の結果、結合された治療物質又はマーカーの循環半減期が延長されることから、有意な効果をもたらす。また、リンカーは、結合された治療物質又はマーカーの活性を弱めるのにも有用であり、結合体が循環時に比較的穏やかになり、所望の作用部位における活性化後に望ましい効果を有し、例えば毒性を示す。治療物質結合体において、リンカーのこの特徴は、治療物質の治療指数を改善するのに有用である。
安定化基は、好ましくは、治療物質又はマーカーのクリアランス及び代謝を、血液中又は非標的組織内に存在し得る酵素によって制限するように選択され、さらに、治療物質又はマーカーの細胞への移動を制限するように選択される。安定化基は、治療物質又はマーカーの分解を阻止するように働き、また、治療物質又はマーカーの他の物理特性をもたらすように作用し得る。また、安定化基は、製剤又は非製剤形態のいずれかでの保存時に、治療物質又はマーカーの安定性を改善することもできる。
理想的に、安定化基は、治療物質又はマーカーのヒト血液中、37℃で2時間の保存により試験されて、治療物質又はマーカーを分解から保護するように働き、かつ、所定のアッセイ条件下でヒト血液中に含まれる酵素によって、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、及び更により好ましくは2%未満の治療物質又はマーカーの切断をもたらす場合、治療物質又はマーカーの安定化に有用である。また、本発明は、これらのリンカーを含有する結合体にも関する。より詳細に、本発明は、疾患の治療、特に癌化学療法に使用することができるプロドラッグに関する。具体的には、本明細書に記載するリンカーの使用により、類似構造のプロドラッグと比べて、高い特異性の作用、毒性の低減、及び血中安定性の改善を示す、プロドラッグが提供される。本明細書に記載する本開示のリンカーは、パートナー分子内部の種々の位置に存在し得る。
したがって、インビボ、例えば血流中で、種々の基を欠く構築物の速度よりも速い速度で切断される、かかる基のいずれかをその鎖の一部として含有し得るリンカーが提供される。また、リンカーアームと治療物質及び診断剤との結合体も提供される。リンカーは、治療物質のプロドラッグ類似体を形成し、かつ治療物質又は診断剤を、標的化剤、検出可能なラベル、又は固体支持体に可逆的に連結するのに有用である。リンカーは、細胞毒素を含む複合体に組み込むことができる。
抗体へのプロドラッグの結合によって、細胞毒性薬剤の従来の抗体結合体を超える付加的な安全性の利点を提供することができる。プロドラッグの活性化は、エステラーゼによって、腫瘍細胞内で、及びプラズマを含む複数の正常組織でともに達成され得る。ヒトにおける適切なエステラーゼ活性のレベルは、マウスでみられるものよりも低いが、ラット及びヒト以外の霊長類でみられるものに非常に類似していることが示されている。また、プロドラッグの活性化も、グルクロニダーゼによる切断によって達成され得る。切断可能なペプチド、ヒドラジン又はジスルフィド基に加え、1以上の自壊性リンカー(self-immolative linker)基が、場合により、細胞毒素と標的化剤との間に導入される。また、これらのリンカー基は、スペーサー基とも表現され、少なくとも2つの反応性官能基を含有し得る。通常、スペーサー基の一方の化学官能基は、治療物質、例えば細胞毒素の化学官能基に結合し、スペーサー基の他方の化学官能基は、標的化剤又は切断可能なリンカーの化学官能基に結合するように用いられる。スペーサー基の化学官能基の例としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基、ケトン基及びメルカプト基が挙げられる。
自壊性リンカーは、一般に、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアルキル基である。一実施態様において、アルキル基又はアリール基は、1〜20個の炭素原子を含み得る。また、アルキル基又はアリール基は、ポリエチレングリコール部分も含み得る。
例示的なスペーサー基としては、例えば、6-アミノヘキサノール、6-メルカプトヘキサノール、10-ヒドロキシデカン酸、グリシンと他のアミノ酸、1,6-ヘキサンジオール、β-アラニン、2-アミノエタノール、システアミン(2-アミノエタンチオール)、5-アミノペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、3-マレイミド安息香酸、フタリド、α-置換フタリド、カルボニル基、アニマルエステル(animal ester)、核酸、ペプチドなどが挙げられる。
スペーサーは、付加的な分子量及び化学官能基を、細胞毒素‐標的化剤複合体に導入するのに有用であり得る。一般に、付加的な質量及び官能性は、複合体の血清半減期及び他の特性に作用する。したがって、スペーサー基の慎重な選択によって、一定の範囲の血清半減期を有する細胞毒素複合体が生成され得る。
複数のスペーサーが存在する場合、同一か又は異なるスペーサーを使用してもよい。
付加的なリンカー部分は、好ましくは、該部分を含有するリンカーを利用して結合体に溶解性の増加若しくは凝集性の低下を与えるか、又は結合体の加水分解速度を変更するのに使用することができ、このようなリンカーは、自壊性である必要がない。一実施態様において、結合部分は、置換アルキル、非置換アルキル、置換アリール、非置換アリール、置換ヘテロアルキル又は非置換ヘテロアルキルであり、これらのいずれかは、直鎖状、分岐状又は環状であってよい。置換基は、例えば、低級(C1〜C6)アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ又はジアルキルアミノであってもよい。特定の実施態様において、リンカーは非環状部分を含む。別の実施態様において、リンカーは、いずれかの正又は負に帯電したアミノ酸重合体、例えば、ポリリシン又はポリアルギニンを含む。リンカーは、ポリエチレングリコール部分などの重合体を含み得る。さらに、リンカーは、例えば、重合体成分と小化学部分(small chemical moiety)をともに含み得る。好適な実施態様において、かかるリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)部分を含む。
PEG部分は、1〜50単位の長さであり得る。好ましくは、PEGは1〜12の繰り返し単位、より好ましくは3〜12の繰り返し単位、より好ましくは2〜6の繰り返し単位、又は更により好ましくは3〜5の繰り返し単位、及び最も好ましくは4の繰り返し単位を有する。リンカーは、PEG部分のみからなり得るか、または、付加的な置換若しくは非置換アルキル又はヘテロアルキルも含有し得る。一部にPEGを組み合わせることは、複合体の水溶性を向上させるのに有用である。さらに、PEG部分は、薬剤と抗体との結合の間に生じ得る凝集の程度を低下させる。
細胞毒素の種類、リンカー、及び抗体に治療物質を結合させる他の方法の更なる論考については、Gangwarらの国際公開公報第2007/059404号、及び「細胞毒素化合物及び結合体(Cytotoxic Compounds And Conjugates)」という標題のSaito, G.らの文献(2003):Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215;Trail, P.A.らの文献(2003):Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;Payne, G.の文献(2003):Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763;Pastan, I.とKreitman, R. J.の文献(2002):Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091;Senter, P.D.とSpringer, CJ.の文献(2001):Adv. Drag Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。これらは、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
(パートナー分子)
本発明には、パートナー分子、例えば、細胞毒素、薬剤(例えば、免疫抑制薬)又は放射性毒素に結合された抗体が含まれる。かかる結合体は、本明細書中で「免疫結合体」とも称される。1以上の細胞毒素を含む免疫結合体は「免疫毒素」と称される。細胞毒素又は細胞毒性薬剤には、細胞に対して有害な(例えば、死滅させる)いずれかの薬剤が含まれる。
本開示のパートナー分子の例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又は相同体が挙げられる。パートナー分子の例としては、例えば、アンチメタボライト(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)も挙げられる。
本発明の抗体に結合可能なパートナー分子の他の好適な例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシン及びアウリスタチン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。カリケアマイシン抗体結合体の例は市販されている(Mylotarg(登録商標);American Home Products社製)。
パートナー分子の好ましい例としては、CC-1065及びデュオカルマイシンが挙げられる。CC-1065は、Upjohn社により1981年にストレプトマイセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)から最初に単離され(Hankaらの文献:J. Antibiot. 31: 1211 (1978);Martinらの文献:J. Antibiot. 33: 902 (1980);Martinらの文献:J. Antibiot. 34: 1119 (1981))、インビトロと実験動物の双方で強力な抗腫瘍活性及び抗菌活性を有することが見出された(Liらの文献:Cancer Res. 42: 999 (1982))。CC-1065は、5'-d(A/GNTTA)-3'及び5'-d(AAAAA)-3'の配列優先性を有するマイナーグルーブ内の二本鎖B-DNAに結合し(Swensonらの文献:Cancer Res. 42: 2821 (1982))、3'-アデニンのN3位を、分子内に存在するそのCPIの左側ユニットによってアルキル化する(Hurleyらの文献:Science 226: 843 (1984))。
CC-1065は、その強力かつ広範な抗腫瘍活性にもかかわらず、実験動物において遅発死を引き起こすことから、ヒトに使用することができない。CC-1065及びデュオカルマイシンの多数の類似体及び誘導体は、当技術分野で公知である。多数の化合物の構造、合成及び特性の研究について総説されている。例えば、Bogerらの文献:Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35: 1438 (1996);及び、Bogerらの文献:Chem. Rev. 97: 787 (1997)を参照されたい。協和発酵工業株式会社(Kyowa Hakko Kogya Co., Ltd.)のグループが多数のCC-1065誘導体を調製している。例えば、米国特許第5,101,038号;同5,641,780号;同5,187,186号;同5,070,092号;同5,703,080号;同5,070,092号;同5,641,780号;同5,101,038号;及び、同5,084,468号、並びに国際公開公報第96/10405号、及び欧州特許出願公開第0 537 575 A1号を参照されたい。また、Upjohn社(Pharmacia Upjohn社)も、CC-1065の誘導体の調製に積極的に取り組んでいる。例えば、米国特許第5,739,350号;同4,978,757号、同5,332,837号及び同4,912,227号を参照されたい。
(抗体の物理的性質)
本発明の抗体は、抗BST1抗体の種々の物理的性質によって更に特徴付けることができる。種々のアッセイを用いて、これらの物理的性質に基づき、種々の分類の抗体を検出及び/又は識別することができる。
一部の実施態様において、本発明の抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかに1以上のグリコシル化部位を含有し得る。可変領域の1以上のグリコシル化部位の存在は、改変された抗原結合に起因して、抗体の免疫原性の増加、又は抗体のpKの変化を結果的に生じ得る(Marshallらの文献(1972):Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala FA及びMorrison SLの文献(2004):J Immunol 172:5489-94;Wallickらの文献(1988):J Exp Med 168:1099-109;Spiro RGの文献(2002):Glycobiology 12:43R-56R;Parekhらの文献(1985):Nature 316:452-7;Mimuraらの文献(2000):Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含有するモチーフで発生することが知られている。可変領域グリコシル化は、抗体を切断してFabを生ずるglycoblotアッセイを使用して試験することができ、その後、過ヨウ素酸酸化及びシッフ塩基形成を測定するアッセイを用いてグリコシル化について試験する。または、可変領域グリコシル化は、Dionex光クロマトグラフィ(Dionex-LC)を使用して試験することができ、これは、Fabから糖を単糖に切断し、個々の糖含量を分析するものである。場合によって、可変領域グリコシル化を含まない抗BST1抗体を有することが好ましい。これは、当技術分野で周知の標準的な方法を用いて、可変領域のグリコシル化モチーフを含有しない抗体を選択することによって、又はグリコシル化のモチーフ内で残基を変異させることによって、達成することができる。
好適な実施態様において、本発明の抗体は、アスパラギン異性部位を含有しない。脱アミド化又はイソアスパラギン酸の効果はそれぞれ、N-G又はD-G配列に起こり得る。脱アミド化又はイソアスパラギン酸の効果は、主鎖よりもむしろ側鎖カルボキシ末端を離れてねじれ構造を生成することによって抗体の安定性を減少させる、イソアスパラギン酸の生成を生ずる。イソアスパラギン酸の生成は、イソアスパラギン酸について試験する逆相HPLCを使用する、イソ‐クワントアッセイ(iso-quant assay)を用いて測定することができる。
各抗体は、固有の等電点(pI)を有するが、通常、抗体は、6〜9.5のpH範囲にある。IgG1抗体のpIは通常、7〜9.5のpH範囲にあり、IgG4抗体のpIは通常、6〜8のpH範囲にある。抗体は、この範囲外にあるpIを有し得る。効果が一般に知られていないにもかかわらず、正常範囲外のpIを有する抗体は、インビボ条件下で、若干のアンフォールディング及び不安定性を有し得るという推測がある。等電点は、キャピラリー等電点電気泳動アッセイを用いて試験することができ、これは、pH勾配を生じ、精度の増加のためにレーザー焦点化を利用することができるものである(Janiniらの文献(2002):Electrophoresis 23:1605-11;Maらの文献(2001):Chromatographia 53:S75-89;Huntらの文献(1998):J Chromatogr A 800:355-67)。一部の例においては、正常範囲にあるpI値を有した抗BST1抗体を有することが好ましい。これは、当技術分野で周知の標準的な方法を用いて、正常範囲にpIを有する抗体を選択することによって、又は帯電表層残基を変異させることによって、達成することができる。
各抗体は、熱安定性の指標である融解温度を有する(Krishnamurthy R及びManning MCの文献(2002):Curr Pharm Biotechnol 3:361-71)。高い熱安定性は、インビボで、大きな全体的抗体安定性を示す。抗体の融点は、示差走査熱量測定などの方法を用いて測定することができる(Chenらの文献(2003):Pharm Res 20:1952-60;Ghirlandoらの文献(1999):Immunol Lett 68:47-52)。TM1は、抗体の初期のアンフォールディングの温度を示す。TM2は、抗体の完全なアンフォールディングの温度を示す。通常、本発明の抗体のTM1は、60℃超、好ましくは65℃超、更に好ましくは70℃超であることが好ましい。または、抗体の熱安定性は、円二色性を用いて測定することができる(Murrayらの文献(2002):J. Chromatogr Sci 40:343-9)。
好適な実施態様において、抗体は、急速に分解しないものが選択される。抗BST1抗体の断片化は、当技術分野でよく理解されているように、キャピラリー電気泳動法(CE)及びMALDI-MSを用いて測定することができる(Alexander AJ及びHughes DEの文献(1995):Anal Chem 67:3626-32)。
別の好適な実施態様において、抗体は、最小の凝集効果を有するものが選択される。凝集は、望ましくない免疫応答及び/又は変更された若しくは好ましくない薬物動態特性をもたらす。通常、抗体は、25%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下、更により好ましくは10%以下、及び更により好ましくは5%以下の凝集が許容され得る。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)及び光散乱を含む当技術分野で周知の複数の方法によって測定し、モノマー、ダイマー、トリマー又はマルチマーを同定することができる。
(抗体の操作方法)
上述のように、本明細書に開示するVH及びVK配列を有した抗BST1抗体は、VH及び/又はVK配列又はこれに結合する定常領域を修飾することによって、新規な抗BST1抗体を生成するのに使用することができる。したがって、別の本発明の態様において、本発明の抗BST1抗体、例えば、BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3の構造的特徴は、ヒトBST1に結合することなどの本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する構造的に関連した抗BST1抗体を生成するのに用いられる。例えば、BST1_A2、BST1_A1若しくはBST1_A3、又はその突然変異体の1以上のCDR領域を、公知のフレームワーク領域及び/又は他のCDRと組換えにより結合させ、上に論ずるように、本発明の追加的な組換えにより操作された抗BST1抗体を生成することができる。他の型の修飾には、前節に記載したものが含まれる。操作方法のための出発物質は、本明細書で提供される1以上のVH及び/又はVK配列、又はその1以上のCDR領域である。改変抗体を生成するために、本明細書で提供される1以上のVH及び/又はVK配列又はその1以上のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現させる)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報は、もとの配列に由来する「第2世代の」配列を生成する出発物質として使用され、その後、この「第2世代の」配列は、タンパク質として調製され、発現される。
したがって、別の実施態様において、本発明は、次に示すものを含む抗BST1抗体を調製するための方法を提供する:(i)配列番号10、9及び56からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号12又は51、11及び57からなる群より選択されるCDR2配列、及び/又は配列番号14、13及び58からなる群より選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域抗体配列、及び/又は、(ii)配列番号16、15及び59からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号18、17及び60からなる群より選択されるCDR2配列、及び/又は配列番号20、19及び61からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供すること、重鎖可変領域抗体配列及び/又は軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの改変された抗体配列を作製すること、並びに、タンパク質として改変抗体配列を発現させること。
標準な分子生物学技術を用いて、改変抗体配列を調製し、発現させることができる。
好ましくは、改変抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書に記載する抗BST1抗体の機能特性のうちの1つ、一部若しくは全部を保持するものであり、機能特性には、次に示すものが含まれるが、これらに限定されない:(a) 1×10-7 M以下のKDを有するヒトBST1への結合、(b) BST1をトランスフェクトしたヒトCHO細胞への結合。
改変抗体の機能特性は、当技術分野で利用可能な及び/又は本明細書に記載する標準アッセイ、例えば、実施例に示すアッセイ(例えば、フローサイトメトリー、結合アッセイ)を用いて評価することができる。
本発明の抗体を操作する方法の特定の実施態様において、突然変異は、抗BST1抗体コード配列の全部又は一部に沿ってランダムに又は選択的に導入することができ、得られる修飾された抗BST1抗体は、本明細書に記載する結合活性及び/又は他の機能特性においてスクリーニングすることができる。突然変異法は、当技術分野で説明されている。例えば、国際公開公報第02/092780号は、飽和変異誘発、合成ライゲーションアセンブリ、又はこれらの組合せを使用して抗体突然変異を生成し、スクリーニングする方法について記載している。または、国際公開公報第03/074679号は、抗体の生理化学特性を最適化するためのコンピュータによるスクリーニング法を用いる方法について記載している。
(本発明の抗体をコードする核酸分子)
本発明の別の態様は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、全細胞において、細胞可溶化物において、又は部分的に精製されたか若しくは実質的に純粋な形態において、存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、塩化セシウム(CsCl)バンディング、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動、及び当技術分野で周知の他のものを含む標準的な方法によって、他の細胞成分又は他の汚染物質(例えば、他の細胞核酸若しくはタンパク質)から精製される場合、「単離されている」又は「実質的に純粋にされている」。F. Ausubelら編(1987):「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, Greene Publishing and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい。本発明の核酸は、例えば、DNA又はRNAであり、イントロン配列を含んでいてもよいし、又は含まなくてもよい。好適な実施態様において、核酸はcDNA分子である。
本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマによって発現した抗体において、ハイブリドーマによって作製した抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)免疫グロブリン遺伝子ライブラリから得られる抗体において、抗体をコードする核酸は、ライブラリから回収することができる。
本発明の好ましい核酸分子は、BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3モノクローナル抗体のVH及びVK配列をコードするものである。BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3のVH配列をコードするDNA塩基配列をそれぞれ、配列番号6、5及び54に示す。BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3のVK配列をコードするDNA塩基配列をそれぞれ、配列番号8、7及び55に示す。
本発明の他の好ましい核酸は、配列番号6、5、8、7、54及び55に示す配列のうちの1つと、少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する核酸であり、この核酸は、本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードする。
2つの核酸配列間の%同一性は、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した場合に、ヌクレオチドが同一である配列の位置の数であり、これらは、2つの配列の最適なアライメントのために導入することを必要とする。配列の比較及び2つの配列間の%同一性の決定は、上述のMeyers及びMillerのアルゴリズム又はAltschulのXBLASTプログラムなどの数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
本発明のなお更なる好ましい核酸は、配列番号6、5、8、7、54及び55に示す核酸配列の1以上のCDRコード部分を含む。本実施態様において、核酸は、BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列、又はBST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列をコードすることができる。
また、配列番号6、5、8、7、54及び55(VH及びVK配列)の、かかるCDRコード部分と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する核酸も、本発明の好ましい核酸である。かかる核酸は、非CDRコード領域及び/又はCDRコード領域における配列番号6、5、8、7、54及び55の対応する部分と異なり得る。この相違がCDRコード領域にある場合、核酸によってコードされる核酸CDR領域は通常、BST1_A2、BST1_A1又はBST1_A3の対応するCDR配列と比較して、本明細書に定義する1以上の保存的配列修飾を含む。
一旦VH及びVKセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片を標準的な組換えDNA技術で更に操作し、例えば、可変域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、又はscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作において、VKコード又はVHコードDNA断片は、別のタンパク質(例えば、抗体定常領域若しくは可動性リンカーなど)をコードする別のDNA断片に機能的に連結される。この文脈に使用する「機能的に連結される」という用語は、2つのDNA断片が、この2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、連結されることを意味するものとする。
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHコードDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換することができる。マウス重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A.らの文献(1991):「免疫学的関心対象のタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」,第5版, 米国保健社会福祉省、NIH公開番号91-3242参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1又はIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子において、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能的に連結することができる。
VL/VK領域をコードする単離されたDNAは、VLコードDNAを、軽鎖定常領域(CL)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。マウス軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A.らの文献(1991):「免疫学的関心対象のタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」,第5版, 米国保健社会福祉省、NIH公開番号91-3242参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。好適な実施態様において、軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であり得る。
scFv遺伝子を生成するために、VHコード及びVL/VKコードDNA断片は、可動性リンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別の断片に機能的に連結され、VH及びVL/VK配列が、可動性リンカーで連結されたVL/VK及びVH領域を伴う、隣接する単鎖タンパク質として発現することができるようにする(例えば、Birdらの文献(1988):Science 242:423-426;Hustonらの文献(1988):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCaffertyらの文献(1990):Nature 348:552-554参照)。
(モノクローナル抗体の生産)
本発明によれば、BST1又はその断片若しくは誘導体は、免疫原に免疫特異的に結合する抗体を生成する免疫原として使用することができる。かかる免疫原は、従来の手段によって単離することができる。当業者は、例えば、「抗体、実験室マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」, Harlow 及びDavid Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory (1988), Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されているような多くの手順が抗体の生産に利用可能であることを認識する。また、当業者は、抗体を模倣する結合断片又はFab断片を、種々の手順(「抗体エンジニアリング:実践的アプローチ(Antibody Engineering: A Practical Approach)」 (Borrebaeck, C編), 1995, Oxford University Press, Oxford;J. Immunol. 149, 3914-3920 (1992))によって、遺伝子情報から調製できることも認識する。
本発明の一実施態様において、BST1の特定のドメインの抗体が生産される。特定の実施態様において、BST1の親水性断片は、抗体生産の免疫原として使用される。
抗体の生産において、所望の抗体のスクリーニングは、当技術分野で公知の技術(例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法))によって達成することができる。例えば、BST1の特定のドメインを認識する抗体を選択するために、一つは、かかるドメインを含有するBST1断片に結合する生成物の発生したハイブリドーマをアッセイすることができる。第1のBST1同族体に特異的に結合するが、第2のBST1同族体には特異的に結合しない(又はあまり積極的に結合しない)抗体の選択においては、第1のBST1同族体への積極的な結合、及び第2のBST1同族体への結合の欠乏(又は結合の低減)に基づいて選択することができる。同様に、BST1に特異的に結合するが、同じタンパク質の異なるアイソフォーム(BST1と同じコアペプチドを有する異なるグリコフォームなど)には特異的に結合しない(又はあまり積極的に結合しない)抗体の選択においては、BST1への積極的な結合、及び異なるアイソフォーム(例えば、異なるグリコフォーム)への結合の欠乏(又は結合の低減)に基づいて選択することができる。したがって、本発明は、BST1の異なる一つのアイソフォーム又は複数のアイソフォーム(例えば、グリコフォーム)に対する親和性よりも、BST1に対して高い親和性(例えば、少なくとも5倍、特に、少なくとも10倍といった、少なくとも2倍の親和性)で結合する抗体(モノクローナル抗体など)を提供する。
本発明の方法に使用することができるポリクローナル抗体は、免疫化動物の血清由来の抗体分子の異種集団である。また、未分画の免疫血清も使用することができる。当技術分野で公知の種々の手順を、BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、又はBST1関連ポリペプチドの断片に対するポリクローナル抗体の生産に使用することができる。例えば、一つの方法は、関心対象のポリペプチドを精製すること、又は例えば、当技術分野で周知の固相ペプチド合成法を用いて、関心対象のポリペプチドを合成することである。例えば、「タンパク質精製のガイド(Guide to Protein Purification)」, Murray P. Deutcher編, Meth. Enzymol. Vol 182 (1990);「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」, Greg B. Fields編, Meth. Enzymol. Vol 289 (1997);Kisoらの文献:Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 38: 1192-99, 1990;Mostafaviらの文献:Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids 1: 255-60, 1995;Fujiwaraらの文献:Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 44: 1326-31, 1996を参照されたい。選択されたポリペプチドは、その後、ウサギ、マウス、ラットなどを含むが、これらに限定されない、種々の宿主動物への注射によって免疫化し、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を生成するのに使用することができる。種々のアジュバント(すなわち、免疫賦活剤)は、完全若しくは不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機質ゲル、リゾレシチンなどの表面作用物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット・ゲラン桿菌)若しくはコリネバクテリウム・パルブム(corynebacterium parvum)などのアジュバントを含むが、これらに限定されない、宿主種に応じて、免疫反応を増強するのに使用することができる。また、追加的なアジュバントも当技術分野で周知である。
BST1に対するモノクローナル抗体(mAb)の調製において、培養での連続継代細胞株による抗体分子の生産を提供するいずれかの技術を用いることができる。例えば、Kohler及びMilstein (1975, Nature 256:495-497)によって最初に開発されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborらの文献:1983, Immunology Today 4:72)、及びヒトモノクローナル抗体を生産するEBVハイブリドーマ技術(Coleらの文献:1985, 「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)がある。かかる抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、及びこれらのサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであり得る。モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、インビトロ及びインビボで培養することができる。本発明の追加的な実施態様において、モノクローナル抗体は、公知技術(国際特許出願PCT/US90/02545号、引用により本明細書中に組み込まれる。)を利用して、無菌動物で生産することができる。
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立された手順である。免疫化プロトコル及び融合のための免疫化脾細胞の単離技術は、当技術分野で公知である。また、融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順も公知である。
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体及びキメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト‐マウスキメラ)が含まれるが、これらに限定されない。
本発明のキメラ又はヒト化抗体は、上述のように調製される非ヒトモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、関心対象の非ヒトハイブリドーマから得ることができ、標準的な分子生物学技術を用いて非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するように操作することができる。例えば、キメラ抗体を生成するために、マウス可変領域を、当技術分野で公知の方法を用いて、ヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号参照)。ヒト化抗体を生成するために、マウスCDR領域を、当技術分野で公知の方法を用いて、ヒトフレームワークに挿入することができる(例えば、Winterの米国特許第5,225,539号、及びQueenらの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号及び同6,180,370号参照)。
完全ヒト化抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することはできる、トランスジェニックマウス又は染色体導入(transchromosomic)マウスを使用して生産することができる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原(例えば、BST1の全部又は一部)で通常の方法において免疫化される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスにより保持されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化時に再配置し、その後、クラススイッチ及び体細胞変異を受ける。したがって、かかる技術を用いて、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を生産することが可能である。これらのトランスジェニックマウス及び染色体導入マウスには、HuMAb Mouse(登録商標)(Medarex(登録商標)社製)及びKM Mouse(登録商標)系統のマウスが含まれる。HuMAb Mouse(登録商標)系統(Medarex(登録商標)社製)は、Lonberg及びHuszarの文献(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)に記載されている。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生産するためのこの技術、及びかかる抗体を生産するためのプロトコルの詳細な論考については、例えば、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び、米国特許第5,545,806号を参照されたい。KM mouse(登録商標)系統とは、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入染色体(human light chain transchromosome)を保有するマウスをいい、Ishidaらの国際公開公報第02/43478号に詳細に記載されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的なトランスジェニック動物系が、当技術分野で利用可能であり、本発明の抗BST1抗体を生産するのに使用することができる。例えば、Xenomouse(Amgen社製)と称される代替的なトランスジェニック系を使用することができ、かかるマウスは、例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号;同6,075,181号;同6,114,598号;同6,150,584号、及び同6,162,963号に記載されている。
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイディッドセクション(guided selection)」と呼ばれる技術を用いて生成することができる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする(Jespersらの文献(1994):Biotechnology 12:899-903)。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的な導入染色体動物系が、当技術分野で利用可能であり、抗BST1抗体を生産するのに使用することができる。例えば、「TCマウス」と称されるヒト重鎖導入染色体及びヒト軽鎖導入染色体を保有するマウスを使用することができ、かかるマウスは、Tomizukaらの文献(2000):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。さらにまた、ヒト重鎖及び軽鎖導入染色体を保有するウシが当技術分野で説明されており(Kuroiwaらの文献(2002):Nature Biotechnology 20:889-894、及び国際公開公報第2002/092812号)、これは、抗BST1抗体を生産するのに使用することができる。
また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体反応が免疫処置に応じて生じ得るように、ヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを使用して調製することもできる。かかるマウスは、例えば、米国特許第5,476,994号及び同3,698,767号に記載されている。
本発明の抗体は、選択された標的に結合するポリペプチドのライブラリを作製及びスクリーニングするファージディスプレイ法を用いて生成することができる(例えば、Cwirlaらの文献:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6378-82, 1990;Devlinらの文献:Science 249, 404-6, 1990, Scott及びSmithの文献、Science 249, 386-88, 1990;及びLadnerらの米国特許第5,571,698号参照)。ファージディスプレイ法の基本概念は、スクリーニングするポリペプチドをコードするDNAとポリペプチドとの間の物理的会合の確立である。この物理的会合は、ファージ粒子によって提供され、これは、ポリペプチドをコードするファージゲノムを包囲するカプシドの一部としてポリペプチドを提示する。ポリペプチドとこれらの遺伝物質との間の物理的会合の確立によって、種々のポリペプチドを保有する非常に多数のファージの大量スクリーニングを同時に可能とする。標的への親和性を有するポリペプチドを提示するファージは、標的に結合し、これらのファージは、標的への親和性スクリーニングによって濃縮される。これらのファージから提示されたポリペプチドの同一性は、これらのそれぞれのゲノムから決定することができる。これらの方法を用いて、所望の標的に対する結合親和性を有することが確認されたポリペプチドは、その後、従来の手段によってバルクで合成することができる。例えば、米国特許第6,057,098号(すべての表、図面及び特許請求の範囲を含むそのすべてが、引用により本明細書中に組み込まれる。)を参照されたい。特に、かかるファージは、レパトア又はコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒト若しくはマウス)から発現された抗原結合ドメインを提示するのに利用することができる。関心対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原(例えば、ラベル抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉された抗原)によって、選択又は識別することができる。これらの方法に使用されるファージは通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えにより融合したFv抗体ドメインを安定させるFab、Fv又はジスルフィドを有するファージから発現されたfd及びM13結合ドメインを含む線状ファージである。本発明の抗体を作製するのに使用することができるファージディスプレイ法には、Brinkmanらの文献(1995):J. Immunol. Methods 182:41-50;Amesらの文献(1995):J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleboroughらの文献:Eur. J. Immunol. 24:952-958 (1994);Persicらの文献(1997):Gene 187 9-18;Burtonらの文献(1994):Advances in Immunology 57: 191-280;国際特許出願PCT/GB91/01134号;国際公開公報第90/02809号;国際公開公報第91/10737号;国際公開公報第92/01047号;国際公開公報第92/18619号;国際公開公報第93/11236号;国際公開公報第95/15982号;国際公開公報第95/20401;並びに、米国特許第5,698,426号;同5,223,409号;同5,403,484号;同5,580,717号;同5,427,908号;同5,750,753号;同5,821,047号;同5,571,698号;同5,427,908号;同5,516,637号;同5,780,225号;同5,658,727号;同5,733,743号及び同5,969,108号(それぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
上の参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ファージからの領域をコードする抗体を単離及び使用して、例えば、下に詳細に記載する、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む所望の宿主で発現させ、ヒト抗体又は他の所望の抗原結合断片を含む全抗体を生成することができる。例えば、Fab、Fab'及びF(ab')2断片を遺伝子組換えにより生成する技術は、国際公開公報第92/22324号;Mullinaxらの文献(1992):BioTechniques 12(6):864-869;並びに、Sawaiらの文献(1995):AJRI 34:26-34;及び、 Betterらの文献(1988):Science 240:1041-1043(引用によりこれらのすべてが本明細書中に組み込まれる。)に開示されるものなどの当技術分野で公知の方法を用いて行うこともできる。
単鎖Fv及び抗体を生産するのに使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;Hustonらの文献(1991):Methods in Enzymology 203:46-88;Shuらの文献(1993):PNAS 90:7995-7999;並びに、Skerraらの文献(1988):Science 240: 1038-1040に記載されているものが含まれる。
本発明は、機能的に活性のある抗BST1免疫グロブリン分子の断片、誘導体又は類似体を提供する。機能的に活性のあるとは、断片、誘導体又は類似体が、断片、誘導体又は類似体が由来する抗体によって認識されるものと同じ抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を誘発することができることを意味する。具体的には、特定の実施態様において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、フレームワークの欠失、及び抗原を特異的に認識するCDR配列のC末端であるCDR配列によって増強することができる。どのCDR配列が抗原に結合するかを決定するために、CDR配列を含有する合成ペプチドを、当技術分野で公知のいずれかの結合アッセイ法によって、抗原との結合アッセイに使用することができる。
本発明は、F(ab')2断片及びFab断片などのこれらに限定されない、抗体断片を提供する。特定のエピトープを認識する抗体断片は、公知技術によって生成することができる。F(ab')2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインからなり、抗体分子のペプシン消化によって生じる。Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィド架橋の低減によって生じる。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖の二量体、又はFv若しくは単鎖抗体(SCA)(例えば、米国特許第4,946,778号;Birdの文献(1988):Science 242:423-42;Hustonらの文献(1988):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;及び、Wardらの文献(1989):Nature 334:544-5)などのこれらの最小断片、又は本発明の抗体と同じ特異性を有する他の分子も提供する。単鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片の連結によって形成し、これによって、単鎖ポリペプチドが生じる。大腸菌の機能的Fv断片のアセンブリのための技術を用いることができる(Skerraらの文献(1988):Science 242: 1038-1041)。
別の実施態様において、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質(又はその機能的に活性のある断片)を提供し、例えば、免疫グロブリンは、共有結合(例えば、ペプチド結合)によって、免疫グロブリンではない他のタンパク質のアミノ酸配列(又はその一部、好ましくは、タンパク質の少なくとも10、20若しくは50のアミノ酸部分)のN末端又はC末端のいずれかで、融合される。好ましくは、免疫グロブリン又はその断片は、他のタンパク質と定常ドメインのN末端で共有結合する。上述のように、かかる融合タンパク質は、精製を促進し、インビボで半減期を増加させ、免疫系への上皮性関門における抗原の送達を促進することができる。
本発明の免疫グロブリンには、すなわち、共有結合が免疫特異的結合を損なわない限り、あらゆる型の分子の共有結合によって修飾された類似体及び誘導体が含まれる。例えば、免疫グロブリンの誘導体及び類似体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導化、タンパク質分解切断、細胞リガンド(cellular ligand)又は他のタンパク質への結合などによって更に修飾されたものが含まれるが、これらに限定されない。多くの化学修飾は、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化などを含むが、これらに限定されない、公知技術によって行うことができる。加えて、類似体又は誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
(マウスの免疫化)
マウスは、BST1抗原及び/又は組換え型BST1、又はBST1を発現する細胞の精製若しくは富化調製物によって免疫化することができる。好ましくは、マウスは、初回注入時に6〜16週齢である。例えば、BST1抗原の精製若しくは組換え調製物(100 μg)を使用して、マウスに腹膜内免疫することができる。
種々の抗原による累積的な経験は、マウスが、完全フロイントアジュバント中の抗原によって腹膜内(IP)免疫される場合に応答することを示した。しかしながら、フロイントアジュバント以外のアジュバントも有効であることも見出される。加えて、アジュバントの非存在下で全細胞が高度に免疫原性であることが見出される。免疫応答は、後眼窩ブリードによって得られる血漿試料による一連の免疫プロトコルにおいてモニタすることができる。血漿は、ELISA(後述する)でスクリーニングして、十分な力価を試験することができる。マウスは、3日間連続で抗原によって静注で追加免疫し、5日後に致死させ、脾臓摘出することができる。一実施態様において、A/Jマウス系統(Jackson Laboratories社(Bar Harbor, Me))を使用することができる。
(モノクローナル抗体を生産するトランスフェクトーマの生成)
本発明の抗体は、例えば、当技術分野で周知の組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法との組合せ(例えば、Morrison, S.の文献(1985):Science 229:1202)を用いて、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて生産することができる。
例えば、抗体又はその抗体断片を発現させるために、部分長又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学技術(例えば、関心対象抗体を発現するハイブリドーマを使用するPCR増幅又はcDNAクローン化)によって得ることができ、DNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に機能的に連結されるように、発現ベクターに挿入することができる。この文脈において、「機能的に連結する」という用語は、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされ、そのため、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御するこれらの意図された機能に寄与することを意味するものとする。発現ベクター及び発現制御配列は、使用する発現宿主細胞に適合するように選択される。
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクターを同時にトランスフェクトすることができ、第1のベクターは、ポリペプチド由来の重鎖をコードし、第2のベクターは、ポリペプチド由来の軽鎖をコードする。2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする、同一の選択マーカーを含有し得る。または、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする、単一のベクターを使用することができる。かかる状況において、軽鎖は、毒性のない過剰の重鎖を回避するように、重鎖の前に配置する必要がある(Proudfootの文献(1986):Nature 322:52;Kohlerの文献(1980):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197)。軽鎖及び重鎖のコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含有し得る。
抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補制限部位でのライゲーション、又は制限部位がない場合には、ブラントエンドライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。本明細書に記載する抗体の軽鎖及び重鎖可変領域を使用して、VHセグメントがベクター内でCHセグメントに機能的に連結され、かつVKセグメントがベクター内でCLセグメントに機能的に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクターに該領域を挿入することによって、いずれかの抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を生成することができる。加えて又は代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローン化することができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は非相同シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
本発明の組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子に加え、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を保有する。「制御配列」という用語は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモータ、エンハンサ及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。かかる制御配列は、例えば、Goeddelの文献(「遺伝子発現技術:酵素化学の方法185 (Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185)」, Academic Press, San Diego, CA (1990))に記載されている。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、必要なタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得ることは、当業者に認識される。哺乳動物宿主細胞発現における好ましい制御配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモータ(AdMLP))、及びポリオーマなどに由来するプロモータ及び/又はエンハンサが含まれる。または、ユビキチンプロモータ又はβ-グロビンプロモータなどの非ウイルス制御配列を使用することができる。さらに、制御エレメントは、SV40初期プロモータ及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復からの配列を含有するSRαプロモータ系などの種々の源の配列から構成された(Takebe, Y.らの文献(1988):Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
本発明の組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子及び制御配列に加え、宿主細胞においてベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)及び選択マーカー遺伝子などの追加的配列を保有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、すべてAxelらによる米国特許第4,399,216号、同4,634,665号及び同5,179,017号参照)。例えば、選択マーカー遺伝子は通常、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を提供する。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅によるdhfr‐宿主細胞用)及び(G418選択のための)neo遺伝子が含まれる。
軽鎖及び重鎖の発現において、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクションされる。「トランスフェクション」という用語の種々の形態は、原核生物又は真核生物宿主細胞への外来性DNAの導入のために一般に用いられる多種多様の技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降法、DEAE‐デキストラントランスフェクションなど)を含むことを意図する。原核生物又は真核生物宿主細胞のいずれかにおいて、本発明の抗体を発現させることが理論的に可能であるにもかかわらず、真核細胞及び最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。これは、かかる真核細胞及び特に哺乳動物細胞は、適切に折り畳まれ、免疫学的に活性のある抗体をアセンブルして分泌することが原核細胞よりも可能性が高いからである。抗体遺伝子の原核生物発現は、高収率の活性抗体の生産に効果がないことが報告されている(Boss, M. A.及びWood, C. R.の文献(1985):Immunology Today 6:12-13)。
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞には、ヒトサイトメガロウイルス由来の主な前初期遺伝子プロモータ要素(Foeckingらの文献:1986, Gene 45: 101;Cockettらの文献(1990):BioTechnology 8:2)などのベクターと連結したチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、例えば、R. J. Kaufman及びP. A. Sharpの文献 (1982) J. Mol. Biol. 159:601-621に記載されているDHFR選択可能マーカーとともに使用されるUrlaub及びChasinの文献(1980):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。特に、NSO骨髄腫細胞による使用において、別の好ましい発現系は、国際公開公報第87/04462号(Wilson)、国際公開公報第89/01036号(Bebbington)、及び欧州特許第338,841号(Bebbington)に開示されているGS遺伝子発現系である。
種々の宿主発現ベクター系を利用して、本発明の抗体分子を発現することができる。かかる宿主発現系は、関心対象のコード配列を生産し、その後、精製することができるビヒクルを代表するだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換するか、又はこの配列をトランスフェクトする場合、インサイチューで本発明の抗体分子を発現することができる細胞も代表する。これらには、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌、枯草菌);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia));抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウィルス)で感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させたか、若しくは抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は、哺乳動物細胞(例えば、メタロチオネインプロモータ)若しくは哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)由来のプロモータを含有する組換え発現構築物を保持する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)などの微生物が含まれるが、これらに限定されない。
細菌系において、多くの発現ベクターは、発現される抗体分子を対象とした用途に応じて、有利に選択することができる。例えば、大量のかかるタンパク質が、抗体分子を含む医薬組成物の生成のために生産される場合、容易に精製される高いレベルの融合タンパク質生成物の発現に関係するベクターが望ましい。かかるベクターには、融合タンパク質が生産されるように、lac Zコード領域を有するフレームのベクターへ抗体コード配列を個々に連結することができる、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの文献(1983):EMBO J. 2: 1791);pINベクター(Inouye及びInouyeの文献(1985):Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke及びSchusterの文献(1989):J. Biol. Chem. 24:5503-5509)などが含まれるが、これらに限定されない。また、類似するpGEXベクターを使用して、グルタチオンS転移酵素(GST)を有する融合タンパク質として外来のポリペプチドを発現することもできる。一般に、かかる融合タンパク質は、可溶であり、マトリクスグルタチオン‐アガロースビーズへの吸着と結合、及びその後の遊離グルタチオン存在下での溶出によって、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化標的遺伝子産物をGST部分から放出することができるように、トロンビン又は因子Xaプロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
昆虫系において、外来遺伝子を発現するベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が使用される。ウイルスは、スポドブテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローン化され、AcNPVプロモータ(例えば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下に配置することができる。哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルス系の発現系(例えば、アデノウイルス発現系)を利用することができる。
上で論じたように、宿主細胞株は、挿入配列の発現を調節するか、又は、特定の所望の方法で遺伝子産物を修飾及びプロセシングするように、選択することができる。タンパク質生成物のかかる修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要であり得る。
組換え抗体の長期及び高収率の生産のために、安定した発現が好ましい。例えば、関心対象の抗体を安定して発現する細胞株は、抗体のヌクレオチド配列及び選択可能なヌクレオチド配列(例えば、ネオマイシン又はヒグロマイシン)を含む発現ベクターを細胞にトランスフェクトすること、並びに選択マーカーの発現を選択することによって、生産することができる。かかる改変細胞株は、抗体分子と直接的又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増加させることができる(総説では、Bebbington及びHentschelの文献:「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞のクローン化遺伝子発現のための遺伝子増幅に基づくベクターの利用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」, Vol.3. (Academic Press, New York, 1987)参照)。抗体を発現するベクター系でのマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在するインヒビターレベルの増加は、マーカー遺伝子の複製の数を増加させる。増幅領域は、抗体遺伝子と関係するため、抗体の生産も増加する(Crouseらの文献:1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、又はより好ましくは宿主細胞が増殖する培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な時間、宿主細胞を培養することによって生産される。本発明の抗体分子が一旦組換えにより発現されると、例えば、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換クロマトグラフィ、プロテインA又は特定の抗原などによるアフィニティークロマトグラフィ、及びサイジングカラムクロマトグラフィ)、遠心分離、溶解度の差異による、又はタンパク質の精製の標準的な技術による、抗体分子の精製において当技術分野で公知の方法によって精製することができる。
または、融合タンパク質は、発現される融合タンパク質に特異的な抗体の利用によって、容易に精製することができる。例えば、Janknechtらによって記載されている系は、ヒト細胞株で発現された非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknechtらの文献:1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-897)。この系において、関心対象の遺伝子は、ワクシニア組換えプラスミドにサブクローン化され、そのため、遺伝子のオープンリーディングフレームが、6つのヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳により融合される。アミノ末端タグは、融合タンパク質のマトリクス結合ドメインとして機能する。組換えワクシニアウイルスによって感染された細胞の抽出物は、Ni2+ニトリロ酢酸‐アガロースカラムにかけられ、また、ヒスチジン標識タンパク質は、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出される。
(抗原に結合する抗体の特性評価)
これらの方法によって生成した抗体は、その後、関心対象の精製ポリペプチドとの親和性及び特異性のための第1のスクリーニングによって、必要に応じて、結合から除外されるべきポリペプチドと抗体の親和性及び特異性の結果を比較することによって、選択することができる。例えば、標準的なELISAによってBST1への結合について、抗体を試験することができる。スクリーニング手順は、マイクロタイタープレートの個々のウェルにおける精製ポリペプチドの固定化を含み得る。考えられ得る抗体又は抗体群を含有する溶液を、その後、それぞれのマイクロタイターウェルに入れ、約30分〜2時間インキュベートする。次いで、マイクロタイターウェルを洗浄し、ラベル化二次抗体(例えば、生産された抗体がマウス抗体である場合は、アルカリホスファターゼに結合した抗マウス抗体)をウェルに加え、約30分間インキュベートした後、洗浄する。基質をウェルに加え、固定化ポリペプチド抗体に対する抗体が存在するところに呈色反応が現れる。
次いで、選択されたアッセイ計画において、このように同定された抗体を親和性及び特異性について更に分析することができる。標的タンパク質のイムノアッセイの開発において、精製標的タンパク質は、選択された抗体を使用して、イムノアッセイの感度及び特異性を判断する標準として作用する。種々の抗体の結合親和性は異なり得るので(特定の抗体対(例えば、サンドイッチアッセイにおいて)は、互いに立体的に干渉するなど)、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性及び特異性よりも重要な基準となり得る。
当業者は、多くのアプローチが、抗体又は結合断片を生産すること、並びに種々のポリペプチドの親和性と特異性をスクリーニングすること及び選択することに採用することができるが、これらのアプローチは本発明の範囲を変更するものではないことを認識する。
選択された抗BST1モノクローナル抗体が、固有のエピトープに結合するか否かについて決定するために、各抗体は、市販の試薬(Pierce社(Rockford, IL)製)を使用してビオチン化することができる。ラベル化されていないモノクローナル抗体及びビオチン化されたモノクローナル抗体を使用する競合試験は、BST1でコーティングされたELISAプレートを使用して行うことができる。ビオチン化mAb結合は、ストレプトアビジン‐アルカリホスファターゼプローブによって検出することができる。
精製された抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプELISAを、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を使用して行うことができる。
抗BST1抗体は、ウエスタンブロット法によって、BST1抗原との反応性について更に試験することができる。簡潔にいえば、BST1を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に転写し、10%ウシ胎仔血清でブロックし、試験されるモノクローナル抗体でプローブする。
また、本発明の抗体の結合特異性は、BST1を発現する細胞に対する抗体の結合をモニタリングすることによって、例えば、フローサイトメトリーによって、決定することもできる。通常、CHO細胞株などの細胞株は、BST1をコードする発現ベクターをトランスフェクトすることができる。トランスフェクトされたタンパク質は、タグに対する抗体を使用する検出のための、好ましくはN末端のmycタグなどのタグを含み得る。BST1への本発明の抗体の結合は、トランスフェクトされた細胞を抗体とインキュベートすること、及び結合した抗体を検出することによって決定することができる。トランスフェクトされたタンパク質上のタグに対する抗体の結合は、正の対照として使用することができる。
BST1に対する本発明の抗体の特異性は、BST1への結合を決定するのと同じ方法を用いて、他のEphファミリーのメンバーなどの他のタンパク質に抗体が結合するか否かについて決定することによって、更に検討することができる。
(免疫結合体)
別の態様において、本発明は、細胞毒、薬物(例えば、免疫抑制薬)、又は放射性毒素などの治療的部分と結合した抗BST1抗体又はその断片を特徴とする。本明細書において、かかる結合体を「免疫結合体」という。1以上の細胞毒を含む免疫結合体は、「免疫毒素」という。細胞毒又は細胞毒性薬剤には、細胞に対し有害である(例えば、死滅させる)薬剤が含まれる。その例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又は同族体が挙げられる。また、治療薬としては、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブチル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)とロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス‐ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンとアントラマイシン(AMC))、並びに有糸分裂阻害薬(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられる。
本発明の抗体に結合することができる治療的細胞毒の他の好ましい例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、マイタンシン及びオーリスタチン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。カリケアマイシン抗体結合体の例は、市販されている(Mylotarg(登録商標);American Home Products社製)。
細胞毒は、当技術分野において利用可能なリンカー技術を用いて、本発明の抗体に結合することができる。抗体に細胞毒を結合させるのに使用されるリンカー型の例としては、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、及びペプチド含有リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、リソソーム区画内の低いpHによって切断されやすい、又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼによって切断されやすいものを選択することができる。
細胞毒の例は、例えば、米国特許第6,989,452号、同7,087,600号、及び同7,129,261号、国際特許出願PCT/US2002/17210号、同PCT/US2005/017804号、同PCT/US2006/37793号、同PCT/US2006/060050号、同PCT/US2006/060711号、国際公開公報第2006/110476号、並びに米国特許出願第60/891,028号(これらの開示はすべて、全体において引用により本明細書中に組み込まれる。)に記載されている。細胞毒の型、リンカー、及び抗体への治療薬の結合方法についての更なる論考については、Saito, G.らの文献:(2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55: 199-215;Trail, P.A.らの文献:(2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;Payne, G.の文献:(2003) Cancer Cell 3:207-212;Allen, T.M.の文献:(2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763;Pastan, I.及びKreitman, R. J.の文献:(2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3: 1089-1091;Senter, P.D.及びSpringer, C.J.の文献:(2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
また、本発明の抗体は、放射性同位元素に結合して、細胞毒性放射性医薬品(放射性免疫結合体ともいう)を生成することもできる。診断又は治療に使用する抗体に結合することができる放射性同位元素の例としては、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90及びルテチウム177が挙げられるが、これらに限定されない。放射性免疫結合体の調製方法は、当技術分野で確立されている。放射性免疫結合体の例は、商業的に入手可能であり、Zevalin(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製)、及びBexxar(登録商標)(Corixa Pharmaceuticals社製)を含み、類似した方法を、本発明の抗体を使用して放射性免疫結合体を調製するのに用いることができる。
本発明の抗体結合体を使用して、所定の生物反応を改善することができ、また、薬物部分は、古典的な化学治療薬に限定されるように解釈することはできない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。かかるタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素若しくはジフテリア毒素などの酵素活性のある毒素若しくはその活性断片;腫瘍壊死因子若しくはインターフェロン‐γなどのタンパク質;又は、例えば、リンホカイン、インターロイキン‐1(「IL-1」)、インターロイキン‐2(「IL-2」)、インターロイキン‐6(「IL-6」)、顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、又は他の成長因子などの生物反応調節剤が含まれ得る。
かかる治療的部分を抗体に結合させる技術は、周知であり、例えば、Arnonらの文献:「癌治療における薬剤の免疫標的化のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」, 「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)」, Reisfeldら編, pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromらの文献:「ドラッグデリバリーのための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」, 「ドラッグデリバリー制御(Controlled Drug Delivery)(第2版)」, Robinson ら編, pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpeの文献:「癌治療における細胞毒性薬剤の抗体担体:総説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」:「モノクローナル抗体'84:生物学的及び臨床応用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)」, Pincheraら編, pp. 475-506 (1985);「癌治療における放射性同位元素標識化抗体の治療用途に予想される分析、結果及び将来 (Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」, 「癌検出及び治療におけるモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)」, Baldwinら編, pp. 303-16 (Academic Press 1985);及びThorpeらの文献:Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)を参照されたい。
(二重特異性分子)
別の態様において、本発明は、本発明の抗BST1抗体又はその断片を含む二重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、別の機能的分子、例えば別のペプチド又はタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体若しくはリガンド)に誘導体化又は連結して、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。本発明の抗体は、実際に、複数の他の機能的分子に誘導体化又は結合して、3以上の異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多特異性分子を生成することができ、また、かかる多特異性分子は、本明細書に使用する「二重特異性分子」という用語に包含されることも意図する。本発明の二重特異性分子を生成するために、本発明の抗体は、(例えば、化学共役、遺伝的融合、非共有的会合、その他によって)1以上の他の結合分子、例えば、別の抗体、抗体断片、ペプチド又は結合模倣体に機能的に結合することができ、これによって、二重特異性分子が生じる。
したがって、本発明には、第1の標的エピトープ(すなわち、BST1)に対する少なくとも1つの第1の結合特異性及び第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む、二重特異性分子が含まれる。第2の標的エピトープは、第1の結合特異性により結合されたものと同じ標的タンパク質に存在すると考えられる。または、第2の標的エピトープは、第1の結合特異性により結合された第1のタンパク質に結合されたものと異なる標的タンパク質に存在すると考えられる。第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープ(すなわち、BST1)と同じ細胞に存在し得る。または、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープを提示する細胞によって提示されない標的に存在し得る。本明細書に使用する「特異的に結合する」という用語は、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む部分を指す。
本発明の一実施態様において、第2の標的エピトープは、Fc受容体、例えば、ヒトFcγRI(CD64)又はヒトFcα受容体(CD89)である。したがって、本発明には、FcγR又はFcαR発現エフェクター細胞(例えば、単球、マクロファージ、若しくは多形核細胞(PMN))、及びBST1を発現する標的細胞の両方に結合することができる二重特異性分子が含まれる。これらの二重特異性分子は、BST1発現細胞をエフェクター細胞に標的化させ、Fc受容体媒介型エフェクター細胞活性、例えば、BST1発現細胞の貪食反応、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、サイトカイン放出、又はスーパーオキシドアニオンの生成を誘発する。
本発明の別の実施態様において、第2の標的エピトープはCD3又はCD5である。したがって、本発明には、CD3又はCD5発現エフェクター細胞(例えば、CD3若しくはCD5発現細胞傷害性T細胞)に、及びBST1を発現している標的細胞にともに結合することが可能な二重特異性分子が含まれる。これらの二重特異性分子は、BST1発現細胞を標的とし、かつT細胞クローン性増殖及びT細胞毒性などのCD3又はCD5媒介エフェクター細胞活性を誘発する。本実施態様において、本発明の二重特異性抗体は、全2つ又は3つの抗体可変ドメイン有し、二重特異性抗体の第1の部分は、ヒト免疫エフェクター細胞に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することにより、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を補強することができ、エフェクター抗原は、ヒトCD3又はCD5抗原であり、前述の第1の部分は、1つの抗体可変ドメインからなり、二重特異性抗体の第2の部分は、エフェクター抗原以外の標的抗原、例えばBST1に特異的に結合することができ、前述の標的抗原は、前述のヒト免疫エフェクター細胞以外の標的細胞に位置し、前述の第2の部分は、1つ又は2つの抗体可変ドメインを含む。
二重特異性分子が多特異性である本発明の実施態様において、分子には、抗Fc結合特異性又は抗CD3若しくはCD5結合特異性及び抗BST1結合特異性に加え、第3の結合特異性が更に含まれ得る。一実施態様において、第3の結合特異性は、抗促進因子(EF)部分、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、これによって、標的細胞に対して免疫応答を増加させる分子である。「抗促進因子部分」は、所定の分子(例えば、抗原又は受容体)に結合して、これによって、Fc受容体又は標的細胞抗原への結合決定因子の効果の促進を結果的に生じる、抗体、機能的な抗体断片又はリガンドであり得る。「抗促進因子部分」は、Fc受容体又は標的細胞抗原に結合することができる。または、抗促進因子部分は、第1及び第2の結合特異性が結合する実体と異なる実体に結合することができる。例えば、抗促進因子部分は、細胞傷害性T細胞に結合することができる(例えば、標的細胞に対して増加した免疫応答を結果的に生じるCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM-1又は他の免疫細胞を介して)。
一実施態様において、本発明の二重特異性分子は、少なくとも1つの抗体又はその抗体断片を結合特異性として含み、これには、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Fd、dAb又は単鎖Fvが含まれる。また、抗体は、軽鎖若しくは重鎖ダイマー、又はFvなどのその最小断片、又は米国特許第4,946,778号(当該内容は、引用により本明細書に明示的に組み込まれる。)に記載されている単鎖構築物でもあり得る。
一実施態様において、Fcγ受容体に対する結合特異性は、モノクローナル抗体によって提供され、その結合は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)によって遮断されない。本明細書に使用する「IgG受容体」という用語は、1番染色体に位置する8つのγ鎖遺伝子のいずれかのものをいう。これらの遺伝子は、合計12個の膜貫通又は可溶性受容体アイソフォームをコードし、これらは、3つのFcγ受容体クラス、すなわち、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に分類される。一つの好適な実施態様において、Fcγ受容体は、ヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは72kDaの分子であり、これは、単量体型IgGに対して高親和性を示す(108〜109 M-1)。
特定の好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の生産及び特性評価は、国際公開公報第88/00052号及び米国特許第4,954,617号に記載され、これらの教示は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる。これらの抗体は、受容体のFcγ結合部位とは別の部位でFcγRI、FcγRII又はFcγRIIIのエピトープに結合し、そのため、これらの結合は、生理的レベルのIgGによって実質的に遮断されない。本発明に有用な特異的抗FcγRI抗体は、mAb 22、mAb 32、mAb 44、mAb 62及びmAb 197である。mAb 32を産生するハイブリドーマは、米国培養細胞株保存機関(ATCCアクセッション番号HB9469)から入手可能である。他の実施態様において、抗Fcγ受容体抗体は、モノクローナル抗体22(H22)のヒト化形態である。H22抗体の生産及び特性評価は、Graziano, R.F.らの文献(1995):J. Immunol 155 (10): 4996-5002、及び国際公開公報第94/10332号に記載されている。H22抗体産生細胞株は、HA022CL1の命名の下に米国培養細胞株保存機関に寄託され、アクセッション番号CRL 11177を有する。
更に他の好適な実施態様において、Fc受容体に対する結合特異性は、ヒトIgA受容体、例えば、Fc-α受容体(FcαRI(CD89))に結合する抗体によって提供され、その結合は、ヒト免疫グロブリンA(IgA)によって遮断されないのが好ましい。「IgA受容体」という用語は、19番染色体に位置する1つのα遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むことを意図する。この遺伝子は、55〜110 kDaの複数の選択的スプライシングされた膜貫通アイソフォームをコードすることが知られている。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸球性顆粒球及び好中球性顆粒球に構成的に発現するが、非エフェクター細胞集団にはない。FcαRIは、IgA1及びIgA2の両方に対して中程度の親和性(〜5×107 M-1)を有し、これは、G-CSF又はGM-CSFなどのサイトカインへの曝露で増加する(Morton, H.C.らの文献(1996):Critical Reviews in Immunology 16:423-440)。IgAリガンド結合ドメインの外側でFcαRIに結合するA3、A59、A62及びA77として同定された4つのFcαRI特異的モノクローナル抗体が記載されている(Monteiro, R.C.らの文献(1992):J. Immunol. 148:1764)。
FcαRI及びFcγRIは、本発明の二重特異性分子における使用のための好ましいトリガー受容体であり、これは、FcαRI及びFcγRIが、(1)主に免疫エフェクター細胞(例えば、単球、PMN、マクロファージ及び樹状細胞)で発現し、(2)高レベル(例えば、1細胞当たり5,000〜100,000)で発現し、(3)細胞毒性活性(例えば、ADCC、貪食反応)のメディエータであり、かつ、(4)これらに標的化された自己抗原を含む抗原の抗原提示の促進を媒介するからである。
本発明の二重特異性分子に利用することができる抗体は、マウス、ヒト、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体である。
本発明の二重特異性分子は、当技術分野で公知の方法を用いて、構成的結合特異性(例えば、抗FcR、抗CD3、抗CD5及び抗BST1結合特異性)を結合することによって調製できる。例えば、それぞれの二重特異性分子の結合特異性は、別々に生じ、それから互いに結合することができる。結合特異性がタンパク質又はペプチドである場合、種々のカップリング剤又は架橋剤を共有結合に使用することができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオ酢酸塩(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(sulfo-SMCC)が挙げられる(Karpovskyらの文献(1984):J. Exp. Med. 160:1686;Liu, MAらの文献(1985):Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648参照)。他の方法には、次に記載されているものが含まれる:Paulusの文献(1985):Behring Ins.Mitt.No. 78, 118-132;Brennanらの文献(1985):Science 229:81-83、及びGlennieらの文献(1987):J. Immunol.139:2367-2375。好ましい結合物質は、SATA及びsulfo-SMCCであり、ともにPierce Chemical社(Rockford, IL)から入手可能である。
付加的な二重特異性に関する研究は、完全長抗体様フォーマットへの二重結合の設計により、二重特異性について行われている(Wuらの文献:2007, Nature Biotechnology 25[11]:1290-1297; USSN12/477,711;Michaelsonらの文献:2009, mAbs 1[2]:128-141;;国際特許出願第PCT/US2008/074693号;Zuoらの文献:2000, Protein Engineering 13[5]:361-367;USSN09/865,198;Shenらの文献:2006, J Biol Chem 281[16]:10706-10714;Luらの文献:2005, J Biol Chem 280[20]:19665-19672;国際特許出願第PCT/US2005/025472号。これらは、引用により本明細書中に明示的に組み込まれる。)。
結合特異性が抗体である場合、これらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合することができる。特に好適な実施態様において、ヒンジ領域は、結合前に、奇数の、好ましくは1つのスルフヒドリル残基を含むように修飾される。
または、両方の結合特異性は、同じベクターにコードすることができ、同じ宿主細胞において発現及びアセンブルすることができる。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab')2又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの単鎖抗体及び結合決定因子を含む単鎖分子、又は2つの結合決定因子を含む単鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製する方法は、例えば、次に記載されている:米国特許第5,260,203号;同5,455,030号;同4,881,175号;同5,132,405号;同5,091,513号;同5,476,786号;同5,013,653号;同5,258,498号;及び、同5,482,858号(これらのすべては、引用により本明細書中に明示的に組み込まれる。)。
これらの特異標的に対する二重特異性分子の結合は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、FACS解析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害)、又はウエスタンブロットアッセイにより確認することができる。これらのアッセイはそれぞれ、一般に、特定の関心対象のタンパク質‐抗体複合体の存在を、関心対象複合体に対して特異的なラベル化試薬(例えば、抗体)を利用することによって検出する。例えば、FcR‐抗体複合体は、例えば、抗体‐FcR複合体を認識し、これに特異的に結合する酵素結合抗体又は抗体断片を使用して、検出することができる。または、複合体は、種々の他のイムノアッセイのいずれかを用いて検出することができる。例えば、抗体を放射ラベルし、放射免疫測定法(RIA)に用いることができる(例えば、Weintraub, B.の文献:「放射免疫測定法の原理(Principles of Radioimmunoassays)」, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986参照、当該記載は、引用により本明細書中に組み込まれる。)。放射性同位元素は、γカウンタ若しくはシンチレーションカウンタの使用、又はオートラジオグラフィなどの手段によって検出することができる。
(抗体断片及び抗体模倣体)
本発明は、従来型の抗体に限定されず、抗体断片及び抗体模倣体の使用を介して実施することができる。以下に詳述するように、種々の抗体断片及び抗体模倣の技術が、今日までに当技術分野で開発されており、広く知られている。ドメイン抗体、ナノボディ及びユニボディなどの多くのこれらの技術は、従来型の抗体構造の断片、又は他の修飾を使用するが、従来型の抗体結合を模倣するものの異なる機構から生成され、この機構によって機能する結合構造を利用する、アフィボディ、DARPin、アンチカリン、アビマー及びバーサボディなどの代替技術も存在する。
ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最も小さな機能的結合単位であり、ヒト抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖のいずれかの可変領域に対応する。ドメイン抗体は、およそ13 kDaの分子量を有する。Domantisは、完全ヒトVH及びVL dAbの一連の大きくかつ高度に機能的なライブラリ(各ライブラリにおいて10,000,000,000超の異なる配列)を開発しており、これらのライブラリを、治療標的に特異的なdAbを選択するのに使用する。多くの従来型抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系において、十分に発現する。ドメイン抗体及びその生産方法に関する更なる詳細は、次に示すものを参照することによって得ることができる:米国特許第6,291,158号;同6,582,915号;同6,593,081号;同6,172,197号;同6,696,245号;米国特許出願公開第2004/0110941号;欧州特許出願第1433846号、並びに欧州特許第0368684号及び第0616640号;国際公開公報第05/035572号、同04/101790号、同04/081026号、同04/058821号、同04/003019号及び同03/002609号。これらはそれぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
ナノボディは、天然存在型重鎖抗体の固有の構造及び機能特性を含有する抗体由来の治療用タンパク質である。これらの重鎖抗体は、1つの可変ドメイン(VHH)及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含有する。重要なことに、クローン化しかつ単離されたVHHドメインは、もとの重鎖抗体の完全な抗原結合能を保持する完全に安定したポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のVHドメインと高い相同性を有し、活性を全く欠失することなく更にヒト化することができる。重要なことに、ナノボディは、低い免疫原性潜在力を有し、これは、ナノボディリード化合物を用いた霊長類による試験において確認されている。
ナノボディは、従来型抗体の利点を、低分子薬物の重要な特徴と組み合わせる。従来型抗体のように、ナノボディは、高い標的特異性、これらの標的に対する高い親和性及び低い固有の毒性を示す。しかしながら、これらは、低分子薬物のように、酵素を阻害し、受容体溝に容易にアクセスすることができる。さらに、ナノボディは、極めて安定であり、注射以外の手段によって投与することができ(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる国際公開公報第04/041867号参照)、生産するのが容易である。ナノボディの他の利点には、これらの小さなサイズのために共通しない又は隠れたエピトープを認識すること、これらの固有の三次元薬物フォーマットの柔軟性に起因して高親和性及び選択性でタンパク質標的の腔又は活性部位に結合すること、半減期の調整、並びに創薬の容易性及び速さが含まれる。
ナノボディは単一遺伝子によってコードされ、ほとんどすべての原核生物及び真核生物宿主、例えば大腸菌(例えば、米国特許第6,765,087号(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)参照)、カビ(例えば、アスペルギルス又はトリコデルマ)及び酵母(例えば、サッカロミセス属、クルイヴェロマイシス属、ハンゼヌラ属又はピキア属)(例えば、米国特許第6,838,254号(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)参照)において、効率的に生産される。生産過程は計測可能であり、キログラム単位量のナノボディが生産されている。ナノボディは、従来型抗体と比較して優れた安定性を示すので、これらは、長期間有効の既製溶液として製剤化することができる。
ナノクローン法(例えば、国際公開公報第06/079372号(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)参照)は、B細胞の自動化されたハイスルーアウト選択に基づいて、所望の標的に対してナノボディを生成する権利化された方法であり、本発明に関連して使用することができる。
ユニボディは、別の抗体断片技術であるが、これは、IgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づく。ヒンジ領域の欠失は、従来型のIgG4抗体の実質的に半分のサイズであり、IgG4抗体の二価結合領域よりもむしろ一価結合領域を有する分子を生ずる。また、IgG4抗体が不活性であり、そのため、免疫系と相互反応しないことは周知であり、これは、免疫応答が望ましくない疾患の治療のために有利であり、この利点がユニボディに受け継がれる。例えば、ユニボディは、これらが結合した細胞を阻害又は抑制するが、死滅させないように機能し得る。加えて、癌細胞に結合するユニボディは、これらが増殖することを促進しない。さらにまた、ユニボディは、従来型のIgG4抗体の約半分のサイズであるので、これらは、潜在的に有利な有効性でより大きな固形腫瘍において、良好な分布を示し得る。ユニボディは、全IgG4抗体と同程度の速度で本体からクリアされ、全抗体と同程度の親和性でこれらの抗原に結合することができる。ユニボディの更なる詳細は、国際公開公報第2007/059782号(これは、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)を参照することによって得ることができる。
アフィボディ分子は、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインのうちの1つに由来する58アミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質の新規なクラスを表す。この3つのヘリックスバンドルドメインは、コンビナトリアルファージミドライブラリの構築物の足場として使用され、そこから、所望の分子を標的化するアフィボディ変異体は、ファージディスプレイ技術を用いて選択することができる(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PAの文献:「αヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain)」, Nat Biotechnol 1997;15:772-7;Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PAの文献:「プロテインAのコンビナトリアルエンジニアリング由来のヒト免疫グロブリンA-(IgA)-特異リガンド(Human immunoglobulin A-(IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)。低分子量(6 kDa)と相俟ってアフィボディ分子の単純で堅牢な構造は、種々の用途、例えば、検出試薬として(Ronmark Jらの文献:「大腸菌で産生されたアフィボディ‐Fcキメラの構築及び特徴付け(Construction and characterization of affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli)」, J Immunol Methods 2002;261:199-211)、及び受容体相互作用を阻害すること(Sandstorm K, Xu Z, Forsberg G, Nygren PAの文献:「コンビナトリアルタンパク質工学により開発されたCD28結合アフィボディリガンドによるCD28-CD80共刺激シグナルの阻害(Inhibition of the CD28-CD80 co-stimulation signal by a CD28-binding affibody ligand developed by combinatorial protein engineering)」, Protein Eng 2003;16:691-7)にこれらを適合させる。アフィボディの更なる詳細及びその生産方法は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第5831012号を参照することによって得ることができる。
また、ラベル化アフィボディは、アイソフォームの存在量を決定するためのイメージング用途に有用でもあり得る。
DARPin(設計されたアンキリンリピートタンパク質)は、非抗体ポリペプチドの結合能を利用するために開発された抗体模倣DRP(設計されたリピートタンパク質)技術の一例である。アンキリン又はロイシンリッチリピートタンパク質などのリピートタンパク質は、遍在性の結合分子であって、抗体とは異なり、細胞内外において発生する。これらの固有のモジュラ構造は、構造単位を繰り返すこと(リピート)を特徴とし、これらは一緒に積み重なり、可変かつモジュラ標的結合表面を示す細長いリピートドメインを形成する。このモジュラリティに基づいて、高度に多様化された結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリを生成することができる。この戦略は、可変的表面残基及びリピートドメインへのこれらのランダムなアセンブリを示す自家和合性リピートのコンセンサス設計を含む。
DARPinは、非常に高い収率で細菌発現系において生成することができ、これらは公知の最も安定したタンパク質に属する。ヒト受容体、サイトカイン、キナーゼ、ヒトプロテアーゼ、ウイルス及び膜タンパク質を含む幅広い範囲の標的タンパク質に対し高度に特異的な高親和性DARPinが選択されている。一桁ナノモルからピコモル濃度範囲の親和性を有するDARPinを得ることができる。
DARPinは、ELISA、サンドイッチELISA、フローサイトメトリー解析(FACS)、免疫組織化学法(IHC)、チップ適用、アフィニティー精製、又はウエスタンブロット法を含む、広範な用途に使用されている。また、DARPinは、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合された細胞内マーカータンパク質として、細胞内区画において高い活性があることも判明した。DARPinは、pM範囲のIC50でウイルス侵入を阻害するために更に使用された。DARPinは、タンパク質‐タンパク相互作用を遮断するのに理想的であるだけでなく、酵素も阻害する。プロテアーゼ、キナーゼ及び輸送体は良好に阻害され、多くの場合、アロステリック阻害様式である。腫瘍及び非常に活発な腫瘍対血液の比における非常に速く、特異的な富化は、DARPinをインビボ診断法又は治療アプローチに十分に適合させる。
DARPin及び他のDRP技術に関する追加的情報は、米国特許出願公開第2004/0132028号及び国際公開公報第02/20565号に見出すことができ、これらはともに、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
アンチカリンは、追加的な抗体模倣の技術である。しかしながら、この場合においては、結合特異性は、ヒト組織及び体液において自然にかつ豊富に発現する低分子量タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、化学的感受性化合物又は不溶性化合物の生理的輸送及び貯蔵にインビボで関連する種々の機能を実施するために進化した。リポカリンは、タンパク質の一方の末端で4つのループを支持する高度に保存されたβ-バレルを含む、堅牢な固有構造を有する。これらのループは結合ポケットへの入口を形成し、分子のこの部分における立体構造的差異は、個々のリポカリン間の結合特異性における変動を説明する。
保存されたβ-シートフレームワークにより支持された超可変ループの全体構造は、免疫グロブリンを連想させるが、リポカリンは、サイズに関して抗体とはかなり異なり、単一の免疫グロブリンドメインよりもわずかに大きい160〜180個のアミノ酸の単一ポリペプチド鎖から構成される。
リポカリンはクローン化され、これらのループは、アンチカリンを生成するように遺伝子操作に供される。構造的に多様なアンチカリンのライブラリが生成され、アンチカリンディスプレイは、結合機能の選択及びスクリーニング、及びその後の原核生物又は真核生物系における更なる解析のための可溶タンパク質の発現及び生産を可能にする。試験では、実質的にあらゆるヒト標的タンパク質に特異的であるアンチカリンを開発及び単離することができ、ナノモル以上の範囲の結合親和性を得ることができることを成功裏に実証した。
また、アンチカリンは、二重標的化タンパク質(いわゆるデュオカリン)として形式化することもできる。デュオカリンは、標準的な製造方法を用いて1つの容易に製造されるモノマー性タンパク質において2つの別々の治療標的に結合するとともに、その2つの結合ドメインの構造的方向性にかかわらずに標的特異性及び親和性を保持する。
単一分子を介する複数標的の調節は、単一の原因因子よりも多くのものが関与することが知られている疾患において特に利点がある。さらに、デュオカリンなどの二価又は多価の結合様式は、疾患の細胞表面分子の標的化、シグナル伝達経路におけるアゴニスト効果の媒介、又は、細胞表面受容体の結合及びクラスタリングを介して促進されたインターナリゼーション効果の誘導に顕著な潜在能を有する。さらにまた、デュオカリンの高い固有の安定性は、モノマー性アンチカリンと同等であり、デュオカリンに柔軟な剤形及び送達可能性を提供する。
アンチカリンに関する追加的情報は、米国特許第7,250,297号及び国際公開公報第99/16873号に見出すことができ、これらはともに、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
本発明に関連して有用な別の抗体模倣技術は、アビマーである。アビマーは、インビトロエクソンシャフリング及びファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインの大きなファミリーから進化し、結合特性及び阻害特性を有する多ドメインタンパク質を生成する。複数の独立した結合ドメインを連結することは、結合力を生じることが示されており、従来型の単一エピトープ結合タンパク質と比較して改善された親和性及び特異性を生じる。他の潜在的利点には、大腸菌における複数標的特異性分子の簡便で効率的な生産が含まれ、これは、耐熱性及びプロテアーゼに対する抵抗性が改良されている。ナノモル以下の親和性を有するアビマーが種々の標的に対して得られている。
アビマーに関する追加的情報は、米国特許出願公開第2006/0286603号、同2006/0234299号、同2006/0223114号、同2006/0177831号、同2006/0008844号、同2005/0221384号、同2005/0164301号、同2005/0089932号、同2005/0053973号、同2005/0048512号、同2004/0175756号に見出すことができ、これらのすべては、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
バーサボディは、本発明に関連して使用することができる別の抗体模倣技術である。バーサボディは、15%超のシステインを有する3〜5 kDaの小さなタンパク質であり、これは、高いジスルフィド密度足場を形成し、通常のタンパク質が有する疎水性コアを置換する。少数のジスルフィドによる、疎水性コアを含む多数の疎水性アミノ酸の置換は、より小さく、より親水性で(より少ない凝集及び非特異的結合)、プロテアーゼ及び熱に対するより高い耐性であり、低密度のT細胞エピトープを有するタンパク質を生じ、その理由は、MHC提示に最も寄与する残基が疎水性であるためである。これらの特性のうちの4つすべては、免疫原性に効果を及ぼすことが周知であり、これらはともに、免疫原性の大きな減少を引き起こすと予測される。
バーサボディのインスピレーションは、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリ及びアネモネによって産生される天然の注射可能なバイオ医薬品由来であり、これらは、予想外に低い免疫原性を示すことが公知である。サイズ、疎水性、タンパク分解性抗原プロセシング、及びエピトープ密度を設計しかつスクリーニングすることによって選択された天然型タンパク質ファミリーから開始することは、天然の注射可能なタンパク質の平均をはるかに下回るレベルに最小化させる。
バーサボディの構造を考慮すると、これらの抗体模倣体は、多価性、多特異性、半減期メカニズムの多様性、組織標的化モジュール、及び抗体Fc領域の欠乏を含む、多用途的様式を提供する。さらに、バーサボディは、高収率で大腸菌において生産され、その親水性及び小さいサイズのために、バーサボディは高度に可溶性であり、高濃度に製剤化することができる。バーサボディは非常に熱安定であり(煮沸可能であり)、貯蔵期間の延長をもたらす。
バーサボディに関する追加的情報は、米国特許出願公開第2007/0191272号(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)に見出すことができる。
上述の抗体断片及び抗体模倣技術の詳細な説明は、本明細書に関連して使用することができるすべての技術の総合的な一覧であることを意図しない。例えば、限定されることなく、Quiらの文献(2007):Nature Biotechnology, 25(8):921-929(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)に概説されているような相補決定領域の融合などの代替的ポリペプチドに基づく技術、並びに米国特許第5,789,157号、同5,864,026号、同5,712,375号、同5,763,566号、同6,013,443号、同6,376,474号、同6,613,526号、同6,114,120号、同6,261,774号及び同6,387,620号(これらのすべては、引用により本明細書中に組み込まれる。)に記載されるRNAアプタマー技術などの核酸に基づく技術を含む種々の追加的な技術も、本発明に関連して使用することができる。
(医薬組成物)
別の態様において、本発明は、組成物、例えば、医薬として許容し得る担体とともに製剤化される、本発明のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分のうちの1つ又はこれらの組合せを含む医薬組成物を提供する。かかる組成物には、本発明の抗体又は免疫結合体又は二重特異性分子の1つ又は(例えば2以上の異なる)組合せが含まれ得る。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合する、又は相補活性を有する抗体(または、免疫結合体若しくは二重特異性)の組合せを含み得る。
また、本発明の医薬組成物は、併用療法、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法には、少なくとも1つの他の抗腫瘍薬、抗炎症剤又は免疫抑制薬と組み合わせて、本発明の抗体が含まれ得る。併用療法に使用することができる治療薬の例は、本発明の抗体の使用に係る以下の節において更に詳細に説明される。
本明細書に使用する「医薬として許容し得る担体」には、いずれかの及びすべての溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤、並びに生理的に適合性のあるその他のものが含まれる。好ましくは、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、免疫結合体又は二重特異性分子は、酸の作用、及び活性化合物を不活性化し得る他の自然条件から活性化合物を保護する物質で被覆することができる。
本発明の医薬化合物には、1以上の医薬として許容し得る塩が含まれ得る。「医薬として許容し得る塩」とは、親化合物の所望の生体活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を何ら付与しない塩をいう(例えば、Berge, S.M.らの文献(1977):J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。かかる塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの無毒の無機酸由来のもの、並びに脂肪族のモノ及びジカルボン酸、フェニル基置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸由来のものが挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、並びにN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒の有機アミンに由来するものが挙げられる。
また、本発明の医薬組成物には、医薬として許容し得る抗酸化剤も含まれ得る。医薬として許容し得る抗酸化剤の例としては、次に示すものが挙げられる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び、(3)金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
本発明の医薬組成物に利用することができる適切な水性及び非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及び適切なこれらの混合物、オリーブ油などの植物性油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆物質の使用によって、分散剤の場合に必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。
また、これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤も含有し得る。微生物の存在の防止は、上述の滅菌手順によって、並びに種々の抗細菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)の包含の両方によって、確保することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に含むことが望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬剤形の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる物質の包含によってもたらし得る。
医薬として許容し得る担体には、無菌の水溶液又は分散剤、及び無菌の注射可能溶液又は分散液の即時調製のための滅菌散剤が含まれる。医薬として活性な物質に対するかかる媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。従来型媒体又は薬剤が活性化合物に適合しない場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用が包含される。また、補助活性化合物を組成物に混入することもできる。
治療組成物は通常、製造及び貯蔵条件下において無菌かつ安定である必要がある。組成物は、高い薬物濃度に適した溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム又は他の秩序構造体として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、並びに適切なこれらの混合物を含有する、溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどなどの被覆剤の使用によって、分散剤の場合において必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合において、組成物中に、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチン)を組成物に含ませることによってもたらされ得る。
無菌の注射可能な溶液は、必要に応じて、先に列挙した成分のうちの1つ又はこれらの組合せとともに必要量の活性化合物を適切な溶媒に混入した後、滅菌精密濾過によって調製することができる。一般に、分散剤は、基本的な分散媒、及び先に列挙したものから必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を混入することによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製法は、減圧乾燥及び冷凍乾燥(凍結乾燥)であり、これらは、あらかじめ無菌濾過した溶液から活性成分及び追加的な所望成分の散剤を生産する。
単一剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与様式によって変化する。単一剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす組成物のその量である。一般に、100%のうち、この量は、医薬として許容し得る担体との組合せで、活性成分が約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、最も好ましくは活性成分の約1%から約30%の範囲である。
投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療反応)を提供するように調節される。例えば、単回ボーラスを投与することができ、複数の分割用量を徐々に投与することができるか、又は、投与量は、治療的な状況の緊急性によって示されるのに比例して減量又は増量することができる。投与の容易性及び投与量の均一性のために、単位投与剤形で非経口組成物を製剤化することは、特に有利である。本明細書に使用する単位投与剤形とは、治療される対象に対する単位投与量として適切な物理的に独立した単位をいい、各単位は、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果をもたらすように算出される活性化合物のあらかじめ定められた量を含む。本発明の単位投与剤形の仕様は、(a)活性化合物固有の特性、及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)個人における治療感受性に関するかかる活性化合物を配合する当技術分野に特有の制限によって決定づけられ、かつこれらに直接的に依存する。
抗体の投与について、投与量は、宿主体重の約0.0001〜100 mg/kg、及びより一般的には0.01〜5 mg/kgに及ぶ。例えば、投与量は、0.3 mg/kg体重、1 mg/kg体重、3 mg/kg体重、5 mg/kg体重若しくは10 mg/kg体重、又は1〜10 mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療計画は、週1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月1回、3ヵ月ごとに1回、又は3〜6ヵ月ごとに1回、投与を伴う。本発明の抗BST1抗体の好ましい投与計画には、次に示す投与スケジュールのうちの1つを使用して供する抗体の静脈内投与による1 mg/kg体重又は3 mg/kg体重が含まれる:(i) 6回の投与において4週ごと、次いで、3ヵ月ごと;(ii) 3週ごと;(iii) 3 mg/kg体重1回、その後、3週ごとに1 mg/kg体重。
一部の方法において、種々の結合特異性を有する2以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合において、投与される各抗体の用量は示される範囲内にある。抗体は通常、複数回投与される。単一投与の間隔は、例えば、週ごと、月ごと、3ヵ月ごと又は年ごとであり得る。また、間隔は、患者の標的抗原に対する抗体の血中濃度を測定することによって示されるように、不規則でもあり得る。一部の方法において、投与量は、約1〜1000 μg/ml、及び一部の方法においては、約25〜300 μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調節される。
または、抗体は、徐放製剤として投与することができ、その場合において、比較的頻度の低い投与が要求される。投与量及び頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変更する。一般に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、以下、ヒト化抗体、キメラ抗体及び非ヒト抗体が続く。投与の用量及び頻度は、治療が予防的か又は治療的かに応じて変更することができる。予防用途において、比較的低い用量が、長期間、比較的低頻度の間隔で投与される。一部の患者は、残りの生涯にわたって治療を受け続ける。治療用途において、比較的短い間隔における比較的高い用量は、疾患の進行が低減又は終結するまで、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的又は完全な寛解を示すまで、要求されることがある。その後、患者は、予防的投与計画を受けることができる。
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に有毒であることなく、特定の患者、組成物及び投与様式について所望の治療反応を達成するのに効果的である活性成分の量を得るように変更することができる。選択される用量レベルは、利用される本発明の特定の組成物又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、利用される特定の化合物の排出の速度、治療期間、利用される特定の組成物との組合せで使用される他の薬剤、化合物及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康状態及び病歴、及び医療業界で周知の同様の因子を含む、種々の薬物動態因子によって変化する。
本発明の抗BST1抗体の「治療的に有効な用量」は、好ましくは、病徴の重篤度の減少、病徴がない期間の頻度及び期間の増加、又は疾患苦痛による機能障害又は身体障害の予防を生じる。例えば、BST1媒介腫瘍の治療において、「治療的に有効な用量」は、好ましくは、無治療対象に対して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、更により好ましくは少なくとも約60%、及び更により好ましくは少なくとも約80%、細胞増殖又は腫瘍増殖を阻害する。化合物の腫瘍増殖阻害能は、ヒト腫瘍における有効性が予測される動物モデル系で評価することができる。または、組成物のこの特性は、化合物の腫瘍増殖阻害能を検討することによって評価することができ、かかる阻害は、インビトロで当業者に公知のアッセイで測定することができる。治療有効量の治療化合物は、腫瘍サイズを減少させることができるか、又は対象の症状を寛解させることができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重篤度、及び特定の組成物又は選択される投与経路などの因子に基づいて、かかる量を決定することができる。
本発明の組成物は、当技術分野で公知の種々の方法の1以上を用いて、1以上の投与経路を介して投与することができる。当業者に認識されるように、投与経路又は投与様式は、所望の結果によって変化する。本発明の抗体についての好ましい投与経路は、例えば、注射又は注入による投与の静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路、腹腔内経路、皮下経路、脊髄経路、又は他の非経口経路を含む。本明細書に使用する「非経口投与」という表現は、通常、注射による腸内投与及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入を含むが、これらに限定されない。
または、本発明の抗体は、例えば、鼻腔内的に、経口的に、経膣的に、経直腸的に、舌下的に又は局所的に、局所投与、表皮性投与又は粘膜投与経路などの非経口経路を介して投与することができる。
活性化合物は、急速な放出から化合物を保護する担体とともに調製することができ、これは、例えば放出制御製剤であり、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化された送達系を含む。生体分解可能な生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などを使用することができる。かかる製剤の調製についての多くの方法が特許権を得、又は一般に当業者に公知である(例えば、「徐放及び制御放出ドラッグデリバリーシステム(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)」, J.R. Robinson編, Marcel Dekker社, N.Y.(1978)参照)。
治療組成物は、当技術分野で公知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、好適な実施態様において、本発明の治療組成物は、無針皮下注射デバイスによって投与することができ、例えば、かかるデバイスは次に示すものに開示されている:米国特許第5,399,163;同5,383,851号;同5,312,335号;同5,064,413号;同4,941,880号;同4,790,824号;又は、同4,596,556号。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例としては、次に示すものが挙げられる:米国特許第4,487,603号(制御速度で薬剤を分注するための埋め込み可能なマイクロ注入ポンプを記載している。);米国特許第4,486,194号(皮膚を介して薬剤を投与するための治療デバイスを記載している。);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを記載している。);米国特許第4,447,224号(連続薬剤送達についての可変流(variable flow)の埋め込み可能な注入デバイスを記載している。);米国特許第4,439,196号(多室区画を有する浸透圧ドラッグデリバリーシステムを記載している。);及び、米国特許第4,475,196号(浸透圧ドラッグデリバリーシステムを記載している。)。これらの特許は、引用により本明細書中に組み込まれる。他のかかるインプラント、送達系及びモジュールの多くが、当業者に公知である。
特定の実施態様において、本発明のモノクローナル抗体は、インビボで適切な分散を保証するように製剤化することができる。例えば、脳血液関門(BBB)は、多くの高度に親水性である化合物を排除する。本発明の治療化合物が(必要に応じて)BBBを通ることを保証するように、これらを、例えばリポソーム内に製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許4,522,811号;同5,374,548号;及び、同5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は器官に選択的に輸送され、そのため、標的化薬剤送達を促進する1以上の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranadeの文献(1989):J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。例示的な標的化部分には、次に示すものが含まれる:葉酸又はビオチン(例えば、米国特許第5,416,016号参照);マンノシド(Umezawaらの文献(1988):Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloemanらの文献(1995):FEBS Lett. 357:140;M. Owaisらの文献(1995):Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeらの文献(1995):Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreierらの文献(1994):J. Biol. Chem. 269:9090)。K. Keinanen; M.L. Laukkanenの文献(1994):FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion;I.J. Fidlerの文献(1994):Immunomethods 4:273も参照されたい。
(使用及び方法)
本発明の抗体、抗体組成物及び方法は、BST1媒介性疾患の診断及び治療を含む、多数のインビトロ及びインビボでの診断的及び治療的有用性を有する。
一部の実施態様において、これらの分子は、インビトロで若しくはエクスビボで培養細胞に投与することができ、又は、例えば、インビボでヒト対象に投与して、種々の障害を治療、予防及び診断することができる。本明細書に使用する「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含むことを意図する。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類及び爬虫類が含まれる。好ましい対象には、BST1活性によって媒介される疾患を有するヒト患者が含まれる。方法は、特に、異常なBST1発現に関連する障害を有するヒト患者を治療することに適している。BST1に対する抗体が別の薬剤とともに投与される場合、2つの剤は、順次又は同時にのいずれかで投与することができる。
BST1に対する本発明の抗体の特異的結合を考慮すると、本発明の抗体を使用して細胞表面上のBST1発現を特異的に検出することができ、さらに、これを使用して、イムノアフィニティー精製によってBST1を精製することができる。
さらに、腫瘍細胞におけるBST1の発現を考慮すると、本発明の抗体、抗体組成物及び方法を用いて、腫瘍形成性障害、例えば、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌及び膵臓癌を含むBST1を発現する腫瘍細胞の存在が特徴である障害を有する対象を治療することができる。BST1は、下の実施例5に示すように、抗体結合で取り込まれることが実証され、そのため、本発明の抗体を、作用のペイロードメカニズム(例えば、ADCアプローチ、放射性免疫結合又はADEPTアプローチ)に使用することを可能とした。
一実施態様において、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、並びに組成物)を使用して、BST1のレベル又はその膜表面上にBST1を含む細胞におけるレベルを検出することができ、これらのレベルは、特定の病徴に関連づけることができる。または、抗体を使用してBST1の機能を阻害又は遮断することができ、これは今度は、特定の病徴の予防又は寛解と関連づけることができ、これによって、疾患のメディエータとしてBST1が関連づけられる。これは、抗体とBST1との間に複合体の形成を可能にする条件下で、試料及び対照試料を抗BST1抗体と接触させることによって達成することができる。抗体とBST1との間に形成される複合体は、試料及び対照で検出され、比較される。
別の実施態様において、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、並びに組成物)は、はじめにインビトロで治療的又は診断的使用に関連する結合活性について試験することができる。例えば、本発明の組成物は、以下の実施例に説明するフローサイトメトリーアッセイを用いて、試験することができる。
本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、免疫結合体及び組成物)は、BST1関連疾患の治療及び診断において一層の有用性を有する。例えば、モノクローナル抗体、多特異性又は二重特異性分子、及び免疫結合体を使用して、次に示す生体活性の1以上をインビボ又はインビトロで誘発することができる:BST1を発現する細胞の増殖を阻害し及び/又は死滅させること;ヒトエフェクター細胞の存在下で、BST1を発現する細胞の貪食反応若しくはADCCを媒介すること、又はBST1に結合するBST1リガンドを遮断すること。
特定の実施態様において、抗体(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、並びに組成物)は、インビボで、種々のBST1関連疾患を治療、予防又は診断するのに使用される。BST1関連疾患の例には、とりわけ、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌及び膵臓癌に代表されるヒト癌組織が含まれる。
インビボ及びインビトロで本発明の抗体組成物(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、並びに免疫結合体)を投与する適切な経路は、当技術分野で公知であり、当業者によって選択することができる。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈又は皮下)によって投与することができる。使用する分子の適切な用量は、対象の年齢及び体重、並びに抗体組成物の濃度及び/又は配合に依存する。
前述のように、本発明の抗BST1抗体は、1又は他のより多くの治療薬(例えば、細胞毒性薬剤、放射性毒性薬剤又は免疫抑制薬)と共投与することができる。抗体は、薬剤に(免疫結合体として)連結することができるか、又は薬剤とは別に投与することができる。後者(別投与)の場合、抗体は、薬剤の投与前に、投与後に若しくは薬剤と同時に投与することができるか、又は、他の公知の療法、例えば抗癌療法(例えば、放射線)と共投与することができる。かかる治療薬としては、とりわけ、抗腫瘍薬、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル及びシクロホスファミドヒドロキシウレアが挙げられ、これらは、単独では患者に有毒性又は準毒性であるレベルでのみ有効である。シスプラチンは、4週ごとに1回、100 mg/kg用量として静注投与され、アドリアマイシンは、21日ごとに1回、60〜75 mg/ml用量として静注投与される。本発明の抗体との共投与に適した他の薬剤としては、Avastin(登録商標)、5FU及びゲムシタビンなどの、癌(例えば、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌又は膵臓癌)の治療に使用される他の薬剤が挙げられる。本発明の抗BST1抗体又はその抗原結合断片と化学療法剤との共投与は、ヒト腫瘍細胞に細胞毒性作用を与える異なる機構を介して作用する2つの抗癌剤を提供する。かかる共投与は、薬剤耐性の進行又は抗体によって不活性にされる腫瘍細胞の抗原性における変化に起因する問題を解決することができる。
また、本発明の標的特異性エフェクター細胞、例えば、組成物(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子)に連結されたエフェクター細胞も、治療薬として使用することができる。標的化のためのエフェクター細胞は、マクロファージ、好中球又は単球などのヒト白血球であり得る。他の細胞には、好酸球、NK細胞、及び他のIgG-受容体担持細胞又はIgA-受容体担持細胞が含まれる。必要に応じて、エフェクター細胞は、治療される対象から得ることができる。標的特異性エフェクター細胞は、生理的に許容し得る溶液中の細胞懸濁液として投与することができる。投与される細胞数は、108〜109のオーダーであり得るが、治療目的に応じて変化する。一般に、量は、標的細胞(例えば、BST1を発現する腫瘍細胞)において局在化を得ること、及び、例えば、貪食反応による細胞死滅に効果を及ぼすのに十分である。また、投与経路は変更することもできる。
標的特異性エフェクター細胞を用いる治療は、標的細胞の除去のための他の技術と組み合わせて行うことができる。例えば、本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子)を使用する抗腫瘍治療、及び/又はこれらの組成物を備えたエフェクター細胞は、化学療法と組み合わせて使用することができる。加えて、組合せ免疫治療を用いて、腫瘍細胞拒絶に2つの異なる細胞毒性エフェクター集団を案内することができる。例えば、抗Fc-γRI又は抗CD3に連結された抗BST1抗体は、IgG‐受容体特異的結合物質又はIgA-受容体特異的結合物質と組み合わせて使用することができる。
また、本発明の二重特異性及び多特異性分子を使用して、例えば、細胞表面上の受容体のキャップ形成及び除去によって、エフェクター細胞上のFcγR又はFcγRレベルを調節することもできる。さらに、抗Fc受容体の混合物も、この目的に使用することができる。
また、補体に結合するIgG1、IgG2若しくはIgG3又はIgM由来の部分などの補体結合部位を有する本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、並びに免疫結合体)は、補体存在下で使用することもできる。一実施態様において、本発明の結合物質を用いる標的細胞及び適切なエフェクター細胞を含む細胞集団のエクスビボ治療は、補体又は補体を含有する血清の添加によって補うことができる。本発明の結合物質で被覆した標的細胞の貪食反応は、補体タンパク質の結合によって改善することができる。また、別の実施態様において、本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子)で被覆した標的細胞は、補体によって溶解することもできる。更に別の実施態様において、本発明の組成物は補体を活性化させない。
また、本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体、多特異性及び二重特異性分子、並びに免疫結合体)は、補体とともに投与することもできる。特定の実施態様において、本開示は、抗体、多特異性又は二重特異性分子及び血清又は補体を含む組成物を提供する。これらの組成物は、補体が抗体、多特異性又は二重特異性分子に密接に近接して位置する場合、有利であり得る。または、本発明の抗体、多特異性又は二重特異性分子及び補体又は血清は、別々に投与することができる。
また、本発明の抗体組成物(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性若しくは多特異性分子、又は免疫結合体)及び使用についての指示書を備えるキットも本発明の範囲内にある。このキットは、1以上の追加的な試薬、例えば、免疫抑制試薬、細胞毒性薬剤若しくは放射性毒性薬剤、又は1以上の追加的な本発明の抗体(例えば、第1の抗体とは別のBST1抗原のエピトープに結合する相補活性を有する抗体)を更に含有し得る。
したがって、本発明の抗体組成物によって治療される患者は、抗体の治療効果を促進又は増強する細胞毒性薬剤又は放射性毒性薬剤などの別の治療薬を追加的に(本発明の抗体の投与前、投与と同時に、又は投与後に)投与することができる。
他の実施態様において、対象は、例えば、対象をサイトカインで治療することによるFcγ又はFcγ受容体の発現又は活性を調節する(例えば、促進する又は阻害する)薬剤で追加的に治療することができる。多特異性分子を用いる治療時の投与についての好ましいサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン‐γ(IFN-γ)及び腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。
また、本発明の組成物(例えば、抗体、多特異性及び二重特異性分子)は、例えば、FcγR又はBST1を発現する標的細胞をラベル化するために、かかる標的細胞に使用することもできる。かかる使用について、結合物質を、検出可能な分子に連結することができる。したがって、本発明は、Fc受容体、例えばFcγR又はBST1を発現する細胞をエクスビボ又はインビトロで局在化させる方法を提供する。検出可能なラベルは、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素又は酵素補因子であり得る。
特定の実施態様において、本発明は、試料中のBST1抗原の存在を検出するための方法、又はBST1抗原の量を測定する方法であって、試料及び対照試料を、BST1に特異的に結合するモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分と、抗体又はその部分とBST1との間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを含む、前述の方法を提供する。その結果、複合体の形成が検出され、ここで、対照試料と比較しての試料との複合体形成の相違が試料中のBST1抗原の存在を示す。
他の実施態様において、本発明は、対象におけるBST1媒介性疾患、例えば、本発明の疾患を含むヒト癌及びヒト炎症性疾患を治療するための方法を提供する。
更に別の実施態様において、本発明の免疫結合体を使用して、化合物(例えば、治療薬、ラベル、細胞毒、放射毒性免疫阻害剤など)を、抗体に連結することによって、かかる化合物を、BST1細胞表面受容体を有する細胞に標的化することができる。例えば、抗BST1抗体は、米国特許第6,281,354号及び同6,548,530号、米国特許出願公開第2003/0050331号、同2003/0064984号、同2003/0073852号及び同2004/0087497号に記載されている、又は国際公開公報第03/022806号で記載されている、毒素化合物のいずれかに結合することができる。したがって、本発明は、(例えば、検出可能なラベル、(例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素又は酵素補因子)により)BST1を発現する細胞をエクスビボ又はインビボで局在化させるための方法も提供する。または、免疫結合体は、BST1に細胞毒又は放射性毒を標的化することによって、BST1細胞表面受容体を有する細胞を死滅させるのに使用することができる。
本願明細書において引用したすべての文書、刊行物、特許、特許出願、発表、テキスト、報告、原稿、パンフレット、書籍、インターネットポスティング、論文記事、定期刊行物、製品データ表などを含むが、これらに限定されない、すべての文献は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。参考文献に係る論考は、本明細書においてこれらの著者によってなされる主張を要約するものにすぎず、参考文献が先行技術を構成するという承認はなく、出願人は、参考文献の精度及び妥当性に挑む権利を保有する。
上述の本発明は、理解の明確性を目的として図面及び実施例を挙げて、ある程度詳細に記載されるが、本発明の教示に照らし、係属する特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び改良がなされ得ることが、当業者に容易に認識される。
本発明は、次の実施例によって更に示されるが、本実施例は、更に限定するものと解釈されない。
(実施例1:ファージディスプレイライブラリの構築)
BST1のアミノ酸29-292(配列番号44)からなる組換えタンパク質を、標準的な組換え方法によって細菌中に合成させ、免疫用抗原として使用した。
(免疫化及びmRNA単離)
BST1結合分子の同定のためのファージディスプレイライブラリを次に示すように構築した。A/Jマウス(Jackson Laboratories社(Bar Harbor, Me.))を、第0日目にフロイント完全アジュバント中100 μgタンパク質、第28日目に100 μg抗原を使用して、組換えBST1抗原(細胞外ドメイン)によって腹腔内で免疫化した。眼窩後方の鼻腔の穴を通して、マウスの試験血液を得た。力価を試験して、ニュートラアビジン(Reacti-Bind(商標) NeutrAvidin(商標)被覆ポリスチレンプレート、Pierce社(Rockford, I11.)製)により固定化したビオチン化BST1抗原を使用したELISAによって、試験血液が高い力価であると考えられた場合、マウスを、第70日目、71日目及び72日目に100 μgのタンパク質で増強し、その後、第77日目に致死させ、脾臓を摘出した。抗体力価が十分でないと考えられた場合、マウスを第56日目に100 μgの抗原で増強し、試験血液を第63日目に採取した。十分な力価を得た場合、動物を、第98日目、99日目及び100日目に100 μgの抗原で増強し、第105日目に脾臓を摘出した。
脾臓を層流フードに収集し、ペトリ皿に移し、脂肪及び結合組織を切除し、廃棄した。脾臓を、1.0 mlの溶液D(25.0 gグアニジンチオシアナート(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、滅菌水29.3 ml、0.75 Mクエン酸ナトリウム(pH 7.0) 1.76 ml、10%ザルコシル2.64 ml(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)、2-メルカプトエタノール0.36 ml(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)の存在下で、滅菌5 ccシリンジからプランジャーで迅速に浸軟させた。この脾臓懸濁液を、全細胞が溶解するまで18ゲージ針を通して引き抜き、その粘着性の溶液をマイクロ遠心管に移した。ペトリ皿を100 μlの溶液Dで洗浄し、残存する脾臓を回収した。次いで、この懸濁液を、さらに5〜10回、22ゲージ針を通して引き抜いた。
試料を2本のマイクロ遠心管に均等に分け、次に示すものを順に添加し、各添加後に反転によって混合した:2 M酢酸ナトリウム(pH 4.0) 50 μl、水飽和フェノール0.5 ml(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)、100 μlクロロホルム/イソアミルアルコール49:1 100 μl(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)。この溶液を10秒間撹拌し、15分間氷上でインキュベートした。2〜8℃で、14 krpm、20分間の遠心分離後に、その水相を新しいチューブに移した。等量の水飽和フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)を加え、チューブを10秒間撹拌した。15分の氷上でのインキュベーション後、試料を2〜8℃で20分間遠心分離し、その水相を新しいチューブに移し、これを等量のイソプロパノールによって-20℃で最低30分間沈殿させた。4℃で、14 krpm、20分間の遠心分離後に、その上清を吸引し、チューブをしばらくの間回転させ、すべての微量液体をRNAペレットから除去した。
RNAペレットをそれぞれ300 μlの溶液D中に溶解し、これらを合わせて、これを等量のイソプロパノールによって-20℃で最低30分間沈殿させた。試料を4℃で、14 krpm、20分間遠心分離し、前述と同様にしてその上清を吸引し、試料を、氷で冷却した70%エタノール100 μlで洗浄した。試料を再度4℃で、14 krpm、20分間遠心分離し、70%エタノール溶液を吸引し、RNAペレットを減圧下で乾燥させた。ペレットを100 μlの無菌ジエチルピロカルボナート処理水中で再懸濁させた。1.0の吸光度を40 μg/mlの濃度に用いるA260によって、濃度を測定した。RNAを-80℃で保存した。
(相補DNA (cDNA)の調製)
上述したマウス脾臓から精製した全RNAを、cDNA調製用のテンプレートとして直接使用した。RNA (50 μg)を滅菌水で100 μLに希釈し、130 ng/μLオリゴdT12 10 μL(Applied Biosystems Model 392 DNAシンセサイザーで合成)を加えた。試料を70℃で10分間加熱し、次いで、氷上で冷却した。0.1 Mジチオトレイトール20 μL(Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.)製)、20 mMデオキシヌクレオシド三リン酸10 μL(dNTP's, Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及び10 μLの水氷とともに、40 μL 5*のファーストストランドバッファー(Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.)製)を加えた。次いで、試料を37℃で2分間インキュベートした。10μL逆転写酵素(Superscript(商標)II, Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.)製)を加え、37℃で1時間インキュベートを継続した。cDNA産物をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に直接使用した。
(PCRによる抗体遺伝子の増幅)
PCRを使用してすべてのH及びL鎖遺伝子を実質的に増幅させるために、すべての公表された配列に実質的に対応するプライマーを選択した。H及びLのアミノ末端ヌクレオチド配列は、相当な多様性を有しているので、米国特許第6,555,310号に記載のとおり、H鎖の5'プライマーとして機能するために33のオリゴヌクレオチドを合成し、κL鎖の5'プライマーとして機能するために29のオリゴヌクレオチドを合成した。各鎖の定常領域ヌクレオチド配列は、H鎖の1つの3'プライマーと、κL鎖の1つの3'プライマーのみを必要とした。
それぞれのプライマー対の50 μL反応を、50 μmolの5'プライマー、50 μmolの3'プライマー、0.25 μL Taq DNAポリメラーゼ(5 ユニット/μL, Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、3 μL cDNA(記載のとおりに調製)、2 mM dNTP's 5 μL、MgC12添加5 μL 10*Taq DNAポリメラーゼバッファー(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及びH2O(50 μLになるまで添加)によって行った。GeneAmp(登録商標)9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer社(Foster City, Calif.)製)を使用して、次に示すサーモサイクルプログラムで増幅を行った:94℃、1分間;94℃、20秒間、55℃、30秒間、及び72℃、30秒間の30サイクル;72℃、6分間;4℃。
次いで、PCR処理のdsDNA産物を、3'プライマーのみを使用して非対称PCRに供し、標的遺伝子の抗センス鎖のみを実質的に生成した。それぞれのdsDNA産物の100 μL反応を、200 μmolの3'プライマー、2 μLのdsDNA産物、0.5 μL Taq DNAポリメラーゼ、2 mM dNTP's 10 μL、MgC12添加10 μL 10*Taq DNAポリメラーゼバッファー(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及びH2O(100 μLになるまで添加)によって行った。上述のものと同じPCRプログラムを使用して、単鎖(ss)‐DNAを増幅させた。
(高速液体クロマトグラフィによる単鎖DNAの精製、及び単鎖DNAのキナーゼ処理)
H鎖ss‐PCR産物及びL鎖単鎖PCR産物を、2.5容量のエタノール及び0.2容量の7.5 M酢酸アンモニウムを加えて、-20℃で少なくとも30分間インキュベートすることによって、エタノール沈殿させた。2〜8℃で、14 krpm、10分間のエッペンドルフ遠心分離をすることによって、DNAをペレット化した。その上清を慎重に吸引し、チューブをしばらくの間、2回回転を行った。上清の最後の滴をピペットで除去した。DNAを中程度の熱で10分間、減圧下で乾燥させた。H鎖生成物を210 μLの水にプールし、また、L鎖生成物を別個に210 μLの水にプールした。単鎖DNAを、Hewlett Packard 1090 HPLC及びGen-Pak(商標)FAX陰イオン交換カラム(Millipore社(Milford, Mass.)製)を使用した高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって精製した。単鎖DNAを精製するのに使用した勾配を表1に示し、オーブン温度は60℃であった。吸光度を260nmでモニタした。HPLCから溶出した単鎖DNAを0.5分画分で回収した。単鎖DNA含有画分をエタノール沈殿させ、上述のとおりにペレット化し、乾燥させた。乾燥したDNAペレットを200 μL滅菌水にプールした。
表1 ss-DNA精製のHPLC勾配
バッファーAは、25 mMトリス、1 mM EDTA、pH 8.0である。
バッファーBは、25 mMトリス、1 mM EDTA、1 M NaCl、pH 8.0である。
バッファーCは40 mm リン酸である。
単鎖DNAを変異誘発のための調製で5'-リン酸化した。24 μL 10*キナーゼバッファー(United States Biochemical社(Cleveland, Ohio)製)、10 mMアデノシン5'‐三リン酸10.4 μL(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及び2 μLポリヌクレオチドキナーゼ(30 ユニット/μL, United States Biochemical社(Cleveland, Ohio)製)をそれぞれの試料に加え、チューブを37℃で1時間インキュベートした。チューブを70℃で10分間インキュベートすることによって反応を停止した。DNAを、トリス平衡化フェノール(pH>8.0, United States Biochemical社(Cleveland, Ohio)製):クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)の1回の抽出、及びクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)の1回の抽出によって精製した。抽出後、DNAをエタノール沈殿させ、上述のとおりにペレット化した。DNAペレットを乾燥させ、次いで、50 μLの滅菌水中に溶解した。1.0の吸光度について33 μg/mlを用いた260 nmのDNAアリコートの吸光度測定によって、濃度を決定した。試料を-20℃で保存した。
(脾臓抗体ファージライブラリの生成に使用するウラシルテンプレートの調製)
一晩培養した1 mlの大腸菌(E. coli) CJ236(BioRAD社(Hercules, Calif.))を、250 mlのバッフル付き振盪フラスコ(baffled shake flask)中の50 ml 2*YTに加えた。この培養物をOD600=0.6まで37℃で増殖させ、10 μlの1/100希釈BS45ベクターファージストック(米国特許第6,555,310号に記載)を接種し、6時間継続して増殖させた。およそ40 mlの培養物を、4℃で、12 krpm、15分間遠心分離した。その上清(30 ml)を新しい遠心管に移し、15 μlの10 mg/ml RNアーゼA(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)を加えた後、室温で15分間インキュベートした。7.5 mlの20%ポリエチレングリコール8000(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)/3.5M酢酸アンモニウム(Sigma Chemical社(St. Louis, Mo.)製)を加えることによって、ファージを沈殿させ、氷上で30分間インキュベートした。試料を、2〜8℃で、12 krpm、15分間遠心分離した。その上清を慎重に捨て、チューブをしばらくの間回転させ、すべての微量上清を除去した。ペレットを400 μlの高塩緩衝液(300 mM NaCl、100 mMトリス(pH 8.0)、1 mM EDTA)中で再懸濁させ、1.5 mlのチューブに移した。
ファージストックを、白色の界面が目に見えなくなるまで、等量の平衡化フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)で繰り返し抽出し、次いで、等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)で抽出した。DNAを2.5容量のエタノール及び1/5容量の7.5 M酢酸アンモニウムで沈殿させ、-20℃で30分間インキュベートした。DNAを、4℃で、14 krpm、10分間遠心分離し、ペレットを冷却70%エタノールで1回洗浄し、減圧下で乾燥させた。ウラシルテンプレートDNAを30 μlの滅菌水中に溶解し、1.0の吸光度を40 μg/mlの濃度に用いるA260によって、濃度を測定した。テンプレートを滅菌水で250 ng/μLに希釈し、等分し、-20℃で保存した。
(ss-DNAによるウラシルテンプレートの変異誘発、及び抗体ファージライブラリを生成する大腸菌へのエレクトロポレーション)
単鎖重鎖及び軽鎖遺伝子をファージディスプレイベクターウラシルテンプレート上に同時に導入することによって、抗体ファージディスプレイライブラリを生成した。通常の変異誘発を、0.2 mlのPCR反応チューブ中で次に示すものを混合することによって、2 μg規模で行なった:8 μlのウラシルテンプレート(250 ng/μL)、8 μLの10*アニーリングバッファー(200 mMトリス(pH 7.0)、20 mM MgC12、500 mM NaCl)、3.33 μlのキナーゼ処理単鎖重鎖挿入物(100 ng/μL)、3.1 μlのキナーゼ処理単鎖軽鎖挿入物(100 ng/μL)、及び滅菌水(80 μlになるまで添加)。DNAを次に示す熱プロファイルを用いて、GeneAmp(登録商標)9600サーマルサイクラーでアニーリングした:94℃で20秒、85℃で60秒間、85℃〜55℃で傾斜して30分間、55℃に15分間保持。プログラム終了後、DNAを氷に移した。8 μlの10*合成バッファー(5 mM各dNTP、10 mM ATP、100 mMトリス(pH 7.4)、50 mM MgC12、20 mM DTT)、8 μLのT4 DNAリガーゼ(1 U/μL、Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、8 μLの希釈T7 DNAポリメラーゼ(1 U/μL、New England BioLabs社(Beverly, Mass.)製)を加え、37℃で30分間インキュベートすることによって、伸長/ライゲーションを行った。300 μLの変異誘発停止バッファー(10 mMトリス(pH 8.0)、10 mM EDTA)によって、反応を停止した。変異誘発DNAを平衡化フェノール(pH>8):クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)で1回抽出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)で1回抽出し、-20℃で少なくとも30分間、DNAをエタノール沈殿させた。DNAをペレット化し、上述のとおりに、その上清を慎重に除去した。試料を再度しばらくの間回転させ、ピペットマンですべての微量エタノールを除去した。ペレットを減圧下で乾燥させた。DNAを4 μLの滅菌水中で再懸濁させた。
1 μLの変異誘発DNA (500 ng)を、エレクトロポレーションを使用して、40 μlのエレクトロコンピテント大腸菌(E. coli) DH12S(Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.))に転写した。形質転換細胞を、2*YTブロスでもとの容積の60%に希釈したおよそ1.0 mlの一晩培養XL-1細胞と混合した。次いで、この混合物を15 mlの無菌培養管に移し、150 mmのLB寒天プレートで平板培養するために、9 mlのトップアガーを加えた。プレートを37℃で4時間インキュベートし、次いで、一晩で20℃に移行した。10 mlの2*YTでこれらのプレートからファージを溶出させ、破片を回転させ、上清を採取することによって、第1ラウンド抗体ファージを作製した。これらの試料は、BST1に対する抗体の選択に使用する抗体ファージディスプレイライブラリである。LB寒天プレートの懸濁した細胞の10-4希釈物10μlを平板培養し、その後、37℃でプレートの一晩のインキュベートによって、エレクトロポレーションの効率を測定した。10-4希釈物プレートのプラークの数に106を掛けるによって、効率を算出した。ライブラリエレクトロポレーション効率は通常、これらの条件下では1*107ファージよりも高い。
(エレクトロポレーションによる大腸菌の形質転換)
エレクトロコンピテント大腸菌細胞を氷上で溶解した。DNAを、気泡が入らないように注意して、2〜3回上下に静かにこれらの細胞をピペットで移すことによって、細胞40 Lと混合した。細胞を、再度移動で気泡が入らないように注意して、氷上で冷却した遺伝子パルサーキュベット(0.2 cmギャップ、BioRAD社(Hercules, Calif.)製)に移した。キュベットを大腸菌パルサー(BioRAD社(Hercules, Calif.)製)に置き、メーカーの推奨に従って、1.88 kVに設定した電圧でエレクトロポレーション導入した。形質転換試料を直ちに、1 mlの2*YTブロス、又は400 μlの2*YT/600 μlの一晩培養XL-1細胞混合物1 ml中で再懸濁させ、指示された手順のとおり処理した。
(抗体ファージディスプレイベクター変異誘発反応によって形質転換したM 13ファージ又は細胞の平板培養)
100 mmのLB寒天プレートで平板培養する場合は、ファージ試料を大腸菌XL1-ブルーの一晩培養物200 μLに加え、又は、無菌15 ml培養管において150 mmのプレートで平板培養する場合は、ファージ試料を600 μLの一晩培養細胞に加えた。LBトップアガー(100 mmのプレートに3 ml、又は150 mmのプレートに9 ml)を加えた後、トップアガーを55℃で保存した(付録A1, Sambrookらの文献、上記参照)。その混合物を、寒天表面の過剰な水分を除去するためにあらかじめ温めた(37℃〜55℃)LB寒天プレートに均等に分散させた。トップアガーが凝固するまで、プレートを室温で冷却した。プレートを反転させて、上に示すように、37℃でインキュベートした。
(ビオチン化ADPリボシルシクラーゼ2及びビオチン化抗体の調製)
濃縮組換えBST1抗原(全長細胞外ドメイン)を、BBS(20 mMホウ酸塩、150 mM NaCl、0.1% NaN3、pH 8.0)で広範囲に透析した。透析後、1 mgのBST1(BBS中1 mg/ml)を、15倍のモル過剰のビオチン-XX-NHSエステル(Molecular Probes社(Eugene, Oreg.)製、DMSO中40 mMの原液)と反応させた。この反応物を室温で90分間インキュベートし、次いで、最終濃度20 mMのタウリン(Sigma Chemical社(St. Louis, Mo.)製)でクエンチした。その後、ビオチン化反応混合物を2〜8℃でBBSに対して透析した。透析後、ビオチン化BST1をパンニングバッファー(panning buffer)(40 mMトリス、150 mM NaCl、20 mg/ml BSA、0.1% Tween 20、pH 7.5)中で希釈し、等分し、必要があるまで-80℃で保存した。
重鎖のカルボキシ末端に位置する遊離システインを使用して、3-(N-マレイミジルプロピオニル)ビオシチン(Molecular Probes社(Eugene, Oreg.)製)と抗体を反応させた。抗体を、最終濃度1 mMまで30分間室温でDTTを加えることによって還元した。還元抗体を、50 mMリン酸カリウム、10 mMホウ酸、150 mM NaCl、pH 7.0中で平衡化したSephadex G50脱塩カラムに通した。3-(N-マレイミジルプロピオニル)ビオシチンを、最終濃度1 mMまで加え、反応を室温で60分間進行させた。次いで、試料をBBSに対して広範囲に透析し、2〜8℃で保存した。
(アビジン磁気ラテックスの調製)
磁気ラテックス(Estapor、10%固形物、Bangs Laboratories社(Fishers, Ind.)製)を完全に再懸濁させ、15 mlの円錐管に2 ml等分した。磁気ラテックスを12 ml蒸留水中で懸濁させ、磁石(PerSeptive Biosystems社(Framingham, Mass.)製)を使用して10分間溶液から分離した。磁気ラテックスの磁石による分離を維持しつつ、10 mlの滅菌ピペットを使用して液体を慎重に除去した。この洗浄工程をさらに3回反復した。最終洗浄後、ラテックスを2 mlの蒸留水中で再懸濁させた。個別の50 mlの円錐管では、10 mgのアビジン-HS(NeutrAvidin, Pierce社(Rockford, Ill.)製)を、18 mlの40 mMトリス、0.15 M塩化ナトリウム、pH 7.5 (TBS)中に溶解した。撹拌中、2 mlの洗浄磁気ラテックスを希釈アビジン‐HSに加え、その混合物を更に30秒混合した。この混合物を45℃で2時間インキュベートし、30分ごとに振盪した。アビジン磁気ラテックスを、磁石を使用して溶液から分離し、上述のとおりに、20 ml BBSで3回洗浄した。最終洗浄後、ラテックスを10 mlのBBS中で再懸濁させ、4℃で保存した。
使用直前に、アビジン磁気ラテックスをパンニングバッファー(40 mMトリス、150 mM NaCl、20 mg/ml BSA、0.1% Tween 20、pH 7.5)中で平衡化した。パンニング試験に必要なアビジン磁気ラテックス(200 μl/試料)を、滅菌15 ml遠心管に加え、パンニングバッファーで10 mlにした。遠心管を磁石上に10分間置き、ラテックスを分離した。上述のとおりに、溶液を10 ml滅菌ピペットで慎重に除去した。磁気ラテックスを10 mlのパンニングバッファー中で再懸濁させ、第2の洗浄を開始した。磁気ラテックスをパンニングバッファーで計3回洗浄した。最終洗浄後、ラテックスをパンニングバッファー中で開始容積まで再懸濁させた。
(実施例2:BST1抗原に対する組換えポリクローナル抗体の選択)
BST1に特異的に結合する結合試薬を、実施例1に記載の過剰免疫したマウスから作製したファージディスプレイライブラリから選択した。
(パンニング)
第1ラウンド抗体ファージを、BS45ウラシルテンプレートを使用して、実施例1に記載のとおりに調製した。変異誘発DNAのエレクトロポレーションを行い、種々の免疫化マウスに由来するファージ試料を生産した。組換えポリクローナルライブラリの多くの多様性を生み出すために、各ファージ試料を別々にパンニングした。
ビオチン化BST1抗原による機能的パンニングの第1ラウンド前に、7F11-磁気ラテックス(米国特許第6,555,310号の実施例21及び22に記載)でパンニングすることによって、これらの表面で重鎖及び軽鎖をともに示すファージの抗体ファージライブラリを選択した。これらの強化されたライブラリの機能的パンニングを、原則として、米国特許第6,555,310号の実施例16に記載のとおりに行った。具体的には、10 μLの1*10-6 Mビオチン化BST1抗原を、ファージ試料(最終濃度およそ1*10-8 MのBST1)に加え、2〜8℃で、その混合物を一晩平衡になるようにした。
平衡に到達後、試料をアビジン磁気ラテックスでパンニングし、BST1に結合した抗体ファージを捕捉した。平衡化アビジン磁気ラテックス(実施例1)、試料当たり200 μLラテックスを、室温で10分間ファージとともにインキュベートした。10分後、およそ9 mlのパンニングバッファーを各ファージ試料に加え、磁石を使用して磁気ラテックスを溶液から分離した。10分の分離後、10 mlの滅菌ピペットを使用して、未結合のファージを慎重に除去した。次いで、磁気ラテックスを10 mlのパンニングバッファー中で再懸濁させ、第2の洗浄を開始した。上述のとおりに、ラテックスを計3回洗浄した。それぞれの洗浄において、チューブを磁石と10分間接触させ、磁気ラテックスから未結合のファージを分離した。第3の洗浄後、磁気ラテックスを1 mlのパンニングバッファー中で再懸濁させ、1.5 mLのチューブに移した。次いで、各試料の磁気ラテックスの全量を回収し、200 μl 2*YT中で再懸濁させ、実施例1に記載のとおり、これを150 mmのLBプレートで平板培養し、結合ファージを増幅させた。プレートを37℃で4時間、次いで、20℃で一晩インキュベートした。
結合ファージを増幅させるのに使用した150 mmのプレートを使用して、次のラウンドの抗体ファージを生成した。一晩インキュベート後、細菌叢上に10 mlの2*YT培地をピペットで移し、プレートを室温で20分間静かに振盪することによって、第2ラウンドの抗体ファージを150 mmのプレートから溶出した。次いで、ファージ試料を、プラグシールキャップを備える15 mlの使い捨て滅菌遠心管に移し、3500 rpmで15分間、遠心管を遠心分離することによって、LBプレートの破片をペレット化した。その後、第2ラウンドの抗体ファージを含有する上清を新しいチューブに移した。
各ファージストック100 μLを、15 mlの使い捨て滅菌遠心管の900 μLのパンニングバッファーで希釈することによって、第2ラウンドの機能的パンニングを設定した。次いで、第1ラウンドのパンニングの記載のとおりに、ビオチン化BST1抗原を各試料に加え、ファージ試料を室温で1時間インキュベートした。その後、上述のとおりに、ファージ試料をアビジン磁気ラテックスでパンニングした。パンニングの進行を、100 mmのLB寒天プレート上の各ラテックス試料のアリコートを平板培養することによって、この時点でモニタして、κ陽性の割合を決定した。各パンニングの大多数のラテックス(99%)を、150 mmのLB寒天プレート上で平板培養し、ラテックスへのファージ結合を増幅させた。100 mmのLB寒天プレートを37℃で6〜7時間インキュベートした後、プレートを室温まで移行し、ニトロセルロース膜(孔径0.45 mm、BA85 Protran、Schleicher and Schuell社(Keene, N.H.)製)をプラーク上に覆った。
ニトロセルロース膜を有するプレートを、室温で一晩インキュベートした後、ヤギ抗マウスκアルカリホスファターゼで発現し、下記のとおりにκ陽性の割合を決定した。母集団のκ陽性の低い割合(<70%)のファージ試料を、7F11-磁気ラテックスによるパンニングのラウンドに供した後、およそ2*10-9 Mでビオチン化BST1抗原を使用してパンニングの第3機能的ラウンドを2〜8℃で一晩行った。また、このラウンドのパンニングもκ陽性のためにモニタした。80%を超えるκ陽性割合である個々のファージ試料をプールし、5*10-9 Mで、2〜8℃で一晩パンニングする最終ラウンドに供した。この第4ラウンドの機能的パンニングから溶出したファージ内に含有するBST1抗体遺伝子を、発現ベクターpBRncoH3にサブクローン化した。
米国特許第6,555,310号の実施例18に記載のとおりに、サブクローニング工程を概して行った。サブクローニング後、発現ベクターをDH10B細胞にエレクトロポレーションし、その混合物を、1%グリセロール及び10 μg/mlテトラサイクリンを含有する2*YTで一晩増殖させた。テトラサイクリン中の第2ラウンドの増殖及び選択後、BST1ポリクローナル抗体生産の供給源として、細胞のアリコートを-80℃で凍結した。これらのポリクローナル混合物の試料を、10 μg/mlテトラサイクリンを含有するLB寒天プレートで平板培養し、BST1を認識する抗体をスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体をポリクローナル混合物から選択した。
(ADPリボシルシクラーゼ2に対する組換え抗体の発現及び精製)
振盪フラスコ接種物を、37℃、300 rpmに設定したInnova 4330インキュベーター振盪機(New Brunswick Scientific社(Edison, N.J.)製)で、-70℃の細胞バンクから一晩で発生させた。接種物を、3 g/L L-ロイシン、3g/L L-イソロイシン、12 g/Lカゼイン消化物(Difco社(Detroit, Mich.)製)、12.5 g/Lグリセロール、及び10 μg/mlテトラサイクリンを添加した規定培養培地(Packらの文献(1993):Bio/Technology 11: 1271-1277)を収容した20 L発酵槽(Applikon社(Foster City, Calif.)製)に接種するのに使用した。発酵槽の温度、pH及び溶解酸素をそれぞれ、26℃、6.0〜6.8、及び25%飽和に制御した。ポリプロピレングリコール(Dow社(Midland, Mich.)製)の添加によって、気泡を制御した。グリセロールを流加モードの発酵槽に加えた。対数増殖後期にL(+)-アラビノース(Sigma社(St. Louis, Mo.)製)を2g/Lまで加えることによって、Fab発現を誘発した。細胞密度を、UV-1201分光測光器(Shimadzu社(Columbia, Md.)製)において600 nmの吸光度によって測定した。運転の終了及びpH 6.0への調整後、培養物を17,000 psiでM-210B-EHマイクロフルイダイザー(Microfluidics社(Newton, Mass.)製)に2回通した。細胞の高圧均質化によって、Fabが培養上清中に放出された。
精製の第1の工程は、膨張床固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(EB-IMAC)であった。Streamline(商標)キレート樹脂(Pharmacia社(Piscataway, N.J.)製)に0.1 M NiC12を加えた後、膨張させ、上方向に流れる50 mM酢酸塩、200 mM NaCl、10 mMイミダゾール、0.01% NaN3、pH 6.0バッファー中で平衡化した。保存溶液を使用して培養ホモジェネートを10 mMイミダゾールに移し、その後、平衡化バッファー中で2倍以上に希釈し、湿潤固体含量を5重量%未満まで低減させた。次いで、これを、300 cm/時間の空塔速度で上方向に流れるStreamlineカラムにかけた。細胞残屑は妨害なく通過したが、Fab重鎖上のニッケルとヘキサヒスチジンタグとの間の高い親和性相互作用によって、Fabが捕捉された。洗浄後、膨張床を充填床に替え、下方向に流れる20 mMホウ酸塩、150 mM NaCl、200 mMイミダゾール、0.01% NaN3、pH 8.0バッファーでFabを溶出した。
精製の第2の工程は、イオン交換クロマトグラフィ(IEC)を使用した。Q Sepharose FastFlow樹脂(Pharmacia社(Piscataway, N.J.)製)を、20 mMホウ酸塩、37.5 mM NaCl、0.01% NaN3、pH 8.0中で平衡化した。EB-IMAC工程のFab溶出プールを、20 mMホウ酸塩、0.01% NaN3、pH 8.0中で4倍に希釈し、IECカラムにかけた。洗浄後、37.5〜200 mM NaCl塩勾配によってFabを溶出した。溶出画分を、プールする前に、Xcell II(商標)SDS-PAGEシステム(Novex社(San Diego, Calif.)製)を使用して、純度を評価した。そして、Fabプールを濃縮し、保存のため、20 mMホウ酸塩、150 mM NaCl、0.01% NaN3、pH 8.0バッファーに透析ろ過した。これは、10,000 MWCOカセット(Sartorius社(Bohemia, N.Y.)製)を備えたSartocon Slice(商標)システムで達成した。最終精製収率は通常50%であった。精製Fabの濃度を、280 nmのUV吸光度によって測定し、1.6の吸光度を1 mg/ml溶液とした。
(実施例3:フローサイトメトリー解析によって決定したBST1に対するモノクローナル抗体の特異性)
実施例2で選択したBST1に対する抗体の特異性を、フローサイトメトリーによって試験した。細胞表面BST1タンパク質に対する抗体の結合能を試験するために、抗体を、BST1発現細胞、ヒト肺腺癌及びヒト肺由来のA549及びH226とともにそれぞれインキュベートした。細胞をFACSバッファー(DPBS、2% FBS)中で洗浄し、遠心分離し、100 μlの希釈一次BST1抗体(更にFACSバッファー中で希釈された)中で再懸濁させた。抗体‐A549複合体を氷上で60分間インキュベートし、次いで、上述したFACSバッファーで2回洗浄した。細胞‐抗体ペレットを、100 μlの希釈二次抗体(更にFACSバッファー中で希釈された)中に再懸濁させ、氷上で60分間インキュベートした。前述したとおりに、ペレットを洗浄し、200 μlのFACSバッファー中に再懸濁させた。試料を、BD FACScanto IIフローサイトメーターにロードし、BD FACSdivaソフトウェアを使用してデータを分析した。
(結果)
フローサイトメトリー解析の結果は、BST1_A1、BST1_A2及びBST_A3と命名した4つのモノクローナル抗体が、細胞表面ヒトBST1に効果的に結合することを示すことを実証した。図3aは、A549及びH226細胞におけるBST1へのBST1_A1及びBST1_A2両方の結合特異性をそれぞれ示す。図3bは、A549及びH226細胞におけるBST1へのBST1_A3の結合特異性を示す。結果は、A549及びH226におけるBST1に対するこれらの抗体の強い結合を示す。
(実施例4:BST1に対するモノクローナル抗体の構造上の特性評価)
標準PCR法を用いて、BST1_A2及びBST1_A1モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を得、標準的なDNAシーケエンス法を用いて、これらを配列決定した。
抗体配列を突然変異させて、1以上の残基で生殖細胞系列残基に戻した。
BST1_A2の重鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号10及び2である。
BST1_A2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号14及び6である。
BST1_A2重鎖免疫グロブリン配列と公知のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列の比較は、BST1_A2重鎖が、マウス生殖細胞系列VH 1-39由来のVHセグメントを利用することを実証した。CDR領域決定のKabat系を使用したBST1_A2 VH配列の更なる解析によって、配列番号38、42及び46にそれぞれ示すように、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の描写を可能とした。生殖細胞系列VH 1-39配列に対するBST1_A2 CDR1及びCDR2 VH配列のアライメントを図1a及び1bに示す。
BST1_A2軽鎖免疫グロブリン配列と公知のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列の比較は、BST1_A2軽鎖が、マウス生殖細胞系列VK 4-55由来のVKセグメントを利用することを実証した。CDR領域決定のKabat系を使用したBST1_A2 VK配列の更なる解析によって、配列番号49、52及び55にそれぞれ示すように、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の描写を可能とした。生殖細胞系列VK 4-55配列に対するBST1_A2 CDR1、CDR2及びCDR3 VK配列のアライメントを図2a、2b及び2cに示す。
BST1_A1の重鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号9及び1である。
BST1_A1の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号13及び5である。
BST1_A1重鎖免疫グロブリン配列と公知のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列の比較は、BST1_A1軽鎖が、マウス生殖細胞系列VH 1-80由来のVHセグメントを利用することを実証した。CDR領域決定のKabat系を使用したBST1_A1 VH配列の更なる解析によって、配列番号37、41及び45にそれぞれ示すように、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の描写を可能とした。生殖細胞系列VH 1-80配列に対するBST1_A1 CDR1及びCDR2 VH配列のアライメントを図1a及び1bに示す。
BST1_A1軽鎖免疫グロブリン配列と公知のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列の比較は、BST1_A1重鎖が、マウス生殖細胞系列VK 4-74由来のVKセグメントを利用することを実証した。CDR領域決定のKabat系を使用したBST1_A1 VK配列の更なる解析によって、配列番号48、51及び54にそれぞれ示すように、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の描写を可能とした。生殖細胞系列VK 4-74配列に対するBST1_A1 CDR1、CDR2及びCDR3 VK配列のアライメントを図2a、2b及び2cに示す。
BST1_A3の重鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号54及び52である。
BST1_A3の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号55及び53である。
BST1_A3重鎖免疫グロブリン配列と公知のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列の比較は、BST1_A3重鎖が、マウス生殖細胞系列VH 69-1由来のVHセグメントを利用することを実証した。CDR領域決定のKabat系を使用したBST1_A3 VH配列の更なる解析によって、配列番号56、57及び58にそれぞれ示すように、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の描写を可能とした。生殖細胞系列VH 69-1配列に対するBST1_A3 CDR1及びCDR2 VH配列のアライメントを図1a及び1bに示す。
BST1_A3軽鎖免疫グロブリン配列と公知のマウス生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列の比較は、BST1_A3軽鎖が、マウス生殖細胞系列VK 44-1由来のVKセグメントを利用することを実証した。CDR領域決定のKabat系を使用したBST1_A3 VK配列の更なる解析によって、配列番号59、60及び61にそれぞれ示すように、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の描写を可能とした。マウス生殖細胞系列VK 44-1配列に対するBST1_A3 CDR1、CDR2及びCDR3 VK配列のアライメントを図2a、2b及び2cに示す。
(実施例5:A549及びH226細胞におけるBST1_A1及びBST1_A2のインターナリゼーション及びMabZAP。)
H226及びA549によるBST1_A1及びBST1_A2のインターナリゼーションを、MabZapアッセイを用いて調査した。MabZapアッセイは、毒素サポリン(Advanced Targeting System社(San Diego, CA)製、IT-22-100)に結合した抗ヒトIgG二次抗体の結合を通じて、抗BST1モノクローナル抗体のインターナリゼーションを示した。まず、BST1 Fabが細胞の表面に結合した。次いで、MabZAP抗体が一次抗体に結合した。次に、MabZAP複合体が細胞によって取り込まれた。サポリンの細胞への侵入は、タンパク質合成の阻害及び最終的な細胞死をもたらした。
MabZAPアッセイを次に示すとおりに行った。細胞をそれぞれ、ウェル当たり5×103細胞の密度で接種した。抗BST1モノクローナル抗体又はアイソタイプ対照ヒトIgGを連続的に希釈し、次いで、細胞に加え、25℃で15分間インキュベートした。その後、MabZAPを加え、37℃で72時間インキュベートした。プレートの細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存アッセイキット(Promega社製、G7571)によって検出し、プレートを読み取り、Promega Glomaxを使用して分析した。細胞死は、抗BST1モノクローナル抗体の濃度に比例していた。図4a及び4bは、抗BST1モノクローナル抗体、BST1_A1及びBST1_A2が、抗ヒトIgGアイソタイプ対照抗体と比較して、H226及びA549細胞に効率的に取り込まれたことを示す。
(実施例6:BST1_A2のヒト化)
BST1_A2 VH及びVLのヒト化配列を設計するために、CDR構造の形成に重要なフレームワークアミノ酸を、3次元モデルを使用して同定した。また、BST1_A2と高い相同性を有するヒトVH及びVLの配列もGenBankデータベースから選択した。同定されたフレームワークアミノ酸残基とともに、CDR配列を、BST1_A2からヒトフレームワーク配列にグラフト化した(図5〜7)。
(実施例7:抗BST1 mAbsによって媒介した抗体依存性細胞傷害)
まず、10 nm/L〜0.1 nm/Lの濃度で25 μlの親及び非フコシル化抗BST1抗体(BST1_A2及びBST1_A2_NF)を加え、50 μlのBST1発現A549及びU937細胞を加えた96穴プレートのウェルを分離した。その後、25 μlのエフェクター細胞を、10:1及び25:1の最終エフェクター:標的(E:T)比を得るように、ウェルに加えた。次いで、プレートを、1000 rpmで2分間、静かに回転させ、その後、37℃で4時間、5% CO2インキュベーターでインキュベートした。3時間のインキュベーション後に、10 μlの溶菌液をBST1発現細胞のみを含有するそれぞれのウェルに加え、最大LDH放出をした。なお、一組のウェルには、容積補正対照として、培地のみを含有していた。
インキュベーション後、細胞を、1000 rpmで2分間、静かに回転させ、その後、50 μlの上清を平底96穴プレートに移した。Promega社から入手可能なCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(カタログ番号:G1780)を用いて、キット構成要素を、メーカーの説明書に従って再構成し、50 μlの基質ミックスをそれぞれのウェルに加えた。次いで、プレートを覆い、光から保護しつつ、そのまま25℃で30分間インキュベートした。この後、50 μlの停止液をそれぞれのウェルに加え、varioskanプレートリーダーを使用して、吸光度を490 nmで記録した。
正の対照として、ADCCによる細胞死滅を刺激することが知られている抗体、及び、負の対照としてヒトIgG1アイソタイプ対照を使用して、結果は、BST1_A2及びBST1_A2_NFが、BST1発現A549及びU937細胞においてADCCを誘発できたことを示す。BST1発現A549細胞において、BST1_A2_NFは、10 nmol/Lでおよそ45%まで死滅することを示した(図8a)。BST1発現U937細胞において、BST1_A2は、1 nmol/Lでおよそ20%まで死滅し、BST1_A2_NFは、1 nmol/Lでおよそ45%まで死滅することを示した(図8b)。
(実施例8:AML患者におけるフローサイトメトリー解析によって決定したBST1に対するモノクローナル抗体の特異性)
AML患者由来のリンパ芽球へのBST_A2の結合能を、フローサイトメトリー解析によって試験した。血液を20人のAML患者から採取した。実施例3に説明する手順を用いて、BST_A2は、AML患者のおよそ80%のAML芽細胞に結合することを示した。
(配列表)