JP2015185482A - リチウム二次電池用多孔膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下である水分散液を、保管容器に移送、保管する工程(1)、および、前記保管容器内の水分散液を保管容器ごと撹拌する工程(2)、に次いで、当該水分散液を基材上に塗布、乾燥して、当該基材上に多孔膜を形成する工程(3)を含む、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法であって、前記工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとすることと、前記工程(2)において、前記保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合することと、を特徴とするリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[2] 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際に前記保管容器に形成される空間体積が当該容器の20〜40%である[1]記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[3] 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際の回転駆動が偏心回転である[1]または[2]記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[4] 前記水分散液の粘度が60〜120mPasであり、凝集抑制剤を0.1〜1.0質量%含む[1]〜[3]の何れかに記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法、
[5] 前記水分散液は、10質量%以下の粘度調整剤をさらに含み、前記粘度調整剤はセルロース半合成高分子化合物、そのナトリウム塩およびそのアンモニウム塩である[1]〜[4]の何れかに記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法
が提供される。
本発明に用いる水分散液は、多孔膜を形成するための多孔膜用スラリーであって、一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。水分散液中の粗大粒子および/または凝集物の濃度が多すぎると、水分散液を用いて形成された多孔膜を含むリチウム二次電池において、粗大粒子および/または凝集物によりセパレータが破膜される虞がある。
非電導性微粒子としては、リチウム二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定である各種の非導電性の無機微粒子、有機微粒子を使用することができる。
また、非導電性微粒子の一次粒子の平均粒子径は0.1〜2μmであり、非導電性微粒子の比重は1以上である。
本発明に用いる粒子状結着剤としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位、酸性基を有するビニルモノマーの重合単位、及び、α,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位を含んでなるものが好ましい。具体的には、粒子状結着剤としての重合体中に、前記各重合単位を含むことが好ましい。
低級ポリオキシアルキレン基を有するモノマーとしては、ポリ(エチレンオキシド)等のポリ(アルキレンオキシド)などが挙げられる。
エポキシ基を含有するモノマーとしては、炭素−炭素二重結合およびエポキシ基を含有するモノマーが挙げられる。
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、凝集抑制剤を含んでいてもよい。凝集抑制剤としては、水分散液をポリエチレン等からなる有機セパレータ上に塗工する際の水分散液の接触角を下げることができるものであれば特に限定されないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の界面活性剤が挙げられ、ポリエチレングリコール型のノニオン系界面活性剤がより好ましい。これらのノニオン系界面活性剤は、それぞれ単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、塗工性、密着性が良好となる観点から、粘度調整剤を含有することが好ましい。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース半合成高分子化合物およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、セルロース半合成高分子化合物およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩が好ましい。
セルロース半合成高分子化合物は、ノニオン性、アニオン性およびカチオン性に分類することができる。
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤としては、任意の防腐剤を用いることができるが、イソチアゾリン系化合物を用いることが好ましい。
で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「MIT」ということがある。)、又はこれらの混合物を用いることが好ましく、これらの混合物であることがより好ましい。また、前記一般式(1)で表されるベンゾイソチアゾリン系化合物としては、Rが水素原子である1,2−ベンズ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「BIT」ということがある。)を用いることが好ましい。
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、キレート化合物を含んでいてもよい。キレート化合物を含むことにより、多孔膜用スラリーである水分散液中の粗大粒子や凝集物の発生をさらに低減させることができるなどの効果が奏される。キレート化合物は、特に限定されないが、好ましくは、アミノカルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸などが挙げられる。
ホスホン酸系キレート化合物としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホ
スホン酸(以下、「HEDP」ということがある。)等が挙げられる。
キレート化合物は、粒子状結着剤100質量部に対して0.0001〜0.1質量部の割合で用いることが好ましい。
なお、キレート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いる多孔膜用スラリーである水分散液は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、酸性基含有単量体単位を有する水溶性の重合体を用いる。ここで、酸性基含有単量体単位とは、酸性基含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、酸性基含有単量体とは、酸性基を含む単量体を示す。
また、上述した単量体の塩も、酸性基含有単量体として用いうる。
多孔膜用スラリーである水分散液を製造する際の、上記各成分の混合方法としては、水分散液中の球体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物が450ppm以下となるようにする方法であれば特に制限されない。例えば、非導電性微粒子と溶媒(水、好ましくはイオン交換水)とを混合する混合工程(S1)、前記混合工程(S1)の後に非導電性微粒子を一次粒子化させる分散工程(S2)、前記分散工程(S2)を経た非電導性微粒子のうち10μm以上の粗大粒子を取り除く分級工程(S3)、分級工程(S3)を経て得られたスラリーに粒子状結着剤、必要に応じて用いられる粘度調整剤、凝集抑制剤、防腐剤、キレート化合物を混合し、調製溶液を得る調製工程(S4)、上記調製工程(S4)で得られた調製溶液のろ過を行うろ過工程(S5)、ろ過工程(S5)において粗大粒子を除去した調製溶液から磁性物質を除去する磁性物質除去工程(S6)を経ることにより得られる水分散液が好ましく用いられる。ここで、本発明において、磁性物質とは、磁性を有する金属物質をいう。
混合工程(S1)における混合方法は、特に限定されないが、(i)非導電性微粒子を溶媒に供給し攪拌する方法、(ii)非導電性微粒子を充填した容器に溶媒を投入する方法等が挙げられる。さらに、混合工程(S1)においては、分散剤を混合してもよい。この場合には、予め分散剤を水に溶解させた分散剤水溶液を調製することが好ましい。
また、分散工程(S2)における分散方法は特に限定されないが、好ましくはインペラー式攪拌機、ビーズミル、ボールミル等のメディア型分散機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速回転遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を用いて分散する方法が挙げられる。
また、分級工程(S3)における分級方法としては、非導電性微粒子を分級できる方法であれば特に制限されず、乾式分級機、湿式分級機を用いた分級を行うことができる。乾式分級機としては、重力分級、慣性分級、遠心分級、ふるい分け分級などの乾式分級法;沈降分級、機械的分級、水力分級、遠心分級、ふるい分け分級などの湿式分級法;などの分級方法を採用することができる。
調製工程(S4)における攪拌方法としては、特に限定されないが、インペラー式攪拌機、メディア型攪拌機、コロイドミル、高速回転せん断型攪拌機(ホモミクサー)、高速遠心放射型攪拌機(ディスパーミキサー)、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等を用いて攪拌する方法が挙げられる。これらのなかでも、ハイシェアが加えられることによる粒子状結着剤の凝集を防ぐ観点から、インペラー式攪拌機を用いることが好ましい。
ろ過工程(S5)におけるろ過方法に格別な制限はなく、自然ろ過、加圧ろ過、減圧ろ過を好ましく採用することができる。また、ろ過フィルターを用いるろ過、掻き取りろ過、ふるい分けろ過等を採用することができ、ろ過フィルターを用いるろ過を行うことが好ましい。
磁性物質除去工程(S6)において、磁性物質を除去する方法としては、特に限定はされないが、磁気により磁性物質を除去することが好ましく、磁気ストレーナー、磁気フィルターを用いて行うことがより好ましい。
本発明の工程(1)においては、上記多孔膜用スラリーである水分散液を、保管容器に移送、保管する。
多孔膜用スラリーである水分散液を製造後、保管容器へ水分散液を移送し、保管容器への水分散液の充填を行う。水分散液を保管容器に充填する際には外気を遮断しながら水分散液を移送することが好ましい。
保管容器としては、特に制限はなく、ドラム缶、一斗缶、ペール缶、ポリタンク、パウチ型容器等を用いることができる。 保管容器の容量としては、特に制限はないが、10〜200Lの容器を用いるのが好ましく、ドラム缶の場合にはより好ましくは100〜200Lであり、ポリタンクやパウチ型容器の場合にはより好ましくは10〜25Lである。また、パウチ型容器としては、接液部のシート材料、即ち、パウチ型容器の内部のシート材料は、ポリプロピレンまたはポリエチレンであることが好ましく、ポリプロピレンであることがさらに好ましい。
上記のように多孔膜用スラリーである水分散液を充填し、密封した保管容器を5〜40℃の環境下において保管することが好ましい。また、保管期間としては、1〜24ヶ月が好ましい。本発明の製造方法によれば、保管期間が前記範囲内であれば、保管後に多孔膜用スラリーである水分散液を撹拌することにより、保管前のスラリーの粘度を実質変化させることなく、優れた塗工性を維持することができる。
本発明の工程(2)においては、工程(1)において保管した多孔膜用スラリーである水分散液を保管容器ごと撹拌する。工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとする。即ち、工程(2)において、保管容器ごと攪拌する際に保管容器に形成される空間体積が保管容器の容量の20〜40%であることが好ましく、保管容器の容量の25〜35%であることがより好ましく、保管容器の容量の30%であることがさらに好ましい。
本発明の工程(3)においては、工程(2)において攪拌を行った水分散液を基材(正極用の極板、負極用の極板または有機セパレータ)上に塗布、乾燥して、当該基材表面に多孔膜を形成する。多孔膜は、正極用の極板、負極用の極板または有機セパレータの何れの表面に成膜されてもよく、正極用の極板、負極用の極板および有機セパレータの全てに成膜されてもよい。
また、剥離紙などの補助基材上に水分散液を塗布、乾燥して、多孔膜を形成した後に、これを基材上に転写してもよい。
(正極用の極板)
正極用の極板は、正極活物質、正極用の結着剤、極板の作製に用いる溶媒、必要に応じて用いられる導電剤、増粘剤等を含む正極用スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより得られる。即ち、集電体の表面に正極活物質層を形成することにより得ることができる。
さらに、正極活物質層が硬化性の重合体を含む場合は、正極活物質層の形成後に重合体を硬化させることが好ましい。
負極用の極板は、負極活物質、負極用の結着剤、極板の作製に用いる溶媒、必要に応じて用いられる増粘剤、導電剤等を含む負極用スラリーを上述の集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより得ることができる。即ち、集電体の表面に負極活物質層を形成することにより得ることができる。
また、極板の作製に用いる溶媒、増粘剤及び導電剤は上述の正極用の極板に用いることができるものと同様のものを用いることができる。
また、集電体についても上述の正極用の極板に用いることができるものと同様のものを用いることができる。
負極用の極板は、正極用の極板と同様の要領で製造することができる。
有機セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製や芳香族ポリアミド樹脂製の微孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;など公知のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜またはポリオレフィン系の繊維を織ったもの、またはその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。
上記の多孔膜を備える正極、負極及びセパレータは、リチウム二次電池の構成要素として用いることができる。即ち、リチウム二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、正極、負極及びセパレータうちの少なくとも1つは、多孔膜用スラリーである水分散液により得られる多孔膜を備える。
電解液としては、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liは好適に用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
リチウム二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
実施例及び比較例において、再分散性、12ヶ月保管後の635メッシュ残渣量、ピール強度および高温サイクル特性の評価はそれぞれ以下のように行った。
実施例および比較例において製造した水分散液について、保管前の水分散液の固形分を測定した。また、保管容器内に水分散液を12ヶ月間保管し、それぞれの実施例および比較例に示す再分散工程における攪拌混合方法により15分間攪拌を行った後の水分散液の固形分量を測定し、下記式(I)により固形分回復率を求めた。
固形分回復率(%)=(保管、撹拌後の固形分)/(保管前の固形分)×100 …(I)
また、求めた固形分回復率を以下の基準により評価し、表1に示した。
A:固形分回復率が97%以上
B:固形分回復率が95%以上97%未満
C:固形分回復率が90%以上95%未満
D:固形分回復率が90%未満
洗浄した635メッシュSUS金網を秤量し、実施例および比較例で所定期間保管した後の多孔膜用スラリーである水分散液1Kgを635メッシュSUS金網でろ過して、捕集物をイオン交換水で洗浄した後に、105℃で1時間乾燥した。乾燥後、捕集物が捕集された金網を秤量して、濾過前の金網質量を差し引いた捕集物質量からメッシュ残渣量を算出した。即ち、メッシュ残渣量を下記式(II)により求めた。
メッシュ残渣量(ppm)=(a−b)/(c×d/100)×1000000 …(II)
なお、式(II)中、a〜dは下記のものを示す。
a:金網メッシュ+捕集物の乾燥後の質量(g)
b:金網メッシュの質量(g)
c:水分散液の質量(g)
d:水分散液の全固形分濃度(wt%)
求めたメッシュ残渣量を下記基準により評価し、結果を表1に示した。
A:メッシュ残渣量が50ppm未満
B:メッシュ残渣量が50ppm以上150ppm未満
C:メッシュ残渣量が150ppm以上450ppm未満
D:メッシュ残渣量が450ppm以上
有機セパレータ上に、実施例および比較例で得られた水分散液により多孔膜を形成したセパレータを得た。これを幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、多孔膜面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、試験片とした。次に、前記試験片におけるセロハンテープを試験台に固定した状態で、セパレータの一端を垂直方向に引張り速度10mm/分で引張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とし、下記の基準により判定する。ピール強度が大きいほど、多孔膜と有機セパレータとの結着力が大きい、すなわち密着強度が大きいことを示す。
A:ピール強度が100N/m以上
B:ピール強度が75N/m以上100N/m未満
C:ピール強度が50N/m以上75N/m未満
D:ピール強度が50N/m未満
10セルのフルセルコイン型電池を60℃雰囲気下、0.2Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3Vまで放電する充放電を50回(=50サイクル)繰り返し、電気容量を測定した。10セルの平均値を測定値とし、5サイクル終了時の電気容量に対する200サイクル終了時の電気容量の割合を百分率で算出して充放電容量保持率を求め、これをサイクル特性の評価基準とする。この値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上である。
B:充放電容量保持率が70%以上80%未満である。
C:充放電容量保持率が60%以上70%未満である。
D:充放電容量保持率が60%未満である。
(水分散液の製造)
[粒子状結着剤の製造]
攪拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製「エマール2F」)0.15部及び過硫酸アンモニウム0.5部を供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
0℃で反応を行った。添加の終了後、さらに70℃で3時間攪拌してから反応を終了し、粒子状結着剤の水分散液を製造した。
水50部、アクリル酸80部、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸19.92部及び2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸0.08部を混合して、単量体組成物を得た。
非導電性粒子としてバイヤー法で製造されたαアルミナ粒子(一次粒子径:0.85μm)100部、分散剤として前記工程で得た水溶性重合体の水溶液を水溶性重合体の量で0.5部を混合し、固形分濃度を55%になるように電気伝導度が10μS/cmの水を添加し混合することによりスラリーを得た。
前記工程で得たスラリー中のαアルミナ粒子を、メディアレス分散装置(IKA社製、インライン型粉砕機MKO)を用いて周速10m/sec、流量200L/hの条件で1パス分散させた。その後、分級機(アコー社製、スラリースクリーナー)を用いて分級を行った。なお、分散工程及び分級工程を合わせて以下、「分散分級工程」ということがある。また、分散工程直後のスラリーに含まれる非導電性粒子の粒子径として、分散工程を経たスラリーについて非導電性粒子の累積粒度分布(D10、D50及びD90)の測定を行った。
前記工程で分散及び分級処理を施した非導電性粒子の分散体と、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロースの4%水溶液37.5部(カルボキシメチルセルロースの量で1.5部)を混合し、前記工程で得た粒子状結着剤の水分散液を13.3部(粒子状結着剤の量で6部)、及び、凝集抑制剤としてノニオン系界面活性剤(プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを重合比50:50で重合させた界面活性剤)の水溶液を固形分換算で0.2部混合し、調製溶液を得た。
得られた調製溶液に対しフィルター(平均孔径10μm)でろ過した後、さらに室温、磁束密度8000ガウスの条件で、マグネットフィルター(トックエンジニアリング株式会社製)を10パスさせることにより磁性物質を除去し、多孔膜用スラリーである水分散液を得た。得られた多孔膜用スラリーである水分散液について、球体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量を測定したところ、20ppmであった。また、水分散液の粘度は88mPasであった。
得られた水分散液を保管容器としての100Lドラム缶に移送し、密封して12ヶ月間保管した。
保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の30%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整し、保管容器を密封した。次に、保管容器を図1に示す攪拌装置2にセットして、保管容器を図1における奥側へ15回転させ、その後手前側へ15回転させる攪拌混合工程を1パスとして、この攪拌混合工程を32パス行った。また、図1に示す攪拌装置2における軸線10と、水平軸12とがなす角度θを70°にセットして再分散工程における攪拌混合工程を行った。
ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ(厚み12μm)を用意した。用意した有機セパレータの片面に、前記の多孔膜用スラリーである水分散液を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、有機セパレータ層及び厚み4μmの多孔膜を備えるセパレータを製造した。得られたセパレータを用いて、セパレータのピール強度を評価した。
正極活物質として95部のLiCoO2に、正極用の結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製「KF−1100」)を固形分換算量で3部となるように加え、さらに、導電剤としてアセチレンブラック2部及び溶媒としてN−メチルピロリドン20部を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、正極用スラリーを得た。この正極用スラリーを厚さ18μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した。その後ロールプレスで圧延して、正極活物質層を有する全厚みが100μmの正極を得た。
攪拌機を備えた反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、過硫酸カリウム0.5部、単量体として1,3−ブタジエン33部、スチレン63.5部及びイタコン酸3.5部、並びにイオン交換水を200部入れて混合した。これを50℃で12時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体を除去した。これにより、粒子状の負極用の結着剤を含む水分散体を得た。
次いで、得られた正極を直径13mm、負極を直径14mm、セパレータを直径18mmの円形に切り抜いた。正極の正極活物質層面側に、セパレータの多孔膜面が対向するようにセパレータを介在させ、互いに電極活物質層が対向し、外装容器底面に正極のアルミニウム箔が接触するように負極を配置し、更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に空気が残らないように電解液を注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。このようにして得られたリチウム二次電池について、上述した要領で、高温サイクル特性を評価した。
水分散液の製造において、凝集抑制剤の添加量を1.2部とし、さらに、再分散工程において、図2に示すドラムシェイカー8を用いて保管容器内の水分散液を保管容器ごと攪拌混合した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
水分散液の製造において、体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量が400ppmである水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
水分散液の製造において、体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量が150ppmである水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
再分散工程において、保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の20%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
再分散工程において、保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の40%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
再分散工程において、図1に示す攪拌装置2における軸線10と、水平軸12とがなす角度θを80°にセットして再分散工程における攪拌混合工程を行った以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
再分散工程において、図1に示す攪拌装置2における軸線10と、水平軸12とがなす角度θを60°にセットして再分散工程における攪拌混合工程を行った以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った
水分散液の製造において、凝集抑制剤の添加量を0.9部として水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
水分散液の製造において、凝集抑制剤の添加量を0.1部として水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
実施例1と同様に水分散液の製造および再分散工程を行った。
また、実施例1と同様に負極の製造を行い、負極用の極板を得た。この負極用極板の負極活物質層側に面に、水分散液の製造で得られ、再分散工程で攪拌混合を行った多孔膜用スラリーである水分散液を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、厚み3μmの多孔膜を備える負極を製造した。
また、実施例1と同様に正極の製造を行った。
ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ(厚み12μm)を用意した。次いで、得られた正極を直径13mm、負極を直径14mm、セパレータを直径18mmの円形に切り抜いた。負極の多孔膜が形成された面側に、セパレータが対向するようにセパレータを介在させた。また、負極及び正極の互いの電極活物質層が対向し、外装容器底面に正極のアルミニウム箔が接触するように負極を配置し、更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に空気が残らないように電解液を注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。このようにして得られたリチウム二次電池について、上述した要領で、高温サイクル特性を評価した。
再分散工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
水分散液の製造において、体積相当径が20μm以上の粗大粒子および/または凝集物量が600ppmである水分散液を得た。この水分散液を用いた以外は、実施例1と同様に再分散工程、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
再分散工程において、保管容器としての100Lドラム缶内に形成される空間体積が、保管容器の容量の0%となるように、保管容器内の水分散液の量を調整した以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。
再分散工程において、攪拌装置2を用いる代わりに、手動により振動させながら攪拌混合を行った以外は、実施例1と同様に水分散液の製造、セパレータの製造およびリチウム二次電池の製造を行った。なお、手動による振動は、振動方向:縦横混合、振動幅:約50cmの条件にて1時間かけて100回振動させた。
Claims (5)
- 一次粒子の平均粒子径が0.1〜2μmで比重が1以上の非導電性微粒子、および粒子状結着剤を含み、球体積相当径が20μm以上である粗大粒子および/または凝集物の濃度が450ppm以下である水分散液を、保管容器に移送、保管する工程(1)、および、
前記保管容器内の前記水分散液を保管容器ごと撹拌する工程(2)、
に次いで、当該水分散液を基材上に塗布、乾燥して、当該基材上に多孔膜を形成する工程(3)を含む、リチウム二次電池用多孔膜の製造方法であって、
前記工程(2)において、前記保管容器内の前記水分散液の量が、前記保管容器に一定の空間体積が形成されるレベルとすることと、
前記工程(2)において、前記保管容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転駆動させて撹拌混合することと、
を特徴とするリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。 - 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際に前記保管容器に形成される空間体積が当該容器の20〜40%である請求項1記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
- 前記工程(2)において、前記保管容器ごと攪拌する際の回転駆動が偏心回転である請求項1または2記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
- 前記水分散液の粘度が60〜120mPasであり、凝集抑制剤を0.1〜1.0質量%含む請求項1〜3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
- 前記水分散液は、10質量%以下の粘度調整剤をさらに含み、前記粘度調整剤はセルロース半合成高分子化合物、そのナトリウム塩およびそのアンモニウム塩である請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用多孔膜の製造方法。
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