JP6241702B2 - メカノクロミック材料 - Google Patents
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Description
さらに、本発明に従えば、ジアリールビベンゾフラノン構造を有するメカノクロミック化合物も提供される。
本発明のメカノクロミック材料として特に好ましいのは、DABBF構造を含むウレタン結合を呈する繰り返し単位から成るポリマー(ポリウレタン)から構成されているものであり、これには、末端に複数個の水酸基を有するDABBF誘導体を用い、これにジイソシアネート化合物(複数種のジイソシアネート化合物を用いてもよい)を反応させることにより目的のポリマーが得られる。ジイソシアネート化合物は、従来から知られたヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどで末端修飾され適当鎖長のアルキレングリコールやアルキル基が介在するような各種のジイソシアネート化合物として使用されることができる。
さらに、本発明者は、上述したようなポリマーの出発原料となるDABBF誘導体自身もメカノクロミック特性を呈することを見出している。かくして、本発明に従えば、次の一般式(12)で表されるジアリールビベンゾフラノン構造から成ることを特徴とするメカノクロミック化合物が提供される。
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
(1−1)ジアリールビベンゾフラノンジオール(DABBF−diol)の合成
図1に示す合成スキームに沿って、DABBF誘導体として、二つの水酸基を有するDABBF−diolを合成した。先ず、既知の方法に準じて(特許文献2)、マンデル酸誘導体とフェノール誘導体の縮合反応により、アリールベンゾフラノン(ABF)誘導体を合成し、次いで、フェノール性水酸基部分を3−ヒドロキシプロピル基で化学修飾してアリールベンゾフラノンオール(ABF−ol)を得た。このABF−olを以下のように、ラジカル反応による二量化に供した:アリールベンゾフラノンオール(ABF-ol)1.76g(4.44mmol)、ベンゼン13.8ml、ジ−tert−ブチルペルオキシド9.18ml(50.0mmol)からなる混合溶液を調製した。水銀灯照射用試験管(Riko石英製、容量10ml)3本に入れて、UV光(RikoPhotochemicalReactorRH400-10,400W水銀灯)照射を90分間行った。溶媒留去後、酢酸エチル/ヘキサン(1/1,v/v)を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製を行い、さらに少量の塩化メチレンに溶解させて、ヘキサンを用いて固体を析出させることで、白色粉末状の化合物を収量562mg(収率32%)で得た。得られた化合物に対して1H−NMR測定、IR測定、および質量分析によりこの化合物の構造解析を行った。1H−NMR(CDCl3,300MHz):δ7.2(s, 1H), 7.2 (broad, 2H), 6.7 (d, 2H), 6.5−6.1 (broad, 1H), 4.1 (m,2H), 3.8 (t, 2H), 2.0 (m, 1H), 1.3 (broad, 9H), 1.1 (broad, 9H).
以上のようにして合成したジアリールビベンゾフラノンジオール(DABBF−diol)の粉末を乳鉢で1分間ほど磨り潰したところ、図2(a)に示すように、白色(または淡黄色)から青色(または青紫色)へ変化することがわかった。DABBF誘導体は溶液中で加熱すると青色に着色することが知られているが、ジアリールビベンゾフラノンジオール(DABBF−diol)は加熱しなくても力学的な刺激を受けることによって青色に着色することが明らかとなった。また、溶液中の加熱では、室温に戻すと速やかに青色は退色するが、粉末に力学的な刺激を与える場合は、着色した青色は空気中でも数時間、安定に存在できることが明らかになった。
(2−1)ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)の合成
DABBF構造を有するポリマーとして、既述の式(2)で表されるジアリールビベンゾフラノン−ポリウレタン、すなわち、DABBF構造を含むウレタン結合を有する繰り返し単位から成るポリマーを合成した:先ず、30mlシュレンク管にトリレン−2,4−ジイソシアネートで末端修飾されたポリプロピレングリコール(TPDI;分子量Mn=2500)を1.88g(0.759mmol)加え、次にDMFを1.88ml加え、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を189mg(1.13mmol)加えて撹拌した後、実施例1で合成した白色粉末状のジアリールビベンゾフラノンジオール(DABBF−diol)を1.48g(1.88mmol)加え、窒素雰囲気下にして、脱気を行い均一系になるまでよく撹拌した。その後、ジラウリン酸ジブチルすずを1滴加え撹拌を続けた。48時間撹拌後、メタノール2mlを加えて反応を終了させた。テトラヒドロフラン/水およびクロロホルム/ヘキサンで再沈殿を行い、白色塊状の化合物を得た。収量は2.33g(収率66%)であった。1H-NMR測定およびIR測定によりこの化合物の構造解析を行った。1H-NMR(CDCl3,
400MHz):δ6.4−7.8(18H, aromatic of DABBF-diol and TPDI),4.4(4H, DABBF-O-CH2-CH2-CH 2 -O-TPDI),4.3(4H,
DABBF-O-CH2-CH2-CH 2 -O-HDI),4.2(4H,
DABBF-O-CH 2 -CH2-CH2-O-urethane bond),3.6(2H
, CH2 of the PPG unit),3.4(1H, CH of the PPG unit),3.2(4H, NH-CH 2 of
HDI),2.1-2.5(10H, aryl-methyl group of TPDI and DABBF-O-CH2-CH 2 -CH2-O-urethane
bond),1.3-1.5(36 H, t-butyl of DABBF),1.0-1.3(3H, methyl group of PPG unit),0.9(8H,
NH-CH2-CH 2 -CH 2 -CH 2 -CH 2 -CH2-NH
of HDI)
白色塊状のジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)の再沈殿物を室温、空気中で乳鉢を利用して1分間ほど磨り潰した。ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)にこのような力学的刺激を印加した前後および力学的刺激を印加してから6時間経過後の写真を図1(c)に示す(左:力学的刺激印加前、中央:印加直後、刺激印加から6時間後)。同図(c)に示すように、白色塊状のジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)の再沈殿物は、白色から青色へと変化し、さらに6時間程で元の白色まで完全に退色した。示差走査熱量分析(DSC)測定により、ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)のガラス転移温度は室温以下(−10.8℃)であるとともに融点は確認されなかったことから、非晶性高分子であることがわかった。この結果から、室温においてもジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)内の分子鎖の自由度が高い状態が安定的に維持されており、生成したラジカル同士が結合しやすくなることで速やかな退色が起こったものと推察される。
(3−1)ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)フィルムの合成
実施例2で合成したジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)のクロロホルム溶液から溶媒蒸発法を用いて安定なフィルムを合成した。ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−PUr)を50mg/mlの濃度でクロロホルム溶液に溶解させ、ガラスシャーレ上に展開し室温で12時間静置した後、48時間真空で乾燥して厚さ239μmの黄色のキャストフィルムを調製した。
得られたフィルムを試験片(JISK−6251−7ダンベル)に加工し、SHIMADZU社製EZ Graphを用いて室温、ロードセル50N、引張速度を10.0mm/分、試験片数N=5の条件で引張試験を行った。応力−歪み曲線を図3(a)に示す。破断強度は4.15MPaであり、最大歪みは618%であった。図3(b)に示すように、引張り試験を行う前淡黄色であったフィルムは、歪み約400%以降で青色に変色し、歪みの増加に伴い青色はより濃くなり、破断時に最も濃い青色を示した。
(4−1)架橋ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−XL)の合成
既述の式(3)で表されるジアリールビベンゾフラノン構造を架橋構造とする架橋ポリマー[架橋ジアリールビベンゾフラノンポリウレタン(DABBF−XL)]を以下のように合成した。出発原料となるDABBF誘導体は、既述の式(15)で表される4つの水酸基を有するジアリールビベンゾフラノンテトラオール(DABBD−tetraol)である。
得られた架橋ポリマーの粉末を乳鉢ですり潰したところ、青色変化し、メカノクロミック性を有することが確認された。さらに、得られた架橋ポリマーを1,4−ジオキサンに浸漬し、5H後のゲルを液体窒素温度まで冷却したところ、鮮やかな青色変化が観測された。冷却によりゲル中の高分子鎖に歪みがかかり、一部の分子鎖が切断してラジカルが発生し、分子鎖の運動性も低下しているため青色に着色したものと考えられる。また、青色に着色したゲルは、室温に戻ると速やかに退色して元のゲルの色に戻ることが明らかとなった。
(5−1)ジアリールビベンゾフラノンポリエステル(DABBF−PEs)の合成
図4に示す合成スキームに従って、ジアリールビベンゾフラノンポリエステル、すなわち、DABBF構造を含むエステル結合を有する繰り返し単位から成るポリマーを合成した。出発原料となるDABBF誘導体は、図4にも示されるように既述の式(14)で示されるDABBF−diolである。
1H-NMR(CDCl3, 400 MHz):TM7.3(s,2H),δ7.3(broad, 4H),6.8(d, 4H),6.6-6.1(broad, 2H),4.3(t, 4H),4.1(t, 4H),2.4(d,4H),2.1(m, 4H),1.7(m, 4H),1.3(broad, 18H),1.2(broad, 18H)),IR(NaCl)
DABBF−diolとDABBF−PEsの1H-NMRスペクトルにより、DABBF−diolの水酸基に隣接するメチレン鎖由来のピークが、エステル化に伴って3.9ppmから4.3ppmへシフトしていることが確認され、また、アジピン酸由来のピークが新たに観測された。図5(a)にDABBF−diolとDABBF−PEsのIRスペクトルを示す。3020cm-1に芳香族C−H伸縮振動、3000−2820cm-1にCH2、CH3基C−H伸縮振動、さらに、1800および1740cm-1にベンゾフラノンおよび縮合反応で生じたエステル基由来のC=O伸縮振動がそれぞれ観測された。
淡黄色粉末状のDABBF−PEsを室温、空気中で乳鉢を利用して1分間ほど磨り潰すと、淡黄色から青色へと変化することがわかった(図5(b))。このメカノクロミック特性はDABBF誘導体およびDABBF−PUrと同様であり、分子骨格中あるいは高分子骨格中にDABBFユニットを導入することで、メカノクロミック特性が発現する。
DABBF構造から成るメカノクロミック化合物として図10に示す(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28)、(29)の化合物を合成した。具体的な合成法については、代表例として、化合物(21)および化合物(26)について以下に示す。
(フェノール性水酸基を有するアリールベンゾフラノンの合成)ステップI
反応容器に4−ヒドロキシマンデル酸一水和物5.67g(30.5mmol)、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール8.50g(41.2mmol)、酢酸16.4mLを加えた溶液を調製し、オイルバスにて95℃に加熱した。メタンスルホン酸54.5μLを加え、95℃にて3h撹拌を行った。その後、徐々に反応溶液の温度を室温に戻し、約18h静置すると、赤い反応溶液の中に淡赤色沈殿が生じた。沈殿を回収、水およびヘキサンを用いて洗浄した後、クロロホルム/ヘキサンを用いて再結晶を行い、白色粉末状のアリールベンゾフラノン誘導体を得た。収量は7.62g(22.5mmol)、収率は74%であった。
反応容器にフェノール性水酸基を有するアリールベンゾフラノン2.95g(8.73mmol)、塩化メチレンおよびピリジンを加え、0℃に氷冷しながら、無水酢酸1.65mL(17.5mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、10h撹拌後、1N塩酸17.5mL(17.5mmol)を加え、さらに1h撹拌した。反応溶液に水と塩化メチレンを加え、有機相を回収し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。溶媒留去後、酢酸エチル/ヘキサン(1/3,v/v)を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製を行い、結晶性が非常に高い白色個体のアリールベンゾフラノン誘導体を得た。収量は3.18g(8.37mmol)、収率は96%であった。
アセトキシ基を有するアリールベンゾフラノン2.45g(6.44mmol)、ベンゼン20.4mL、過酸化物ジ−tert−ブチルペルオキシド13.6mL(73.9mmol)からなる混合溶液を調製した。水銀灯照射用装置(Riko Photochemical Reactor RH400-10, 400W水銀灯)により光照射を90min行った。溶媒留去後、酢酸エチル/ヘキサン(1/3,v/v)を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製を行い、白色固体のジアリールビベンゾフラノン誘導体を得た。収量は1.10g(1.44mmol)、収率は44%であった。
(3−ヒドロキシプロポキシ基を有するジアリールビベンゾフラノンの合成)ステップI
反応容器に水酸基を有するアリールベンゾフラノン誘導体3.00g(8.86mmol)、4%NaOH水溶液27mLを加えた溶液を調製後、還流管を取り付け、オイルバスを用いて80℃に加熱した。3−ブロモ−1−プロパノールを滴下し、そのまま80℃にて3h撹拌を行った。反応溶液を室温に冷却後、0.8N塩酸45mLを加え、再び80℃に加熱し、1h撹拌を行った。室温に冷却した後、高粘性の淡黄色沈殿を回収した。反応溶液に塩化メチレンを加え、飽和食塩水および水で洗浄し酢酸エチル/ヘキサン(1/3,
v/v)を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製を行った。白色粉末状の3−ヒドロキシプロポキシ基を有するアリールベンゾフラノンを得た。収量は2.39g、収率は68%であった。
3−ヒドロキシプロポキシ基を有するアリールベンゾフラノン1.76g(4.44mmol)、ベンゼン13.8mL、過酸化物ジ−tert−ブチルペルオキシド9.18mL(50.0mmol)からなる混合溶液を調製した。水銀灯照射用装置(Riko
Photochemical Reactor RH400-10, 400W水銀灯)により光照射を90min行った。溶媒留去後、酢酸エチル/ヘキサン(1/1,
v/v)を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製を行い、白色固体のジアリールビベンゾフラノン誘導体を得た。収量は562mg、収率は32%であった。
反応容器に3−ヒドロキシプロポキシ基を有するジアリールビベンゾフラノン1.00g, 1.26mmol)、塩化メチレン3.00mL、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.69mL, 2.78mmol)を入れ、ジラウリン酸ジブチルすずを一滴加え、窒素雰囲気下、室温で13時間撹拌した。酢酸エチル/ヘキサン(1/3,
v/v)を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製を行った。収量は0.61g、収率は38%であった。
合成した化合物(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28)、(29)について、それぞれの粉末を乳鉢で1分間ほど磨り潰したところ、いずれも、白色(または淡黄色)から青色(または青紫色)に変化し、メカノクロミック性を有することが示された。
実施例2に記載の合成法と同様の方法により、DABBF構造を有するウレタン構造を繰り返し単位とするポリマーとして、図6に示す構造式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)を繰り返し単位とするポリマー(mは10〜20)を合成した。それぞれのポリマーの粉末を乳鉢で1分間ほど磨り潰したところ、いずれも、白色(または淡黄色)から青色(または青紫色)に変化し、メカノクロミック性を有することが示された。
Claims (8)
- 下記の式(1)で表されるジアリールビベンゾフラノン構造が部位Xを介してウレタン結合またはエステル結合しているウレタン構造またはエステル構造を繰り返し単位とするポリマーから構成されることを特徴とするメカノクロミック材料。
- 次の式(2)で表されるウレタン構造を繰り返し単位とするポリマーから構成されることを特徴とする請求項1に記載のメカノクロミック材料。
- 次の式(3)で表されるウレタン構造を繰り返し単位とするポリマーから構成されることを特徴とする請求項1に記載のメカノクロミック材料。
- 次の式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)または(10)で表されるウレタン構造を繰り返し単位とするポリマーから構成されることを特徴とする請求項1に記載のメカノクロミック材料。
- 次の式(11)で表されるエステル構造を繰り返し単位とするポリマーから構成されることを特徴とする請求項1に記載のメカノクロミック材料。
- 次の式(12)で表されるジアリールビベンゾフラノン構造を有するメカノクロミック化合物から成ることを特徴とするメカノクロミック材料。
- R2およびR3の末端に水酸基が結合していることを特徴とする請求項6に記載のメカノクロミック材料。
- 次の式(13)、(14)または(15)で表されることを特徴とする請求項6に記載のメカノクロミック材料。
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