JP5868102B2 - シリカボードの製造方法並びにその製造方法により得られる強耐火性シリカボード - Google Patents
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Description
そのうち、シリカボードは、二酸化ケイ素を主成分とするものであって、1000度を越える熱に対して耐性を有し、かつ、コストパフォーマンスに優れていることから、建造物壁面の耐火ボードとして多く利用されている。
しかしながら、かかる従来のシリカボードについて、表面温度が上昇するにつれ裏面温度も上昇していくものであり、例えば表面温度が1000度を超えるような場合、耐火ボードとして多く採用されている寸法の厚さ20mm程度の従来シリカボードでは、裏面が350度以上にまで上昇してしまうこととなる。これは、通常シリカボード裏面にはコンクリートが当接しており、該コンクリートのが350度以上の温度で劣化が始まることに鑑みると、火災の際にシリカボードでは本来保護すべき対象であるコンクリートの劣化を防ぐことができないこととなる。
また、従来のシリカボードの耐久性について、1000度以上の環境下において、せいぜい2時間程度が限界であり、それを超えると耐火ボードとして意味を成さなくなってしまう。
具体的には、シリカ繊維をチップ状に細かく裁断するものであって、裁断後の一のシリカ片の長さについて、裁断長さが長くなるほど最終的に通気性が良く軽いボードが製造されることとなるが、逆に強度は低下してしまうため、本発明においては一のシリカ片の長さをおよそ1〜4mm程度とする。なお、裁断により一のシリカ繊維から多数のシリカ片が生成されるが、シリカ片の長さを全て揃える必要はなく、夫々不揃いであって構わない。
裁断方法については、特に限定はしないが、裁断機による機械的に裁断する方法を採用することが好ましい。
なお、該シリカ繊維について、二酸化ケイ素やアルミナ以外に、他の組成物が含まれているものも使用可能である。他の組成物としては、例えばチタンや砒素などが挙げられる。
なお、シリカ繊維に他の組成物が含まれる場合に、その組成割合について、例えばチタン0〜5質量%が含まれている場合が考え得る。
具体的には、所定容器にシリカ片を入れ、そして該容器へ水とポリビニルアルコールを混入した状態で、撹拌機等により撹拌を行う。これにより、シリカペーストが生成される。このとき、シリカ片と水だけでなくポリビニルアルコールを混入するのは、シリカ片と水とが馴染み易くするためである。
なお、本工程で撹拌に使用する容器については、特に限定するものではない。
具体的には、シリカペーストを所定型枠に入れた状態で圧力を加えることで、余分な水分がシリカペーストから放出されて脱水が為されると同時に、当該所定型枠形状に固形化され、シリカ固体が生成されることとなる。
なお、本工程でのシリカペーストへの加圧は、単に余分な水分を脱水するためだけに行うものではなく、シリカ繊維の組織内部にまで水分を吸収させる目的もあり、この作用によりボードの硬質化が図られることとなる。
具体的には、所定容器にシリカ固体を入れ、そして該容器へ水とボロンとポリビニルアルコールを混入した状態で、撹拌機等により撹拌を行う。これにより、再度シリカペーストが生成される。このとき、シリカ固体と水だけでなくボロンを混入するのは、ボロンにはシリカの融解温度を下げる性質があるためであり、これによりシリカの融点よりも低い温度で繊維同士を融着させることが可能となる。また、同様にポリビニルアルコールを混入するのは、シリカ固体と水とが馴染み易くするためであり、かつ、前記ボロンは単体だと約700度で焼失してしまうが、ポリビニルアルコールと混ぜ合わさることで、陶器のように固まる性質があるからである。
なお、本工程で撹拌に使用する容器については、上記第一撹拌工程と同様、特に限定するものではない。
すなわち、シリカペーストを所定型枠に入れた状態で圧力を加えることで、余分な水分がシリカペーストから放出されて脱水が為されると同時に、当該所定型枠形状に固形化され、シリカ原板が成型されることとなる。
すなわち、本工程は、上記脱水工程並びに成型工程において加圧脱水処理を行ってもなおシリカ繊維内に吸収され残存する水分について、さらに強制的に水分除去を行うための工程である。
具体的には、炉内温度が70〜150度の範囲内で低温域に熱せられた低温炉内に、前記成型工程で成型されたシリカ原板を載置して、乾燥処理が行われる。
本工程の乾燥には、およそ10〜50時間程度の時間を要することとなる。かかる乾燥のための所要時間については、シリカ原板が乾燥するまでにかかる時間によって決定される。
すなわち、500〜1300度程度の高温炉内に乾燥させたシリカ原板を載置し、およそ2〜7時間ほど加熱することで焼成が行われる。
すなわち、高温炉内の温度設定について、始めに1〜2時間をかけてボロンの融点である700度まで徐々に上昇させる。次いで、該700度の状態を1〜2時間の間維持し、炉内を安定させる。その後、およそ1時間をかけて1100度まで更に徐々に上昇させる。そして最後に、該1100度の状態を約1時間の間維持する。以上の炉内温度設定の過程を経て、シリカ原板を加熱・焼成する方法が採り得る。かかる焼成方法を採用することにより、いったん700度域にて安定させることで、ボロンとポリビニルアルコールの相乗作用によりボードの硬質化を図ることができ、完成したシリカボードの強度向上に資することとなる。
本工程における冷却の手法については、常法に従えばよく、自然冷却と人工的冷却とを問うものではない。
なお、本実施例における裁断工程から第二撹拌工程まで、及び、成型工程から冷却工程までは、上記第一の実施例と同様であるため、説明を省略する。
すなわち、前記第二撹拌工程により生成されたシリカペーストを所定容器に入れた状態において、該容器ごと振動を加えることで、容器内のシリカペーストの上方に水分が浮上してくる。かかる浮上した水分を除去することで、シリカペーストにおけるシリカ繊維密度をより向上させることが可能となる。
図4は、本発明品と従来品について行った曲げ強度試験についての結果が示されている。なお、当該試験の方法については、図4中に記載されている通りである。
かかる試験結果からわかるように、従来品は通常時(吸水前)と吸水後とで約25%ほど強度が低下しているのに対し、本発明品では通常時と吸水後とで逆に約38%も強度が増している結果が得られた。また、通常時において本発明品は従来品の1.74倍の強度比であるのに対し、吸水時においては3.2倍の強度比となるため、本発明品が水に強いことが判る。なお、本発明品の試料7の試験結果について他試料に比し極端に数値が落ちているのは、該試料7が当初よりひび割れ等の欠陥があったものと推測される。
本試験により、加水劣化する従来品に比して、吸水後に強度が上昇する本発明品の性能が非常に優れているという結果を得られた。
図5は、本発明品における乾燥状態と吸水状態とについて行った加熱試験についての結果が示されている。当該試験の方法としては、試料であるボードの表面をガスバーナーによって900〜1100度で熱し、ボード裏面の温度を赤外線放射温度計にて計測する方法を採用した。なお、吸水状態の試験については、常に試料が吸水状態を保てるよう、水の入れられた容器内に試料をセットした状態で試験を行った。
かかる試験結果からわかるように、乾燥状態のシリカボードは、加熱開始から時間の経過とともにシリカボードの温度が右肩上がりで上昇していくのがわかる。具体的には、約10分経過した時点で約300度に達し、40分経過時には370度にまで上昇してしまった。これに対し吸水状態のシリカボードでは、加熱開始からシリカボードの温度が約60度に達するまで(約5分)は同じ様に上昇するが、60度を超えた時点で温度上昇が弱まって、約60〜80度の範囲内で温度推移する状態が40分経過時点まで継続維持される結果となった。以上の結果から、シリカボードを吸水状態とすることで、ボード裏面の温度上昇を抑制する作用効果を発揮することがわかった。
なお、吸水状態の本試験において、容器内に入れられた水の量は、試験前に比べ試験後に減っていることがわかった。これは、加熱によりボード中の水分が水蒸気となって蒸発し、その蒸発した分量だけ容器内の水をボードが吸水したものと推測される。
Claims (6)
- 強耐火性を有するシリカボードの製造方法であって、
二酸化ケイ素とアルミナを主成分として組成されたシリカ繊維を、裁断機で裁断して長さ1〜4mmのシリカ片を生成する裁断工程と、
前記裁断工程により生成されたシリカ片を所定容器に入れ、そこへ水並びにポリビニルアルコールを混入して撹拌を行うことでシリカペーストを生成する第一撹拌工程と、
前記第一撹拌工程により生成されたシリカペーストを所定型枠に入れ、所定圧力にて所定時間加圧して脱水することで、所定形状のシリカ固体を生成する脱水工程と、
前記脱水工程により生成されたシリカ固体を所定容器に入れ、そこへ水、ボロン並びにポリビニルアルコールを混入して撹拌を行うことで再度シリカペーストを生成する第二撹拌工程と、
前記第二撹拌工程により生成されたシリカペーストを所定型枠に入れ、所定圧力にて所定時間加圧して脱水することで、所定形状のシリカ原板を成型する成型工程と、
前記成型工程により成型されたシリカ原板を70〜150度の低温域に熱せられた低温炉内に置いて乾燥処理を行う乾燥工程と、
前記乾燥工程により乾燥したシリカ原板を、高温炉内で加熱・焼成する焼成工程と、
前記焼成工程により加熱・焼成されたシリカ原板を冷却する冷却工程と、
から成ることを特徴とするシリカボードの製造方法。 - 前記シリカボードの製造方法において、
前記第二撹拌工程後に前記成型工程へ移行する前工程として、
前記第二撹拌工程により生成されたシリカペーストについて、所定容器に入れて振動を加えることで、シリカペースト上方に浮上する水分を除去する振動工程が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のシリカボードの製造方法。 - 前記裁断工程において用いられる前記シリカ繊維の組成割合が、二酸化ケイ素85〜99質量%、アルミナ1〜10質量%、であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリカボードの製造方法。
- 前記第一撹拌工程における混合割合が、シリカ片100gに対し、水1〜3リットル、ポリビニルアルコール10〜50ミリリットルであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリカボードの製造方法。
- 前記第二撹拌工程における混合割合が、シリカ固体100gに対し、水100〜1000ミリリットル、ボロン2〜10g、ポリビニルアルコール10〜50ミリリットルであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリカボードの製造方法。
- 前記焼成工程において、高温炉内の温度を始めに1〜2時間かけて700度まで上昇させ、次いで700度の状態で1〜2時間保持し、その後1時間かけて1100度まで上昇させ、次いで1100度の状態で1時間保持する過程を経て、シリカ原板が加熱・焼成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシリカボードの製造方法。
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