以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(図1〜図14)に基づいて説明する。まず、図1〜図9を参照しながら、普通型コンバインの概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
図1〜図9に示す如く、実施形態における普通型コンバインは、走行部としてのゴムクローラ製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、稲(または麦)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取部3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
走行機体1の前部上面には、刈取部3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀部9を搭載する。脱穀部9の内部には、後述する穀稈脱粒ロータとしての扱胴21と、脱穀物の選別を行う穀粒選別機構10を配置する。走行機体1の後部右側には、オペレータが操縦する運転操作部5を搭載する。動力源としてのエンジン7を、走行機体1の中央部に配置する。走行機体1の後部左側(運転操作部5の左側方)には、脱穀部9から穀粒を取出す籾受部6を配置する。籾受部6に向けて脱穀部9内の穀粒を穀粒排出コンベヤ8にて搬出するように構成している。
刈取部3は、脱穀部9前部の扱口供給板9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダー12とを備える。穀物ヘッダー12内に掻込みオーガ13(プラットホームオーガ)を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダー12の前部にバリカン状刈刃15を配置する。穀物ヘッダー12前部の左右両側に左右の分草体16を突設する。また、フィーダハウス11に供給コンベヤ17を内設する。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、後述する刈取入力軸18(フィーダハウスコンベヤ軸)を昇降支点として、刈取部3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
上記の構成により、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって、穀物ヘッダー12の左右幅の中央部寄りのフィーダハウス11入口付近に刈取穀稈が集められる。穀物ヘッダー12の刈取穀稈の全量は、フィーダハウス11内の供給コンベヤ17によって搬送され、脱穀部9の扱口供給板9aに投入されるように構成している。なお、図1の仮想線に示す如く、穂先側が刈取られた後の穀稈の稈元を切断する稈元切断刃19を備え、走行機体1前部に稈元切断刃19を着脱可能に取付け、穀物ヘッダー12の後方に稈元切断刃19を昇降可能に配置している。
また、図1、図11〜図14に示す如く、脱穀部9の扱室22内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の左右方向に延長させた扱胴軸20に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24を張設する。なお、扱室22の左側下部に扱口供給板9aが形成され、扱室22の右側下部に排塵口23が形成されている。
上記の構成により、供給コンベヤ17によって扱口供給板9aから投入された刈取穀稈は、扱胴21の回転によって走行機体1の左側から右側に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間などにて混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、扱室22右側下部の排塵口23から圃場に排出される。
加えて、扱胴21の下方に配置された穀粒選別機構10として、比重選別用の揺動選別盤26を備える。揺動選別盤26は、左右方向に長尺な一枚の金属平板製のグレンパン27と、グレンパン27の右側端部に配置する篩線28と、篩線28の下方に配置するグレンシーブ29等にて構成する。グレンパン27は、左側半分を形成する流穀平板体27aと、右側半分を形成する穀粒漏下用の多孔板体27bを有している。さらに、上下左右に移動させる揺動ガイド体30にて揺動選別盤26の左側端部を支持すると共に、左右に移動させるクランク型揺動駆動軸31にて揺動選別盤26の右側端部を支持している。
また、穀粒選別機構10として、揺動選別盤26に選別風を供給する送風ファン34及び送風ファンダクト35と、揺動選別盤26の下方に横架させる送出コンベヤ36を備える。脱穀部9の左側部において、脱穀部9と籾受部6の間に前低後高姿勢に穀粒排出コンベヤ8を延設させる。穀粒排出コンベヤ8の上側にダクト支持体35aを介して送風ファンダクト35を並設し、送風ファンダクト35の高所(穀粒排出コンベヤ8後部の送り終端側)に送風ファン34を配置する。揺動選別盤26の左側端部の下面側に送風ファンダクト35の排風口を開口させ、揺動選別盤26の左側から右側方向に送風ファン34の選別風を供給する。一方、送出コンベヤ36左側端部の送り終端側に、穀粒排出コンベヤ8前端部の送り始端側を連結させる。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と送風ファン29の風選別作用とにより、重い穀粒と、軽い藁屑等に選別される。
揺動選別盤26の漏下多孔板体27bまたは篩線28から下方に落下した重い穀粒は、送出コンベヤ36から穀粒排出コンベヤ8に取出され、籾受部6の籾袋37に収集される。即ち、籾受部6には、走行機体1右側後端部に台支持フレーム38aを介して連結させる籾受台38と、走行機体1右側後端部にアーム支柱フレーム39aを介して取付ける籾受アーム体39を設けると共に、穀粒排出コンベヤ8後端部の送り終端側に籾投入口8aを設けるものであり、籾受アーム体39に籾袋37を吊下げ、籾投入口8aに籾袋37の開口部を装着し、籾投入口8aから排出される穀粒が籾袋37内部に充填される。一方、揺動選別盤26上面側の軽い藁屑等は、篩線28上面側から排塵口23に向けて移動して、脱穀部9右側の排塵口23から圃場に排出される。
加えて、図13〜図15に示す如く、扱口供給板9aが設置された扱口9bから排塵口23方向に、扱室22内の脱粒物を移動案内する送塵弁体24aを備えるものであり、扱口9b内側方の受網24上面側に送塵弁体24aを取付け、扱胴21の送塵性能を送塵弁体24aにて向上させ、扱口9b内部で脱粒物が詰まるのを防止する。また、扱室22の上面カバー22aの一部または全部を透明な硬質樹脂板にて形成すると共に、脱穀部9機筐に上面カバー22aを着脱交換可能に取付け、扱胴21の上半分を透明な上面カバー22aにて覆うものであり、扱胴21設置位置が高い構造であっても、運転操作部5のオペレータの前方視界が脱穀部9の上面カバー22aにて塞がれることがなく、運転操作部5のオペレータが透明な上面カバー22aを介して前方の刈取部3を視認できると共に、経年劣化にて上面カバー22aの透明性が低下したときは、上面カバー22aを透明なものに着脱交換できる。さらに、図16は、送風ファン34及び送風ファンダクト35の変形例を示すものであり、穀粒排出コンベヤ8の上面側にダクト支持体35aを介して送風ファン34を固定支持させると共に、送風ファンダクト35の一部または全部を変形可能な合成樹脂性ホース35bにて形成し、送風ファン34の送風出口(送風ファンダクト35)と、穀粒選別機構10の選別風口35cを、合成樹脂性ホース35bにて連通接続させ、送風ファン34から合成樹脂性ホース35bを介して穀粒選別機構10に向けて選別風を送給する。即ち、図16の変形例では、合成樹脂性ホース35bの変形にて、送風ファン34の送風出口と選別風口35c間の干渉構成部品を回避でき、送風ファン34の送風出口と選別風口35c間の送風ファンダクト35の延設構造を簡略化できる。
図1〜図5、図11〜図14に示す如く、刈刃15を有する刈取部3と、扱胴21を有する脱穀部9と、走行部としての履帯2及びエンジン7を設ける走行機体1を備え、刈取部3から脱穀部9に穀稈を供給するコンバインにおいて、扱胴21の下方に揺動選別盤26を配置する構造であって、脱穀部9の左側外側方に穀粒排出コンベヤ8を配置し、脱穀部9の右側に排塵口23を設け、走行機体1の左右方向に向けて揺動選別盤26を揺動可能に支持している。したがって、扱胴21と揺動選別盤26の前後の設置幅寸法をコンパクトに形成でき、脱穀部9の後方側に、エンジン7搭載スペースまたは操縦スペースまたは籾受スペースなどを容易に確保できる。充分な脱穀選別能力を保持して穀稈の刈取幅を容易に確保できるものでありながら、揺動選別盤26をコンパクトに構成可能な軽量構造の脱穀部9を低コストに構成できる。
図4、図5、図11〜図14に示す如く、走行機体1の左右幅方向に延設させた扱胴軸20に前記扱胴21を軸支し、脱穀部9左側の扱口9bから右側方向に脱粒穀稈を移動させると共に、脱穀部9に風選用の送風ファン34を配置する構造であって、扱胴21が内設される扱室22の左側下面に扱口供給板9aを張設させると共に、扱室22右側の排塵口23と扱室22左側の扱口供給板9aの間に受網24を張設させ、受網24に対向させてその下方側に揺動選別盤26の穀粒漏下部(多孔板体27bと篩線28)を配置している。したがって、充分な脱穀選別能力を保持して穀稈の刈取幅を容易に確保できると共に、揺動選別盤26をコンパクトに構成できる。
図4、図5、図11〜図14に示す如く、前記脱穀部に風選用の送風ファンを配置すると共に、前記脱穀部左側の選別風口と右側の排塵口の間に前記揺動選別盤を横架させる構造であって、前記脱穀部の扱口供給板下方に配置させる流穀板体と、前記扱口供給板と排塵口間の籾受網下方に配置させる多孔板体と、前記排塵口に近い籾受網の下方に配置させる篩線と、前記篩線下方に配置させる回収板体にて、前記揺動選別盤を形成し、前記多孔板体または篩線を介して前記送風ファンの選別風を前記排塵口から機外に排出可能に構成している。したがって、脱穀選別能力を維持しながら脱穀選別構造を簡略化できる。軽量構造の揺動選別盤26をコンパクトに構成できる。
一方、図2、図3、図5、図9に示す如く、運転操作部5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、走行機体1の進路を変更する左右のサイドクラッチレバー43,44と、走行機体1の移動速度を切換える走行変速レバー45と、刈取部3または脱穀部9を駆動または停止操作する作業クラッチレバー46と、刈取部3を昇降操作する刈取昇降レバー47と、駐車ブレーキレバー48が配置されている。また、操縦コラム41の後面側に歩行用ハンドル49を後方に向けて突設させ、歩行用ハンドル48の右側握り部にアクセルレバー40を取付けている。
他方、図1、図3〜図5に示す如く、走行機体1の下面側に左右の前支脚体32及び後支脚体33を下向きに突設させ、走行機体1下面側に左右の各支脚体32,33を介して左右のトラックフレーム50を配置している。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンション機構53を介してテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ54を設けている。前記テンションローラ23によって履帯2の前側を支持させ、駆動スプロケット51によって履帯2の後側を支持させ、トラックローラ54によって履帯2の接地側を水平姿勢に支持させ、履帯2の非接地側を前低後高姿勢に支持させるように構成する。
次に、図4〜図6、図10を参照してコンバインの駆動構造を説明する。図6、図10に示す如く、走行油圧ポンプ及び油圧モータが内臓された走行変速用の油圧無段変速機64をミッションケース63に設ける。走行機体1の中央上面にエンジン7を搭載し、エンジン7後方の走行機体1後部にミッションケース63を配置している。また、エンジン7から左側方に突出させた出力軸65上の走行駆動プーリ69と、ミッションケース63から左側方に突出させた入力軸66上の変速入力プーリ70を、走行出力ベルト67を介して連結する。また、テンションローラ形の走行クラッチ68にて走行出力ベルト67を緊張させ、エンジン7からミッションケース63に動力を伝達して、左右の履帯2を駆動する。
図4、図5、図10に示す如く、前記刈取部3と扱胴21を駆動するためのカウンタ軸72を備える。脱穀部9後面壁体の外側面に軸受体71を介してカウンタ軸72を回転自在に設ける。エンジン7から左側方に突出させた出力軸65上の脱穀駆動プーリ57と、カウンタ軸72左側端部のカウンタ軸プーリ58を、脱穀駆動ベルト59を介して連結する。また、テンションローラ形の作業クラッチ60にて脱穀駆動ベルト59を緊張させ、エンジン7からカウンタ軸72に動力を伝達させる。カウンタ軸72右側端部のカウンタ軸スプロケット73と、扱胴軸20右側端部の扱胴軸入力スプロケット74を、脱穀駆動チェン75にて連結する。カウンタ軸72右側端部の穀粒送出スプロケット76と、送出コンベヤ36右側端部の送出入力スプロケット77を、送出駆動チェン78にて連結する。
加えて、送出コンベヤ36左側端部にベベルギヤ機構79を介して穀粒排出コンベヤ8の送り始端側を連結する。揺動選別盤26の揺動駆動軸31に、揺動駆動スプロケット80及びベベルギヤ機構81を介して送出駆動チェン78を連結する。また、扱胴軸20左側端部のファン駆動スプロケット82と、送風ファン34の送風ファンスプロケット83を、ファン駆動チェン84にて連結する。作業クラッチレバー46の作業クラッチ60入り操作にて、脱穀部9の各部(扱胴21、各コンベヤ8,36、揺動選別盤26、送風ファン34)を定速回転数にて駆動する。
さらに、図1〜図3、図10に示す如く、扱胴軸20左側端部の扱胴軸出力スプロケット85と、刈取部3の昇降支点である刈取入力軸18左側端部の刈取入力スプロケット86を、刈取入力チェン87にて連結する。なお、刈取入力軸89に刈取部3全体を昇降動可能に支持する。前記刈取部3の穀物ヘッダー12後面側にヘッダー駆動軸91を設ける。ヘッダー駆動軸91に、ヘッダー駆動チェン90及びスプロケット88,89を介して刈取入力軸18の左側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支する掻込み軸93を備える。掻込み軸93に、掻込み駆動チェン92及びスプロケット94,95を介してヘッダー駆動軸91を連結する。
また、掻込みリール14を軸支するリール軸96を備える。リール軸96に、リール駆動チェン97及びスプロケット98,99を介してヘッダー駆動軸91を連結する。ヘッダー駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構100を介して刈刃15が連結されている。作業クラッチレバー46の作業クラッチ60入り操作にて、刈取部3の各部(供給コンベヤ17と、掻込みオーガ13と、掻込みリール14と、刈刃15)が駆動されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。なお、刈取入力軸18の右側端部に、稈元切断チェン101及びスプロケット102,103を介して稈元切断軸104を連結させ、走行機体1前端部に支持された稈元切断軸104に稈元切断クランク機構105を介して稈元切断刃19を連結させ、刈刃15にて穂先側が切断された後で、圃場の穀稈の株元側を稈元切断刃19にて連続的に切断し、圃場に残る切り株が短尺になるように構成している。
図1〜図5、図9、図10、図13に示す如く、刈刃15を有する刈取部3と、扱胴21を有する脱穀部9と、走行部としての履帯2及びエンジン7を設ける走行機体1を備え、刈取部3から脱穀部9に穀稈を供給するコンバインにおいて、エンジン7の出力軸65上の出力プーリとしての脱穀駆動プーリ57にカウンタ軸72上のカウンタ軸プーリ58をベルト59連結し、作業部駆動軸としてのカウンタ軸72上のカウンタ軸スプロケット73に扱胴軸上の扱胴軸入力スプロケット74をチェン75連結し、扱胴軸出力スプロケット85に刈取入力軸18上の刈取入力スプロケット86をチェン87連結している。したがって、刈取部3から脱穀部9にエンジン7の出力を伝達する構造などに比べ、扱胴軸20を中心にして可及的に高位置に作業部駆動径路を構成でき、組付けまたはメンテナンス作業性などを向上できる。コンバイン各部の駆動構造を簡略化して、コンバイン全体の小型化を簡単に達成でき、穀稈の刈取幅を確保しながら機体全体をコンパクトに構成可能な軽量構造の小型コンバインを低コストに構成できる。
図2、図4、図5、図9、図10に示す如く、履帯2に走行駆動力を伝達するミッションケース63を備える構造であって、走行機体1の中央部にエンジン7を搭載し、エンジン7の前方側に脱穀部9を配置し、エンジン7の後方側にミッションケース63を配置し、脱穀部9の後面側に作業部駆動用のカウンタ軸72を支持させている。したがって、前記ミッションケース63の走行駆動径路がエンジン7の後方側に構成され、脱穀部9などの作業部駆動径路がエンジン7の前方側に構成され、ミッションケース63の走行駆動径路または脱穀部9などの作業部駆動径路の組付けまたはメンテナンス作業性などを向上できると共に、脱穀部9などの作業部駆動径路と、ミッションケース63の走行駆動径路が、エンジン7の前方側と後方側に振分け状に分割形成され、コンバイン各部の駆動構造を簡略化できる。
図2、図4、図10に示す如く、エンジン7の出力プーリとしての走行駆動プーリ69と脱穀駆動プーリ57を備え、エンジン7の一側に走行駆動プーリ69と脱穀駆動プーリ57を配置する構造であって、エンジン7の一側で、走行駆動プーリ69から後方に向けて走行出力ベルト67を延設させる一方、脱穀駆動プーリ57から前方に向けて脱穀駆動ベルト59を延設させている。したがって、走行出力ベルト67の後方緊張力と脱穀駆動ベルト59の前方緊張力の相殺にて、エンジン7の出力軸65に作用する偏心力を軽減できる。出力軸65または軸受部の偏摩耗を低減できると共に、エンジン7の機械振動を低減させて、エンジン7の防振性能を向上できる。
図2、図4、図5、図10に示す如く、脱穀部9の一側に穀粒排出コンベヤ8を備え、脱穀部9と籾受部6の間に前低後高姿勢に穀粒排出コンベヤ8を延設させる構造であって、穀粒排出コンベヤ8の上側に送風ファンダクト35を並設すると共に、送風ファンダクト35の高所に送風ファン34を配置し、扱胴軸20上のファン駆動スプロケット82に送風ファン34軸上の送風ファンスプロケット83をチェン84連結している。したがって、穀粒排出コンベヤ8を活用して送風ファン34支持構造を簡略化できると共に、扱胴軸20高さに送風ファン34を設置して、高所の外気を吸引させることができる。
図1、図3、図4、図10に示す如く、刈取部3から脱穀部9に穀稈を供給する供給コンベヤ17を備え、供給コンベヤ17の穀稈送り終端側を刈取入力軸18にて支持すると共に、走行機体1の前部に装着する稈元切断刃19を備え、刈取部3後方の圃場に残った穀稈の株元を稈元切断刃19にて切断する構造であって、刈取入力軸18の左端側に刈取入力スプロケット86を設け、刈取入力軸18の右端側に稈元切断スプロケット102を設け、稈元切断スプロケット102を介して稈元切断刃19を駆動可能に構成している。したがって、刈取部3と脱穀部9の左側に刈取り駆動径路を集中させて構成できると共に、供給コンベヤ17が左寄り配置の構造では、稈元切断刃19の中央部に稈元切断スプロケット102から駆動力を伝達でき、稈元切断刃19の支持構造または駆動構造を中央部に集中させて構成でき、稈元切断刃19の支持構造または駆動構造を簡略化できる。また、稈元切断刃19が不要な収穫作業において、供給コンベヤ17の右側方向から、稈元切断刃19を取外す作業と、稈元切断刃19の駆動構造を取外す作業を容易に実行できる。
次いで、図4〜図9を参照して、走行機体1の構造を説明する。図4〜図9に示す如く、下部機体フレーム1aと上部機体フレーム1bと支柱フレーム1cにて走行機体1を上下多段の櫓構造に構成している。下部機体フレーム1aの下面側に左右のトラックフレーム50を介して左右の履帯2を装設する。また、上部機体フレーム1bの上面に防振ゴム体25を介してエンジン7下面の搭載フレーム7aを連結し、上部機体フレーム1bに防振ゴム体25を介してエンジン7を搭載する。上部機体フレーム1b上面に防振ゴム体25を介してエンジン7が防振支持されると共に、エンジン7は、運転操作部5と籾受部6の間に配置される。即ち、走行機体1の左右幅中央部にエンジン7が配置されると共に、エンジン7を中心に、エンジン7右側方の上部機体フレーム1b後部に運転操作部5が配置され、エンジン7左側方の上部機体フレーム1b後部に籾受部6が配置されるものであり、走行機体1の後方右側に運転操作部5が配置され、走行機体1の後方左側に籾受部6が配置される。エンジン7が搭載された上部機体フレーム1b下面と下部機体フレーム1bの間にバッテリ56を配置し、エンジン7の始動電源などにバッテリ56を利用する。
一方、上部機体フレーム1a前端側よりも前方に下部機体フレーム1b前端側を延設し、下部機体フレーム1bの前端側上面に脱穀部9を載置する。脱穀部9上面高さにエンジン7上面高さを一致させて、脱穀部9後方側の上部機体フレーム1a上面にエンジン7を設置すると共に、走行機体1の低い位置に脱穀部9の刈取穀稈入口(扱口供給板9a)を配置している。また、下部機体フレーム1bの前端部に昇降用油圧シリンダ4を取付けると共に、下部機体フレーム1bの前端側上面側(脱穀部9後面と上部機体フレーム1a前端部の間)に作動油タンク55を配置し、昇降用油圧シリンダ4などの作動油を作動油タンク55に貯蔵する。
他方、下部機体フレーム1aの後端側よりも後方に上部機体フレーム1bの後端側を延設し、下部機体フレーム1aの後端側に下部連結体61を介してミッションケース63の下端側を着脱可能に支持すると共に、上部機体フレーム1bの後端側に上部連結体62を介してミッションケース63の上端側を着脱可能に支持するものであり、下部機体フレーム1aと上部機体フレーム1bの後端側にミッションケース63を後傾姿勢に配置している。ミッションケース63の上端側に変速入力プーリ70を設け、変速入力プーリ70から前方のエンジン7に向けて走行出力ベルト67を延設させると共に、ミッションケース63の下端側に駆動スプロケット51を介して履帯2の後端部を張設させている。即ち、下部機体フレーム1aの後端部に駆動スプロケット51を支持し、トラックフレーム50前端部のテンションローラ52と下部機体フレーム1a後端部の駆動スプロケット51の間に履帯2の非接地側を張設し、履帯2の非接地側を前下がりに傾斜させた前低後高姿勢に支持している。
図4〜図9に示す如く、上部機体フレーム1bの後端部を右側に延設させ、上部機体フレーム1bの右側延設部に運転席ブラケット体111を設け、運転席ブラケット体111に運転席フレーム112の前端部を着脱可能にボルト締結する。また、上部機体フレーム1bの右側後端から後方に向けて運転席フレーム112の後端側を略水平に延設し、運転席フレーム112の後端部に操縦座席113を取付け、運転席フレーム112を介して運転操作部5後方に操縦座席113を配置し、操縦座席113に座乗したオペレータ(図1、図2の仮想線に示す)が、運転操作部5の各レバー43,44,45,46,47,48等を操作可能に構成している。また、操縦座席113に座乗するオペレータの足元と右の履帯2後端部の間に配置する足元ガード体114を備える。運転席フレーム112の前後幅中間部から下方に向けてガード体支持フレーム115を延設し、ガード体支持フレーム115に足元ガード体114を固着し、オペレータの足元が右の履帯2に接触するのを足元ガード体114にて阻止するように構成している。
図4、図5、図9に示す如く、エンジン7の後側と籾受部6の前側の間を遮蔽する仕切り体116を備える。台支持フレーム38aまたはアーム支柱フレーム39aまたは操縦コラム41右側などに仕切り体116を着脱可能にボルト締結し、エンジン7の後側と籾受部6の前側の間に仕切り体を設けると共に、仕切り体の上端側にアーム支柱フレーム39aを介して籾受アーム体39を配置している。即ち、エンジン7の後部またはミッションケース63上部(走行出力ベルト67または変速入力プーリ70取付け部)が仕切り体116にて遮蔽されるから、収穫作業中、操縦コラム41後方のオペレータに向けて移動するエンジン7の排熱風を仕切り体116にて低減できると共に、籾受アーム体39に装着する籾袋37がエンジン7またはミッションケース63の駆動部などに接触するのを仕切り体116にて阻止できる。
図1〜図9に示す如く、刈刃15を有する刈取部3と、扱胴21を有する脱穀部9と、走行部としての履帯2及びエンジン7を設ける走行機体1を備え、刈取部3から脱穀部9に穀稈を供給するコンバインにおいて、下部機体フレーム1aと上部機体フレーム1bにて走行機体1を上下多段構造に構成する構造であって、下部機体フレーム1aの下面側に左右の履帯2を装設し、上部機体フレーム1bの上面にエンジン7を搭載すると共に、上部機体フレーム1b前端側よりも前方に下部機体フレーム1a前端側を延設し、下部機体フレーム1aの前端側上面に脱穀部9を載置している。したがって、脱穀部9上面高さにエンジン7上面高さを合わせて設置できる。例えば、走行機体1の低い位置に脱穀部9の刈取穀稈入口を配置でき、刈取部3から脱穀部9に穀稈を円滑に供給できるから、穀稈の刈取り幅を確保しながら機体全体をコンパクトに構成できる。また、走行機体1の高位置にエンジン7を載置して、湿田性能または防塵性能などを向上できる。
図1〜図9に示す如く、走行機体1の後方右側に運転操作部5を配置し、走行機体1の後方左側に籾受部6を配置し、運転操作部5と籾受部6の間に前記エンジン7を配置している。したがって、走行機体1の左右幅中央にエンジン7を支持して機体の左右重量バランスを良好に維持できると共に、運転操作部5の左側方に籾受部6スペースを大きく形成でき、籾受作業性を向上できる。
図1〜図9に示す如く、左右の走行部を左右一対の履帯2にて構成する構造であって、下部機体フレーム1aの後端側よりも後方に上部機体フレーム1bの後端側を延設し、下部機体フレーム1aと上部機体フレーム1bの後端側にミッションケース63を後傾姿勢に配置し、ミッションケース63の下端側に駆動スプロケット51を介して履帯2の後端部を張設させ、履帯2の非接地側が前低後高に傾斜するように構成している。したがって、履帯2前方の圃場面(刈刃15の穀稈切断位置)をオペレータが容易に視認でき、刈り残し等の不具合の発生を低減できる。また、履帯2の非接地側に泥土または藁屑などが乗り上げても、履帯2の前端側にその泥土または藁屑などを速やかに滑落させることができる。
図1〜図9に示す如く、上部機体フレーム1bの右側後端から後方に向けて運転席フレーム112を延設し、運転席フレーム112を介して運転操作部5後方に操縦座席113を配置すると共に、運転席フレーム112を介して右の履帯2後方に足元ガード体114を配置している。したがって、操縦座席113に座乗するオペレータの足が右の履帯2に近接しても、オペレータの足が右の履帯2に接触するのを足元ガード体114にて防止できる。オペレータは、足元を殆ど気にする必要がないから、履帯2前方の圃場面(刈刃の穀稈切断位置)をオペレータが適正に視認でき、操縦操作性を向上できる。
図1〜図9に示す如く、エンジン7の後側と籾受部6の前側の間に仕切り体116を設け、仕切り体116の上端側に籾受アーム体39を配置している。したがって、籾受部6の籾袋37がエンジン7側の動力伝達ベルト(走行出力ベルト67)などに接触するのを仕切り体116にて容易に防止できる。また、籾受アーム体39に吊下げた籾袋37の姿勢を仕切り体116にて良好に維持でき、籾受け作業性を向上できる。
次に、図15を参照して、脱穀部9の変形構造を説明する。図15に示す如く、脱穀部9の機筐前面のうち、受網24下面と揺動選別盤26上面の間の機筐前面に、扱口供給板9aが配置された扱口9bの左右幅寸法と同じかそれよりも大きい左右幅寸法の風選口121を形成するものであり、脱穀部9の前面側に風選口121を設け、揺動選別盤26と平行に風選口121を開設している。風選口121が形成された導風ダクト122に除塵送風ファン123を内設すると共に、除塵送風ファン123の送風を分流するための風向ガイド体124を風選口121に配置する。
また、脱穀部9の機筐後面のうち、風選口121に対向する機筐後面に、送塵開口125を形成し、揺動選別盤の揺動方向と交叉する方向に、除塵送風ファン123の送風の一部を選別風として供給するものであり、風向ガイド体124にて分流する除塵送風ファン123の送風の一部を、受網24下面と揺動選別盤26上面の間から送塵開口125を介して脱穀部9機筐後面の外側方に移動させ、受網24から落下する粉塵または藁屑を送塵開口125から排出させ、受網24から揺動選別盤26上面に落下する粉塵または藁屑の量を低減させるように構成している。
さらに、扱口供給板9aは、複数のフィンを有する通風構造に形成すると共に、フィーダハウス11の底面外側のうち、供給コンベヤ17送り終端部の底面外側に、ゴム製の弾性遮蔽板体126を設け、フィーダハウス11底面外側と、扱口供給板9a前側の導風ダクト122上面の間を、弾性遮蔽板体126にて閉鎖するものであり、風向ガイド体124にて分流する除塵送風ファン123の送風の一部を、扱口供給板9aの下面側から上面側の扱口9bに供給する。また、フィーダハウス11の上面外側のうち、供給コンベヤ17送り終端部の上面外側に、吸引ファン127と吸引ダクト128を配置し、扱口9bに供給された除塵送風ファン123の送風の一部を、吸引ダクト128内の吸引ファン127側に吸引させるものであり、供給コンベヤ17送り終端部から扱室22に投入される扱口9bの穀稈を、除塵送風ファン123から吸引ファン127に送られる送風にて選別し、扱口9bの穀稈に混合している粉塵または藁屑などを、吸引ファン127の吸引ダクト128出口からフィーダハウス11上面前方に向けて排出させ、扱口9bから扱室22に搬入される粉塵または藁屑の量を低減させるように構成している。