JP6237096B2 - 量子干渉装置、原子発振器、および電子機器 - Google Patents
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Description
いずれの方式の原子発振器においても、アルカリ金属をガスセル内に緩衝ガスとともに封入し、そのアルカリ金属をガス状に保つために、ガスセルをヒーターにより所定温度に加熱する必要がある。
しかし、特許文献1に係る原子発振器では、ガスセルおよびヒーターを含むユニットから支持部を通じた熱伝導により基板に逃げてしまう熱量が大きく、その結果、原子発振器の省電力化を図ることができないという問題があった。
[適用例1]
本発明の量子干渉装置は、ベース部と、
金属原子が封入されているガスセルと、前記ガスセルを加熱する加熱部と、を含むユニット部と、
前記ユニット部と前記ベース部の間に配置され、多孔質体を有する支持部と、
を備えることを特徴とする。
このような量子干渉装置によれば、支持部が多孔質体を有するため、支持部の断熱性を高めることができる。そのため、ガスセルや加熱部から支持部を通じた熱伝導によるベース部への熱の逃げを低減し、その結果、量子干渉装置の低消費電力化を図ることができる。
本発明の量子干渉装置では、前記多孔質体は、外表面に開放する連続空孔を有していることが好ましい。
連続空孔を有する多孔質体は、一般に、空孔率が大きい。そのため、支持部を連続空孔を有する多孔質体で構成することにより、支持部の断熱性を高めることができる。また、ユニット部および支持部を真空状態(大気圧よりも減圧した状態)のパッケージ内に収納した場合、多孔質体の連続空孔内をも真空状態とすることができ、支持部の断熱性を効率的に高めることができる。また、真空下で空孔が潰れて多孔質体が変形することを防止することもできる。
本発明の量子干渉装置では、前記多孔質体は、発泡体であることが好ましい。
これにより、比較的簡単かつ確実に、空孔率の大きい多孔質体を実現することができる。
[適用例4]
本発明の量子干渉装置では、前記多孔質体は、樹脂材料を含むことが好ましい。
これにより、発泡体で構成された支持部を容易に形成することができる。また、樹脂材料は熱伝導率が比較的低いことから、支持部の断熱性を高くすることができる。さらに、支持部の形状が複雑であっても、公知の成形法により簡単かつ高精度に支持部を形成することができる。
本発明の量子干渉装置では、前記樹脂材料は、ポリイミド樹脂を含むことが好ましい。
これにより、発泡体で構成された支持部を容易に形成することができる。また、支持部の機械的強度を比較的高くすることができる。さらに、ポリイミド樹脂は比較的高い化学安定性を有することから、支持部の経時的な劣化を低減することもできる。また、耐熱性が高いため、ベース基板への熱の逃げを更に低減することができる。
本発明の量子干渉装置では、前記樹脂材料は、アクリル樹脂を含むことが好ましい。
これにより、発泡体で構成された支持部を容易に形成することができる。また、支持部の機械的強度を比較的高くすることができる。さらに、アクリル樹脂は比較的高い化学安定性を有することから、支持部の経時的な劣化を低減することもできる。
本発明の量子干渉装置では、前記ベース部は、セラミックス材料を含むことが好ましい。
これにより、ベース部を、ユニット部および支持部を収納するパッケージの一部として利用することができる。また、ベース部の断熱性を高め、量子干渉装置のさらなる低消費電力化を図ることができる。
本発明の量子干渉装置では、前記ユニット部は、前記ガスセルを構成する材料よりも熱伝導率が大きい材料を含み、前記加熱部と前記ガスセルとを熱的に接続している接続部材を有することが好ましい。
これにより、ガスセルと加熱部とを離間させることができる。その結果、通電により加熱部から生じる磁場がガスセルに悪影響を及ぼすのを低減することができる。
本発明の量子干渉装置では、前記支持部の外表面に配置され、波長4μmの電磁波に対する反射率が50%以上である反射部を有することが好ましい。
これにより、支持部から放射される熱を低減することができる。
[適用例10]
本発明の原子発振器は、本発明の量子干渉装置を備えることを特徴とする。
これにより、低消費電力化が図られた原子発振器を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の量子干渉装置を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する電子機器を提供することができる。
[適用例12]
本発明の移動体は、本発明の量子干渉装置を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する移動体を提供することができる。
1.原子発振器(量子干渉装置)
まず、本発明の原子発振器(本発明の量子干渉装置)について説明する。なお、以下では、本発明の量子干渉装置を原子発振器に適用した例を説明するが、本発明の量子干渉装置は、これに限定されず、原子発振器の他、例えば、磁気センサー、量子メモリー等にも適用可能である。
図1に示す原子発振器1は、量子干渉効果を利用した原子発振器である。
この原子発振器1は、図1に示すように、ガスセル21と、光出射部22と、光学部品231、232と、光検出部24と、ヒーター25(加熱部)と、温度センサー26と、コイル27と、制御部5と、を備える。
図1に示すように、原子発振器1では、光出射部22がガスセル21に向けて励起光LLを出射し、ガスセル21を透過した励起光LLを光検出部24が検出する。
ガスセル21内には、ガス状のアルカリ金属(金属原子)が封入されており、アルカリ金属は、図2に示すように、3準位系のエネルギー準位を有し、エネルギー準位の異なる2つの基底状態(基底状態1、2)と、励起状態との3つの状態をとり得る。ここで、基底状態1は、基底状態2よりも低いエネルギー状態である。
そして、共鳴光1の周波数ω1と共鳴光2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態1と基底状態2とのエネルギー差に相当する周波数に一致したとき、基底状態1、2から励起状態への励起がそれぞれ停止する。このとき、共鳴光1、2は、いずれも、アルカリ金属に吸収されずに透過する。このような現象をCPT現象または電磁誘起透明化現象(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)と呼ぶ。
図4は、図1に示す原子発振器の構造を示す断面図である。また、図5は、図4に示す原子発振器が備えるユニット部の加熱部および接続部材を説明するための断面図である。また、図6は、図4に示す原子発振器が備えるユニット部のガスセルおよび加熱側反射部を説明するための図である。
なお、以下では、説明の便宜上、図4中の上側を「上」、下側を「下」という。
ここで、ユニット部2は、ガスセル21と、光出射部22と、光学部品231、232と、光検出部24と、ヒーター25(加熱部)と、温度センサー26と、基板28と、接続部材29と、加熱側反射部6、81と、を含み、これらがユニット化されている。
また、原子発振器1は、ユニット部2に通電するための配線部82、83を備えている(図8参照)。
[ガスセル]
ガスセル21内には、ガス状のルビジウム、セシウム、ナトリウム等のアルカリ金属が封入されている。また、ガスセル21内には、必要に応じて、アルゴン、ネオン等の希ガス、窒素等の不活性ガスが緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。
ここで、ガスセル21の各窓部212、213は、前述した光出射部22からの励起光に対する透過性を有している。そして、一方の窓部212は、ガスセル21内へ入射する励起光が透過するものであり、他方の窓部213は、ガスセル21内から出射した励起光が透過するものである。
また、ガスセル21の本体部211を構成する材料は、特に限定されず、シリコン材料、セラミックス材料、金属材料、樹脂材料等であってもよく、窓部212、213と同様にガラス材料、水晶等であってもよい。
ガスセル21の本体部211と窓部212、213との接合方法としては、これらの構成材料に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、接着剤による接合方法、直接接合法、陽極接合法等を用いることができる。
以上説明したようなガスセル21は、ヒーター25からの熱により加熱される。これにより、ガスセル21を所望の温度に温度調節することができる。
また、加熱側反射部6の波長4μmの電磁波に対する反射率(以下、「熱の反射率」ともいう)は、高い程前述したような効果が高まるため、75%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
このような加熱側反射部6の構成材料としては、ガスセル21の外表面よりも熱の反射率が高ければ(すなわち、ガスセル21の外表面よりも熱の放射率が低ければ)、特に限定されないが、金属材料を用いることが好ましい。これにより、加熱側反射部6の熱の反射率を75%以上とすることができる。
また、加熱側反射部6を、ガスセル21を構成する材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率の材料で構成することにより、接続部材29からの熱を加熱側反射部6による熱伝導により効率的に拡散させることができる。その結果、ガスセル21内の温度分布を均一化することができる。特に、加熱側反射部6が窓部212、213間を繋いでいるので、窓部212、213間の温度差を小さくすることができる。また、加熱側反射部6が各窓部212、213の縁部に沿って全周に亘って設けられているので、各窓部212、213の温度分布の均一化を図ることができる。このような観点からも、加熱側反射部6は、金属材料で構成されていることが好ましい。
また、加熱側反射部6は、膜状をなしており、加熱側反射部6の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸着、スパッタリング等の気相成膜法を用いることができる。
なお、加熱側反射部6は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
光出射部22は、ガスセル21中のアルカリ金属原子を励起する励起光LLを出射する機能を有する。
より具体的には、光出射部22は、前述したような周波数の異なる2種の光(共鳴光1および共鳴光2)を励起光として出射するものである。
また、共鳴光2の周波数ω2は、ガスセル21中のアルカリ金属を前述した基底状態2から励起状態に励起(共鳴)し得るものである。
この光出射部22としては、前述したような励起光を出射し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザー等を用いることができる。
図4に示すように、複数の光学部品231、232は、それぞれ、前述した光出射部22とガスセル21との間における励起光LLの光路上に設けられている。
本実施形態では、光出射部22側からガスセル21側へ、光学部品231、光学部品232がこの順に配置されている。
光学部品231は、λ/4波長板である。これにより、光出射部22からの励起光LLを直線偏光から円偏光(右円偏光または左円偏光)に変換することができる。
なお、光出射部22とガスセル21との間には、波長板および減光フィルターの他に、レンズ、偏光板等の他の光学部品が配置されていてもよい。また、光出射部22からの励起光の強度によっては、光学部品232を省略することができる。
光検出部24は、ガスセル21内を透過した励起光LL(共鳴光1、2)の強度を検出する機能を有する。
本実施形態では、光検出部24は、接着剤30を介して接続部材29上に接合されている。
この光検出部24としては、上述したような励起光LLを検出し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、太陽電池、フォトダイオード等の光検出器(受光素子)を用いることができる。
以上説明したような光検出部24は、配線部83を介して、後述するパッケージ3の基体31(ベース部)に電気的に接続されている。
ヒーター25は、通電により発熱する発熱抵抗体(加熱部)を有する。
このヒーター25からの熱は、基板28および接続部材29を介して、ガスセル21に伝達される。これにより、ガスセル21(より具体的にはガスセル21中のアルカリ金属)が加熱され、ガスセル21中のアルカリ金属を所望の濃度のガス状に維持することができる。また、本実施形態では、ヒーター25からの熱は、基板28を介して光出射部22にも伝達される。
本実施形態では、ヒーター25は、基板28上に設けられている。これにより、ヒーター25からの熱は、基板28に伝達される。また、ヒーター25は、基板28に設けられた配線(図示せず)に電気的に接続されている。
温度センサー26は、ヒーター25またはガスセル21の温度を検出するものである。そして、この温度センサー26の検出結果に基づいて、前述したヒーター25の発熱量が制御される。これにより、ガスセル21内のアルカリ金属原子を所望の温度に維持することができる。
なお、温度センサー26の設置位置は、これに限定されず、例えば、接続部材29上であってもよいし、ヒーター25上であってもよいし、ガスセル21の外表面上であってもよい。
温度センサー26としては、それぞれ、特に限定されず、サーミスタ、熱電対等の公知の各種温度センサーを用いることができる。
コイル27は、通電により、磁場を発生させる機能を有する。これにより、ガスセル21中のアルカリ金属に磁場を印加することにより、ゼーマン分裂により、アルカリ金属の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器1の発振周波数の精度を高めることができる。
また、このコイル27は、ガスセル21を囲むように設けられたソレノイドコイルであってもよいし、ガスセル21を挟むように設けられたヘルムホルツコイルであってもよい。
接続部材29は、ヒーター25とガスセル21の各窓部212、213とを熱的に接続している。これにより、ヒーター25からの熱を接続部材29による熱伝導により各窓部212、213に伝達し、各窓部212、213を加熱することができる。また、ヒーター25とガスセル21とを離間することができる。そのため、ヒーター25への通電により生じた不要磁場がガスセル21内のアルカリ金属原子に悪影響を与えるのを低減することができる。また、ヒーター25の数を少なくすることができるため、例えば、ヒーター25への通電のための配線の数を少なくし、その結果、原子発振器1(量子干渉装置)の小型化を図ることができる。
より具体的に説明すると、接続部材291は、ガスセル21を挟んで配置されている1対の接続部291a、291bと、1対の接続部291a、291b間を連結する連結部291cとを有している。同様に、接続部材292は、ガスセル21を挟んで配置されている1対の接続部292a、292bと、1対の接続部292a、292b間を連結する連結部292cとを有している。これにより、ヒーター25からの熱を各窓部212、213に効率的に伝達することができる。
また、接続部291a、291b、292a、292bは、それぞれ、励起光LLの通過領域を避けるように形成されている。すなわち、接続部291a、291b、292a、292bは、それぞれ、励起光LLの通過領域の外側に配置されている。これにより、ガスセル21へ励起光を入射させるとともに、ガスセル21から励起光を出射させることができる。
なお、加熱側反射部6と接続部291a、292aとの間、および、加熱側反射部6と接続部291b、292bとの間の少なくとも一方に隙間が形成されている場合には、その隙間に、熱伝導性を有する接着剤が充填されていてもよい。かかる接着剤としては、例えば、金属ペースト、伝熱性フィラーを含有した樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤等が挙げられる。
このような接続部材29の構成材料としては、ガスセル21を構成する材料よりも熱伝導率が大きい材料であればよいが、熱伝導性に優れた材料、例えば、金属材料を用いることが好ましい。
また、接続部材29には、加熱側反射部81(低熱放射部)が接合されている。
加熱側反射部81は、波長4μmの電磁波(すなわち遠赤外線)に対する反射率が50%以上である。これにより、ガスセル21の熱が輻射により逃げるのを低減することができる。また、パッケージ3側から輻射された熱を加熱側反射部81で反射して、パッケージ3側からガスセル21への輻射による熱の伝達を低減することもできる。
反射部材811、812は、前述した1対の接続部材291、292から露出したガスセル21の側面を覆うように、接続部材291、292を挟んで設けられている。また、反射部材811、812は、接続部材291、292に接着剤等により接合されている。
このような反射部材811、812の構成材料としては、前述した加熱側反射部6と同様の材料を用いることができる。
なお、加熱側反射部81は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
基板28の一方の面(上面)には、前述した光出射部22、ヒーター25、温度センサー26および接続部材29等が搭載されている。
基板28は、ヒーター25からの熱を接続部材29へ伝達する機能を有する。これにより、ヒーター25が接続部材29に対して離間していても、ヒーター25からの熱を接続部材29へ伝達することができる。
また、光出射部22が基板28に搭載されていることにより、ヒーター25からの熱により光出射部22を温度調節することができる。
また、基板28は、光出射部22、ヒーター25、温度センサー26に電気的に接続される配線(図示せず)を有している。
このような基板28の構成材料としては、特に限定されないが、熱伝導性に優れた材料、例えば、金属材料を用いることができる。また、基板28を金属材料で構成することにより、基板28の表面の熱の反射率を高め、基板28からの熱の輻射を低減することもできる。なお、基板28を金属材料で構成した場合、基板28の表面には、基板28が有する配線の短絡防止等の目的で、必要に応じて、例えば、樹脂材料、金属酸化物、金属窒化物等で構成された絶縁層が設けられていてもよい。ただし、かかる絶縁層は、上述した熱の輻射を低減する観点から、基板28の下面にはできるだけ設けないことが好ましい。
なお、基板28は、接続部材29の形状、ヒーター25の設置位置等によっては、省略することができる。この場合、ヒーター25を接続部材29に接触させる位置に設置すればよい。また、この場合、光出射部22、ヒーター25および温度センサー26をそれぞれ配線部82に直接接続すればよい。
図4に示すように、パッケージ3は、ユニット部2および支持部材4を収納する機能を有する。なお、図4では、図示を省略しているが、パッケージ3内には、図1に示すコイル27も収納されている。また、パッケージ3内には、前述した部品以外の部品が収納されていてもよい。
基体31は、支持部材4を介してユニット部2を支持している。
また、基体31は、配線基板であり、図示しないが、基体31には、パッケージ3の外部から内部のユニット部2への通電のための複数の配線および複数の端子が設けられている。
本実施形態では、基体31の上面には、図4に示すように、ベース側反射部33(低熱放射部)が配置されている。そして、ベース側反射部33は、波長4μmの電磁波(すなわち遠赤外線)に対する反射率が50%以上である。これにより、支持部材4の熱が輻射により逃げるのを低減することができる。また、パッケージ3側から輻射された熱をベース側反射部33で反射して、パッケージ3側から支持部材4への輻射による熱の伝達を低減することもできる。なお、ベース側反射部33は、基体31の上面でなくても、支持部材4と基体31との間、例えば、支持部材4の下面に配置されていても、支持部材4から放射される熱が基体31に伝達されるのを低減することができる。
このようなベース側反射部33の構成材料としては、前述した加熱側反射部6と同様の材料を用いることができる。
なお、ベース側反射部33は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
このようなベース側反射部33が設けられた基体31には、蓋体32が接合されている。
なお、基体31と蓋体32との間には、これらを接合するための接合部材が介在していてもよい。また、図4では、ベース側反射部33が基体31の上面の全域に亘って形成され、ベース側反射部33を介して、基体31と蓋体32とが接合されているが、ベース側反射部33の形成領域は、基体31の上面の一部であってもよく、その場合、基体31と蓋体32との間にベース側反射部33が介在していなくてもよい。
また、基体31と蓋体32とは気密的に接合されているのが好ましい。すなわち、パッケージ3内が気密空間であることが好ましい。これにより、パッケージ3内を減圧状態または不活性ガス封入状態とすることができ、その結果、原子発振器1の特性を向上させることができる。
支持部材4(支持部)は、パッケージ3内に収納されており、パッケージ3の一部を構成する基体31に対してユニット部2を支持する機能を有する。すなわち、支持部材4は、基体31に対してユニット部2の各部を直接的または間接的に支持している。
また、支持部材4は、ユニット部2とパッケージ3の外部との間の熱の伝達を低減する機能を有する。これにより、ユニット部2の各部と外部との間の熱干渉を低減することができる。
この支持部材4は、図7に示すように、複数の脚部41(柱部)と、複数の脚部41を連結する連結部42とを有する。
複数の脚部41は、それぞれ、パッケージ3の基体31の内側の面に例えば接着剤により接合されている。
本実施形態では、脚部41は、平面視にて、正方形をなすガスセル21の角部に対応するように、4つ設けられている。
各脚部41は、円筒状をなし、基体31の内側の面に対して垂直な方向に延びて立設されている。
この中空部411は、大気圧よりも減圧した雰囲気(減圧状態または真空状態)であることが好ましい。これにより、脚部41における熱の伝達をより効果的に低減することができる。
なお、中空部411の上側が開放していない場合、各脚部41と基体31との間に中空部411の内外を連通する隙間を形成すれば、パッケージ3内を減圧状態とすることにより、中空部411内も減圧状態とすることができる。
連結部42は、全体が板状をなしている。すなわち、連結部42は、板状をなす板状部を含む。これにより、比較的簡単な構成で、支持部材4の剛性を高めることができる。
この連結部42の上面(脚部41とは反対側の面)には、ユニット部2(より具体的には基板28)が接合(接続)されている。これにより、支持部材4によりユニット部2が支持されている。
この連結部42の上面(すなわちユニット部2側の面)の中央部には、凹部421が形成されている。
この凹部421内の空間は、ユニット部2と連結部42との間に位置する。そのため、連結部42とユニット部2との間には、空間が形成されている。これにより、ユニット部2と連結部42との接触面積を低減して、連結部42とユニット部2との間の熱の伝達を効果的に低減することができる。また、凹部421により薄肉化して連結部42の熱抵抗を高め、連結部42における熱の伝達を低減することもできる。
ユニット部2と支持部材4との接合箇所は、凹部421の外周に沿って全周に亘って形成されていてもよいが、接合箇所を介したユニット部2と支持部材4との間の熱伝導を低減する観点から、スポット状に複数形成されていることが好ましい。
このような支持部材4によれば、各脚部41の下端部(一端部)が平面視にてユニット部2に対して離間している。そのため、支持部材4は、ユニット部2と支持部材4との接続部から各脚部41の下端部(すなわち脚部41と基体31との接続部)への熱の伝達経路が屈曲または湾曲した部分(曲がっている部分)を有する。
支持部材4を構成する多孔質体は、支持部材4の外表面に開放する連続空孔(連続気泡)を有していることが好ましい。連続空孔を有する多孔質体は、一般に、空孔率が大きい。そのため、連続空孔を有する多孔質体で支持部材4を構成することにより、支持部材4の断熱性を高めることができる。また、ユニット部2および支持部材4を真空状態(大気圧よりも減圧した状態)のパッケージ3内に収納した場合、多孔質体の連続空孔内をも真空状態とすることができ、支持部材4の断熱性を効率的に高めることができる。また、真空下で空孔が潰れて多孔質体が変形することを防止することもできる。
また、支持部材4の構成材料としては、熱伝導性が比較的低く、かつ、支持部材4がユニット部2を支持する剛性を確保し得る材料であれば、特に限定されないが、例えば、樹脂材料、セラミックス材料等の非金属を用いることが好ましく、樹脂材料を用いることがより好ましい。支持部材4を主として樹脂材料で構成した場合、支持部材4の熱抵抗を高くすることができ、また、支持部材4の形状が複雑であっても、例えば射出成型等の公知の方法を用いて、支持部材4を容易に製造することができる。特に、支持部材4を主として樹脂材料で構成した場合、発泡体で構成された支持部材4を容易に形成することができる。なお、脚部41の構成材料と連結部42の構成材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、支持部材4は、樹脂材料を用いて構成されている場合、樹脂材料の他に、無機フィラーや各種添加剤等が50wt%未満の含有量で含有されていてもよい。
支持側反射部7は、図7(b)に示すように、支持部材4の外表面に配置され、波長4μmの電磁波に対する反射率が50%以上である。これにより、支持部材4から放射される熱を低減することができる。
特に、支持側反射部7は、図7(b)に示すように、上下方向(すなわち、支持部材4の表面にガスセル21と基体31とが並ぶ方向)に沿って互いに離れて配置されている複数の部分71、72、73を含んでいる。これにより、支持側反射部7を介したガスセル21と基体31との間の熱伝導を低減することができる。すなわち、支持側反射部7は、ガスセル21と基体31との間の熱伝導の増加を小さくしながら、支持部材4からの熱輻射を低減することができる。その結果、原子発振器1の低消費電力化を図ることができる。
本実施形態では、支持側反射部7の複数の部分71、72、73は、ガスセル21と基体31とが並ぶ方向に対して垂直な方向から見たとき、縞状に配置されている。これにより、比較的簡単な構成で、支持側反射部7を介したガスセル21と基体31との間の熱伝導を効率的に低減することができる。
最もガスセル21側に配置された部分71は、連結部42の外周面だけでなく、連結部42の上面にも設けられている。これにより、連結部42の上面からの熱の輻射を低減することができる。
また、部分72は、連結部42の外周面だけでなく、連結部42の下面にも設けられている。これにより、連結部42の下面からの熱の輻射を低減することができる。
このような支持側反射部7の構成材料としては、支持部材4の外表面よりも熱の反射率が高ければ、特に限定されないが、金属材料を用いることが好ましい。これにより、支持側反射部7の熱の反射率を75%以上とすることができる。その結果、支持側反射部7の熱の輻射を低減する作用を好適に発揮させることができる。
前述したような材料は、支持部材4を構成する材料よりも熱伝導率が大きいが、前述したように、間隔G1、G2を設けることにより、支持側反射部7全体の熱伝導を低減することができる。
また、部分71、72、73は、それぞれ膜状をなしており、支持側反射部7の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸着、スパッタリング等の気相成膜法を用いることができる。
図8は、図4に示す原子発振器が備える配線を説明するための側面図である。また、図9(a)は、図8に示す光出射部、加熱部および温度センサーに接続された配線の展開図、図9(b)は、図9(a)中のB−B線断面図である。また、図10(a)は、図8に示す光検出部に接続された配線の展開図、図10(b)は、図10(a)中のC−C線断面図、図10(c)は、(a)中のD−D線断面図である。また、図11は、加熱部に接続された配線の横断面積とその配線の抵抗値および加熱部の消費電力との関係を示すグラフである。
図8に示すように、配線部82は、前述した基板28と基体31とを電気的に接続している。また、配線部83は、前述した光検出部24と基体31とを電気的に接続している。
配線部82、83は、それぞれ、フレキシブル配線基板で構成されている。具体的に説明すると、図9に示すように、配線部82は、ベースフィルム821と、複数の配線822a、822b、822c、822d、822e、822f(以下、「配線822」ともいう)と、カバーフィルム823と、を有している。同様に、図10に示すように、配線部83は、ベースフィルム831と、複数の配線832a、832b(以下、「配線832」ともいう)と、カバーフィルム833と、を有している。なお、配線部82、83の各層間には、接着層が設けられていてもよい。
また、ベースフィルム821、831およびカバーフィルム823、833の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂のような樹脂材料を用いることができる。
配線822は、温度センサー26と導通する1対の配線822a、822bと、光出射部22と導通する1対の配線822c、822dと、ヒーター25と導通する1対の配線822e、822fとで構成されている。
配線832a、832bの一端部(図10(a)中の右側の端部)には、それぞれ、基体31に電気的に接続される端子834a、834bが設けられている。一方、配線832a、832bの他端部(図10(a)中の左側の端部)には、それぞれ、光検出部24に電気的に接続される端子835a、835bが設けられている。
原子発振器1を構成する電子部品のうち、最も原子発振器1全体の消費電力に占める割合の大きい消費電力を有するのは、ヒーター25である。ここで、ヒーター25に接続される各配線822e、822fの横断面積を小さくしていくと、図11に示すように、ヒーター25の消費電力も小さくなる。特に、各配線822e、822fの横断面積が100μm2以下となると、ヒーター25の消費電力が10mW以下となる。ヒーター25の消費電力が10mW以下となると、原子発振器1全体の消費電力を100mW以下とすることができ、様々な電子機器に搭載することが可能となる。
ここで、配線部82全体の長さが配線部83全体の長さよりも短い。そのため、配線部82の方が配線部83よりもユニット部2から基体31への熱の伝達経路が短い。したがって、配線822および配線832のうち少なくとも配線822は、各配線の横断面積が60μm2以上100μm2以下である部分を含むことが好ましい。
特に、ヒーター25に電気的に接続されている配線822e、822fはミアンダ配線を含んでいることにより、ヒーター25から配線822e、822fを通じた熱伝導による基体31への熱の逃げを効果的に低減することができる。
このような配線822、832の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、金属材料を用いることが好ましい。一般に金属材料は延性に優れる。そのため、配線822、832を金属材料で構成することにより、横断面積が小さい配線822、832を容易に形成することができる。
プラチナまたはプラチナを含む合金、銅または銅を含む合金は、薄膜を容易に形成できるだけでなく、熱伝導率が比較的低い。そのため、配線822、832の熱伝導率を低減することができる。また、プラチナまたはプラチナを含む合金は化学的安定性に優れていることから、腐食防止等を目的とするコーティングを配線822、832に施す必要がなく、配線822、832の形成が容易であるとともに、配線822、832の横断面積を容易に小さくすることができる。また、配線822、832の曲げによる断線を防止することもできる。
なお、本実施形態では、配線部82が基板28とは別体で構成されているが、配線部82が基板28と一体で構成されていてもよい。この場合、例えば、配線部82および基板28は、ともにフレキシブル配線基板で一体に構成してもよいし、配線部82をフレキシブル部とし基板28をリジット部としたリジットフレキシブル配線基板で構成してもよい。
この反射部84は、図10(b)に示すように、配線部83のベースフィルム831の表面に配置されている。そして、反射部84は、波長4μmの電磁波に対する反射率が50%以上である。これにより、ベースフィルム831からの熱の放射を低減することができる。
また、反射部84の熱の反射率は、前述した加熱側反射部6と同様、高い程前述したような効果が高まるため、75%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
また、反射部84は、膜状をなしており、反射部84の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、蒸着、スパッタリング等の気相成膜法を用いることができる。
なお、反射部84は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
図1に示す制御部5は、ヒーター25、コイル27および光出射部22をそれぞれ制御する機能を有する。
このような制御部5は、光出射部22の共鳴光1、2の周波数を制御する励起光制御部51と、ガスセル21中のアルカリ金属の温度を制御する温度制御部52と、ガスセル21に印加する磁場を制御する磁場制御部53とを有する。
また、磁場制御部53は、コイル27が発生する磁場が一定となるように、コイル27への通電を制御する。
以上説明したような本実施形態の原子発振器1によれば、支持部材4が多孔質体で構成されているため、支持部材4の断熱性を高めることができ。そのため、ガスセル21やヒーター25から支持部材4を通じた熱伝導による基体31への熱の逃げを低減し、その結果、原子発振器1の低消費電力化を図ることができる。
以上説明したような本発明の原子発振器は、各種電子機器に組み込むことができる。このような本発明の原子発振器を備える電子機器は、優れた信頼性を有する。
以下、本発明の原子発振器を備える電子機器の一例について説明する。
図12は、GPS衛星を利用した測位システムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。
GPS衛星200は、測位情報(GPS信号)を送信する。
基地局装置300は、例えば電子基準点(GPS連続観測局)に設置されたアンテナ301を介してGPS衛星200からの測位情報を高精度に受信する受信装置302と、この受信装置302で受信した測位情報をアンテナ303を介して送信する送信装置304とを備える。
GPS受信装置400は、GPS衛星200からの測位情報をアンテナ401を介して受信する衛星受信部402と、基地局装置300からの測位情報をアンテナ403を介して受信する基地局受信部404とを備える。
また、前述したような本発明の原子発振器は、各種移動体に組み込むことができる。このような本発明の原子発振器を備える移動体は、優れた信頼性を有する。
以下、本発明の移動体の一例について説明する。
図13は、本発明の原子発振器を備える移動体(自動車)の構成を示す斜視図である。
図13に示す移動体1500は、車体1501と、4つの車輪1502とを有しており、車体1501に設けられた図示しない動力源(エンジン)によって車輪1502を回転させるように構成されている。このような移動体1500には、原子発振器1が内蔵されている。そして、原子発振器1からの発振信号に基づいて、例えば、図示しない制御部が動力源の駆動を制御する。
以上、本発明の量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、前述した実施形態の各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、ガスセルが基板および接続部材を介して間接的に支持部に支持されている場合を例に説明したが、ガスセルが支持部に直接的に支持されていてもよい。
また、前述した実施形態では、ユニット部とベース部との電気的接続にフレキシブル配線基板を用いた場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、リード線であってもよい。
Claims (10)
- ベース部を含むパッケージと、
金属原子が封入されているガスセルと、前記ガスセルを加熱する加熱部と、前記ガスセルに向けて光を出射する光出射部と、を含む、前記パッケージに収納されたユニット部と、
前記ベース部に接続された複数の脚部と、前記複数の脚部を連結する連結部と、を含み、前記ユニット部と前記ベース部との間に配置され、かつ、前記パッケージに収納された、多孔質体を有する支持部と、
を備え、
前記脚部は、前記パッケージ内に連通する中空部を含む、
量子干渉装置。 - 前記多孔質体は、外表面に開放する連続空孔を有している請求項1に記載の量子干渉装置。
- 前記多孔質体は、発泡体である請求項2に記載の量子干渉装置。
- 前記多孔質体は、樹脂材料を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の量子干渉装置。
- 前記樹脂材料は、ポリイミド樹脂またはアクリル樹脂を含む請求項4に記載の量子干渉装置。
- 前記ベース部は、セラミックス材料を含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の量子干渉装置。
- 前記ユニット部は、前記ガスセルを構成する材料よりも熱伝導率が大きい材料を含み、
前記加熱部と前記ガスセルとを熱的に接続している接続部材を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の量子干渉装置。 - 前記支持部の外表面に配置され、波長4μmの電磁波に対する反射率が50%以上である反射部を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の量子干渉装置。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の量子干渉装置を備える、原子発振器。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の量子干渉装置を備える、電子機器。
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