以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明する。以下の実施形態では、本発明をスクーター型の自動二輪車1に適用した場合について説明する。以下、上下、左右、前後等の方向を示す語は、自動二輪車1の乗員から見た方向を基準として用いる。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、L、Rは、それぞれ自動二輪車1の前方、後方、左方、右方を示している。各図に適宜付される矢印I、Oは、それぞれ左右方向の内方、外方を示している。
まず、自動二輪車1の全体の構成について説明する。
図1に示されるように、自動二輪車1には、車体の骨組を構成するアンダーボーン型の車体フレーム2が設けられている。車体フレーム2は、その前部上端に配置されるヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後下方に向かって延びるダウンチューブ4と、ダウンチューブ4の後端から後上方に向かって延びるシートレール5と、を備えている。
ヘッドパイプ3には、フロントフォーク6がハンドルバー7と共に支持されている。フロントフォーク6の下端には前輪8が軸支され、前輪8の上方を覆うようにしてフロントフェンダー9が設けられている。
ダウンチューブ4の後下部には、パワーユニット10の前端部が支持されており、パワーユニット10の後端部には後輪11が軸支されている。ヘッドパイプ3とダウンチューブ4の周囲は、前方からフロントカバー12によって覆われるとともに後方からレッグシールド13によって覆われている。
シートレール5は、フレームカバー14によって覆われており、フレームカバー14とレッグシールド13の間には、運転者が乗車時に足を載置するための低床状のフットボード15が設けられている。フレームカバー14の後端側には、後輪11の上方を覆うリアフェンダー16が設けられ、リアフェンダー16の前上方には運転者シート17が設けられている。運転者シート17の下方には、ヘルメット等を収容するためのラゲッジボックス18が設けられている。
次に、パワーユニット10について更に詳細に説明する。
図2等に示されるように、パワーユニット10は、エンジン20と、エンジン20に固定される排気装置21と、無段変速機(図示せず)と、を備えている。
まず、パワーユニット10のエンジン20について説明する。エンジン20は、例えば、SOHCの空冷式単気筒型エンジンである。
図3、図4等に示されるように、エンジン20は、クランクケース22と、クランクケース22に連結されるシリンダー23と、シリンダー23に連結されるシリンダーヘッド24と、シリンダーヘッド24の前側を覆うヘッドカバー25と、クランクケース22の前部の右方(左右方向外方)を覆うケースカバー26と、ケースカバー26の右方(左右方向外方)に設けられるマグネト27及び冷却ファン28と、マグネト27及び冷却ファン28の外周を覆うファンカウリング30と、シリンダー23及びシリンダーヘッド24の外周を覆うシリンダーカウリング31と、を備えている。
クランクケース22は、左ケース部22Lと右ケース部22Rが接合されることによって形成されている。図2等に示されるように、クランクケース22の下部にはオイルパン32が設けられている。オイルパン32の後部には、ボス部33が後方に向かって突設されている。ボス部33は、オイルパン32と一体に形成されている。
図5に示されるように、クランクケース22内には、クランク軸38が左右方向(図5における紙面奥行き方向)に沿って軸支されている。クランク軸38は、軸心Xを中心に回転可能に設けられている。クランク軸38は、無段階変速装置及び遠心クラッチを備えた動力伝達機構(図示せず)を介して後輪11(図1参照)と接続されている。
シリンダー23内には、ピストン40が往復動可能に収納されている。ピストン40は、クランク軸38とコンロッド41を介して接続されており、ピストン40の往復動がコンロッド41を介してクランク軸38の回転に変換されるように構成されている。
図3等に示されるように、シリンダー23は、所定の軸線方向Y(本実施形態では、前方に向かってやや上方に傾斜する方向)に沿って延びている。シリンダー23の外周には、軸線方向Yに間隔をおいて複数段(本実施形態では5段)のフィン42が突設されている。シリンダー23の下面23cの左端部には、軸線方向Yに沿って隆起部39が設けられている。隆起部39は、複数段のフィン42と連続して設けられている。隆起部39の内面側には、カムチェーン(図示せず)が収容されている。カムチェーンは、吸気バルブ及び排気バルブ(いずれも図示せず)を作動させるための動弁機構(図示せず)とクランク軸38を接続している。
シリンダーヘッド24は、軸線方向Yに沿って延びている。シリンダーヘッド24は、シリンダー23の前側(軸線方向Yにおける一方側)に配置されている。シリンダーヘッド24の外周には、軸線方向Yに間隔をおいて複数段(本実施形態では5段)のフィン43が突設されている。
図5等に示されるように、シリンダーヘッド24の上壁面44(吸気側壁面)には、吸気ポート45が設けられている。吸気ポート45は、シリンダー23とシリンダーヘッド24の間に設けられた燃焼室46と連通している。吸気ポート45には、吸気管47が接続されている。吸気管47は吸気ポート45から上方に立ち上がり、屈曲して後方に向かって延びている。吸気管47には、エアクリーナ及び燃料噴射装置(いずれも図示せず)が接続されており、エアクリーナから導入された空気と燃料噴射装置から噴射された燃料が混合された後、吸気ポート45を介して燃焼室46に導入されるように構成されている。シリンダーヘッド24の下壁面50(排気側壁面)には、排気ポート51が設けられている。排気ポート51は、燃焼室46と連通している。排気ポート51には、後述する排気管100の前端部が接続されている。排気管100は排気ポート51から屈曲して右や後方に向かって延び、その後、屈曲して車輌の後方に向かい後述するファンカウリング30の収容部75の下方を通過している。
ケースカバー26は、本体部56と、本体部56から前下方に向かって延出する延出部57と、を備えている。ケースカバー26の本体部56の中央部には、円形の貫通穴60が左右方向に設けられており、貫通穴60にはクランク軸38の軸端38aが貫挿されている。これにより、クランク軸38の軸端38aがケースカバー26の右方(左右方向外方)に突出している。ケースカバー26の本体部56の外面(右側面)には、複数個(本実施形態では7個)の突条61が突設されている。突条61は、クランク軸38の軸心Xを中心とする放射状に配置されている。ケースカバー26の延出部57には、本体部56の前下側の突条61の延長線上に突条62が突設されている。
ケースカバー26には、ファンカウリング30のダクト部76に対応する本体部56の前上側に冷却ファン28からの冷却風をスムーズにシリンダーカウリング31内に流す導風板部64が設けられている。導風板部64の上下両縁部には、右方(左右方向外方)に向かって一対のガイド板部65、66が突設されている。ケースカバー26には、本体部56の後上方に固定部68が設けられている。固定部68の後部には、固定ボス69が設けられている。
マグネト27(図3等参照)は、円環状を成している。マグネト27は、クランク軸38(図3では図示せず)の軸端38aの外周に固定されており、クランク軸38の軸心Xを中心にクランク軸38と一体に回転するように構成されている。
冷却ファン28は、例えば遠心ファンである。冷却ファン28は、マグネト27の右方(左右方向外方)に配置されている。冷却ファン28は、マグネト27の右側面に固定されているか、又は、クランク軸38(図3では図示せず)の軸端38aの外周に固定されており、クランク軸38の軸心Xを中心にクランク軸38及びマグネト27と一体に回転するように構成されている。冷却ファン28は、クランク軸38の軸心Xを中心とする放射状に配置される多数の羽根部73と、各羽根部73の右端部(左右方向外側の端部)を連結する円環状の連結部74と、を備えている。冷却ファン28は、図2において時計回りに回転する。
図4等に示されるように、ファンカウリング30は、収容部75と、収容部75から前側(シリンダー23及びシリンダーヘッド24に近接する側)に向かって左方(左右方向内方)に傾斜しながら延びるダクト部76と、を備えている。収容部75は、マグネト27及び冷却ファン28の外周を覆っている。収容部75の外面(右側面)には、外気を導入するための開口部77が設けられている。ダクト部76は、シリンダー23及びシリンダーヘッド24の右方(左右方向外方)に配置されている。詳細には、ダクト部76は、収容部75の上部から前側にシリンダー23の軸線に略沿った方向に形成されているとともに、その左右方向の突出高さが車輌の前方に行くに従ってシリンダー23に近づいて低くなる様に形成されている。
シリンダーカウリング31は、アッパーカウリング部31Uとロアカウリング部31Lが接合されることによって形成されている。シリンダーカウリング31の前端部は、ヘッドカバー25に連結されている。シリンダーカウリング31の後端部は、クランクケース22に連結されている。
図6〜図9に示されるように、シリンダーカウリング31は、右壁部80(第1壁部)と、右壁部80と隣接する上壁部81(第2壁部)と、右壁部80と隣接すると共に上壁部81の反対側に設けられる下壁部82(第3壁部)と、右壁部80の反対側に設けられる左壁部83(第4壁部)と、を備えている。アッパーカウリング部31Uとロアカウリング部31Lとは、それぞれ右壁部80(第1壁部)の部分と左壁部83(第4壁部)の部分を有し、右壁部80(第1壁部)と左壁部83(第4壁部)にて接合されている。なお、図7〜図9において、シリンダー23及びシリンダーヘッド24は、その輪郭のみが太線で表示されている。
図7に示されるように、シリンダーカウリング31は、シリンダー23に対応する部分が小さく(細く)、シリンダーヘッド24及びシリンダーヘッド24とシリンダー23との合わせ面付近に対応する部分が大きく(太く)形成されている。つまり、シリンダーカウリング31のシリンダー23に対応する部分は、シリンダー23に接近配置されてシリンダーカウリング31とシリンダー23の間は比較的狭い空間(冷却風通路断面)とされ、シリンダーカウリング31のシリンダーヘッド24に対応する部分は、シリンダーヘッド24から比較的離れた位置に配置されてシリンダーカウリング31とシリンダーヘッド24の間に比較的広い空間(冷却風通路断面)が形成されている。これらの空間の大小によって、冷却風の流量と流速を制御して、シリンダーヘッド24及びシリンダーヘッド24とシリンダー23との合わせ面付近を効果的に冷却している。
図8、図9等に示されるように、シリンダーカウリング31の右壁部80は、シリンダー23の右面23a及びシリンダーヘッド24の右壁面52を覆っている。シリンダーカウリング31の右壁部80には、冷却ファン28からの冷却風の導入口84が設けられている。導入口84の上縁はアッパーカウリング部31Uで構成され、導入口84の下縁はロアカウリング部31Lで構成されている。つまり、アッパーカウリング部31Uとロアカウリング部31Lの間に導入口84は配置されている。導入口84は、シリンダーヘッド24の右壁面52の前後方向の中央付近から後方に至り右方(左右方向外方)に向かって突出し開口している。導入口84の右方に向かう開口には、ファンカウリング30のダクト部76が接続され、シリンダーカウリング31の内部空間とファンカウリング30の内部空間とが連通している。図5に示す様に、導入口84は、側面視でシリンダー23の上側部分の位置に形成されており、詳細には、導入口84は側面視でシリンダー23の上縁が見える位置に配置されている。
図8、図9等に示されるように、シリンダーカウリング31の上壁部81は、アッパーカウリング部31Uで構成され、シリンダー23の上面23b及びシリンダーヘッド24の上壁面44を覆っている。上壁部81には、吸気管用開口85が形成され、吸気管用開口85には吸気管47が貫挿されている。吸気管用開口85と吸気管47との隙間は、後述する排気管用開口86と排気管100との隙間よりも狭く形成されている。さらに、吸気管用開口85の周縁には、シリンダーヘッド24に向かって突出するフランジ85aが形成され、吸気管用開口85からの冷却風の漏れを抑制している。
シリンダーカウリング31の下壁部82は、ロアカウリング部31Lにて構成され、シリンダー23の下面23c及びシリンダーヘッド24の下壁面50を覆っている。図6等に示されるように、下壁部82の前部には、排気管用開口86が形成されている。排気管用開口86は、シリンダーヘッド24と対応する位置に設けられている。排気管用開口86は、略菱形状の主開口部87と、主開口部87の左前隅部から左方に向かって設けられる補助開口部88と、を備えている。略菱形状の鋭角部分である主開口部87の右前隅部は、ロアカウリング部31Lの下壁部82と右壁部80との接続部(屈曲部)に達し、略菱形状の主開口部87の鈍角部分に接続されて前後幅が主開口部87の前後幅よりも小さい補助開口部88と主開口部87とによって、下壁部82の前端部に前端縁に沿って主開口部87のみよりも長い開口が形成されている。主開口部87には、後述する排気管100が遊挿されている。主開口部87の周縁には、外方に向かうフランジ87aが形成されており、冷却風の流れを良好とするとともに剛性の向上が成されている。
下壁部82の後部には、排気口90が形成されている。排気口90は、シリンダー23と対応する位置に設けられている。排気口90は、排気管用開口86よりも後側(軸線方向Yにおける他方側)に配置されている。排気口90は、下壁部82の左側部(冷却ファン28から離間する側の部分)に設けられており、排気管用開口86よりも左側(冷却ファン28から離間する側)に偏った位置に配置されている。詳細には、図6に示す様に、排気口90は、シリンダー23の下面23cの左端部に形成された隆起部39の右側縁に沿って前後方向に長く形成されており、排気口90から隆起部39の右側縁が望める位置に形成されている。なお、排気口90の周縁にも外方に向かうフランジ90aが形成されており、冷却風の流れを良好とするとともに剛性の向上が成されている。
図10に示されるように、シリンダーカウリング31のロアカウリング部31Lの内面側には、導風リブ91が設けられている。導風リブ91は、シリンダーカウリング31のロアカウリング部31Lの内面にシリンダー23に向かって突設されている。導風リブ91は、略L字状を成している。導風リブ91は、排気口90の左縁部(左壁部83側の縁部)に沿って延びる第1仕切部92と、第1仕切部92の前端部(軸線方向Yにおける一方側の端部)から右側(右壁部80側)に向かって屈曲して延びる第2仕切部93と、を備えている。
第1仕切部92は、シリンダーカウリング31の下壁部82と左壁部83に跨って設けられている。第1仕切部92は、前側(軸線方向Yにおける一方側)に向かって右側(右壁部80側)に傾斜している。第1仕切部92の後端部(軸線方向Yにおける他方側の端部)は、排気口90の後縁部(軸線方向Yにおける他方側の縁部)よりも後側(軸線方向Yにおける他方側)に位置している。図6等に示されるように、第1仕切部92は、底面視において、シリンダー23の隆起部39と部分的にオーバーラップしている。そのため、第1仕切部92は、シリンダー23の隆起部39と僅かな隙間を介して対向している(図9参照)。
図10に示されるように、第2仕切部93は、シリンダーカウリング31の右壁部80と下壁部82に跨って設けられている。第2仕切部93は、シリンダーカウリング31の内面側から視て、排気管用開口86と排気口90の間を通過している。第2仕切部93は、左右方向に沿って延びている。図7に示されるように、第2仕切部93は、シリンダー23の外周に突設された複数段のフィン42のうちの最前段のフィン42(軸線方向Yにおいて最も一方側に位置するフィン42)と対向している。つまり、第2仕切部93は、シリンダーヘッド24とシリンダー23との合わせ面よりもシリンダー23側に位置し、シリンダーカウリング31におけるシリンダー23に対応する狭い空間とシリンダーヘッド24に対応する比較的広い空間の境界に位置し、それらの空間を分けている。
図6等に示されるように、下壁部82には、排気口90の右側(右壁部80側)且つ第2仕切部93の後側(軸線方向Yにおける他方側)に、内面側に向かって窪む凹部94が形成されている。この凹部94によってシリンダーカウリング31をシリンダー23側に接近位置し、シリンダーカウリング31とシリンダー23の間を狭い空間(冷却風通路断面)として冷却風の流量と流速を制御し、シリンダー23の下面の後部付近を効果的に冷却している。
図8、図9に示されるように、シリンダーカウリング31の左壁部83は、シリンダー23の左面23d及びシリンダーヘッド24の左壁面53を覆っている。
シリンダー23及びシリンダーヘッド24とシリンダーカウリング31の間には、冷却用空間95が形成されている。冷却用空間95には、シリンダーカウリング31の右壁部80側から上壁部81側及び左壁部83側を介さずに下壁部82側に至る第1流路96と、シリンダーカウリング31の右壁部80側から上壁部81側及び左壁部83側を介して下壁部82側に至る第2流路97と、が形成されている。つまり、シリンダー23及びシリンダーヘッド24の右側から下側に至る第1流路96と、シリンダー23及びシリンダーヘッド24の右側から上側を通過して下側に至る第2流路97と、が形成されている。
次に、パワーユニット10の排気装置21について説明する。
図2に示されるように、排気装置21は、略前後方向に延びる排気管100と、排気管100の後端部に接続されるマフラー101と、マフラー101の前部に固定されるブラケット102と、を備えている。
図5に示されるように、排気管100の前端部は、エンジン20のシリンダーヘッド24の下壁面50に設けられた排気ポート51に接続されている。これにより、エンジン20の燃焼室46から排出された排気が排気管100を介してマフラー101に流入し、マフラー101から車両後方に排出されるように構成されている。
図2に示されるように、ブラケット102の上部には、前方に向かって延びる第1取付片103が設けられている。第1取付片103の前端部は、ケースカバー26の固定部68に設けられた固定ボス69に第1固定ボルト104によって固定されている。ブラケット102の下部には、前方に向かって延びる第2取付片105が設けられている。第2取付片105の前端部は、クランクケース22のオイルパン32に突設されたボス部33に第2固定ボルト106によって固定されている。
上記のように構成された自動二輪車1の走行時には、クランク軸38の回転に伴って冷却ファン28がクランク軸38と一体に回転する。このように冷却ファン28が回転すると、開口部77を介してファンカウリング30の収容部75に外気が取り込まれ、冷却風が発生する。この冷却風は、ファンカウリング30のダクト部76によってシリンダー23及びシリンダーヘッド24の側(本実施形態では前側)に導かれ、シリンダーカウリング31の導入口84を介して冷却用空間95に送られる。詳細には、ダクト部76及びそれに連続する導入口84の配置場所や形状によって、冷却風はシリンダーヘッド24とシリンダー23との合わせ面付近であって、シリンダー23の上縁付近に主に流れ込むようにされている。以下、冷却用空間95内における冷却風の流れについて図4を用いて説明する。
冷却用空間95(図4では図示せず)の第1流路96は導風リブ91の第2仕切部93によって前部と後部に分配され、その前部を通過する冷却風F1は、シリンダー23の右面23a及びシリンダーヘッド24の右壁面52をフィン42に沿って流れ、導風リブ91の第2仕切部93によってシリンダーヘッド24の周囲を流れて排気管用開口86へと誘導され、排気管用開口86から外部に排出される。また、第1流路96の後部を通過する冷却風F2は、導風リブ91の第2仕切部93によってシリンダー23の周囲を流れて排気口90へと誘導され、排気口90から外部に排出される。この時、シリンダー23の下面23cの左端部に形成された隆起部39の右側縁によって冷却風は流れを変え、スムーズに排気口90へ向かい、隆起部39と導風リブ91の第1仕切部92とによって、シリンダーカウリング31の左壁部83側に流れることなくシリンダーカウリング31の外部に排出される。
また、冷却用空間95の第2流路97には第1流路96における導風リブ91のような明確な仕切部は無いが、比較的広い冷却風通路断面積となっている前部を通過する冷却風F3は、シリンダーヘッド24の下側において導風リブ91の第2仕切部93によって排気管用開口86へと誘導され、排気管用開口86から外部に排出される。また、第2流路97において比較的狭い冷却風通路断面積となっている後部を通過する冷却風F4は、シリンダー23の周囲をフィン42に沿って流れ排気口90に向かおうとするが、導風リブ91の第1仕切部92によって排気管用開口86側(本実施形態では前側)へと向きを変えられる。このように向きを変えられた冷却風F4は、第2流路97の前部を通過する冷却風F3と合流して、導風リブ91の第2仕切部93によって排気管用開口86へと誘導され、排気管用開口86から外部に排出される。
本実施形態では上記のように、第2流路97の後部を通過する冷却風F4が、導風リブ91によって排気管用開口86へと誘導されている。そのため、第1流路96の後部を通過する冷却風F2と第2流路97の後部を通過する冷却風F4が排気口90付近で互いに干渉するのを抑制することが可能となる。そのため、排気口90付近の領域、特に排気口90の右側の領域R1において第1流路96の後部を通過する冷却風F2の流れが滞るのを抑制することが可能となる。これに伴って、エンジン20の冷却性能を向上させることが可能となる。
また、導入口84及びダクト部76の配置場所の関係で第1流路96よりも第2流路97の方に冷却風は多量に流れ、この第2流路97を通過する冷却風F3、F4の両方を排気管用開口86に向かって集中的に流動させることができるため、特に排気管用開口86の左側の領域R2において第2流路97を通過する冷却風F3、F4の流速を上昇させることが可能となる。そのため、エンジン20の冷却性能を一層向上させることが可能となる。
また、第1流路96の前部を通過する冷却風F1と第2流路97を通過する冷却風F3、F4が排気管用開口86から排出されるため、自動二輪車1の走行時に特に高温化しやすいシリンダーヘッド24の排気ポート51(図4では図示せず)の周辺を集中的に冷却することが可能となる。
また、導風リブ91は、第1仕切部92と第2仕切部93を備えているため、冷却用空間95内における整流効果を高めることができる。これに伴って、第1流路96の後部を通過する冷却風F2と第2流路97の後部を通過する冷却風F4が排気口90付近で互いに干渉するのをより効果的に抑制することが可能となる。
また、第1仕切部92は、前側(軸線方向Yにおける一方側)に向かって右側(右壁部80側)に傾斜している。そのため、第2流路97の後部を通過する冷却風F4を排気管用開口86へと誘導しやすくなる。
また、下壁部82には、排気口90の右側(右壁部80側)且つ第2仕切部93の後側(軸線方向Yにおける他方側)に、内面側に向かって窪む凹部94が形成されている。このような構成を採用することで、第1流路96の後部を通過する冷却風F2の流速を上昇させることが可能となり、エンジン20の冷却性能を一層向上させることが可能となる。また、第1流路96の後部を通過する冷却風F2の流量を調整して、他の冷却風に配分することが可能となって、エンジン20の冷却性能を一層向上させることが可能となる。
また、第2仕切部93は、シリンダー23の外周に突設された複数段のフィン42のうちの最前段のフィン42と対向している。そのため、導風リブ91をシリンダーカウリング31の内面から大きく突出させることなく、シリンダー23と第2仕切部93の間の隙間を狭めることが可能となる。これに伴って、第1流路96の後部を通過する冷却風F2と第2流路97の後部を通過する冷却風F4がシリンダーカウリング31の排気口90付近で互いに干渉するのを一層効果的に抑制することが可能となる。
また、第1仕切部92は、底面視において、シリンダー23の隆起部39と部分的にオーバーラップしている。そのため、第1仕切部92の突出高さを低く抑えつつ第1仕切部92と隆起部39とによって効果的に第2流路97の後部を通過する冷却風F4の流れの向きを変更できる。そして、第1流路96の後部を通過する冷却風F2と第2流路97の後部を通過する冷却風F4がシリンダーカウリング31の排気口90付近で互いに干渉するのをより一層効果的に抑制することが可能となる。
本実施形態では、シリンダー23の外周に突設された複数段のフィン42のうちの最前段のフィン42と導風リブ91の第2仕切部93が対向する場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、シリンダー23の外周に突設された複数段のフィン42のうちの最前段のフィン42以外のフィン42と導風リブ91の第2仕切部93が対向しても良い。更に他の異なる実施形態では、シリンダーヘッド24の外周に突設された複数段のフィン43のうちの一段のフィン43(例えば、複数段のフィン43のうちの最後段のフィン43)と導風リブ91の第2仕切部93が対向しても良い。
本実施形態では、導風リブ91をシリンダーカウリング31の内面に突設する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、導風リブ91をシリンダー23又はシリンダーヘッド24の外周に突設しても良い。つまり、導風リブ91がシリンダーカウリング31の内面側に設けられてさえいれば、シリンダー23、シリンダーヘッド24又はシリンダーカウリング31のうちのどれに導風リブ91を設けても構わない。
本実施形態では、スクーター型の自動二輪車1に本発明の構成を適用する場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、スポーツ型やオフロード型などのスクーター型以外の自動二輪車に本発明の構成を適用しても良い。また、電動車椅子や不整地走行車両などの自動二輪車以外の車両に本発明の構成を適用しても良い。