以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態に係るポリアミド樹脂組成物の製造方法は、ポリアミド樹脂1kg当たり、(B)リン酸化合物0.5〜1000mmol及び(C)金属化合物0.5〜1000mmolを含有するポリアミド樹脂組成物の製造方法である。さらに、本実施形態に係るポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、(A)ポリアミド樹脂成分と(B)リン酸化合物とを混練し、少なくとも一回の脱揮工程を行った後に、(C)金属化合物を添加する。上記のように構成されているため、本実施形態に係るポリアミド樹脂組成物の製造方法によれば、効率よく高分子量化させることができるだけでなく、実用上十分な引張強度を確保しつつ優れた引張伸びを付与できると共に、離型性の向上と熱滞留時のゲル化を抑制できる。
((A)成分:ポリアミド樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、原料として(A)ポリアミド樹脂(以下、単に「(A)成分」又は「(A)」と記載する場合がある。)を用いる。「ポリアミド樹脂」とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であるポリアミド樹脂を意味する。
なお、本明細書において、ポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いる、原料段階の(A)ポリアミド樹脂と、ポリアミド樹脂組成物中に含有されている状態のポリアミド樹脂は、分子量によって明確に区別できる。分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による分子量測定や溶液粘度等により評価することができる。
なお、原料段階の(A)ポリアミド樹脂と、ポリアミド樹脂組成物中に含有されている状態のポリアミド樹脂は、分子量以外の特性、例えば融点、高温結晶化温度のピーク温度等は同様である。原料段階の(A)ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂組成物中に含有されている状態のポリアミド樹脂が、分子量が異なることは前記GPCや溶液粘度により分析することができ、その他の特性において同様であることも特性に応じた検証方法を選択することにより確認できる。
(A)ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジアミン及びジカルボン酸の縮合重合で得られるポリアミド樹脂、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、及びこれらのポリアミド樹脂を構成する2種類以上の単位(単量体)の共重合で得られる共重合物が挙げられる。(A)ポリアミド樹脂としては、上記ポリアミドの1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下、(A)ポリアミド樹脂の原料について説明する。
前記ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミン;例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミン;等が挙げられる。前記分岐状飽和脂肪族ジアミンとしては、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが挙げられる。
前記脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
前記芳香族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸等の、炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
前記脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の脂環族カルボン酸が挙げられる。脂環族カルボン酸の脂環構造の炭素数は、特に限定されないが、得られるポリアミド樹脂の吸水性と結晶化度のバランスの観点から、好ましくは炭素数:3〜10であり、より好ましくは5〜10である。前記脂環族ジカルボン酸の中でも、機械特性の観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
前記脂環族ジカルボン酸は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよい。置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無置換又は置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、スルホン酸基、及びナトリウム塩などのその塩である基等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体例としては、以下に限定されるものではないが、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
前記ジカルボン酸は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸をさらに含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。これらの中でも、靭性の観点から、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
前記アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、上記したラクタムが開環した化合物(ω−アミノカルボン酸、α,ω−アミノカルボン酸等)等が挙げられる。
前記アミノカルボン酸としては、結晶化度を高める観点から、ω位がアミノ基で置換された、炭素数4〜14の直鎖又は分岐状の飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましい。具体的には、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。前記アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。これらの中でも、低吸水性の観点から、12−アミノドデカン酸が好ましい。
原料としての(A)ポリアミド樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミド92(ポリノナメチレンオキサミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me−5T(ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド、Meはメチル基である。以下同様とする。)、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me−8T(ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me−5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me−8C(ポリ2−メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等のポリアミド樹脂が挙げられる。
原料としての(A)ポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me−5T(ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me−8T(ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me−5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me−8C(ポリ2−メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)が挙げられる。これらは、靱性、強度及び成形性の観点から好ましい。同様の観点から、(A)ポリアミド樹脂は、ポリアミド66を含むことがより好ましい。
なお、原料としての(A)ポリアミド樹脂は、上述した各種ポリアミドを構成する単位(単量体)を2種以上共重合させて得られるポリアミド共重合体であってもよい。
前記ポリアミド共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド66/6I、PA66/6I/6、PA66/6T、PA6T/2Me−5T(Meはメチル基)、PA9T/2Me−8T、PA6C/2Me−5C、PA9C/2Me−8C等のポリアミド共重合体が挙げられる。
上述した各種原料としての(A)ポリアミド樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド66/6、ポリアミド66/6I、ポリアミド6C/2Me−5C、ポリアミド2Me−5Cがより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド66/6、ポリアミド66/6Iがさらに好ましく、強度・靱性と結晶性のバランスから、ポリアミド66がさらにより好ましい。
(A)ポリアミド樹脂を、所定のモノマーを重合して製造する際には、分子量調節のために末端封止剤をさらに添加することができる。この末端封止剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
前記末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。これらの中でも、(A)ポリアミド樹脂の熱安定性の観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミ等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できる酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水酢酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できるモノイソシアネートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できるモノ酸ハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、ジフェニルメタンカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、ジフェニルスルホキシドカルボン酸、ジフェニルスルフィドカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、ベンゾフェノンカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸等のモノカルボン酸の、ハロゲン置換モノカルボン酸が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できるモノエステル類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールトリベヘネート、ソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
末端封止剤として使用できるモノアルコール類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール(以上、直鎖状、分岐状)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、フェノール、クレゾール(o−、m−、p−体)、ビフェノール(o−、m−、p−体)、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)ポリアミド樹脂の融点は、特に限定されるものではないが、好ましくは200℃以上340℃以下であり、より好ましくは210℃以上335℃以下であり、さらに好ましくは240℃以上330℃以下である。(A)ポリアミド樹脂の融点を、200℃以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性が向上する傾向にある。また、(A)ポリアミド樹脂の融点を、340℃以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融加工中の熱分解や劣化をより効果的に抑制できる傾向にある。
(A)ポリアミド樹脂の融点は、JIS−K7121に準じて測定することができる。測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製、Diamond DSC等を用いることができる。
原料としての(A)ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定(DSC)で測定した降温結晶化温度のピーク温度は、特に限定されるものではないが、220℃以上であることが好ましい。(A)ポリアミド樹脂の降温結晶化温度のピーク温度を、220℃以上とすることにより、成形性が一層向上する傾向にある。なお、示差走査熱量測定(DSC)は、JIS−K7121に準じて、昇温速度20℃/分の条件で行うことができる。
(A)ポリアミド樹脂や、ポリアミド樹脂組成物中に含有されているポリアミド樹脂の分子量は、種々の方法により測定することができる。例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定や溶液粘度などが挙げられる。具体的に、溶液粘度としては、ISO307(JIS−K6933)に準拠して測定される粘度数[VN]やASTM−D789に準拠して測定されるギ酸相対粘度[RV]がある。ISO307(JIS−K6933)による測定としては、一例として、25℃において96%濃度の硫酸中、ポリアミド樹脂濃度0.5質量%溶液で測定することができる。
また、上記の異なる規格への換算については、例えば、ISO307(JIS−K6933に記載されている換算表などを適宜用いればよい。
本明細書では、前記粘度数[VN]を、原料としての(A)ポリアミド樹脂の分子量やポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂の分子量の指標としており、VNの数値が高いほど高分子量であるものと評価される(また、同じ[VN]に対して、PA66の場合については[RV]もカッコ内に併記した)。
原料としての(A)ポリアミド樹脂の粘度数[VN]は、特に限定されるものではないが、VN:70mL/g以上350mL/g以下(RV(PA66):21以上477以下)が好ましい。VN70mL/g以上にすることにより、より安定した押出が可能となる傾向にある。また、VN350mL/g以下にすることにより、押出機における吐出量を適切な範囲に制御しやすくなる傾向にある。上記と同様の観点から、(A)ポリアミド樹脂の粘度数[VN]は、より好ましくはVN80mL/g以上250mL/g以下(RV(PA66):24以上157以下)であり、さらにより好ましくはVN100mL/g以上200mL/g以下(RV(PA66):30以上90以下)である。
また、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、押出機内で原料としての(A)ポリアミド樹脂を高分子量化させていき、最終的にポリアミド樹脂組成物中において高分子量化されたポリアミド樹脂を得ることができればよい。そのため、原料である(A)ポリアミドの粘度数[VN]はさほど高くする必要はなく、押出機モーターへの負荷を低減し、吐出量を大きくして効率よく生産したい場合は、VN70mL/g以上200mL/g以下(RV(PA66):21以上90以下)が好ましい。より好ましくはVN90mL/g以上180mL/g以下(RV(PA66):27以上72以下)であり、さらに好ましくはVN100mL/g以上170mL/g以下(RV(PA66):30以上65以下)であり、さらにより好ましくは120mL/g以上165mL/g以下(RV(PA66):37以上61以下)であり、さらにより一層好ましくは、130mL/g以上160mL/g以下(RV(PA66):42以上58以下)である。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、押出機にて高分子量化された、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(すなわち、(C)金属化合物を添加した後のポリアミド樹脂組成物中におけるポリアミド樹脂)の粘度数[VN]は、VN160mL/g(RV(PA66):58)以上が好ましく、VN165mL/g以上VN350mL/g以下(RV(PA66):61以上477以下)がより好ましい。VN160mL/g以上にすることで、引張伸びを一層向上することができる傾向にあり、靭性を大きく発揮させることができる傾向にある。また、VN350mL/g以下にすることで、押出機への過大な負荷を抑えることができる傾向にあり、吐出量を低減させることなく生産がしやすくなる傾向にある。上記と同様の観点から、さらに好ましくは、VN175mL/g以上310mL/g以下(RV(PA66):69以上306以下)であり、さらにより好ましくはVN180mL/g以上290mL/g以下(RV(PA66):72以上245以下)であり、よりさらに好ましくは、VN190mL/g以上270mL/g以下(RV(PA66):81以上197以下)であり、さらにより一層好ましくは、200mL/g以上250mL/g以下(RV(PA66):90以上157以下)である。
((A)ポリアミド樹脂の製造方法)
原料としての(A)ポリアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下の種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸及びジアミンの水溶液又は水の懸濁液、又はジカルボン酸及びジアミン塩とラクタム及び/又はアミノカルボン酸などの他の成分との混合物(以下、これらを、「その混合物」と略称する場合がある。)の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」ともいう。);
2)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーと取り出す方法(「プレポリマー法」);
3)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(「熱溶融重合・固相重合法」);
4)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して、その重合度を上昇させる方法(「プレポリマー・押出重合法」);
5)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持して、その重合度を上昇させる方法(「プレポリマー・固相重合法」);
6)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(「モノマー・固相重合法」);
7)「ジカルボン酸及びジアミンの塩」又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(「塩・固相重合法」);
8)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド及びジアミンを用いて重合させる方法(「溶液法」)。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、押出機内で(A)ポリアミド樹脂を高分子量化させる工程により十分に高分子量化することができる。そのため、前記原料としての(A)ポリアミド樹脂の製造方法においては、原料段階での(A)ポリアミド樹脂を敢えて高分子量化する必要はない。このような観点からは、工程が少なく安定した分子量のポリアミドが製造しやすい熱溶融重合法やプレポリマー法が好ましい。
原料としての(A)ポリアミド樹脂の製造方法における重合形態は、以下に限定されるものではなく、例えば、バッチ式、連続式が挙げられる。重合装置としては、特に限定されず、公知の装置(例えば、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等)を用いることもできる。
((B)成分:リン酸化合物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、(B)リン酸化合物(以下、単に「(B)成分」又は「(B)」と記載する場合がある。)を用いる。(B)リン酸化合物としては、(A)ポリアミド樹脂の高分子化能力を持つものであればよく、例えば、リンのオキソ酸でH3PO4で示されるオルトリン酸、H4P2O7で示されるピロリン酸(二リン酸)、(HPO3)nで示されるメタリン酸(ポリリン酸)や、それらのリン酸誘導体で高分子量化能力を持つものが挙げられる。すなわち、前記(B)リン酸化合物が、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸からなる群より選ばれる、少なくとも1種であることが好ましい。これらを選択する場合、より効率よく高分子量化が可能となる傾向にある。
前記リン酸誘導体とは、H3PO4などの1つ以上のHが有機置換基(特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基、及びオレイル基などの脂肪族基、フェニル基及びビフェニル基などの芳香族基が挙げられる。)によって置換されたリン酸エステルや、塩基との塩であるリン酸アミン塩(リン酸アンモニウム塩、リン酸ジアミン塩等含む)が挙げられる。上記(B)リン酸化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)リン酸化合物としては、Hが置換されていない方が、ポリアミド樹脂の高分子量化能力が高い傾向があるために、無置換のオルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸が好ましい。
上記(B)リン酸化合物は、高分子量化能力を示せば、固体の状態でも液体(水溶液含む)の状態でもよい。
また、(B)リン酸化合物は、ポリアミド樹脂組成物の製造工程において、そのまま添加してもよく、マスターバッチ等希釈した状態で添加してもよい。マスターバッチは、特に限定しないが、ペレットでも顆粒でもパウダー状でもよく、ポリアミド樹脂を用いて希釈したものが好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法において製造されるポリアミド樹脂組成物中の(B)リン酸化合物の含有量としては、ポリアミド樹脂1kg当り0.5〜1000mmolである。最終的に得られるポリアミド樹脂組成物において、(B)リン酸化合物が上記の範囲で含有されていると、ポリアミド樹脂の高分子量化が十分に達成でき、実用上十分な引張強度を保持しつつ、引張伸びを向上させることができる。なお、ポリアミド樹脂組成物中の(B)リン酸化合物の含有量が、ポリアミド樹脂1kg当り、0.5mmol以上である場合、ポリアミド樹脂の高分子量化が十分に得られ、引張伸びの向上効果が得られる。一方で、ポリアミド樹脂組成物中の(B)リン酸化合物の含有量が、ポリアミド樹脂1kg当り1000mmol以下であると、ポリアミド樹脂組成物の製造工程において、ポリアミド樹脂の過度な高分子量化を抑制でき、押出機の負荷を軽減でき、ゲル化や物性の低下を防止できる。上記と同様の観点から、ポリアミド組成物中の(B)リン酸化合物の含有量は、ポリアミド樹脂1kg当り1〜500mmolであることが好ましく、より好ましくは2〜300mmolであり、さらに好ましくは3〜100mmolであり、さらにより好ましくは4〜50mmolであり、よりさらに好ましくは5〜20mmolである。
((C)成分:金属化合物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、(C)金属化合物(以下、単に「(C)成分」又は「(C)」と記載する場合がある。)を用いる。(C)金属化合物としては、前記(B)成分を失活する機能を有するものであればよく、リチウム化合物、ナトリウム化合物、マグネシウム化合物、カリウム化合物、カルシウム化合物、鉄化合物、銅化合物、及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらを選択する場合、より効率よく(B)成分の失活を行える傾向にある。
(C)金属化合物としては、金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属水酸化物、及び金属炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらを選択する場合、より効率よく(B)成分の失活を行える傾向にある。上記した群の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リチウムハロゲン化物(ヨウ化リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム)、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、ナトリウムハロゲン化物(ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム)、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、マグネシウムハロゲン化物(ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム)、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、カリウムハロゲン化物(ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム)、酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、カルシウムハロゲン化物(ヨウ化カルシウム、臭化カルシウム、塩化カルシウム、フッ化カルシウム)、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、鉄ハロゲン化物(ヨウ化鉄、臭化鉄、塩化鉄、フッ化鉄)、酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、銅ハロゲン化物(ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、フッ化銅)、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、亜鉛ハロゲン化物(ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛)、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。上記(C)金属化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)金属化合物としては、押出機や成形機等の加工機への腐食を低減させる観点から、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、ヨウ化カルシウム、臭化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ヨウ化鉄、臭化鉄、酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、ヨウ化銅、臭化銅、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛等が好ましい。より好ましくは、ヨウ化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、ヨウ化ナトリウム、酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ヨウ化カリウム、酸化カリウム、炭酸カリウム、ヨウ化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ヨウ化鉄、酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、ヨウ化銅、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、ヨウ化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。
前記(B)リン酸化合物を効率よく失活させる観点から、(C)金属化合物としては、さらに好ましくは、ヨウ化リチウム、酸化リチウム、ヨウ化ナトリウム、酸化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ヨウ化カリウム、酸化カリウム、ヨウ化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、ヨウ化鉄、酸化鉄、水酸化鉄、ヨウ化銅、酸化銅、水酸化銅、ヨウ化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられ、さらにより好ましくは、ヨウ化リチウム、酸化リチウム、ヨウ化ナトリウム、酸化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ヨウ化カリウム、酸化カリウム、ヨウ化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムが挙げられ、よりさらに好ましくは、ヨウ化カリウム、酸化カリウム、ヨウ化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムが挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法により製造されるポリアミド樹脂組成物中の(C)金属化合物の含有量としては、前記ポリアミド樹脂1kg当り0.5〜1000mmolである。ポリアミド樹脂組成物中の(C)金属化合物の含有量を上記の範囲とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法において、熱滞留時のゲル化を抑制することができる。なお、ポリアミド樹脂組成物中の(C)金属化合物の含有量が0.5mmol以上である場合、熱滞留時のゲル化を十分に抑制できる。一方で、上記含有量が1000mmol以下であることにより、添加量が適切で、強度の低下などを防止できる。上記と同様の観点から、好ましくは、1〜500mmolであり、より好ましくは2〜300mmolであり、さらに好ましくは、3〜100mmolであり、さらにより好ましくは、4〜50mmolであり、よりさらに好ましくは5〜20mmolである。また、(B)成分を失活させるという観点においては、(C)成分の添加量は、(B)成分の当量以上の添加量とすることが好ましい。
また、(C)金属化合物は、そのまま添加しても、マスターバッチ等、希釈した状態で添加してもよい。マスターバッチは、特に限定しないが、ペレットでも顆粒でもパウダー状でもよく、(A)ポリアミド樹脂を用いて希釈したものが好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、(C)成分は、少なくとも一回の脱揮工程を行った後に添加する。但し、厳密には、(A)成分中に金属化合物が混在している場合があり得るため、(B)成分の当量に対して、少量である場合は、ポリアミド樹脂の高分子量化への影響が阻害されないため、少なくとも一回の脱揮工程を行う前に混在されていてもよい。少なくとも一回の脱揮工程を行う前に混在しうる(C)成分の量としては、本実施形態の所望の効果を阻害しなければよいが、好ましくは(C)成分の当量として、(B)成分の20%当量以下であることが好ましく、より好ましくは10%当量以下であり、さらに好ましくは5%当量以下であり、さらにより好ましくは1%当量以下である。
((D)成分:強化材)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法において、任意の成分として、(D)強化材(以下、単に「(D)成分」又は「(D)」と記載する場合がある。)を用いることができる。すなわち、本実施形態において、ポリアミド樹脂組成物が、(D)強化材をさらに含有することが好ましい。(D)強化材とは、材料の強度及び/又は剛性を向上させるものであれば、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。これらの中でも、強度及び剛性を増大させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが好ましい。また、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素が挙げられる。上記した(D)強化材は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつポリアミド樹脂組成物中において、重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがより好ましい。
また、上記のウォラストナイトのうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつポリアミド樹脂組成物中において、重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比が3〜100であるものがより好ましい。
また、上記のタルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものがより好ましい。
ここで、前記数平均繊維径及び重量平均繊維長に関しては、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の(D)強化材を任意に選択し、SEMで観察して、これらの(D)強化材の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定することができ、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求めることができる。
前記(D)強化材は、シランカップリング剤等により表面処理を施してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、アミノシラン類が好ましい。
また、前記ガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤を含んでいてもよい。集束剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。
ここで、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。特にスチレンやブタジエンが好ましい。これらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上がより好ましい。
また、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物の流動性向上の観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜1,000,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、GPCにより測定した値である。
前記エポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイドなどの脂肪族エポキシ化合物;グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコールなどの脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイドなどのテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイドなどの芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
前記ポリカルボジイミド化合物は、一以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物を縮合することにより得られる。
ポリカルボジイミド化合物の縮合度は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。縮合度が1〜20の範囲内にある場合、より良好な水溶液又は水分散液が得られる傾向にある。さらに、縮合度が1〜10の範囲内にある場合、より一層良好な水溶液又は水分散液が得られる傾向にある。
また、前記ポリカルボジイミド化合物は、部分的にポリオールセグメントを持つポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。ポリオールセグメントを持つことにより、ポリカルボジイミド化合物が水溶化し易くなる傾向にあり、ガラス繊維や炭素繊維の集束剤として一層好適に使用可能となる傾向にある。
これらポリカルボジイミド化合物は、ジイソシアネート化合物を3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド等の公知のカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸反応させることによって得られる。ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート、並びにそれらの混合物を用いることが可能である。以下に限定されるものではないが、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。そして、これらのジイソシアネート系化合物をカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物が得られる。これらのうち、反応性向上の観点からジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが好適に使用可能である。
前記末端に2つのイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物に対し、さらにモノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、又はポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法等によって、末端にイソシアネート基を1つ有するポリカルボジイミド化合物が得られる。前記モノイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートやシクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルやポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
前記ポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
前記アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
前記アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する、前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。なお、前記その他の共重合性モノマーは、上記モノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーのいずれも含む。)は、塩の形態であってもよい。アクリル酸のポリマーの塩としては、以下に限定されるものではないが、第一級、第二級又は第三級のアミン塩が挙げられる。以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、ポリアミド樹脂組成物とした際の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
ガラス繊維や炭素繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させることにより得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、またはストランドを乾燥した後に切断してもよい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、前記(A)ポリアミド樹脂、前記(B)リン酸化合物及び前記(D)強化材を混練した後に最初の脱揮工程を行い、その後、(C)金属化合物を添加する態様が好ましいといえる。製造されるポリアミド樹脂組成物における、(D)強化材は任意成分であるため、その含有量としては特に限定はされないが、ポリアミド樹脂100質量部に対して、(D)強化材10〜250質量部であることが好ましい。(D)強化材の含有量が10質量部以上である場合、より優れた強度の向上効果が得られる傾向にある。また、250質量部以下とすることにより、押出工程でより良好な製造性が得られる傾向にある。上記と同様の観点から、好ましくは20〜150質量部であり、より好ましくは25〜100質量部であり、さらに好ましくは30〜60質量部である。
(ポリアミド樹脂組成物に含まれうる他の成分)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、必要に応じ、本実施形態の目的を損なわない範囲で、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分以外のその他の成分を用いることができる。当該その他の成分としては、他のポリマーや(A)ポリアミド樹脂に用いられる通常の添加剤、例えば、成形性改良剤、着色剤、難燃剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤等が挙げられる。
前記他のポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、(変性)ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
前記成形性改良剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記高級脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8〜40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、ステアリン酸、モンタン酸が好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩である。金属塩を構成する金属元素としては、元素周期律表の第1、第2、第3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等がより好ましい。前記高級脂肪酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩が好ましい。
前記高級脂肪酸エステルとは、高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と、炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。ここで、高級脂肪酸としては、上述したものを使用できる。脂肪族アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
前記高級脂肪酸アミドとは、高級脂肪酸のアミド化合物である。高級脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。これらの中でも、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミドがより好ましい。
これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、成形性改良剤として、高級脂肪酸金属塩を選択する場合、当該高級脂肪酸金属塩の添加量は、上述した(C)成分としての金属化合物の量には含めないものとする。
前記着色剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレーク等のメタリック顔料等が挙げられる。着色剤として酸化鉄等を選択する場合、当該酸化鉄等の添加量は、上述した(C)成分としての金属化合物の量には含めないものとする。
前記難燃剤としては、溶融加工時のガス発生抑制や成形加工時の金型へのモールドデポジット抑制の観点から、非ハロゲン系難燃剤、臭素系難燃剤が好ましい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、赤リン、リン酸アンモニウム、あるいはポリリン酸アンモニウム等のリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛等の金属水酸化物あるいは無機金属化合物の水和物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ酸化合物等の無機化合物系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン(300℃以上でメレム3分子から3分子の脱アンモニアによる生成物)、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、メラミン樹脂等のトリアジン系難燃剤、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリカ等のシリコーン系難燃剤等が挙げられる。難燃剤として水酸化アルミニウム等を選択する場合、当該水酸化アルミニウム等の添加量は、上述した(C)成分としての金属化合物の量には含めないものとする。
前記臭素系難燃剤は、以下に限定されるものではないが、例えば、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体及び臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の難燃剤が挙げられる。三酸化アンチモンなどの難燃助剤も併用できる。
前記可塑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素化合物、ポリエチレンワックス、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
前記安定剤としては、熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、耐候性の向上等を目的として、劣化抑制剤を含んでもよい。
前記劣化抑制剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸銅やヨウ化銅等の銅化合物や、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤;ホスファイト系安定剤:ヒンダードアミン系安定剤;トリアジン系安定剤;イオウ系安定剤等が挙げられる。
安定剤として酸化銅やヨウ化銅等の銅酸化物を選択する場合、当該銅酸化物の添加量は、上述した(C)成分としての金属化合物の量には含めないものとする。
前記酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルフェノール、アルキレンビスフェノール、アルキルフェノールチオエーテル等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
前記結晶核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、窒化ホウ素やタルクなどが挙げられる。
(ポリアミド樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を製造する方法としては、(A)ポリアミド樹脂と(B)リン酸化合物を混練し、少なくとも一回の脱揮工程を行ったのちに、(C)金属化合物を添加する態様であれば特に限定されない。例えば、少なくとも一の脱揮領域を具備する押し出し機を用い、(A)成分を溶融させた後に(B)成分を添加して、少なくとも一回の脱揮領域を経由したのちに、(C)金属化合物を添加する方法や、(A)成分と(B)成分を同時に添加して、少なくとも一の脱揮領域を経由したのちに、(C)金属化合物を添加する方法などが挙げられる。このようにすることで、効率よく高分子量化させることができるだけでなく、実用上十分な引張強度を確保しつつ優れた引張伸びを付与できると共に、熱滞留時のゲル化を抑制できる。
任意成分であるが、(D)強化材を添加する際には、強度が一層優れるもの(強化品)になる観点より、(A)成分、(B)成分及び(D)成分を混練した後に最初の脱揮工程を行い、その後、(C)金属化合物を添加する製造方法が好ましい。例えば、(A)成分を溶融させた後に(B)成分、(D)成分を同時に添加して最初の脱揮工程を行ったのちに、(C)金属化合物を添加する方法や、(A)成分と(B)成分を同時に添加して溶融させた後に、(D)成分を添加して最初の脱揮領域を経由したのちに、(C)金属化合物を添加する方法などが挙げられる。(A)成分、(B)成分及び(D)成分を全て混練するまでは脱揮工程を行わず、混練後に最初の脱揮工程を行うことが好ましい。このようにすることで、強化品において、引張強度をより向上することができる傾向にある。ここで、高分子量化反応(脱水縮合反応)が進行しない程度であれば、(A)成分、(B)成分及び(D)成分を混練する際に脱揮を行ってもよい。
脱揮領域とは、減圧領域であり、例えば、押出機(溶融混練装置)内で減圧装置に接続されて減圧装置と同程度の減圧度となる領域である。前記脱揮領域は、押出機の壁面、押出機が具備する撹拌装置や充満している樹脂等の材料などにより密閉状態となっている。従って、押出機の途中で脱揮領域を設ける場合は、脱揮領域の前後を充満樹脂により密閉(シール)することが好ましい。例えば、順回転と逆回転のスクリュー(ニーディング)パーツを押出機内に組み込み、ポリアミド樹脂等の流れを少し阻害することによって、密閉することができる。
脱揮(減圧)処理は、ポリアミド樹脂の高分子量化反応(脱水縮合反応)の際に生成する水をポリアミド樹脂の系中から効率的に除去する観点から好ましい。このようにして水を除去することで、ポリアミド樹脂の重合・解重合の平衡反応を一層重合方向へ傾けることができ、(B)成分の高分子量化作用との相乗効果により、高分子量化がさらに一層促進される傾向にある。
上記減圧度とは、大気圧を基準とし、脱揮領域の圧力と大気圧との差を意味する。例えば、減圧度0.02MPaとは、大気圧が0.1013MPaのとき、0.1013−0.02=0.0813MPaの絶対圧を示す。
溶融混練時の減圧度としては、0.02MPa以上とすることが好ましい。0.02MPa以上にすることで、水の除去速度(除去能力)を高められる傾向にある。そのため、十分な高分子量化を実現できる傾向にある。また、減圧装置(真空ポンプなど)の最大限(減圧度0.1013MPa)まで減圧することができる傾向にある。長期間安定した減圧度を維持することを優先する際には、減圧度0.1MPa以下が好ましい。好ましくは、0.02MPa以上0.1MPa以下であり、さらに好ましくは、0.04MPa以上0.097MPa以下であり、よりさらに好ましくは、0.05MPa以上0.095MPa以下であり、もっとも好ましくは、0.06MPa以上0.093MPa以下である。
上記減圧度は、減圧装置(真空ポンプなど)から押出機の脱揮領域に接続される部位までの任意の位置に減圧度計(差圧計)や真空計などを取り付けることにより、測定し、管理することができる。
減圧度を測定し、管理する際には、例えば、減圧装置(真空ポンプなど)から押出機の脱揮領域に接続される部位までの任意の位置に弁又は弁付空気吸引ノズルを設置するのが好ましい。この場合、この弁の開閉操作を行うことにより減圧度の調整を容易に行うことができる傾向にある。
本実施形態において、一以上の脱揮領域を具備する押出機を用い、前記(A)ポリアミド樹脂と前記(B)リン酸化合物とを混練して混練物を得、前記混練物が、前記押出機の少なくとも一の脱揮領域を経由した後に、前記(C)金属化合物を添加する態様とすることが好ましい。この場合、簡便に効率よくポリアミドを高分子量化することが可能となる傾向にある。
減圧装置(真空ポンプなど)から溶融混練部の間に、ベントガス中のドレンを貯めるドレンポットを設置することができる。ベントポットを設置している場合、空気吸引ノズルをベントポットに取り付けることも可能である。
脱揮領域は、(C)成分を添加する前に少なくとも一度は経る必要があるが(少なくとも一の脱揮領域)、(C)成分を添加した後に脱揮領域を設けても設けなくても構わない。押出の溶融樹脂のストランドのガス成分を除去して、ストランドの引取り性を向上させる観点より(C)成分添加後にも、脱揮領域を設ける方が好ましい。すなわち、本実施形態において、(C)金属化合物を添加した後に、再度の脱揮工程を少なくとも1回行うことが好ましいといえる。
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどの溶融混練機などが好ましく用いられる。この中でも脱揮機構(ベント)装置及びサイドフィーダー設備を装備した多軸押出機が好ましく、より好ましくは二軸押出機が用いられる。
押出機で溶融混練する工程において、押出での樹脂温度、減圧度、平均滞留時間などの混練条件を適宜設定することでポリアミド樹脂組成物の分子量を調節し、高分子量化できる。
溶融混練時のポリアミド樹脂組成物の樹脂温度としては、原料としての(A)ポリアミド樹脂の融点以上380℃以下とすることが好ましい。例えば、融点260℃のポリアミド66の場合は、260℃以上380℃以下とすることが好ましい。上記のように融点以上にすることで、(A)ポリアミド樹脂の溶融が十分になり押出機モーターへの負荷を低減できる傾向にある。また、380℃以下にすることで(A)ポリアミド樹脂自体の分解を抑制できる傾向にある。上記した観点から、より好ましくは((A)ポリアミド樹脂の融点+5)℃以上370℃以下であり、さらに好ましくは、((A)ポリアミド樹脂の融点+10)℃以上360℃以下であり、よりさらに好ましくは、((A)ポリアミド樹脂の融点+15)℃以上355℃以下であり、よりさらに好ましくは((A)ポリアミド樹脂の融点+20)℃以上350℃以下である。例えば、融点260℃のポリアミド66を(A)ポリアミド樹脂として用いた場合は、260℃以上380℃以下とすることが好ましい。260℃以上にすることで、ポリアミド66の溶融が十分になり押出機モーターへの負荷を低減できる傾向にある。また、380℃以下にすることでポリアミド66自体の分解を抑制できる傾向にある。上記した観点から、より好ましくは265℃以上370℃以下であり、さらに好ましくは270℃以上360℃以下であり、さらにより好ましくは275℃以上355℃以下であり、よりさらに好ましくは280℃以上350℃以下である。ポリアミド66以外のポリアミド樹脂を(A)ポリアミド樹脂として使用する場合でも、その融点に応じて適宜調整することができる。
上記ポリアミド樹脂組成物の樹脂温度は、例えば、押出機の吐出口(紡口)に出てきた溶融状態のポリアミド樹脂組成物に熱電対などの温度計を直接接触させて測定することができる。ポリアミド樹脂組成物の樹脂温度の調整は、押出機のシリンダーのヒーター温度による調整や、押出機の回転数、吐出量を変更することによる樹脂の剪断発熱量を適宜調整することで可能である。
溶融混練時の平均滞留時間は、10秒以上120秒以下が好ましい。10秒以上であれば、本実施形態の所望のポリアミド樹脂がより効率的に得られる傾向にある。また、120秒以下にすることで、押出の吐出速度(生産速度)がある程度上がる傾向にある。その結果、生産性も良好になる傾向にある。上記の観点から、より好ましくは20秒以上100秒以下であり、さらに好ましくは25秒以上90秒以下であり、さらにより好ましくは、30秒以上80秒以下であり、よりさらに好ましくは、35秒以上70秒以下である。
平均滞留時間とは、溶融混練装置内での滞留時間が一定の場合はその滞留時間を意味し、滞留時間が不均一な場合は最も短い滞留時間と最も長い滞留時間の平均値を意味する。溶融混練中の着色剤マスターバッチなど(A)ポリアミド樹脂とは色の異なる樹脂など、(A)ポリアミド樹脂とは区別できる樹脂など(以下、Xと略記する)を溶融混練装置に添加し、Xの最も濃い状態での排出開始時間と排出終了時間を計測し、排出開始時間と排出終了時間を平均することにより、平均滞留時間を測定することができる。なお、上記平均滞留時間は、押出機の吐出量(吐出速度)や回転数によって適宜調整できる。
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法により得られる。このようにして得られた本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、高分子量化されているだけでなく、十分な引張強度を確保しつつ優れた引張伸びを発揮すると共に熱滞留時のゲル化が抑制される。そのため、公知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いて良好に成形加工することができる傾向にある。
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む。そのため、本実施形態の成形体は、高分子量化かつゲル化による物性低下の可能性が低いため、色調、表面外観、耐熱変色、耐候性、耐熱エージング性、耐光性、耐薬品性などに優れる。そのため、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、各種ギア、押出用途などの各種部品への応用が期待される。
以下、本実施の形態を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法は、以下のとおりである。
[原材料]
(A)ポリアミド
PA66 下記製造例にて製造したVN141mL/g、水分率0.08質量%のPA66
(B)リン酸化合物
リン酸 和光純薬工業(株)製 商品名 リン酸(85%水溶液)
(C)金属化合物
KI 東京化成工業(株)製 商品名 ヨウ化カリウム
LiCl 和光純薬工業(株)製 商品名 塩化リチウム
MgO 和光純薬工業(株)製 商品名 酸化マグネシウム
(D)強化材
GF(ガラス繊維) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
(1)粘度数:VN(mL/g)
後述する実施例及び比較例(以下、単に「各例」とも表記)で製造したポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、ISO307に準じて、粘度数VNを測定した。さらに、同様のペレットを用い、ギ酸相対粘度(RV)は、重合体をギ酸に加えた溶液の粘度とギ酸自身の粘度とを比較することによって得た。具体的な測定方法については、ASTM−D789に準拠して実施するものとした。より詳細には、90%ギ酸(10%水)にポリアミドを8.4%になるように溶解させた溶液を用いて、25℃で測定したRV値を採用した。
(2)水分測定(質量%)
各例で得られたペレットを用い、ISO 15512に準拠した方法でカールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック社製 電量滴定方式微量水分測定装置CA−200型)を用いて水分率(質量%)を測定した。
(3)ISO試験片の製造
各例で得られたペレットを用い、射出成形機を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片(4mm厚)を製造した。射出成形装置として日精樹脂工業(株)社製PS40Eを用い、上記小型引張試験片2個取りの金型を取り付けた。なお、シリンダー温度は融点+約25℃でPA66では290℃、金型温度80℃に設定した。さらに、射出25秒、冷却15秒、可塑化量90mm(クッション量約10mm)の射出成形条件で、ポリアミド樹脂組成物ペレットからダンベル状の成形体を得た。
(4)ISO引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
ISO527に準じて、上記(3)で製造した成形体の引張強度及び引張伸度を測定した。ここで、チャック間距離115mm、引張速度50mm/分(非強化)の条件で、ダンベルの引張強度と引張伸度を測定した。なお、引張伸度については、チャック間の距離に対しての破断時の伸度(変位)の割合で算出した。
(5)JIS試験片製造
各例で得られたペレットを用い、射出成形機を用いて、JIS−K7139に準拠し、小型引張試験片(タイプCP13)(3mm厚)を製造した。射出成形装置として日精樹脂工業(株)社製PS40Eを用い、上記小型引張試験片2個取りの金型を取り付けた。なお、シリンダー温度は融点+約15℃でPA66では280℃、金型温度80℃に設定した。さらに、射出10秒、冷却7秒、可塑化量30mm(クッション量約10mm)の射出成形条件で、ポリアミド樹脂組成物ペレットからダンベル状の成形体を得た。
(6)JIS引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
上記(5)で得られた成形体の引張強度及び引張伸度を測定した。ここで、チャック間距離30mm、引張速度5mm/分(強化)の条件で、ダンベルの引張強度と引張伸度を測定した。なお、引張伸度については、チャック間の距離に対しての破断時の伸度(変位)の割合で算出した。
(7)離型性
上記(5)での成形の際の離型性を示した。評価の基準は以下のとおりとした。またこれを離型性の指標とした(連続30ショット成形時)。
(離型性の評価基準)
○:問題なく離型する(全自動での成形が可能なレベル)。
×:離型しないときがある(半自動では成形可能なレベル)。
(8)成形機滞留ゲル化
上記(5)と同様に非強化及び強化での成形体の製造を行った。なお、シリンダー温度を融点+約35℃とし、PA66を用いた場合は、300℃に設定を変更し、可塑化量90mmの射出成形条件とし、可塑化後に30分間熱滞留させた後に、2ショット成形し、2ショット目の試験片を3〜5mm片程度に切り、評価用の試験片を得た。この評価用の試験片を25℃において96%濃度の硫酸中、ポリアミド樹脂濃度0.5質量%溶液になるように溶解させた。硫酸に溶けない部分や膨潤した部位があり、完全に溶解しない場合はゲル化しているものと判断した。
(ゲル化の評価基準)
○:硫酸に溶解した。
×:硫酸に溶解しない、または膨潤した部位が存在する(ゲル化)。
(9)120℃クリープ試験
ペレットにCuI(和光純薬工業(株)製 商品名ヨウ化銅)をペレット100質量部に対して、0.04質量%をブレンドしてから上記(5)と同様に成形して、CuI添加されたJIS試験片を作成した。この試験片を120℃環境下で荷重75MPaになるようにおもりをセットし、120℃での1000時間のクリープ試験を実施した。
クリープ性評価基準
○:1000時間破断しなかった。
△:24時間〜1000時間で破断した。
×:24時間までに破断した。
−:測定せず
[ポリアミド樹脂(PA66)の製造]
40Lのオートクレーブ内で、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との当量塩の50%水溶液を用いて、公知の方法でポリアミド樹脂を溶融重合した。また、溶融ポリアミド樹脂をオートクレーブ下部ノズルからストランド状に取り出し、水で冷却固化して、ストランドカッターでペレット化した。このポリアミド樹脂ペレットの粘度数(VN)は141(mL/g)であり、水分率は0.08質量%であった。
[実施例1]
図1に概略構成を示したとおりの押出機を使用した。この押出機の上流側から1番目のバレル上面(トップの位置)に1ヶ所トップ供給口(以下top−Fと略記)を有し、6番目のバレル側面に下流第一供給口(以下side1と略記)と、9番目のバレル側面に下流第二供給口(以下side2と略記)の2カ所の下流供給口、さらに5番目のバレル上面に第一減圧口(以下vent1と略記)、8番目のバレル上面に第二減圧口(以下vent2と略記)、11番目のバレル上面に第三減圧口(以下vent3と略記)の3か所の減圧口を備えた二軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いた。side1とvent1はプラグで栓をし、使用しなかった。vent2に対応する7番目と8番目のバレルで最初の脱揮領域、vent3に対応する10番目、11番目、12番目のバレルで二回目の脱揮領域とするように、逆回転ニーディングディスクなどを組み込んだスクリューで各脱揮領域の前後を樹脂シールできるようにした。
PA66:100質量部に対して、リン酸85%水溶液0.115質量部、即ちリン酸:0.098質量部(10mmol/kg)をあらかじめPA66ペレットに添着したブレンド物を用意し、top−FからPA66とリン酸のブレンド物を供給し、side2からKIをPA66:100質量部に対して、0.287質量部(17.3mmol/kg)になるように供給して、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度300℃、押出レートは20kg/hr、vent2、vent3の減圧度を0.085MPaで溶融混練を行った。この際、先端ノズル付近の樹脂温度は315℃、平均滞留時間は55秒であった。以上の条件下、先端ノズルからストランド状にポリアミド樹脂組成物を排出し、水冷・カッティングを行って、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し、水分を調整した。
上記のとおり、実施例1は、top−Fから供給されたPA66とリン酸をまず混練し、vent2での最初の脱揮領域を経たのちに、side2からKIが添加される態様に対応する例として評価を行うこととした。得られた組成物の粘度数、水分率、ISO引張強度、ISO引張伸度、離型性、成形機滞留ゲル化を評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
KIの添加位置をside2からtop−Fに変更した以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
KIを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。評価結果を表1に示す。
[実施例2〜3]
vent2、vent3の減圧度を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
リン酸とKIの添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。評価結果を表1に示す。
[実施例4〜5]
リン酸とKIの添加量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。評価結果を表1に示す。
[実施例6〜7]
(C)金属化合物の種類と量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。評価結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1と同様の押出機を使用した。この押出機の上流側から1番目のバレル上面(トップの位置)に1ヶ所トップ供給口(以下top−Fと略記)を有し、6番目のバレル側面に下流第一供給口(以下side1と略記)と、9番目のバレル側面に下流第二供給口(以下side2と略記)の2カ所の下流供給口、さらに5番目のバレル上面に第一減圧口(以下vent1と略記)、8番目のバレル上面に第二減圧口(以下vent2と略記)、11番目のバレル上面に第三減圧口(以下vent3と略記)の3か所の減圧口を備えた二軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いた。vent1はプラグで栓をし、使用しなかった。vent2に対応する7番目と8番目のバレルで最初の脱揮領域、vent3に対応する10番目、11番目、12番目のバレルで二回目の脱揮領域とするように、逆回転ニーディングディスクなどを組み込んだスクリューで各脱揮領域の前後を樹脂シールできるようにした。
PA66:100質量部に対して、リン酸85%水溶液0.115質量部、即ちリン酸:0.098質量部(10mmol/kg)をあらかじめPA66ペレットに添着したブレンド物を用意し、top−FからPA66とリン酸のブレンド物を供給し、side1からGFをPA66:100質量部に対して、33質量部になるように供給し、さらにside2からKIをPA66:100質量部に対して、0.287質量部(17.3mmol/kg)になるように供給して、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度300℃、押出レートは20kg/hr、vent2、vent3の減圧度を0.085MPaで溶融混練を行った。この際、先端ノズル付近の樹脂温度は336℃、平均滞留時間は55秒であった。以上の条件下、先端ノズルからストランド状にポリアミド樹脂組成物を排出し、水冷・カッティングを行って、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。
上記のとおり、実施例9は、top−Fから供給されたPA66とリン酸をまず混練し、その後GFを混練したのちに、vent2での最初の脱揮領域を経たのちに、side2からKIが添加される態様に対応する例として評価を行うこととした。得られたポリアミド樹脂組成物の粘度数、水分率、JIS引張強度、JIS引張伸度、成形機滞留ゲル化、120℃でのクリープ性を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例9]
vent2はプラグで栓をし、使用しなかった。vent1に対応する4番目と5番目のバレルで最初の脱揮領域、vent3に対応する10番目、11番目、12番目のバレルで二回目の脱揮領域とするように、逆回転ニーディングディスクなどを組み込んだスクリューで各脱揮領域の前後を樹脂シールできるようにして、vent1、vent3の減圧度を0.085MPaにした以外は、実施例9と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。すなわち、実施例10は、top−Fから供給されたPA66とリン酸をまず混練し、vent1での最初の脱揮領域を経たのちに、GFを混練し、side2からKIが添加される態様に対応する例として評価を行うこととした。得られたポリアミド樹脂組成物の粘度数、水分率、JIS引張強度、JIS引張伸度、成形機滞留ゲル化、120℃でのクリープ性を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例10]
side1からは何も添加せず、side2からKIとGFの両方を添加するように変更した以外は、実施例9と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。すなわち、実施例11は、top−Fから供給されたPA66とリン酸をまず混練し、vent2での最初の脱揮領域を経たのちに、side2からGFとKIが同時に添加される態様に対応する例として評価を行うこととした。得られたポリアミド樹脂組成物の粘度数、水分率、JIS引張強度、JIS引張伸度、成形機滞留ゲル化、120℃でのクリープ性を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例4]
side2からのKIの添加をしなかったこと以外は、実施例9と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。得られたポリアミド樹脂組成物の粘度数、水分、JIS引張強度、JIS引張伸度、成形機滞留ゲル化、120℃でのクリープ性を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例5]
top−FからKIを添加し、side2からは何も添加しなかったこと以外は、実施例9と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その後、乾燥し水分を調整した。得られたポリアミド樹脂組成物の粘度数、水分、JIS引張強度、JIS引張伸度、成形機滞留ゲル化を評価した。評価結果を表2に示す。