JP6236806B2 - 真空ポンプ - Google Patents

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Description

この発明は、動翼部と静翼部とで構成された排気部を有する真空ポンプに関する。
ターボ分子ポンプ等の真空ポンプは、ポンプ容器内において、多段に配列された動翼部を有するロータを高速に回転し、動翼部と、動翼部の各段の間に配列された静翼部とにより気体分子を吸気口側から排気ポート側に移送する。
各段の動翼部はロータ翼を有し、各段の静翼部はステータ翼を有する。各静翼部は、静翼部の外周に配設されたスペーサにより所定の間隔に支持される。静翼部は、一対の半割のリング状部材を組み合わせて1つの輪状に形成される。つまり、半割のリング状部材の突合部となる2つの突合端部を相互に突き合わせて1つの輪が形成される。ロータ翼およびステータ翼は、ロータの回転面に対して傾斜して形成されている。
静翼部を作製する方法としては、機械加工により形成する方法と、塑性加工により形成する方法とがある。塑性加工により作製する方法はコスト面で有利である。
塑性加工により作製する方法では、板金をプレス加工して、所定の傾斜角度で円周方向に沿って配列された複数のステータ翼を内周リムと外周リムにより連結するように作製する。加工時のばらつきにより、半割のリング状部材の円周長が、設計寸法より長くなることがある。このため、半割のリング状部材の突合端部を突き合わせて1つの輪を形成すると、半割のリング状部材の突合端部が互いに重なりあったり、突合端部同士の反力により突合端部に反りが生じたりする。
従来、半割のリング状部材を突き合わせた状態で、内周リムの突き合わせ面にスリットを設けるようにした構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−77713号公報
上述したように、半割のリング状部材の円周長が加工時にばらつくと、静翼部において、重なりや反りが生じる。特許文献1には、このような問題点も、これに対する措置も何も記載されていない。
本発明は、動翼部と静翼部とを多段に積層した排気部を有する真空ポンプに適用されるものである。
本発明の好ましい第1の実施形態による真空ポンプの静翼部は2枚以上の分割静翼部により構成され、分割静翼部の各々は周方向の両端部に突合端部を有し、各分割静翼部のそれぞれの突合端部を互いに突き合わせて静翼部が形成され、分割静翼部の各々は、スペーサで挟持される外周リムと、静翼部の内周側先端に位置する内周リムと、外周リムと内周リムとの間に設けられた複数のステータ翼とを有し、複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成され、切欠きは、外周リムにおいて周方向に所定幅、径方向に所定長さであり、前記外周リムの外周側面の外部に開放されている矩形形状として設けられている。
本発明の好ましい第2の実施形態による静翼部は2枚以上の分割静翼部により構成され、分割静翼部の各々は周方向の両端部に突合端部を有し、各分割静翼部のそれぞれの突合端部を互いに突き合わせて静翼部が形成され、分割静翼部の各々は、スペーサで挟持される外周リムと、静翼部の内周側先端に位置する内周リムと、外周リムと内周リムとの間に設けられた複数のステータ翼とを有し、複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成され、前記切欠きは、スペーサで挟持される径方向全域にわたり形成されており、前記外周リムの外周側面の外部に開放されている
本発明の好ましい第3の実施形態による静翼部は2枚以上の分割静翼部により構成され、分割静翼部の各々は周方向の両端部に突合端部を有し、各分割静翼部のそれぞれの突合端部を互いに突き合わせて静翼部が形成され、分割静翼部の各々は、スペーサで挟持される外周リムと、静翼部の内周側先端に位置する内周リムと、外周リムと内周リムとの間に設けられた複数のステータ翼とを有し、複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成され、切欠きは、外周リムの外周側面の外部に開放されている。
好ましい実施形態においては、第1乃至第3の実施形態における分割静翼部の各々は平板から同一形状に作製され、各分割静翼部の突合端部の一方においては、内周リムの突合端面と、外周リムの突合端面とが第1の突合せ面として形成され、突合端部の他方には、内周リムの突合端面と、外周リムの端面と、内周リムと外周リムとを接続するブリッジの端面とが第2の突合せ面として形成され、第1の突合せ面と第2の突合せ面が互いに当接して静翼部を形成する。
好ましい実施形態においては、上記いずれかの実施形態における複数の分割静翼部が突合される内周リムの少なくとも一方の端面には、当該内周リムから屈曲された屈曲部が設けられている。このような構成は、突き合わせの作業性を効率的にする観点から好ましい。
この発明によれば、分割静翼部の加工時の寸法ばらつきにより突合端部間の円周長が設計寸法より長く形成された場合でも、静翼部を組み立てる際、複数の分割静翼部の外周リムの端部が重なったり、分割静翼部自体、ひいては静翼部自体に反りが生じたりするのを抑制することができる。
この発明に係る真空ポンプの一実施の形態としてのターボ分子ポンプの断面図。 図1における領域IIの拡大図。 静翼部の平面図。 図3における領域IVの拡大斜視図。 静翼部の製造方法を説明するための半円板プレートの平面図。 図5に続く工程を説明するための半円板プレートの平面図。 図6における領域VIIの拡大図。 (a)はパンチの平面図、(b)はパンチの斜視図。 (a)はダイの平面図、(b)はダイの斜視図。 パンチPUおよびダイDIを用いて、絞り加工によりステータ翼を作製する方法を説明するための図であり、(a)は図6におけるXa−Xa線で切断した絞り加工時における断面図、(b)は図6におけるXb−Xb線で切断した絞り加工時における断面図。 本発明の静翼部要部における実施形態2の断面図。 本発明の静翼部要部における実施形態3の断面図。
―実施形態1―
以下、図面を参照して本発明に係る真空ポンプを、ターボ分子ポンプを一実施の形態として説明する。
(真空ポンプ全体構成)
図1はターボ分子ポンプ1の断面図であり、図2は図1における領域IIの拡大図である。
ターボ分子ポンプ1は、ケーシング部材12と、ケーシング部材12に固定されたベース13とにより形成されたポンプ容器11を備えている。
ケーシング部材12は、ほぼ円筒形状を有し、例えば、SUSにより形成され、上端部に上部フランジ21が形成されている。ケーシング部材12の上部フランジ21の内方には円形状の吸気口15が形成されている。上部フランジ21には、円周方向に沿って、ほぼ等間隔にボルト挿通用の貫通孔22が形成されている。ターボ分子ポンプ1は、上部フランジ21の貫通孔22にボルト92を挿通して、半導体製造装置等の外部装置に取り付けられる。
ポンプ容器11内には、ロータ4およびロータ4の軸芯に同軸で取り付けられたロータシャフト5が収容されている。ロータ4とロータシャフト5とは、ボルト91により固定されている。
ロータ4は、ロータ上部4Aと、ロータ上部4Aの下面に接合されたロータ下部円筒部4Bとを備えている。ロータ上部4Aは、例えば、アルミニウム合金により形成されている。ロータ上部4Aには、放射状に形成され、円周方向に配列された複数の動翼部6がロータ4の軸方向に間隔をおいて、複数段に配列されている。動翼部6は、動翼部6の回転面に対し、所定の傾斜角度で形成されている。
図2に図示されるように、複数の動翼部6の各段の間にはステータ翼71(図3参照)を有する静翼部70が配置されている。
静翼部70は、半割のリング状部材を一対組み合わせて1つの輪状に形成されている。各静翼部70は、ケーシング部材12の内周面に沿って配置されたリング形状のスペーサ8により挟持され、多段(図示の例では7段)に積層されている。最上段のスペーサ8は、その上面がケーシング部材12の上部フランジ21の内面に当接し、最下段のスペーサ8は、その下面がベース13の上部フランジ13aの上面に当接している。このため、各静翼部70は、ケーシング部材12の上部フランジ21の内面とベース13の上部フランジ13aの上面との間で、スペーサ8を介して回転軸方向の力を与えられて支持されている。このようにして、動翼部6と静翼部70とが交互に多段に積層されて高真空用の翼排気部が構成されている。
ロータ下部円筒部4Bの外周側には、リング状のねじステータ9がボルト94によりベース13に固定されている。ねじステータ9には、ねじ溝部9aが形成されている。ロータ4のロータ下部円筒部4Bとねじステータ9とにより、低真空用のねじ溝排気部が構成されている。
なお、図1においては、ねじ溝部9aがねじステータ9に形成された構造として例示されているが、ねじ溝部9aをロータ下部円筒部4Bの外周面に形成してもよい。
ベース13は、例えば、アルミニウム合金により形成され、ベース13の中央部には、ロータシャフト5を挿通する円形の中空部が形成された中央筒部14が形成されている。中央筒部14の内側には、モータ35、ラジアル方向磁気軸受31(2箇所)、スラスト方向磁気軸受32(上下一対)、ラジアル変位センサ33a、33bとアキシャル変位センサ33c、メカニカルベアリング34、36およびロータディスク38が取り付けられている。
ロータシャフト5は、ラジアル方向磁気軸受31(2箇所)およびスラスト方向磁気軸受32(上下一対)によって非接触に支持される。ロータシャフト5の回転時の位置は、ラジアル変位センサ33a、33bおよびアキシャル変位センサ33cによって検出された径方向の位置と軸方向の位置とに基づいて制御される。磁気軸受31、32によって回転自在に磁気浮上されたロータシャフト5は、モータ35により高速回転駆動される。ロータシャフト5が回転駆動されることにより、ロータシャフト5に連結されたロータ上部4Aが回転し、すべての動翼部6が一体的に回転する。
メカニカルベアリング34、36は非常用のメカニカルベアリングであり、磁気軸受31、32が作動していない時にはメカニカルベアリング34、36によりロータシャフト5が支持される。
ベース13には、排気ポート16が設けられ、排気ポート16には、排気口16aが設けられている。
ケーシング部材12の下部フランジ23とベース13の上部フランジ13aとがシール部材42を介在してボルト93により固定され、ポンプ容器11が構成される。
以上説明したように、実施形態の真空ポンプは、多段に配置された動翼部6間にスペーサ8により支持された静翼部70がそれぞれ配置されて成る排気機能部を有する真空ポンプである。
以下、詳細に静翼部70について説明する。
(静翼部70の説明)
図3は、図1に図示された静翼部70の平面図であり、図4は、図3における領域IVの拡大斜視図である。
静翼部70は、半割のリング状部材である2つの分割静翼部70A,70Bを組み合わせて構成されている。分割静翼部70A,70Bは同一形状である。各分割静翼部70A、70Bは、中央部に開口83を有し、平面視で半環状体(以下、便宜上、半円形形状とも表記する)である。分割静翼部70A,70Bは、外周リム73aと、内周リム72aと、外周リム73aと内周リム72aとの間において周方向に所定の幅で放射状に延在する複数のステータ翼71とを備えている。
以下で説明するように、分割静翼部70Aは突合端部FA1およびFA2を有し、分割静翼部70Bは突合端部FB1およびFB2を有する。ここで、分割静翼部70A,70Bそれぞれの周方向両端部の形状は異なっている。図4を参照すると、分割静翼部70Aの一方の周方向端部FA1においては、内周リム72aと外周リム73aとの間に排気開口79が存在して互いに切り離されている。一方、分割静翼部70Aの他方の周方向端部FA2においては、内周リム72aと外周リム73aとは、排気開口79を形成するブリッジ70Sで接続されている。
分割静翼部70Aの外周リム73aの一方の端部73a1と、分割静翼部70Bの外周リム73bの一方の端部73b1には切欠きKが設けられている。各切欠きKは、突合端部FA1と突合端部FB2とを離間させるため、また、突合端部FB1と突合端部FA2とを離間させるために形成されている。
分割静翼部70Aの一方の突合端部FA1と分割静翼部70Bの他方の突合端部FB2とが突き合わされ、分割静翼部70Aの他方の突合端部FA2と分割静翼部70Bの一方の突合端部FB1とが突き合わされている。換言すれば、分割静翼部70Aの内周リム72aの一方の端部72a1と分割静翼部70Bの内周リム72bの他方の端部72b2とが突き合わされ、分割静翼部70Aの内周リム72aの他方の端部72a2と分割静翼部70Bの内周リム72bの一方の端部72b1とが突き合わされている。
(切欠Kの説明)
分割静翼部が設計値通りに製作された場合は、突合端部FA1と突合端部FB2の突合せ面と、突合端部FA2と突合端部FB1の突合せ面を結ぶ直線は、分割静翼部70Aと70Bにより形成される真円の中心Oを通る。しかしながら、分割静翼部70A、70Bを塑性加工により作製する際、分割静翼部70A、70Bが、突合端部FA1とFA2間、または突合端部FB1とFB2間の円周長が設計寸法より長く形成されることがある。この場合、突合端部において両分割静翼部70A,70Bが重なったり、両突合端部同士の反力により静翼部70自身に反りが生じたりする惧れがある。
そこで、この実施形態では、一方の分割静翼部70Aの突合端部FA1と、分割静翼部70Bの突合端部FB1に図5、図6に示す切欠きKが設けられている。突合端部FA1と突合端部FB2とが突き合わされ、突合端部FA2と突合端部FB1とが突き合わされた状態で、分割静翼部70Aの外周リム73aの一方の端部73a1と分割静翼部70Bの外周リム73bの他方の端部73b2との間に、切欠きKに対応する隙間Sが形成される。同様に、分割静翼部70Bの外周リム73bの一方の端部73b1と分割静翼部70Aの外周リム73aの他方の端部73a2との間には、切欠きKに対応する隙間Sが形成される。
この隙間Sは、両突合端部間の円周長さの最大公差寸法α、分割静翼部により組み上がった静翼部70の外周面とスペーサ8の内周面との最大公差寸法βなどに基づいて決定される。
(ステータ翼71の詳細な説明)
詳細は後述するが、この実施形態のステータ翼71は絞り加工により作製される。図4に図示されるように、分割静翼部70A、70Bに形成された各ステータ翼71は、外周リム73aと内周リム72aとの間において周方向に所定の幅で放射状に延在し、静翼部本体70Hに対して所定の翼角度で傾斜して複数の排気開口79を形成する。すなわち、ステータ翼71は、静翼部本体70Hの面上において、半径方向に直線的に延在する折り曲げ部70Rにおいて静翼部本体70Hから立ち上がって接続され、静翼部本体70Hと反対側の先端側部77側において、ステータ翼71は静翼部本体70Hから切り離されている。ステータ翼71は、先端側部77における静翼部本体70Hからの高さ、すなわち翼高さは、内周側よりも外周側において高く形成されている。
ステータ翼71は、平面視において半径方向に細長い矩形形状を呈している。この矩形形状は、折り曲げ部70Rの長辺と、先端側部77の長辺と、外周側端部71Soの短辺と、内周側端部71Siの短辺により構成される。
分割静翼部70A、70Bは、それぞれ、ステータ翼71の内周側端部71Siを内周リム72aまたは72bに接続する内周側支持部75と、ステータ翼71の外周側端部71Soを外周リム73aまたは73bに接続する外周側支持部76とを備えている。
内周側支持部75は、ステータ翼71の内周側端部71Siの全長に亘り形成されている。外周側支持部76は、ステータ翼71の外周側端部71Soの一部に対応して形成されている。すなわち、外周側支持部76は、ステータ翼71の静翼部本体70から折れ曲がる折り曲げ部70Rから先端側部77の中間まで設けられ、先端側には開口部78が設けられている。開口部78は、先端側部77と静翼部本体70Hとの間に設けられた排気開口79に連通している。
上述した如く、各ステータ翼71は、外周リム73aに接続された外周側支持部76および内周リム72aに接続された内周側支持部75により支持されているので大きな剛性を有している。また、翼高さは内周側よりも外周側が大きいが、外周側端部71Soには、先端側部77側に開口部78が形成されているので、絞り加工の際、外周側支持部76に亀裂が発生するのを抑制することができる。
(分割静翼部の製造方法)
次に、図5〜図10を参照して、分割静翼部70A、70Bの製造方法について説明する。
分割静翼部70Aと70Bとは、同一の製造方法により作製される。ここでは、分割静翼部70Aを代表として、その製造方法を説明する。
この製造方法は、半円板プレート70Pを準備する工程と、半円板プレート70Pに放射状の切込み線81および外周リム73aの一方の端部73a1に切欠きKを形成する工程と、半円板プレート70Pの放射状切込み線81の最外周部に周方向に開口82を形成する工程と、ステータ翼71を絞り加工で形成する工程とを備えている。
先ず、内周側に半円形の開口部83が設けられた金属製の半円形部材である半円板プレート70Pを準備する。半円板プレート70Pの素材はアルミニウ合金、ステンレス鋼等を使用することができる。
図5に図示されるように、半円板プレート70Pに複数の直線状の切込み線81を放射状に形成する。また、同時に、あるいは別工程で、外周リム73aの一方の端部73a1に切欠きKを形成する。切込み線81の半径方向の長さは、ステータ翼71の半径方向の長さとなる。切込み線81および切欠きKは、プレス加工あるいはエッチング加工により形成することができる。切込み線81の縁部は、絞り加工後に先端側部77となるものである。
次に、図6に示すように、各切込み線81の外周側の端部に半円板プレート70Pの外周面84に沿うほぼ矩形状の開口82を形成する。開口82は、プレス加工により形成すると効率的であるが、エッチング加工により形成してもよい。開口82は、絞り加工後に開口部78となる。なお、切欠きKの形成を、切込み線81を上記した工程では行わず、開口82の形成と同時、または、その後で行うようにすることもできる。
そして、ダイとポンチにより半円板プレート70Pからステータ翼71を絞り加工する。以下、図7〜図10を参照して絞り加工について詳細に説明する。
図7は図6における領域VIIの拡大図である。図7において、ハッチングで示す領域76aは、絞り加工により、静翼部本体70Hと外周リム73aとを接続する外周側支持部76となる領域である。開口82の長さ10は、ステータ翼71の外周側端部71So全体の長さLの半分未満とすることが望ましい。
図8(a)はパンチの平面図であり、図8(b)はパンチの斜視図であり、図9(a)はダイの平面図であり、図9(b)はダイの斜視図である。また、図10(a)、図10(b)は、パンチPUおよびダイDIを用いて、絞り加工によりステータ翼71を形成する方法を説明するための図であり、図10(a)は図6におけるXa−Xa線で切断した絞り加工時における断面図であり、図10(b)は図6におけるXb−Xb線で切断した絞り加工時における断面図である。
図8(a)、(b)、図10(a)、(b)に図示されるように、パンチPUは、ステータ翼71の外周側支持部76を形成するための、外周リム73a側からステータ翼71の下面側に向かって突設する傾斜部PU1を有する。また、ステータ翼71の内周側支持部75を形成するための、内周リム72a側からステータ翼71の下面側に向かって突設する傾斜部PU2を有する。パンチPUは、各ステータ翼71の静翼部本体70Hの折り曲げ部70Rから先端側部77に向かって突設するとともに、内周リム72aから外周リム73aに向かって上り勾配に形成されている傾斜面PU3aを有するパンチ本体部PU3を備えている。また、パンチ本体部PU3における先端側部77に対応する位置には、ロータシャフト5の軸方向とほぼ平行な突合端部PU3bが形成されている。突合端部PU3bは、ステータ翼71の先端側部77を静翼部本体70Hから分離するためのものである。
図9(a)、(b)、図10(a)、(b)に図示されるように、ダイDIは、ステータ翼71の外周側支持部76を形成するための、外周リム73a側からステータ翼71の上面側に向かって凹設する傾斜部DI1を有する。また、ステータ翼71の内周側支持部75を形成するための、内周リム72a側からステータ翼71の上面側に向かって凹設する傾斜部DI2を有する。ダイDIは、各ステータ翼71の静翼部本体70Hの折り曲げ部70Rから先端側部77に向かって凹設するとともに、内周リム72aから外周リム73aに向かって下り勾配に形成されている傾斜面DI3aを有するダイ本体部DI3を備えている。また、ダイ本体部DI3における先端側部77に対応する位置には、ロータシャフト5の軸方向とほぼ平行な突合端部DI3bが形成されている。側端部DI3bは、ステータ翼71の先端側部77を静翼部本体70Hから分離するためのものである。
ダイDI1上に半円板プレート70Pをセットし、パンチPUを矢印方向に押し出して半円板プレート70Pを絞り加工し、ステータ翼71を作製する。この絞り加工において、図7の斜線の領域76aに3次元的な塑性流動が生じて外周側支持部76が形成される。領域76aが塑性変形することにより、開口82が平面形状から翼高さ方向に3次元的に変形して開口部78が形成される。また、半円板プレート70Pに形成した切込み線81が先端側端部77となるように折り曲げ部70R(図6参照)から静翼部本体70Hが傾斜状に立ち上げられてステータ翼71が形成される。立ち上げられたステータ翼71の先端側部77と静翼部本体70Hとの間の空間は、排気開口79(図4参照)となる。また、ステータ翼71の外周側部に形成された開口部78は、排気開口79に連続して繋がって形成される。
以上説明した一実施の形態によれば下記の効果を奏する。
実施形態の真空ポンプでは、2枚の分割静翼部70A,70Bのそれぞれの突合端部FA1とFB2、および突合端部FB1とFA2を互いに突き合わせて円板状の静翼部70を形成している。分割静翼部70A,70Bの各々は、外周リム73aと、静翼部70の内周側先端に位置する内周リム72aと、外周リム73aと内周リム72aとの間に設けた排気開口79およびステータ翼71とを有する。ステータ翼71は、外周リム73aと内周リム72aとの間において周方向に所定の幅で放射状に延在し、静翼部本体70Hに対して所定の翼角度で傾斜して複数の排気開口79を形成する。複数の分割静翼部70A,70Bが互いに突き合わされる外周リム73a,73bの突合端部FA1,FB2(FB1,FA2)において、少なくとも一方の外周リム73a(73b)には、対向する他方の外周リム73b(73a)との間に隙間を形成する切欠きKが形成されている。
したがって、加工時のばらつきにより突合端部FA1とFA2間またはFB1とFB2間の円周長が設計寸法より長く形成された場合でも、静翼部70を組み立てる際、分割静翼部70Aと70Bの外周リム73aの端部が重なったり、反りが生じたりするのを抑制することができる。特に、外周部73aはスペーサによって挟持されるので、外周リム73aの端部が重なってしまうと、回転軸方向における静翼部70の位置決め精度が悪くなってしまったり、静翼部70が水平に配置されず傾いてしまったりするが、本実施形態においては外周リム73aの端部が重ならいので、静翼部70の位置決め精度を良くすることができ、静翼部70を水平に配置することができる。この効果は、上記特許文献1からは得ることができない独特の顕著な効果である。
分割静翼部70A,70Bの各々は平板から同一形状に作製される。分割静翼部70Aの一方の突合端部FA1には、内周リム72aの突合端面と、外周リム73aの突合端面とが第1の突合せ面として形成され、他方の突合端部FA2には、内周リム72aの突合端面と、外周リム73aの突合端面と、排気開口79を形成する縁部材70Sの突合端面とが第2の突合せ面として形成され、第1の突合せ面と第2の突合せ面が互いに当接して静翼部70を形成される。したがって、一種類の分割静翼部を2枚組み合わせて静翼部70を形成することができコストを抑制できる。
―実施形態2―
図11は、本発明の静翼部要部における実施形態2の断面図である。
実施形態2において、実施形態1と異なる点は、下記の通りである。
(1)分割静翼部70A、70Bにおいて、ステータ翼71と外周リム73a、73bとを接続する外周側支持部76Aは、内周側支持部75と同様に、ステータ翼71の外周側端部71Soの全長に亘り形成されている。すなわち、実施形態1に形成されていた先端側部77を外周側支持部76から分離するための開口部78を備えていない。
(2)分割静翼部70A、70Bの内周リム72a、72bに、それぞれ、内周リム72a、72bの突合端部からほぼ直角に屈曲された屈曲部72a3、72b3を設けた。
外周側支持部76Aの翼高さが余り高くない場合には、ステータ翼71の先端側部77を外周側支持部76から分離するための開口部78を設けずとも、外周側支持部76Aに亀裂が生じることがない。このため、ステータ翼71の外周側端部71SOの全長に亘り外周側支持部76Aを設けて、剛性をより高めることができる。
分割静翼部70A、70Bの内周リム72a、72bに、それぞれ、内周リム72a、72bからほぼ直角に屈曲された屈曲部72a3、72b3を設けることにより、屈曲部72a3と72b3とを突き合わせ、作業が容易となる。このため、静翼部70の組付け作業を効率的に行うことができる。
実施形態2においても、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
その他は、実施形態1と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して説明を省略する。
なお、分割静翼部70A、70Bに、それぞれ、屈曲部72a3、72b3形成した構造として例示したが、分割静翼部70A、70Bの一方にのみに屈曲部72a3、72b3を形成するようにしてもよい。
また、実施形態1の構造において、分割静翼部70A、70Bの両部材もしくは一方に屈曲部72a3、72b3を設けるようにしてもよい。
―実施形態3―
図12は、本発明の静翼部要部における実施形態3の断面図である。
実施形態3において、実施形態1と異なる点は、下記の通りである。
(1)分割静翼部70A、70Bにおいて、ステータ翼71の外周側端部71Soと外周リム73aとを接続する外周側支持部、およびステータ翼71の内周側端部71Siと内周リム72aとを接続する内周側支持部を備えていない。すなわち、各ステータ翼71の内・外周側端部71Si、71Soは、それぞれ、全長に亘り、内・外周リム72a、73a、または72b、73bとは分離されている。
(2)分割静翼部70A、70Bの中、一方の分割静翼部70Bのみが、内周リム72bに、内周リム72bからほぼ直角に屈曲された屈曲部72b3を備え、他方の分割静翼部70Aは、屈曲部を備えていない。
ステータ翼71の静翼部本体70Hからの翼高さが余り高くない場合には、内・外周支持部75、76を設ける必要が無い。
これにより、金型を安価にし、かつ、生産効率を高くすることができる。
分割静翼部70A、70Bの一方にのみ屈曲部72b3を設けても、屈曲部が形成されていない構造に比し、屈曲部72a3と72b3との突き合わせ作業が容易となり、静翼部70の組付け作業を効率的に行うことができる。
実施形態3においても、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
その他は、実施形態1と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して説明を省略する。
なお、実施形態3において、分割静翼部70A、70Bの内・外周周側部の一方のみに、内・外周支持部75、76を設け、他方には、内・外周支持部75、76を設けないようにしてもよい。
上述した通り、静翼部70は、ロータ4の軸方向と平行に多段に配設されており、上段側における静翼部70は、下段側における静翼部70に対し、ステータ翼71の翼高さが高く形成されている。
このため、実施形態1〜3に示した静翼部70を段毎に異なるものとしてもよい。例えば、上段側から下段側に向けて、順に、実施形態1の静翼部70、実施形態2の静翼部70、実施形態3の静翼部70を配列することができる。また、最上段のステータ翼71aを機械加工により作製された静翼部70としてもよい。
上記において、外周リム73a、73bに設ける切欠きKは、すべての段の静翼部70に設ける必要もなく、少なくとも1つの段の静翼部70にのみ設けるようにすればよい。
分割静翼部70A、70Bの各々の外周リム73a、73bの一方の側端部に切欠きKを設けた構造として例示したが、切欠きKは、外周リム73a、73bの両方の側端部に設けてもよい。
また、分割静翼部70A、70Bは、半割でなく、複数に分割されたものであればよい。
上記一実施の形態では、真空ポンプとして翼排気部とねじ溝排気部を備えた複合型のターボ分子ポンプで例示した。しかし、本発明は、翼排気部のみを備える真空ポンプにも適用することができる。
その他、本発明は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して適用することが可能である。すなわち、本発明は、多段に配置された動翼部間にスペーサにより挟持された静翼部がそれぞれ配置されて成る排気機能部を有し、複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成されている真空ポンプであれば、実施形態や変形例に限定されない。
1 ターボ分子ポンプ
4 ロータ
6 動翼部
11 ポンプ容器
70 静翼部
70A、70B 分割静翼部
70H 静翼部本体
70P 半円板プレート
70R 折り曲げ部
70S 排気開口を形成するブリッジ
71 ステータ翼
71Si 内周側端部
71So 外周側端部
72a、72b 内周リム
73a、73b 外周リム
75 内周側支持部
76 外周側支持部
77 先端側部
78 開口部
79 排気開口
82 開口
K 切欠き
S 隙間
DI ダイ
PU パンチ

Claims (5)

  1. 多段に配置された動翼部間にスペーサにより挟持された静翼部がそれぞれ配置されて成る排気機能部を有する真空ポンプにおいて、
    前記静翼部は2枚以上の分割静翼部により構成され、
    前記分割静翼部の各々は周方向の両端部に突合端部を有し、各分割静翼部のそれぞれの突合端部を互いに突き合わせて前記静翼部が形成され、
    前記分割静翼部の各々は、前記スペーサで挟持される外周リムと、前記静翼部の内周側先端に位置する内周リムと、前記外周リムと前記内周リムとの間に設けられた複数のステータ翼とを有し、
    前記複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成され、前記切欠きは、前記外周リムにおいて周方向に所定幅、径方向に所定長さであり、前記外周リムの外周側面の外部に開放されている矩形形状として設けられている、真空ポンプ。
  2. 多段に配置された動翼部間にスペーサにより挟持された静翼部がそれぞれ配置されて成る排気機能部を有する真空ポンプにおいて、
    前記静翼部は2枚以上の分割静翼部により構成され、
    前記分割静翼部の各々は周方向の両端部に突合端部を有し、各分割静翼部のそれぞれの突合端部を互いに突き合わせて前記静翼部が形成され、
    前記分割静翼部の各々は、前記スペーサで挟持される外周リムと、前記静翼部の内周側先端に位置する内周リムと、前記外周リムと前記内周リムとの間に設けられた複数のステータ翼とを有し、
    前記複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成され、前記切欠きは、前記スペーサで挟持される径方向全域にわたり形成されており、前記外周リムの外周側面の外部に開放されている真空ポンプ。
  3. 多段に配置された動翼部間にスペーサにより挟持された静翼部がそれぞれ配置されて成る排気機能部を有する真空ポンプにおいて、
    前記静翼部は2枚以上の分割静翼部により構成され、
    前記分割静翼部の各々は周方向の両端部に突合端部を有し、各分割静翼部のそれぞれの突合端部を互いに突き合わせて前記静翼部が形成され、
    前記分割静翼部の各々は、前記スペーサで挟持される外周リムと、前記静翼部の内周側先端に位置する内周リムと、前記外周リムと前記内周リムとの間に設けられた複数のステータ翼とを有し、
    前記複数の分割静翼部が互いに突き合わされる外周リムの突合端部において、少なくとも一方の外周リムには、対向する他方の外周リムとの間に隙間を形成する切欠きが形成され、前記切欠きは、前記外周リムの外周側面の外部に開放されている真空ポンプ。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
    前記分割静翼部の各々は平板から同一形状に作製され、
    前記各分割静翼部の突合端部の一方においては、前記内周リムの突合端面と、前記外周リムの突合端面が第1の突合せ面として形成され、前記突合端部の他方には、前記内周リムの突合端面と、前記外周リムの端面と、前記内周リムと前記外周リムとを接続するブリッジの端面とが第2の突合せ面として形成され、
    前記第1の突合せ面と第2の突合せ面が互いに当接して前記静翼部を形成する真空ポンプ。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
    前記複数の分割静翼部が突合される内周リムの少なくとも一方の端面には、当該内周リムから屈曲された屈曲部が設けられている真空ポンプ。
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