以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、発電ユニット1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態における発電ユニット1の上面図である。また、図2(a)は、図1(a)の矢印IIa方向から視た発電ユニット1の部分拡大側面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向から視た発電ユニット1の部分拡大上面図である。なお、図1及び図2ではコイル31が模式的に図示される。また、図2(a)では第1ヨーク21及び第2ヨーク22が、図2(b)では第1ヨーク21が、それぞれ断面視される。
図1及び図2に示すように、発電ユニット1は、複数(本実施の形態では8個)の発電素子10を、相対的に強制並進運動(強制振動)する二部材(第1ヨーク21及び第2ヨーク22)の間に介設し、それら第1ヨーク21及び第2ヨーク22の強制並進運動に伴って各発電素子10の磁歪棒11に軸方向(長手方向)の変形を付与することで、磁歪棒11の逆磁歪効果を利用して、振動発電を行う。
なお、本実施の形態では、第1ヨーク21が自動車の車体フレームに取着され、第2ヨーク22がエンジンブラケットに取着される。また、第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、第1ヨーク21に対して第2ヨーク22が、矢印X1又はX2方向(図1紙面垂直方向、図2(a)上下方向)に相対的に直進する(強制並進運動する)。
発電素子10は、磁歪材料から構成されると共に軸方向一端(図2(a)左側)及び軸方向他端(図2(a)右側)が第1ヨーク21及び第2ヨーク22にそれぞれ支持される磁歪棒11と、その磁歪棒11に巻回されるコイル31と、磁歪棒11に磁極を違えて配設される一対の永久磁石41,42と、それら一対の永久磁石41,42を連結するバックヨーク51とを備える。
磁歪棒11は、厚み寸法(図2(a)上側の面と下側の面との間の距離)に対して高さ寸法(図2(a)紙面手前側の面と紙面奥側の面との間の距離)が大きな断面長方形の板状体であり、面積が大きな側面を強制並進運動の直進方向(図2(a)の矢印X1,X2方向)へ向けて配置される。なお、本実施の形態では、磁歪材料として、鉄ガリウム合金が採用される。
第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、非磁性材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)から同軸の円板状に形成される部材であり、第1ヨーク21に対し第2ヨーク22が大径とされる。第1ヨーク21及び第2ヨーク22には、その上面からは複数(本実施の形態では各8個)の第1支持部21a及び第2支持部22aがそれぞれ立設される。なお、第1ヨーク21及び第2ヨーク22の形状は任意であり、円板状以外の形状であっても良い。
第1支持部21a及び第2支持部22aは、磁歪棒11の軸方向端部をそれぞれ支持するための板状の部位であり、強制並進運動の直進方向(図2(a)の矢印X1,X2方向)に沿う仮想線SYを回転軸として回転対称となる位置(即ち、仮想線SY方向視において、その仮想線SYを中心とする仮想円に沿って周方向等間隔)に配設される。
よって、複数(8個)の磁歪棒11(発電素子10)は、軸方向端部が第1支持部21a及び第2支持部22aにそれぞれ支持されることで、仮想線SYを回転軸として回転対称に配設される。即ち、各磁歪棒11(発電素子10)は、図1に示す上面視(仮想線SY方向視)において、仮想線SYを中心として放射直線状に延設されると共に、周方向等間隔に配設される。
また、この場合、第1支持部21aにより磁歪棒11の軸方向一端が支持される位置と、第2支持部22aにより磁歪棒11の軸方向他端が支持される位置とが、仮想線SY方向に沿って互いに離間する位置(即ち、図2(a)において異なる高さ位置)に配置される。これにより、各磁歪棒11は、仮想線SYに直交する方向(図2(a)左右方向、即ち、仮想線SYに直交する仮想平面IP(図4参照))に対して傾斜して配設される。
第1支持部21a及び第2支持部22aによる磁歪棒11の支持(接合)は、各支持部21a,22aに凹設されたスリットに磁歪棒11の端部を挿入し、スリットの内面と磁歪棒11との間の隙間に接着剤を充填することで行われる。
ここで、図2(a)において、第1ヨーク21及び第2ヨーク22の相対的な強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向、即ち、仮想線SY方向)をX軸、その直進方向(仮想線SY方向)に直交する方向(図2(a)左右方向)をY軸と仮定した場合、この強制並進運動に伴い、磁歪棒11は、その一端(図2(a)左側)に対し他端(図2(a)右側)が、Y軸方向(図2(a)左右方向の)の変位、及び、Z軸(図2(a)紙面垂直方向)周りの回転が拘束された状態で、X軸に沿って相対的に直進される。
第1支持部21a及び第2支持部22aは、磁歪棒11が突出される面が、磁歪棒11の軸方向(長手方向)に垂直な平面として形成される。但し、これらの面を磁歪棒11の軸方向に非垂直な平面(例えば、強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向)に平行な面)としても良い。
コイル31は、銅線から構成される線材を磁歪棒11にそれぞれ巻回したコイルである。コイル31と磁歪棒11との間には隙間が設けられる。
永久磁石41,42及びバックヨーク51は、磁歪棒11にバイアス磁界を付与するための部材であり、永久磁石41,42は永久磁石から直方体状に、バックヨーク51は磁性材料から断面矩形の棒状に、それぞれ形成される。永久磁石41,42は、磁歪棒11の一端および他端における側面(図2(b)上側面)にそれぞれ磁着され、バックヨーク51は、永久磁石41,42の間に架設される。
永久磁石41及び永久磁石42は、上述したように、磁極を互いに異ならせて磁歪棒11に配設(磁着)される。即ち、永久磁石41は、磁歪棒11に接続される面側にN極、バックヨーク51に接続される面側にS極が配置される一方、永久磁石42は、磁歪棒11に接続される面側にS極、バックヨーク51に接続される面側にN極が配置される。
これにより、磁歪棒11と、永久磁石41,42と、バックヨーク51とにより磁気ループが形成され、永久磁石41,42の起磁力によるバイアス磁界が磁歪棒11に付与される。その結果、磁歪棒11の磁化容易方向(磁化の方向または磁化が生じ易い方向)が、磁歪棒11の軸方向(長手方向)に設定される。
なお、永久磁石41,42は、バックヨーク51に固着され、両者が相対変位不能とされる一方、磁歪棒11に対しては磁着されるので、両者が相対変位可能(滑動可能)とされる。これにより、強制振動の入力時に、磁歪棒11の変形が永久磁石41,42及びバックヨーク51により妨げられることが抑制される。
ここで、本実施の形態における発電ユニット1(第1ヨーク21及び第2ヨーク22)は、強制並進運動の振幅の原点となる位置に配設される。即ち、この位置(発電ユニット1の初期位置)では、磁歪棒11に外力が作用せず、無負荷状態とされる。また、この初期位置を基点として、正側および負側(矢印X1方向または矢印X2方向)に同一振幅が入力される。
発電ユニット1によれば、強制振動の入力により、第1ヨーク21に対して第2ヨーク22が相対的に強制並進運動(矢印X1,X2方向への直進運動)されると、複数の発電素子10の各磁歪棒11がそれぞれ収縮または伸張され、その逆磁歪効果を利用して、発電を行うことができる。
この場合、発電ユニット1は、複数の発電素子10における各磁歪棒11を、強制並進運動の直進方向に沿う仮想線SYを回転軸として回転対称に配設する(即ち、図1に示す上面視において、各磁歪棒11が仮想線SYを中心として周方向等間隔の放射直線状に配設される)ので、それら各磁歪棒11に発生する反力同士を互いに打ち消し合わせることができる。よって、発電ユニット1全体として、その力の釣り合いを均一な状態として、第1ヨーク21及び第2ヨーク22(即ち、第1ヨーク21及び第2ヨーク22が取着される相手部材)の相対的な直進運動が妨げられることを抑制できる。
更に、このように、各磁歪棒11が仮想線SYを中心として周方向等間隔に配設されることで、第1ヨーク21に対する第2ヨーク22の相対的な強制並進運動の方向がずれた場合でも、複数(本実施の形態では8個)の磁歪棒11の内のいずれかに軸方向の変形を付与して、磁束密度の変化を発生させることができ、その結果、発電を可能とすることができる。
また、発電ユニット1は、複数の発電素子10における各磁歪棒11を、強制並進運動の直進方向(仮想線SY方向)に直交する方向(仮想平面IP(図4参照))に対して傾斜させて配設するので、その傾斜の分、各磁歪棒11にそれぞれ軸方向への変形を付与することができる。即ち、1の磁歪棒11の全体としての変形を、軸方向への伸張または収縮とすることができるので、発電に必要な磁束密度の変化を得ることができ、その結果、強制振動においても、より効率の良い発電を可能とすることができる。
次いで、図3及び図4を参照して、磁歪棒11の傾斜角度(仮想線SYに直交する仮想平面IPに対する傾斜角度)の設定方法について説明する。図3は、磁歪材料に作用する応力とその応力作用時の磁束密度との関係を図示するグラフであり、図4は、磁歪棒11の側面模式図である。なお、図3では、実測値の内の代表的な3つの特性のみを図示する。また、図4は、図2(a)に対応する。
図3に特性S1,S2,S3として図示するように、磁歪材料(磁歪棒11)の磁束密度は、付与される応力(図3では圧縮応力)の値によって変化すると共に、その応力の変化に対する磁束密度の変化の態様は、永久磁石41,42により付与される磁歪棒11のバイアス磁界の大きさに応じて異なる。なお、特性S1,S2,S3のそれぞれのバイアス磁界は、7.8kA/m、23.4kA/m及び39.0kA/mである。
発電ユニット1の発電効率を高めるためには、磁歪棒11に作用する応力の変化に対して、磁束密度の変化が大きな領域(即ち、傾きが大きい領域)で使用されることが好ましい。また、発電ユニット1は、上述したように、強制並進運動の振幅の原点において無負荷状態とされるので、図3の原点付近(即ち、応力が0MPa)から磁束密度が大きく変化する特性であることが好ましい。
この点より、図3に図示される3つの態様であれば、原点付近から傾きの大きな線形領域を得ることのできる特性S1が好ましい。なお、バイアス磁界を特性S1の場合(7.8kA/m)よりも小さくした場合には、磁束密度の変化が飽和する(即ち、傾きが小さくなる)最大応力(特性S1の場合は約50MPa)が小さくなり、使用できる(即ち、発電に寄与する)応力範囲が狭くなる。
このように、使用する磁歪材料を用いて、図3に示す応力と磁束密度の関係を作成することで、磁歪棒11に付与すべきバイアス磁界の大きさを決定することができ、本実施の形態では、特性S1が採用され、バイアス磁界の大きさが7.8kA/mと決定される。その結果、使用すべき永久磁石41,42の特性、及び、磁歪棒11に付与すべき最大応力(約50MPa)を得ることができる。
図4に示すように、磁歪棒11の軸方向(長手方向)の長さ寸法(第1支持部21a及び第2支持部22aによる支持部位間の距離)をL、強制振動により入力される振幅(図2(a)の矢印X1方向の振幅)をD、仮想線SY(図2(a)参照)に直交する仮想平面IPに対する磁歪棒11の傾斜角度をθ、と定義する。
この場合、磁歪棒11の軸方向の収縮量(たわみ量)は、D×sinθであるので、磁歪棒11の軸方向のひずみεは、ε=D×sinθ/Lとなり、よって、磁歪棒11の軸方向の応力(圧縮応力)は、σ=E×ε=E×(D×sinθ/L)となる(以下「式1」と称す)。なお、Eは、磁歪棒11のヤング率(本実施の形態ではE=70000N/平方mm)である。
上述したように、本実施の形態では、磁歪棒11に作用すべき応力σの最大値は50MPaである(即ち、磁歪棒11に0MPa〜50MPaの範囲での応力変動を付与する形態が、磁束密度の変化が大きくなり、最も発電効率が良い。図3参照)。よって、式1において、応力σが50MPaとなるように、振幅D、傾斜角度θ及び磁歪棒11の長さ寸法Lをそれぞれ設定することで、傾斜角度θが決定される。
なお、発電素子10の使用環境(即ち、第1ヨーク21及び第2ヨーク22の間隔および相対変位量)により振幅D及び磁歪棒11の長さ寸法Lがそれぞれ確定している場合には、傾斜角度θが一の値に決定される。
次いで、図5から図8を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、磁歪棒11の両端が回転不能に固着される場合を説明したが、第2実施の形態における磁歪棒11は、その両端が回転可能に軸支される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図5は、第2実施の形態における発電ユニット201の上面図である。また、図6(a)は、図5(a)の矢印VIa方向から視た発電ユニット201の部分拡大側面図であり、図5(b)は、図5(a)の矢印VIb方向から視た発電ユニット201の部分拡大上面図である。
第2実施の形態では、第1ヨーク21及び第2ヨーク22の上面から複数(本実施の形態では各8個)の第1支持部221a及び第2支持部222aがそれぞれ立設され、それら第1支持部221a及び第2支持部222aに、第1取着部221b及び第2取着部222bがそれぞれ回転可能に軸支されると共に、第1取着部221b及び第2取着部222bに、発電素子10(磁歪棒11)の両端がそれぞれ取着(支持)される。
第1支持部221a及び第2支持部222aは、第1実施の形態の場合と同様に、強制並進運動の直進方向(図6(a)の矢印X1,X2方向)に沿う仮想線SYを回転軸として回転対称となる位置(即ち、図5に示す仮想線SY方向視において、その仮想線SYを中心として周方向等間隔の放射直線状)に配設される。
よって、これら第1支持部221a及び第2支持部222aに支持される複数(8個)の磁歪棒11(発電素子10)も、仮想線SYを回転軸として回転対称に配設される。即ち、各磁歪棒11(発電素子10)は、第1実施の形態の場合と同様に、図5に示す上面視(仮想線SY方向視)において、仮想線SYを中心として放射直線状に延設されると共に、周方向等間隔に配設される。
第1取着部221b及び第2取着部222bは、非磁性材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)から構成される部材である。この第1取着部221b及び第2取着部222bによる磁歪棒11の支持(接合)は、各取着部221b,222bに凹設されたスリットに磁歪棒11の端部を挿入し、スリットの内面と磁歪棒11との間の隙間に接着剤を充填することで行われる。
第1取着部221b及び第2取着部222bには、磁歪棒11の軸方向端面に対向する位置に転がり軸受BRが配設される。転がり軸受BRは、各取着部221b,222bの受入穴に圧入される外輪と、その外輪の内周に位置し軸AXが固着される内輪と、それら内輪および外輪の間に転動可能に配設される転動体とを備える。本実施の形態では、転がり軸受BRが玉軸受として構成され、ラジアル荷重およびアキシャル荷重の両方を支持可能とされる。
転がり軸受BRは、その回転軸を、強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向)と直交する方向(図6(a)紙面垂直方向)に向けた姿勢で第1取着部221b及び第2取着部222bにそれぞれ配設されると共に、磁歪棒11の軸方向(長手方向)の延長線上に位置する。即ち、例えば、磁歪棒11の両端に配設される転がり軸受BRの回転軸をそれぞれ含む仮想平面は、磁歪棒11の厚み方向(図6(a)上下方向寸法)中央に位置する。
第1支持部221a及び第2支持部222aには、軸AXがそれぞれ固着されると共に各軸AXが側面から突設される。各軸AXは、第1取着部221b及び第2取着部222bの転がり軸受BRの内輪にそれぞれ固着される。これにより、各取着部221b,222b(磁歪棒11の両端)が、第1支持部221a及び第2支持部222aに回転可能に軸支される。
よって、第2実施の形態では、図6(a)において、強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向、即ち、仮想線SY方向)をX軸、その直進方向(仮想線SY方向)に直交する方向(図6(a)左右方向)をY軸と仮定した場合、磁歪棒11(及び両取着部221b,222b)は、その一端(図6(a)左側)に対し他端(図6(a)右側)が、Y軸方向(図6(a)左右方向の)の変位が拘束された状態で、X軸に沿って相対的に直進される。一方、Z軸(図6(a)紙面垂直方向、即ち、軸AX)周りの回転は拘束されず、転がり軸受BRにより回転可能とされる。即ち、磁歪棒11には、軸方向への伸張または収縮のみが付与される。
このように、発電ユニット201によれば、磁歪棒11の一端および他端に取着される第1取着部221b及び第2取着部222bが、転がり軸受BRを介して、第1支持部221a及び第2支持部222aにそれぞれ回転可能に軸支されるので、回転方向の拘束(回転トルクの伝達)を抑制し、その分、磁歪棒11がS字状に変形することを抑制できる。これにより、1の磁歪棒において伸張する部分と収縮する部分とが形成され、これらが磁束密度の変化を打ち消し合うことを抑制できるので、発電に必要な磁束密度の変化を得ることができ、その結果、強制振動においても、発電を可能とすることができる。
また、このように、磁歪棒11(各取着部221b,222b)が、転がり軸受BRを介して、第1支持部221a及び第2支持部222aに回転可能に軸支されることで、その分、磁歪棒11をS字状に変形させる力(即ち、発電に寄与しない変形に要する力)を少なくできる。その結果、より少ない力で磁歪棒11に軸方向への変形を付与することができるので、発電効率の向上を図ることができる。
ここで、第1支持部221aにより第1取着部221b(磁歪棒11の軸方向一端)が回転可能に軸支される位置と、第2支持部222aにより第2取着部222b(磁歪棒11の軸方向他端)が回転可能に軸支される位置とが、仮想線SY方向に沿って互いに離間する位置(即ち、図6(a)において異なる高さ位置)に配置される。
これにより、各磁歪棒11は、仮想線SYに直交する仮想平面IP(図7参照)に対して傾斜して配設される。よって、この傾斜の分、発電ユニット201は、各磁歪棒11に軸方向への変形を付与しやすくすることができる。よって、発電に必要な磁束密度の変化を大きくして、発電効率の向上を図ることができる。
なお、発電ユニット201は、第1実施の形態の場合と同様に、第1ヨーク21及び第2ヨーク22が、強制並進運動の振幅の原点となる位置に配設される。即ち、この位置(発電ユニット201の初期位置)では、磁歪棒11に外力が作用せず、無負荷状態とされる。また、この初期位置を基点として、正側および負側(矢印X1方向または矢印X2方向)に同一振幅が入力される。
次いで、図7を参照して、仮想線SYに直交する仮想平面IP対する磁歪棒11の傾斜角度θの設定方法について説明する。図7は、磁歪棒11の上面模式図である。なお、図7は、図6(a)に対応する。
傾斜角度θの算出においては、まず、磁歪棒に付与すべきバイアス磁界の大きさ、及び、磁歪棒11に付与すべき最大応力を決定する。この決定方法については、第1実施の形態の場合と同様であるので(図3参照)、その説明は省略する。
図7に示すように、磁歪棒11の軸方向(長手方向)の長さ寸法(第1取着部221b及び第2取着部222bによる支持部位間の距離)をL、強制振動により入力される振幅(図6(a)の矢印X1方向の振幅)をD、仮想線SYに直交する仮想平面IPに対する磁歪棒11の傾斜角度をθ、と定義する。
この場合、第1実施の形態の場合と同様に、磁歪棒11の軸方向の収縮量(たわみ量)がD×sinθとなり、磁歪棒11の軸方向のひずみεがε=D×sinθ/Lとなることから、磁歪棒11の軸方向の応力(圧縮応力)は、上述した式1(即ち、σ=E×ε=E×(D×sinθ/L))となる。
よって、この式1において、応力σが、磁歪棒11に作用すべき応力σの最大値となるように、振幅D、傾斜角度θ及び磁歪棒11の長さ寸法Lをそれぞれ設定することで、傾斜角度θが決定される。なお、第1実施の形態の場合と同様に、発電素子1の使用環境により振幅D及び磁歪棒11の長さ寸法Lがそれぞれ確定している場合には、傾斜角度θが一の値に決定される。
次いで、図8を参照して、発電ユニット201(各発電素子10)のばね定数Kについて説明する。図8(a)は、仮想線SYに直交する仮想平面IPに対する磁歪棒11の傾斜角度θとその傾斜角度θでのばね定数Kとの関係を図示するグラフであり、図8(b)は、磁歪棒11の上面模式図である。なお、図8(a)は、傾斜角度θが比較的小さな領域での関係を図示するものであり、よって、特性S4,S5が模式的に直線状に図示される。
図8(a)では、本実施の形態における発電ユニット201(磁歪棒11)の傾斜角度θとばね定数Kとの関係が特性S4として、比較品の傾斜角度θとばね定数Kとの関係が特性S5として、それぞれ図示される。比較品は、軸AX及び転がり軸受BRが省略され第1取着部221b及び第2取着部222bが第1支持部221a及び第2支持部222aにそれぞれ相対変位不能に固着される点が発電ユニット201と異なり、その他は発電ユニット201と同一に構成される。
ここで、ばね定数Kとは、図8(b)に示すように、第1支持部221a(第1取着部221b)に対し第2支持部222a(第2取着部222b)を強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向)に移動させる(即ち、磁歪棒11を変形させる)際に必要な荷重をその移動量(矢印X1方向変位)で割った定数である。
比較品のばね定数Kは、次のようにして得られる。即ち、図8(b)に示すように、磁歪棒11の軸方向(長手方向)におけるばね定数Kaと、磁歪棒11の軸直角方向におけるばね定数Krとから、それら両ばね定数Ka,Krの合成ばね定数Ksを幾何学的に算出する。これにより、比較品のばね定数Kを、合成ばね定数Ksの矢印X1方向成分(=Ks×sin(θ+α))として得ることができる。
なお、ばね定数Kaは、Ka=E×S/Lにより算出され、ばね定数krは、Kr=G×S/Lにより算出される。Eは磁歪棒11のヤング率、Sは磁歪棒11の軸直角断面における断面積、Gは磁歪棒11の横弾性係数(=E/(2×(1+P)))、Pは磁歪棒11のポアソン比である。また、ばね定数Ks及び角度αは、ばね定数Ka及びばね定数Krから幾何学的に算出される(Ks=(Ka2+Kr2)1/2、α=tan−1(Kr/Ka))。
このように、比較品のばね定数Kは、K=Ks×sin(θ+α)となる。比較品は、強制並進運動(矢印X1方向変位)の入力に伴い、磁歪棒11が、軸方向への収縮だけでなく、S字状にも曲げられるため、その分、軸方向のばね定数Kaに比例する荷重だけでなく、軸直角方向のばね定数Krに比例する荷重も発生する。即ち、角度αが0にはならないため、比較品のばね定数Kは、図8(a)に特性S5で示すように、傾斜角度θが0の場合に縦軸切片(磁歪棒11をS字状に曲げるのに要する分)を有し、傾斜角度θに応じて所定の傾き(磁歪棒11を軸方向に収縮させるのに要する分)で増加する。
一方、本実施の形態における発電ユニット201は、磁歪棒11(第1取着部221b及び第2取着部222b)の一端および他端の両端が、転がり軸受BRを介して、第1支持部221a及び第2支持部222aに回転可能に軸支され、回転方向に拘束されない(回転トルクが伝達されない)ため、強制並進運動(矢印X1方向変位)の入力に伴う磁歪棒11の変形は、軸方向への収縮のみであり、S字状に曲げる変形は生じない。よって、軸方向のばね定数Kaに比例する荷重だけが発生し、軸直角方向のばね定数Krに比例する荷重は発生しない。
その結果、本実施の形態における発電ユニット201のばね定数Kは、K=Ka×sinθとなり、図8(a)に特性S4で示すように、磁歪棒11をS字状に曲げるのに要する荷重が不要となったことで、原点を通り、傾斜角度θに応じて所定の傾き(磁歪棒11を軸方向に収縮させるのに要する分)で増加する。即ち、本実施の形態における発電ユニット201のばね定数K(特性S4)は、比較品のばね定数K(特性S5)に対し、磁歪棒11をS字状に曲げるのに要する荷重が不要となった分だけ、図8(a)において下方に平行移動された特性となる。
このように、本実施の形態における発電ユニット201(特性S4)は、比較品(特性S5)に対し、強制並進運動の直進方向(矢印X1方向)におけるばね定数Kが小さくされるので、その分、磁歪棒11をS字状に変形させる力(即ち、発電に寄与しない変形に要する力)を少なくできる。その結果、より少ない力で磁歪棒11に軸方向への変形を付与することができるので、発電効率の向上を図ることができる。
次いで、図9を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、仮想線SYが回転軸となる回転対称に複数の発電素子10を配設して発電ユニット1を構成する場合を説明したが、第3実施の形態における発電ユニット301は、仮想平面IPが対称面となる面対称に複数の発電素子10が配設される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9(a)は、第3実施の形態における発電ユニット301の上面図であり、図9(b)は、発電ユニット301の側面図である。
図9に示すように、発電ユニット301は、仮想平面IPを挟んで対向配置される一対一組の発電素子10を複数組(本実施の形態では4組)備え、各組が、高さ方向(図9(b)上下方向)に順に積み重ねられた状態で、第1ヨーク321及び第2ヨーク322の間に介設される。
第1ヨーク321は、断面矩形(上面視矩形)の棒状体として形成される棒状部と、その棒状体の互いに対向する側面から外方へ向けて張り出す上面視矩形の板状体として形成される複数(本実施の形態では8個)の板状部とを備える。第2ヨーク322は、上面視矩形の板状体として形成され、第1ヨーク321の下面に所定間隔を隔てて対向配置される。これら第1ヨーク321及び第2ヨーク322は、仮想平面IPを対称面として面対称に配設される。
第1ヨーク321の板状部の上面には、それぞれ1個ずつ合計8個の第1支持部321aが配設され、第2ヨーク322の上面には、第1ヨーク321を挟んで、2個の第2支持部322aが立設される。これら第1支持部321a及び第2支持部322aは、磁歪棒11の軸方向端部をそれぞれ支持する部材であり、非磁性材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)から板状に形成されると共に、仮想平面IPを対称面として面対称に配置される。
複数(8個)の磁歪棒11(発電素子10)は、軸方向一端が第1支持部321aに、軸方向他端が第2支持部322aに、それぞれ支持される。この場合、複数組(4組)の磁歪棒11(発電素子10)は、仮想平面IPを対称面としてそれぞれ面対称に配置される。
また、この場合、第1支持部321aにより磁歪棒11の軸方向一端が支持される位置と、第2支持部322aにより磁歪棒11の軸方向他端が支持される位置とが、仮想平面IPに平行な方向(図9(b)上下方向)に沿って互いに離間する位置(即ち、図9(b)において異なる高さ位置)に配置される。これにより、各磁歪棒11は、仮想平面IPに直交する仮想平面に対して傾斜して配設される。
第1支持部321a及び第2支持部322aによる磁歪棒11の支持(接合)は、各支持部321a,322aに凹設されたスリットに磁歪棒11の端部を挿入し、スリットの内面と磁歪棒11との間の隙間に接着剤を充填することで行われる。
第2ヨーク322は、第1ヨーク321に対して、仮想平面IPに平行な方向(図9(b)上下方向)に相対的に直進する(強制並進運動する)。この場合、図9(b)において、強制並進運動の直進方向(図9(b)上下方向)をX軸、この直進方向に直交する方向(図9(b)左右方向)をY軸と仮定した場合、この強制並進運動に伴い、磁歪棒11は、その一端(第1支持部321aに支持される側)に対し他端(第2支持部322aに支持される側)が、Y軸方向(図9(b)左右方向の)の変位、及び、Z軸(図9(b)紙面垂直方向)周りの回転が拘束された状態で、X軸に沿って相対的に直進される。
ここで、本実施の形態における発電ユニット301(第1ヨーク321及び第2ヨーク322)は、強制並進運動の振幅の原点となる位置に配設される。即ち、この位置(発電ユニット1の初期位置)では、磁歪棒11に外力が作用せず、無負荷状態とされる。また、この初期位置を基点として、正側および負側(図9(b)上方向または下方向)に同一振幅が入力される。
発電ユニット301によれば、強制振動の入力により、第1ヨーク321に対して第2ヨーク322が相対的に強制並進運動(仮想平面IPに平行な方向への直進運動)されると、複数の発電素子10の各磁歪棒11がそれぞれ収縮または伸張され、その逆磁歪効果を利用して、発電を行うことができる。
この場合、複数の発電素子10は、各磁歪棒11を、強制並進運動の直進方向に平行な仮想平面IPを対称面として面対称に配設する(即ち、一対一組の磁歪棒11同士が仮想平面を挟んで対向して配設される)ので、各磁歪棒11に発生する反力同士を各組において互いに打ち消し合わせることができる。よって、発電ユニット301全体として、その力の釣り合いを均一な状態として、第1ヨーク321及び第2ヨーク322(即ち、第1ヨーク321及び第2ヨーク322が取着される相手部材)の相対的な直進運動が妨げられることを抑制できる。
次いで、図10を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、仮想線SYが回転軸となる回転対称に複数の発電素子10を配設して発電ユニット1を構成する場合を説明したが、第4実施の形態における発電ユニット401は、仮想平面IPが対称面となる面対称に複数の発電素子10が配設される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図10(a)は、第4実施の形態における発電ユニット401の上面図であり、図10(b)は、発電ユニット401の側面図である。
図10に示すように、発電ユニット401は、仮想平面IPを挟んで対向配置される一対一組の発電素子10を複数組(本実施の形態では4組)備え、各組が、幅方向(図10(a)上下方向)に所定間隔を隔てて並設された状態で、第1ヨーク421及び第2ヨーク422の間に介設される。即ち、発電ユニット401は、仮想平面IPを対称面として面対称に構成される。
なお、第4実施の形態における発電ユニット401は、第3実施の形態における発電ユニット301に対し、一対一組の発電素子10が、第3実施の形態の場合のように高さ方向(図9(b)上下方向)ではなくて、幅方向(図10(a)上下方向)に並設される点のみが異なり、他の構成は同一とされる。
よって、発電ユニット401においても、一対一組の発電素子10がそれぞれ仮想平面を挟んで対向して配設(即ち、仮想平面IPを対称面として面対称に配設)されることで、各磁歪棒11に発生する反力同士を各組において互いに打ち消し合わせることができる。よって、発電ユニット401全体として、その力の釣り合いを均一な状態として、第1ヨーク421及び第2ヨーク422(即ち、第1ヨーク421及び第2ヨーク422が取着される相手部材)の相対的な直進運動が妨げられることを抑制できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、初期位置(強制並進運動の振幅の原点にある状態)では磁歪棒11が無負荷状態とされる状態で発電素子10(発電ユニット1〜401)が使用(配置)される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、初期位置において、磁歪棒11に一定荷重が付与される状態で発電素子10を使用しても良い。即ち、磁歪棒11を軸方向に収縮させた(軸方向に圧縮応力を付与した)状態で、発電素子10を構成(使用)しても良い。
ここで、このように、磁歪棒11に初期応力(初期圧縮応力)を付与する場合には、永久磁石41,42の磁力を変更し、付与するバイアス磁界の値を設定し直す。例えば、磁歪棒11に付与される初期応力が80MPaであれば、磁歪棒11に80MPa〜130MPaの範囲での応力変動を付与できるように、バイアス磁界を23.4kA/mとする。これにより、図3の特性S2における線形領域を使用できるので、発電効率の向上を図ることができる。なお、バイアス磁界の値だけでなく、長さ寸法L等の他のパラメータも併せて変更することは当然可能である。
上記各実施の形態では、各発電ユニット1〜401には、初期位置を基点として、正側および負側に同一振幅が入力される(即ち、磁歪棒11が軸方向への収縮および伸張を周期的に繰り返す)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、初期位置を基点として各発電ユニット1〜401に入力される振幅が正側または負側の一方のみ(即ち、磁歪棒11が軸方向への収縮と回復または軸方向への伸張と回復を周期的に繰り返す)ように構成(第1ヨーク21〜421及び第2ヨーク22〜422を相手部材に配置)しても良い。
上記各実施の形態では、その説明を省略したが、発電素子10の適用対象として、自動車を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、船舶や鉄道車両などの移動体、工場設備(例えば、プレス機)などの固定物、人体などであっても良い。即ち、その移動や駆動、運動に起因して少なくとも強制振動(共生並進運動)を発生するものであれば良くその形態は限定されない。
また、第1ヨーク21及び第2ヨーク22の取り付け対象として、自動車の車体フレーム及びエンジンブラケットを例示したが、これに限られるものではない。例えば、自動車の車体フレーム及びサスペンションアーム、自動車の車体フレームとドア、などであっても良い。いずれの場合であっても、第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、例えば、車体フレーム及びエンジンブラケットに直接配設される必要はない。即ち、車体フレーム及びエンジンブラケットは必ずしも強制並進運動のみを発生させるものではないので、車体フレームに対するエンジンブラケットの相対移動に伴い強制並進運動する二部材を備えた構造体を設け、その構造体の二部材に第1ヨーク21及び第2ヨーク22をそれぞれ配設することが好ましい。
上記第1実施の形態では、第1支持部21a及び第2支持部22aに凹設されたスリットに磁歪棒11の端部を挿入し、スリットの内面と磁歪棒11との間の隙間に接着剤を充填することで、両者を接合する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1支持部21a及び第2支持部22aを圧縮変形させ、スリットの内面を磁歪棒11に密着させる方法や、各支持部21a,22aと磁歪棒11とを締結ねじにより締結固定する方法、或いは、これらを組み合わせた方法であっても良い。第2から第4実施の形態における磁歪棒11と各取着部221b,222b又は各支持部321a,322a,421a,422aとの接合についても同様である。
上記第1及び第2実施の形態では、仮想線SYを回転軸として回転対称となる位置に配設される発電素子10の配設数が偶数個である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、仮想線SYを回転軸として回転対称となる位置に配置されれば、発電素子10の配設個数は奇数個であっても良い。奇数個であっても、各発電素子10(磁歪棒11)に発生する反力同士を互いに打ち消し合わせて、発電ユニット1全体として、その力の釣り合いを均一な状態とすることができる。
上記第2実施の形態では、転がり軸受BRが、第1取着部221b及び第2取着部222aに配設されると共に、軸AXが、第1支持部221a及び第2支持部222aに配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これとは逆に、転がり軸受BRが、第1支持部221a及び第2支持部222aに配設され、軸AXが、第1取着部221b及び第2取着部222bに配設される構成であっても良い。
上記第2実施の形態では、転がり軸受BRが玉軸受として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の種類の転がり軸受であっても良い。他の種類の転がり軸受としては、例えば、ころ軸受、針軸受、円錐ころ軸受、球面ころ軸受、スラスト軸受などが例示される。
上記第2実施の形態では、転がり軸受BRを使用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、転がり軸受BRを省略しても良い。即ち、磁歪棒11(第1取着部221b及び第2取着部222b)の一端または他端が、第1支持部221a又は第2支持部222aに回転可能に軸支されていれば足りる趣旨である。よって、転がり軸受BRに代えて、滑り軸受を採用しても良い。或いは、軸AXを、第1取着部221b又は第2取着部222bの受入穴が直接軸支しても良い。
上記第2実施の形態では、磁歪棒11(第1取着部221b及び第2取着部222b)の一端および他端の両端を、第1支持部221a及び第2支持部222aに回転可能に軸支する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一端または他端の一方のみを回転可能とし、一端または他端の他方は回転不能に固着する構成であっても良い。
上記第3実施の形態および第4実施の形態に、第2実施の形態における回転軸支構造を適用しても良い。即ち、第3実施の形態または第4実施の形態において、磁歪棒11の端部に、第2実施のおける第1取着部221b及び第2取着部222bを取着し、それら第1取着部221b及び第2取着部222bを、軸AX及び転がり軸受BRを介して、第1支持部321a,421a及び第2支持部322a,422aに回転可能に軸支させても良い。
上記各実施の形態では、複数の発電素子10のそれぞれの傾斜方向が同一である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、傾斜方向が異なるものを組み合わせても良い。
例えば、第1実施の形態の発電ユニット1において、仮想線SYに直交する仮想平面に対して、第2支持部22a側が下降傾斜する発電素子10(図2(a)に示すもの)と、第2支持部22a側が上昇傾斜する発電素子10(図2(a)に示すものと傾斜方向が逆方向のもの)とを、仮想線SYを回転軸として回転対称となる位置に配設しても良い(即ち、図1に示す上面視において、下降傾斜する発電素子10と上昇傾斜する発電素子10とを仮想線SYを中心として周方向等間隔に交互に配置する)。第2実施の形態における発電ユニット201についても同様である。なお、仮想線SYに直交する仮想平面に対する上昇傾斜および下降傾斜の傾斜角度は、同一であることが好ましい。
また、第3実施の形態における発電ユニット301において、仮想平面IPを挟んで対向配置される一対一組の発電素子10を単位とし、仮想平面IPに直交する仮想平面に対して、第2支持部322a側が下降傾斜する組(図9に示すもの)と、第2支持部322a側が上昇傾斜する組(図9に示すものと傾斜方向が逆方向のもの)とを、同数配設しても良い。第4実施の形態における発電ユニット401についても同様である。なお、仮想線SYに直交する仮想平面に対する上昇傾斜および下降傾斜の傾斜角度は、同一であることが好ましい。また、第4実施の形態における発電ユニット401では、下降傾斜する組と上昇傾斜する組とを幅方向(図10(a)上下方向)に交互に配設することが好ましい。かかる幅方向において、力の釣り合いを均一な状態として、第1ヨーク421及び第2ヨーク422の相対的な直進運動が妨げられることを抑制するためである。
このように、傾斜方向が異なる発電素子10を組み合わせることで、例えば、強制並進運動が正側に入力される場合には、上昇傾斜される磁歪棒11を伸張させると共に下降傾斜される磁歪棒11を収縮させ、強制並進運動が負側に入力される場合には、磁歪棒11の変形方向を反転させ、上昇傾斜される磁歪棒11を収縮させると共に下降傾斜される磁歪棒11を伸張させることができる。これにより、発電に必要な磁束密度の時間的変化が断続的とならず、連続させることができるので、発電を安定的に行うことができる。
<その他>
<手段>
技術的思想1の発電ユニットは、磁歪材料から構成される磁歪棒と、前記磁歪棒に巻回されるコイルと、前記磁歪棒の一端および他端にそれぞれ磁極を違えて配設される一対の永久磁石と、それら一対の永久磁石を連結するバックヨークと、を有する発電素子を備え、前記磁歪棒が伸張または収縮することで、発電を行うものであり、2以上の前記発電素子と、前記2以上の発電素子の各磁歪棒の一端を支持する第1ヨークと、前記2以上の発電素子の各磁歪棒の他端を支持する第2ヨークと、を備え、前記第1ヨークに対する第2ヨークの相対移動が強制並進運動であり、前記強制並進運動の直進方向に沿う仮想線を回転軸として前記2以上の発電素子が回転対称に配設される。
技術的思想2の発電ユニットは、磁歪材料から構成される磁歪棒と、その磁歪棒に巻回されるコイルと、前記磁歪棒の一端および他端にそれぞれ磁極を違えて配設される一対の永久磁石と、それら一対の永久磁石を連結するバックヨークと、を有する発電素子を備え、前記磁歪棒が伸張または収縮することで、発電を行うものであり、2以上の前記発電素子と、前記2以上の発電素子の各磁歪棒の一端を支持する第1ヨークと、前記2以上の発電措置の各磁歪棒の他端を支持する第2ヨークと、を備え、前記第1ヨークに対する第2ヨークの相対移動が強制並進運動であり、前記強制並進運動の直進方向に平行な仮想平面を対称面として前記2以上の発電素子が面対称に配設されることを特徴とする発電ユニット。
技術的思想3の発電ユニットは、技術的思想1又は2に記載の発電ユニットにおいて、前記2以上の発電素子のそれぞれは、前記磁歪棒が、前記仮想平面に直交する方向または前記仮想線に直交する方向に対して傾斜して配設される。
技術的思想4の発電ユニットは、技術的思想1から3のいずれかに記載の発電ユニットにおいて、前記2以上の発電素子のそれぞれは、前記磁歪棒の一端または他端の少なくとも一方が、前記第1ヨークまたは第2ヨークに回転可能に軸支される。
技術的思想5の発電ユニットは、技術的思想1から4のいずれかに記載の発電ユニットにおいて、前記2以上の発電素子のそれぞれは、前記磁歪棒の一端および他端の両端が、前記第1ヨークおよび第2ヨークにそれぞれ回転可能に軸支される。
技術的思想6の発電ユニットは、技術的思想5記載の発電ユニットにおいて、転がり軸受を備え、前記2以上の発電素子のそれぞれは、前記転がり軸受を介して、前記磁歪棒の一端および他端の両端が、前記第1ヨークおよび第2ヨークにそれぞれ回転可能に軸支される。
<効果>
技術的思想1又は2に記載の発電ユニットによれば、第1ヨークに対して第2ヨークが相対的に強制並進運動されることで、2以上の発電素子の各磁歪棒がそれぞれ収縮または伸張され、その逆磁歪効果を利用して、発電が行われる。この場合、2以上の発電素子は、各磁歪棒を、強制並進運動の直進方向に沿う仮想線を回転軸として回転対称に配設する(即ち、各磁歪棒が仮想線を中心として周方向等間隔の放射直線状に配設される)、又は、強制並進運動の直進方向に平行な仮想平面を対称面として面対称に配設する(即ち、一対の磁歪棒同士が仮想平面を挟んで対向して配設される)ので、それら各磁歪棒に発生する反力同士を互いに打ち消し合わせることができる。よって、発電ユニット全体として、その力の釣り合いを均一な状態として、第1ヨーク及び第2ヨークの相対的な直進運動が妨げられることを抑制できる。
また、技術的思想1記載の発電ユニットによれば、各磁歪棒を、強制並進運動の直進方向に沿う仮想線を回転軸として回転対称に配設する(即ち、仮想線を中心として周方向等間隔に配設する)ので、第1ヨークに対する第2ヨークの相対的な強制並進運動の方向がずれた場合でも、2以上の磁歪棒の内のいずれかに軸方向の変形を付与して、磁束密度の変化を発生させることができ、その結果、発電を可能とすることができる。
技術的思想3記載の発電ユニットによれば、技術的思想1又は2に記載の発電ユニットの奏する効果に加え、2以上の発電素子のそれぞれは、その磁歪棒を、仮想平面に直交する方向または前記仮想線に直交する方向(即ち、強制並進運動の直進方向に直交する方向)に対してそれぞれ傾斜させて配設するので、その傾斜の分、各磁歪棒にそれぞれ軸方向への変形を付与することができる。即ち、1の磁歪棒の全体としての変形を、軸方向への伸張または収縮とすることができるので、発電に必要な磁束密度の変化を得ることができ、その結果、強制振動においても、より効率の良い発電を可能とすることができる。
技術的思想4記載の発電ユニットによれば、技術的思想1から3のいずれかに記載の発電ユニットの奏する効果に加え、2以上の発電素子のそれぞれは、磁歪棒の一端または他端の少なくとも一方を、第1ヨークまたは第2ヨークに回転可能に軸支するので、回転方向の拘束を抑制し、その分、各磁歪棒がS字状に変形することを抑制できる。これにより、1の磁歪棒において伸張する部分と収縮する部分とが形成され、これらが磁束密度の変化を打ち消し合うことを抑制できるので、発電に必要な磁束密度の変化を得ることができ、その結果、強制振動においても、発電を可能とすることができる。
また、磁歪棒の一端または他端の少なくとも一方を、第1ヨークまたは第2ヨークに回転可能に軸支することで、その分、磁歪棒をS字状に変形させることに費やされる力(即ち、発電に寄与しない変形に要する力)を少なくできる。その結果、より少ない力で各磁歪棒に軸方向への変形を付与することができるので、発電効率の向上を図ることができる。
技術的思想5記載の発電ユニットによれば、技術的思想1から4のいずれかに記載の発電ユニットの奏する効果に加え、2以上の発電素子のそれぞれは、磁歪棒の一端および他端の両端を、第1ヨークおよび第2ヨークにそれぞれ回転可能に軸支するので、両端において回転方向の拘束を抑制し、各磁歪棒がS字状に変形することを、より確実に抑制できる。これにより、発電効率の更なる向上を図ることができる。
また、磁歪棒をS字状に変形させることに費やされる力(即ち、発電に寄与しない変形に要する力)を、より少なくできる。その結果、より少ない力で各磁歪棒に軸方向への変形を付与することができるので、この点においても、発電効率の更なる向上を図ることができる。
技術的思想6記載の発電ユニットによれば、技術的思想5記載の発電ユニットの奏する効果に加え、2以上の発電素子のそれぞれは、磁歪棒の一端および他端の両端を、転がり軸受を介して、第1ヨークおよび第2ヨークにそれぞれ回転可能に軸支するので、滑り軸受の場合と比較して、回転方向の拘束を抑制する効果を向上させ、各磁歪棒がS字状に変形することを、より確実に抑制できる。また、各磁歪棒のS字状の変形(発電に寄与しない変形)に費やされる力をより少なくできる。その結果、発電効率の更なる向上を図ることができる。