図1には本発明の一実施形態に係る画像形成装置1における用紙5の搬送に関わる要部の構成が模式的に示されている。画像形成装置1は、電子写真法によって画像を形成するタンデム式の作像部10を備えたカラープリンタである。ただし、これに限らず、モノクロプリンタ、複写機、複合機、またはファクシミリ機であってもよい。
画像形成装置1は、ローラの回転駆動により搬送路20に沿って搬送される用紙5に画像を形成して排出する。画像形成装置1は、給紙ローラ24、タイミングローラ25、二次転写ローラ26、定着ローラ27、および排紙ローラ28を備えている。
給紙ローラ24は、用紙収納部である給紙カセット30に収納された用紙5を1枚ずつ搬送路20へ送り出すためのローラである。以下において、給紙ローラ24によって用紙5を送り出すことを「給紙」ということがある。また、給紙の以前において停止している状態の給紙ローラ24のニップ部に例えばピックアップローラ(図示せず)によって上流側から用紙5を突入させる動作を「給紙準備」ということがある。
給紙ローラ24は、同期型のモータM1によって回転駆動される。モータM1は、ステッピングモータであり、第1のローラ駆動機構21の駆動源として画像形成装置1に設けられている。
タイミングローラ25は、給紙ローラ24により送り出された用紙5を搬送路20に沿って転写位置へ送り出すためのローラである。転写位置とは、作像部10の転写ベルト15と二次転写ローラ26とを対向させて画像を用紙5に転写する位置である。タイミングローラ25は、送り出した用紙5を転写位置の上流で一時停止させ、転写ベルト15から用紙5へのトナー像の転写の位置合わせをする所定のタイミングで搬送を再開し、用紙5を転写位置へ送り込む。
タイミングローラ25は、同期型のモータM2によって回転駆動される。モータM2は、ステッピングモータであり、第2のローラ駆動機構22の駆動源として画像形成装置1に設けられている。モータM2の構造はモータM1の構造と同様である。ただし、異なるものでもよい。
二次転写ローラ26は、転写ベルト15から用紙5にトナー像を転写させる。定着ローラ27は、定着器18に備えられ、トナー像が転写された用紙5に熱と圧力とを加える。排紙ローラ28は、定着器18を通過した画像形成後の用紙5を排紙トレイ35に排出する。
図2には第1および第2のローラ駆動機構21,22に関わるM−C構成、C−M構成およびC−C構成が示されている。
画像形成装置1を製造するにあたって、第1のローラ駆動機構21の構造として、モータM1と給紙ローラ24との間にクラッチを介在させる構造と介在させない構造とを選択することができる。同様に、第2のローラ駆動機構22の構造として、モータM2とタイミングローラ25との間にクラッチを介在させる構造と介在させない構造とを選択することができる。
したがって、少なくとも1個のクラッチを使用する場合において、第1および第2のローラ駆動機構21,22の構造の組合せは次の3通りとなる。
図2(A)に示される「M−C構成」と呼称する構成は、クラッチを含まない第1のローラ駆動機構21mと、クラッチを含む第2のローラ駆動機構22cとの組合せである。
第1のローラ駆動機構21mは、モータM1、およびモータM1の回転駆動力を給紙ローラ24に伝達する1以上のギヤから構成される。この第1のローラ駆動機構21mによると、給紙ローラ24はクラッチを介することなくモータM1に連結される。
第2のローラ駆動機構22cは、モータM2、モータM2の回転駆動力をタイミングローラ25に伝達する1以上のギヤ、および回転駆動力の伝達を継断するタイミングクラッチC2から構成される。第2のローラ駆動機構22cによると、タイミングローラ25はタイミングクラッチC2を介してモータM2に連結される。
M−C構成を採用した場合、モータM2をタイミングローラ25の駆動に用いるだけでなく、例えば二次転写ローラ26の駆動にも用いることができる。モータM2を互いにタイミングの異なる複数の回転駆動に共用することにより、画像形成装置1に実装するモータの個数を低減して部品コストを下げることができる。
図2(B)に示される「C−M構成」と呼称する構成は、クラッチを含む第1のローラ駆動機構21cと、クラッチを含まない第2のローラ駆動機構22mとの組合せである。
第1のローラ駆動機構21cは、モータM1、モータM1の回転駆動力を給紙ローラ24に伝達する1以上のギヤ、および回転駆動力の伝達を継断する給紙クラッチC1から構成される。この第1のローラ駆動機構21cによると、給紙ローラ24は給紙クラッチC1を介してモータM1に連結される。
第2のローラ駆動機構22mは、モータM2、およびモータM2の回転駆動力をタイミングローラ25に伝達する1以上のギヤから構成される。第2のローラ駆動機構22mによると、タイミングローラ25はクラッチを介することなくモータM2に連結される。
C−M構成を採用した場合、モータM1を給紙ローラ24の駆動だけでなく、例えば他の給紙口に配置された給紙ローラの駆動にも用いることができる。すなわち、給紙カセット30が多段であったり手指し給紙口が設けられたりして画像形成装置1が給紙ローラ24と他の給紙ローラとを有する場合、モータM1を正転させて一方のローラを駆動し、逆転させて他方のローラを駆動するといったモータM1の共用が可能である。
図2(C)に示される「C−C構成」と呼称する構成は、給紙クラッチC1を含む第1のローラ駆動機構21cと、タイミングクラッチC2を含む第2のローラ駆動機構22mとの組合せである。C−C構成を採用した場合、モータM1およびモータM2のそれぞれを、タイミングの異なる複数の回転駆動に共用することができる。
図3には画像形成装置1の制御システムのハードウェア構成が示されている。画像形成装置1は、制御基板100および搬送駆動基板200を有している。
制御基板100は、CPU(Central Processing Unit) 101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、A/D変換器105、インタフェース素子、その他の周辺素子などを有している。
CPU101は、画像形成装置1の制御手段の例であり、ROM102に格納されているプログラムを実行することによって、用紙5の搬送を含む画像形成装置1の全体の動作を制御する。CPU101は、プログラムを実行するためのワークエリアとしてRAM103を用いる。
搬送駆動基板200は、モータM1,M2をそれぞれ駆動するモータドライバ201,202を有している。
モータドライバ201は、モータM1のA相コイル42およびB相コイル43に、周期的に変化する交流電圧を印加してモータM1のロータ41を回転させる。交流電圧として、通常、矩形波が用いられる。矩形波は、定電圧源の出力電圧を周期的にオンオフし、または出力電圧の正負を周期的に反転することによって得られる。また、適当なスイッチング回路を用い、矩形波よりも周波数の高いパルス列またはPWM(パルス幅変調信号)を用いることによって、矩形波を合成することもできる。パルス列またはPWMを用いると、モータM1の電流制御を行うことができる。
モータドライバ201は、制御基板100から入力されるモータ制御信号SM1に従って、モータM1を回転させまたは停止させる。
A相コイル42の両端間の電圧(コイル電圧)Eaは、モータM1が回転しているときに生じる誘起電圧を検出するための信号として、制御基板100のA/D変換器105に入力される。B相のコイル電圧Ebを誘起電圧の検出のための信号としてもよい。
モータドライバ202は、モータドライバ201の場合と同様に、モータM2に周期的に変化する交流電圧を印加してモータM2を回転させる。つまり、モータドライバ202は、モータドライバ201の場合と同様に、モータ制御信号SM2に従ってモータM2を回転させまたは停止させる。
モータM2のA相のコイル電圧Eaは、モータM2の誘起電圧を検出するための信号として、A/D変換器105に入力される。B相のコイル電圧Ebを誘起電圧の検出のための信号としてもよい。
上述のC−C構成が採用された場合、搬送制御基板200には、図示のように給紙クラッチC1およびタイミングクラッチC2が接続され、これらクラッチC1,C2を駆動するクラッチドライバ203が搬送制御基板200に実装される。そして、クラッチドライバ203は、制御基板100からのクラッチ制御信号SC1に従って給紙クラッチC1をオンオフ(連結/開放)し、クラッチ制御信号SC2に従ってタイミングクラッチC2をオンオフする。
なお、M−C構成が採用された場合には、給紙クラッチC1を搬送制御基板200に接続する必要はなく、C−M構成が採用された場合には、タイミングクラッチC2を搬送制御基板200に接続する必要はない。
図4には制御システムのCPU101の機能的構成が示されている。図4では一例としてC−C構成を想定し、画像形成装置1が給紙クラッチC1およびタイミングクラッチC2の両方を有するものとして説明する。
CPU101は、用紙搬送の制御に関わる構成要素として、誘起電圧検出部112、タイミング検出部114、および搬送制御部116を有する。これら構成要素は、CPU101が上述のプログラムを実行することによって実現される機能的要素である。
誘起電圧検出部112は、モータM1,M2における誘起電圧Vkを検出する。誘起電圧検出部112は本発明における「誘起電圧検出手段」の例である。誘起電圧検出部112は、各モータM1,M2の例えばA相のコイル電圧Eaを監視し、A相コイル42に流れる電流が0であるときの当該A相コイル42のコイル電圧Eaを誘起電圧Vkとして検出する。検出方法については後述する。
タイミング検出部114は、誘起電圧検出部112により検出された誘起電圧Vkに基づいて、給紙クラッチC1およびタイミングクラッチC2がそれぞれ実際に連結を完了したタイミングである連結完了タイミングおよび実際に開放を完了したタイミングである開放完了タイミングを検出する。タイミング検出部114は、本発明における「連結/開放完了タイミング検出手段」の例である。タイミング検出部114は、連結完了タイミングまたは開放完了タイミングを検出したとき、その旨を搬送制御部116に通知する。
タイミング検出部114は、給紙クラッチC1またはタイミングクラッチC2が連結されている状態でモータM1,M2に加わる負荷が最低負荷であるときの誘起電圧の大きさに基づいて決定される第1のしきい値Vaを用い、誘起電圧Vkが第1のしきい値Vaよりも小さくなったタイミングを、連結完了タイミングとして検出する。
また、タイミング検出部114は、給紙クラッチC1またはタイミングクラッチC2が連結されている状態でモータM1,M2に加わる負荷が最大負荷であるときの誘起電圧の大きさに基づいて決定される第2のしきい値Vbを用い、誘起電圧Vkが第2のしきい値Vbよりも大きくなったタイミングを、開放完了タイミングとして検出する。
第1のしきい値Vaまたは第2のしきい値Vbは、モータM1,M2の回転速度に応じて変更されるようにしてもよい。
搬送制御部116は、給紙ローラ24およびタイミングローラ25を含む上述した複数のローラによる給紙から排紙までの用紙5の搬送を制御する。搬送制御部116は、本発明における「制御手段」の例である。搬送制御部116は、タイミング検出部114の出力およびセンサ群50に含まれる用紙センサの出力に基づいて用紙5の位置を把握し、適時に各ローラを回転させたり停止させたりする。搬送制御部116は、モータドライバ201,202に上述のモータ制御信号SM1,SM2を与え、給紙クラッチC1およびタイミングクラッチC2に上述のクラッチ制御信号SC1,SC2を与える
複数枚の用紙5を使用する印刷ジョブにおいて、搬送制御部116は、タイミング検出部114により検出された連結完了タイミングまたは開放完了タイミングに基づいて、給紙クラッチC1またはタイミングクラッチC2に対して連結動作または開放動作を行うよう指令を与える指令タイミングを決定する。その際、給紙ローラ24およびタイミングローラ25により連続して搬送される2枚の用紙5の互いの間隔(紙間)が所定の範囲となるようにする。
詳しくは、M−C構成の場合において、搬送制御部116は、給紙ローラ24およびタイミングローラ25によってn枚目(nは整数)の用紙5を搬送して一時停止した後、n枚目の用紙5のタイミングローラ25による再搬送および(n+1)枚目の用紙5の給紙ローラ24による送り出しの開始に際し、モータM1の回転駆動の開始タイミングからタイミングクラッチC2における開放完了タイミングまでの時間(T1)に基づいて求められるn枚目の用紙の停止位置に応じて、n枚目の用紙5に(n+1)枚目の用紙5が重なることがないよう、モータM1に対する回転駆動の指令タイミングを決定する。
C−M構成の場合において、搬送制御部116は、給紙ローラ24およびタイミングローラ25によってn枚目の用紙5を搬送して一時停止した後、n枚目の用紙5のタイミングローラ25による再搬送および(n+1)枚目の用紙5の給紙ローラ24による送り出しの開始に際し、給紙クラッチC1における連結完了タイミングからモータM2の回転駆動の停止タイミングまでの時間(T2)に基づいて求められるn枚目の用紙5の停止位置に応じて、n枚目の用紙5に(n+1)枚目の用紙5が重なることがないよう、給紙クラッチC1に対する連結動作のための指令タイミングを決定する。
C−C構成の場合において、搬送制御部116は、給紙ローラ24およびタイミングローラ25によってn枚目の用紙5を搬送して一時停止させた後、n枚目の用紙5のタイミングローラ25による再搬送および(n+1)枚目の用紙5の給紙ローラ24による送り出しの開始に際し、給紙クラッチC1における連結完了タイミングからタイミングクラッチC2における開放完了タイミングまでの時間(T3)に基づいて求められるn枚目の用紙5の停止位置に応じて、n枚目の用紙5に(n+1)枚目の用紙5が重なることがないよう、給紙クラッチC1に対する連結動作のための指令タイミングを決定する。
図5にはモータM1,M2に対する駆動電圧の印加の概要が、図6にはモータのコイル電圧Eaおよびコイル電流Iaの波形の例が、それぞれ示されている。
ステッピングモータであるモータM1,M2は、本実施形態では、いわゆる2相励磁によって駆動される。すなわち、モータ制御信号SM1,SM2がオンである期間にわたって、各モータM1,M2のA相コイル42とB相コイル43とに、図5のように互いに位相を90°ずらせて交流の電圧(Ea、Eb)が印加される。ロータ41は永久磁石を有するので、各相に印加される電圧の極性が切り替わってコイル電流の方向が反転すると、それに伴う磁界の変化に応じてロータ41が回転する。モータM1,M2は、印加される交流の1周期(図の例では8クロック)ごとに1ステップ回転する。回転速度はクロックの周波数によって決まる。
モータM1,M2が回転しているとき、各コイルに対する磁界が変化するので、A相コイル42およびB相コイル43に誘起電圧(逆起電力)が発生する。つまり、回転中のコイル電圧Ea,Ebは、モータドライバ201,202によって印加される電圧に誘起電圧が重畳した電圧となる。
図6のように、コイル電圧Eaの波形は、コイル電流Iaが0になる期間Tkにおいて、矩形状から一時的に歪んだ波形となる。この波形の歪みは、誘起電圧Vkに因るものである。例えば、期間Tkにおいてモータドライバ201の出力がハイインピーダンスになることで、モータドライバ201の出力による電圧がほぼ0となり、誘起電圧Vkのみがコイル電圧Eaとして現れる。したがって、期間Tkにおけるコイル電圧Eaの値(電圧レベル)を検出することにより、誘起電圧Vkの大きさを判別することができる。
誘起電圧Vkは、次の式で表わされる。
Vk=Ke・ω・cosθ
Ke:誘起電圧定数[ V・s/rad]
ω :角周波数[ rad/s]
θ :負荷角(電気角に対する機械角の遅れ)[ °]
モータM1,M2に加わる負荷が、大きい重負荷の場合、負荷が小さい軽負荷の場合と比べて、電気角に対する機械角の遅れが大きい。すなわち、重負荷の場合の負荷角θ2は軽負荷の場合の負荷角θ1よりも大きい。0°<θ1,θ2<90°の範囲において、cosθ1>cosθ2であるので、誘起電圧Vkの絶対値は、図6に破線で示すように、重負荷の場合の方が軽負荷の場合よりも小さい。
図7には誘起電圧Vkに基づいてクラッチの状態遷移のタイミングを検出する方法が示されている。
図7(A)のように、誘起電圧Vkが第1のしきい値である連結しきい値Vaよりも大きい状態から小さい状態になったタイミングを、上述の連結完了タイミングTAとする。連結しきい値Vaは、給紙クラッチC1について検出する場合には、あらかじめ各種の用紙5を給紙する実験を行い、給紙クラッチC1が連結されている状態でモータM1に加わる負荷が最低負荷(最小負荷)であるときの誘起電圧Vkの大きさを調べた結果に基づいて決定される。タイミングクラッチC2について検出する場合には、同様の実験を行い、タイミングクラッチC2が連結されている状態でモータM2に加わる負荷が最低負荷であるときの誘起電圧Vkの大きさを調べた結果に基づいて決定される。
図7(B)のように、誘起電圧Vkが第2のしきい値である開放しきい値Vbよりも小さい状態から大きい状態になったタイミングを、上述の開放完了タイミングTBとする。開放しきい値Vbは、給紙クラッチC1について検出する場合には、あらかじめ上述の実験を行い、給紙クラッチC1が連結されている状態でモータM1に加わる負荷が最大負荷であるときの誘起電圧Vkの大きさを調べた結果に基づいて決定される。タイミングクラッチC2について検出する場合には、同様の実験を行い、タイミングクラッチC2が連結されている状態でモータM2に加わる負荷が最大負荷であるときの誘起電圧Vkの大きさを調べた結果に基づいて決定される。
図8には複数枚の用紙5を搬送する場合の給紙制御の概略の流れが示されている。この流れは、M−C構成、C−M構成、およびC−C構成に共通である。図8においては用紙5の枚数Nが3以上であるものとする。ただし、Nは2以上でもよく、Nが2の場合には、一時停止させた2枚目の用紙5の再搬送を開始したときに給紙制御が終わる。
CPU101は、画像形成装置1に印刷ジョブが与えられると、1枚目の用紙5の給紙を開始し(#11)、搬送中の1枚目の用紙5を転写の位置合わせのために転写位置の上流で一時停止させる(#12)。
給紙から一時停止までの段階で使用した給紙クラッチC1またはタイミングクラッチC2について、連結完了タイミングTAまたは開放完了タイミングTBを検出し、その検出結果に基づいて後述のように用紙5の移動した距離の誤差を検出する(#13)。
続いて、検出した誤差に応じて、1枚目と2枚目との紙間が最適となるように、2枚目の給紙および1枚目の搬送再開(再搬送)のそれぞれのタイミングを設定する(#14)。
そして、設定したタイミングで2枚目の用紙5を給紙するとともに、設定したタイミングで1枚目の用紙5を再搬送する(#15)。なお、再搬送された1枚目の用紙5は、転写位置、定着器18、排紙トレイ35へと搬送される。
給紙した2枚目の用紙5を一時停止させ(#16)、図示を省略したステップにおいて、1枚目と同様に移動した距離の誤差を検出して3枚目との紙間を最適にするタイミングを設定する。そして、設定したタイミングで3枚目の用紙5を給紙するとともに、設定したタイミングで2枚目の用紙5を再搬送する。
以降の3枚目から(N−1)枚目まで2枚目以前と同様の手順で給紙し、搬送中の(N−1)枚目の用紙5を転写位置の上流で一時停止させる(#20)。移動した距離の誤差を検出し(#21)、最終のN枚目との紙間を最適にするタイミングを設定し(#22)、N枚目の給紙と(N−1)枚目の再搬送を行い(#23)、当該印刷ジョブのための給紙制御を終える。
以下、M−C構成の場合、C−M構成の場合、およびC−C構成の場合のそれぞれについて、画像形成装置1の動作およびその制御をさらに詳しく説明する。
〔M−C構成〕
図9にはM−C構成のローラ駆動機構の動作および制御が示されている。図9(A)は2枚の用紙5a,5bを順に搬送する場合の複数の段階の用紙5a,5bの位置を示し、図9(B)は制御のタイミングを示している。
なお、図9(A)において、用紙5aを含む奇数枚目の用紙5を太い線で、用紙5bを含む偶数枚目の用紙5を白抜きの細い帯で、それぞれ表わしている。また、停止状態のローラを白抜きの円で、回転中のローラを斜線を付した円で、それぞれ表わしている。後述の図14(A)および図18(A)においても同様である。
M−C構成の場合、3つのセンサA,B,Cを用いて、搬送の進捗が検出される。センサA,B,Cは、それぞれが配置された位置での用紙5の有無を示す信号を出力する用紙センサである。センサAは搬送路20における給紙ローラ24とタイミングローラ25との間に、センサBはタイミングローラ25の下流側の近傍に、センサCはセンサBと転写位置との間に、それぞれ配置されている。
時点t0において、給紙が開始されようとしている。既に給紙準備が完了しており、1枚の用紙5の先端が給紙ローラ24に挟まれている。モータM1は停止しており、給紙ローラ24も停止している。
図9(B)に示す時点t1において、モータ制御信号SM1がオフ(OFF)からオン(ON)へ切り替わると、モータM1が回転して給紙ローラ24が回転し、直ちにn枚目の用紙5aの給紙が始まる。
時点t2において、用紙5aがセンサAの位置に到着してセンサAがオンになると、クラッチ制御信号SC2がオフからオンに切り替わる。この切替わりは、タイミングクラッチC2に対する連結の指令である。タイミングクラッチC2は、連結の指令を受けた後の時点t3で連結状態になる。時点t3は、上述のようにモータM2の誘起電圧Vkに基づいて、連結しきい値Vaを用いて検出される。時点t3は、連結完了タイミングTAの例である。
なお、モータM2は時点t2またはそれ以前から回転しており、時点t3でタイミングローラ25が回転する。用紙5aが到着する以前にタイミングローラ25を回転させておくことにより、用紙5aの搬送を給紙ローラ24からタイミングローラ25へ引き継ぐことができる。このような搬送の準備を適時に行うことができるように、センサAの位置が選定されている。用紙5aがタイミングローラ25に到着していないので、タイミングクラッチC2の連結遅れは、用紙5aの搬送に影響しない。
時点t4において、用紙5aがセンサBの位置に到着してセンサBがオンになると、モータ制御信号SM1がオンからオフへ切り替わる。モータM1が停止し、給紙ローラ24も停止する。しかし、タイミングローラ25による用紙5aの搬送は続く。用紙5aの搬送と並行して、(n+1)枚目の用紙5bの給紙準備が行われる。
時点t5において、用紙5aがセンサCの位置に到着してセンサCがオンになると、クラッチ制御信号SC2がオンからオフに切り替わる。この切替わりは、タイミングクラッチ24に対する開放の指令である。
タイミングクラッチC2は、開放の指令を受けた後の時点t6で開放状態になる。時点t6は、上述のようにモータM2の誘起電圧Vkに基づいて、開放しきい値Vbを用いて検出される。時点t6は、開放完了タイミングTBの例である。
タイミングクラッチC2には、時点t5から時点t6までの時間(開放動作時間)の開放遅れがあるので、時点t6において用紙5aが一時停止したとき、用紙5aの先端の位置P1は、センサCの位置よりも下流の位置である。
CPU101は、搬送速度Vと時点t1から時点t6までの時間である移動時間T1とから、用紙5aが給紙から一時停止までに実際に移動した距離である移動量Daを算出する。移動量Daは移動時間T1と搬送速度Vとの乗算により求まる(Da=T1・V)。この移動量Daは、タイミングクラッチC2の開放遅れに応じた値となる。開放遅れには、タイミングクラッチC2の個体差、動作環境、経年変化などによるばらつきがあるので、移動量Daにばらつきが生じる。
次に、CPU101は、算出した移動量Daと最適移動量Dとの差分Dh(Dh=Da−D)を算出する。最適移動量Dは、用紙5aの搬送方向の長さLと最適の紙間dとの和である。用紙5aの長さLは、印刷ジョブにおいて指定された用紙サイズによって決まる。紙間dは、用紙の紙種、カラー/モノクロ、片面印刷/両面印刷などの印刷条件に応じて最適化される数値であり、印刷ジョブにおける複数の項目の設定によって決まる。
そして、CPU101は、転写のために再搬送を開始するべき時点t9において、実際に用紙5aの再搬送が始まり、かつ再搬送される用紙5aとの間に最適の紙間dを設けて次の用紙5bが搬送されるように、時点t8および時点t7を設定する。
時点t8は、再搬送のためにタイミングクラッチC2に対して連結の指令を与えるタイミングである。時点t7は、(n+1)枚目の用紙5bの給紙を開始するタイミングである。これら時点t7、t8は指令タイミングの例である。
図9(A)の例では、時点t6において、用紙5aの後端の位置P2と給紙ローラ24との距離が最適な紙間dよりも長いので、用紙5aの再搬送の以前に、次の用紙5bの給紙が開始される。つまり、時点t7から時点t9までの間に、用紙5bが差分Dhの分だけ下流へ進むように、Dh/Vの時間だけ時点t9より早い時点が時点t7とされる。
なお、用紙5aの長さLによっては、図10に示すように時点t6において用紙5aの後端の位置P2と給紙ローラ24との距離が最適な紙間dよりも短くなり、移動量Daと最適移動量Dとの差分Dhが負の値になる。この場合には、用紙5aの再搬送より遅らせて用紙5bの給紙を開始するように時点t7が設定される。
図11にはM−C構成における給紙制御の流れが示されている。
CPU101の搬送制御部116は、搬送速度Vの設定値を取得しておく(#101)。搬送制御部116は、モータ制御信号SM1をオンにして先行用紙であるn枚目の用紙5aの給紙を開始し(#102)、移動時間T1の計時を開始する(#103)。計時をする代わりにシステム時計から現在時刻を取り込んで時点t1として記憶してもよい。
センサAがオンになるのを待ち(#104)、センサAがオンになると、搬送制御部116は、先行用紙の搬送準備としてタイミングローラ25を回転させておくために、クラッチ制御信号SC2をオンにする(#105)。
センサBがオンになるのを待ち(#106)、センサBがオンになると、搬送制御部116は、後続用紙である(n+1)枚目の用紙5bの給紙準備を行う(#107)。
センサCがオンになるのを待ち(#108)、センサCがオンになると、搬送制御部116は、クラッチ制御信号SC2をオフに切り替える(#109)。
次にタイミング設定が行われ(#110)、それにより設定されたタイミングにおいて、搬送制御部116は、先行用紙を再搬送するためにクラッチ制御信号SC2をオンにする(#111)。
図12は図11中のM−C構成のタイミング設定処理のフローチャートである。
タイミング検出部114は、誘起電圧検出部112によって周期的に検出されるモータM2の誘起電圧Vkが開放しきい値Vbよりも大きくなるのを待つ(#151)。誘起電圧Vkが開放しきい値Vbよりも大きくなった開放完了タイミングTBを検出すると、その旨を搬送制御部116に通知する。
搬送制御部116は、開放完了タイミングTBを検出した旨の通知を受けると、移動時間T1の計時を終了する(#152)。計時の代わりに時点t1を記憶している場合は、システム時計から現在時刻を時点t6として取り込み、時点t1から時点t6までの時間を移動時間T1として算出する。
続いて、搬送制御部116は、先行用紙の移動量Daを算出し(#153)、あらかじめ記憶されている制御用のデータから印刷ジョブの設定内容に応じた最適移動量Dを取得する(#154)。
そして、搬送制御部116は、算出した移動量Daと最適移動量Dとを比較し(#155)、両者の大小関係に応じて次のように後続用紙の給紙タイミングを設定する。
移動量Daと最適移動量Dとが等しい場合は、後続用紙の給紙タイミングを、あらかじめ定められた基準タイミングのままとする(#156)。また、先行用紙の再搬送については、図9(B)のとおり先に時点t2でタイミングクラッチC2を連結させたときの連結遅れ(時点t2と時点t3との差)の分だけ時点t9より早い時点t8を、タイミングクラッチC2に対して連結動作を行うよう指令を与える指令タイミングとして決定する。
移動量Daが最適移動量Dよりも大きい場合は、後続用紙の給紙タイミングとして、基準タイミングをTh秒進めたタイミングに設定する(#157)。Th秒とは、移動量Daと最適移動量Dとの差分Dhを搬送速度Vで除した時間である。この場合も、先行用紙の再搬送については、ステップ#156と同様に指令タイミングを決定する。
移動量Daが最適移動量Dよりも小さい場合は、後続用紙の給紙タイミングとして、基準タイミングをTh秒遅らせたタイミングに設定する(#158)。この場合も、先行用紙の再搬送については、ステップ#156と同様に指令タイミングを決定する。
このように移動量Daに応じて、後続用紙の給紙タイミングを早めたり遅らせたりすることにより、タイミングクラッチC2の開放遅れのばらつきにかかわらず、先行用紙と後続用紙との紙間を最適な紙間dとすることができ、紙間を必要最小限にして印刷の生産性を高めることができる。印刷ジョブにおける印刷枚数が多いほど、紙間を必要最小限にすることの効果が大きい。
図13にはM−C構成における給紙制御の効果が示されている。図13では、先行用紙および後続用紙について、先端および後端のそれぞれの位置の推移が描かれている。横軸は時間であり、縦軸は給紙ローラ24の位置からの距離である。後述の図17および図21においても同様である。
時点t1において、先行用紙の先端は給紙ローラ24の位置に在る。時点t1からタイミングクラッチC2に開放が指令される時点t5まで、先行用紙は一定の速度で移動する。
図中に一点鎖線で示すように、タイミングクラッチC2の開放遅れおよび連結遅れともに0である理想的な場合、時点t5で先行用紙の一時停止が始まり、その後に連結が指令された時点t8から先行用紙は再び移動し始める。
ある程度の開放遅れ(例えば7ms)がタイミングクラッチC2にある場合、図中に実線で示すように、時点t5から遅れた時点t6で先行用紙の実際の一時停止が始まり、その後に時点t8よりも連結遅れ分だけ遅い時点t9から先行用紙が再び移動し始める。
開放遅れがばらつき範囲内の最も大きい遅れ(例えば30ms)である場合、図中に二点鎖線で示すように、時点t6より遅れた時点t6’で先行用紙の実際の一時停止が始まり、その後に時点t9より遅れた時点t9’から先行用紙は再び移動し始める。
先行用紙の後端は、常に先行用紙の先端に対して用紙の長さ分だけ上流に在る。
さて、後続用紙の給紙タイミングに注目すると、本実施形態では、図中に太い実線で示すように、先行用紙が実際に再び動き出す時点t9において、先行用紙の後端と後続用紙の先端との距離が最適な紙間dとなるように、時点t7で後続用紙の給紙が開始される。
これに対して、従来においては、例えば時点t8で後続用紙の給紙が開始されていた。この場合、開放遅れおよび連結遅れのばらつきによって紙間が異なってしまう。図では開放遅れおよび連結遅れが最小である場合の紙間d1と最大である場合の紙間d2とが示されている。これら紙間d1,d2はいずれも本実施形態の最適な紙間dよりも大きい。つまり、従来では、必要以上に大きい紙間d1,d2を設けて後続用紙が搬送されていた。
本実施形態によると、2枚目以降の各用紙について時間TSずつ排紙の完了を早めることができる。
〔C−M構成〕
図14にはC−M構成のローラ駆動機構の動作および制御が示されている。図14(A)は2枚の用紙5a,5bを順に搬送する場合の複数の段階の用紙5a,5bの位置を示し、図14(B)は制御のタイミングを示している。
M−C構成の場合、3つのセンサA,B,CのうちのセンサAのみが用いられ、またはいずれも用いられない。
時点t10において、既に給紙準備が完了しており、先行用紙であるn枚目の用紙5aの先端が給紙ローラ24に挟まれている。モータM1は停止しており、給紙ローラ24も停止している。
図14(B)に示す時点t11において、クラッチ制御信号SC1がオフ(OFF)からオン(ON)へ切り替わる。この切替わりは、給紙クラッチC1に対する連結の指令である。給紙クラッチC1は、連結の指令を受けた後の時点t12で連結状態になる。これにより、給紙ローラ24が回転して用紙5aの給紙が始まる。時点t12は、上述のようにモータM1の誘起電圧Vkに基づいて検出される。時点t12は、連結完了タイミングTAの例である。
時点t13において、用紙5aがセンサAの位置に到着してセンサAがオンになると、モータ制御信号SM2がオフからオンに切り替わる。この切替わりは、モータM2に対する回転の指令である。センサAを用いない場合には、時点t11から所定の時間aが経過した時点が時点t13とされる。モータM2は、回転の指令を受けると、一定速度の回転を始める。
時点t11から所定の時間bが経過した時点t14で、クラッチ制御信号SC1がオンからオフへ切り替わる。時点t14より遅れた時点t15で、給紙クラッチC1が開放状態になり、給紙ローラ24が停止する。しかし、タイミングローラ25による用紙5aの搬送は続く。用紙5aの搬送と並行して、後続用紙である(n+1)枚目の用紙5bの給紙準備が行われる。
時点t15は、上述のようにモータM1の誘起電圧Vkに基づいて、開放しきい値Vbを用いて検出される。時点t15は、開放完了タイミングTBの例である。
時点t13から所定の時間cが経過した時点t16において、モータ制御信号SM2がオンからオフへ切り替わる。モータM2が停止し、タイミングローラ25も停止する。これにより用紙5aの一時停止が始まる。
給紙クラッチC1には、時点t11から時点t12までの時間(連結動作時間)の連結遅れがあるので、時点t16において用紙5aが一時停止したとき、用紙5aの先端の位置P1は、連結遅れのばらつきに応じて異なった位置になる。
CPU101は、搬送速度Vと時点t12から時点t16までの時間である移動時間T2とから、用紙5aが給紙から一時停止までに実際に移動した距離である移動量Dbを算出する。移動量Dbは移動時間T2と搬送速度Vとの乗算により求まる(Db=T2・V)。この移動量Dbは、給紙クラッチC1の連結遅れに応じた値となる。連結遅れには、給紙クラッチC1の個体差、動作環境、経年変化などによるばらつきがあるので、移動量Dbにばらつきが生じる。
次に、CPU101は、算出した移動量Dbと最適移動量Dとの差分Dh(Dh=Db−D)を算出する。最適移動量Dは、上述したように用紙5aの搬送方向の長さLと最適の紙間dとの和である。
そして、CPU101は、転写のために再搬送を開始するべき時点t17において、実際に用紙5aの再搬送が始まり、かつ再搬送される用紙5aとの間に最適の紙間dを設けて次の用紙5bが給紙されるように、時点t18および時点t19を設定する。
時点t18は、用紙5bの給紙のために給紙クラッチC1に対して連結の指令を与えるタイミングである。時点t19は、給紙クラッチC1が連結状態になって実際に給紙ローラ24によって(n+1)枚目の用紙5bの給紙が開始するタイミングである。
図14(A)の例では、時点t16において、用紙5aの後端の位置P2と給紙ローラ24との距離が最適な紙間dよりも短いので、用紙5aの再搬送の以後に、次の用紙5bの実際の給紙が開始される。つまり、時点t17から用紙5aが差分Dhの分だけ下流へ進んだときに用紙5bの実際の給紙が始まるように、Dh/Vの時間だけ時点t17よりも遅い時点が時点t19とされる。時点t18は、時点t19よりも連結遅れの分だけ早い時点とされる。
図15にはC−M構成における給紙制御の流れが示されている。
CPU101の搬送制御部116は、搬送速度Vの設定値を取得しておく(#201)。搬送制御部116は、先行用紙であるn枚目の用紙5aの給紙するためにクラッチ制御信号SC1をオンにする(#202)。
タイミング検出部114は、誘起電圧検出部112によって周期的に検出されるモータM1の誘起電圧Vkが連結しきい値Vaよりも小さくなるのを待つ(#203)。誘起電圧Vkが連結しきい値Vaよりも小さくなった連結完了タイミングTAを検出すると、その旨を搬送制御部116に通知する。
連結完了タイミングTAを検出した旨の通知を受けると、搬送制御部116は、移動時間T2の計時を開始する(#204)。上述の例と同様に現在時刻を記憶してもよい。
センサAがオンになるのを待ち(#205)、センサAがオンになると、搬送制御部116は、先行用紙の搬送準備としてタイミングローラ25を回転させておくために、モータ制御信号SM2をオンにする(#206)。センサAを用いない場合は、時間aが経過するのを待ち、時間aが経過すると、モータ制御信号SM2をオンにする。
続いて、搬送制御部116は、時間cが経過するのを待ち(#207)、時間cが経過すると、モータ制御信号SM2をオフにして用紙5aを一時停止させ(#208)、後続用紙である(n+1)枚目の用紙5bの給紙準備を行う(#209)。
次にタイミング設定処理が行われ(#210)、それにより設定されたタイミングで、搬送制御部116は、先行用紙を再搬送するためにモータ制御信号SM2をオンにする(#211)。
図16は図15中のC−M構成のタイミング設定処理のフローチャートである。
搬送制御部116は、移動時間T2を取得し(#251)。先行用紙の移動量Dbを算出し(#252)、最適移動量Dを取得する(#253)。
そして、搬送制御部116は、算出した移動量Dbと最適移動量Dとを比較し(#254)、両者の大小関係に応じて次のように後続用紙の給紙タイミングを設定する。
移動量Dbと最適移動量Dとが等しい場合は、後続用紙の給紙タイミングを基準タイミングのままとする(#255)。
移動量Dbが最適移動量Dよりも大きい場合は、後続用紙の給紙タイミングとして、基準タイミングをTh秒進めたタイミングに設定する(#256)。Th秒とは、移動量Dbと最適移動量Dとの差分Dhを搬送速度Vで除した時間である。
移動量Dbが最適移動量Dよりも小さい場合は、後続用紙の給紙タイミングとして、基準タイミングをTh秒遅らせたタイミングに設定する(#158)。
このように移動量Dbに応じて、後続用紙の給紙タイミングを早めたり遅らせたりすることにより、給紙ラッチC2の連結遅れのばらつきにかかわらず、先行用紙と後続用紙との紙間を最適な紙間dとすることができ、紙間を必要最小限にして印刷の生産性を高めることができる。印刷ジョブにおける印刷枚数が多いほど、紙間を必要最小限にすることの効果が大きい。
図17にはC−M構成における給紙制御の効果が示されている。
時点t11において、先行用紙の先端は給紙ローラ24の位置に在る。図中に一点鎖線で示すように、給紙クラッチC1の連結遅れが最小である場合、時点t11からモータM2に停止が指令される時点t16まで、先行用紙は一定の速度で移動する。そして、時点t16で一時停止した後、モータM2に回転が指令される時点t17から先行用紙は再び移動し始める。
ある程度の連結遅れが給紙クラッチC1にある場合、図中に実線で示すように、時点t11よりも遅れた時点t12から先行用紙の移動が始まる。連結遅れが最大である場合、図中に二点鎖線で示すように、時点t12より遅れた時点t12’で先行用紙の移動が始まる。一時停止および再搬送の始まる時点t16,t17は、連結遅れの大小にかかわらず同じである。
後続用紙の給紙タイミングに注目すると、本実施形態では、図中に太い実線で示すように、先行用紙が時点t17で再び動き出した後に、先行用紙の後端と後続用紙の先端との距離が最適な紙間dとなるように、時点t19で後続用紙の給紙が実際に開始される。
これに対して、従来では、例えば時点t17で後続用紙の給紙が開始されていた。この場合、連結遅れのばらつきによって紙間が異なってしまう。紙間が短すぎて用紙どうしが重なるおそれもあった。図では連結遅れが最小である場合の紙間d1が示されている。これら紙間d1は本実施形態の最適な紙間dよりも大きい。つまり、従来では、必要以上に大きい紙間d1を設けて後続用紙の搬送されることがあった。
本実施形態によると、2枚目以降の各用紙について時間TSずつ排紙の完了を早めることができる。
〔C−C構成〕
図18にはC−C構成のローラ駆動機構の動作および制御が示されている
C−C構成の場合、3つのセンサA,B,CのうちのセンサAのみが用いられ、またはいずれも用いられない。
時点t20において、既に給紙準備が完了しており、先行用紙であるn枚目の用紙5aの先端が給紙ローラ24に挟まれている。モータM1は停止しており、給紙ローラ24も停止している。
図18に示す時点t21において、クラッチ制御信号SC1がオフからオンへ切り替わる。この切替わりは、給紙クラッチC1に対する連結の指令である。給紙クラッチC1は、連結の指令を受けた後の時点t22で連結状態になる。これにより、給紙ローラ24が回転して用紙5aの給紙が始まる。時点t22は、上述のようにモータM1の誘起電圧Vkに基づいて、連結しきい値Vaを用いて検出される。時点t22は、連結完了タイミングTAの例である。
時点t23において、用紙5aがセンサAの位置に到着してセンサAがオンになると、クラッチ制御信号SC2がオフからオンに切り替わる。この切替わりは、タイミングクラッチC2に対する連結の指令である。センサAを用いない場合には、時点t21から所定の時間aが経過した時点が時点t23とされる。
タイミングクラッチC2は、連結の指令に対して遅れて時点t24において連結状態になる。時点t24は、モータM2の誘起電圧Vkに基づいて、連結しきい値Vaを用いて検出される。時点t24は、連結完了タイミングTAの例である。
時点t21から所定の時間bが経過した時点t25で、クラッチ制御信号SC1がオンからオフへ切り替わる。時点t25から遅れた時点t26で、給紙クラッチC1が開放状態になり、給紙ローラ24が停止する。しかし、タイミングローラ25による用紙5aの搬送は続く。用紙5aの搬送と並行して、後続用紙である(n+1)枚目の用紙5bの給紙準備が行われる。
時点t26は、モータM1の誘起電圧Vkに基づいて、開放しきい値Vbを用いて検出される。時点t26は、開放完了タイミングTBの例である。
時点t23から所定の時間cが経過した時点t27において、クラッチ制御信号SC2がオンからオフへ切り替わる。時点t27よりも遅い時点t28で、タイミングクラッチC2が開放状態になり、タイミングローラ25が停止する。これにより用紙5aの一時停止が始まる。
時点t28は、モータM2の誘起電圧Vkに基づいて、開放しきい値Vbを用いて検出される。時点t28は、開放完了タイミングTBの例である。
時点t28において用紙5aが一時停止したとき、用紙5aの先端の位置P1は、給紙クラッチC1の連結遅れのばらつき、およびタイミングクラッチC2の開放遅れのばらつきに応じて異なった位置になる。
CPU101は、搬送速度Vと時点t22から時点t28までの時間である移動時間T3とから、用紙5aが給紙から一時停止までに実際に移動した距離である移動量Dcを算出する。移動量Dcは移動時間T3と搬送速度Vとの乗算により求まる(Dc=T3・V)。
次に、CPU101は、算出した移動量Dcと最適移動量Dとの差分Dh(Dh=Dc−D)を算出する。
そして、CPU101は、転写のために再搬送を開始するべき時点t32において、実際に用紙5aの再搬送が始まり、かつ再搬送される用紙5aとの間に最適の紙間dを設けて次の用紙5bが給紙されるように、時点t29、時点t30および時点t31を設定する。
時点t29は、用紙5bの給紙のために給紙クラッチC1に対して連結の指令を与えるタイミングである。時点t30は、給紙クラッチC1が連結状態になって実際に給紙ローラ24によって(n+1)枚目の用紙5bの給紙が開始するタイミングである。時点t31は、用紙5aの再搬送のためにタイミングクラッチC2に対して連結の指令を与えるタイミングである。
図18(A)の例では、時点t28において、用紙5aの後端の位置P2と給紙ローラ24との距離が最適な紙間dよりも長いので、用紙5aの再搬送の開始以前に、次の用紙5bの実際の給紙が開始される。つまり、時点t28から時点t32までの間に、用紙5bが差分Dhの分だけ下流へ進むように、Dh/Vの時間だけ時点t32より早い時点が時点t30とされる。
図19にはC−C構成における給紙制御の流れが示されている。
CPU101の搬送制御部116は、搬送速度Vの設定値を取得しておく(#301)。搬送制御部116は、先行用紙であるn枚目の用紙5aの給紙するためにクラッチ制御信号SC1をオンにする(#302)。
タイミング検出部114は、誘起電圧検出部112によって周期的に検出されるモータM1の誘起電圧Vkが連結しきい値Vaよりも小さくなるのを待つ(#303)。誘起電圧Vkが連結しきい値Vaよりも小さくなった連結完了タイミングTAを検出すると、その旨を搬送制御部116に通知する。
連結完了タイミングTAを検出した旨の通知を受けると、搬送制御部116は、移動時間T3の計時を開始する(#304)。上述の例と同様に現在時刻を記憶してもよい。
センサAがオンになるのを待ち(#305)、センサAがオンになると、搬送制御部116は、先行用紙の搬送準備としてタイミングローラ25を回転させておくために、クラッチ制御信号SC2をオンにする(#306)。センサAを用いない場合は、時間aが経過するのを待ち、時間aが経過すると、クラッチ制御信号SC2をオンにする。
続いて、搬送制御部116は、時間cが経過するのを待ち(#307)、時間cが経過すると、クラッチ制御信号SC2をオフにして用紙5aを一時停止させる(#308)。
次にタイミング設定処理が行われ(#309)、それにより設定されたタイミングで、搬送制御部116は、先行用紙を再搬送するためにクラッチ制御信号SC2をオンにする(#310)。
図20は図19中のC−C構成のタイミング設定処理のフローチャートである。
タイミング検出部114は、誘起電圧検出部112によって周期的に検出されるモータM2の誘起電圧Vkが開放しきい値Vbよりも大きくなるのを待つ(#351)。誘起電圧Vkが開放しきい値Vbよりも大きくなった開放完了タイミングTBを検出すると、その旨を搬送制御部116に通知する。
搬送制御部116は、開放完了タイミングTBを検出した旨の通知を受けると、移動時間T3の計時を終了する(#352)。計時の代わりに時点t22を記憶している場合は、システム時計から現在時刻を時点t28として取り込み、時点t22から時点t28までの時間を移動時間T3として算出する。そして、後続用紙である(n+1)枚目の用紙5bの給紙準備を行う(#353)。
次に、搬送制御部116は、先行用紙の移動量Dcを算出し(#354)、最適移動量Dを取得する(#355)。
搬送制御部116は、算出した移動量Dcと最適移動量Dとを比較し(#356)、両者の大小関係に応じて次のように後続用紙の給紙タイミングを設定する。
移動量Dcと最適移動量Dとが等しい場合は、後続用紙の給紙タイミングを、あらかじめ定められた基準タイミングのままとする(#357)。また、先行用紙の再搬送については、先に時点t23でタイミングクラッチC2を連結させたときの連結遅れ(時点t23と時点t24との差)の分だけ時点t32より早い時点t31を、タイミングクラッチC2に対して連結動作を行うよう指令を与える指令タイミングとして決定する。
移動量Dcが最適移動量Dよりも大きい場合は、後続用紙の給紙タイミングとして、基準タイミングをTh秒進めたタイミングに設定する(#358)。Th秒とは、移動量Dcと最適移動量Dとの差分Dhを搬送速度Vで除した時間である。この場合も、先行用紙の再搬送については、ステップ#357と同様に指令タイミングを決定する。
移動量Dcが最適移動量Dよりも小さい場合は、後続用紙の給紙タイミングとして、基準タイミングをTh秒遅らせたタイミングに設定する(#359)。この場合も、先行用紙の再搬送については、ステップ#357と同様に指令タイミングを決定する。
このように移動量Dcに応じて、後続用紙の給紙タイミングを早めたり遅らせたりすることにより、給紙クラッチC1の連結遅れおよびタイミングクラッチC2の開放遅れのそれぞれのばらつきにかかわらず、先行用紙と後続用紙との紙間を最適な紙間dとすることができ、紙間を必要最小限にして印刷の生産性を高めることができる。印刷ジョブにおける印刷枚数が多いほど、紙間を必要最小限にすることの効果が大きい。
図21にはC−C構成における給紙制御の効果が示されている。
時点t21において、先行用紙の先端は給紙ローラ24の位置に在る。図中に一点鎖線で示すように、給紙クラッチC1の連結遅れが最小である場合、時点t21からタイミングクラッチC2に開放が指令される時点t27まで、先行用紙は一定の速度で移動する。そして、時点t27で一時停止した後、タイミングクラッチC2に連結が指令される時点t31から先行用紙は再び移動し始める。
ある程度の連結遅れが給紙クラッチC1にある場合、図中に実線で示すように、時点t21よりも遅れた時点t22から先行用紙の移動が始まる。開放遅れが最大である場合、図中に二点鎖線で示すように、時点t22よりも遅い時点t22’で先行用紙の移動が始まる。その後の一時停止ではタイミングクラッチC2の開放遅れが、再搬送ではタイミングクラッチC2の連結遅れが、それぞれ指令に応答して動作を完了するタイミングを遅らせる。
後続用紙の給紙タイミングに注目すると、本実施形態では、図中に太い実線で示すように、先行用紙が時点t32で再び動き出したときに、先行用紙の後端と後続用紙の先端との距離が最適な紙間dとなるように、時点t32よりも早い時点で後続用紙の給紙が実際に開始される。
これに対して、従来では、例えば時点t31で後続用紙の給紙が開始されていた。この場合、連結遅れのばらつきによって紙間が異なってしまう。図では連結遅れが異なる3つの場合の紙間d0,d1,d2が示されている。これらのうち、紙間d1,d2は本実施形態の最適な紙間dよりも大きい。つまり、従来では、必要以上に大きい紙間d1,d2を設けて後続用紙の搬送されることがあった。
本実施形態によると、2枚目以降の各用紙について時間TSずつ排紙の完了を早めることができる。
以上の実施形態においては、連結遅れおよび開放遅れの一方または両方による先行用紙5aの一時停止位置のずれに応じて、後続用紙5bの給紙を開始するタイミングを早めまたは遅らすようにした。ただし、3枚以上の用紙5を使用する印刷ジョブにおいては、2枚目以降の用紙5(1枚目からみた後続用紙5b)の給紙のタイミングを調整する代わりに、2枚目以降の用紙5(3枚目以降からみた先行用紙5a)の一時停止のタイミングを調整してもよい。その場合、搬送制御部116は、タイミングローラ25により搬送される用紙5の停止位置が所定の範囲となるように、先行の用紙の搬送開始時における連結完了タイミングに応じて、当該用紙の搬送停止時におけるタイミングクラッチC2の開放動作の指令タイミングを決定する。
連結しきい値Vaおよび開放しきい値Vbのそれぞれと誘起電圧Vkとの大小関係とクラッチの開放/連結との関係は、例示に限らず、開放/連結を検出する期間におけるコイル電圧Ea,Ebの極性に応じて選定することができる。例えば、モータドライバ201,202の出力インピーダンスを制御し、任意の時点でコイル電流Iaを0にして連結完了タイミングTAまたは開放完了タイミングTBを検出することができる。
そのほか、画像形成装置1の全体的または部分的な構成、連結しきい値Va、開放しきい値Vb、モータM1,M2の相の数、クラッチの種類、センサの配置、制御のフローなどは本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
上述の実施形態では画像形成装置1をプリンタとして説明したが、画像形成装置1は装置内で用紙5を搬送するものであればよく、複写機、ファクシミリ機、または複合機であってもよい。画像形成の方式は電子写真式に限らず、インクジェット方式またはそれ以外の方式でもよい。