以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における発電素子10のカバー1の斜視図であり、図2はカバー1及び発電素子10の分解立体図である。なお、図2では、カバー1を組み立てると共にカバー1に発電素子10を固定するボルトの図示と、磁歪棒に巻回されるコイルの図示とを省略している。図1及び図2に示すように、カバー1は発電素子10(図2)が収容される部材であり、平板状に形成された基部2と、基部2に装着される箱状の蓋部6とを備えている。本実施の形態では、基部2及び蓋部6は非磁性材料であるアルミニウム合金から形成されている。
図2に示すように、基部2は、平面視して矩形状の底面部2aと、底面部2aの長手方向一端側の長手方向両側縁から突設された取着板部2bとを備え、底面部2a及び取着板部2bが同一平面上に一体形成されている。底面部2aは、厚さ方向に貫通するボルト挿通孔3,4が複数箇所に形成されている。ボルト挿通孔3は基部2に蓋部6を取着するボルト(図示せず)が挿通される孔である。ボルト挿通孔4は基部2に発電素子10(固定部材30)を取着するボルト(図示せず)が挿通される孔であり、取着板部2bが突設される底面部2aの長手方向一端側に形成されている。取着板部2bは、厚さ方向に貫通するボルト挿通孔5が形成されている。ボルト挿通孔5は、振動源(図示せず)に基部2を固定するボルト(図示せず)が挿通される孔である。振動源(図示せず)に固定される底面部2aの長手方向一端側に発電素子10(固定部材30)の一端側が固定されるので、振動源の振動により発電素子10(固定部材30)を効率良く振動させることができる。
蓋部6は、有底四角筒状に形成される部材であり、底面部2aと略同一の大きさに形成された平面視して矩形状の天面部6aと、天面部6aの長手方向側縁に互いに対向して立設されると共に天面部6aと直交する長さ面部6bと、天面部6aの短手方向側縁に互いに対向して立設されると共に天面部6aと直交する幅面部6cとを備えている。長さ面部6b及び幅面部6cの端面(図2下側の面)は、底面部2aに密着するように同一平面上に位置している。
蓋部6は、長さ面部6bと幅面部6cとの稜に、長さ面部6bや幅面部6cより厚さの大きい肉厚部6dが設けられている。また、長さ面部6bの長手方向の略中間位置に肉厚部6dと略平行となる肉厚部6eが設けられている。肉厚部6d,6eは、天面部6a、長さ面部6b及び幅面部6cと一体に形成され、蓋部6の内側に突設されている。これにより、長さ面部6b及び幅面部6cの厚さを薄くすることで軽量化できると共に、肉厚部6d,6eを設けることで蓋部6の剛性を向上させることができる。
蓋部6は、天面部6aの厚さ方向に配線挿通孔7が貫通形成されている。配線挿通孔7は、発電素子10の第1棒11(磁歪棒)に巻回されるコイル(図示せず)と電気的に接続された配線をカバー1の外部に引き出すための孔である。なお、配線が挿通された配線挿通孔7は、配線が挿通された状態でシリコーン等の弾性シーリング材により封止することで気密性を確保する。
発電素子10は、一対のホルダ部材40,60の内の一方のホルダ部材40を基部2に固着すると共に、他方のホルダ部材60を自由端とした状態でカバー1に収容される。基部2が固定された振動源(図示せず)の振動に伴って、第1棒11及び第2棒12(磁歪棒)の軸直角方向(図2上下方向)へホルダ部材60を振り子運動(自由振動)させて使用される。この場合、振り子運動に伴う曲げ変形により軸方向の伸張および収縮が第1棒11に発生することで、第1棒11の軸方向と平行な方向に磁束密度が変化し、第1棒11に巻回されたコイル(図示せず)に電流が発生することで、発電が行われる。
ホルダ部材40,60は、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着される一対の保持部材20と、それら一対の保持部材20がそれぞれ圧入される固定部材30,50とを備える。ここで図3を参照して、固定部材30,50と蓋部6との関係について説明する。図3はカバー1及び発電素子10の底面図である。なお、図3では、基部2を除くカバー1(蓋部6)及び発電素子10を図示している。
図3に示すように固定部材30は、底面に孔部30aが3箇所に形成されている。孔部30aは内面に雌ねじが刻設されており、ボルト挿通孔4(図2参照)に挿通されたボルト(図示せず)が螺着される。これにより基部2に固定部材30が固着される。
蓋部6は、肉厚部6d,6eの底面にそれぞれ孔部6d1,6e1が形成されている。孔部6d1,6e1は内面に雌ねじが刻設されており、ボルト挿通孔3(図2参照)に挿通されたボルト(図示せず)が螺着される。これにより、基部2に蓋部6が固着される。また、蓋部6の長さ面部6b及び幅面部6cより厚さの大きい肉厚部6d,6eに孔部6d1,6e1が形成されているので、孔部6d1,6e1の内径の大きさを確保することができる。これにより、孔部6d1,6e1に挿着されるボルト(図示せず)の太さを確保することができ、ボルトによる基部2と蓋部6との固着強度を確保できる。
固定部材50は、蓋部6の長さ面部6b、幅面部6c及び肉厚部6d,6eと所定の間隔をあけて蓋部6内に収容される。これにより、固定部材50が蓋部6と干渉することが防止される。その結果、固定部材30が取着された第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側を固定端とし、固定部材50が取着された第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側を自由端とした状態で、発電素子10が蓋部6内に収容される。
次に図4を参照して発電素子10について説明する。図4は図1の矢印IV−IV線におけるカバー1及び発電素子10の断面図である。発電素子10は、磁歪材料から構成される第1棒11及び第2棒12と、第1棒11に巻回されるコイル13と、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側(図4左側)及び他端側(図4右側)においてこれら第1棒11及び第2棒12の対向間に挟装される一対の永久磁石14,15と、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着され第1棒11及び第2棒12の対向間に永久磁石14,15が挟装された状態を保持する一対のホルダ部材40,60とを備える。
第1棒11及び第2棒12は、厚み寸法(図4上下方向寸法)に対して幅寸法(図4紙面垂直方向寸法)が大きな断面長方形(即ち、断面が長辺(幅方向に沿う辺)及び短辺(厚み方向に沿う辺)を有する長方形)から長尺板状に形成される。これら第1棒11及び第2棒12は、互いに同一形状(寸法)に形成されると共に、面積が大きな側面(即ち、断面において長辺を含む側面)同士を対向させて平行に配置される。なお、第2棒12は、第1棒11よりも磁歪効果の低い磁歪材料から構成される。本実施の形態では、第1棒11が鉄ガリウム合金から、第2棒12が鉄鋼材料から、それぞれ構成される。
コイル13は、銅線から構成される線材を第1棒11に巻回したコイルである。コイル13と第1棒11との間には隙間が設けられる。永久磁石14,15は、第1棒11にバイアス磁界を付与するための部材(永久磁石)であり、それぞれ断面矩形の棒状に形成される。なお、永久磁石14,15は、第1棒11及び第2棒12の対向方向(図4上下方向)の寸法が厚み寸法とされる。
永久磁石14,15は、互いに磁極を違えて配設される。即ち、永久磁石14は、第1棒11に接続される面側(図4上側)にN極、第2棒12に接続される面側(図4下側)にS極が配置される一方、これとは反対に、永久磁石15は、第1棒11に接続される面側にS極、第2棒12に接続される面側にN極が配置される。これにより、第1棒11と、第2棒12と、永久磁石14,15とにより磁気ループが形成され、永久磁石14,15の起磁力によるバイアス磁界が第1棒11に付与される。その結果、第1棒11の磁化容易方向(磁化の方向または磁化が生じ易い方向)が、第1棒11の軸方向(長手方向)に設定される。
永久磁石14,15は、保持部材20に形成(凹設)された収容空間に配設される。この収容空間の内面(挟持対向部22,23の対向面22b,23b、規制部24の対向面および連結部25の対向面、図5参照)や第1棒11及び第2棒12の側面と、永久磁石14,15の対向面(側面)との対向間には隙間が形成され、この隙間に充填した接着剤により、永久磁石14,15が保持部材20に固着される。
ホルダ部材40,60は、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着される一対の保持部材20と、それら一対の保持部材20がそれぞれ圧入される固定部材30,50とを備える。保持部材20及び固定部材30,50は、非磁性材料(本実施の形態では、アルミニウム合金)から構成される。ここで、図5から図7を参照して、保持部材20及び固定部材30,50の詳細構成について説明する。
図5(a)は保持部材20の正面図であり、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線における保持部材20の断面図であり、図5(c)は図5(a)の矢印Vc方向視における保持部材20の側面図である。
図5に示すように、保持部材20は、ブロック状に形成されるベース部21と、そのベース部21の側面(図5(a)紙面手前側面)から突設されると共に所定間隔を隔てて対向される挟持対向部22,23と、それら挟持対向部22,23の対向間に位置しつつベース部21の側面から突設される規制部24と、挟持対向部22,23の対向間を連結しつつベース部21の側面から突設される連結部25とを備える。なお、保持部材20は、高さ方向(図5(a)上下方向)中央に位置する仮想平面(図示せず)に対して面対称に形成される。
挟持対向部22,23は、第1棒11及び第2棒12を永久磁石14,15へ向かう方向に挟み込んで挟持する部位であり(図4参照)、対向面22a,22b及び対向面23a,23bがそれぞれ対向して形成される。対向面22a,22b及び対向面23a,23bの対向間に形成される空間に、第1棒11、第2棒12及び永久磁石14,15がそれぞれ収容される(図4参照)。
なお、対向面22a,23aは互いに平行とされ、それら対向面22a,23aの対向間隔(図5(a)上下方向の寸法)は、第1棒11、第2棒12及び永久磁石14,15の厚み寸法(図4上下方向寸法)の合計よりも所定量(本実施の形態では0.02mm)だけ大きくされる。同様に、対向面22b,23bは互いに平行とされ、それら対向面23a,23bの対向間隔は、永久磁石14,15の厚み寸法よりも所定量(本実施の形態では0.02mm)だけ大きくされる。
ベース部21及び挟持対向部22,23(即ち、保持部材20)の上面側および下面側(図5(a)上側または下側)には、保持部材20を固定部材30,50へ圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面22c及び傾斜面23cが形成される。傾斜面22c及び傾斜面23cは、規制部24から連結部25へ向かうに従って互いに異なる方向に傾斜(図5(a)に示す正面視において、傾斜面22cは下降傾斜、傾斜面23cは上昇傾斜)する傾斜面として形成される。この傾斜(勾配)によって、保持部材20(ベース部21及び挟持対向部22,23)は、図5(a)に示す正面視において、第1棒11及び第2棒12の軸方向中央から軸方向端部へ向かうに従って先細りとなる形状に形成される(図4参照)。なお、傾斜面22c,23cは、水平面(上述した保持部材20の対称面となる仮想平面)に対し傾斜角度θ1で傾斜される。この傾斜角度θ1は、本実施の形態では、2度に設定される。
規制部24は、図5(a)に示す正面視形状が矩形とされる部位であり、挟持対向部22,23の対向面22a,23aに対して所定の間隔を隔てて配設される。規制部24と挟持対向部22,23の対向面22a,23aとの間の間隔(図5(a)上下方向寸法)は、第1棒11及び第2棒12の厚み寸法(図4上下方向寸法)と同等または若干大きくされる。また、規制部24は、挟持対向部22,23の対向方向(図5(a)上下方向)の寸法である厚み寸法W1が、永久磁石14,15の厚み寸法(図4上下方向寸法)よりも大きくされる。なお、本実施の形態では、規制部24の厚み寸法W1が、連結部25側に位置する対向面22b,23bの対向間隔(図5(a)上下方向寸法)と同等に設定される。
挟持対向部22,23及び規制部24は、連結部25の反対側に位置する端面(図5(a)左側の面)が面一に形成されると共に、第1棒11及び第2棒12の軸方向に垂直な平坦面として形成される(図4参照)。
連結部25は、保持部材20の先細りとなる側(規制部24の反対側、図5(a)右側)に位置し、ベース部21の側面からの高さ寸法(図5(b)上下方向寸法)が、挟持対向部22,23及び規制部24の高さ寸法と同一に設定される。連結部25が対向面22b,23bの間に介在することで、保持部材20を固定部材30,50へ圧入する際に、寸法公差が存在する場合や、圧入工程の精度が不足した場合でも、永久磁石14,15が対向面22b,23bに押圧されることを抑制して、かかる永久磁石14,15が破損することを抑制できる。
図6を参照して、固定部材30について説明する。図6(a)は固定部材30の正面図であり、図6(b)は図6(a)の矢印VIb方向視における固定部材30の側面図である。固定部材30は、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側が固定されると共に、ケース1の基部2に固定される部材である。固定部材30は、所定間隔を隔てて対向して配設される被圧入対向部31,32と、被圧入対向部31,32の両側を連結すると共に所定間隔を隔てて対向して配設される連結部33とを備えている。
なお、固定部材30は、高さ方向(図6(a)上下方向)中央に位置する仮想平面(図示せず)に対して非対称に形成される。即ち、被圧入対向部31は被圧入対向部32に対して高さ(図6(a)上下方向寸法)が大きく設定される。被圧入対向部32と比較して高さの大きな被圧入対向部31を底面部2a(図4参照)に固着することにより、第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側に取着される固定部材50と底面部2aとの間に隙間を設けることができる。これにより、第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側を簡易に自由端とすることができる。
被圧入対向部31,32は、保持部材20が圧入される部位であり、それら被圧入対向部31,32の互いに対向する面には、保持部材20を固定部材30へ圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面31a,32aが形成される。傾斜面31a,32aは、被圧入対向部31,32の一端側(図6(a)右側)から他端側へ向かうに従って互いに異なる方向に傾斜(図6(a)に示す側面視において、傾斜面31aは上昇傾斜、傾斜面32aは下降傾斜)する傾斜面として形成される。この傾斜(勾配)によって、傾斜面31a,32aの対向間隔は、他端側(図6(a)左側)へ向かうに従って狭くなる。
なお、傾斜面31a,32aは、水平面(上述した固定部材30の仮想平面)に対し傾斜角度θ2で傾斜される。この傾斜角度θ2は、本実施の形態では、傾斜角度θ1(図5(a)参照)と同一とされ、2度に設定される。
連結部33は、被圧入対向部31,32の対向間を連結すると共に、長さ(図6(a)左右方向寸法)が被圧入対向部31,32と同一とされる。これにより、固定部材30は、図6(a)に示す側面視において矩形枠状に形成されると共に、両端が開口する無底四角筒状に形成される。
連結部33の対向間隔(図6(b)左右方向寸法)は、保持部材20が圧入された場合に、連結部33の対向面と、保持部材20、第1棒11、第2棒12、永久磁石14,15との間に若干の隙間が形成される寸法に設定される。
次に図7を参照して、固定部材50について説明する。図7(a)は固定部材50の正面図であり、図7(b)は図7(a)の矢印VIIb方向視における固定部材50の側面図である。固定部材50は、第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側が固定される部材である。固定部材50は、所定間隔を隔てて対向して配設される被圧入対向部51,52と、被圧入対向部51,52の両側を連結すると共に所定間隔を隔てて対向して配設される連結部53とを備えている。なお、固定部材50は、高さ方向(図7(a)上下方向)中央に位置する仮想平面(図示せず)に対して面対称に形成される。
被圧入対向部51,52は、保持部材20が圧入される部位であり、それら被圧入対向部51,52の互いに対向する面には、保持部材20を固定部材30へ圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面51a,52aが形成される。傾斜面51a,52aは、被圧入対向部51,52の一端側(図7(a)左側)から他端側へ向かうに従って互いに異なる方向に傾斜(図7(a)に示す正面視において、傾斜面51aは上昇傾斜、傾斜面52aは下降傾斜)する傾斜面として形成される。この傾斜(勾配)によって、傾斜面31a,32aの対向間隔は、他端側(図7(a)右側)へ向かうに従って狭くなる。
なお、傾斜面51a,52aは、水平面(上述した固定部材50の仮想平面)に対し傾斜角度θ2で傾斜される。この傾斜角度θ2は、本実施の形態では、傾斜角度θ1(図5(a)参照)と同一とされ、2度に設定される。
連結部53は、被圧入対向部51,52の対向間を連結すると共に、長さ(図7(a)左右方向寸法)が被圧入対向部51,52と同一とされる。これにより、固定部材50は、図7(a)に示す正面視において矩形枠状に形成されると共に、両端が開口する無底四角筒状に形成される。
連結部53の対向間隔(図7(b)左右方向寸法)は、保持部材20が圧入された場合に、連結部53の対向面と、保持部材20、第1棒11、第2棒12、永久磁石14,15との間に若干の隙間が形成される寸法に設定される。
図4に戻って固定部材30,50及び蓋部6の高さ寸法について説明する。発電素子10は、第1棒11及び第2棒12の軸方向の両端に固定部材30,50が取着された状態で、固定部材30が底面部2a(基部2)に固定される。固定部材50は、固定部材30が底面部2aに固定されたときに、底面部2a及び天面部6aとそれぞれ所定の間隔をあけて位置するように高さ寸法が設定されている。底面部2a及び天面部6aと固定部材50との間隔は、発電素子10の固有振動数(主にホルダ部材60の質量と第1棒11及び第2棒12のばね定数とにより決まる振動数)に近い周期の振動が入力されたときの発電素子10の最大振幅より小さい値に設定されている。ホルダ部材60は幅面部6cの高さ方向(図4上下方向)に振動するので、ホルダ部材60の変位方向外側に位置する底面部2a及び天面部6aは、ホルダ部材60の大きな変位を規制する変位規制部として機能する。
以上のように底面部2a及び天面部6aと固定部材50との間隔を設定することにより、振幅が小さいときにはホルダ部材60の自由振動を確保することができ、発電素子10に発電を行わせることができる。一方、発電素子10の共振等によって振幅が大きくなると、底面部2a及び天面部6aに固定部材50(ホルダ部材60)が当たるので、第1棒11及び第2棒12の大振動を規制できる。その結果、第1棒11及び第2棒12(磁歪棒)の歪みが過大になることを防止でき、第1棒11及び第2棒12を長寿命化できる。これにより発電素子10の耐久性を向上できる。
次に、以上のように構成される発電素子10の組み立て方法について説明する。発電素子10の組み立ては、まず、コイル13に第1棒11を挿通させ、その第1棒11及び第2棒12の軸方向端部を保持部材20の収容空間に配設すると共に、永久磁石14,15を保持部材20の収容空間(第1棒11及び第2棒12の対向間)に配設し、接着剤により接着固定する。
なお、保持部材20は、上述したように、ベース部21の側面から挟持対向部22,23が突設されることで、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15とを収容する収容空間が形成される(図5参照)。即ち、かかる収容空間は、ベース部21と反対側(即ち、第1棒11及び第2棒12を挟み込む方向と第1棒11及び第2棒12の軸方向とにそれぞれ直交する方向の一方側、図5(a)紙面手前側)が開放して形成されるので、かかる収容空間に第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15とを容易に配設することができる。
即ち、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15とを、例えば、第1棒11及び第2棒12の軸方向に沿って、保持部材20の端面(図5(a)左側面)の開口から収容空間へ挿入する必要がなく、収容空間の開放する面全体を利用することができる。よって、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15とを保持部材20(収容空間)に配設する作業の作業性の向上を図ることができる。
次いで保持部材20を、固定部材30の被圧入対向部31,32の対向間、固定部材50の被圧入対向部51,52の対向間へ、第1棒11及び第2棒12の軸方向(図4左右方向)を圧入方向として圧入する。保持部材20(挟持対向部22,23)の外面(傾斜面22c,23c)と固定部材30の被圧入対向部31,32の内面(傾斜面31a,32a)とが、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成されるので、圧入の進行に伴い、保持部材20(挟持対向部22,23)の傾斜面22c,23cが、固定部材30の被圧入対向部31,32における傾斜面31a,32aにより押圧される。同様に、保持部材20(挟持対向部22,23)の外面(傾斜面22c,23c)と固定部材50の被圧入対向部51,52の内面(傾斜面51a,52a)とが、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成されるので、圧入の進行に伴い、保持部材20(挟持対向部22,23)の傾斜面22c,23cが、固定部材50の被圧入対向部51,52における傾斜面51a,52aにより押圧される。
これにより、挟持対向部22,23が互いに近接する方向(永久磁石14,15及び規制部24を挟み込む方向)へ向けて撓み変形され、第1棒11及び第2棒12が挟持される。その結果、発電素子10の組み立てが完了する。
次いで、発電素子10を基部2の底面部2aの上に配置し、固定部材30の底面に形成された孔部30aの位置と底面部2aに形成されたボルト挿通孔4の位置とを合わせた後、ボルト(図示せず)を底面部2aの背面側から挿通して、基部2に固定部材30を固着する。その後、コイル13と電気的に接続された配線(図示せず)を、蓋部6の内側から蓋部6に形成された配線挿通孔7に挿通して蓋部6の外側に引き出しつつ、発電素子10が固定された基部2に蓋部6を被せる。蓋部6に形成された孔部6d1,6e1の位置と底面部2aに形成されたボルト挿通孔3の位置とを合わせた後、ボルト(図示せず)を底面部2aの背面側から挿通して、基部2に蓋部6を固着する。
これにより、基部2及び蓋部6により形成される密閉空間内に発電素子10を収容し、発電素子10を保護することができる。なお、基部2と蓋部6との接触箇所、ボルト挿通孔3,4及び配線挿通孔7を、シリコーン等の弾性シーリング材により封止することにより、基部2及び蓋部6により形成される密閉空間の気密性を向上させることは可能である。
蓋部6内に収容された発電素子10によれば、第1棒11及び第2棒12の対向間に永久磁石14,15が挟装され、その状態が保持部材20により保持される。保持部材20は、固定部材30,50に取着されることで、その状態が維持されるので、第1棒11及び第2棒12が振動する発電中に、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15との間に滑りが発生することを抑制できる。滑り(摩擦抵抗)によるエネルギーの損失を低減できるので、発電効率の向上を図ることができる。
また、第1棒11のみにコイル13が巻回され、第2棒12にコイル13を巻回する必要がないので、その分、部品点数の削減を図ることができる。また、第2棒12にコイル13を巻回する必要がなければ、本来、第2棒12にコイル13を巻回するためのスペースを利用して、第1棒11に巻回されるコイル13の巻き数を増加させることができる。よって、第1棒11と第2棒12との対向間の距離を拡大することなく、発電効率の向上を図ることができる。
ここで、発電素子10の構造では、第1棒11にその軸方向(図4左右方向)に沿って形成される磁界の方向と第2棒12にその軸方向(図4左右方向)に沿って形成される磁界の方向とが逆方向となる。よって、発電中、第1棒11及び第2棒12が伸張または収縮される際に、軸方向と平行な方向の磁束密度の変化が逆方向となり互いに打ち消し合う。そのため、磁束密度の変化が低減され、発電効率の低下を招く。
この場合、発電素子10によれば、第2棒12(即ち、コイルが巻回されない磁歪棒)が第1棒11よりも磁歪効果の低い磁歪材料から構成されるので、発電中、第1棒11及び第2棒12が伸張または収縮される際には、第2棒12における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化を少なくできる。よって、第2棒12における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化によって、第1棒11における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化が打ち消されることを抑制できる。その分、発電に必要な第1棒11における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化を確保して、発電効率の向上を図ることができる。
また、第2棒12を、磁歪効果の高い磁歪材料から構成する必要がなく、一般的な磁性材料(本実施の形態では鉄鋼材料)から構成することができるので、第1棒11と比較して、第2棒12の材料コストを削減でき、その分、発電素子10全体としての製品コストを削減できる。
保持部材20を固定部材30,50(被圧入対向部31,32の対向間または被圧入対向部51,52の対向間)へ圧入する圧入工程においては、その圧入の進行に応じて、挟持対向部22,23が徐々に撓み変形して、第1棒11及び第2棒12を挟み込む(締め付ける)。よって、圧入荷重を監視しつつ圧入工程を進行させることで、かかる圧入荷重に基づいて締め付け荷重の調整を容易に行うことができる。
その結果、第1棒11及び第2棒12の対向間に挟装される永久磁石14,15の破損を抑制しつつ、第1棒11及び第2棒12を挟持対向部22,23が挟み込む(締め付ける)締め付け荷重をより大きく確保して、その挟持をより強固なものとすることができる。即ち、永久磁石14,15が対向間に挟装された第1棒11及び第2棒12を保持部材20及び固定部材30,50によって確実に保持することができる。
また、保持部材20は、第1棒11及び第2棒12の対向間に介在される規制部24を備えるので、保持部材20の固定部材30,50への圧入に伴い、挟持対向部22,23の対向間で第1棒11及び第2棒12が挟み込まれる(締め付けられる)場合に、規制部24により第1棒11及び第2棒12を受け止めることができる。即ち、挟持対向部22の対向面22aと規制部24との対向間で第1棒11を、挟持対向部23の対向面23aと規制部24との対向間で第2棒12を、それぞれ挟持することができる。よって、保持部材20の挟持対向部22,23による第1棒11及び第2棒12の挟持を強固に行うことができる。
一方で、ぜい性材料からなる永久磁石14,15は破損し易いところ、第1棒11及び第2棒12の対向間に配設される規制部24は、その厚み寸法W1(図5(a)参照)が、永久磁石14,15の厚み寸法よりも大きくされるので、第1棒11及び第2棒12の対向間で永久磁石14,15が押圧されることを抑制でき、永久磁石14,15の破損を抑制することができる。また、挟持対向部22,23の対向面22b,23bにおいても、その対向間隔が、永久磁石14,14の厚み寸法よりも大きくされるので、それら対向面22b,23bが永久磁石14,15を押圧することを抑制でき、永久磁石14,15の破損を抑制することができる。
また、保持部材20は、規制部24が永久磁石14,15よりも第1棒11及び第2棒12の軸方向中央側(図4左右中央側)に配設されるので、第1棒11及び第2部12の自由長(一方(図4右側)の保持部材20に挟持される部分と、他方(図4左側)の保持部材20の対向間に挟持される部分との間に存在する部分の長さ)を、発電中の振動の状態によらず一定として、発電を安定させることができる。
例えば、規制部24と永久磁石14,15の配設位置が逆の場合には、規制部24の厚み寸法W1が永久磁石14,15の厚み寸法よりも大きくされ、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15との間に隙間が形成されることから、一対のホルダ部材40,60の相対移動の大きさ(即ち、発電中の振動の状態)によっては、振り子運動(曲げ変形)に伴い、第1棒11及び第2棒12が永久磁石14,15に当接または離間を繰り返しつつ振動するモードが発生し、第1棒11及び第2棒12の自由長が一定とならず不確かとなる。そのため、発電が不安定となる。
これに対し、発電素子10では、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15との対向間に形成される隙間は、振動モードにほぼ影響を与えず、挟持対向部22,23と規制部24との対向間に挟持された部分を起点として、第1棒11及び第2棒12を振り子運動(曲げ変形)させることができる。よって、一対のホルダ部材40,60の相対移動の大きさ(即ち、発電中の振動の状態)によらず、第1棒11及び第2棒12の自由長を一定として、発電を安定させることができる。
ここで、保持部材20の固定部材30,50への圧入方向が、第1棒11及び第2棒12の軸方向と平行な方向(図4左右方向)に設定され、保持部材20(挟持対向部22,23)の傾斜面22c,23c(図5(a)参照)は、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成される。よって、傾斜面22c,23cの傾斜方向(圧入方向)に沿った長さを確保することができ、その分、傾斜面22c,23cの傾斜角度を緩やかにできる。その結果、圧入荷重に基づく締め付け荷重の調整を容易に且つ精度良く行い易くできると共に、固定部材30,50の被圧入対向部31,32,51,52から保持部材20が抜け出し難くすることができる。
ここで、保持部材20は、上述したように、永久磁石14,15の収容空間が一方側(図5(a)紙面手前側)が開放して形成されるため、かかる収容空間に第1棒11及び第2棒12と永久磁石14,15とを配設する作業を容易とすることができる反面、発電中に、開放する一方側から永久磁石14,15が脱落するおそれがある。特に、永久磁石14,15は、その厚み寸法(図4上下方向寸法)が規制部24の厚み寸法W1(図5(a)参照)よりも小さくされ、挟持対向部22,23からの締め付け荷重が作用されないように構成されるため、長時間の振動や一時的な強い外力の入力により、接着剤が剥がれて脱落し易い。
これに対し、固定部材30,50が、被圧入対向部31,32,51,52を連結する連結部33,53を備えるので、かかる連結部33,53の一方により、収容空間の開放する一方側を閉塞することができる。その結果、永久磁石14,15が外部へ脱落することを抑制できる。
また、このように被圧入対向部31,32,51,52が連結部33,53に連結されることで、固定部材30,50全体としての剛性を高めることができる。よって、固定部材30,50の被圧入対向部31,32,51,52へ保持部材20を圧入する際には、一対の被圧入対向部31,32,51,52が互いに離間する方向へ変形することを抑制できる。これにより、圧入荷重に基づく締め付け荷重の調整を精度良く行うことができる。
また、発電素子10によれば保持部材20は非磁性材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)から構成されるので、保持部材20への磁束の漏洩を抑制して、磁束を第1棒11及び第2棒12に集中させることができる。よって、永久磁石14,15の起磁力によるバイアス磁界を第1棒11及び第2棒12へ効率良く付与でき、発電効率の向上を図ることができる。
また、発電素子10を収容するための密閉空間が基部2及び蓋部6(密閉空間形成部材)により形成され、その密閉空間内に発電素子10が収容されるので、密閉空間内への水分の浸入を抑制できる。これにより第1棒11や第2棒12、コイル13等の腐食を抑制できる。特に、第1棒11は磁歪材料から形成され、第2棒12は鉄鋼材料から形成される一方、保持部材20はアルミニウム合金から形成されているので、それら異種材料が接触すると、水分の存在により電食が生じ易くなる。発電素子10をカバー1で覆うことにより水分の浸入を抑制できるので、電食の発生を抑制できる。
次に図8を参照して第2実施の形態および第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、天面部6a及び底面部2a(変位規制部)に固定部材50(ホルダ部材60)が直接衝突することで、第1棒11及び第2棒12(磁歪棒)の大振動を規制する場合について説明した。これに対し第2実施の形態および第3実施の形態では、固定部材50が衝突する箇所に、衝撃を緩衝する緩衝部材102,103,202,203を設ける場合について説明する。なお、第2実施の形態および第3実施の形態は、緩衝部材102,103,202,203が配設される以外は第1実施の形態と同一の構成であるので、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、以下の説明を省略する。図8(a)は第2実施の形態におけるカバー101及び発電素子10の断面図であり、図8(b)は第3実施の形態におけるカバー201及び発電素子10の断面図である。
図8(a)に示すカバー101は、自由振動する固定部材50の上下方向の位置であって天面部6a及び底面部2aの内面に、それぞれ緩衝部材102,103が固設されている。緩衝部材102,103は、ゴム状弾性体により形成され天面部6a及び底面部2aに接着されている。緩衝部材102,103は固定部材50の端面(図8(a)右側端面)付近に配設される。これにより、固定部材50の最端部を緩衝部材102,103に衝突させることができるので、衝突の衝撃を確実に緩衝できる。
図8(b)に示すカバー201に内蔵された発電素子10は、自由振動する固定部材50の上下面に緩衝部材202,203が固設されている。緩衝部材202,203は、ゴム状弾性体により形成され固定部材50の上下面に接着されている。緩衝部材202,203は固定部材50の端面(図8(b)右側端面)付近に接着されるので、緩衝部材202,203を底面部2a及び天面部6aに衝突させることができる。これにより、底面部2a及び天面部6aに衝突するときの衝撃を確実に緩衝できる。
以上のように構成されるカバー101,201によれば、緩衝部材102,103,202,203を介して、底面部2a及び天面部6aと固定部材50とを衝突させることができるので、衝突の衝撃で第1棒11及び第2棒12が破壊されることを防止できる。また、固定部材50が底面部2a及び天面部6aに衝突したときの異音の発生を防止できる。
次に図9から図11を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、発電素子10をカバー1に固定する固定部材30(固定部)と、底面部2a及び天面部6a(変位規制部)とが別部材として形成される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、固定部302と変位規制部303とが一部材として形成されるカバー301について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9(a)は第4実施の形態におけるカバー301及び発電素子310の正面図であり、図9(b)はカバー301の平面図である。
図9(a)及び図9(b)に示すように、カバー301は、略直方体状に形成された固定部302と、その固定部302の一端面の両側に突設され互いに略平行となるように延設された一対の変位規制部303と、変位規制部303の一側縁を連結する平板状の長さ面部304とを備え、それらが一部材として一体に形成されている。
固定部302は、発電素子310の一端側が固定される部位であり、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側を保持する保持部材320が圧入される傾斜面302aを有している。傾斜面302aは互いに対向する2面からなり、傾斜面302aの対向間隔は、コイル13が巻回された第1棒11及び第2棒12の高さ(図11上下方向寸法)より大きな値に設定されている。保持部材320及びカバー301は非磁性材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)から形成される。なお、カバー301は、高さ方向(図9(a)上下方向)中央に位置する仮想平面(図示せず)に対して面対称に形成される。
図10を参照して、保持部材320について説明する。図10(a)は保持部材320の背面図であり、図10(b)は図10(a)のXb−Xb線における保持部材320の断面図であり、図10(c)は図10(a)の矢印Xc方向視における保持部材320の側面図である。保持部材320は、第1実施の形態で説明した保持部材20と同様に、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側と永久磁石14とを挟み込んで挟持する挟持対向部22,23を備えている。
ベース部21及び挟持対向部22,23(即ち保持部材320)の上面側および下面側(図10(a)上側または下側)には、保持部材320を固定部302へ圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面22c及び傾斜面23cが形成される。傾斜面22c及び傾斜面23cは、連結部25から規制部24へ向かうに従って互いに異なる方向に傾斜(図10(a)に示す背面視において、傾斜面23cは上昇傾斜、傾斜面22cは下降傾斜)する傾斜面として形成される。この傾斜(勾配)によって、保持部材320(ベース部21及び挟持対向部22,23)は、連結部25側から規制部24側に向かうに従って先細りとなる形状に形成される。従って、保持部材320は、図9(a)に示す正面視において、第1棒11及び第2棒12の軸方向端部から軸方向中央へ向かうに従って先細りとなるように配置される。なお、傾斜面22c,23cは、水平面(保持部材320の対称面となる仮想平面)に対し傾斜角度θ1で傾斜される。この傾斜角度θ1は、本実施の形態では2度に設定される。
図9に戻って説明する。固定部302は、互いに対向する2つの傾斜面302a及びそれら傾斜面302aを連結する連結面302bが、固定部302の正面(図9(a)紙面手前側面、図9(b)下側面)に凹設されることで、保持部材320が圧入される空間が形成される。傾斜面302a及び連結面302bは、変位規制部303の延設方向(図9(a)及び図9(b)左右方向)に沿って形成される。傾斜面302aの傾斜角度は、変位規制部303が突設される固定部302の一端面から、その反対面に向かうに従って傾斜面302a間が拡幅するように設定される。その傾斜面302aの傾斜角度は、水平面(カバー301の対称面となる仮想平面)に対し、保持部材320の傾斜面22c,23cの傾斜角度θ1と同じ角度に設定される。
変位規制部303は、平面視して略矩形の板状に形成される部位であり、第1棒11及び第2棒12の軸方向の他端側に取着されるホルダ部材60(保持部材20及び固定部材50)の高さ寸法(図9(a)上下方向寸法)より少し広めの間隔を設けて対向する。変位規制部303とホルダ部材60(固定部材50)との間隔は、発電素子310の固有振動数(主にホルダ部材60の質量と第1棒11及び第2棒12のばね定数とにより決まる振動数)に近い周期の振動が入力されたときの発電素子310の最大振幅より小さい値に設定されている。ホルダ部材60は変位規制部303間を振動するので、ホルダ部材60の変位方向外側に位置する変位規制部303により、第1棒11及び第2棒12の大きな変位を規制することができる。これにより、第1棒11及び第2棒12に過大な歪みが生じることを抑制できるので、第1棒11及び第2棒12の耐久性を向上できる。
長さ面部304は、正面視して略矩形の平板状に形成される部位であり、変位規制部303の背面側(図9(a)紙面奥側、図9(b)上側)且つ変位規制部303の長さ方向(図9(a)左右方向)に亘って設けられている。長さ面部304が変位規制部303の背面側に設けられることにより、変位規制部303及び長さ面部304は断面コ字状に形成される。その結果、カバー301は、変位規制部303の正面側に開放部303aが形成される。開放部303aは、発電素子310が配置される空間であり、傾斜面302a及び連結面302bにより形成される保持部材320の収容空間と連通する。
図9(b)に示すように、長さ面部304は、発電素子310がカバー301に固定されたときに、第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側に取着される固定部材50と干渉しない位置に設けられる。これにより、第1棒11及び第2棒12の振動が長さ面部304により規制されることを防止できる。その結果、発電素子310の発電効率が低下することを防止できる。
次に図9から図11を参照して、発電素子310の組み立て方法およびカバー301の取着方法について説明する。図11はカバー301に発電素子310を取着するときのカバー301及び発電素子310の正面図である。発電素子310の組み立ては、まず、コイル13に第1棒11を挿通させ、その第1棒11及び第2棒12の軸方向端部を保持部材20,320の収容空間にそれぞれ配設すると共に、永久磁石14,15を保持部材20,320の収容空間(第1棒11及び第2棒12の対向間)に配設し、接着剤により接着固定する。
保持部材320も、上述した保持部材20と同様に、ベース部21の側面から挟持対向部22,23が突設されることで、第1棒11及び第2棒12と永久磁石14とを収容する収容空間が形成される(図10参照)。即ち、かかる収容空間は、ベース部21と反対側(即ち、第1棒11及び第2棒12を挟み込む方向と第1棒11及び第2棒12の軸方向とにそれぞれ直交する方向の一方側、図10(a)紙面手前側)が開放して形成されるので、かかる収容空間に第1棒11及び第2棒12と永久磁石14とを容易に配設することができる。
次いで、固定部材50の被圧入対向部51,52の対向間へ、保持部材20を、第1棒11及び第2棒12の軸方向(図9(a)左右方向)を圧入方向として圧入する。保持部材20(挟持対向部22,23)の外面(傾斜面22c,23c)と固定部材50の被圧入対向部51,52の内面(傾斜面51a,52a)とが、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成されるので、圧入の進行に伴い、保持部材20(挟持対向部22,23)の傾斜面22c,23cが、固定部材50の被圧入対向部51,52における傾斜面51a,52aにより押圧される。これにより、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側に保持部材320が、他端側にホルダ部材60(保持部材20及び固定部材50)が取着される。
次に、図11に示すように、カバー301に形成された開放部303aから変位規制部303間に固定部材50を差し入れると共に、傾斜面302a間に第1棒11及び第2棒12を差し入れる。第1棒11及び第2棒12の軸方向に保持部材320を移動させて、挟持対向部22,23及び規制部24を連結面302bに対してスライドさせると共に、傾斜面302aの対向間に対して保持部材320の傾斜面22c,23cを圧入する。保持部材320(挟持対向部22,23)の外面(傾斜面22c,23c)と固定部302に凹設された傾斜面302aとが、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成されるので、圧入の進行に伴い、保持部材320(挟持対向部22,23)の傾斜面22c,23cが、固定部302の傾斜面302aにより押圧される。これにより、挟持対向部22,23が互いに近接する方向(永久磁石14及び規制部24を挟み込む方向)へ向けて撓み変形され、第1棒11及び第2棒12が挟持される。その結果、カバー301の固定部302に保持部材320が圧入され、発電素子310がカバー301に取着される。
ここで、保持部材320は、上述したように永久磁石14の収容空間が一方側(図10(a)紙面手前側)が開放して形成されるため、かかる収容空間に第1棒11及び第2棒12と永久磁石14とを配設する作業を容易とすることができる反面、発電中に、開放する一方側から永久磁石14が脱落するおそれがある。これに対し、第4実施の形態における発電素子310のカバー301によれば、固定部302に傾斜面302aを連結する連結面302bが形成されているので、連結面302bにより、保持部材320に形成された収容空間を閉塞することができる。その結果、永久磁石14が外部へ脱落することを抑制できる。
以上のように構成される発電素子310は、カバー301の固定部302側を振動源(図示せず)に取り付けることにより、ホルダ部材60の質量を利用して、第1棒11及び第2棒12に振り子運動(自由振動)させることができる。これにより発電素子310に発電させることができる。また、ホルダ部材60がカバー301の外に露呈しているので(図9(b)参照)、第1棒11及び第2棒12を軸直角方向に変位させる外力をホルダ部材60に付与して、第1棒11及び第2棒12を強制振動させて発電することも可能である。
また、カバー301は固定部302及び変位規制部303が一体形成されており、その固定部302に形成された傾斜面302aの対向間に保持部材320を圧入することで、圧入の進行に応じて対向挟持部22,23が徐々に撓み変形して第1棒11及び第2棒12が挟み込まれる(締め付けられる)。よって、圧入荷重に基づいて締付け荷重の調整を容易に行うことができ、発電素子310のカバー301への組み付け作業性を向上させることができる。
さらに、保持部材320が圧入される固定部302、及び、第1棒11及び第2棒12の大振動を規制する変位規制部303が一体形成されているので、保持部材320を固定する部材(例えば、第1実施の形態で説明した固定部材30)を不要にできる。その結果、保持部材320を固定する部材を省略できる分、部品点数を削減できる。
また、カバー301によれば、保持部材320により第1棒11及び第2棒12を挟み込む方向(図9(a)上下方向)と第1棒11及び第2棒12の軸方向(図9(a)左右方向)とにそれぞれ直交する方向(図9(a)紙面垂直方向)の一方側(図9(a)紙面手前側)が開放部303aにより開放される。その開放部303aは固定部302に凹設された傾斜面302a及び連結面302bに連通する。その結果、第1棒11及び第2棒12の両端に一対の保持部材20,320を取着した後、図11に示すように、保持部材20及び固定部材50が他端側に取着された第1棒11及び第2棒12を開放部303aからカバー301の内側に差し入れつつ、第1棒11及び第2棒12を傾斜面302aの対向間に差し入れることができる。
このとき、保持部材320はカバー301の外側(図11固定部302に対し右側)に位置する。固定部302に形成された傾斜面302aは、第1棒11及び第2棒12の軸方向に沿って、カバー301の外側から内側(図11固定部302に対し左側)に向かうに従って幅狭に形成されている。また、保持部材320の傾斜面22c,23cも、傾斜面302aに対応して先細り状に形成されているので、保持部材320を固定部302に圧入できる。以上のように発電素子310を組み立てた後、発電素子310の保持部材320をカバー301(固定部302)に圧入できるので、発電素子310の組立作業性およびカバー301の取付作業性を向上できる。
また、第1棒11及び第2棒12は破損し易いので、保持部材320を固定部302に圧入するときには、保持部材320を掴んで固定部302(傾斜面302a間)に圧入する必要がある。固定部302は、カバー301の外側から内側に保持部材320を圧入可能に傾斜面302aが形成されているので、保持部材320を掴んで固定部302に圧入する作業の作業性を向上できる。
なお、開放部303aは、カバー301に発電素子310を取着するときに、第1棒11及び第2棒12に取着されたホルダ部材60(固定部材50)を差し入れることができれば良いので、少なくともホルダ部材60(固定部材50)を挿入可能な大きさがあればよい。そのため、カバー301は、変位規制部303の一側縁(背面側、図9(a)紙面奥側)を長さ面部304で閉鎖できるので、発電素子310の背面側を長さ面部304で保護できる。
次に図12及び図13を参照して、第5実施の形態について説明する。第4実施の形態では、固定部302及び変位規制部303が一体に形成されたカバー301において、固定部302に形成された傾斜面302aが、軸方向に沿って、カバー301の外側から内側に向かうにつれて幅狭に形成される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、固定部302に形成された傾斜面402aが、軸方向に沿って、カバー401の内側から外側に向かうにつれて幅狭に形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態および第4実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図12(a)は第5実施の形態におけるカバー401及び発電素子410の正面図であり、図12(b)はカバー401及び発電素子410の平面図であり、図13はカバー401及び発電素子410の背面図である。なお、図12(a)から図13では、便宜上、第1棒11に巻回されたコイル13の図示を省略している。また、図12(a)から図13は、保持部材20の固定部302への圧入途中の状態を図示している。
図12(a)及び図12(b)に示すように、カバー401は、略直方体状に形成された固定部302と、その固定部302の一端面の両側に突設され互いに略平行となるように延設された一対の変位規制部303と、変位規制部303の先端側(図12(a)左側)の一側縁を連結する平板状の長さ面部404とを備え、それらが一部材として一体に形成されている。
固定部302は、互いに対向する2つの傾斜面402a及びそれら傾斜面402aを連結する連結面402bが、固定部302の正面(図12(a)紙面手前側面、図9(b)下側面)に凹設されることで、保持部材20が圧入される空間が形成される。傾斜面402a及び連結面402bは、変位規制部303の延設方向(図12(a)及び図12(b)左右方向)に沿って形成される。傾斜面402aの傾斜角度は、変位規制部303が突設される固定部302の一端面から、その反対面に向かうに従って傾斜面402a間が幅狭するように設定される。その傾斜面402aの傾斜角度は、水平面(カバー401の対称面となり図12(a)紙面と直交する仮想平面)に対し、保持部材20の傾斜面22c,23cの傾斜角度θ1と同じ角度に設定される。
長さ面部404は、正面視して略方形の平板状に形成される部位であり、変位規制部303の背面側(図12(a)紙面奥側、図12(b)上側)且つ変位規制部303の先端側(図12(a)及び図12(b)右側)に設けられている。長さ面部404が変位規制部303の背面側かつ先端側に設けられることにより、カバー401は、変位規制部303の正面側に開放部303aが、背面側に開放部404aが形成される。
開放部303aは、発電素子410が配置される空間であり、傾斜面402a及び連結面402bにより形成される保持部材20の収容空間と連通する。一方、開放部404aは、第1棒11及び第2棒12に取着された保持部材20を掴んで固定部302に圧入するときに、保持部材20を支持するための空間である。
図12(b)に示すように、長さ面部404は、発電素子410がカバー401に固定されたときに、第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側に取着される固定部材50と干渉しない位置に設けられる。これにより、第1棒11及び第2棒12の振動が長さ面部404により規制されることを防止できる。その結果、発電素子410の発電効率が低下することを防止できる。
次に図12及び図13を参照して、発電素子410の組み立て方法およびカバー401の取着方法について説明する。発電素子410の組み立ては、まず、コイル(図示せず)に第1棒11を挿通させ、その第1棒11及び第2棒12の軸方向端部を保持部材20の収容空間にそれぞれ配設すると共に、永久磁石14,15を保持部材20の収容空間(第1棒11及び第2棒12の対向間)に配設し、接着剤により接着固定する。次いで、固定部材50に保持部材20を圧入する。
次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、カバー401に形成された開放部303aに発電素子410を差し入れ、第1棒11及び第2棒12の軸方向に保持部材20を移動させて、挟持対向部22,23及び連結部25を連結面402bに対してスライドさせると共に、傾斜面402aの対向間に対して保持部材20の傾斜面22c,23cを圧入する。保持部材20(挟持対向部22,23)の外面(傾斜面22c,23c)と固定部302に凹設された傾斜面402aとが、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成されるので、圧入の進行に伴い、保持部材20(挟持対向部22,23)の傾斜面22c,23cが、固定部402の傾斜面402aにより押圧される。
これにより、挟持対向部22,23が互いに近接する方向(永久磁石14及び規制部24を挟み込む方向)へ向けて撓み変形され、第1棒11及び第2棒12が挟持される。その結果、カバー401の固定部302に保持部材20が圧入され、発電素子410がカバー401に取着される。
以上のように構成される発電素子410は、第4実施の形態の発電素子310と同様に、カバー401の固定部302側を振動源(図示せず)に取り付けることにより、ホルダ部材60の質量を利用して、第1棒11及び第2棒12に振り子運動(自由振動)させることができる。これにより発電素子410に発電させることができる。また、ホルダ部材60が変位規制部303の正面側(図12(b)下側)に露呈しているので、第1棒11及び第2棒12を軸直角方向に変位させる外力をホルダ部材60に付与して、第1棒11及び第2棒12を強制振動させて発電することも可能である。
また、カバー401によれば、保持部材20により第1棒11及び第2棒12を挟み込む方向(図12(a)上下方向)と第1棒11及び第2棒12の軸方向(図12(a)左右方向)とにそれぞれ直交する方向(図12(a)紙面垂直方向)の一方側(図12(a)紙面手前側)が開放部303aにより開放され、他方側(図12(a)紙面奥側)が開放部404aにより開放される。その開放部303aは固定部302に凹設された傾斜面402a及び連結面402bに連通する。
保持部材20をカバー401の固定部302に圧入するときには、保持部材20はカバー401の内側(図12(a)固定部302に対し左側)に位置する。固定部302に形成された傾斜面402aは、第1棒11及び第2棒12の軸方向に沿って、カバー401の内側から外側(図11(a)固定部302に対し右側)に向かうに従って幅狭に形成されている。また、保持部材20の傾斜面22c,23cも、傾斜面402aに対応して先細り状に形成されているので、保持部材20を固定部302に圧入できる。
第1棒11及び第2棒12は破損し易いので、保持部材20を固定部302に圧入するときには、保持部材20を掴んで固定部302(傾斜面402a間)に圧入する必要がある。カバー401は、変位規制部303の正面側および背面側に開放部303a,404aが形成されているので、保持部材20を掴んで固定部302に圧入する作業の作業性を向上できる。
なお、カバー401は、変位規制部303の先端側が長さ面部404により連結されているので、変位規制部303の剛性を向上させることができ、変位規制部303が振動することを抑制できる。また、変位規制部303の先端側かつ発電素子410の背面側に長さ面部404を配置することで、ホルダ部材60の背面側に長さ面部404を位置させることができる。これにより、第1棒11及び第2棒12が振動して変位するホルダ部材60の3方に、変位規制部303及び長さ面部404を位置させ、保護できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
第4実施の形態で説明したカバー301に発電素子310を取着して、実施例1における発電素子とした。カバー301の固定部302を振動源に取着して、固定部302側を振動させることにより発電素子310のホルダ部材60側を自由振動させた。なお、固定部302側に与える振動の周波数(振動源の振動数)は、発電素子310の固有振動数とした。実施例1における発電素子は、変位規制部303によりホルダ部材60の変位が規制される。変位が規制されることによるホルダ部材60の相対振幅(後述する比較例の振幅を1とした相対値)は0.5である。
(実施例2)
変位規制部303により変位が規制されることによるホルダ部材60の相対振幅を0.8とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の発電素子とした。
(比較例)
第4実施の形態で説明したカバー301の変位規制部303の先端側を除去したものに発電素子310を取着して、比較例における発電素子とした。比較例における発電素子によれば、変位規制部303の先端側が除去されているので、発電素子の固有振動数を周期とする振動が入力されると、共振によりホルダ部材60が大きく変位する。
(試験結果)
発電素子310のコイル13に流れる電流を測定することにより、発電素子310の第1棒11又は第2棒12が破壊した振動回数を測定する試験を行った。その結果、比較例における発電素子は、15万回の振動(繰返し荷重)で第1棒11が破壊した。これに対し、実施例2における発電素子によれば、1億回の振動まで第1棒11は破壊しなかった。さらに、実施例1における発電素子によれば、振動を与えても破壊しなかった。以上の実施例によれば、カバーと一体化した変位規制部を設けることにより、発電素子を保護して耐久性を向上できることが明らかである。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記第1実施の形態、第4実施の形態および第5実施の形態では、ホルダ部材40,60が保持部材20と固定部材30,50との2部材から構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、保持部材20と固定部材30,50とをそれぞれ一体に形成しても良い。なお、この場合には、圧入による第1棒11等の挟圧保持作用を得られないため、第1棒11等のホルダ部材40,60への固着を、接着剤による接着固定で行う。
上記各実施形態では、第1棒11のみにコイル13を巻回する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるのもではなく、第1棒11と第2棒12との両者にそれぞれコイル13を巻回しても良い。なお、この場合には、第1棒11及び第2棒12を同じ磁歪材料から構成する(即ち、第2棒12を第1棒11よりも磁歪効果の低い材料で構成する必要はない)。
上記各実施形態では、カバー1,101,201,301,401に保護される発電素子として、発電素子10,310,410を採用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、「磁歪材料から構成される磁歪棒と、その磁歪棒に巻回されるコイルとを備え、磁歪棒の軸方向一端側が固定端とされると共に軸方向他端側が自由振動可能な自由端とされ、磁歪棒が軸方向に伸張または収縮されることで、逆磁歪効果により発電を行うもの」であれば、他の発電素子を採用することは当然可能である。
他の発電素子としては、例えば、永久磁石14,15に代えて、電磁石を利用するものを採用することができる。また、発電素子10,310,410の系外からの磁場により磁気回路に漏れ磁束が発生する構成であれば、発電素子10,310,410の系外に磁石を配置した構成とすることは可能である。また、永久磁石や電磁石の起磁力により第1棒11及び第2棒12(磁歪棒)にバイアス磁化を印加するバックヨークを設けることも可能である。
上記第1実施の形態では、発電素子10の一端側のホルダ部材40の下面が基部2に締結固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ホルダ部材40のいずれかの部分が基部2又は蓋部6(カバー1のいずれか)に固定されていれば良い。また、固定方法も適宜選択することができる。例えば、接着固定、溶接固定、締結固定などが例示される。
上記各実施の形態では、保持部材20,320やカバー1,101,201,301,401が非磁性材料から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、カバーの外側への磁束の漏洩の抑制等を目的とする場合には、保持部材20,320やカバー1,101,201,301,401を磁性材料から形成することは当然可能である。また、保持部材20,320やカバー1,101,201,301,401を金属材料から形成するものに限定するものではなく、エンジニアリングプラスチック等の合成樹脂製とすることは当然可能である。
上記第1実施の形態では、配線挿通孔7を蓋部6の天面部6aに形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。コイル13に電気的に接続された配線を配線挿通孔7により外部に引き出すことができれば良いので、配線挿通孔7を長さ面部6bや幅面部6c、底面部2aのいずれか1以上に形成することは当然可能である。
上記第4実施の形態および第5実施の形態では説明を省略したが、第2実施の形態および第3実施の形態で説明した緩衝部材102,103,202,203を、変位規制部303やホルダ部材60に設けることは当然可能である。これにより衝撃による異音等を防止できる。
上記第4実施の形態および第5実施の形態では説明を省略したが、カバー301,401とは別の部材として形成されたカバー体(密閉空間形成部材)を設けることにより、発電素子310,410を密閉空間内に配置して、発電素子310,410に水分を寄せ付けないようにできる。その結果、発電素子310,410の腐食(電食)を抑制できる。
上記各実施の形態では、保持部材20,320を固定部材30や固定部302へ圧入する圧入方向が、第1棒11及び第2棒12の軸方向と平行な方向に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。圧入方向に沿って傾斜する傾斜面の傾斜方向を第1棒11及び第2棒12の軸方向と直交する方向に設定することは可能である。これにより、保持部材20,320を固定部材30や固定部302へ圧入する圧入方向を、第1棒11及び第2棒12の軸方向と直交する方向に設定できる。その結果、保持部材20,320に第1棒11及び第2棒12を挿入する方向と、保持部材20,320を固定部材30や固定部302に圧入する方向とを同じくすることができ、それらの作業工数を削減できる。
上記各実施の形態では、保持部材20,320を固定部材30や固定部302へ圧入するため、保持部材20,320の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面を設ける場合について説明したが、その対応する傾斜面に、係止突起と、その係止突起を係止する係止孔部とを設けることは当然可能である。これにより、固定部材30や固定部302へ圧入された保持部材20,320をさらに脱落し難くできる。
上記各実施の形態では、第1棒11及び第2棒12の寸法(即ち、厚み寸法および幅寸法)を同一とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1棒11の寸法に対し、第2棒12の寸法を異なる値(厚み寸法および幅寸法の一方のみ又は両方が異なる値)としても良い。
上記各実施の形態では、第1棒11、第2棒12を断面長方形に形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形状とすることは当然可能である。他の形状としては、断面正方形、断面円形、断面楕円形、断面多角形(例えば、断面六角形)などが例示される。
なお、例えば、第1棒11等を断面円形としたことで、永久磁石14,15と線接触となり、接触面積が確保できない場合には、永久磁石14,15の寸法または起磁力を大きくするか、或いは、第1棒11等と永久磁石14,15との間に磁性体からなり両者の形状に対応した形状(即ち、両者に面接触する形状)のスペーサを介在させ、接触面積を確保することが好ましい。これらにより、付与可能なバイアス磁界の増加を図ることができるからである。
<その他>
<手段>
技術的思想1記載の発電素子のカバーによれば、磁歪材料から構成され磁気ループの一部を構成すると共にコイルが巻回される磁歪棒を備え、前記磁歪棒の軸方向一端側が固定され他端側が振動することで前記磁歪棒が軸方向に伸張または収縮して発電が行われる発電素子のカバーであって、前記磁歪棒の軸方向一端側が固定される固定部と、前記固定部から前記磁歪棒の他端側に向かって延設されると共に、前記磁歪棒の他端側の変位方向外側に所定距離を隔てて配置される変位規制部とを備えている。
技術的思想2記載の発電素子のカバーによれば、技術的思想1記載の発電素子のカバーにおいて、前記磁歪棒は、互いに対向して配置されると共に少なくともいずれかに前記コイルが巻回される第1棒および第2棒を備え、前記発電素子は、前記第1棒および第2棒の軸方向一端側および他端側においてこれら第1棒および第2棒の対向間に挟装されると共に互いに磁極を違えて配置される一対の永久磁石と、前記第1棒および第2棒の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着され前記第1棒および第2棒の対向間に前記永久磁石が挟装された状態を保持する一対の保持部材とを備え、前記一対の保持部材のうち一方の保持部材は、前記磁歪棒の軸方向一端側に取着されると共に前記固定部に固定され、前記一対の保持部材のうち他方の保持部材は、前記磁歪棒の他端側に取着される。
技術的思想3記載の発電素子のカバーによれば、技術的思想2記載の発電素子のカバーにおいて、前記一方の保持部材は、前記固定部に圧入されて固定されるものであり、前記第1棒および第2棒を挟み込んで挟持する挟持部を備え、前記一方の保持部材の挟持部の外面および前記固定部の内面が、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成され、前記保持部材が前記固定部に圧入され、前記保持部材の挟持部の外面が前記固定部の内面に押圧されることで、前記第1棒および第2棒が前記保持部材の挟持部により挟持される。
技術的思想4記載の発電素子のカバーによれば、技術的思想3記載の発電素子のカバーにおいて、前記一方の保持部材により前記第1棒および第2棒を挟み込む方向と前記第1棒および第2棒の軸方向とにそれぞれ直交する方向の少なくとも一方側に開放すると共に前記固定部の内面に連通する開放部を備えている。
技術的思想5記載の発電素子のカバーによれば、技術的思想2から4のいずれか1項に記載の発電素子のカバーにおいて、前記保持部材は、非磁性材料から構成される。
技術的思想6記載の発電素子のカバーによれば、技術的思想1から5のいずれか1項に記載の発電素子のカバーにおいて、密閉空間を形成する密閉空間形成部材を備え、前記磁歪棒、前記固定部および前記変位規制部は、前記密閉空間内に収容される。
技術的思想7記載の発電素子のカバーによれば、技術的思想1から6のいずれか1項に記載の発電素子のカバーにおいて、前記変位規制部の内面および前記磁歪棒の他端側の変位方向外側の少なくとも一方に、前記変位規制部の内面および前記磁歪棒の他端側が衝突したときの衝撃を緩衝する緩衝部材が配設されている。
<効果>
技術的思想1記載の発電素子のカバーによれば、磁歪材料から構成され磁気ループの一部を構成する磁歪棒にコイルが巻回され、磁歪棒の軸方向一端側が固定部に固定される。磁歪棒の軸方向一端側が固定され他端側が振動することで磁歪棒が軸方向に伸張または収縮して、その軸方向と平行な方向に磁束密度が変化する。その結果、磁歪棒に巻回されたコイルに電流が発生し、発電が行われる。
固定部から磁歪棒の他端側に向かって延設される変位規制部が、磁歪棒の他端側の変位方向外側に所定距離を隔てて配置される。共振等により磁歪棒の変位が大きくなると、変位規制部に磁歪棒の他端側が当たることで、磁歪棒の所定量を超える変位が規制される。変位規制部により磁歪棒の振幅の大きさを規制して磁歪棒の歪みを抑制できるので、磁歪棒が早期に破壊されることを防止できる。よって、発電素子の耐久性を向上できる効果がある。
技術的思想2記載の発電素子のカバーによれば、磁歪棒は、互いに対向して配置される第1棒および第2棒の少なくともいずれかにコイルが巻回され、発電素子は、第1棒および第2棒の軸方向一端側および他端側においてこれら第1棒および第2棒の対向間に、互いに磁極を違えて配置される一対の永久磁石が挟装される。第1棒および第2棒の軸方向一端側および他端側に一対の保持部材がそれぞれ取着され、第1棒および第2棒の対向間に永久磁石が挟装された状態が保持される。一対の保持部材のうち一方の保持部材は、磁歪棒の軸方向一端側に取着されると共に固定部に固定され、一対の保持部材のうち他方の保持部材は磁歪棒の他端側に取着される。よって、第1棒および第2棒が振動する発電中に、第1棒および第2棒と永久磁石との間に滑りが発生することを抑制できる。滑り(摩擦抵抗)によるエネルギーの損失を低減できるので、技術的思想1の効果に加え、発電効率の向上を図ることができる効果がある。
技術的思想3記載の発電素子のカバーによれば、一方の保持部材の挟持部に第1棒および第2棒が挟み込まれて挟持され、その一方の保持部材は固定部に圧入されて固定される。一方の保持部材の挟持部の外面および固定部の内面が、圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成される。保持部材を固定部に圧入して保持部材の挟持部の外面が固定部の内面に押圧されることで、挟持部が撓んで第1棒および第2棒が保持部材の挟持部により挟持される。
即ち、固定部に保持部材を圧入すると、圧入の進行に応じて挟持部が徐々に撓み変形して第1棒および第2棒が挟み込まれる(締め付けられる)ので、圧入荷重に基づいて締付け荷重の調整を容易に行うことができる。これにより、第1棒および第2棒の対向間に挟装される永久磁石の破損を抑制しつつ、第1棒および第2棒を挟持部が挟み込む(締付ける)締付け荷重をより大きく確保して、その挟持をより強固なものとすることができる。その結果、技術的思想2の効果に加え、永久磁石が挟装された第1棒および第2棒を保持部材により確実に保持できる効果がある。
技術的思想4記載の発電素子のカバーによれば、一方の保持部材により第1棒および第2棒を挟み込む方向と第1棒および第2棒の軸方向とにそれぞれ直交する方向の少なくとも一方側が開放部により開放され、その開放部は固定部の内面に連通する。その結果、第1棒および第2棒の両端に一対の保持部材を取着した後、他方の保持部材が他端側に取着された第1棒および第2棒を開放部からカバーの内側に挿入すると共に、一方の保持部材を固定部に圧入することができる。以上のように発電素子を組み立てた後、発電素子の保持部材をカバーに圧入できるので、技術的思想3の効果に加え、発電素子の組立作業性およびカバーの取付作業性を向上できる効果がある。
技術的思想5記載の発電素子のカバーによれば、保持部材は非磁性材料から構成されるので、保持部材への磁束の漏洩を抑制して、磁束を第1棒および第2棒に集中させることができる。よって、永久磁石の起磁力によるバイアス磁界を第1棒および第2棒へ効率良く付与でき、技術的思想2から4のいずれか1項の効果に加え、発電効率の向上を図ることができる効果がある。
技術的思想6記載の発電素子のカバーによれば、密閉空間を形成する密閉空間形成部材を備え、その密閉空間形成部材により、磁歪棒、固定部および変位規制部は密閉空間内に収容されるので、密閉空間形成部材の内側への水分の浸入を抑制できる。これにより、技術的思想1から5のいずれか1項の効果に加え、磁歪棒等の腐食を抑制できる効果がある。特に、磁歪材料から形成される磁歪棒と異種金属とが接触する場合には、水分の存在により電食が生じ易くなるところ、密閉空間形成部材により水分の浸入が抑制されるので、電食の発生を抑制できる。
技術的思想7記載の発電素子のカバーによれば、変位規制部の内面および磁歪棒の他端側の変位方向外側の少なくとも一方に緩衝部材が配設される。緩衝部材により、変位規制部の内面および磁歪棒の他端側が衝突したときの衝撃が緩衝されるので、技術的思想1から6のいずれか1項の効果に加え、変位規制部に衝突した磁歪棒がその衝撃で破壊されることを防止できる。また、磁歪棒の他端側が変位規制部に衝突したときの異音の発生を防止できる効果がある。