以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における発電素子1の斜視図である。なお、図1の矢印X,Y,Zは、発電装置1の軸方向、幅方向、高さ方向をそれぞれ示している(図2、図5、図6及び図7において同じ)。図1に示すように発電装置1は、第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30と、それら単位素子10,20,30の軸方向両端にそれぞれ取着される一対の保持部材50とを備えて構成される。
第1単位素子10は、磁歪材料から構成される磁歪棒11と、磁性材料から構成されると共に磁歪棒11に並設される剛性棒12と、磁歪棒11に巻回されるコイル13と、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向両端にそれぞれ取着される固定部材14とを備えている。第2単位素子20及び第3単位素子30も、第1単位素子10と同様に、磁歪材料から構成される磁歪棒21,31と、磁性材料から構成されると共に磁歪棒21,31に並設される剛性棒22,32と、磁歪棒21,31に巻回されるコイル23,33と、磁歪棒21,31及び剛性棒22,32の軸方向両端にそれぞれ取着される固定部材24,34とをそれぞれ備えている。
単位素子10,20,30は、磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の軸方向(X方向)一端側および他端側にそれぞれ取着された固定部材14,24,34が、保持部材50の幅方向(Y方向)に列設された孔部51,52,53に嵌装される。これにより単位素子10,20,30は、発電装置1の幅方向(Y方向)に並んで配置されると共に、一括して保持部材50に取着される。本実施の形態では、第2単位素子20は第1単位素子10及び第3単位素子30の間に配置される。第1単位素子10及び第3単位素子30は、磁歪棒11,31が剛性棒12,32に対して高さ方向(Z方向)下側に配置され、第2単位素子20は、磁歪棒21が剛性棒22に対して高さ方向(Z方向)上側に配置されている。
次に図2から図4を参照して、第1単位素子10について詳細に説明する。図2は図1のII−II線における発電装置1の断面端面図である。なお、図2では、永久磁石41,42の磁極の向きの理解を容易にするため、その磁性を「N」「S」の表記を利用して便宜的に図中に図示する。図3(a)は固定部材14の正面図であり、図3(b)は図3(a)の矢印IIIb方向視における固定部材14の側面図であり、図4(a)は磁歪棒11の平面図であり、図4(b)は図4(a)の矢印IVb方向視における磁歪棒11の側面図である。
図2に示すように第1単位素子10は、磁歪棒11及び剛性棒12と、磁歪棒11に巻回されるコイル13と、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向一端側(図2左側)及び他端側(図2右側)においてこれら磁歪棒11及び剛性棒12の対向間に挟装される一対の永久磁石41,42と、永久磁石41,42をそれぞれ固定しつつ磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着される固定部材14とを備えている。保持部材50に形成された孔部51に固定部材14が嵌装されることで、磁歪棒11及び剛性棒12の対向間に永久磁石41,42が挟装された状態に保持される。本実施の形態では、磁歪棒11及び剛性棒12は同一の形状および寸法に設定されている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、磁歪棒11は、厚さ(図4(b)上下方向寸法)に対して幅(図4(a)上下方向寸法)が大きな断面長方形(即ち、断面が長辺(幅方向に沿う辺)及び短辺(厚さ方向に沿う辺)を有する長方形)から長尺板状に形成される。磁歪棒11及び剛性棒12は、互いに略同一形状(寸法)に形成されると共に、面積が大きな面(図4(a)紙面手前側または紙面奥側の面)同士を高さ方向(Z方向)に対向させて平行に配置される。なお、剛性棒12は、磁歪棒11よりも磁歪効果の低い磁性材料から構成される。本実施の形態では、磁歪棒11が鉄ガリウム合金から、剛性棒12が鉄鋼材料から、それぞれ構成される。
図2に戻って説明する。コイル13は、銅線から構成される線材(導線)を螺旋状に磁歪棒11に巻回したものであり、コイル13と磁歪棒11との間に隙間が設けられる。本実施の形態では、コイル13は自己融着線からなる導線同士が接着固定された空芯コイルであり、磁歪棒11の断面形状に応じて扁平した断面略楕円の筒状に形成されている。
永久磁石41,42は、磁歪棒11及び剛性棒12にバイアス磁界を付与するための部材であり、それぞれ断面矩形の棒状に形成される。なお、永久磁石41,42は、固定部材14の挟持対向部16,17の対向方向(図2上下方向)の寸法が厚さ寸法とされる。また、規制部19(図3(b)参照)の突設長さ(図3(b)左右方向寸法)が幅寸法とされる。
永久磁石41,42は、互いに磁極を違えて配設される。即ち、永久磁石41は、磁歪棒11を吸着する面側(図2下側)にN極、剛性棒12を吸着する面側(図2上側)にS極が配置される一方、これとは反対に、永久磁石42は、磁歪棒11を吸着する面側にS極、剛性棒12を吸着する面側にN極が配置される。
これにより、磁歪棒11と、剛性棒12と、永久磁石41,42とにより磁気閉回路が形成され、永久磁石41,42の起磁力によるバイアス磁界が磁歪棒11に付与される。その結果、磁歪棒11の磁化容易方向(磁化の方向または磁化が生じ易い方向)が、磁歪棒11の軸方向(長手方向、X方向)に設定される。
固定部材14は、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着される部材であり、保持部材50は、固定部材14が圧入されるブロック状の部材である。固定部材14及び保持部材50は、非磁性材料(本実施の形態では、アルミニウム合金)から構成される。
図3(a)及び図3(b)に示すように、固定部材14は、平板状に形成されるベース部15と、そのベース部15の側面(図3(a)右側側面)から突設されると共に所定間隔を隔てて対向する挟持対向部16,17と、それら挟持対向部16,17の対向間に位置しつつベース部15の側面から突設される連結部18と、連結部18の先端側側面から突設されると共に挟持対向部16,17の対向間に位置する規制部19とを備える。なお、固定部材14は、高さ方向(図3(a)上下方向)中央に位置する仮想平面(図示せず)に対して面対称に形成される。
挟持対向部16,17は、磁歪棒11及び剛性棒12を永久磁石41,42へ向かう方向に挟み込んで挟持する部位であり(図2参照)、対向面16a,16b及び対向面17a,17bがそれぞれ対向して形成される。対向面16a,16b及び対向面17a,17bの対向間に形成される空間に、磁歪棒11、剛性棒12及び永久磁石41,42がそれぞれ収容される(図2参照)。
なお、対向面16a,17aは互いに平行とされ、それら対向面16a,17aの対向間隔(図3(a)上下方向の寸法)は、磁歪棒11、剛性棒12及び永久磁石41,42の厚さ(図2上下方向寸法)の合計よりも所定量(本実施の形態では0.02mm)だけ大きくされる。同様に、対向面16b,17bは互いに平行とされ、それら対向面16b,17bの対向間隔は、永久磁石41,42の厚さよりも所定量(本実施の形態では0.02mm)だけ大きくされる。
ベース部15及び挟持対向部16,17(即ち固定部材14)の上面側および下面側(図3(a)上側または下側)には、保持部材50の孔部51(図2参照)へ固定部材14を圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面16c,17cがそれぞれ形成される。傾斜面16c,17cは、規制部24からベース部15へ向かうに従って互いに異なる方向に傾斜(図3(a)に示す側面視において、傾斜面16cは下降傾斜、傾斜面17cは上昇傾斜)する傾斜面として形成される。この傾斜(勾配)によって、固定部材14(ベース部15及び挟持対向部16,17)は、図3(a)に示す側面視において、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向中央から軸方向端部へ向かうに従って先細りとなる形状に形成される。
連結部18は、挟持対向部16,17の対向面16a,17a間に規制部19を配置するための部位であり、挟持対向部16,17とそれぞれ間隔をあけてベース部15から突設される。規制部19は、図3(a)に示す側面視形状が矩形とされる部位であり、挟持対向部16,17の対向面16a,17aに対して各対向面19a,19bが所定の間隔を隔てて配設される。規制部19の対向面19aと挟持対向部16の対向面16aとの間隔(図3(a)及び図3(b)上下方向寸法)は、剛性棒12の厚さ(図2上下方向寸法)と同等または若干大きくされる。また、規制部19の対向面19bと挟持対向部17の対向面17aとの間隔(図3(a)及び図3(b)上下方向寸法)は、磁歪棒11の厚さ(図2上下方向寸法)と同等または若干大きくされる。これにより対向面17aと対向面19bとの間に、磁歪棒11の軸方向一端側および他端側に形成された根元部11a,11b(図4(a)及び図4(b)参照)を挿入できる。同様に、剛性棒12の軸方向一端側および他端側を対向面16aと対向面19aとの間に挿入できる。
規制部19は、対向面19a,19b間の厚さが、永久磁石41,42の厚さよりも大きくされる。なお、本実施の形態では、規制部19の厚さが、ベース部15側に位置する対向面16b,17bの対向間隔(図3(a)上下方向寸法)と同等に設定される。また、挟持対向部16,17及び規制部19は、ベース部15の反対側に位置する端面(図3(a)右側の面)が面一に形成されると共に、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向に垂直な平坦面として形成される(図2参照)。
図2に戻って説明する。保持部材50は、略直方体形状の部材であり、固定部材14が圧入される孔部51が形成される。孔部51は、固定部材14の傾斜面16c,17c(図3(a)参照)に対応して、高さ方向(Z方向)に対向する内面に、固定部材14を圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面が形成される。
次に図1、図2及び図5を参照して、発電素子1の組立方法について説明する。図5は単位素子10,20,30の配置と磁束密度の向きとの関係を示す発電装置1の模式図である。なお、図5は、一対の保持部材50の内の一方の保持部材50に固定された各単位素子10,20,30の軸方向一端側(図2左側)を、軸方向視において模式的に図示する。・及び×は磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の内部に発生した磁束密度の向きを示し、・は紙面奥側から手前側の向き、×は紙面手前側から奥側の向きを意味する(図6、図7において同じ)。また、N及びSは永久磁石41の磁極を意味する(図6、図7において同じ)。
図2に示すように発電素子1を組み立てるには、まず、自己融着線からなる導線同士が接着固定されたコイル13(空芯コイル)に磁歪棒11を挿通し、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向一端側を固定部材14の挟持対向部16,17と規制部19との間に挿入する。次に、永久磁石41を固定部材14の収容空間(磁歪棒11及び剛性棒12の対向間)に配設する。永久磁石41は、N極側が磁歪棒11へ吸着され、S極側が剛性棒12へ吸着される。次いで、接着剤により永久磁石41を固定部材14へ接着固定する。
同様に、磁歪棒11及び剛性棒12の軸方向他端側を固定部材14の挟持対向部16,17と規制部19との間に挿入し、永久磁石42を固定部材14の収容空間(磁歪棒11及び剛性棒12の対向間)に配設する。永久磁石42は、S極側が磁歪棒11へ吸着され、N極側が剛性棒12へ吸着される。次いで、接着剤により永久磁石42を固定部材14へ接着固定して、第1単位素子10が組み立てられる。なお、永久磁石41,42は接着剤によって固定部材14に接着しなくても良い。以上のようにして組み立てた第1単位素子10と同様に、第2単位素子20及び第3単位素子30を組み立てる。
次いで図1に示すように、磁歪棒11及び剛性棒12が高さ方向(Z方向)に並ぶように、第1単位素子10の軸方向一端側の固定部材14を、保持部材50の孔部51へ圧入する。次に、第1単位素子10の固定部材14が圧入された孔部51の隣の孔部52へ、第2単位素子20の固定部材24を圧入する。このときは、図5に示すように、第1単位素子10の磁歪棒11の隣に第2単位素子20の剛性棒22が位置するように、第2単位素子20の固定部材24を孔部52へ圧入する。剛性棒12,22にはコイル13,23が巻回されていないので、磁歪棒11と剛性棒22、剛性棒12と磁歪棒21とができるだけ近づくように、孔部51と孔部52との幅方向(Y方向)距離を小さくできる。
次いで、第2単位素子20の固定部材24が圧入された孔部52の隣の孔部53(図1参照)へ、第3単位素子30の固定部材34を圧入する。このときは、図5に示すように、第2単位素子20の磁歪棒21の隣に第3単位素子30の剛性棒32が位置するように、第3単位素子30の固定部材34を孔部53へ圧入する。剛性棒32にはコイル33が巻回されていないので、磁歪棒21と剛性棒32、剛性棒22と磁歪棒31とができるだけ近づくように、孔部52と孔部53との幅方向(Y方向)距離を小さくできる。
第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30の軸方向一端側を保持部材50の孔部51,52,53に圧入した後、別の保持部材50を用意して、第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30の軸方向他端側を、別の保持部材50の孔部51,52,53に圧入する。以上のようにして発電装置1が組み立てられる。
発電素子1は、例えば振動体(図示せず)に対し、一対の保持部材50の内の一方の保持部材50を固着すると共に他方の保持部材50を自由端とした状態で設置される。振動体の振動に伴って、磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の軸直角方向(Z方向)へ保持部材50を振り子運動(自由振動または強制振動)させて使用される。この場合、振り子運動に伴う曲げ変形により軸方向(X方向)の伸長および収縮が磁歪棒11,21,31に発生することで、磁歪棒11、21,31の軸方向と平行な方向に磁束密度が変化し、コイル13,23,33に電流が発生することで発電が行われる。
図5に示すように、各単位素子10,20,30において磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32は高さ方向(Z方向)に並設され、単位素子10,20,30は幅方向(Y方向)に並設される。そのため保持部材50が高さ方向(Z方向)に振り子運動すると、磁歪棒11,31及び剛性棒22は同時に引張力または圧縮力が作用し、剛性棒12,32及び磁歪棒21は同時に引張力または圧縮力が作用する。磁歪棒11,31及び剛性棒22に引張力が作用する時には、剛性棒12,32及び磁歪棒21に圧縮力が作用し、磁歪棒11,31及び剛性棒22に圧縮力が作用する時には、剛性棒12,32及び磁歪棒21に引張力が作用する。
その結果、第1単位素子10及び第3単位素子30の磁歪棒11,31に引張力が作用する時に第2単位素子20の磁歪棒21には圧縮力が作用し、第1単位素子10及び第3単位素子30の磁歪棒11,31に圧縮力が作用する時に第2単位素子20の磁歪棒21には引張力が作用する。しかし、磁歪棒11,21,31の磁束密度の向きは、単位素子10,20,30間で同一になるように設定されている。各単位素子10,20,30は外部に磁界を作り、この磁界は磁歪棒11,21,31の磁束密度の向きが同一のため、各単位素子10,20,30の磁化を強くする方向に働く。よって、発電装置1により発電される電力量を大きくすることができる。
また、剛性棒12,22,32にはコイルが巻回されていないので、剛性棒12,22,32に巻回されるコイルを不要にできる。よって、部品点数の削減を図ることができる。また、剛性棒12,22,32にはコイルが巻回されていないので、幅方向(Y方向)に並設される磁歪棒11、剛性棒22及び磁歪棒31が幅方向に占有するスペース、剛性棒12、磁歪棒21及び剛性棒32が幅方向に占有するスペースを小さくできる。第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30が幅方向(Y方向)に占有するスペースを小さくできるので、発電装置1の体積を小さくすることができる。よって、発電装置1の出力密度(単位体積当たりに取り出せる電力量)を大きくできる。
また、第1単位素子10のコイル13の幅方向端部と第2単位素子20のコイル23の幅方向端部とが高さ方向(Z方向)に重なり合うようにできる。同様に、第2単位素子20のコイル23の幅方向端部と第3単位素子30のコイル33の幅方向端部とが高さ方向(Z方向)に重なり合うようにできる。コイル13,23,33同士の間隔を高さ方向(Z方向)に確保できるので、発電装置1が振動したときにコイル13,23,33同士が接触することによる異音の発生を抑制できると共に、発電装置1の幅方向(Y方向)の寸法を小さくできる。
また、各単位素子10,20,30は磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の対向間に永久磁石41,42が挟装され、その状態が保持部材50により保持される。よって、発電中に磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32と永久磁石41,42との間に滑りが発生することを抑制できる。その結果、摩擦抵抗によるエネルギーの損失を抑制できる。また、各単位素子10,20,30は、保持部材50の一方に配設される永久磁石41の向きが、磁歪棒11,21,31を吸着する面の磁極が同一(本実施の形態ではN極)になるように設定されるので、磁歪棒11,21,31、剛性棒12,22,32及び永久磁石41,32をそれぞれ通る磁気閉回路を形成しつつ、磁束密度の向きを同じにできる。その結果、発電素子1の系外に磁石を配置する構造や、永久磁石や電磁石の起磁力により磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32にバイアス磁化を印加するバックヨークを設ける構造とする場合と比較して、磁束密度を増加させつつ単位素子の小型化を図ることができる。
次に図6を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、各単位素子10,20,30の磁歪棒11、剛性棒22及び磁歪棒31が幅方向(Y方向)に並設されると共に、それら磁歪棒11、剛性棒22及び磁歪棒31とそれぞれ対向する剛性棒12、磁歪棒21及び剛性棒32が、幅方向に並設される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、各単位素子10,20,30の磁歪棒11,21,31が幅方向(Y方向)に並設されると共に、それら磁歪棒11,21,31とそれぞれ対向する剛性棒12,22,32が、幅方向に並設される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第2実施の形態における発電装置101の単位素子10,20,30の配置と磁束密度の向きとの関係を示す模式図である。
図6に示すように発電素子101は、第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30の各磁歪棒11,21,31が保持部材150の高さ方向(Z方向)一方(本実施の形態では図6上側)に位置するように、第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30を一括して保持部材150に保持させる。これにより、磁歪棒11,21,31が幅方向(Y方向)に並設されると共に、それら磁歪棒11,21,31とそれぞれ対向する剛性棒12,22,32が、幅方向(Y方向)に並設される。
発電素子101は、例えば振動体(図示せず)に対し、一対の保持部材150の内の一方の保持部材150を固着すると共に他方の保持部材150を自由端とした状態で設置される。振動体の振動に伴って、磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の軸直角方向(Z方向)へ保持部材150を振り子運動(自由振動または強制振動)させて使用される。この場合、振り子運動に伴う曲げ変形により軸方向(X方向)の伸長および収縮が磁歪棒11,21,31に発生することで、磁歪棒11、21,31の軸方向と平行な方向に磁束密度が変化し、コイル13,23,33に電流が発生することで発電が行われる。
図6に示すように、各単位素子10,20,30において磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32は高さ方向(Z方向)に並設され、単位素子10,20,30は幅方向(Y方向)に並設される。そのため保持部材150が高さ方向(Z方向)に振り子運動すると、磁歪棒11,21,31は同時に引張力または圧縮力が作用し、剛性棒12,22,32は同時に引張力または圧縮力が作用する。磁歪棒11,21,31に引張力が作用するときには剛性棒12,22,32に圧縮力が作用し、磁歪棒11,21,31に圧縮力が作用するときには剛性棒12,22,32に引張力が作用する。
本実施の形態によれば、磁歪棒11,21,31の磁束密度の向きは、単位素子10,20,30間で同一になるように設定されている。各単位素子10,20,30は外部に磁界を作り、この磁界は磁歪棒11,21,31の磁束密度の向きが同一のため、各単位素子10,20,30の磁化を強くする方向に働く。よって、発電装置101により発電される電力量を大きくすることができる。
また、単位素子10,20,30は軸方向両端に一対の保持部材150が取着され、磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32がそれぞれ並設される方向(Z方向)と直交する方向(Y方向)に並んで複数が配置される。複数の単位素子10,20,30は、それぞれ一括して一対の保持部材150に取着される。
ここで、単位素子10,20,30を別々に振動体(図示せず)に設置する場合には、各単位素子10,20,30が独立して振動できるように(他の単位素子10,20,30に干渉しないように)、単位素子10,20,30間に適当な間隔を設ける必要がある。その場合には、単位素子10,20,30間に設ける隙間の分だけ占有スペースが大きくなるという問題が生じる。
これに対し本実施の形態によれば、複数の単位素子10,20,30は一括して保持部材150に取着されるので、単位素子10,20,30を同調して振動させることができる。そのため、各単位素子10,20,30が独立して振動できるような隙間を設ける必要がないので、単位素子10,20,30間の隙間を小さくできる。その結果、単位素子10,20,30を独立して複数設ける場合と比較して、発電装置101の占有スペースを小さくできる。
また、保持部材150が振動することによって複数の単位素子10,20,30の磁気閉回路に生じる磁束密度の向きが同一になるように磁歪棒11,21,31、剛性棒12,22,32及び永久磁石41,42が配置されるので、単位素子10,20,30が外部に作る磁界が影響し合って単位素子10,20,30の内部に生じる磁束密度が減少することを防止できる。その結果、発電装置101は占有スペースを小さくしつつ磁束密度の減少を防止できるので、出力密度を向上できる。
次に図7を参照して、比較例における発電装置201について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7は比較例における発電装置201の単位素子210,20,230の配置と磁束密度の向きとの関係を示す模式図である。
図7に示すように、比較例における発電素子201を構成する第1単位素子210は、コイル13が巻回される磁歪棒11と剛性棒12との対向間(軸方向一端側)に永久磁石41(図2参照)が装着される。永久磁石41は、N極側が剛性棒12へ吸着され、S極側が磁歪棒11へ吸着される。同様に、磁歪棒11と剛性棒12との対向間(軸方向他端側)に永久磁石42(図2参照)が装着される。永久磁石42は、S極側が剛性棒12へ吸着され、N極側が磁歪棒11へ吸着される。これにより第1単位素子210が組み立てられる。第3単位素子230も第1単位素子210と同様に組み立てられる。
次いで図7に示すように、磁歪棒11及び剛性棒12が高さ方向(Z方向)に並ぶように、第1単位素子210の軸方向一端側を保持部材50へ圧入する。次に、第1単位素子210が保持部材50へ圧入された隣へ第2単位素子20を圧入する。このときは、第1単位素子210の磁歪棒11の隣に第2単位素子20の剛性棒22が位置するように、第2単位素子220を配置する。次いで、第2単位素子20が保持部材50へ圧入された隣へ第3単位素子230を圧入する。このときは、第2単位素子20の磁歪棒21の隣に第3単位素子230の剛性棒32が位置するように、第3単位素子230を配置する。
第1単位素子210、第2単位素子20及び第3単位素子230の軸方向一端側を保持部材50へ圧入した後、別の保持部材50を用意して、第1単位素子210、第2単位素子20及び第3単位素子230の軸方向他端側を、別の保持部材50へ圧入する。以上のようにして比較例における発電装置201が組み立てられる。
発電素子201は、例えば振動体(図示せず)に対し、一対の保持部材50の内の一方の保持部材50を固着すると共に他方の保持部材50を自由端とした状態で設置される。振動体の振動に伴って、磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の軸直角方向(Z方向)へ保持部材50を振り子運動(自由振動または強制振動)させて使用される。この場合、振り子運動に伴う曲げ変形により軸方向(X方向)の伸長および収縮が磁歪棒11,21,31に発生することで、磁歪棒11、21,31の軸方向と平行な方向に磁束密度が変化し、コイル13,23,33に電流が発生することで発電が行われる。
図7に示すように、各単位素子210,20,230において磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32は高さ方向(Z方向)に並設され、単位素子210,20,230は幅方向(Y方向)に並設される。そのため保持部材50が高さ方向(Z方向)に振り子運動すると、磁歪棒11,31及び剛性棒22は同時に引張力または圧縮力が作用し、剛性棒12,32及び磁歪棒21は同時に引張力または圧縮力が作用する。磁歪棒11,31及び剛性棒22に引張力が作用する時には、剛性棒12,32及び磁歪棒21に圧縮力が作用し、磁歪棒11,31及び剛性棒22に圧縮力が作用する時には、剛性棒12,32及び磁歪棒21に引張力が作用する。
比較例によれば、磁歪棒11,31の磁束密度の向きは、磁歪棒21の磁束密度の向きと異なるように設定されている。各単位素子210,20,230は外部に磁界を作り、第2単位素子20には、第1単位素子210及び第3単位素子230によって、磁歪棒21の内部の磁束密度の向きとは逆向きの外部磁界が加わる。これにより第2単位素子20は、磁束密度が変化し減磁される。よって、比較例における発電装置201は、第1実施の形態および第2実施の形態で説明した発電装置1,101より発電される電力量が小さくなる。
第1実施の形態および第2実施の形態における発電装置1,101によれば、各単位素子10,20,30が作る外部磁界によって各単位素子10,20,30が減磁されることを防止できる。よって、発電装置1,101によれば出力密度を向上できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、発電装置1,101が有する単位素子10,20,30の数は3つに限定するものではなく、2つ以上(複数)であれば、上記実施の形態と同様の作用・効果を実現できる。
上記各実施の形態では、保持部材50,150に固定部材14を圧入して発電素子1,101を組み立てる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、保持部材50,150と固定部材14とを一体に形成しても良い。なお、この場合には圧入による磁歪棒11等の挟圧保持作用を得られないため、磁歪棒11等の保持部材50,150への固着を接着剤による接着固定で行う。
上記各実施形態では、磁歪棒11,21,31のみにコイル13,23,33を巻回する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるのもではなく、磁歪棒11,21,31と剛性棒12,22,32との両者にそれぞれコイル13,23,33を巻回しても良い。
上記各実施形態では、各単位素子を、第1単位素子10、第2単位素子20及び第3単位素子30を例示して説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、「磁歪材料から構成される磁歪棒と、その磁歪棒に巻回されるコイルとを備え、磁歪棒の軸方向一端側が固定端とされると共に軸方向他端側が自由振動可能または強制振動可能な自由端(振動端)とされ、磁歪棒が軸方向に伸長または収縮されることで、逆磁歪効果により発電を行うもの」であれば、他の発電素子を採用することは当然可能である。
他の発電素子としては、例えば、単位素子10,20,30の系外(磁歪棒と剛性棒とに挟持された永久磁石以外)からの磁場により磁気回路に漏れ磁束が発生する構成であれば、単位素子10,20,30の系外に永久磁石を配置した構成とすることは可能である。また、永久磁石の起磁力により磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32(磁歪棒)にバイアス磁化を印加するバックヨークを設けることも可能である。
上記各実施の形態では、磁歪棒11,21,31及び剛性棒12,22,32の寸法(即ち、厚み寸法および幅寸法)を同一とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、磁歪棒11,21,31の寸法に対し、剛性棒12,22,32の寸法を異なる値(厚み寸法および幅寸法の一方のみ又は両方が異なる値)としても良い。
上記各実施の形態では、磁歪棒11,21,31、剛性棒12,22,32を断面長方形に形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形状とすることは当然可能である。他の形状としては、断面正方形、断面円形、断面楕円形、断面多角形(例えば、断面六角形)などが例示される。
なお、例えば、磁歪棒11,21,31等を断面円形としたことで、永久磁石41,42と線接触となり、接触面積が確保できない場合には、永久磁石41,42の寸法または起磁力を大きくするか、或いは、磁歪棒11,21,31等と永久磁石41,42との間に磁性体からなり両者の形状に対応した形状(即ち、両者に面接触する形状)のスペーサを介在させ、接触面積を確保することが好ましい。これらにより、付与可能なバイアス磁界の増加を図ることができるからである。