JP6221885B2 - リチウム二次電池用多孔膜の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用多孔膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法に関するものである。
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、繰り返し充放電が可能なリチウム二次電池は、環境対応からも今後の需要の拡大が見込まれている。リチウム二次電池は、エネルギー密度が大きく携帯電話やノート型パソコン等の分野で利用されているが、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、大容量化等より一層の性能向上が要求されている。
セパレータは、リチウム二次電池の正極と負極の電気的短絡を防ぐ重要な機能を担っており、セパレータの耐熱性を高めることは、電池の安全性を向上させる意味で重要であり、近年、ポリエチレンなどの有機セパレータ基材上または電極上に耐熱性を有する非導電性粒子を含む多孔膜を形成することが行われている。
リチウム二次電池用の多孔膜は、多孔膜用スラリーを有機セパレータ上または電極表面上へダイコーターまたはグラビアコーターで塗布し、その後乾燥することにより形成される。ここで、多孔膜用スラリーは例えば、粒子状結着剤、比重が1以上の金属酸化物の非導電性微粒子、粘度調整剤を含み、作業環境が良好であることから、多孔膜用スラリーとして、これらの成分を含む水分散液が用いられる。
例えば、特許文献1には、カルボキシメチルセルロースなどの 水溶性重合体と、アクリロニトリル―アクリレート共重合体からなる樹脂結着剤に、無機フィラーを分散した多孔膜用スラリーを用いて形成される多孔膜が記載されている。
国際公開第2005/011043号
ところで、多孔膜用スラリーは、通常、調製後、保管容器に保管され、その後多孔膜を形成するための塗工溶液として使用されるが、特許文献1に記載の多孔膜用スラリーは、製造後の貯蔵タンクでの保管中、コンテナやポリ容器等の保管容器に充填出荷中などにおける長期保管を行うと、該スラリーの粘度変化が生じたり、更には凝集物が発生したりすることがあった。
ここで、多孔膜用スラリーに含まれる非導電性微粒子の一次粒子の平均粒子径は一般的には0.1〜2μmであり、比重は1以上であるため、保管中の多孔膜用スラリー中において、粒子径の大きい成分は沈降しやすく、また、金属酸化物である非導電性微粒子の水和物は凝集しやすくなる。このような多孔膜用スラリーを有機セパレータ表面上または電極上へ塗布する際、非導電性微粒子の多孔膜用スラリー中における再分散化は困難となる。
また、多孔膜用スラリー中に粗大粒子及び/または凝集物が一定量以上存在すると、有機セパレータ表面または電極表面を均一にコートすることが困難になり、多孔膜のピール強度が低下したり、得られるリチウム二次電池のサイクル特性が低下したりする傾向にあった。
本発明の目的は、保管容器での保管後、非導電性微粒子の再分散化が可能な多孔膜用スラリーである水分散液を用いて製造され、ピール強度及び得られるリチウム二次電池のサイクル特性に優れたリチウム二次電池用多孔膜の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記目的を達成できることを見出し、下記の本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、
[1] 一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下である水分散液を、保管容器に移送、保管する工程(1)、および、前記保管容器内の水分散液を保管容器ごと撹拌する工程(2)、に次いで、当該水分散液を基材上に塗布、乾燥して、当該基材上に多孔膜を形成する工程(3)を含む、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法であって、前記工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとすることと、前記工程(2)において、前記保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合することと、を特徴とするリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[2] 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際に前記保管容器に形成される空間体積が当該容器の20〜40%である[1]記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[3] 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際の回転駆動が偏心回転である[1]または[2]記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[4] 前記水分散液の粘度が60〜120mPasであり、凝集抑制剤を0.1〜1.0質量%含む[1]〜[3]の何れかに記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[5] 前記水分散液は、10質量%以下の粘度調整剤をさらに含み、前記粘度調整剤はセルロース半合成高分子化合物、そのナトリウム塩およびそのアンモニウム塩である[1]〜[4]の何れかに記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法
が提供される。
本発明によれば、保管容器での保管後、非導電性微粒子の再分散化が可能な多孔膜用スラリーである水分散液を用いて製造され、ピール強度及び得られるリチウム二次電池のサイクル特性に優れたリチウム二次電池用多孔膜の製造方法が提供される。
本発明の実施の形態に係る攪拌装置を示す図である。 本発明の実施の形態に係るドラムシェイカーを示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るリチウム二次電池用多孔膜の製造方法について説明する。本発明のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法は、一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下である水分散液を、保管容器に移送、保管する工程(1)、および、前記保管容器内の水分散液を保管容器ごと撹拌する工程(2)、に次いで、当該水分散液を基材上に塗布、乾燥して、当該基材上に多孔膜を形成する工程(3)を含む、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法であって、前記工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとすることと、前記工程(2)において、前記保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合することと、を特徴とする。
(水分散液)
本発明に用いる水分散液は、多孔膜を形成するための多孔膜用スラリーであって、一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。水分散液中の粗大粒子および/または凝集物の濃度が多すぎると、水分散液を用いて形成された多孔膜を含むリチウム二次電池において、粗大粒子および/または凝集物によりセパレータが破膜される虞がある。
ここで、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度は、例えば、目開きが635メッシュ(20μm)のステンレス金網で捕捉することにより測定することができる。
また、本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、非導電性微粒子、粒子状結着剤に加えて、凝集抑制剤および/または粘度調整剤を含むことが好ましい。また、本発明に用いる水分散液は、必要に応じて防腐剤、キレート化合物、分散剤を含んでいてよい。
また、本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液の粘度は、好ましくは60〜120mPas、より好ましくは60〜100mPas、さらに好ましくは70〜90mPasである。水分散液の粘度が高すぎると、多孔膜を形成する際に塗工スジが発生する虞がある。また、水分散液の粘度が低すぎると、得られる多孔膜の熱収縮率が低下する。
なお、以下において、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、及び「(メタ)アリル」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、並びに「アリル及び/又はメタアリル」を表すものとする。また、「(変性)ポリ」と表記した場合には、「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を表すものとする。
(非導電性微粒子)
非電導性微粒子としては、リチウム二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定である各種の非導電性の無機微粒子、有機微粒子を使用することができる。
無機微粒子の材料としては、電気化学的に安定であり、また、他の材料と混合して多孔膜用スラリーである水分散液を調製するのに適した材料が好ましい。このような観点から、無機微粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物;シリコーン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;酸化バリウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘度微粒子などを用いることができる。シリカ、硫酸バリウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム等が用いられる。これらの粒子は、必要に応じて、元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。また、非導電性微粒子は、1つの粒子の中に、前記の材料のうち1種類を単独で含むものであってもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含むものであってもよい。さらに、非導電性微粒子は、異なる材料で形成された2種類以上の粒子を組み合わせて用いてもよい。
有機微粒子としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物等の各種架橋高分子粒子や、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミド等の耐熱性高分子粒子などを用いることができる。また、これらの有機粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、上記の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記耐熱性高分子の場合)であってもよい。
また、カーボンブラック、グラファイト、SnO2、ITO、金属粉末等の導電性金属および導電性を有する化合物や酸化物の微粉末の表面を、非電気伝導性の物質で表面処理することによって、電気絶縁性を持たせて非導電性微粒子として使用することも可能である。これらの非電気伝導性物質処理粒子は、2種以上併用して用いてもよい。
また、非導電性微粒子として、金属異物の含有量が100ppm以下のものを用いることが好ましい。金属異物または金属イオンが多く含まれる非導電性微粒子を用いると、多孔膜用スラリーである水分散液中において、前記金属異物又は金属イオンが溶出し、これが水分散液中のポリマーとイオン架橋を起こし、水分散液が凝集し結果として多孔膜の多孔性が下がる。そのため、該多孔膜を用いたリチウム二次電池のレート特性(出力特性)が悪化する恐れがある。前記金属としては、特にCa、Co、Cu、Fe、Mg、Ni、ZnおよびCr等の含有が最も好ましくない。従って、非導電性微粒子中の金属含有量としては、これらの金属イオンの合計量で、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。上記含有量が少ないほど電池特性の劣化が起こりにくくなる。ここでいう「金属異物」とは、非導電性微粒子以外の金属単体または金属イオンを意味する。非導電性微粒子中の金属異物の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて測定することができる。
また、非導電性微粒子の一次粒子の平均粒子径は0.1〜2μmであり、非導電性微粒子の比重は1以上である。
(粒子状結着剤)
本発明に用いる粒子状結着剤としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位、酸性基を有するビニルモノマーの重合単位、及び、α,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位を含んでなるものが好ましい。具体的には、粒子状結着剤としての重合体中に、前記各重合単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、電解液に溶出せずに電解液への適度な膨潤によるリチウムイオンの伝導性を示すこと、加えて活物質の分散においてポリマーによる橋架け凝集を起こしにくいことから、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が7〜13のアクリル酸アルキルエステルである、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレートが好ましく、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が8〜10のオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレートがより好ましい。
酸性基を有するビニルモノマーは、酸性を示す基を有するビニルモノマーであればよいが、その中で酸性基の好ましいものとしては、−COOH基(カルボン酸基)、−OH基(水酸基)、−SO3H基(スルホン酸基)、−PO32基、−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)、及び低級ポリオキシアルキレン基が挙げられる。また、加水分解によりカルボン酸基を生成する酸無水物基を有するビニルモノマーも同様に使用することができる。
カルボン酸基を有するモノマーとしては、モノカルボン酸及びその誘導体やジカルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。モノカルボン酸誘導体としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α―アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸などマレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステル;が挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式CH2=CR1−COO−(Cn2nO)m−H(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、R1は水素またはメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2'−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2'−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
−PO32基及び/又は−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)を有するモノマーとしては、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
低級ポリオキシアルキレン基を有するモノマーとしては、ポリ(エチレンオキシド)等のポリ(アルキレンオキシド)などが挙げられる。
これらの中でも、得られる多孔膜が、後述する電極活物質層またはセパレータへの密着性に優れること及び、正極活物質から溶出した遷移金属イオンを効率良く捕捉するという理由からカルボン酸基を有するモノマーが好ましく、中でも、アクリル酸やメタクリル酸などのカルボン酸基を1つ有する炭素数5以下のモノカルボン酸や、マレイン酸やイタコン酸などのカルボン酸基を2つ有する炭素数5以下のジカルボン酸が好ましい。さらには、作製した多孔膜用スラリーである水分散液の保存安定性が高いという観点から、アクリル酸やメタクリル酸が好ましい。
本発明においてα,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位としては、粒子状結着剤の機械的強度及び結着力の向上という観点から、アクリロニトリルやメタクリロニトリルが好ましい。
本発明において、粒子状結着剤の各単量体単位の比率は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位(以下「成分A」と表すことがある。)の比率が、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは60〜97.5質量%、さらに好ましくは70〜95質量%、酸性基を有するビニルモノマーの重合単位(以下「成分B」と表すことがある。)の比率が、好ましくは1.0〜3.0質量%、より好ましくは1.5〜2.5質量%、α,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位(以下、「成分C」と表すことがある。)の比率が、好ましくは1.0〜50質量%、より好ましくは2.5〜40質量%、さらに好ましくは5.0〜30質量%である。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位、酸性基を有するビニルモノマーの重合単位またはα,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位の比率が大きすぎたり、小さすぎたりすると、得られるリチウム二次電池のサイクル特性が低下する。
本発明において、使用する粒子状結着剤は、上記の成分A、成分B、成分C以外に、架橋性を有する重合単位を更に含んでいることが好ましい。本発明における、架橋性を有する重合単位は、架橋性基を有するモノマーの重合単位であればよい。
粒子状結着剤中に架橋性基を有するモノマーの重合単位を導入する方法としては、粒子状結着剤中に光架橋性の架橋性基を導入する方法や熱架橋性の架橋性基を導入する方法が挙げられる。これら中でも、粒子状結着剤を含む多孔膜用スラリーである水分散液塗布後に基材(正極用の極板、負極用の極板またはセパレータ)に加熱処理を行うことにより、粒子状結着剤を架橋させることができ、さらに電解液への溶解を抑制でき、強靱で柔軟な多孔膜付の基材を得ることができると共に電池の寿命特性を向上させることができるため、粒子状結着剤中に熱架橋性の架橋性基を導入する方法が好ましい。粒子状結着剤中に熱架橋性の架橋性基を導入する場合において、熱架橋性の架橋性基を有する1つのオレフィン性二重結合を持つ単官能性モノマーを用いる方法と、少なくとも2つのオレフィン性二重結合を持つ多官能性モノマーを用いる方法がある。
1つのオレフィン性二重結合を持つ単官能性モノマーに含まれる熱架橋性の架橋性基としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、及びオキサゾリン基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ基が架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
エポキシ基を含有するモノマーとしては、炭素−炭素二重結合およびエポキシ基を含有するモノマーが挙げられる。
炭素−炭素二重結合およびエポキシ基を含有するモノマーとしては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;が挙げられる。
N−メチロールアミド基を含有するモノマーとしては、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
オキセタニル基を含有するモノマーとしては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどが挙げられる。
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
少なくとも2つのオレフィン性二重結合を持つ多官能性モノマーとしてはアリルアクリレートまたはアリルメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレート、トリメチロールプロパン−メタクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、または多官能性アルコールの他のアリルまたはビニルエーテル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルアミン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミドおよび/またはジビニルベンゼンが好ましい。特にアリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレートおよび/またはトリメチロールプロパン−メタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、架橋密度が向上しやすいことから、少なくとも2つのオレフィン性二重結合を有する多官能性モノマーが好ましく、更に架橋密度の向上および共重合性が高いという観点の理由でアリルアクリレートまたはアリルメタクリレート等のアリル基を有するアクリレート又はメタアクリレートが好ましい。
粒子状結着剤中の架橋性基を有するモノマーの重合単位の含有割合は、重合時の、架橋性基を含有するモノマーの配合量と同じであり、粒子状結着剤の保存安定性が向上すると共に、本発明の多孔膜を用いた二次電池のサイクル特性が向上する観点から、当該モノマー量として、モノマー全量100質量部に対して、好ましくは0.01〜2.0質量部、より好ましくは0.05〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜1.0質量部の範囲である。架橋性基を有するモノマーの重合単位としては熱架橋性の架橋性基を有するモノマーの重合単位であるのが好ましい。粒子状結着剤中の架橋性基を有する重合単位の含有割合は、粒子状結着剤を製造する時のモノマー仕込み比により制御できる。
熱架橋性の架橋性基は、粒子状結着剤を製造する際に、上述のモノマーに加えて熱架橋性の架橋基を含有するモノマー、並びに/又はこれらと共重合可能な他のモノマーとを共重合することで粒子状結着剤中に導入することができる。
粒子状結着剤は、上述したモノマー成分以外に、これらと共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。これらと共重合可能なモノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;アクリルアミド;が挙げられる。これらのモノマーを、適宜の手法により共重合させることにより、前記構成の粒子状結着剤が得られる。
本発明に用いる粒子状結着剤は、分散媒に分散された分散液の状態(以下、「バインダー分散液」と記載することがある。)で使用される。本発明においては、環境保護の観点に優れ、乾燥速度が速いという観点から分散媒として水を用いることが好ましい。
バインダー分散液中における粒子状結着剤の平均粒子径(分散粒子径)は、得られる電極の強度および柔軟性が良好となる観点から、50〜500nmが好ましく、70〜400nmがさらに好ましく、最も好ましくは100〜250nmである。
多孔膜用スラリーである水分散液中の粒子状結着剤の固形分濃度は、水分散液を製造する際における作業性が良好である観点から、15〜70質量%が好ましく、20〜65質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
本発明に用いる粒子状結着剤のガラス転移温度(Tg)は、得られる多孔膜が優れた強度と柔軟性を有するため、該多孔膜を用いたリチウム二次電池の出力特性が向上する観点から、好ましくは−50〜25℃、より好ましくは−45〜15℃、さらに好ましくは−40〜5℃である。なお、粒子状結着剤のガラス転移温度は、様々なモノマーを組み合わせることによって調製可能である。
本発明に用いる粒子状結着剤としての重合体の製造方法は特に限定はされず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。
重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α'−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、または過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどがあげられる。
本発明に用いる粒子状結着剤は、粒子状結着剤の製造工程において、バインダー分散液に含まれる粒子状の金属を除去する粒子状金属除去工程を経て得られたものであることが好ましく、粒子状結着剤に含まれる粒子状金属成分の含有量が10ppm以下であることが好ましい。粒子状結着剤に含まれる粒子状金属成分の含有量が10ppm以下であることにより、粒子状結着剤を含む多孔膜用スラリーである水分散液中のポリマー間の経時での金属イオン架橋を防止し、粘度上昇を防ぐことができる。さらにリチウム二次電池の内部短絡や充電時の溶解・析出による自己放電増大の懸念が少なく、リチウム二次電池のサイクル特性や安全性が向上する。
粒子状金属除去工程におけるバインダー分散液から粒子状の金属成分を除去する方法は特に限定されず、例えば、濾過フィルターによる濾過により除去する方法、振動ふるいにより除去する方法、遠心分離により除去する方法、磁力により除去する方法等が挙げられる。中でも、除去対象が金属成分であるため磁力により除去する方法が好ましい。磁力により除去する方法としては、金属成分が除去できる方法であれば特に限定はされないが、生産性および除去効率を考慮すると、好ましくは粒子状結着剤の製造ライン中に磁気フィルターを配置することで行われる。
本発明に用いる粒子状結着剤の製造工程において、上記の重合法に用いられる分散剤は、通常の合成で使用されるものでよく、具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテルリン酸エステルナトリウム塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などの非イオン性乳化剤;ゼラチン、無水マレイン酸−スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、重合度700以上かつケン化度75%以上のポリビニルアルコールなどの水溶性高分子などが例示され、これらは単独でも2種類以上を併用して用いても良い。これらの中でも好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩であり、更に好ましくは、耐酸化性に優れるという点から、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩である。分散剤の添加量は任意に設定でき、モノマー総量100質量%に対して通常0.01〜10質量%程度である。
本発明に用いる粒子状結着剤が分散媒に分散したバインダー分散液のpHは、粒子状結着剤の保存安定性が向上し、さらには、機械的安定性が向上する観点から、5〜13が好ましく、5〜12がより好ましく、10〜12がさらに好ましい。
粒子状結着剤のpHを調整するpH調整剤は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの長周期律表でIIIA属に属する金属の水酸化物などの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩などの炭酸塩;などが例示され、有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミンなどのアルキルアミン類;モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンなどのアルコールアミン類;アンモニア水などのアンモニア類;などが挙げられる。これらのなかでも、結着性や操作性の観点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが好ましい。
多孔膜中の粒子状結着剤の含有割合は、非導電性微粒子100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。多孔膜中の粒子状結着剤の含有割合が多すぎると、得られる多孔膜層の厚みの均一性が低下し、その結果、得られるリチウム二次電池のサイクル特性が低下する。また、多孔膜中の粒子状結着剤の含有割合が少なすぎると、多孔膜層の厚みの均一性が低下すると共に、多孔膜層の機械的強度が低下するため、非導電性微粒子が脱落(粉落ち)し、リチウム二次電池の作製が困難となったり、得られるリチウム二次電池のサイクル特性が低下する。
(凝集抑制剤)
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、凝集抑制剤を含んでいてもよい。凝集抑制剤としては、水分散液をポリエチレン等からなる有機セパレータ上に塗工する際の水分散液の接触角を下げることができるものであれば特に限定されないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の界面活性剤が挙げられ、ポリエチレングリコール型のノニオン系界面活性剤がより好ましい。これらのノニオン系界面活性剤は、それぞれ単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
多孔膜用スラリーである水分散液中の凝集抑制剤の含有割合は、水分散液中の全固形分の質量100質量部に対して、好ましくは0.1〜1.0質量部、より好ましくは0.15〜0.55質量部、さらに好ましくは0.15〜0.3質量部、特に好ましくは0.2部である。凝集抑制剤の含有割合が高すぎると、塗布時に水分散液が基材の表面ではじかれる虞がある。また、凝集抑制剤の含有割合が低すぎると、得られる多孔膜の熱収縮率が低下し、また、透気度が上昇する虞がある。さらに、多孔膜のピール強度が低下する虞がある。
(粘度調整剤)
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、塗工性、密着性が良好となる観点から、粘度調整剤を含有することが好ましい。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース半合成高分子化合物およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、セルロース半合成高分子化合物およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩が好ましい。
セルロース半合成高分子化合物は、ノニオン性、アニオン性およびカチオン性に分類することができる。
ノニオン性セルロース半合成高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルキルヒドロキシエチルセルロース、ノノキシニルヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;などが挙げられる。
アニオン性セルロース半合成高分子化合物としては、上記のノニオン性セルロース半合成高分子化合物を各種誘導基により置換されたアルキルセルロース並びにそのナトリウム塩およびアンモニウム塩などが挙げられる。具体例を挙げると、セルロース硫酸ナトリウム、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびそれらの塩等が挙げられる。
カチオン性セルロース半合成高分子化合物としては、例えば、低窒素ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム−4)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−10)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−24)等が挙げられる。
これらの中でも、カチオン性、アニオン性また両性の特性を取りうることから、セルロース半合成高分子化合物、そのナトリウム塩およびそのアンモニウム塩が好ましい。さらにその中でも、非導電性微粒子の分散性の観点から、アニオン性のセルロース半合成高分子化合物が特に好ましい。
多孔膜用スラリーである水分散液中の粘度調整剤の含有割合は、水分散液中の全固形分の質量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1.5〜10質量部、さらに好ましくは1.5〜2.4質量部、特に好ましくは1.5質量部である。粘度調整剤の含有割合が高すぎると、多孔膜を形成する際に塗工スジが発生する虞がある。また、粘度調整剤の含有割合が低すぎると、得られる多孔膜の熱収縮率が低下する。
(防腐剤)
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤としては、任意の防腐剤を用いることができるが、イソチアゾリン系化合物を用いることが好ましい。
イソチアゾリン系化合物のなかでも、一般式(1)
Figure 0006221885
(一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す)
で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「MIT」ということがある。)、又はこれらの混合物を用いることが好ましく、これらの混合物であることがより好ましい。また、前記一般式(1)で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物としては、Rが水素原子である1,2−ベンズ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「BIT」ということがある。)を用いることが好ましい。
前記一般式(1)で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物と、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物を用いる場合、これらの割合は、質量比で1:10〜10:1とすることが好ましい。多孔膜用スラリーである水分散液中の防腐剤の含有割合は、非導電性微粒子100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.05質量部である。
(キレート化合物)
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、キレート化合物を含んでいてもよい。キレート化合物を含むことにより、多孔膜用スラリーである水分散液中の粗大粒子や凝集物の発生をさらに低減させることができるなどの効果が奏される。キレート化合物は、特に限定されないが、好ましくは、アミノカルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸系キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」ということがある。)、ニトリロ三酢酸(以下、「NTA」ということがある。)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(以下、「DCTA」ということがある。)、ジエチレン−トリアミン五酢酸(以下、「DTPA」ということがある。)、ビス−(アミノエチル)グリコールエーテル−N,N,N’,N’−四酢酸(以下、「EGTA」ということがある。)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸(以下、「HEDTA」ということがある。)、ジヒドロキシエチルグリシン(以下、「DHEG」ということがある。)等が挙げられる。
ホスホン酸系キレート化合物としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホ
スホン酸(以下、「HEDP」ということがある。)等が挙げられる。
キレート化合物は、粒子状結着剤100質量部に対して0.0001〜0.1質量部の割合で用いることが好ましい。
なお、キレート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(分散剤)
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、酸性基含有単量体単位を有する水溶性の重合体を用いる。ここで、酸性基含有単量体単位とは、酸性基含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、酸性基含有単量体とは、酸性基を含む単量体を示す。
酸性基含有単量体単位を有する分散剤は、当該分散剤自体も酸性基を含むことになる。この酸性基の作用により、多孔膜用スラリーである水分散液において非導電性微粒子の分散性を向上させることができる。
多孔膜用スラリーである水分散液において、このように非導電性微粒子の分散性が良好であることにより、非導電性微粒子の凝集を防止できる。また、非導電性微粒子の凝集を防止できるので、凝集で生じうる巨大粒子による多孔膜及び有機セパレータの破損を防止できる。そのため、短絡を防止してリチウム二次電池の安全性を向上させることができる。
酸性基としては、例えば、−COOH基(カルボン酸基);−SO3H基(スルホン酸基);−PO32基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基;などが挙げられる。
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸などが挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。これらの中でもモノカルボン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
−PO32基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、上述した単量体の塩も、酸性基含有単量体として用いうる。
上述した酸性基含有単量体の中でも、カルボン酸基を有する単量体及びスルホン酸基を有する単量体が好ましい。これらを用いることにより、分散剤の非導電性微粒子に対する吸着性を効果的に向上させて、非導電性微粒子の分散性をより高めることができる。
また、酸性基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。例えば、同じ種類の酸性基を含む異なる種類の単量体を組み合わせて用いてもよい。また、例えば、異なる種類の酸性基を含む単量体を組み合わせて用いてもよい。中でも、スルホン酸基を有する単量体とカルボン酸基を有する単量体とを組み合わせると、非導電性微粒子の分散性を効果的に高めることができるため、特に好ましい。
スルホン酸基を有する単量体とカルボン酸基を有する単量体とを組み合わせて用いる場合、「スルホン酸基を有する単量体/カルボン酸基を有する単量体」で表される質量比は、好ましくは1/999以上、より好ましくは0.01以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下である。前記の質量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、分散剤等の水溶性重合体を用いる場合における凝集による粘度の上昇を抑制できるので、非導電性微粒子の安定性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、非導電性微粒子への分散剤の吸着性を高めることができるので、非導電性微粒子の分散性を高めることができる。
酸性基含有単量体単位を有する分散剤は、酸性基含有単量体、及び他の任意の構造単位を構成する単量体を含む単量体組成物を付加重合することによって調製される。従って、β−グルコースが縮合重合してなるセルロースの誘導体であるカルボキシメチルセルロースなどは、本発明に用いる酸性基含有単量体単位を含む分散剤には含まれない。
分散剤の量は、非導電性微粒子100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下である。分散剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、非導電性微粒子への分散剤の吸着性を高めることができるので、非導電性微粒子の分散性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、分散剤の凝集による粘度の上昇を抑制できるので、非導電性微粒子の安定性を高めることができる。
(水分散液の製造方法)
多孔膜用スラリーである水分散液を製造する際の、上記各成分の混合方法としては、水分散液中の球体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物が450ppm以下となるようにする方法であれば特に制限されない。例えば、非導電性微粒子と溶媒(水、好ましくはイオン交換水)とを混合する混合工程(S1)、前記混合工程(S1)の後に非導電性微粒子を一次粒子化させる分散工程(S2)、前記分散工程(S2)を経た非電導性微粒子のうち10μm以上の粗大粒子を取り除く分級工程(S3)、分級工程(S3)を経て得られたスラリーに粒子状結着剤、必要に応じて用いられる粘度調整剤、凝集抑制剤、防腐剤、キレート化合物を混合し、調製溶液を得る調製工程(S4)、上記調製工程(S4)で得られた調製溶液のろ過を行うろ過工程(S5)、ろ過工程(S5)において粗大粒子を除去した調製溶液から磁性物質を除去する磁性物質除去工程(S6)を経ることにより得られる水分散液が好ましく用いられる。ここで、本発明において、磁性物質とは、磁性を有する金属物質をいう。
(混合工程(S1))
混合工程(S1)における混合方法は、特に限定されないが、(i)非導電性微粒子を溶媒に供給し攪拌する方法、(ii)非導電性微粒子を充填した容器に溶媒を投入する方法等が挙げられる。さらに、混合工程(S1)においては、分散剤を混合してもよい。この場合には、予め分散剤を水に溶解させた分散剤水溶液を調製することが好ましい。
なお、分散剤水溶液の調製方法としては、好ましくはインペラー式攪拌機、メディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサーを用いて分散剤及び水を混合する方法が挙げられる。これらのなかでも、インペラー式攪拌機を用いて分散剤及び水を混合する方法がより好ましい。
(分散工程(S2))
また、分散工程(S2)における分散方法は特に限定されないが、好ましくはインペラー式攪拌機、ビーズミル、ボールミル等のメディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を用いて分散する方法が挙げられる。
これらの中でも、非導電性微粒子の一次粒子の破壊を抑制し易い点で、メディアレス分散機を用いることが好ましく、その中でもコロイドミルを用いることがより好ましい。
(分級工程(S3))
また、分級工程(S3)における分級方法としては、非導電性微粒子を分級できる方法であれば特に制限されず、乾式分級機、湿式分級機を用いた分級を行うことができる。乾式分級機としては、重力分級、慣性分級、遠心分級、ふるい分け分級などの乾式分級法;沈降分級、機械的分級、水力分級、遠心分級、ふるい分け分級などの湿式分級法;などの分級方法を採用することができる。
これらのなかでも、分級効率が高い観点から、湿式分級法におけるふるい分け分級を行うことが好ましく、スクリーン端部より供給されたスラリーの固形分を連続的に分級するスラリースクリーナーを用いたふるい分け分級を行うことがより好ましい。
スラリークリーナーに用いられるスクリーンの平均孔径は、10μm以上の粗大粒子を効果的に除くことができる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。ここで、スクリーンの平均孔径は、透過型電子顕微鏡(SEM)の写真から画像解析を行い、任意の20点の孔の最大直径の平均値として求めることができる。
(調製工程(S4))
調製工程(S4)における攪拌方法としては、特に限定されないが、インペラー式攪拌機、メディア型攪拌機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等を用いて攪拌する方法が挙げられる。これらのなかでも、ハイシェアが加えられることによる粒子状結着剤の凝集を防ぐ観点から、インペラー式攪拌機を用いることが好ましい。
また、この調製工程(S4)において、さらに水を加えることにより調製溶液の固形分濃度を所望のものとするための希釈を行う際にも上述の攪拌方法と同様の方法を用いることができる。
(ろ過工程(S5))
ろ過工程(S5)におけるろ過方法に格別な制限はなく、自然ろ過、加圧ろ過、減圧ろ過を好ましく採用することができる。また、ろ過フィルターを用いるろ過、掻き取りろ過、ふるい分けろ過等を採用することができ、ろ過フィルターを用いるろ過を行うことが好ましい。
ろ過フィルターを用いるろ過処理方法においては、ろ過フィルターの種類や構造の詳細は特に限定されないが、好ましくは20μm以上、より好ましくは10μm以上の粒子径を有する粗大粒子を除去するろ過フィルターを用いることが好ましい。また、ろ過フィルターを用いて粗大粒子等を除去するためのシステムも特に限定されず、ろ過に大きな問題を発生しなければ、特に限定されない。
これらのろ過フィルターの素材例としては、紙、布、セルロースアセートポリマー、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテル、フッ素系ポリマー(ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ステンレス、セラミックなどを挙げることができる。その形態は、平膜、カートリッジ化膜、中空糸膜などであり、特に限定されない。カートリッジろ過フィルターでろ過するには、カートリッジろ過フィルターを装着するハウジングを用いることが特に好ましい。
これらのろ過フィルターは、各社から多数市販されている。例えば、カートリッジタイプのポリオレフィン系複合繊維であれば、チッソCPフィルター(各種サイズ、チッソフィルター(株)製)、ポリプロピレン製であれば、マイクロシリア フィルターカートリッジ EXタイプ(各種サイズ、ロキテクノ製)、マイクロ・ワインドIIHPシリーズフィルターカートリッジ(各種サイズ、住友スリーエム(株)製)などが挙げられ、四フッ化エチレン製であれば、マイクロシリア フィルターカートリッジ BOタイプ(各種サイズ、ロキテクノ製)などが挙げられる。
これらのろ過フィルターの使用にあたっては、その使用法に特に限定はなく、目詰まりすることなく、かつ粗大粒子等を除去できればよい。しかし、一般に上記のろ過フィルターは、ハウジングに装着されて利用することで設置面積もとることなく有効である。ハウジングのサイズや形状は特に限定されず、円形や角型あるいは一本のろ過フィルターを装填してもよく、一度に2本以上のろ過フィルターを装填してもよい。
次に、ろ過工程を実施するにあたっては、一般に加圧あるいは減圧にてろ過フィルターを通過させ粗大粒子等を除去することが好ましい。ここで、ろ過フィルターに調製溶液を送液する際にポンプなどで送液することにより加圧を行うことができる。ポンプとしては、送液をスムーズに行うことができ、かつ、加圧を行うことができるものであれば、特に限定されず、例えば、渦巻ポンプ、及び軸流ポンプ等の遠心式ポンプ;プランジャーポンプ、及びダイヤフラムポンプ等の容積往復動式ポンプ;ギヤーポンプ、スクリューポンプ、ベーンポンプ、及びモーノポンプ等の容積回転式ポンプ;等を用いることができ、ダイヤフラムポンプを用いることが好ましい。
また、調製溶液をろ過フィルターよりも高所に配置して自然圧(自重による加圧)でろ過することもできる。さらに、調製溶液に気体(好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス)で圧力を加えてもよく、その場合は調製溶液の存在するタンクは密閉系であることが好ましい。気体で圧力を加える場合には、0.05〜1MPaの圧力で、より好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力で加圧することが好ましい。
送液時にポンプで圧力をかけたり、また、自重で加圧やさらには気体での加圧を行う場合の圧力は、ろ過フィルターを破損したり目詰まりさせたりして性能を劣化させない限り、特に限定されない。
(磁性物質除去工程(S6))
磁性物質除去工程(S6)において、磁性物質を除去する方法としては、特に限定はされないが、磁気により磁性物質を除去することが好ましく、磁気ストレーナー、磁気フィルターを用いて行うことがより好ましい。
また、磁性物質除去工程(S6)により磁性物質を除去した後の多孔膜用スラリーである水分散液中の磁性物質含有量は、10ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。水分散液中の磁性物質含有量が多すぎると、凝集物が発生し易くなる。
(工程(1))
本発明の工程(1)においては、上記多孔膜用スラリーである水分散液を、保管容器に移送、保管する。
(保管容器への水分散液の移送)
多孔膜用スラリーである水分散液を製造後、保管容器へ水分散液を移送し、保管容器への水分散液の充填を行う。水分散液を保管容器に充填する際には外気を遮断しながら水分散液を移送することが好ましい。
ここで、保管容器に充填する際の充填率は特に制限はないが、水分散液を充填した際に保管容器に形成される空間体積が、保管容器の容量の0〜50%であることが好ましい。また、保管容器に形成される空間体積が20%以下となるように充填してもよく、この場合には、工程(2)において、保管容器ごと攪拌する際に保管容器に形成される空間体積が保管容器の容量の20〜40%となるように保管容器から水分散液を排出することが好ましい。
(保管容器)
保管容器としては、特に制限はなく、ドラム缶、一斗缶、ペール缶、ポリタンク、パウチ型容器等を用いることができる。 保管容器の容量としては、特に制限はないが、10〜200Lの容器を用いるのが好ましく、ドラム缶の場合にはより好ましくは100〜200Lであり、ポリタンクやパウチ型容器の場合にはより好ましくは10〜25Lである。また、パウチ型容器としては、接液部のシート材料、即ち、パウチ型容器の内部のシート材料は、ポリプロピレンまたはポリエチレンであることが好ましく、ポリプロピレンであることがさらに好ましい。
(水分散液の保管方法)
上記のように多孔膜用スラリーである水分散液を充填し、密封した保管容器を5〜40℃の環境下において保管することが好ましい。また、保管期間としては、1〜24ヶ月が好ましい。本発明の製造方法によれば、保管期間が前記範囲内であれば、保管後に多孔膜用スラリーである水分散液を撹拌することにより、保管前のスラリーの粘度を実質変化させることなく、優れた塗工性を維持することができる。
(工程(2))
本発明の工程(2)においては、工程(1)において保管した多孔膜用スラリーである水分散液を保管容器ごと撹拌する。工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとする。即ち、工程(2)において、保管容器ごと攪拌する際に保管容器に形成される空間体積が保管容器の容量の20〜40%であることが好ましく、保管容器の容量の25〜35%であることがより好ましく、保管容器の容量の30%であることがさらに好ましい。
攪拌方法としては、保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合する。即ち、保管容器ごと多孔膜用スラリーである水分散液を攪拌混合する。また、攪拌混合時の回転駆動が偏心回転であること、またはドラムシェイカーを用いることが好ましく、攪拌混合時の回転駆動が偏心回転であることがより好ましい。
ここで、偏心回転とは、攪拌混合時の回転駆動の回転軸心上に保管容器の重心が存在しないことをいう。例えば、保管容器が少なくとも一つの平面を有する場合には、水平軸が保管容器の一平面を垂直に貫通する一平面内の軸線と、水平軸とのなす角度が好ましくは90°未満、より好ましくは60〜80°、さらに好ましくは70°となるように、保管容器を回転させる。
即ち、回転駆動が偏心回転である攪拌混合を行う場合には、例えば図1に示す攪拌装置2を用いて攪拌混合を行う。攪拌装置2において、底面4および上面6が平面である円柱状の保管容器8を用いて攪拌を行う場合には、保管容器8の底面4および上面6の略中心を垂直に貫通する軸線10と、水平軸12とのなす角度θを好ましくは90°未満、より好ましくは60〜80°、さらに好ましくは70°となるようにして、モーター14を回転駆動させることにより、保管容器8内の水分散液を保管容器8ごと攪拌する。なお、攪拌装置2は、モーター14、保管容器8を回転させるための回転軸16、保管容器8を保持するための保持部18を備えている。
撹拌装置2を用いた場合の攪拌方法としては特に制限はないが、図1における奥側への回転と手前側への回転を交互に行うことが好ましい。例えば、保管容器8を図1における奥側へ10〜20回転させ、その後手前側へ10〜20回転させる工程を1パスとして、このパスを所定回数繰り返すことが好ましい。このパスの繰り返し回数は、保管容器8における水分散液の保管期間によって適宜調整することができる。
また、ドラムシェイカーを用いる場合には、例えば、図2に示すドラムシェイカー20を用いる。図2に示すようにドラムシェイカー20は、ドラム缶等の保管容器22を回転駆動させるためのモーター24、モーター24を支持する支持部26、支持部26の先端に取り付けられドラム缶等の保管容器22を保持する保持部30を備えている。ドラムシェイカー8はモーター24を回転駆動させることにより回転軸32を中心に保管容器22内の水分散液を保管容器22ごと攪拌混合する。なお、ドラムシェイカー20においては、回転軸32上に保管容器22の重心が存在することが好ましい。
(工程(3))
本発明の工程(3)においては、工程(2)において攪拌を行った水分散液を基材(正極用の極板、負極用の極板または有機セパレータ)上に塗布、乾燥して、当該基材表面に多孔膜を形成する。多孔膜は、正極用の極板、負極用の極板または有機セパレータの何れの表面に成膜されてもよく、正極用の極板、負極用の極板および有機セパレータの全てに成膜されてもよい。
また、剥離紙などの補助基材上に水分散液を塗布、乾燥して、多孔膜を形成した後に、これを基材上に転写してもよい。
多孔膜用スラリーである水分散液を用いて基材の表面に多孔膜を成膜することにより、電極活物質層(正極活物質層および/または負極活物質層)の保護膜あるいはセパレータとして好ましく用いることができる。
多孔膜用スラリーである水分散液を基材上に塗布する方法は、特に限定されない。例えば、上記水分散液を、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、ダイコーター法、グラビアコーター法、エクストルージョン法、およびハケ塗り法などの方法が挙げられる。これらのなかでもダイコーター法、グラビアコーター法が好ましい。
また、塗布後の乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法などが挙げられる。乾燥時間は好ましくは5分〜30分であり、乾燥温度は好ましくは40℃〜180℃である。
また、多孔膜用スラリーである水分散液を塗布及び乾燥した後で、必要に応じて、例えば金型プレス又はロールプレスなどを用い、加圧処理を施すことが好ましい。
(基材)
(正極用の極板)
正極用の極板は、正極活物質、正極用の結着剤、極板の作製に用いる溶媒、必要に応じて用いられる導電剤、増粘剤等を含む正極用スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより得られる。即ち、集電体の表面に正極活物質層を形成することにより得ることができる。
正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な金属酸化物が挙げられる。かかる金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、燐酸鉄リチウム等を挙げることができる。なお、上記にて例示した正極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
正極用の結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などの樹脂;アクリル系軟質重合体、ジエン系軟質重合体、オレフィン系軟質重合体、ビニル系軟質重合体等の軟質重合体等が挙げられる。なお、結着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極板の作製に用いる溶媒としては、は、水及び有機溶媒のいずれを使用してもよい。有機溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;などが挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。なお、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒としては水を用いることが好ましい。
溶媒の量は、正極用スラリーの粘度が塗布に好適な粘度になるように調整すればよい。具体的には、正極用スラリーの固形分の濃度が、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%となる量に調整して用いられる。
導電剤の具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックがより好ましい。これらの導電剤は、単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物などが挙げられる。
集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するため金属材料が好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、アルミニウムが好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、正極活物質層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、正極活物質層の接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に導電性接着剤層等の中間層を形成してもよい。
正極用スラリーを集電体の表面に塗布する方法は特に限定されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、ダイコーター法、グラビアコーター法、エクストルージョン法、およびハケ塗り法などの方法が挙げられる。
乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法などが挙げられる。乾燥時間は好ましくは5分〜30分であり、乾燥温度は好ましくは40℃〜180℃である。
また、集電体の表面に正極用スラリーを塗布及び乾燥した後で、必要に応じて、例えば金型プレス又はロールプレスなどを用い、正極活物質層に加圧処理を施すことが好ましい。加圧処理により、正極活物質層の空隙率を低くすることができる。空隙率は、好ましくは5〜30%、より好ましくは7%〜20%である。空隙率が低すぎると、高い体積容量が得難く、また、正極活物質層が集電体から剥がれ易い傾向となる。また、空隙率が高すぎると、十分な充電効率及び放電効率を得難い傾向となる。
さらに、正極活物質層が硬化性の重合体を含む場合は、正極活物質層の形成後に重合体を硬化させることが好ましい。
(負極用の極板)
負極用の極板は、負極活物質、負極用の結着剤、極板の作製に用いる溶媒、必要に応じて用いられる増粘剤、導電剤等を含む負極用スラリーを上述の集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより得ることができる。即ち、集電体の表面に負極活物質層を形成することにより得ることができる。
負極活物質としては、たとえば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、熱分解炭素などの低結晶性炭素(非晶質炭素)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、錫やケイ素等の合金系材料、ケイ素酸化物、錫酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物等が挙げられる。なお、上記にて例示した負極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
負極用の結着剤としては、特に制限されず公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などの樹脂や、アクリル系軟質重合体、ジエン系軟質重合体、オレフィン系軟質重合体、ビニル系軟質重合体等の軟質重合体を用いることができる。これらは単独で使用しても、これらを2種以上併用してもよい。
また、極板の作製に用いる溶媒、増粘剤及び導電剤は上述の正極用の極板に用いることができるものと同様のものを用いることができる。
また、集電体についても上述の正極用の極板に用いることができるものと同様のものを用いることができる。
負極用の極板は、正極用の極板と同様の要領で製造することができる。
(有機セパレータ)
有機セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製や芳香族ポリアミド樹脂製の微孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;など公知のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜またはポリオレフィン系の繊維を織ったもの、またはその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。
(リチウム二次電池)
上記の多孔膜を備える正極、負極及びセパレータは、リチウム二次電池の構成要素として用いることができる。即ち、リチウム二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、正極、負極及びセパレータうちの少なくとも1つは、多孔膜用スラリーである水分散液により得られる多孔膜を備える。
なお、上記多孔膜を有しない正極を用いる場合には、上述の正極用の極板を正極として用いることができる。また、上記多孔膜を有しない負極を用いる場合には、上述の負極用の極板を負極として用いることができる。また、上記多孔膜を有しないセパレータを用いる場合には、上述の有機セパレータを用いることができる。
(電解液)
電解液としては、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C49SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO22NLi、(C25SO2)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liは好適に用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
支持電解質の量は、電解液に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し、二次電池の充電特性及び放電特性が低下する可能性がある。
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートが好ましい。なお、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、電解液には必要に応じて添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えばビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。なお、添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、上記以外の電解液としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質;硫化リチウム、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質;などを挙げることができる。
(リチウム二次電池の製造方法)
リチウム二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
また、上述の多孔膜を、正極又は負極の電極活物質層表面に形成する場合には、リチウム二次電池の製造の際にセパレータを用いなくても、多孔膜がセパレータとしての機能を果たすことができ、低コストでリチウム二次電池の作製が可能になる。また、リチウム二次電池の製造の際にセパレータを用いた場合においても、セパレータ表面に形成されている孔を埋めることがないため、より高いレート特性を発現することができる。さらに、多孔膜を電極活物質層表面に形成することにより、セパレータが熱による収縮を起こしても、正極・負極間の短絡を起こすことがなく、高い安全性を保つことができる。
本発明のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法によれば、保管容器での保管後、非導電性微粒子の再分散化が可能な多孔膜用スラリーである水分散液を用いて製造することができ、ピール強度及び得られるリチウム二次電池のサイクル特性に優れる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及び均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例及び比較例において、再分散性、12ヶ月保管後の635メッシュ残渣量、ピール強度および高温サイクル特性の評価はそれぞれ以下のように行った。
[再分散性評価(撹拌時間15分での固形分の回復率)]
実施例および比較例において製造した水分散液について、保管前の水分散液の固形分を測定した。また、保管容器内に水分散液を12ヶ月間保管し、それぞれの実施例および比較例に示す再分散工程における攪拌混合方法により15分間攪拌を行った後の水分散液の固形分量を測定し、下記式(I)により固形分回復率を求めた。
固形分回復率(%)=(保管、撹拌後の固形分)/(保管前の固形分)×100 …(I)
また、求めた固形分回復率を以下の基準により評価し、表1に示した。
A:固形分回復率が97%以上
B:固形分回復率が95%以上97%未満
C:固形分回復率が90%以上95%未満
D:固形分回復率が90%未満
[12ヶ月保管後の635メッシュ残渣量]
洗浄した635メッシュSUS金網を秤量し、実施例および比較例で所定期間保管した後の多孔膜用スラリーである水分散液1Kgを635メッシュSUS金網でろ過して、捕集物をイオン交換水で洗浄した後に、105℃で1時間乾燥した。乾燥後、捕集物が捕集された金網を秤量して、濾過前の金網質量を差し引いた捕集物質量からメッシュ残渣量を算出した。即ち、メッシュ残渣量を下記式(II)により求めた。
メッシュ残渣量(ppm)=(a−b)/(c×d/100)×1000000 …(II)
なお、式(II)中、a〜dは下記のものを示す。
a:金網メッシュ+捕集物の乾燥後の質量(g)
b:金網メッシュの質量(g)
c:水分散液の質量(g)
d:水分散液の全固形分濃度(wt%)
求めたメッシュ残渣量を下記基準により評価し、結果を表1に示した。
A:メッシュ残渣量が50ppm未満
B:メッシュ残渣量が50ppm以上150ppm未満
C:メッシュ残渣量が150ppm以上450ppm未満
D:メッシュ残渣量が450ppm以上
[ピール強度]
有機セパレータ上に、実施例および比較例で得られた水分散液により多孔膜を形成したセパレータを得た。これを幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、多孔膜面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、試験片とした。次に、前記試験片におけるセロハンテープを試験台に固定した状態で、セパレータの一端を垂直方向に引張り速度10mm/分で引張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とし、下記の基準により判定する。ピール強度が大きいほど、多孔膜と有機セパレータとの結着力が大きい、すなわち密着強度が大きいことを示す。
A:ピール強度が100N/m以上
B:ピール強度が75N/m以上100N/m未満
C:ピール強度が50N/m以上75N/m未満
D:ピール強度が50N/m未満
[高温サイクル特性]
10セルのフルセルコイン型電池を60℃雰囲気下、0.2Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3Vまで放電する充放電を50回(=50サイクル)繰り返し、電気容量を測定した。10セルの平均値を測定値とし、5サイクル終了時の電気容量に対する200サイクル終了時の電気容量の割合を百分率で算出して充放電容量保持率を求め、これをサイクル特性の評価基準とする。この値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上である。
B:充放電容量保持率が70%以上80%未満である。
C:充放電容量保持率が60%以上70%未満である。
D:充放電容量保持率が60%未満である。
(実施例1)
(水分散液の製造)
[粒子状結着剤の製造]
攪拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製「エマール2F」)0.15部及び過硫酸アンモニウム0.5部を供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、ニトリル基含有単量体としてアクリロニトリル2部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてブチルアクリレート93.8部、エチレン性不飽和酸単量体としてメタクリル酸2部、架橋性単量体としてアリルグリシジルエーテル1部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、及び、キレート剤(キレスト社製「キレスト400G」(エチレンジアミン4酢酸ナトリウム4水和物))0.15部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、6
0℃で反応を行った。添加の終了後、さらに70℃で3時間攪拌してから反応を終了し、粒子状結着剤の水分散液を製造した。
[分散剤の製造]
水50部、アクリル酸80部、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸19.92部及び2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸0.08部を混合して、単量体組成物を得た。
温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに水150部を仕込み、80℃まで昇温した。次いで、攪拌下に、前記の単量体組成物と、30%過硫酸ナトリウム水溶液10部とを、それぞれ3時間にわたって定量ポンプでフラスコに連続的に滴下供給し、80℃で重合反応を行った。滴下終了後、更に系を80℃に保ったまま1時間熟成し、重合反応を完了した。その後、32%水酸化ナトリウム水溶液120部をフラスコ中に加えて反応液を完全に中和させて、水溶性重合体である分散剤の水溶液を得た。得られた水溶性重合体の質量平均分子量は、6000であった。
[混合工程]
非導電性粒子としてバイヤー法で製造されたαアルミナ粒子(一次粒子径:0.85μm)100部、分散剤として前記工程で得た水溶性重合体の水溶液を水溶性重合体の量で0.5部を混合し、固形分濃度を55%になるように電気伝導度が10μS/cmの水を添加し混合することによりスラリーを得た。
[分散工程及び分級工程]
前記工程で得たスラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて周速10m/sec、流量200L/hの条件で1パス分散させた。その後、分級機(アコー社製、スラリースクリーナー)を用いて分級を行った。なお、分散工程及び分級工程を合わせて以下、「分散分級工程」ということがある。また、分散工程直後のスラリーに含まれる非導電性粒子の粒子径として、分散工程を経たスラリーについて非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)の測定を行った。
[調製工程]
前記工程で分散及び分級処理を施した非導電性粒子の分散体と、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロースの4%水溶液37.5部(カルボキシメチルセルロースの量で1.5部)を混合し、前記工程で得た粒子状結着剤の水分散液を13.3部(粒子状結着剤の量で6部)、及び、凝集抑制剤としてノニオン系界面活性剤(プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを重合比50:50で重合させた界面活性剤)の水溶液を固形分換算で0.2部混合し、調製溶液を得た。
[ろ過工程及び磁性物質除去工程]
得られた調製溶液に対しフィルター(平均孔径10μm)でろ過した後、さらに室温、磁束密度8000ガウスの条件で、マグネットフィルター(トックエンジニアリング株式会社製)を10パスさせることにより磁性物質を除去し、多孔膜用スラリーである水分散液を得た。得られた多孔膜用スラリーである水分散液について、球体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量を測定したところ、20ppmであった。また、水分散液の粘度は88mPasであった。
(水分散液の保管)
得られた水分散液を保管容器としての100Lドラム缶に移送し、密封して12ヶ月間保管した。
(再分散工程)
保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の30%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整し、保管容器を密封した。次に、保管容器を図1に示す攪拌装置2にセットして、保管容器を図1における奥側へ15回転させ、その後手前側へ15回転させる攪拌混合工程を1パスとして、この攪拌混合工程を32パス行った。また、図1に示す攪拌装置2における軸線10と、水平軸12とがなす角度θを70°にセットして再分散工程における攪拌混合工程を行った。
(セパレータの製造)
ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ(厚み12μm)を用意した。用意した有機セパレータの片面に、前記の多孔膜用スラリーである水分散液を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、有機セパレータ層及び厚み4μmの多孔膜を備えるセパレータを製造した。得られたセパレータを用いて、セパレータのピール強度を評価した。
(正極の製造)
正極活物質として95部のLiCoO2に、正極用の結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製「KF−1100」)を固形分換算量で3部となるように加え、さらに、導電剤としてアセチレンブラック2部及び溶媒としてN−メチルピロリドン20部を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、正極用スラリーを得た。この正極用スラリーを厚さ18μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した。その後ロールプレスで圧延して、正極活物質層を有する全厚みが100μmの正極を得た。
(負極の製造)
攪拌機を備えた反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、過硫酸カリウム0.5部、単量体として1,3−ブタジエン33部、スチレン63.5部及びイタコン酸3.5部、並びにイオン交換水を200部入れて混合した。これを50℃で12時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体を除去した。これにより、粒子状の負極用の結着剤を含む水分散体を得た。
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積4m2/gの人造黒鉛(体積平均粒子径:24.5μm)70部、及びSiOx(信越化学社製;体積平均粒子径5μm)30部、並びに、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製「BSH−12」)を固形分換算で1部を加え、イオン交換水で固形分濃度55%に調整した。その後、25℃で60分混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した。その後、さらに25℃で15分攪拌し、混合液を得た。この混合液に、前記の負極用の結着剤を含む水分散液を固形分換算で1.0部入れ、イオン交換水を入れて最終固形分濃度50%となるように調整し、さらに10分間攪拌した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
前記の負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延して、厚み80μmの負極活物質層を備える負極を得た。
(リチウム二次電池の製造)
次いで、得られた正極を直径13mm、負極を直径14mm、セパレータを直径18mmの円形に切り抜いた。正極の正極活物質層面側に、セパレータの多孔膜面が対向するようにセパレータを介在させ、互いに電極活物質層が対向し、外装容器底面に正極のアルミニウム箔が接触するように負極を配置し、更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に空気が残らないように電解液を注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。このようにして得られたリチウム二次電池について、上述した要領で、高温サイクル特性を評価した。
(実施例2)
水分散液の製造において、凝集抑制剤の添加量を1.2部とし、さらに、再分散工程において、図2に示すドラムシェイカー8を用いて保管容器内の水分散液を保管容器ごと攪拌混合した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例3)
水分散液の製造において、体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量が400ppmである水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例4)
水分散液の製造において、体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量が150ppmである水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例5)
再分散工程において、保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の20%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例6)
再分散工程において、保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の40%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例7)
再分散工程において、図1に示す攪拌装置2における軸線10と、水平軸12とがなす角度θを80°にセットして再分散工程における攪拌混合工程を行った以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例8)
再分散工程において、図1に示す攪拌装置2における軸線10と、水平軸12とがなす角度θを60°にセットして再分散工程における攪拌混合工程を行った以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った
(実施例9)
水分散液の製造において、凝集抑制剤の添加量を0.9部として水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例10)
水分散液の製造において、凝集抑制剤の添加量を0.1部として水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(実施例11)
実施例1と同様に水分散液の製造および再分散工程を行った。
また、実施例1と同様に負極の製造を行い、負極用の極板を得た。この負極用極板の負極活物質層側に面に、水分散液の製造で得られ、再分散工程で攪拌混合を行った多孔膜用スラリーである水分散液を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、厚み3μmの多孔膜を備える負極を製造した。
また、実施例1と同様に正極の製造を行った。
(リチウム二次電池の製造)
ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ(厚み12μm)を用意した。次いで、得られた正極を直径13mm、負極を直径14mm、セパレータを直径18mmの円形に切り抜いた。負極の多孔膜が形成された面側に、セパレータが対向するようにセパレータを介在させた。また、負極及び正極の互いの電極活物質層が対向し、外装容器底面に正極のアルミニウム箔が接触するように負極を配置し、更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に空気が残らないように電解液を注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。このようにして得られたリチウム二次電池について、上述した要領で、高温サイクル特性を評価した。
(比較例1)
再分散工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(比較例2)
水分散液の製造において、体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量が600ppmである水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(比較例3)
再分散工程において、保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の0%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
(比較例4)
再分散工程において、攪拌装置2を用いる代わりに、手動により振動させながら攪拌混合を行った以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。なお、手動による振動は、振動方向:縦横混合、振動幅:約50cmの条件にて1時間かけて100回振動させた。
Figure 0006221885
表1に示すように、一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下である水分散液を、保管容器に移送、保管する工程(1)、および、前記保管容器内の前記水分散液を保管容器ごと撹拌する工程(2)、に次いで、当該水分散液を基材上に塗布、乾燥して、当該基材上に多孔膜を形成する工程(3)を含む、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法であって、前記工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとすることと、前記工程(2)において、前記保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合することとにより得られるリチウム二次電池用多孔膜のピール強度およびこの多孔膜を含むリチウム二次電池の高温サイクル特性は良好であった。また、この多孔膜を形成するために用いる水分散液の保管後の再分散性は良好であり、メッシュ残渣量は低減された。
2…攪拌装置、8…保管容器、10…軸線、12…水平軸、14…モーター、20…ドラムシェイカー

Claims (5)

  1. 一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下である水分散液を、保管容器に移送、保管する工程(1)、および、
    前記保管容器内の前記水分散液を保管容器ごと撹拌する工程(2)、
    に次いで、当該水分散液を基材上に塗布、乾燥して、当該基材上に多孔膜を形成する工程(3)を含む、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法であって、
    前記工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとすることと、
    前記工程(2)において、前記保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合することと、
    を特徴とするリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
  2. 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際に前記保管容器に形成される空間体積が当該容器の20〜40%である請求項1記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
  3. 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際の回転駆動が偏心回転である請求項1または2記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
  4. 前記水分散液の粘度が60〜120mPasであり、凝集抑制剤を0.1〜1.0質量%含む請求項1〜3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
  5. 前記水分散液は、10質量%以下の粘度調整剤をさらに含み、前記粘度調整剤はセルロース半合成高分子化合物、そのナトリウム塩およびそのアンモニウム塩である請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
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