以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部を説明する側面説明図、図2は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置である。装置本体1の左右の側板21A、21Bに架け渡したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持している。そして、主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を搭載している。記録ヘッド34は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有している。記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して供給するインクを一時的に貯留するヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、インクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。インクカートリッジ10は、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向する分離パッド44を備えている。この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備える。そして、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャッピングするためのキャップ82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83とを備えている。また、維持回復機構81には、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置している。この空吐出受け88には、記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送される。そして、用紙42は、先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
そして、帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動する。そして、キャップ82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系の概要について図3を参照して説明する。
まず、液体カートリッジであるインクカートリッジ10から供給チューブ36を介して送液ポンプ241でヘッドタンク35にインクが供給され、ヘッドタンク35から記録ヘッド34にインクが供給される。
そして、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、維持回復機構81の吸引キャップ82aで記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする。その後、維持回復機構81の吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを強制的に吸引排出させる(ノズル吸引による回復動作)。吸引された廃インクは廃液タンク100に排出される。
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図4及び図5を参照して説明する。図4は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図5は同じく図4のX−X線に沿うノズル配列方向の要部断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、流路板101と、この流路板101の下面に接合した振動板部材102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを有している。
これらによって、液滴(インク滴)を吐出するノズル104が通路105を介して通じる個別液室106、個別液室106に通じる流体抵抗部(液体供給路)107、液導入部108を形成している。そして、供給口109を通じて第2流路である共通液室110から個別液室106にインクが供給される。
流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、通路105、個別液室106となる凹部や穴部を形成している。なお、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。例えば、SUS基板に酸性エッチング液でエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工をすることで形成することもできる。流路板101の個別液室106の間は液室間隔壁106aとなる。
振動板部材102は、第1層102Aと第2層102Bとで形成されて、第1層102Aで薄肉部を形成し、第1層102A及び第2層102Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材102は、各個別液室106に対応してその壁面を形成する第1層102Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)102aを有する。さらに、この振動領域102aの中に、面外側(個別液室106と反対面側)に第1層102A及び第2層102Bの厚肉部で形成された島状凸部102bが設けられている。
そして、この振動板部材102の島状凸部102bに接合されて、振動領域102aを変形(変位)させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111を配置している。
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接着剤接合した2つの積層型圧電部材112を有している。圧電部材112には、ハーフカットダイシングによって溝を加工して1つの圧電部材112に対して所要数の柱状圧電素子(圧電柱)112A、112Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
なお、圧電部材112の圧電柱112A、112Bは同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる駆動圧電柱を圧電柱(駆動柱)112Aとし、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する非駆動圧電柱を圧電柱(非駆動柱)112Bとして区別している。
そして、駆動柱112Aの上端面(接合面)を振動板部材102の島状凸部102bに接合している。
ここで、圧電部材112は、圧電材料層121と内部電極122A、122Bとを交互に積層したものであり、内部電極122A、122Bをそれぞれ端面に引き出して、端面に形成された端面電極(外部電極)123、124に接続している。そして、端面電極(外部電極)123、124間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。ここで、外部電極123を個別外部電極(個別電極)とし、外部電極124を共通外部電極(共通電極)として使用する。
また、圧電部材112には駆動柱112Aに駆動信号を与えるための撓むことが可能な配線部材としてのFPC115が接続されている。FPC115には、図示しないが駆動柱112Aに駆動波形を与えるドライバIC(駆動回路)が搭載されている。
ノズル板103は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で形成している。この他、例えば、ステンレスなどの金属、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂、シリコン及びそれらの組み合わせからなるものなども用いることができる。このノズル板103には各個別液室106に対応して直径10〜35μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。そして、このノズル板103の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は個別液室106側と反対の面)には撥液層を設けている。
さらに、これらの圧電部材112、ベース部材であるベース部材113及びFPC115などで構成される圧電アクチュエータ111の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材117を接合している。そして、このフレーム部材117には前述した共通液室110を形成し、更に共通液室110に外部からインクを供給するための供給口119を形成している。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動柱112Aに与える電圧を基準電位Veから下げることによって駆動柱112Aが収縮し、振動板部材102が変位して個別液室106の体積が膨張する。これにより、個別液室106内にインクが流入する。
その後、駆動柱112Aに与える電圧を上げて駆動柱112Aを積層方向に伸長させ、振動板部材102をノズル104方向に変形させて個別液室106の体積を収縮させる。これにより、個別液室106内のインクが加圧され、ノズル104からインク滴が吐出(噴射)される。
そして、駆動柱112Aに与える電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、個別液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から個別液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
このような記録ヘッド34(液体吐出ヘッド)においては、圧電部材112の駆動柱112Aを伸張変位させることで、振動領域102aが個別液室106側に押し込まれるので、共通液室110から個別液室106の間の流体抵抗を大きくすることができる。
また、駆動柱112Aを収縮変位させることで、振動領域102aが個別液室106側と反対側に引かれるので、共通液室110から個別液室106の間の流体抵抗を小さくすることができる。
また、駆動柱112Aの変位量を変化させることで、共通液室110から個別液室106の間の流体抵抗の大きさを駆動柱112Aの変位量に応じて変化させることができる。
つまり、本実施形態では、個別液室106を第1流路とし、個別液室106の壁面を形成する振動板部材102の振動領域(振動板)102aと圧電部材112を含む圧電アクチュエータ111によって流体抵抗可変手段を兼用している。
ただし、共通液室110から個別液室106に至る流路の流体抵抗を可変する手段を別途設けることもできる。また、共通液室110とノズル104との間の流路を第1流路として、個別液室106以外で流体抵抗を変化させるようにすることもできる。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。図6は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司り、本発明に係る回復制御手段などを兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503とを備えている。
また、制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
また、制御部500は、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509とを備えている。
また、制御部500は、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510を備えている。維持回復モータ556は、維持回復機構81の吸引ポンプ812及びキャップ82等を進退移動させるキャップ昇降機構820を作動する。また、制御部500は、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511を備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。
また、印刷制御部508は、ROM502に格納されている駆動波形のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含んでいる。そして、印刷制御部508は、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド34の各圧電アクチュエータ111に対して与える。これにより、記録ヘッド34が駆動される。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515及び装置本体内の温度を検出する温度検出手段である温度センサ516からの情報を取得し、装置の制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。
センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
制御部500は、温度センサ516の検出温度に基づいて回復動作の制御を行う。回復動作は、吸引キャップ82aで記録ヘッド34のノズル面をキャッピング(封止)した状態で、吸引ポンプ812を駆動して、ノズルからインクを強制吸引して排出することで行う。このとき、記録ヘッド34の流体抵抗可変手段を駆動制御して共通液室110から個別液室106に至る流路の流体抵抗を、個別液室106が共通液室110に通じる位置に応じて変化させる。
次に、ヘッド内での温度変化による気泡の発生について図7を参照して説明する。図7は液体の温度と飽和溶存気体量の関係の一例を示す説明図である。
図7に示すように、飽和溶存気体量は液体の温度によって変化し、低温である方が高温であるときよりも相対的に飽和溶存気体量が多くなる。
したがって、液体の温度が低温から高温に変化すると、飽和溶存気体量が少なくなるので、液体中に溶存していた気体が気泡となって現れることになる。
このような温度変化によって記録ヘッド34内の液体(インク)内から自然発生する気泡は、インク容量の多い共通液室110において特に発生しやすい。
次に、本実施形態における記録ヘッド内での気泡の発生について図8及び図9を参照して説明する。図8は記録ヘッド内で気泡が発生している状態の説明に供する模式的説明図、図9は同じく共通液室に供給口からノズルまでの流路の模式的斜視説明図である。
この画像形成装置では、記録ヘッド34はノズル面を下向きにして配置している。そして、ヘッドタンク35の収容部202からフィルタ部材220を介して記録ヘッド34の供給口119を経て共通液室110にインクが供給される。
ここで、記録ヘッド34の共通液室110に対してはノズル配列方向の一端部に配置した供給口119から液体を供給する構成としている。
また、共通液室110のノズル配列方向に沿う断面形状は、供給口119が配置された一端部と反対側の他端部において、傾斜部110aが形成されることで流路の開口断面積が絞られている形状としている。ここで、開口断面積は、供給口119から供給された液体は傾斜部110a側に流れるので、この液体の流れ方向と直交する方向の断面の断面積とする。
この場合、共通液室110内で自然発生した気泡300は、浮力によって共通液室110の内部天面側に溜まり易い。このように共通液室110内に気泡が発生した場合、気泡300が個別液室106に流れ込むと、吐出不良を起こすことになる。また、気泡300は共通液室110内で抵抗となるので、個別液室106側へのインク供給が阻害されて供給不足(リフィル不足)が生じて吐出不良を起こすことになる。
そこで、例えば前述したようなノズル吸引による回復動作を行って気泡300をインクともにノズル104から排出する。この気泡排出には、少なくとも個別液室106と共通液室110の容量以上のインク量のインクを排出して置換すればよい。
しかしながら、このように気泡排出のために個別液室106と共通液室110の容量以上のインクを排出する回復動作を行ったので、無駄に大量のインクが消費されることになる。
そのため、気泡排出のための回復動作を効率的に行って無駄な液体消費を抑制することが求められるのである。
次に、共通液室内で発生した気泡の排出過程について図10を参照して説明する。図10は同説明に供する模式的斜視説明図である。
温度変化によって共通液室110内で自然発生した気泡300は、図10(a)に示すように、共通液室110の天面側に浮力で移動する。ここで、ノズル吸引による回復動作が行なわれると、気泡300が図10(b)に示すように供給口119から傾斜部110aへの液体の流れに沿って移動する。これは、共通液室110内において、鉛直方向の流速Saよりも傾斜部110aに沿った流速Sbの方が大きくなるためである。
そして、図10(c)に示すように、気泡300は傾斜部110aの天面に沿って移動して、図10(d)に示すように、供給口119から離れた端部側の個別液室106からノズル104を通じて排出される。
このように、共通液室110の天面側(鉛直方向上側)に溜まった気泡300は、供給口119から遠い共通液室110の下流側に通じる個別液室106に誘導されるという特徴がある。
そこで、本発明では、回復動作を行うとき、流体抵抗可変手段(圧電アクチュエータ111)を駆動して、第2流路である共通液室110における液体の流れ方向において、共通液室110の上流側に通じる第1流路である個別液室106の流体抵抗を、共通液室110の下流側に通じる個別液室106の流体抵抗よりも大きくする。
なお、第2流路(共通液室110)の下流側、第2流路(共通液室110)の上流側は、いずれも第2流路内(共通液室110内)における下流側、上流側を意味している。以下では、共通液室110の下流側に通じる個別液室106を「下流側個別液室106」、共通液室110の上流側に通じる個別液室106を「上流側個別液室106」とも称する。
また、共通液室110の下流側に通じる個別液室106は、1又は複数の個別液室とすることができ、共通液室110の下流側に通じる個別液室106以外の個別液室106を共通液室110の上流側の個別液室106とする。
これにより、共通液室110内の気泡は、流体抵抗が相対的に小さい下流側の個別液室106に積極的に誘導されてノズル104から排出される。一方、流体抵抗が相対的に大きい上流側の個別液室106からは液体が排出されにくくなり、液体消費量が低減する。
このように、回復動作を行うとき、流体抵抗が小さく、流れ易い共通液室下流側に通じる個別液室とノズルから相対的に多くの液体が排出され、一方で、共通液室上流側に通じる個別液室とノズルからの液体排出量は少なくなる。したがって、回復動作に伴う無駄な液体消費量を低減しつつ、効率的に気泡を排出することができる。
次に、この流体抵抗の制御について図11の等価回路を参照して説明する。
回復動作を行うときの液体供給排出系は、共通液室110の下流側に通じるn個の第1流路120Aと、共通液室110の上流側に通じるm個の第1流路120Bが並列に並び、回復手段(吸引ポンプ812)からの吸引により、インクが排出される回路図で表現できる。
ここで、共通液室下流側に通じる第1流路120Aのそれぞれの流体抵抗をR1、共通液室上流側に通じる第1流路120Bのそれぞれの流体抵抗をR2とすると、回復手段によって、すべてのノズル104に同一の吸引圧力が付与されるので、各第1流路120A、120Bには、それぞれの流体抵抗R1、R2に応じたインク量I1、I2でインクが流れることになる。なお、全体のインク量Iは、I1×n+I2×m、で表される。
このとき、共通液室下流側に通じる第1流路120Aが、共通液室上流側に通じる第1流路120Bに比べ、流体抵抗が小さい(R1<R2)ので、相対的に多くのインクが流れる(I1>I2)。
これにより、共通液室下流側から大量のインクが流れるので、気泡が除去され易くなる。また、共通液室下流側に流れるインク量が多いので、その分、通常より短い時間で吸引を止めることもでき、メンテナンス全体でのインク消費を抑えることもできる。
このようにして、気泡排出のための回復動作に伴う液体消費を全体として低減しつつ、気泡排出性を向上できる。
次に、流体抵抗制御手段である圧電アクチュエータの駆動と流体抵抗の変化について図12及び図13を参照して説明する。図12は流体抵抗を大きくする場合の説明に供する説明図、図13は流体抵抗を小さくする場合の説明に供する説明図である。
図12(a)に示すように圧電部材112の駆動柱112Aに対して中間電位Veよりも高い電圧を与えることによって、図12(a)に示す状態1から図12(c)に示す状態2のように、駆動柱112Aが伸張する。これにより、振動領域102aが個別液室106側に押し込まれるので、個別液室106の流体抵抗は、状態1よりも状態2の方が大きくなる。
図13(a)に示すように圧電部材112の駆動柱112Aに対して中間電位Veよりも低い電圧を与えることによって、図13(a)に示す状態1から図12(c)に示す状態2のように、駆動柱112Aが収縮する。これにより、振動領域102aが個別液室106側から引き出されるので、個別液室106の流体抵抗は、状態1よりも状態2の方が小さくなる。
そこで、これらの状態1と、図12(c)の状態2、図13(c)の状態2の組み合わせによって、共通液室下流側に通じる個別液室106の流体抵抗を共通液室上流側に通じる個別液室106の流体抵抗に比べて小さくする。
次に、本発明の第1実施形態における気泡排出の回復動作の開始について図14を参照して説明する。図14は同説明に供する時間経過と温度変化の一例を示す説明図である。
前述したように、温度によって飽和溶存気体量が変化することから、温度を検出することによって気体量に換算することができる。
本実施形態では、前回の回復手段を行ったとき(A時点)の検出温度を記憶しておき、現在(B時点)の検出温度を得て、記憶している検出温度と現在の検出温度の差が、予め定めた温度以上であるときに、気泡排出の回復動作を行うようにしている。
このように、前回の回復動作を行ったときの検出温度(検出結果)を記憶し、記憶した検出温度に対する温度変化に基づいて気泡排出のための回復動作を開始する。本実施形態のようにすれば、装置本体の電源を切られているなどの理由で温度の変化を継続して検出し続けられないような状況でも、確実に気泡を排出する回復動作(メンテナンス)を実施することができる。
ただし、前回と現在の間で、どのような温度変化が発生したかは把握していないので、実際の気体量とかけ離れている可能性がある。
次に、本発明の第2実施形態における気泡排出の回復動作の開始について図15を参照して説明する。図15は同説明に供する時間経過と温度変化の一例を示す説明図である。
本実施形態では、前回の回復手段を行ったとき(A時点)の検出温度を記憶し、その後も温度検出を継続し、液体中に溶けきれなくなって発生する気体量のみを累積し、累積の気体量が特定の閾値を超えたとき(B時点)に、気泡排出の回復動作を行うようにしている。
この場合も、前回の回復動作を行ったときの検出温度を記憶し、記憶した検出温度に対する温度変化に基づいて気泡排出のための回復動作を開始する。そして、本実施形態では温度変化によって発生する気体量を随時把握しているので、最適なタイミングで回復動作(メンテナンス)を開始でき、画像不具合が出にくくなる。ただし、温度上昇により発生する気体量のみを累積するので、回復動作の頻度が高くなるおそれがある。
次に、本発明の第3実施形態における気泡排出の回復動作の開始について図16を参照して説明する。図16は同説明に供する時間経過と温度変化の一例を示す説明図である。
本実施形態では、前回の回復手段を行ったとき(A時点)の検出温度を記憶し、その後も温度検出を継続し、温度上昇によって液体内に溶けきれなくなって発生する気体量と、温度低下によって液体中に溶ける気体量の差を累積する。そして、累積の気体量が所定の閾値を超えたとき(B時点)に、気泡排出のための回復動作を開始する。
この場合も、前回の回復動作を行ったときの検出温度を記憶し、記憶した検出温度に対する温度変化に基づいて気泡排出のための回復動作を開始する。そして、本実施形態では温度変化によって発生する気体量と溶け込む気体量の両方を随時把握しているので、気体量を精度よく推量することができる。上記第2実施形態よりも更に最適なタイミングで気泡排出の回復動作(メンテナンス)を実施することができる。
次に、本発明の第4実施形態における回復動作について図17を参照して説明する。図17(a)は同説明に供する下流側個別液室の断面説明図、(b)は上流側個別液室の断面説明図である。
本実施形態では、図17(a)に示すように、下流側個別液室106の圧電アクチュエータ111を非駆動とし、図17(b)に示すように、それ以外の上流側個別液室106の圧電アクチュエータ111を伸張方向に駆動した状態で回復動作を行う。
これにより、下流側個別液室106の流体抵抗は、それ以外の上流側個別液室106の流体抵抗よりも小さくなる。
したがって、回復動作を行うとき、流体抵抗が小さく流れ易い下流側個別液室106に通じるノズル104から相対的に多くのインクが排出され、その流れにのって気泡も排出される。一方で、それ以外の上流側個別液室106に通じるノズルからのインク排出量は少なくなるので、回復処理に伴う無駄なインク消費量が低減する。
次に、本発明の第5実施形態における回復動作について図18を参照して説明する。図18(a)は同説明に供する下流側個別液室の断面説明図、(b)は上流側個別液室の断面説明図である。
本実施形態では、図18(a)に示すように、下流側個別液室106の圧電アクチュエータ111を収縮方向に駆動し、図18(b)に示すように、それ以外の上流側個別液室106の圧電アクチュエータ111は非駆動にした状態で回復動作を行う。
これにより、下流側個別液室106の流体抵抗は、それ以外の上流側個別液室106の流体抵抗よりも小さくなる。
したがって、回復動作を行うとき、流体抵抗が小さく流れ易い下流側個別液室106に通じるノズル104から相対的に多くのインクが排出され、その流れにのって気泡も排出される。一方で、それ以外の上流側個別液室106に通じるノズルからのインク排出量は少なくなるので、回復処理に伴う無駄なインク消費量が低減する。
次に、本発明の第6実施形態における回復動作について図19を参照して説明する。図19(a)は同説明に供する下流側個別液室の断面説明図、(b)は上流側個別液室の断面説明図である。
本実施形態では、図19(a)に示すように、下流側個別液室106の圧電アクチュエータ111を収縮方向に駆動し、図18(b)に示すように、それ以外の上流側個別液室106の圧電アクチュエータ111を伸張方向に駆動した状態で回復動作を行う。
つまり、本実施形態では、下流側個別液室106及び上流側個別液室106のいずれの圧電アクチュエータ111も駆動するが、駆動量(駆動方向を含む)を異ならせることで流体抵抗を異ならせている。したがってまた、駆動柱112Aの伸縮方向を同じにして、伸張量を異ならせたり、収縮量を異ならせたりすることでも、下流側個別液室106と上流側個別液室106の各流体抵抗を異ならせることができる。
これにより、下流側個別液室106の流体抵抗は、それ以外の上流側個別液室106の流体抵抗よりも小さくなる。
したがって、回復動作を行うとき、流体抵抗が小さく流れ易い下流側個別液室106に通じるノズル104から相対的に多くのインクが排出され、その流れにのって気泡も排出される。一方で、それ以外の上流側個別液室106に通じるノズルからのインク排出量は少なくなるので、回復処理に伴う無駄なインク消費量が低減する。
なお、回復動作の開始に関する上記第1実施形態ないし第3実施形態と、回復動作時の流体抵抗制御手段の駆動に関する上記第4実施形態ないし第6実施形態とは相互に組合せることができる。
また、上記実施形態では、流体抵抗を2段階に変化させる制御をする例で説明しているが、これに限るものではない。
この点について図20及び図21を参照して説明する。図20及び図21は異なる共通液室形状と回復動作時の流体抵抗の関係の異なる例を説明する説明図である。
図20は、共通液室110に対して一端部側に供給口119を設けた場合のノズル配列方向の各位置における流体抵抗の異なる例を示している。
そして、図20(b)は上記実施形態で説明したように下流側と上流側の2段階に流体抵抗を異ならせる例である。また、図20(c)ないし(f)はいずれも最下流側から最上流側まで漸次流体抵抗が変化する例である。なお、流体抵抗の値は圧電アクチュエータ111に与える駆動電圧の値で制御できる。
図21は、共通液室110に対して中央部に供給口119を設けた場合のノズル配列方向の各位置における流体抵抗の異なる例を示している。この場合には、中央部の供給口119に対応する位置が上流側となり、両端部がいずれも下流側となる。
そして、図21(b)は上記実施形態で説明したように下流側と上流側の2段階に流体抵抗を異ならせる例である。図21(c)ないし(f)はいずれも最下流側から最上流側まで漸次流体抵抗が変化する例である。
また、上記実施形態では回復動作としてノズル吸引を行う例で説明しているが、ヘッドに加圧液体を供給する回復動作を行う場合、加圧と吸引を兼用する場合にも、本発明は同様に適用することができる。
以上の回復制御など、本発明に係る処理は、ROM502に格納されているプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置(ホスト600)側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができる。また、上記処理は、情報処理装置(ホスト600)側のプリンタドライバで行う構成とすることもできる。さらに、本発明に係る画像形成装置と情報処理装置又は画像形成装置と本発明に係る処理を行うプログラムを有する情報処理装置とを組み合わせて画像形成システムとして構成することもできる。
また、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。