JP6241843B2 - シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法 - Google Patents

シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法に関し、特に、耐水性、調湿機能、強度、及び難燃性を向上させることができるシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法に関する。
従来より、軽量性、優れた熱的特性、及び吸音特性を有するハニカム構造体が、幅広い分野で効果的に利用されていた。
例えば、紙からなる原料を用いたハニカムコア材(ペーパーハニカムコア)を基材としたハニカム構造体の場合、耐水性の向上や強度面での補強を図るために、例えば、ペーパーハニカムコアに熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、硬化させること(例えば、特許文献1参照)、などが提案されている。
しかしながら、この場合、使用する樹脂量の多さ、処理工程の煩雑さ、取扱いの困難さ、コスト高、などの問題がある。
また、ハニカム構造体を、多孔質シリカを含有するコーディエライト化原料を使用して作製する技術として、Si源とAl源とMg源とを含有するコーディエライト化原料と溶媒とを混合することにより、粘土質のセラミック材料を作製し、前記セラミック材料を押出成形することにより、セル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けたハニカム成形体を作製し、前記ハニカム成形体を乾燥し、前記ハニカム成形体を焼成する技術(例えば、特許文献2参照)、などが提案されている。
しかしながら、斯かる技術には、使用する無機物量の多さ、高温焼成、などの問題がある。
また、(i)水酸化アルミニウム等の無機材を主成分としパルプ等の有機材を質量比で30%以下とした混抄紙にてハニカムコアを成形し、このハニカムコアを、ケイ酸ナトリウムと水と所定の付着混入剤とが混合された混合液中に浸漬し、これらを付着せしめて乾燥することにより、混抄紙を含むハニカムコアの燃えやすさが改善された、防火ハニカムコアを得る技術(例えば、特許文献3参照)や、(ii)水溶性アルカリ金属ケイ酸塩にレゾール樹脂を含有する組成物を基材に塗布するか、或いは無機質充填剤と混合して100℃以下の温度で乾燥した後、加熱処理する技術(例えば、特許文献4参照)や、(iii)ガラス繊維紙又はセラミック繊維紙等の無機質繊維紙に、水ガラス粉末、非水系有機バインダー、非水系溶剤を主成分として混合して得たスラリーを塗工させる技術(例えば、特許文献5参照)、などが提案されている。
しかしながら、前記特許文献3に記載された技術には、ケイ酸ナトリウムを含浸させたハニカムコアが乾燥時に脆くなり、アルカリに起因してセルロース繊維の劣化が生じ、耐久性が低下するという問題があり、前記特許文献4に記載された技術には、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩中のナトリウムを除去していないために、水中に浸漬するとナトリウムが溶解するという問題や、水ガラスの耐食性を得るためにガラス化(600℃以上)が必要となりコスト高となるという問題があり、前記特許文献5に記載された技術には、ハニカム構造体の製造工程が煩雑であり、細孔構造を形成するための酸処理によりシリカ分子の結合が弱くなり、焼成を高温で行うため焼結に伴って細孔が潰されて細孔が減少すると共にコスト高となるという問題や、ガラス化させて不燃性、強度補強等の目的で利用されている水ガラスに含まれるナトリウムの影響により、空気中の炭酸ガスと反応して炭酸塩が生成し、白華現象が生じるという問題があった。
さらに、耐食性、耐衝撃性等に優れ、かつシリカ純度が高いシリカ膜を形成すべく、ケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生する技術(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
しかしながら、斯かる技術は、ガラス、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、などの基材に対して適用されるものであり、ペーパーハニカムコアに対して適用されるものではない。
よって、耐水性、調湿機能、強度、及び難燃性を向上させることができるシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体は未だ開発されておらず、このようなシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の開発が切望されていた。
特開2007−8002号公報 特開2008−37722号公報 特開平5−147133号公報 特開平7−34029号公報 特開平10−305209号公報 特開2011−93784号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐水性、調湿機能、強度、及び難燃性を向上させることができるシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体は、基材としてのペーパーハニカムコアの表面に、シリカ膜を有していることを特徴とする。
この構成によれば、基材としてのペーパーハニカムコアの表面にシリカ膜を有することにより、耐水性、調湿機能、強度、及び難燃性を向上させることができる。
またここで、前記シリカ膜は、ケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生して形成されていることが好ましい。
この構成によれば、ケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生することにより、シリカ及び炭酸アルカリ金属塩を生じ、該炭酸アルカリ金属塩を蒸気(好ましくは、加熱された蒸気)により洗い流すとともに、該シリカを蒸気によって安定した形にすることで、アルカリ金属が除去されたシリカ膜を形成することができる。なお、一部のアルカリ金属が除去されなかった場合は、水又は弱酸性溶液で処理することによって除去することができる。これにより、前記シリカ膜は、空気中に長時間放置してもアルカリ金属の炭酸化による白華現象が生じない。
またここで、前記シリカ膜におけるシリカの含有量が70質量%以上であることが好ましい。
この構成によれば、前記シリカ膜は、シリカ純度が高くなり、耐水性、耐衝撃性等に優れたものとなる。
またここで、前記シリカ膜におけるシリカのBET(Brunauer Emmett Teller)比表面積が30m/g〜700m/gであることが好ましい。
この構成によれば、前記シリカ膜におけるシリカが高BET比表面積を有しているので、シリカゲルと同様に、触媒担体、吸着材、調湿材などの幅広い用途に好適に応用できる。
またここで、前記シリカ膜は、膜厚が1μm〜700μmであることが好ましい。
この構成によれば、前記シリカ膜は、基材表面に形成された場合に、基材表面から剥離し難くなる。
さらに、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法は、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体を製造する方法であって、基材としてのペーパーハニカムコアの表面にケイ酸アルカリ金属塩水溶液を塗布する塗布工程と、前記塗布されたケイ酸アルカリ金属塩水溶液におけるケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生する炭酸化蒸気養生工程と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、前記炭酸化蒸気養生工程において、ケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生することにより、シリカ及び炭酸アルカリ金属塩を生じ、該炭酸アルカリ金属塩を蒸気(好ましくは、加熱された蒸気)により洗い流すとともに、該シリカを蒸気によって安定した形にすることで、アルカリ金属が除去されたシリカ膜を形成することができる。これにより、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法は、空気中に長時間放置してもアルカリ金属の炭酸化による白華現象が生じないシリカ膜をペーパーハニカムコアの表面に形成することができる。
またここで、前記炭酸化蒸気養生工程において、常温〜160℃の温度範囲内で蒸気養生することが好ましい。
この構成によれば、効率的にシリカ膜をペーパーハニカムコアの表面に形成することができ、もって大量処理が容易に可能となり、コストを低減することができる。
なお、本明細書において、「常温」は、5℃〜35℃の範囲内の温度を意味する。
またここで、前記炭酸化蒸気養生工程において、0.5時間〜90時間の範囲内で蒸気養生することが好ましい。
この構成によれば、効率的にシリカ膜をペーパーハニカムコアの表面に形成することができ、もって大量処理が容易に可能となり、コストを低減することができる。
またここで、前記炭酸化蒸気養生工程において、蒸気の分圧を常圧〜6500hPaの範囲内として蒸気養生することが好ましい。
この構成によれば、効率的にシリカ膜をペーパーハニカムコアの表面に形成することができ、もって大量処理が容易に可能となり、コストを低減することができる。
なお、本明細書において、「常圧」は、約1013.25hPa(1atm)の圧力を意味する。
またここで、前記炭酸化蒸気養生工程の後に、炭酸アルカリ金属塩を水又は弱酸性溶液で除去する除去工程をさらに含むことが好ましい。
この構成によれば、シリカ膜の中のアルカリ金属をより確実に除去することができる。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、耐水性、調湿機能、強度、及び難燃性を向上させることができるシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、シリカ被膜が多孔質であることにより吸着能及び脱臭能が向上された、環境負荷の小さい産業用軽量材料としてのシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体及びその製造方法を提供することができる。
図1は、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体を製造するための基材として用いられるペーパーハニカムコアを示す斜視図である。 図2は、(a)が本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法に用いられる蒸気養生装置を示す斜視図であり、(b)が本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法に用いられる蒸気養生装置の内部を示す断面図である。 図3は、(a)が比較例1の未処理サンプル(ペーパーハニカムコア)の表面のSEM観察結果であり、(b)が実施例2のシリカ被覆処理サンプル(シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体)の表面のSEM観察結果である。 図4は、(a)が比較例1の未処理サンプル(ペーパーハニカムコア)の圧縮試験結果であり、(b)が実施例6のシリカ被覆処理サンプル(シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体)の圧縮試験結果である。
(シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体)
本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体は、少なくとも、基材としてのペーパーハニカムコアと、該ペーパーハニカムコアの表面に形成されたシリカ膜とを有し、必要に応じて、その他の部材を有する。
<ペーパーハニカムコア>
前記ペーパーハニカムコアは、非常に安価で、大きさを容易に調整することができるものである。
<<構造>>
前記ペーパーハニカムコアの構造としては、ハニカム構造である限り、特に制限はなく、目的に応じて、連続する空隙の形状や大きさを適宜選択することができ、例えば、図1における側面Sにおいて、空隙の形状が、三角形が連続した形状であり、前記ペーパーハニカムコアの空隙の断面形状(図1における上面Uと平行な面に沿った断面の形状)が、六角形が連続した断面形状であるハニカム構造、などが挙げられる。
<<材料>>
前記ペーパーハニカムコアの材料としては、紙(ペーパー)である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下級印刷紙、未塗工紙、コート紙、アート紙、工業用雑種紙、板紙、ダンボール紙、クラフト紙、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記ペーパーハニカムコアは、古紙を原料として製造することもできる。この場合は、古紙を水と攪拌してパルプ化したものに添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤)を加え、製造される。
<<大きさ>>
前記ペーパーハニカムコアの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、容易に調整することができる。
<シリカ膜>
前記シリカ膜としては、基材としてのペーパーハニカムコアの表面に形成されている限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化して得られるシリカ及び炭酸アルカリ金属塩を、蒸気養生して形成されているもの、炭酸化されなかった一部のアルカリ金属が水又は弱酸性溶液で処理されることで形成されるもの、などが挙げられる。
前記シリカ膜は、空気中に長時間放置しても白華現象を生じないとの観点からは、ナトリウム、カリウム及びリチウムの合計含有量が少ない方が好ましい。これにより、シリカ膜は、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の合計含有量が少ないため、空気中に長時間放置してもアルカリ金属の炭酸化による白華現象が生じない。
一方、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の合計含有量が多い場合には、断熱材などの建材として使用するときに、長期間においてシリカ膜の内部から少しずつアルカリ金属が溶出してくることにより、シリカ膜表面が弱アルカリ性になることによって、断熱材などのカビ発生を防止する効果がある。
さらに、前記シリカ膜を形成させたペーパーハニカムコアの表面に、シリカと石灰との水熱反応によって生成するケイ酸カルシウム水和物を形成させる場合、シリカ中にアルカリ金属を含有していると、この水熱反応は低温化と短時間化の効果がある。
前記蒸気養生とは、適度な温度と湿度を確保し、基材の表面に形成された膜を強固で安定なものにして、基材を保護するために行われるものである。蒸気養生における加温には、養生促進効果がある。
前記シリカ膜におけるシリカの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70質量%以上が好ましく、80質量%〜95質量%がより好ましい。
前記シリカ膜におけるシリカの含有量が70質量%以上であると、耐衝撃性、耐水性を向上させることができ、また、前記より好ましい範囲内であると、高比表面積、絶縁性の点で有利である。
ここで、前記シリカ膜におけるシリカ以外の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、上述したナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、などが挙げられる。
前記シリカ膜におけるシリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30m/g〜700m/gが好ましく、30m/g〜300m/gがより好ましい。
前記シリカ膜におけるシリカのBET比表面積が30m/g〜700m/gであると、シリカゲルと同様に、触媒担体、吸着材、調湿材、保温材などの幅広い用途に好適に応用でき、また、前記より好ましい範囲内であると、耐熱衝撃や調湿機能の点で有利である。
なお、ここで、BET比表面積は、従来公知の測定方法にて算出することができる。
前記シリカ膜の膜厚としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜700μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましい。
前記シリカ膜の膜厚が1μm〜700μmであると、基材表面に形成された場合に、基材表面から剥離し難くなり、また、前記より好ましい範囲内であると、熱衝撃を受けても剥離しにくく、湿度調節の点で有利である。
前記シリカ膜は、水蒸気などの蒸気によって安定した形に再配列された三次元網目構造を有することが好ましい。
前記シリカ膜は、例えば、以下の方法により形成される。蒸気養生装置に、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)を塗布した基材と、水と、を入れ、それに炭酸ガスを充填し、この蒸気養生装置を所定温度に加熱する。こうすることで、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)のアルカリ金属は炭酸ガスと反応して、水に可溶性の炭酸アルカリ金属塩とシリカとが生成する。そして、水を入れて蒸気養生装置を加熱しているため、内部には水蒸気が発生しており、可溶性の炭酸アルカリ金属塩は水蒸気によって基材表面から洗い流される。これにより、基材表面はシリカのみとなり、このシリカ膜の三次元網目構造が水蒸気によって安定した形に再配列する。ここで、水ガラスの炭酸化とシリカ膜の蒸気養生とは別々に行うものでなく、炭酸化によるシリカ膜の形成、基材表面の水蒸気による洗い流し、及びシリカ膜の安定化は同時に進行することが、最も効率的である。
(シリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法)
本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法は、本発明のペーパーハニカム構造体を製造する方法であり、少なくとも、塗布工程と、炭酸化蒸気養生工程とを含み、さらに必要に応じて、除去工程等の他の工程を含む。
<塗布工程>
前記塗布工程は、基材としてのペーパーハニカムコアの表面にケイ酸アルカリ金属塩水溶液を塗布する工程である。この塗布により、ケイ酸アルカリ金属塩が基材としてのペーパーハニカムコアに含浸される。
−ケイ酸アルカリ金属塩水溶液−
前記ケイ酸アルカリ金属塩水溶液は、「水ガラス」とも称されるが、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液の中のケイ酸アルカリ金属塩は、一般式MO・nSiOで示され、Mは、アルカリ金属であるナトリウム(Na)、カリウム(K)及びリチウム(Li)からなる群より選択される少なくとも1つを示し、nは、MOとSiOとのモル比を示す。本発明では、nは、1〜5であり、前記ケイ酸アルカリ金属塩水溶液の中におけるケイ酸アルカリ金属塩の濃度は、2質量%〜30質量%であることが好ましい。
また、前記ケイ酸アルカリ金属塩水溶液の濃度を調整することにより、シリカ膜の厚みを調整することができる。
さらに、前記ケイ酸アルカリ金属塩水溶液としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液の中のMO・nSiO水溶液の濃度を2質量%〜30質量%としたものを使用してもよいし、ケイ酸ナトリウム塩水溶液又はケイ酸カリウム塩水溶液60gにホウ酸(HBO)を0.3質量%〜1.5質量%溶解させたものを使用してもよいし、ケイ酸ナトリウム塩水溶液、ケイ酸カリウム塩水溶液及びケイ酸リチウム塩水溶液からなる群より選択される少なくとも2つを混合したものを使用してもよい。
−塗布−
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗り、スプレー塗り、刷毛塗り、ローラーブラシ塗り、へら塗り、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、浸漬塗りが、絡み合った繊維の裏側や繊維間の奥深くまで浸透していく点で、好ましい。
<炭酸化蒸気養生工程>
前記炭酸化蒸気養生工程は、炭酸化工程と、蒸気養生工程とを含む工程である。
<<炭酸化工程>>
前記炭酸化工程は、前記塗布されたケイ酸アルカリ金属塩水溶液におけるケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化する工程である。
−炭酸化−
前記炭酸化は、炭酸ガスを流す方法ではなく、炭酸ガスを充填する方法にて行うことができる。炭酸ガスを充填する方法における炭酸化は、炭酸ガスが存在すると可能であり、特に炭酸ガスの濃度を規定する必要はない。ただし、炭酸ガスの濃度が高い場合には、炭酸化の促進効果がある。
また、前記炭酸化は、蒸気養生槽へ炭酸ガスを充填する方法以外にも、炭酸ガスを流す方法、排ガス等の炭酸ガスを再利用することによって生じた希薄な炭酸ガスを流す方法などにて行うことができる。炭酸ガスを流す方法を採用した場合は、大気圧で100℃になり、炭酸ガス濃度も低くなるために、炭酸化の時間を長くする必要があると同時に、水ガラスのアルカリ金属が十分に炭酸化されない可能性がある。炭酸化されなかったアルカリ金属塩は、水又は弱酸性溶液に浸漬処理してアルカリ金属塩を除去する必要がある。
例えば、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液の中のアルカリ金属塩として、NaO又はKOを用いる場合、前記炭酸化工程において以下の反応が起こる。
2NaOH+CO→Na2CO+H
2KOH+CO→KCO+H
ここで、従来の技術によれば、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液に炭酸ガスを接触させると、白い粉状の炭酸アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)とシリカ(酸化ケイ素)とに分離して、白い粉状の炭酸アルカリ金属塩が析出する(「白華現象」と称する)ため、できるだけこの炭酸塩を生成しないように炭酸ガスを除去する方法又は炭酸ガスを用いない方法でシリカ被膜形成が行われていた。
しかし、本発明では、ケイ酸ナトリウム塩水溶液などのケイ酸アルカリ金属塩水溶液を蒸気養生槽に入れて蒸気中で炭酸化を行うため、炭酸化により生成する炭酸ナトリウムなどの炭酸塩は溶解度が大きく、シリカ膜の表面に生成しても蒸気によって洗い流される。
従って、基材に塗布したケイ酸ナトリウム塩水溶液(水ガラス)中のナトリウムを消費するために必要な炭酸ガスを充填すると、ナトリウムは炭酸ガスと反応して除去され、基材上のシリカ膜は高純度のシリカ膜となる。後述する蒸気養生中に洗い流されなかった基材表面の炭酸塩は、水(流水)で水洗除去できるが、弱酸性溶液を使用して除去することもできる。以上のようにして得られたシリカ膜は、シリカ純度が高く、ナトリウムの含有量が少ないため、該シリカ膜を空気中に長期間放置しても白華現象は生じない。
<<蒸気養生工程>>
前記蒸気養生工程は、前記炭酸化工程にて得られたシリカ及び炭酸アルカリ金属塩を蒸気養生する工程である。
−蒸気養生−
前記蒸気養生とは、適度な温度と湿度を確保して、水ガラスを炭酸化して基材の表面に形成されたシリカ膜を、強固で安定したシリカ膜にするために行われるものである。蒸気養生における加温には、養生促進効果がある。
前記蒸気養生に用いる溶媒又は溶液としては、炭酸アルカリ金属塩を溶解することができる限り、特に制限はなく、例えば、水、弱酸性溶液、などが挙げられる。
これらの中でも、炭酸アルカリ金属塩を溶解しやすい点で、水が最も好ましい。また、水を用いた場合には、基材の特性を阻害しない限り、水以外の他の物質を添加してもよい。
以下、前記蒸気養生を行うための装置構成について、図2(a)、(b)に基づいて説明すれば以下の通りである。
図2(a)は、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法に用いられる蒸気養生装置1を示す斜視図である。また、図2(b)は、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法に用いられる蒸気養生装置の内部を示す断面図である。
図2(b)に示すように、蒸気養生装置1の内部には、主として、ステンレス製の網2の上に置かれた基材3、下部には水4、及び炭酸ガス(CO)5が設けられている。なお、水4は必要に応じて、蒸気養生装置1の下部に設けられるものである。例えば、蒸気養生を常温(5℃〜35℃)で長時間行う場合、蒸気養生装置1の下部に水4を設けないが、水ガラスの炭酸化により水が発生し、該発生した水によりシリカ分子同士が結合してシリカ膜となる。一方、蒸気養生を加温して行う場合、分圧が高くなり水が大量に必要となるため、蒸気養生装置1の下部に水4を設ける。
前記蒸気養生は、水4を適度に加温することにより促進され、基材3の表面に膜を形成することにより行う。
前記蒸気養生の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、常温〜160℃が好ましく、40℃〜160℃がより好ましく、40℃〜80℃がさらに好ましい。
前記蒸気養生の温度が40℃〜160℃であると、効率的にシリカ膜をペーパーハニカムコアの表面に形成することができ、もって大量処理が容易に可能となり、コストを低減することができ、また、前記さらに好ましい範囲内であると、コスト低減化と共に高比表面積になる点で有利である。
前記蒸気養生の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5時間〜90時間が好ましく、0.5時間〜10時間がより好ましく、1時間〜5時間がさらに好ましい。
前記蒸気養生の時間が0.5時間〜10時間であると、効率的にシリカ膜をペーパーハニカムコアの表面に形成することができ、もって大量処理が容易に可能となり、コストを低減することができ、また、前記さらに好ましい範囲内であると、コスト低減化と共に高比表面積になる点で有利である。
また、蒸気養生槽への炭酸ガス充填方式を採用した場合、前記蒸気養生工程における蒸気の分圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、74hPa〜6500hPaが好ましく、常圧(1013.25hPa)〜6500hPa、又は、74hPa〜476hPaがより好ましい。
但し、蒸気養生槽へ炭酸ガスを流す方式を採用した場合にはこの限りではない。
ケイ酸ナトリウム塩水溶液(水ガラス)を用いてのシリカ膜形成に、炭酸化工程と蒸気養生工程とを併用することにより、炭酸化及び蒸気養生によってナトリウムなどのアルカリ金属が除去されたシリカ膜の三次元網目構造が、水蒸気によって安定した形に再配列して基材表面に剥離し難いシリカ膜を形成することができる。この場合、シリカ膜の厚さは、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)の濃度を調整することにより自由に制御できる。
<除去工程>
前記除去工程は、前記炭酸化蒸気養生工程の後に、炭酸アルカリ金属塩を水又は弱酸性溶液で除去する工程である。
前記除去工程において、蒸気養生工程にて除去されなかった炭酸アルカリ金属塩に加えて、炭酸化工程にて炭酸化されなかった一部のアルカリ金属も、水又は弱酸性溶液で処理されてもよい。
以上より、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法によれば、基材を水溶液のケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)に浸漬させて、基材にケイ酸アルカリ金属塩を含浸させ、その後、炭酸化処理を行うことでシリカ及び炭酸アルカリ金属塩を生じ、生じた炭酸アルカリ金属塩は蒸気(好ましくは、加熱された蒸気)により洗い流され、シリカは蒸気により三次元網目構造が安定した形に再配列し、シリカ被膜を形成する。このシリカ被膜は、空気中に長時間放置してもアルカリ金属の炭酸化による白華現象は生じず、耐水性、耐衝撃性にも優れたものとなる。基材表面に形成された高純度のシリカ被膜が基材表面をより強固にしているためである。
また、セルロース繊維の中にも入り込んでいたケイ酸アルカリ金属塩は炭酸化処理することで、複雑に絡み合っている内部の繊維表面にもシリカ被膜を形成するために、熱衝撃や応力に対して非常に強く、剥離し難いなどの優れた特徴も出てくる。
また、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法によれば、炭酸ガスを除去する処理を必要とせず、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液にナトリウムなどのアルカリ金属を抑制するための第3物質をさらに加えることも必要とせず、かつシリカ純度が高く、膜厚を自由に制御できたシリカ膜を、簡単な方法で形成することができる。
本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法によれば、安価なペーパーハニカムコアの表面に、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)を塗布して、炭酸化及び蒸気養生することにより、容易に多孔質シリカ被膜を形成して、幅広い機能を付与することができる。
また、本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法により得られたシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体は、難燃化された上に高強度で水中に長時間浸漬しても変形や崩壊することなく、高比表面積を有し、優れた吸湿機能があることから、建材として調湿機能を有する耐火性断熱材、水中や空気中での浄化材、吸着材、調湿材として利用でき、難燃性、耐衝撃性材料としても応用可能である。
(試料調製)
<試験体>
ペーパーハニカム(基材)として、新日本フェザーコア株式会社製の積層板を用いた。試験体は、図1に示すように、A(50mm)×B(15mm)×C(30mm)の大きさに調整した。
<水ガラスの調製と浸漬方法>
各濃度のケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)に試験体を浸漬させた後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温にて2時間程度放置した。なお、一部の試験体については、水ガラスへの浸漬と室温放置とを繰り返した。試験体は半乾き状態にしてから次のシリカ被膜形成処理を行った。
<炭酸化及び蒸気養生によるシリカ被膜形成処理>
図2に示したように、乾燥器内に小型蒸気養生装置1を準備し、その内部にステンレス製の網2を置き、その網2上にケイ酸アルカリ金属塩を含浸させた試験体3を載せた。蒸気養生装置1の下部には水4を入れ、さらに炭酸ガス5を充填して蒸気養生を行い、シリカ被膜形成処理を行った。次に、シリカ被膜処理した試験体を流水中に浸漬し、NaCOの残存やアルカリ金属の内部からの溶出がないことを確認するために、リトマス試験紙を用いて試験体表面のpHが中性であることを判定の基準とした。
(物性測定)
<シリカ被膜の膜厚測定>
膜厚は、デジタルマイクロスコープVHX−200(株式会社キーエンス製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
<圧縮強度測定(強度試験)>
圧縮強度は、島津製作所製のAutograph AG−100kNGを用いて、クロスヘッド移動速度2mm/min.で、試験体の垂直方向(B方向)に圧縮して強度を測定した。なお、湿度は75%であった。測定結果を表1と図4に示す。
<BET比表面積測定>
BET比表面積測定装置(湯浅アイオニクス株式会社製オートソーブ−1−AG)を用いて、十分に加熱脱気した試験体について、窒素ガスを吸着させる3点法により測定を行った。測定結果を表1に示す。
<吸湿率測定>
ガラス製デシケータの底部に過飽和塩化ナトリウム水溶液を入れ、デシケータ用中板の上に試験体を置き、湿度70%で15時間吸湿させた後に吸湿率測定を行った。測定結果を表1に示す。過飽和塩化ナトリウム水溶液を用いることで湿度75%を想定したが、試験体の吸湿により15時間後のデシケータ内の湿度は70%であった。測定結果を表1に示す。
<燃焼試験(難燃性試験)>
ガスバーナーを用いて、バーナーの出口より炎の高さが50mmになるように調整した。その位置にステンレス製網をセットし、網の上に試験体を置いて30秒間燃焼試験を行った。その時の炎の温度は950℃であった。具体的には、試験体の形体が全く変化しなかった状態を「◎」、燃焼せずに形体の変形が確認できた状態を「○」、燃焼によって変化した状態を「×」とした。試験結果を表1に示す。
<流水試験(耐水性試験)>
流水試験は、試験体を流水中に一週間浸漬させ、その後の試験体の状態を目視により評価した。具体的には、試験体に全く変化がない状態を「◎」、試験体にほとんど変化がない状態を「○」、試験体の積層状態に変化が見られた状態(崩れた状態)を「×」とした。評価結果を表1に示す。
<SEM観察>
走査型顕微鏡(日本電子製のJSM−5200LV)により各試験体の表面を観察した。比較例1と実施例2の観察結果を図3(a)及び(b)に示す。
(実施例1)
試験体を水溶液濃度5質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝すと、白煙が上がり、変形が始まった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例2)
試験体を水溶液濃度20質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
未処理の試験体(後述する比較例1)とシリカで被覆処理された試験体(実施例2)とのSEM観察写真を図3(a)と(b)に示す。未処理の試験体は、図3(a)に示すようにセルロース繊維が絡み合って構成されているのが観察される。シリカで被覆された試験体は、図3(b)に示すように全面に小さな斑点状の模様は観察されるが、亀裂はなく滑らかな表面状態であった。左側の白い2つの大きな斑点は異物である。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例3)
試験体を水溶液濃度20質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、40℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:74hPa)を5時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例4)
試験体を水溶液濃度30質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、120℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:2019hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例5)
試験体を水溶液濃度30質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、140℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:3707hPa)を1時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例6)
試験体を水溶液濃度20質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置し、その後、水ガラスに浸漬し、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置するという工程を3回繰り返し、前記繰り返し工程における最後の放置は2時間程度の放置として、半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
未処理の試験体(後述する比較例1)とシリカで被覆処理された試験体(実施例6)との圧縮強度を図4(a)と(b)に示す。未処理の試験体は、図4(a)に示すように圧縮強度は弱く、圧縮応力に対して急激には破壊されないが、少しずつ歪みながら破壊されていくのがわかる。一方、シリカで被覆された試験体は、図4(b)に示すように圧縮強度は強く、シリカ被膜を形成することによって圧縮応力に対する抵抗力が大きく、破壊は急激に進むことがわかる。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例7)
試験体を水溶液濃度30質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置し、その後、水ガラスに浸漬し、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置するという工程を3回繰り返し、前記繰り返し工程における最後の放置は2時間程度の放置として、半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例8)
試験体を水溶液濃度30質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置し、その後、水ガラスに浸漬し、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置するという工程を6回繰り返し、前記繰り返し工程における最後の放置は2時間程度の放置として、半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例9)
試験体を水溶液濃度20質量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)30gと水溶液濃度20質量%のKO・SiO水溶液(水ガラス)30gを混合した水ガラスに浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、90℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:706hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(実施例10)
試験体を水溶液濃度30重量%のNaO・3.4SiO水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置として、半乾き状態にした。
次に、ステンレス網の上に試験体を載せ、図2に示すような蒸気養生装置(下部に水を入れていない)内に入れた。さらに、炭酸ガスを充填して、23℃(室温)で養生処理(蒸気の分圧:28hpa)を72時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが9.2あることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸水率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸透しても形態の変化は全く見られず、浸水前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
(比較例1)
未処理の試験体(シリカ被膜が形成されていない試験体)について、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、バーナーの炎に曝されると5秒間で燃焼し始めた。
流水試験においては、10分間浸漬後に試験体の積層部分が膨潤したようになり、水を緩やかに掻き回すと積層の接着面が剥がれて試験体はバラバラになった。
水ガラス濃度や塗布回数の増加により、膜厚は厚くなり、強度、比表面積、吸湿率は大きくなり、燃焼温度は高くなり、流水中での試験体の形体もより安定する傾向がある。
処理温度が低くなると、比表面積が大きくなり、それに伴い吸湿率も大きくなる傾向がある。しかしながら、処理温度が高くなると、シリカ分子同士の結合が進み、細孔が減少するために、比表面積が小さくなり、それに伴って吸湿率も小さくなるが、強度が大きくなり、燃焼温度が高くなり、流水中での試験体の形体はより安定性を増す傾向がある。
本発明のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体は、(i)吸着、脱臭等の浄化関連品、(ii)調湿機能を付与した難燃建材、断熱建材、(iii)吸熱・放熱付与材料、(iv)水中での浄化材装置、(v)排気の浄化材、(vi)担持体、などに好適に利用可能である。
1 蒸気養生装置
2 ステンレス製の網
3 基材
4 水(溶媒又は溶液)
5 炭酸ガス(CO
A 横幅
B 縦幅
C 高さ
S 側面
U 上面

Claims (8)

  1. 基材としてのペーパーハニカムコアの表面に、シリカ膜を有しており、
    前記シリカ膜におけるシリカのBET比表面積が520m 2 /g〜603m 2 /gであり、
    前記シリカ膜は、膜厚が126μm〜320μmであることを特徴とするシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体。
  2. 前記シリカ膜は、ケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生して形成されているものであることを特徴とする請求項1に記載のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体。
  3. 前記シリカ膜におけるシリカの含有量が70質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペーパーハニカム構造体。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体を製造する方法であって、
    基材としてのペーパーハニカムコアの表面にケイ酸アルカリ金属塩水溶液を塗布する塗布工程と、
    前記塗布されたケイ酸アルカリ金属塩水溶液におけるケイ酸アルカリ金属塩を炭酸化及び蒸気養生する炭酸化蒸気養生工程と、を含むことを特徴とするシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法。
  5. 前記炭酸化蒸気養生工程において、常温〜160℃の温度範囲内で蒸気養生することを特徴とする請求項に記載のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法。
  6. 前記炭酸化蒸気養生工程において、0.5時間〜90時間の範囲内で蒸気養生することを特徴とする請求項又はに記載のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法。
  7. 前記炭酸化蒸気養生工程において、蒸気の分圧を常圧〜6500hPaの範囲内として蒸気養生することを特徴とする請求項のいずれかに記載のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法。
  8. 前記炭酸化蒸気養生工程の後に、炭酸アルカリ金属塩を水又は弱酸性溶液で除去する除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項のいずれかに記載のシリカ被膜付きペーパーハニカム構造体の製造方法。

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