JP4527966B2 - 分子ポンプ - Google Patents

Description

本発明は半導体製造装置その他において真空排気に使用されるターボ分子ポンプや複合分子ポンプ等の分子ポンプに関する。

ターボ分子ポンプは、モータにより回転駆動されるロータ本体の外周部に放射状に動翼を突設してなる複数の動翼段と、これら動翼段間に放射状に静翼を配置してなる静翼段とを交互に多段に配置している。

又、複合分子ポンプは、前記ターボ分子ポンプ部とねじ溝真空ポンプ部とを併せ有する構造の分子ポンプである。

然してターボ分子ポンプの静翼段は、その円周上で少なくとも２片に分割可能に形成して、ターボ分子ポンプの分解や組立てを行なう上での便宜を図っている。

即ち、ターボ分子ポンプを組立てるときは、分割された静翼段の各片を相隣る動翼段の間に外方から挿入して、各分割端部を組合せ相手の分割端部と当接させて静翼段の組立てを行なっている。

しかし、前記静翼段が板金の一体成形により製造されている場合は、分割端部の厚さが板厚と同じで薄いため、相手側の当接面と食い違いを生じて、正しい組合わせができない場合があった。

そこで、分割された静翼段を正しく相手と組合わせるために、互いに嵌め合いが可能な係止手段を分割した静翼段の内側円環部（内側円板部）の分割端部に配設した例がある（例えば特許文献１参照。）。
特許第３０１３０８３号公報（第３図乃至第５図）

分割された静翼段を、その分割端部に配設した係止ツメで係止させる前記特許文献１の係止手段は、構造が複雑で製造コストが高くなるという問題点があった。

本発明はこの問題点を解消し、板金の一体成形により加工され、分子ポンプの組立てを容易に行なえる分子ポンプを提供することを目的とする。

本発明は上記の目的を達成すべくモータにより回転駆動されるロータ本体と、該ロータ本体の外周面に放射状に動翼を突設してなる複数の動翼段と、これら動翼段間に各々放射状に静翼を配置してなる複数の静翼段とを有するターボ分子ポンプにおいて、前記静翼段は前記静翼をその両端部において固定して支持する少なくとも２分割された外側円板部及び内側円板部を具備して前記静翼段を少なくとも２分割可能に板状のプレス加工による一体成形により形成し、更にこれら分割された静翼段の両側の分割端部に沿って前記円板部に略直角に板状の幅の広い当接用突出部を突設し、一方の側の当接用突出部を前記円板部の上方向へ向けて突設すると共に他方の側の当接用突出部を前記円板部の下方向へ向けて突設した。

本発明によれば、少なくとも２分割された静翼段を有するターボ分子ポンプにおいて、前記静翼段を板材のプレス加工の一体成形により安価に製造することができると共に、分割されている前記静翼段の組立てが容易な分子ポンプを提供できる効果を有する。

本発明の分子ポンプの実施例を以下に示す。

本発明の実施例１を図１乃至図５により説明する。

図１は本発明の静翼段３を具備した分子ポンプの一例の縦断面図である。

１がロータで、該ロータ１の外周面には、多数の動翼を放射状に突設してなる動翼段２が、多段に形成されている。

これらの動翼段２間には、それぞれ多数の静翼３ａを放射状に配置してなる静翼段３が多段に形成されている。

これら静翼段３は、図２に示す如く外側円板部３ｂ及び内側円板部３ｃを有して、これら円板部３ｂ、３ｃの間に、これら円板部と一体に前記静翼３ａが形成されている。

又、前記静翼段３は、その中央部において２分割されて形成されており、各分割された静翼段３は、各々板材のプレス加工により一体成形にて製作されている。

尚、４は円環状の間隔片即ちディスタンスピースで、前記静翼段３の外側円板部３ｂの外周部をこれらディスタンスピース４で挟持して、前記静翼段３をケーシング５内に係止するようにしている。

各静翼段３の両側の分割端部に沿って、横長の矩形の当接用突出部３ｄが、前記円板部３ａ、３ｂに略直角に突設されている。

前記当接用突出部３ｄは、一方の側が前記円板部３ｂ、３ｃの上方向へ向けて突出しており、他方の側では前記円板部３ｂ、３ｃの下方向へ向けて突出している。

図３に前記静翼段３の図２におけるＡ矢視図を示した。

図３からも判るように、前記当接用突出部３ｄは、静翼段３の分割端に沿って、静翼３ａよりも短めに形成されている。

尚、図４は図２におけるII−II線截断面図で、前記静翼３ａの断面形状を示しており、又、図５は図２におけるIII−III線截断面図で、前記当接用突出部３ｄの断面形状を示している。

又、これら静翼３ａ及び当接用突出部３ｄは、プレス機械による打抜き、曲げ加工等により、前記外側円板部３ｂ及び前記内側円板部３ｃと一体に一枚の板材から形成される。

次に本実施例の分子ポンプの特徴及びその利点について説明する。

本実施例の分子ポンプの静翼段３は、一枚の板材から容易に形成することができるので、製造が容易であり、低コストである利点を有する。

又、分子ポンプの組立て時には、分割された静翼段３の各分割端部を組合せ相手の分割端部と組合せるときに、幅の広い当接用突出部３ｄ同士を当接させて、円板部の少許の食い違いを許容するようにして、組立てを容易に行なうことを可能としている。

又、本実施例における静翼段３の代りに、図６及び図７に示すような静翼段３´を用いてもよい。

即ち、該静翼段３´は、前記静翼段３における横長の矩形の当接用突出部３ｄの代りに、分割された静翼段３´の分割端部に沿って各２個の短い矩形の当接用突出部３ｅ及び３ｆを円板部３ｂ、３ｃに直角に突設している。

又、これら当接用突出部３ｅ及び３ｆは、それぞれ静翼３ａと外側円板部３ｂとが接続する半径上、又は静翼３ａと内側円板３ｃとが接続する半径上に設けられており、更にこれら当接用突出部３ｅ及び３ｆは、各静翼段３´の両側の分割端部の内の一方の側のものを前記円板部３ｂ、３ｃの上方向へ向けて突出させ、他方の側のものを前記円板部３ｂ、３ｃの下方向へ向けて突出させている。

図７は静翼段３´の図６におけるＢ矢視図である。

本静翼段３´も、分子ポンプの組立て時に隣り合う分割端部同士を当接させる時に円板部の少許の食い違いが許容されるので、組立てが容易になる利点は前記静翼段３と同様である。

しかし、本静翼段３´の当接用突出部３ｅと３ｆの間に切欠き部を設けて、動翼と静翼間の流れの旋回方向成分に対する抵抗を減らしたので、前記静翼段３の場合よりも高効率のターボ分子ポンプとすることができる利点を有する。

尚、本実施例において、静翼段３の分割部に沿って設けた当接用突出部３ｅ、３ｆ、又は３ｄは、一方を円板部の上方へ向けて突出させ、他方を円板部の下方へ向けて突出させるとしたが、これらは何れも円板部の上方又は下方の同一方向へ向けて突出させてもよい。

本発明の実施例２を図８乃至図１１により説明する。

図８は本実施例の分子ポンプの２分割された静翼段１３の一方の平面図を示し、前記実施例１における静翼段３と同様に多数の静翼１３ａが外側円板部１３ｂと内側円板部１３ｃとの間に放射状に配置されている。

該静翼段１３の外側円板部１３ｂには、その外周部に沿って、該外側円板部１３ｂに略直角にコ字状の断面形状を有する折り返し部１３ｄが設けられている。

又、前記静翼段１３の左右の分割端部に沿って、コ字状の断面形状を有する当接用折り返し部１３ｅが、外側円板部１３ｂや内側円板部１３ｃの面に略直角に形成されており、これら折り返し部１３ｄと当接用折り返し部１３ｅとは、いずれも同じコ字状の断面形状を有して、前記円板部１３ｂ、１３ｃの面の同じ方向に向けて突出している。

即ち、折り返し部１３ｄと当接用折り返し部１３ｅとは、連続したコ字状の断面形状に形成されている。

尚、前記折り返し部１３ｅは前記分割端部の全長に渡って形成する必要はなく、例えば図８に示す如く、静翼１３ａの長手方向の途中迄で終るように形成した。

又、前記静翼段１３は、一枚の板材のプレス加工により前記静翼１３ａ、外側円板部１３ｂ、内側円板部１３ｃ、折り返し部１３ｄ及び当接用折り返し部１３ｅを一体成形して製作しており、製作が容易である。

図９は前記静翼段１３の図８におけるＣ矢視図であり、図１０は前記静翼段１３の図８におけるIV−IV線截断面図である。

静翼段１３は、その外周部をディスタンスピース（間隔片）１４により挟持されたケーシング（図示せず）内に係止されている。

図１１にこれら静翼段１３とディスタンスピース１４との組立て方法を示した。

即ちディスタンスピース１４は環状に形成され、その片面にはフランジ状の突出部１４ａを有すると共に、その反対側の面にはコ字状の凹部１４ｂを有している。

該フランジ状の突出部１４ａは、前記静翼段１３のコ字状断面の折り返し部１３ｄに丁度嵌入して、該折り返し部１３ｄの底部に突出部１４ａの頂部を当接させており、又、前記ディスタンスピース１４に設けたコ字状の凹部１４ｂには前記折り返し部１３ｄが嵌入される。

こうして前記ディスタンスピース１４を遂次各静翼段１３間に介入させて多段の静翼段が形成されると共に、各静翼段１３間の間隔が所要の寸法となるようにしている。

図１２は前記ディスタンスピース１４の一部斜視図を示し、該ディスタンスピース１４は円周上の２か所にスリット１４ｃを有していて、前記静翼段１３の分割端部の当接用折り返し部１３ｅが該スリット１４ｃを挿通するようにしている。

次に本実施例の分子ポンプの利点等について説明する。

静翼段１３の分割端部にある当接用折り返し部１３ｅは、前記実施例１における当接用突出部３ｄと同様に、相接する分割端部同士が接合するときの当接部として作用し、円板部の少許の食い違いが許容されるので、静翼段の組立てを容易に行なうことができる。

本発明は、半導体製造装置その他の真空排気に使用するターボ分子ポンプや複合分子ポンプ等に適用される。

本発明の静翼段を具備した分子ポンプの一例の縦断面図である。（実施例１） 本発明の静翼段の斜視図である。（実施例１） 図２に示す静翼段のＡ矢視図である。（実施例１） 図２に示す静翼段のII−II線截断面図である。（実施例１） 図２に示す静翼段のIII−III線截断面図である。（実施例１） 本発明の静翼段の他の例の斜視図である。（実施例１） 図６に示す静翼段のＢ矢視図である。（実施例１） 本発明の静翼段の平面図である。（実施例２） 図８に示す静翼段のＣ矢視図である。（実施例２） 図８に示す静翼段のIV−IV線截断面図である。（実施例２） 本発明の静翼段のディスタンスピースとの組立て方法の説明図である。（実施例２） 本発明のディスタンスピースの一部斜視図である。（実施例２）

符号の説明

１ ロータ
２ 動翼段
３、３´、１３ 静翼段
３ａ、１３ａ 静翼
３ｂ、１３ｂ 外側円板部
３ｃ、１３ｃ 内側円板部
３ｄ、３ｅ、３ｆ 突出部
１３ｄ、１３ｅ 折り返し部
１４ ディスタンスピース（間隔片）
１４ａ フランジ状の突出部

Claims (5)

1. モータにより回転駆動されるロータ本体と、該ロータ本体の外周面に放射状に動翼を突設してなる複数の動翼段と、これら動翼段間に各々放射状に静翼を配置してなる複数の静翼段とを有するターボ分子ポンプにおいて、前記静翼段は前記静翼をその両端部において固定して支持する少なくとも２分割された外側円板部及び内側円板部を具備して前記静翼段を少なくとも２分割可能に板状のプレス加工による一体成形により形成し、更にこれら分割された静翼段の両側の分割端部に沿って前記円板部に略直角に板状の幅の広い当接用突出部を突設し、一方の側の当接用突出部を前記円板部の上方向へ向けて突設すると共に他方の側の当接用突出部を前記円板部の下方向へ向けて突設したことを特徴とする分子ポンプ。
2. 前記当接用突出部は、各々１個又は複数個の矩形の板状に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の分子ポンプ。
3. 前記静翼段の前記外側円板部の外周部に沿って、該外側円板部に略直角に折り返し部を設けたことを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の分子ポンプ。
4. 前記折り返し部はコ字状の断面形状に形成されていることを特徴とする請求項３に記載の分子ポンプ。
5. 前記静翼段の外周部に設けたコ字状の断面形状の折り返し部に丁度嵌入するフランジ状の突出部を突出させた円環状の間隔片を形成し、相隣る静翼段間に該間隔片を介在させて多数の静翼段に形成したことを特徴とする請求項４に記載の分子ポンプ。

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