JP6237051B2 - リチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーの製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔膜用スラリーの製造方法及び多孔膜用スラリーに関するものである。
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、繰り返し充放電が可能なリチウムイオン二次電池は、環境対応からも今後の需要の拡大が見込まれている。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が大きく携帯電話やノート型パソコン等の分野で利用されているが、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、大容量化等より一層の性能向上が要求されている。
セパレータは、リチウムイオン二次電池の正極と負極の電気的短絡を防ぐ重要な機能を 担っており、セパレータの耐熱性を高めることは、電池の安全性を向上させる意味で重要であり、近年、ポリエチレンなどの有機高分子セパレータ基材表面に耐熱性を有する非導電性粒子を形成することが行われている。
しかし、用いる非電導性粒子の種類によっては、金属異物が混入しており、電池の短絡の原因となったり、多孔膜の厚みよりも粒子径の大きな粒子が混入しており、電池の安全性を大きく損なうおそれがあった。
特許文献1には、酸化物純度が90質量%以上であって、かつ、10μm以上の粗大粒子の含有量が質量比で10ppm以下の無機酸化物粉末を多孔膜に用いることが開示されており、また、無機酸化物粉末が、αアルミナ粉末の場合、純度が90質量%を下回ると金属異物異物量が多くなり電池の短絡の原因になると記載されている。
特開2012−4103号公報
しかし、前記特許文献1に記載されているような、単純に無機酸化物粉末の酸化物純度が高いものを用いるというだけでは、微量の金属異物が残ってしまい、依然電池の安全性が十分とは言えなかった。
かかる状況の下、本発明の目的は、リチウムイオン二次電池の安全性に優れた非電導性粒子を含む多孔膜用スラリーの製造方法、及び、その製造方法によって得られた多孔膜用スラリーを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記目的を達成できることを見出し、下記の本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、
(1) 非導電性粒子を含む多孔膜用スラリーを製造する方法であって、非導電性粒子と溶媒とを混ぜ合わせてスラリーとする混合工程と、前記混合工程の後に、前記スラリー中の非導電性粒子を一次粒子に分散させる分散工程と、を含み、前記分散工程が、前記非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が90%である粒子径をD90としたとき、前記分散工程直後の非導電性粒子のD90が1.0μm以上1.6μm以下で、かつ、前記分散工程直後の非導電性粒子のD90に対する前記分散工程直前の非導電性粒子のD90の比を1.2〜2.0とするものであり、前記分散工程の後に、スラリーから磁性物質を除去する磁性物質除去工程と、を含む多孔膜用スラリーの製造方法、
(2) 前記分散工程において、前記非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が10%である粒子径をD10としたとき、前記分散工程直後の非導電性粒子のD10が、0.2μm以上0.5μm以下である(1)記載の多孔膜用スラリーの製造方法、
(3) 非導電性粒子を含む多孔膜用スラリーを製造する方法であって、前記分散工程と前記磁性物質除去工程との間に、分級工程を含み、多孔膜用スラリー中の10μm以上の粒子を固形分質量基準で100ppm以下とする、(1)または(2)に記載の多孔膜用スラリーの製造方法、
(4) (1)〜(3)の何れかに記載の多孔膜用スラリーの製造方法により製造された多孔膜用スラリーであって、前記多孔膜用スラリー中の磁性物質が固形分質量基準で50ppm以下である多孔膜用スラリー
が提供される。
本発明によれば、磁性物質および粗大粒子が極めて少なく、電池の安全性に優れた多孔膜用スラリーの製造方法及び多孔膜用スラリーを提供することができる。
本発明の多孔膜用スラリーの製造方法における製造工程を示すフローチャートである。 本発明の多孔膜用スラリーの製造方法における混合工程の一実施形態を示す概略図である。 本発明の多孔膜用スラリーの製造方法における分級工程及び分散工程の一実施形態を示す概略図である。 本発明の多孔膜用スラリーの製造方法における調製工程、ろ過工程及び磁性物質除去工程の一実施形態を示す概略図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る多孔膜用スラリーの製造方法について説明する。図1は、本発明の多孔膜用スラリーの製造方法の製造工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の多孔膜用スラリーの製造方法は、非導電性粒子を含む多孔膜用スラリーを製造する方法であって、非導電性粒子と溶媒とを混ぜ合わせてスラリーとする混合工程(S1)と、前記混合工程の後に、前記スラリー中の非導電性粒子を一次粒子に分散させる分散工程(S2)と、を含み、前記非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が90%である粒子径をD90としたとき、前記分散工程直後の非導電性粒子のD90が1.0μm以上1.6μm以下で、かつ、前記分散工程直後の非導電性粒子のD90に対する前記分散工程直前の非導電性粒子のD90の比を1.2〜2.0とするものであり、前記分散工程の後に、スラリーから磁性物質を除去する磁性物質除去工程(S6)と、を含む。
また、本発明の多孔膜用スラリーの製造方法は、前記分散工程(S2)と前記磁性物質除去工程(S6)との間に、分級工程(S3)を含むことが好ましい。
さらに、本発明の多孔膜用スラリーの製造方法は、前記混合工程(S1)、前記分散工程(S2)及び必要に応じて行われる分級工程(S3)を経て得られたスラリーに増粘剤、バインダー、濡れ剤を混合し調製溶液を得る調製工程(S4)及び、前記調製工程(S4)で得られた調製溶液をろ過するろ過工程(S5)を含むことが好ましい。
また、前記調製工程(S4)で混合される増粘剤は、予めプレ調製工程(S8)において混合されることが好ましい。
また、本発明の多孔膜用スラリーの製造方法により得られる多孔膜用スラリーは、充填工程(S7)にて容器に充填されることが好ましい。
以下、各工程について説明する。
(混合工程(S1))
本発明の混合工程(S1)においては、非導電性粒子と溶媒とを混ぜ合わせて、スラリーを得る。混合方法は、特に限定されないが、(i)非導電性粒子を溶媒に供給し攪拌する方法、(ii)非導電性粒子を充填した容器に溶媒を投入する方法等が挙げられる。
ここで、本発明に用いる非電導性粒子としては、リチウムイオン二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定である非導電性の無機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、酸化鉄、酸化珪素、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化チタン等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子等が用いられる。これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化されていてもかまわず、また単独でも2種以上の組合せで用いてもよい。これらの中でも電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化アルミニウムが好ましい。
酸化アルミニウムには、ボーキサイトを出発原料とするバイヤー法で製造された低純度の汎用品と、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって製造するアルコキシド法、アンモニウム明ばんの熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩の熱分解法、アルミニウムの水中火花放電法、気相酸化法等で製造された高純度の特殊品がある。
前記バイヤー法で製造された低純度の酸化アルミニウムは、安価であるものの、粒子径も不揃いであり、不純物として鉄などの磁性物質を含むため、リチウム二次電池用の多孔膜に用いると電池の安全性に問題があった。この点、本願発明の方法を用いることによって、前記バイヤー法による汎用品の酸化アルミニウムであっても、安全性の高いリチウムイオン二次電池とすることができる。
前記バイヤー法で製造された酸化アルミニウム中の磁性物質の量は、通常10〜1000ppmである。また、前記バイヤー法で製造された酸化アルミニウムは、必要に応じて回転式ボールミルなどを用いて粉砕処理されて用いられる。
混合工程前の非電導性粒子のD90は、通常2.3μm以下、好ましくは2.2μm以下、より好ましくは2.1μm以下であり、通常2.0μm以上である。
また、非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が50%である粒子径をD50としたとき、混合工程前の非電導性粒子のD50は、通常1.4μm以下、好ましくは1.3μm以下、より好ましくは1.2μm以下であり、通常0.6μm以上、好ましくは0.7μm以上、より好ましくは0.8μm以上である。
また、混合工程前の非電導性粒子のD10は、通常0.5μm以下、好ましくは0.45μm以下、より好ましくは0.4μm以下であり、通常0.25μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.35μm以上である。
混合工程前の非導電性粒子のD10、D50、D90が前記範囲にあることで、分散工程等を経て得られたスラリー中の非導電性粒子のD10、D50、D90を、電池特性が向上しうる範囲とすることができる。
また、混合工程前の非導電性粒子のD10、D50が小さいと、後の分散工程において、分散剤の働きが弱まり、非導電性粒子を一次粒子に分散させ難くなるおそれがある。
なお、非導電性粒子のD10、D50、D90の累積粒度分布は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD−7100」)により測定することができる。
上記(i)及び(ii)の方法においては、予め分散剤を水に溶解させた分散剤水溶液を調製することが好ましい。即ち(i’)非導電性粒子を分散剤水溶液に供給し攪拌する方法、(ii’)非導電性粒子を充填した容器に分散剤水溶液を投入する方法が好ましい。
予め分散剤を添加しておくことで、後の分散工程後で、非電導性粒子の1次粒子が再凝集するのを抑制することができる。
また、水としてはイオン交換水を好ましく用いることができる(以下においても同様)。
分散剤としては、酸性基含有単量体単位を有する水溶性の重合体を用いる。ここで、酸性基含有単量体単位とは、酸性基含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、酸性基含有単量体とは、酸性基を含む単量体を示す。
酸性基含有単量体単位を有する分散剤は、当該分散剤自体も酸性基を含むことになる。この酸性基の作用により、多孔膜用スラリーにおいて非導電性粒子の分散性を向上させることができる。
本発明の多孔膜用スラリーでは、このように非導電性粒子の分散性が良好であることにより、非導電性粒子の凝集を防止できるので、多孔膜用スラリーにおける非導電性粒子のBET比表面積、D10、D50及びD90を前記の好適な範囲に容易に収めることができる。また、非導電性粒子の凝集を防止できるので、凝集で生じうる巨大粒子による多孔膜及び有機セパレータ層の破損を防止できる。そのため、短絡を防止してリチウムイオン二次電池の安全性を向上させることができる。
酸性基としては、例えば、−COOH基(カルボン酸基);−SO3H基(スルホン酸基);−PO32基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基;などが挙げられる。
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸などが挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。これらの中でもモノカルボン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
−PO32基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、上述した単量体の塩も、酸性基含有単量体として用いうる。
上述した酸性基含有単量体の中でも、カルボン酸基を有する単量体及びスルホン酸基を有する単量体が好ましい。これらを用いることにより、分散剤の非導電性粒子に対する吸着性を効果的に向上させて、非導電性粒子の分散性をより高めることができる。
また、酸性基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。例えば、同じ種類の酸性基を含む異なる種類の単量体を組み合わせて用いてもよい。また、例えば、異なる種類の酸性基を含む単量体を組み合わせて用いてもよい。中でも、スルホン酸基を有する単量体とカルボン酸基を有する単量体とを組み合わせると、非導電性粒子の分散性を効果的に高めることができるため、特に好ましい。
スルホン酸基を有する単量体とカルボン酸基を有する単量体とを組み合わせて用いる場合、「スルホン酸基を有する単量体/カルボン酸基を有する単量体」で表される重量比は、好ましくは1/999以上、より好ましくは0.01以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下である。したがって、分散剤における、スルホン酸基を含有する構造単位とカルボン酸基を含有する構造単位との重量比も、前記の範囲の収まることが好ましい。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、水溶性重合体の凝集による粘度の上昇を抑制できるので、非導電性粒子の安定性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、非導電性粒子への分散剤の吸着性を高めることができるので、非導電性粒子の分散性を高めることができる。
酸性基含有単量体単位を有する分散剤は、酸性基含有単量体、及び他の任意の構造単位を構成する単量体を含む単量体組成物を付加重合することによって調製される。従って、β−グルコースが縮合重合してなるセルロースの誘導体であるカルボキシメチルセルロースなどは、本発明に用いる酸性基含有単量体単位を含む分散剤には含まれない。
分散剤の量は、非導電性粒子100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.8重量部以下である。分散剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、非導電性粒子への分散剤の吸着性を高めることができるので、非導電性粒子の分散性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、分散剤の凝集による粘度の上昇を抑制できるので、非導電性粒子の安定性を高めることができる。
分散剤水溶液の調製方法としては、好ましくはインペラー式攪拌機、メディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサーを用いて分散剤及び水を混合する方法が挙げられる。これらのなかでも、インペラー式攪拌機を用いて分散剤及び水を混合する方法がより好ましい。
また、上記(i’)の方法では、分散剤水溶液が入れられた混合槽にポンプ、バキュームコンベア、チューブコンベアを用いて非導電性粒子を供給することが好ましい。これらのなかでも、非導電性粒子の付着を防ぐことができる観点から、バキュームコンベアを用いてアルミナを供給することがより好ましい。
上記(i’)の方法では、非導電性粒子を分散剤水溶液に供給した後に攪拌を行う。攪拌方法としては、インペラー式攪拌機、メディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサーを用いた攪拌方法を好ましく用いることができ、インペラー式攪拌機を用いることがより好ましい。
上記(ii’)の方法では、非導電性粒子を充填した容器に分散剤水溶液を投入した後に攪拌を行う。例えば、図2(a)に示すようにドラム缶2に非導電性粒子が充填されたものを好ましく用いることができる。また、図2(b)に示すようにドラム缶2に分散剤及び水を加えることが好ましい。
攪拌方法としては、容器回転式攪拌機(ドラムシェーカー)、インペラー式攪拌機、メディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサーを用いた攪拌方法を好ましく用いることができ、非導電性粒子が充填された容器をそのまま用いて攪拌するため粉じん作業がなく作業性が良く、かつ、非導電性粒子の一次粒子が破壊され難いことから、図2(c)に示すように容器回転式攪拌機(ドラムシェーカー)4を用いることがより好ましい。
混合工程(S1)において、混合前の非導電性粒子と、混合後の非導電性粒子とではD10、D50、D90に大きな変化は無いが、混合工程により非導電性粒子の一次粒子が破壊されたり、非導電性粒子の二次粒子が一次粒子に分散されても、本発明の範囲である限り特に制限されない。
(分散工程(S2))
本発明の分散工程(S2)においては、混合工程(S1)で得られたスラリー中の非導電性粒子を一次分散させる。通常、非導電性粒子には、一次粒子が凝集した二次粒子として存在しているものがある。分散工程において非導電性粒子の二次粒子を一次粒子とすることで、後の磁性異物除去工程で磁性異物を効果的に除去することができる。
本願発明の分散工程直後の非導電性粒子のD90は、1.60μm以下、好ましくは1.40μm以下、より好ましくは1.35μm以下、さらに好ましくは1.3μm以下であり、1.0μm以上である。
分散工程直後の非導電性粒子のD90が前記範囲にあると、多孔膜の強度が高まり、多孔膜の割れ、剥がれを抑制することができる。
また、分散工程直後の非導電性粒子のD90に対する分散工程直前の非導電性粒子のD90の比は、1.2以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上であり、2.0以下である。
分散工程直後の非導電性粒子のD90に対する分散工程直前の非導電性粒子のD90の比が前記範囲にあると、後の磁性物質除去工程において、非電導性粒子に含まれる磁性物質を効果的に除去することができ、極めて低いレベルにまで、磁性物質を低減することができる。
また、前記分散工程直後の非導電性粒子のD10を、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.40μm以下、さらに好ましくは0.35μm以下とするものである。
分散工程直後の非導電性粒子のD10が前記範囲にあると、得られる多孔膜の水分を低減させることができ、電池特性が優れる。また、後の分級工程においてスクリーンの目詰まりなどによる濾過効率の悪化を抑制することができる。
前記非導電性粒子のD90、D10を前記範囲とする方法、即ち、分散工程(S2)における分散方法は特に限定されないが、好ましくはインペラー式攪拌機、ビーズミル、ボールミル等のメディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を用いて分散する方法が挙げられる。
これらの中でも、非導電性粒子の一次粒子の破壊を抑制し、非導電性粒子のD10を前記範囲に制御し易い点で、メディアレス分散機を用いることが好ましく、その中でも図3(a)に示すようにコロイドミルを用いることがより好ましい。
ここで、コロイドミルは、ローターとステーターとの間に生じる摩擦力と、ローター及びステーターそれぞれの表面に形成された溝とによって乱流を発生させ、湿式分散を行うものをいう。また、ローターとステーター間のギャップを分散対象の物質に応じて設定することにより非電導性粒子の一次粒子の破壊を抑制し、分散を行うことができる。なお、分散の程度はローターの周速を調整することなどにより制御することができる。
分散工程(S2)により二次粒子として存在する非導電性粒子を一次粒子とすることができる。
また、混合工程(S1)で得られたスラリーを分散機に供給する方法としては、例えば、図3(a)に示すようにドラムシェーカー4による攪拌に用いたドラム缶2からダイヤフラムポンプ(図示せず)により、コロイドミル6に供給することが好ましい。
(分級工程(S3))
本発明の分級工程(S3)においては、前記分散工程(S2)を経た非電導性粒子のうち10μm以上の粗大粒子を除き、得られる多孔膜用スラリー中の10μm以上の粗大粒子を固形分質量基準で好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下にする。
分級工程(S3)を行うことにより、非電導性粒子中の粗大粒子を極めて少なくすることができるため、電池の安全性に優れた多孔膜とすることができる。
また、分級工程直後の非導電性粒子のD90は、多孔膜の強度が高まり、多孔膜の割れ、剥がれを抑制することができることから、通常1.60μm以下、好ましくは1.40μm以下、より好ましくは1.35μm以下、さらに好ましくは1.30μm以下であり、通常1.0μm以上である。
また、分級工程直後の非導電性粒子のD10は、得られる多孔膜の水分を低減させて、電池特性を優れるものとすることができることから、通常0.5μm以下、より好ましくは0.40μm以下、さらに好ましくは0.35μm以下であり、通常0.2μm以上、好ましくは0.25μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。
また、分級工程直後の非導電性粒子のD50は、多孔膜の強度が高まり、多孔膜の割れ、剥がれを抑制することができ、また、得られる多孔膜の水分を低減させて、電池特性を優れるものとすることができることから、通常0.95μm以下、好ましくは0.85μm以下、より好ましくは0.75μm以下であり、通常0.55μm以上である。
本発明の分級工程においては、非導電性粒子を前記の如く分級できれば特に制限されず、乾式分級機、湿式分級機を用いた分級を行うことができる。乾式分級機としては、重力分級、慣性分級、遠心分級、ふるい分け分級などの乾式分級法;沈降分級、機械的分級、水力分級、遠心分級、ふるい分け分級などの湿式分級法;などの分級方法を採用することができる。
これらのなかでも、分級効率が高い観点から、湿式分級法におけるふるい分け分級を行うことが好ましく、図3(a)に示すようなスクリーン端部より供給されたスラリーの固形分を連続的に分級するスラリースクリーナー8を用いたふるい分け分級を行うことがより好ましい。
スラリースクリーナー8は、固定された円筒形スクリーンと前記円筒形スクリーンの内側で回転するスクリューローターとを備える胴部と、前記胴部には、スラリーを円筒形スクリーン内部へ供給するスラリー供給口、円筒形スクリーンを通過したスラリーが排出されるスラリー排出口、円筒形スクリーンを通過しなかったスラリー中の固形分が排出される粗大粒子排出口を備る。前記スクリューローターが回転することにより、供給されたスラリー中の固形分を連続的に分級する。
前記スクリーンの平均孔径は、10μm以上の粗大粒子を効果的に除くことができる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
前記スクリーンの平均孔径は、透過型電子顕微鏡(SEM)の写真から画像解析を行い、任意の20点の孔の最大直径の平均値として求めることができる。
また、前記胴部は傾斜をつけて配置し、前記胴部の低位の端部には、前記スラリー排出口を備え、前記胴部の高位の端部には、前記粗大粒子排出口を備えることが好ましい。
また、前記胴部の傾斜角度は、スラリーがスラリースクリーナー中に適度に滞留し、10μm以上の粗大粒子を効果的に除くとことができるだけでなく、前記非導電性粒子のD10、D50、D90を前記範囲に収めることができる観点から、水平方向に対し、好ましくは0〜35度、より好ましくは5〜30度、さらに好ましくは10〜25度である。
また、前記スクリューローターの回転数は、スクリーンが目詰まりし難く、生産性良くスラリーを分級することができる観点から、好ましくは5〜80min-1、より好ましくは10〜70min-1、さらに好ましくは15〜65min-1である。
図3(a)に示すようにスラリースクリーナー8においては、粗大粒子が上側排出口10から排出され、分級工程(S3)を経たスラリーが下側排出口12から排出される。下側排出口12から排出されたスラリーは容器14により回収される。なお、図3(b)に示すように分級工程(S3)を経たスラリーは容器14に所定量回収されると、ドラム缶16に移されることが好ましい。また、容器14からドラム缶へスラリーを移す操作は、粗大粒子が除去されたスラリーがドラム缶16に所定量貯まるまで繰り返されることが好ましい。
(調製工程(S4))
本発明の調製工程(S4)においては、上記混合工程(S1)及び分散工程(S2)に加えて、好ましくは分級工程(S3)を経て得られた、スラリーに増粘剤、バインダー、濡れ剤、必要に応じて防腐剤を混合し、調製溶液を得る。
前記調整工程(S4)を、分散工程(S2)及び分級工程(S3)の後に備えることにより、非電導性粒子を効率的に一次粒子に分散することができ、また、分級効率も高めることができる。
スラリーに増粘剤、バインダー、濡れ剤を添加する順序に特に限定はないが、図1のプレ調製工程(S8)で示すように増粘剤を含む水溶液を調製して、これをスラリーに添加して混合した後に、バインダー(後述するバインダー分散液)を添加し混合し、さらに濡れ剤を添加して混合することが好ましい。また、得られた溶液をさらに水により希釈することが好ましい。
前記の順序で添加することにおり、非導電性粒子とバインダーが凝集することを抑制することができ、均一なスラリーとすることができる。
また、スラリーに、増粘剤、バインダー、濡れ剤を添加する際には図4(a)に示すように、粗大粒子が除去されたスラリーを貯槽したドラム缶16を用いることが好ましく、このドラム缶16に貯槽されたスラリーを攪拌機17を用いて攪拌しながら増粘剤、バインダー、濡れ剤を添加することが好ましい。また、必要に応じ防腐剤を添加することができる。
調製工程(S4)における攪拌方法としては、特に限定されないが、インペラー式攪拌機、メディア型攪拌機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等を用いて攪拌する方法が挙げられる。これらのなかでも、ハイシェアが加えられることによるバインダーの凝集を防ぐ観点から、インペラー式攪拌機を用いることが好ましい。
また、この調製工程(S4)において、さらに水を加えることにより調製溶液の固形分濃度を所望のものとするための希釈を行う際にも上述の攪拌方法と同様の方法を用いることができる。
(増粘剤を含む水溶液)
上述の順序で調製工程(S4)を行う場合における、プレ調製工程(S8)での増粘剤を含む水溶液の調製方法は特に限定されないが、増粘剤を溶解槽に貯槽された水に投入し、攪拌する方法、次いでろ過を行う方法が好ましい。
増粘剤を水に投入する方法としては、ポンプ、バキュームコンベア、チューブコンベア等を用いて投入するする方法が挙げられ、増粘剤の粉体を強制的に吸引混合し、瞬間的に分散・混合するためダマの発生を防ぐことができる観点から、バキュームコンベアを用いることが好ましい。
また、増粘剤を含む水溶液を調製する際の攪拌方法は、特に限定されないが、インペラー式攪拌機、メディア型攪拌機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等を用いて攪拌する方法が挙げられる。これらのなかでも、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、コロイドミルを用いることが好ましく、コロイドミルを用いることがさらに好ましい。
増粘剤を含む水溶液は、混合容器に貯槽された水に増粘剤を投入し、攪拌した後に、ろ過を行うことに得ることができる。ろ過方法としては、フィルターを用いたろ過、掻き取りろ過などを行うことができる。ここで、掻き取りろ過は、連続で詰まりなく増粘剤の未溶解分を除去することができる。
(調製工程(S4)で用いる各成分)
以下、調製工程(S4)において用いる増粘剤、バインダー、濡れ剤、必要に応じて用いられる防腐剤について説明する。
(増粘剤)
本発明に用いる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物などが挙げられる。これらのなかでも、カルボキシメチルセルロースを用いることが好ましい。
多孔膜用スラリー中の増粘剤の含有割合は、電池特性に影響のない範囲が好ましく、多孔膜用スラリーの塗工性を良好にする観点、多孔膜と電極活物質層との密着性、多孔膜とセパレータとの密着性を良好にする観点から、10質量%以下であることがより好ましい。なお、本発明において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
(バインダー)
本発明に用いるバインダーとしては、特に制限無く公知の電池用バインダーを用いることができ、非水溶性の粒子状重合体であることが好ましい。中でも(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合単位、酸性基含有単量体の重合単位、及び、ニトリル基含有単量体の重合単位を含んでなる重合体が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらのなかでも、n−ブチルアクリレートを用いることが好ましい。
酸性基含有単量体は、酸性を示す基を有するビニルモノマーであればよいが、その中で酸性基の好ましいものとしては、−COOH基(カルボン酸基)、−OH基(水酸基)、−SO3H基(スルホン酸基)、−PO32基、−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)、及び低級ポリオキシアルキレン基が挙げられる。また、加水分解によりカルボン酸基を生成する酸無水物基含有単量体も同様に使用することができる。これらの中でも、−COOH基(カルボン酸基)含有単量体が好ましい。
カルボン酸基含有単量体としては、モノカルボン酸及びその誘導体やジカルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。モノカルボン酸誘導体としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α―アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸などマレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステル;が挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
本発明においてニトリル基含有単量体の重合単位としては、バインダーの機械的強度及び結着力の向上という観点から、アクリロニトリルやメタクリロニトリルが好ましい。
本発明において、バインダーに用いる重合体中の各単量体単位の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合単位(以下「成分A」と表すことがある。)が、50〜98質量%、好ましくは60〜97.5質量%、より好ましくは70〜95質量%、酸性基含有単量体の重合単位(以下「成分B」と表すことがある。)が、1.0〜3.0質量%、好ましくは1.5〜2.5質量%、ニトリル基含有単量体の重合単位(以下、「成分C」と表すことがある。)が、1.0〜50質量%、好ましくは2.5〜40質量%、より好ましくは5.0〜30質量%である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合単位、酸性基含有単量体の重合単位またはニトリル基含有単量体の重合単位の比率が大きすぎたり、小さすぎたりすると、得られる二次電池のサイクル特性が低下する。
本発明において用いるバインダーは、上記の成分A、成分B、成分C以外に、架橋性単量体の重合単位を更に含んでいることが好ましい。
架橋性単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどのオキセタニル基含有単量体;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体;
アリルアクリレートまたはアリルメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレート、トリメチロールプロパン−メタクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、または多官能性アルコールの他のアリルまたはビニルエーテル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルアミン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミドおよび/またはジビニルベンゼンが好ましい。特にアリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレートおよび/またはトリメチロールプロパン−メタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、架橋密度が向上しやすく、共重合性が高いという理由でアリルグリシジルエーテルが好ましい。
バインダーに用いる重合体中の架橋性単量体の重合単位の含有割合は、好ましくは0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%である。
本発明に用いるバインダーは、分散媒(水または有機溶媒)に分散された分散液または溶解された溶液の状態で使用される(以下、これらを総称して「バインダー分散液」と記載することがある。)。本発明においては、環境保護の観点に優れ、乾燥速度が速いという観点、及び、多孔膜用スラリーを調製する際に溶媒の置換が不要である観点から分散媒として水を用いることが好ましい。なお、分散媒として有機溶媒を用いる場合、N−メチルピロリドン(NMP)等の有機溶剤が用いることができる。
バインダーが水に粒子状で分散している場合において、バインダー分散液の固形分濃度は、通常15〜70質量%であり、20〜65質量%が好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
本発明に用いるバインダーのガラス転移温度(Tg)は、得られる多孔膜が優れた強度と柔軟性を有するため、該多孔膜を用いた二次電池の出力特性が向上する観点から、好ましくは−50〜25℃、より好ましくは−45〜15℃、特に好ましくは−40〜5℃である。なお、バインダーのガラス転移温度は、様々なモノマーを組み合わせることによって調製可能である。
本発明に用いるバインダーである重合体の製造方法は特に限定はされず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。中でも、高分子量の重合体が得やすいこと、並びに、重合体が水に分散した粒子の状態で得られるので再分散化の処理が不要であり、そのまま本発明の調製工程に供することができることなど、製造効率の観点から、乳化重合法が特に好ましい。
乳化重合法は、通常は常法により行う。例えば、「実験化学講座」第28巻、(発行元:丸善(株)、日本化学会編)に記載された方法で行うことができる。すなわち、攪拌機及び加熱装置付きの密閉容器に、水と、分散剤、乳化剤、架橋剤などの添加剤と、重合開始剤と、単量体とを所定の組成になるように加え、容器中の組成物を攪拌して単量体等を水に乳化させ、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始する方法を用いることができる。また、上記組成物を乳化させた後に密閉容器に入れ、同様に反応を開始させる方法を用いてもよい。
重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、または過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
本発明に用いるバインダーの製造工程において、上記の重合法に用いられる分散剤は、通常の合成で使用されるものでよく、具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテルリン酸エステルナトリウム塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などの非イオン性乳化剤;ゼラチン、無水マレイン酸−スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、重合度700以上かつケン化度75%以上のポリビニルアルコールなどの水溶性高分子などが例示され、これらは単独でも2種類以上を併用して用いても良い。これらの中でも好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩であり、更に好ましくは、耐酸化性に優れるという点から、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩である。分散剤の添加量は任意に設定でき、単量体総量に対して通常0.01〜10質量%程度である。
本発明に用いるバインダーが分散媒に分散している時のpHは、バインダーの保存安定性及び機械的安定性が向上する観点から、5〜13が好ましく、更には5〜12、最も好ましくは10〜12である。
バインダーのpHを調整するpH調整剤は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの長周期律表でIIIA属に属する金属の水酸化物などの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩などの炭酸塩;などが例示され、有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミンなどのアルキルアミン類;モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンなどのアルコールアミン類;アンモニア水などのアンモニア類;などが挙げられる。これらのなかでも、結着性や操作性の観点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが好ましい。
多孔膜用スラリー中のバインダーの含有割合は、非導電性粒子100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。多孔膜用スラリー中のバインダーの含有割合が多すぎると、得られる多孔膜層の厚みの均一性が低下し、その結果、得られる二次電池のサイクル特性が低下する。また、多孔膜用スラリー中のバインダーの含有割合が少なすぎると、多孔膜層の厚みの均一性が低下すると共に、多孔膜層の機械的強度が低下するため、後述する非導電性粒子が脱落(粉落ち)するため、二次電池の作製が困難となったり、得られる二次電池のサイクル特性が低下する。
(防腐剤)
防腐剤としては、任意の防腐剤を用いることができるが、イソチアゾリン系化合物を用いることが好ましい。イソチアゾリン系化合物のなかでも、一般式(1)
Figure 0006237051
(一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す)
で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「MIT」ということがある。)、又はこれらの混合物を用いることが好ましく、これらの混合物であることがより好ましい。また、前記一般式(1)で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物としては、Rが水素原子である1,2−ベンズ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「BIT」ということがある。)を用いることが好ましい。
前記一般式(1)で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物と、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物を用いる場合、これらの割合は、質量比で1:10〜10:1とすることが好ましい。多孔膜用スラリー中の防腐剤の含有割合は、アルミナ100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.05質量部である。
(濡れ剤)
本発明に用いる濡れ剤としては、多孔膜用スラリーをポリエチレン等からなる有機セパレータ上に塗工する際の多孔膜用スラリーの接触角を下げることができるものであれば特に限定されないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の界面活性剤が挙げられ、ポリエチレングリコール型のノニオン系界面活性剤がより好ましい。これらのノニオン系界面活性剤は、それぞれ単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
多孔膜用スラリー中の濡れ剤の含有割合は、非導電性粒子100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.02〜1質量部である。
(ろ過工程(S5))
ろ過工程(S5)においては、上記分散工程(S3)で得られたスラリー、または、上記調製工程(S4)で得られた調製溶液のろ過を行う。ろ過工程(S5)により、調整工程(S4)で混入した粗大粒子や、分級工程(S3)で除去しきれなかった粗大粒子を取り除くことができる。
なお、予め分級工程(S3)でスラリー中の粗大粒子を除去しておかないと、ろ過工程(S5)で直ちに目詰まりを起こしてしまい、多孔膜用スラリーを効率的製造することが困難となる。
ろ過方法に格別な制限はなく、自然ろ過、加圧ろ過、減圧ろ過を好ましく採用することができる。また、ろ過フィルターを用いるろ過、掻き取りろ過、ふるい分けろ過等を採用することができ、ろ過フィルターを用いるろ過を行うことが好ましい。
ろ過フィルターを用いるろ過処理方法においては、ろ過フィルターの種類や構造の詳細は特に限定されないが、好ましくは20μm以上、より好ましくは10μm以上の粒子径を有する粗大粒子を除去するろ過フィルターを用いることが好ましい。また、ろ過フィルターを用いて粗大粒子等を除去するためのシステムも特に限定されず、ろ過に大きな問題を発生しなければ、特に限定されない。
これらのろ過フィルターの素材例としては、紙、布、セルロースアセートポリマー、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテル、フッ素系ポリマー(ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ステンレス、セラミックなどを挙げることができる。その形態は、平膜、カートリッジ化膜、中空糸膜などであり、特に限定されない。カートリッジろ過フィルターでろ過するには、カートリッジろ過フィルターを装着するハウジングを用いることが特に好ましい。
これらのろ過フィルターは、各社から多数市販されている。例えば、カートリッジタイプのポリオレフィン系複合繊維であれば、チッソCPフィルター(各種サイズ、チッソフィルター(株)製)、ポリプロピレン製であれば、マイクロシリア フィルターカートリッジ EXタイプ(各種サイズ、ロキテクノ製)、マイクロ・ワインドIIHPシリーズフィルターカートリッジ(各種サイズ、住友スリーエム(株)製)などが挙げられ、四フッ化エチレン製であれば、マイクロシリア フィルターカートリッジ BOタイプ(各種サイズ、ロキテクノ製)などが挙げられる。
これらのろ過フィルターの使用にあたっては、その使用法に特に限定はなく、目詰まりすることなく、かつ粗大粒子等を除去できればよい。しかし、一般に上記のろ過フィルターは、ハウジングに装着されて利用することで設置面積もとることなく有効である。ハウジングのサイズや形状は特に限定されず、円形や角型あるいは一本のろ過フィルターを装填してもよく、一度に2本以上のろ過フィルターを装填してもよい。
次に、ろ過工程を実施するにあたっては、一般に加圧あるいは減圧にてろ過フィルターを通過させ粗大粒子等を除去することが好ましい。ここで、ろ過フィルターに調製溶液を送液する際にポンプなどで送液することにより加圧を行うことができる。ポンプとしては、送液をスムーズに行うことができ、かつ、加圧を行うことができるものであれば、特に限定されず、例えば、渦巻ポンプ、及び軸流ポンプ等の遠心式ポンプ;プランジャーポンプ、及びダイヤフラムポンプ等の容積往復動式ポンプ;ギヤーポンプ、スクリューポンプ、ベーンポンプ、及びモーノポンプ等の容積回転式ポンプ;等を用いることができ、ダイヤフラムポンプを用いることが好ましい。
例えば、図4(b)に示すように、ダイヤフラムポンプ18を用いて、調製工程(S4)においてドラム缶16内で得られた調製溶液(図4(a)参照)をろ過フィルター20に供給することが好ましい。また、ろ過フィルター20への調製溶液を供給する際の圧力及び供給量は、圧力計22及び流量計24によりそれぞれ測定することができる。なお、ダイヤフラムポンプ18、ろ過フィルター20を含むろ過ユニットは、クリーンブース内に設置されることが好ましい。
また、調製溶液をろ過フィルターよりも高所に配置して自然圧(自重による加圧)でろ過することもできる。さらに、調製溶液に気体(好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス)で圧力を加えてもよく、その場合は調製溶液の存在するタンクは密閉系であることが好ましい。気体で圧力を加える場合には、0.05〜1MPaの圧力で、より好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力で加圧することが好ましい。
送液時にポンプで圧力をかけたり、また、自重で加圧やさらには気体での加圧を行う場合の圧力は、ろ過フィルターを破損したり目詰まりさせたりして性能を劣化させない限り、特に限定されない。
(磁性物質除去工程(S6))
本発明の磁性物質除去工程(S6)においては、上記分散工程(S3)で得られたスラリー、または、上記調製工程(S4)で得られた調製溶液、または、ろ過工程(S5)において粗大粒子を除去したスラリーまたは調製溶液から磁性物質を除去することにより、得られる多孔膜用スラリー中の磁性物質を固形分質量基準で好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下とする。ここで、本発明において、磁性物質とは、磁性を有する金属物質をいう。
多孔膜用スラリー中の磁性物質量を前記範囲とすることで、電池の短絡のおそれが無い安全性の高い電池とすることがでる。また、多孔膜用スラリー中の磁性物質はリチウムデントライト発生の核となり得るため、多孔膜用スラリー中の磁性物質量を前記範囲とすることで、高温サイクル特性やレート特性といった電池特性を向上させることができる。
調製溶液から磁性物質を除去する方法としては、特に限定はされないが、磁気により磁性物質を除去することが好ましく、磁石を用いて磁性物質を除去することがより好ましく、中でも棒磁石を用いて磁性物質を除去することがさらに好ましい。棒磁石の磁力や、棒磁石の本数を除去する磁性異物に合わせて適宜設定することができる。スラリーが棒磁石を通過することで、スラリー中の磁性異物が棒磁石に付着して、スラリー中の磁性異物が除去される。棒磁石を用いた磁性異物除去装置は、日本マグネティックス社よりマグネットセパレータという名称で販売されていたり、トック・エンジニアリング社よりマグネットフィルターという名称で販売されている。
磁性物質除去工程により除去する磁性物質としては、特に限定されないが、鉄粉、ステンレス粉などが代表的に挙げられる。電極間を隔てる多孔膜中に、磁性異物が存在していると、電池の短絡のおそれがある。上記した磁性物質は、摩耗等、異物の発生の仕方によって様々な態様の粒状の形態を示し、鋭利な角を有する粒子も存在するため、多孔膜層を成形する時点において磁性物質の粒子の鋭利な角を有する部分(鋭角部)が有機セパレータまたは電極活物質層を傷つけるおそれがある。
磁石は、スラリーまたは調製溶液に混入する可能性のある磁性物質を捕集できる磁束密度の磁場を形成すればよいが、磁束密度としては、スラリーまたは調製溶液に磁性物質が含有されている場合に、磁性物質を適切に吸着除去する観点から、100ガウス以上の磁束密度の磁場を形成する磁石を通過させることにより行うことが好ましい。また、磁性物質の除去効率を向上させる観点から、1000ガウス以上の磁束密度の磁場を形成することがより好ましく、磁性の弱い物質を除去する観点からさらに好ましくは5000ガウス以上、より好ましくは8000ガウス以上の磁束密度の磁場を形成する磁石を通過させることが好ましい。
また、磁性物質を捕集するための磁場を形成する磁石としては、永久磁石であっても電磁石であってもよい。
磁気により磁性物質を除去する方法としては、磁性を有する金属成分が除去できる方法であれば特に限定はされないが、生産性および除去効率を考慮すると、好ましくは、多孔膜用スラリーの製造ライン中に、磁石を配置して、調製溶液を通過させることにより除去する方法が好ましい。例えば、図4(b)に示すようにろ過フィルター20によりろ過された調製溶液を配管などを介してマグネットフィルター26に導入することが好ましい。
なお、スラリーまたは調整溶液中の磁性物質をより低減させるために、磁石を一度通したスラリーまたは調整溶液は、再度磁石を通すことが好ましい。スラリーまたは調整溶液を磁石に通す回数や時間は、求められる多孔膜用スラリー中の磁性物質の量によって適宜選択でき、その方法は単純に磁石を一度通したスラリーまたは調整溶液を、再度磁石を通してもよいし、ポンプ等でスラリーまたは調整溶液を循環させて、スラリーまたは調整溶液を磁石に連続的に通してもよい。
(多孔膜用スラリー)
本発明の多孔膜用スラリーは上述の各工程を経ることにより得られる。多孔膜用スラリーのB型粘度計により測定した粘度は、5〜300mPa・sであることが好ましい。
また、多孔膜用スラリー中の固形分濃度は乾燥減量法により測定した値で、30〜60質量%であることが好ましい。
また、多孔膜用スラリー中の粗大粒子の含有量は個数カウント式粒子径分布測定、メッシュ残量測定等により測定することができるが、本発明の多孔膜用スラリー中の10μm以上の粗大粒子の含有割合は、固形分質量基準で好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の多孔膜用スラリー中に含まれる磁性物質の量は、誘導結合光プラズマ発光分光分析装置などにより測定することができ、本発明の多孔膜用スラリー中の磁性物質の含有割合は、固形分量質量基準で好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下であることが好ましい。
(充填工程(S7))
上述のようにして得られた多孔膜用スラリーは、充填工程(S7)において容器28(図4(b)参照)に充填される。容器としては、樹脂製の容器を用いることが好ましく、ポリエチレン製の容器を用いることがより好ましい。また、容器への多孔膜用スラリーの充填量の調節は、バルブの開閉等により行うことができる。なお、充填工程(S7)は、クリーンブース内に行われることが好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及び均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例及び比較例において、多孔膜強度、水分量、高温サイクル特性及びレート特性の評価はそれぞれ以下のように行った。
[多孔膜強度]
実施例及び比較例にて得られた多孔膜を備えるセパレータを、幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、多孔膜面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、試験片とした。次に、前記試験片におけるセロハンテープを試験台に固定した状態で、セパレータの一端を垂直方向に引張り速度10mm/分で引張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とし、下記の基準により判定する。ピール強度が大きいほど、多孔膜強度が大きいことを示す。
A:ピール強度が100N/m以上
B:ピール強度が75N/m以上100N/m未満
C:ピール強度が50N/m以上75N/m未満
D:ピール強度が50N/m未満
[水分量]
実施例及び比較例にて得られた多孔膜を備えるセパレータを、幅10cm×長さ10cmの大きさで切り出して、試験片とした。この試験片を、温度25℃、露点−60℃で24時間放置した。その後、電量滴定式水分計を用い、カールフィッシャー法(JIS K−0068(2001)水分気化法、気化温度150℃)により、試験片の水分量を測定した。この水分量とする。水分量が低いほど、電池の高温サイクル特性、レート特性に優れる。
A:セパレータ水分量が500ppm未満
B:セパレータ水分量が500ppm以上600ppm未満
C:セパレータ水分量が600ppm以上700pm未満
D:セパレータ水分量が800ppm以上
〔高温サイクル特性〕
実施例及び比較例にて得られた10セルのラミネート型リチウムイオン二次電池を60℃雰囲気下、0.2Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3Vまで放電する充放電を50回(=50サイクル)繰り返し、電気容量を測定した。10セルの平均値を測定値とし、5サイクル終了時の電気容量に対する50サイクル終了時の電気容量の割合を百分率で算出して充放電容量保持率を求め、下記基準により評価した。この値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上である。
B:充放電容量保持率が70%以上80%未満である。
C:充放電容量保持率が60%以上70%未満である。
D:充放電容量保持率が60%未満である。
〔レート特性(負荷特性)〕
実施例及び比較例にて得られた10セルのラミネート型リチウムイオン二次電池を用いて、25℃で0.1Cの定電流で4.2Vまで充電し、0.1Cの定電流で3Vまで放電する充放電サイクルを行い、0.1Cにおける電池容量を求めた。また、25℃で1Cの定電流で4.2Vまで充電し、1Cの定電流で3Vまで放電する充放電サイクルを行い、1Cにおける電池容量を求めた。そして、0.1Cにおける電池容量に対する1Cにおける放電容量の割合を百分率で算出して充放電レート特性とした。
ここで、0.1Cにおける電池容量は、0.1Cの定電流で3Vまで放電したときの放電容量のことをいい、1Cにおける放電容量は、1Cの定電流で3Vまで放電したときの放電容量のことをいう。
また、充放電レート特性を、下記の基準で評価した。この値が大きいほど、内部抵抗が小さく、高速充放電が可能であることを示す。
A:充放電レート特性が80%以上である。
B:充放電レート特性が75%以上80%未満である。
C:充放電レート特性が70%以上75%未満である。
D:充放電レート特性が70%未満である。
また、実施例及び比較例において、非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)の測定、多孔膜用スラリー中の粗大粒子量の測定、多孔膜用スラリー中の磁性異物量の測定は以下のように行った。
[非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)の測定]
非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)は、イオン交換水を供給したフローセル内にスラリーを散乱強度が50%程度になるよう滴下し、超音波分散した後、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD−7100」)により測定することにより求めた。
[多孔膜用スラリー中の粗大粒子量の測定]
平均孔径10μmのナイロンメッシュの質量(B)を測定し、漏斗にセットした。そこに、実施例及び比較例で得られた多孔膜用スラリー100gを注ぎ、ろ過する。ここに、イオン交換水を注ぎで、濁りがなくなるまで洗浄し、70℃のオーブンで、60分以上乾燥した。乾燥、放冷後、メッシュの質量(A)を測定しメッシュ残渣量の測定を行った。メッシュ残渣量、即ち多孔膜用スラリー中の粒子径が10μm以上の粗大粒子量は、下記式により求めた。
Figure 0006237051
A:メッシュ+乾燥物の質量(g)
B:メッシュの質量(g)
C:多孔膜用スラリー100(g)
D:スラリーの全固形分濃度(%)
[多孔膜用スラリー中の磁性異物量の測定]
実施例及び比較例で得られた多孔膜用スラリーをPTTE内部小容器に少量取り、ホットプレート上で乾固(約150℃)させた。そこに、蒸留水 5ml、硝酸 2.5ml 、硫酸 2.5mlを入れ、加圧分解容器にセットし230℃の乾燥機中で1夜間(約10時間)溶解した。
溶解した溶液をICP−AESを用いてFeイオンの量を測定して、多孔膜スラリー中に含まれる磁性異物(Fe)量の割合を固形分質量基準で算出した。
[実施例1]
[粒子状重合体の製造]
攪拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製「エマール2F」)0.15部及び過硫酸アンモニウム0.5部を供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル2部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてブチルアクリレート93.8部、エチレン性不飽和酸単量体としてメタクリル酸2部、架橋性単量体としてアリルグリシジルエーテル1部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、及び、キレート剤(キレスト社製「キレスト400G」(エチレンジアミン4酢酸ナトリウム4水和物))0.15部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、6
0℃で反応を行った。添加の終了後、さらに70℃で3時間攪拌してから反応を終了し、粒子状重合体の水分散液を製造した。
[水溶性重合体の製造]
水50部、アクリル酸80部、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸19.92部及び2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸0.08部を混合して、単量体組成物を得た。
温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに水150部を仕込み、80℃まで昇温した。次いで、攪拌下に、前記の単量体組成物と、30%過硫酸ナトリウム水溶液10部とを、それぞれ3時間にわたって定量ポンプでフラスコに連続的に滴下供給し、80℃で重合反応を行った。滴下終了後、更に系を80℃に保ったまま1時間熟成し、重合反応を完了した。その後、32%水酸化ナトリウム水溶液120部をフラスコ中に加えて反応液を完全に中和させて、水溶性重合体の水溶液を得た。得られた水溶性重合体の重量平均分子量は、6000であった。
[混合工程]
非導電性粒子としてバイヤー法で製造されたαアルミナ粒子AD50:0.85μm、磁性物質(Fe)量:120ppm)100部、分散剤として前記工程で得た水溶性重合体の水溶液を水溶性重合体の量で0.5部を混合し、固形分濃度を55%になるように電気伝導度が10μS/cmの水を添加し混合することによりスラリーを得た。混合工程において得られたスラリーについて、上記方法により累積粒度分布を測定した。即ち、分散工程直前の混合物に含まれる非導電性粒子の粒子径として、混合工程において得られたスラリーについて非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)の測定を行った。
[分散工程及び分級工程]
前記工程で得たスラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて周速10m/sec、流量200L/hの条件で1パス分散させた。その後、分級機(アコー社製、スラリースクリーナー)を用いて分級を行った。なお、分散工程及び分級工程を合わせて以下、「分散分級工程」ということがある。また、分散工程直後のスラリーに含まれる非導電性粒子の粒子径として、分散工程を経たスラリーについて非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)の測定を行った。
[調製工程]
前記工程で分散及び分級処理を施した非導電性粒子の分散体と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースの4%水溶液37.5部(カルボキシメチルセルロースの量で1.5部)を混合し、前記工程で得た粒子状重合体の水分散液を13.3部(粒子状重合体の量で6部)、及び、濡れ剤としてノニオン系界面活性剤(プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを重合比50:50で重合させた界面活性剤)の水溶液を固形分換算で0.5部混合し、調製溶液を得た。
[ろ過工程及び磁性物質除去工程]
得られた調製溶液に対しフィルター(平均孔径10μm)でろ過した後、さらに室温、磁束密度8000ガウスの条件で、マグネットフィルター(トックエンジニアリング株式会社製)を10パスさせることにより磁性物質を除去し、多孔膜用スラリーを得た。
得られた多孔膜用スラリーを用いて、その多孔膜用スラリーに含まれる非導電性粒子のD10、D50、D90、及び、10μm以上の粗大粒子、並びに、磁性異物量(Fe)を測定した。
[セパレータの製造]
ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ層(厚み12μm、ガーレー値160sec/100cc)を用意した。用意した有機セパレータ層の片面に、前記の多孔膜用スラリーを塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、有機セパレータ層及び厚み3μmの多孔膜を備えるセパレータを製造した。得られたセパレータを用いて、セパレータのピール強度、ガーレー値、水分量及び耐熱性を評価した。
[正極の製造方法]
正極活物質として95部のLiCoO2に、正極用のバインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製「KF−1100」)を固形分換算量で3部となるように加え、さらに、導電材としてアセチレンブラック2部及び溶媒としてN−メチルピロリドン20部を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、正極用スラリーを得た。この正極用スラリーを厚さ18μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した。その後ロールプレスで圧延して、正極活物質層を有する全厚みが100μmの正極を得た。
[負極の製造方法]
攪拌機を備えた反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、過硫酸カリウム0.5部、単量体として1,3−ブタジエン33部、スチレン63.5部及びイタコン酸3.5部、並びにイオン交換水を200部入れて混合した。これを50℃で12時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体を除去した。これにより、負極用のバインダーとして、粒子状の負極用重合体を含む水分散体を得た。
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積4m2/gの人造黒鉛(体積平均粒子径:24.5μm)70部、及びSiOx(信越化学社製;体積平均粒子径5μm)30部、並びに、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製「BSH−12」)を固形分換算で1部を加え、イオン交換水で固形分濃度55%に調整した。その後、25℃で60分混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した。その後、さらに25℃で15分攪拌し、混合液を得た。この混合液に、前記の負極用重合体を含む水分散液を固形分換算で1.0部入れ、イオン交換水を入れて最終固形分濃度50%となるように調整し、さらに10分間攪拌した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
前記の負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延して、厚み80μmの負極活物質層を備える負極を得た。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
前記工程で得られた正極を幅40mm×長さ40mmに切り出して、正方形の正極を得た。前記工程で得られた負極を幅42mm×長さ42mmに切り出して、正方形の負極を得た。また、前記工程により製造されたセパレータを用意し、このセパレータを幅46mm×長さ46mmに切り出して、正方形のセパレータを得た。
前記の正方形の正極の正極活物質層側の面上に、正方形のセパレータを配置した。さらに、セパレータ上に正方形の負極を、負極活物質層側の面がセパレータに対向するように配置した。これにより、正極、セパレータ及び負極をこの順に備える積層体を得た。
前記の積層体をアルミニウム包材中に配置した。このアルミニウム包材の中に、電解液を空気が残らないように注入した。さらに150℃のヒートシールを行うことで、アルミニウム包材の開口を密封してラミネート型のリチウムイオン二次電池を製造した。電解液は、濃度1.0MのLiPF6溶液にビニレンカーボネート(VC)を2容量%添加したものを用いた。また、LiPF6溶液の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、容量比EC/DEC=1/2で含む混合溶媒を用いた。
こうして製造したリチウムイオン二次電池について、上述した要領で、高温サイクル特性を評価した。
(実施例2)
スラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて分散させる際の周速を26m/secに変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(実施例3)
スラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて分散させる際の周速を40m/secに変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(実施例4)
スラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて分散させる際の周速を50m/secに変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(実施例5)
スラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて分散させる際の周速を30m/secとし、磁性物質を除去する際に磁性フィルターを通す回数を1パスに変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(実施例6)
用いる非導電性粒子の種類を粉砕の程度が異なるαアルミナ粒子B(D50:0.61μm、磁性物質(Fe)量:120ppm)に変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(実施例7)
用いる非導電性粒子の種類を粉砕の程度が異なるαアルミナ粒子C(D50:0.98μm、磁性物質(Fe)量:120ppm)に変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(実施例8)
用いる非導電性粒子の種類を粉砕の程度が異なるαアルミナ粒子D(D50:1.25μm、磁性物質(Fe)量:120ppm)に変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
(比較例1)
分散分級工程を省略し、さらに、磁性フィルターを用いた磁性物質の除去を行わなかった以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造を行った。なお、多孔膜用スラリー中の粗大粒子が多いため、塗工時にブレードがつまり、セパレータの製造において塗工スジが発生した。従って、セパレータ及びリチウムイオン二次電池についての評価を行うことはできなかった。
(比較例2)
スラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて分散させる際の周速を5m/secに変更した。さらに、マグネットフィルターを用いた磁性物質の除去を行わなかった以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。なお、多孔膜用スラリー中の粗大粒子が多いため、塗工時にブレードがつまり、セパレータの製造において塗工スジが発生した。従って、セパレータ及びリチウムイオン二次電池についての評価を行うことはできなかった。
(比較例3)
スラリー中のαアルミナ粒子を分散させる際に用いる分散機をビーズミル(ビーズ径0.4mm、周速13m/sec)に変更した以外は、実施例1と同様に多孔膜用スラリーの製造、セパレータの製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
Figure 0006237051
表1に示すように、非導電性粒子を含む多孔膜用スラリーを製造する方法であって、非導電性粒子と溶媒とを混ぜ合わせる混合工程と、前記混合工程の後に、前記スラリー中の非導電性粒子を一次粒子に分散させる分散工程と、を含み、前記分散工程が、前記非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が90%である粒子径をD90としたとき、前記分散工程直後のD90が1.0μm以上1.6μm以下で、かつ、前記分散工程直後のD90に対する前記分散工程直前のD90の比を1.2〜2.0とするものであり、前記分散工程の後に、スラリーから磁性物質を除去する磁性物質除去工程と、を含む多孔膜用スラリーの製造方法により得られた多孔膜用スラリーを用いたセパレータの多孔膜強度水分量は良好であり、さらにこのセパレータを用いたリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性及びレート特性は良好であった。
4…ドラムシェーカー、6…コロイドミル、8…スラリースクリーナー、20…ろ過フィルター、26…マグネットフィルター

Claims (3)

  1. 非導電性粒子を含むリチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーを製造する方法であって、
    非導電性粒子と溶媒とを混ぜ合わせてスラリーとする混合工程と、
    前記混合工程の後に、前記スラリー中の非導電性粒子を一次粒子に分散させる分散工程と、を含み、
    前記非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が90%である粒子径をD90としたとき、前記分散工程直後のD90が1.0μm以上1.6μm以下で、かつ、前記分散工程直後のD90に対する前記分散工程直前のD90の比を1.2〜2.0とするものであり、
    前記非導電性粒子が、無機粒子であり、
    前記分散工程の後に、スラリーから磁性物質を除去する磁性物質除去工程と、
    を含むリチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーの製造方法。
  2. 前記非導電性粒子の累積粒度分布において、小径側からの累積体積が10%である粒子径をD10としたとき、前記分散工程直後のD10を、0.2μm以上0.5μm以下とするものである請求項1記載のリチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーの製造方法。
  3. 非導電性粒子を含むリチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーを製造する方法であって、
    前記分散工程と前記磁性物質除去工程との間に、分級工程を含み、リチウムイオン二次電池多孔膜用スラリー中の10μm以上の粒子を固形分質量基準で100ppm以下とする、
    請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池多孔膜用スラリーの製造方法。
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