以下、本発明の一実施形態であるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下、「HMD」という。)1について、図面を参照して説明する。以下の説明において、図1の上方、下方、左斜め下方、右斜め上方、右斜め下方および左斜め上方が、それぞれ、HMD1の上方、下方、前方、後方、右方および左方である。
図1を参照して、HMD1の概要について説明する。図1に示すように、HMD1は、ヘッドディスプレイ(以下、「HD」という。)10、装着具8、アーム部9、第一接続機構5および第二接続機構6を主に備える。
HD10の構成について説明する。HD10は、画像光を投影する機能を有する。HD10の投影形式は、虚像投影型である。具体的には、HD10は、画像光を後方に向けて照射する。画像光は、受光対象物(例えば、HMD1を装着したユーザの眼)に入射する。HD10は、筐体2を備える。筐体2は、左側に樹脂製のハーフミラー3を備える。ハーフミラー3は、HMD1がユーザの頭部に装着されたとき、ユーザの眼(例えば左眼)の前方に配置される。HD10は、筐体2の内部に、画像表示部(図示略)と接眼光学系(図示略)を備える。HD10は、HD10を制御する制御装置(図示略)と、ハーネス7を介して着脱可能に接続される。なお、HD10は、無線通信を介して制御装置に接続されてもよい。制御装置は、HD10とは異なる位置(例えば、ユーザの腰ベルトや腕等)に装着される。ただし、制御装置は、HD10または装着具8と一体に構成されてもよい。画像表示部は、制御装置から送信される映像信号に基づいて画像を表示する。画像表示部は、例えば、液晶素子等の空間変調素子および光源である。画像表示部は、液晶ディスプレイ、および有機EL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイ等であってもよい。さらに、画像表示部は、画像信号に応じた強度のレーザ光を2次元走査してユーザの網膜上に画像表示を行う網膜走査型表示部であってもよい。
接眼光学系は、画像表示部に表示された画像を示す画像光を集光し、筐体2の左端からハーフミラー3に向けて照射する。接眼光学系から照射された画像光は、筐体2の左側に設けられたハーフミラー3によって少なくとも一部(例えば半分)後方に向けて反射される。HMD1がユーザの頭部に装着されたとき、ハーフミラー3によって反射された画像光が、ユーザの一方(例えば左)の眼球(図示略)に入射する。眼球に入射した画像光は、水晶体によって網膜上に結像することで、虚像(画像)としてユーザに視認される。ハーフミラー3は外界の実像からの光の少なくとも一部を透過するので、ユーザの視野において実像(外界の風景)に重畳させた画像をユーザに見せることができる。なお、ハーフミラー3は、ガラス製であってもよい。また、ハーフミラー3の代わりに、プリズムや回折格子のような、屈折、内部全反射または回折などの作用によって光路を偏向する光路偏向部材を用いてもよい。また、ハーフミラー3の代わりに、全反射のミラーを用いてもよい。
装着具8は、HD10をユーザの頭部に保持するための構成である。装着具8は、例えば、撓み性を有する樹脂や、ステンレスなどの金属素材によって形成される。装着具8は、第一部分8Aおよび一対の第二部分8L,8Rを有する。第一部分8Aおよび一対の第二部分8L,8Rは、それぞれ、湾曲した細長い板状の部材である。装着具8は、ユーザの前頭部に第一部分8Aを、ユーザの右側頭部および左側頭部のそれぞれに一対の第二部分8L,8Rを接触させた状態で、ユーザの頭部に装着される。装着具8がユーザの頭部に装着された状態で、ユーザの前頭部に沿う部分が第一部分8Aであり、ユーザの右側頭部および左側頭部に沿う部分が一対の第二部分8L,8Rである。以下の説明では、第一部分8Aが延びる左右方向を「第一方向」ともいい、第一方向と直交する前後方向を「第二方向」ともいう。
アーム部9は、装着具8とHD10とを接続するための構成である。アーム部9は、やや湾曲した棒状の部材である。アーム部9の上部である一端側は、装着具8と接続する。アーム部9の下部である他端側は、HD10と接続する。アーム部9は、装着具8から離間した位置にHD10を保持する。アーム部9は、装着具8がユーザに装着された状態で、筐体2のハーフミラー3をユーザの左眼の前方に配置できる。第一接続機構5は、装着具8とアーム部9とを接続するための構成である。第二接続機構6は、アーム部9とHD10とを接続するための構成である。
図2から図5を参照して、装着具8の構成について詳細に説明する。図2に示すように、装着具8の第一部分8Aは、第一方向に延び、且つ、第二方向の一方側である前側に向けて凸状に湾曲した形状を有する。また、一対の第二部分8L,8Rのうち、第二部分8Lは、第一部分8Aの中央位置8Cから左に延びた左端部8Eから、第二方向の他方側である後側に向けて延びる。第二部分8Rは第一部分8Aの中央位置8Cから右に延びた右端部8Fから、後側に向けて延びる。第二部分8Lと第二部分8Rとは、それぞれの後端部8X,8Yが互いに近づくように後方に延びる。第一部分8Aと一対の第二部分8L,8Rとの境目は、装着具8の湾曲が不連続に変化する点である。また、第一部分8Aは、装着具8のうち装着時において実質的に前頭部に接触する部分である。一対の第二部分8L、8Rは、装着具8のうち装着時において実質的に側頭部に接触する部分である。装着具8は、ユーザの前頭部、右側頭部、および左側頭部のそれぞれに、中央位置8C、後端部8X、後端部8Yを接触させた状態で、ユーザの頭部に装着される。この場合、後端部8Xと後端部8Yとの間の距離が、ユーザの頭部の大きさによって、装着される前の元の形状における距離よりも広げられる。元の形状よりも離間した後端部8X,8Yが元の形状に戻ろうとする復元力は、後端部8Xと、後端部8Yとを互いに近づく方向に付勢する。これにより、後端部8X,8Yは、ユーザの右側頭部および左側頭部を押圧して、装着具8をユーザの頭部に対して保持できる。
このような形状を有する装着具8を装着する場合、二通りの装着方法がある。第一の装着方法は、第一部分8Aをユーザの前頭部のうち額の中ほど(例えば、両眼と前髪の生え際との間の位置)に接触させるとともに、一対の第二部分8L,8Rそれぞれの後端部8X,8Yを右側頭部および左側頭部(例えば、両耳の後側)に接触させる方法である。言い換えると、第一の装着方法は、第一部分8Aと一対の第二部分8L,8Rとが、略前後方向に並ぶようにして、装着具8がユーザの頭部に装着される方法である(図1参照)。第二の装着方法は、第一部分8Aをユーザの前頭部のうち頭頂部に近い位置まで引き上げて接触させるとともに、一対の第二部分8L,8Rそれぞれの後端部8X,8Yを右側頭部および左側頭部に接触させる方法である。言い換えると、第二の装着方法は、第一部分8Aと一対の第二部分8L,8Rとが、斜め上から斜め下に並ぶようにして、装着具8がユーザの頭部に装着される方法である(図5参照)。
装着具8は、アーム部9と接続してHD10を保持する。このため、ユーザが装着具8を頭部に装着した状態で、装着具8にHD10およびアーム部9等の重量がかかる。HMD1は、ユーザにハンズフリーで画像を視認させる性質上、ユーザが画像を視認しながら他の作業を行う環境で使用することが想定されている。この場合、例えば、ユーザがHMD1を装着した頭部を前かがみに下げた姿勢で作業を行うことや、作業中にユーザの頭部が任意の方向に揺動することで、装着具8に係る重量によって、装着具8が装着当初の装着位置からずれやすくなることがある。装着具8の装着位置がずれてしまうと、装着当初にはユーザの左眼の前方にあるように調節されたハーフミラー3の配置が変わってしまい、HMD1は、ユーザの左眼に対して画像光を安定に投影できなくなる可能性がある。ユーザの頭の骨格の形状や大きさには個人差があるので、装着具8を保持しやすい装着方法がユーザのそれぞれにおいて異なることがある。このため、ユーザは、より安定に装着具8を頭部に保持しやすい装着方法を第一の装着方法および第二の装着方法のうちから選択して、HMD1を着用する。
図4に示すように、装着具8は、一対の第二部分8L,8Rそれぞれの長さを変更可能な一対の伸縮機構8P,8Qを備える。伸縮機構8Pは、第一部分8Aの左端部8Eから延びる軸部81が、第二部分8Lの外枠82の内側に挿入された入れ子式である。軸部81には長手方向に対して直交する段差が複数設けられている。外枠82の内面には、軸部81の段差の凹部に係合可能な凸部が形成されている。軸部81を外枠82から出し入れすることで、外枠82の内面の凸部が弾性変形して隣接する軸部81の段差の凹部へ移動し、段差のピッチごとに第二部分8Lの長さを調節できる。伸縮機構8Qも、伸縮機構8Pと同様に構成されており、第一部分8Aの右端部8Fから延びる軸部83が、第二部分8Rの外枠84の内側に挿入された入れ子式である。軸部83には長手方向に対して直交する段差が複数設けられている。外枠84の内面には、軸部83の段差の凹部に係合可能な凸部が形成されている。軸部83を外枠84から出し入れすることで、外枠84の内面の凸部が弾性変形して隣接する軸部81の段差の凹部へ移動し、第二部分8Rの長さを伸縮できる。即ち、本実施形態において、一対の伸縮機構8P,8Qよりも前側の部分が第一部分8Aである。また、一対の伸縮機構8P,8Qから後側の部分が一対の第二部分8L,8Rである。一対の伸縮機構8P,8Qよりも前側および後側の部分とは、例えば、伸縮機構8Pの前側の端である左端部8E、および伸縮機構8Qの前側の端部である右端部8Fよりも前側および後側の部分を意味する。
第一の装着方法と、第二の装着方法とでは、好適な装着具8の長さが異なる場合がある。具体的には、第一の装着方法において装着具8がユーザの頭部に配置される両側頭部から額の中ほどまでの距離よりも、第二の装着方法において装着具8がユーザの頭部に配置される両側頭部から前頭部のうち頭頂部に近い位置までの距離の方が長くなることがある。即ち、第一の装着方法と第二の装着方法とにおいて、中央位置8Cから後端部8X,8Yまでのそれぞれに必要な長さが異なる場合がある。装着具8は、一対の伸縮機構8P,8Qを備えることで、一対の第二部分8L,8Rの長さを調節して、それぞれの装着方法に適した長さに装着具8全体の長さを調節できる。また、HMD1が異なるユーザによって使用される場合であっても、個々のユーザの頭部の骨格の形状や大きさに合わせて、装着具8全体の長さを調節できる。
なお、一対の第二部分8L,8Rは、必ずしもそれぞれの後端部8X,8Yが互いに近づくように後方に延びていなくてもよい。例えば、一対の第二部分8L,8Rのそれぞれにおける後端部8X,8Yが互いに近づかず後方に向けて延びる形状を有していても、ユーザが装着具8を装着した状態で、後端部8X,8Yのそれぞれが互いに近づく方向に付勢可能に構成されていればよい。また、装着具8を装着した状態で、後端部8X,8Yのそれぞれが互いに近づく方向に付勢する力は、装着具8がユーザに装着されることで撓んだ第一部分8Aが元の形状に戻ろうとする復元力によってもたらされてもよい。
図6から図8を参照して、アーム部9の構成について詳細に説明する。図6に示すように、アーム部9は、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとを備える。第一アーム部分9Aは、アーム部9の上側部分を構成する部材である。第二アーム部分9Bは、アーム部9の下側部分を構成する部材である。第一アーム部分9Aは、やや湾曲した細長い箱体である。第一アーム部分9Aは、その内部に下側から第二アーム部分9Bを収容できる。第二アーム部分9Bは、アーム部9の長手方向に延びる軸状部材である。アーム部9は、装着具8とHD10との間の距離を変更可能な距離変更機構9K(図7および図8参照)を有する。
図7および図8を参照して、距離変更機構9Kについて説明する。距離変更機構9Kは、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとの組合せによって構成される。距離変更機構9Kは、第二アーム部分9Bが第一アーム部分9Aに対して挿入されることで、アーム部9の長さを伸縮可能に構成された入れ子式である。
図7に示すように第一アーム部分9Aは、凹凸が交互に設けられた凹凸部91を内部に備える。第二アーム部分9Bは、撓み性を有する樹脂にて形成される。第二アーム部分9Bの上側の端部には、突起92が設けられている。第二アーム部分9Bの上側の端部は、第一アーム部分9Aへ挿入される。凹凸部91は、第一アーム部分9Aの内部に挿入された第二アーム部分9Bの突起92に対向する部分に設けられる。
第二アーム部分9Bが第一アーム部分9Aの内部へ挿入されるとき、および第二アーム部分9Bが第一アーム部分9Aの内部から引き出されるとき、第二アーム部分9Bは撓みながら、突起92を凹凸部91に沿わせつつ、第一アーム部分9Aの内部を移動できる。第二アーム部分9Bは、第一アーム部分9Aの内側における最も奥の位置である凹凸部91の一端側まで突起92を移動させた第一位置(図7参照)と、凹凸部91の他端側まで突起92を移動させた第二位置(図8参照)との間を移動できる。第一アーム部分9Aに対して第二アーム部分9Bが第一位置に移動したとき、アーム部9の長さが最も短くなる。第一アーム部分9Aに対して第二アーム部分9Bが第二位置に移動したとき、アーム部9の長さが最も長くなる。第一アーム部分9Aに対して、第二アーム部分9Bが第一位置と第二位置との間を移動することによって、アーム部9全体の長さが伸縮自在に調節される。
ここで、装着具8のうちアーム部9に接続する位置を特定位置85(図1参照)とする。第一の装着方法(図1参照)における特定位置85からユーザの左眼までの距離は、第二の装着方法(図5参照)における特定位置85からユーザの左眼までの距離よりも短くなりやすい。即ち、第一の装着方法と第二の装着方法とでは、装着具8とHD10との間に必要な距離が異なることが多い。アーム部9が距離変更機構9Kを有することで、HMD1は、アーム部9全体の長さを調節して、ユーザの装着方法に応じた位置にHD10を配置できる。
なお、本実施形態の凹凸部91は、交互に設けられた凹凸に沿って突起92を移動させることで、アーム部9の伸縮の度合いを明確にして、ユーザにアーム部9の長さを調節させやすくするために設けられている。距離変更機構9Kにおいては、第一アーム部分9Aの内部の凹凸部91は必須の構成ではない。例えば、凹凸部91の設けられていない第一アーム部分9Aの内部において、第二アーム部分9Bが上下に摺動可能に形成されていてもよい。
図9および図10を参照して、第一接続機構5の構成について詳細に説明する。第一接続機構5は、装着具8の特定位置85と、アーム部9における第一箇所95とを接続する。装着具8が第一接続機構5と接続する特定位置85は、装着具8の第一部分8Aのうち第二部分8Rと接続する部分の近傍の位置である(図2から図4参照)。アーム部9が第一接続機構5と接続する第一箇所95は、アーム部9の上部の一端側、即ち、第一アーム部分9Aの上部に配置する。図9に示すように、第一接続機構5は、軸部96とソケット86を備える。軸部96はアーム部9における第一箇所95に設けられる。軸部96の先端部97は略球体状に形成されている。ソケット86は、第一部分8Aの特定位置85にネジ止めされて設けられる。ソケット86は、先端部97の球面の形状に対応する凹部87を備える。図10に示すように、ソケット86は、凹部87において先端部97を受け入れる。凹部87に嵌合した先端部97は、凹部87に沿って摺動することで、任意の方向に回転可能である。即ち、第一接続機構5は、装着具8に対して任意の回転自由度を有して、アーム部9を保持できる。アーム部9は、第二接続機構6によってHD10に接続する。このため、第一接続機構5は、装着具8に対して任意の回転自由度を有してHD10を保持できるともいえる。言い換えると、第一接続機構5はボールジョイント機構であり、2軸以上の回転自由度を有する。第一の装着方法と、第二の装着方法とでは、ユーザが画像を視認しやすいHD10の配置が異なる場合がある。HMD1を装着するユーザは、第一および第二の装着方法のいずれを採用する場合であっても、装着具8に対してアーム部9を任意に回転させて、HD10の表示する画像を視認しやすい位置にHD10の配置を調節することができる。
図9に示すように、特定位置85は、装着具8の第一部分8Aの中央位置8Cと右端部8Fとの間に配置される。例えば、特定位置85は、第一部分8Aの中央位置8Cと、伸縮機構8Qとの間に配置される。このため、一対の伸縮機構8P,8Qによって装着具8全体の長さが伸縮された場合であっても、中央位置8Cから特定位置85の距離は変更しない。即ち、中央位置8Cを基準として第一接続機構5の配置は固定されている。したがって、HMD1は、第一接続機構5によって調節された、ユーザの装着方法に応じたHD10の配置を変更することなく、装着具8の長さを調節することができる。
なお、本実施形態では、アーム部9およびHD10が、装着具8の右側に設けられるが、アーム部9およびHD10は装着具8の左側に設けられてもよい。即ち、装着具8がアーム部9と接続する特定位置は、装着具8の第一部分8Aの中央位置8Cと左端部8Eとの間に配置されてもよい。この場合、HMD1がユーザに装着されている状態で、画像光はユーザの右の眼球に入射する。
図11を参照して、第二接続機構6の構成について詳細に説明する。図11に示すように、第二接続機構6は、アーム部9の長手方向における位置が第一箇所95とは異なる第二箇所99と、HD10とを接続する。本実施形態では、第二箇所99は、アーム部9の下部である他端部側に配置する。第二接続機構6は、所謂、回転2軸ヒンジ構造を有する。具体的には、第二接続機構6は、第一ヒンジ61と第二ヒンジ62とを備える。第一ヒンジ61は、アーム部9の第二箇所99に設けられ、アーム部9と第二ヒンジ62とを連結する。第一ヒンジ61は、アーム部9の長手方向に対して略直交する方向に延びる軸Xを中心として第二ヒンジ62を揺動自在に支持する。第二ヒンジ62は、HD10の筐体2の上部に設けられ、第一ヒンジ61とHD10とを連結する。第二ヒンジ62は、アーム部9の長手方向に延びる軸Yを中心としてHD10を回転自在に支持する。即ち、第二接続機構6は、アーム部9に対して2軸の回転自由度を有して、HD10を保持できる。アーム部9は、第一接続機構5によって装着具8に接続する。このため、第二接続機構6は、装着具8に対して2軸の回転自由度を有して、HD10を保持できるともいえる。このため、HMD1を装着するユーザは、第一および第二の装着方法のいずれを採用する場合であっても、アーム部9に対してHD10を2つの軸のそれぞれの周りに回転させて、HD10が表示する画像を視認しやすい位置にHD10を配置させることができる。
以上説明したように、HMD1は、第一方向に延び、且つ、第二方向の一方側である前側に向けて凸状に湾曲した第一部分8Aと、第一部分8Aの左端部8Eおよび右端部8Fのそれぞれから互いに近づくように第二方向の他方側である後側に向けて延びる一対の第二部分8L,8Rとを備える装着具8を備える。このような装着具8は、例えば、第一部分8Aをユーザの額付近に、一対の第二部分8L,8Rをユーザの側頭部にそれぞれ接触させる第一の装着方法(図1参照)と、第一部分8Aをユーザの前頭部のうち頭頂部付近に、一対の第二部分8L,8Rをユーザの側頭部にそれぞれ接触させる第二の装着方法(図5参照)との、いずれも採用可能である。第一の装着方法と第二の装着方法とでは、装着具8とユーザの眼との間の距離が異なる場合がある。装着具8とHD10とは、アーム部9によって接続される。第一接続機構5は、装着具8の特定位置85とアーム部9の第一箇所95とを接続する。第二接続機構6は、アーム部9の第二箇所99とHD10とを接続する。ここで、アーム部9は、装着具8とHD10との間の距離を変更可能な距離変更機構9Kを有する。したがって、HMD1は、異なる装着方法に適切に対応することができる。
第一の装着方法と第二の装着方法とのそれぞれに適した装着具8の長さが異なる場合がある。この場合であっても、装着具8は、一対の伸縮機構8P,8Qによって、一対の第二部分8L,8Rのそれぞれの長さを変更できる。よって、装着具8は、第一および第二の装着方法のそれぞれに対して好適に対応できる。また、第一接続機構5は、伸縮機構8Qと第一部分8Aの中央位置8Cとの間に設けられる。このため、伸縮機構8Qによって第二部分8Rの長さが変更された場合にも、第一接続機構5と第一部分8Aの中央位置8Cとの間の距離が変更することはない。したがって、HMD1は、アーム部9の距離変更機構9Kによって装着具8とHD10との距離を保持しつつ、装着具8全体の長さを調節することができる。
アーム部9は、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとが入れ子式になった距離変更機構9Kを有する。このため、HMD1は、アーム部9の長手方向の長さを伸縮させて、装着具8とHD10との間の距離を容易に調節できる。
アーム部9は、第一接続機構5によって、装着具8に対して任意の回転自由度を有して保持される。このため、HMD1は、第一および第二の装着方法のそれぞれに適した位置に、アーム部9を保持できる。
HD10は、第二接続機構6によって、アーム部9に対して2軸の回転自由度を有して保持される。このため、HMD1は、第一および第二の装着方法のそれぞれに適した位置に、HD10を保持できる。
HMD1は、第一方向に延び、且つ、第二方向の一方側である前側に向けて凸状に湾曲した第一部分8Aと、第一部分8Aの左端部8Eおよび右端部8Fのそれぞれから第二方向の他端側である後側に延びる一対の第二部分8L,8Rとを備える装着具8を備える。装着具8は、一対の第二部分8L,8Rのそれぞれの後端部8X,8Yを互いに近づく方向に付勢できる。このような装着具8は、第一の装着方法と第二の装着方法とのいずれも採用可能である。第一の装着方法と第二の装着方法とでは、装着具8とユーザの眼との間の距離が異なる場合がある。装着具8とHD10とは、アーム部9によって接続される。ここで、アーム部9は、装着具8とHD10との間の距離を変更可能な距離変更機構9Kを有する。したがって、HMD1は、異なる装着方法に適切に対応することができる。
HMD1は、第一方向に延び、且つ、第二方向の一方側である前側に向けて凸状に湾曲した第一部分8Aと、第一部分8Aの左端部8Eおよび右端部8Fのそれぞれから互いに近づくように第二方向の他方側である後側に向けて延びる一対の第二部分8L,8Rとを備える装着具8を備える。このような装着具8は、第一の装着方法と第二の装着方法とのいずれも採用可能である。第一の装着方法と、第二の装着方法とでは、装着具8に必要な長さが異なる場合がある。HMD1において、装着具8は、一対の第二部分8L,8Rのそれぞれの長さを変更可能な一対の伸縮機構8P,8Qを備える。このため、装着具8は、異なる装着方法に適した長さに装着具8全体の長さを調節できる。また、第一接続機構5は、装着具8の特定位置85とアーム部9の第一箇所95を接続する。第二接続機構6は、アーム部9の第二箇所99とHD10とを接続する。第一接続機構5および第二接続機構6の少なくとも一方は、装着具8に対して2軸以上の回転自由度を有してHD10を保持できる。第一の装着方法と第二の装着方法とでは、ユーザが画像を視認しやすいHD10の配置が異なる場合がある。HMD1は、HD10の表示する画像をユーザに視認させやすい位置に、HD10の配置を調節することができる。したがって、HMD1は、異なる装着方法に適切に対応することができる。
本実施形態において、装着具8が本発明の「装着具」に相当し、第一部分8Aが「第一部分」に相当し、一対の第二部分8L,8Rが「一対の第二部分」に相当する。一対の伸縮機構8P,8Qが本発明の「一対の伸縮機構」に相当する。HD10が本発明の「画像表示部」に相当する。アーム部9が本発明の「アーム部」に相当し、第一アーム部分9Aが本発明の「第一アーム部分」に相当し、第二アーム部分9Bが本発明の「第二アーム部分」に相当する。距離変更機構9Kが本発明の「距離変更機構」に相当する。第一接続機構5が本発明の「第一接続機構」に相当し、第二接続機構6が本発明の「第二接続機構」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。例えば、距離変更機構9Kの構成は、上記実施形態に限られない。例えば入れ子式の距離変更機構9Kにおいて、アーム部9の上側の第一アーム部分9Aが軸状の部材であってもよい。アーム部9の下側の第二アーム部分9Bが軸状の第一アーム部分9Aを内側に収容可能な形状であってもよい。距離変更機構9Kは、第一アーム部分9Aが第二アーム部分9Bに対して挿入されることで、アーム部9の長手方向の長さを伸縮可能に構成されていてもよい。即ち、距離変更機構9Kは、第一アーム部分9Aおよび第二アーム部分9Bのいずれか一方が他方に対して挿入されることで、アーム部9の長手方向の長さが伸縮可能に構成されていればよい。以下、本発明の変形例について説明する。
図12および図13を参照して、本発明の第一の変形例について説明する。第一の変形例として、上記実施形態の距離変更機構9Kにおいて、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとを固定可能な二つの固定部21,22が設けられた例について説明する。装着具8、HD10等は、上述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。図12は、第二アーム部分9Bが第一アーム部分9Aに対して第一位置(図7参照)に移動した状態を示す。図13は、第二アーム部分9Bが第一アーム部分9Aに対して第二位置(図8参照)に移動した状態を示す。
図12に示すように、固定部21は、第一アーム部分9Aの上下方向における中央からやや下の位置において、第一アーム部分9Aを右方から左方へ貫いて設けられる。固定部22は、固定部21よりも下方において、第一アーム部分9Aを右方から左方へ貫いて設けられる。第一の変形例において、二つの固定部21,22のそれぞれは、汎用のネジである。第一アーム部分9Aを右方から左方へ貫く貫通孔のそれぞれの内面には、固定部21,22のネジ山に係合可能なネジ溝が形成されている。二つの固定部21,22のそれぞれの左端部は、第二アーム部分9Bに到達可能に設けられている。二つの固定部21,22のそれぞれを第一アーム部分9Aに対してネジ止めすることで、二つの固定部21,22のそれぞれの左端部は第二アーム部分9Bを9Aに対して押圧して、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとを固定できる。
特に、第二アーム部分9Bを第一位置(図12参照)よりも下方へ引き出してHMD1を使用する場合、アーム部9全体の長さが長くなるので、第二箇所99に接続するHD10が、第一接続機構5を支点として揺動しやすくなる。HD10が揺動することによって、第二アーム部分9Bが第一アーム部分9Aの内部においてぐらつき、距離変更機構9Kによって調節されたアーム部9全体の長さが変わってしまう可能性がある。二つの固定部21,22によって第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとが固定されることで、HMD1は、第一アーム部分9Aの内部における第二アーム部分9Bのぐらつきを防止できる。例えば、HMD1のユーザは、距離変更機構9Kにおいてアーム部9全体の長さを調整する毎に、二つの固定部21,22のそれぞれをドライバー等の工具を用いて締めることで、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとを固定できる。HMD1は、第二アーム部分9Bの第一アーム部分9Aに対するぐらつきを防止することで、HD10の出射する画像光を、受光対象物に対して安定に投影することができる。
第一の変形例において、二つの固定部21,22のうちいずれか一つを用いることとしてもよいが、アーム部9の長手方向において異なる複数箇所に固定部を設けることで、第一アーム部分9Aと第二アーム部分9Bとを、より安定に固定できる。これにより、HMD1は、第一アーム部分9Aの内部における第二アーム部分9Bのぐらつきを効果的に防止し、HD10の出射する画像光を、受光対象物に対して、より安定に投影しやすくなるため、二つ以上の固定部が設けられるのが好ましい。
二つの固定部21,22のそれぞれは、上記の例のネジに限られず、樹脂製のプッシュリベット等、汎用の留め具であってもよい。
以上のように、第一の変形例では、例えば、HMD1の使用中にアーム部9が揺動するような場合であっても、複数の固定部21,22は、距離変更機構9Kによって調節された装着具8とHD10との間の距離を、固定して保持することができる。第一の変形例において、二つの固定部21,22が本発明の「複数の固定部分」に相当する。
図14および図15を参照して、本発明の第二の変形例について説明する。第二の変形例として、上記実施形態の入れ子式の距離変更機構9Kとは異なる構成を有する距離変更機構9Hによって、装着具8とHD10との間の距離を変更可能とする例について説明する。装着具8、HD10等は、上述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。以下の説明では、第一方向(左右方向)および第二方向(前後方向)のいずれにも直交する上下方向を「第三方向」ともいう。
図14に示すように、第二の変形例として、上記実施形態の入れ子式の距離変更機構9Kを有さないアーム部90を説明する。アーム部90は、距離変更機構9Kを有さないので、上記実施形態のアーム部9とは異なり、アーム部90自体が伸縮自在に構成されていない。第二の変形例におけるアーム部90は、二つの軸部96,96を有する。二つの軸部96,96のそれぞれは、アーム部90の長手方向における異なる位置に配置する。即ち、第二の変形例では、第一接続機構5によって装着具8の特定位置85と接続されるアーム部90の第一箇所95が複数あるともいえる。なお、アーム部90は、アーム部90の下部である他端部に配置する第二箇所99において、第二接続機構6の第一ヒンジ61に接続する。
第二の変形例における距離変更機構9Hは、二つの軸部96,96と、ソケット86とを備える。ソケット86は、上記実施形態のソケット86と同様に構成される。二つの軸部96,96それぞれは、上記実施形態の軸部96と同様に構成される。即ち、ソケット86は、二つの軸部96,96のいずれにも接合可能に構成されている。ユーザがHMD1を装着した状態において、二つの軸部96,96は、アーム部90において第三方向の異なる位置に設けられる。二つの軸部96,96のそれぞれと、ソケット86とは、脱着可能に構成される。
第一の装着方法と第二の装着方法とでは、装着具8とHD10との間に必要な第三方向における距離が異なることが多い。具体的には、第一の装着方法において装着具8とHD10との間に必要な第三方向における距離は、第二の装着方法において装着具8とHD10との間に必要な第三方向における距離よりも短くなる。ユーザは、二つの軸部96,96のうちいずれをソケット86に接合するかによって、第三方向における装着具8とHD10との間の距離を変更できる。具体的には、二つの軸部96,96のうち上側に位置する軸部96をソケット86に接合した場合、アーム部90の第一箇所95から第二箇所99までの第三方向における距離を距離Lとする(図14参照)。二つの軸部96,96のうち下側に位置する軸部96をソケット86に接合した場合、アーム部90の第一箇所95から第二箇所99までの第三方向における距離を距離Mとする(図15参照)。この場合、距離Lは距離Mよりも長くなる。ユーザは、所望する装着方法に応じて、二つの軸部96,96のうちいずれかを選択し、選択したいずれかの軸部96を、ソケット86に嵌合させることで、装着具8とHD10との間の距離を変更できる。このような距離変更機構9Hを有することで、HMD1は、ユーザの装着方法に応じた位置にHD10を配置できる。
第二の変形例における距離変更機構9Hの、二つの軸部96,96とソケット86の構成は、上記の例に限られない。例えば、アーム部90は、3個以上の軸部96を有してもよい。また、アーム部90に一つの軸部96が設けられるとともに、装着具8において、一つの軸部96に接合可能なソケット86が複数設けられていてもよい。この場合、複数のソケット86は、装着具8において第三方向の異なる位置に配置されていれば、ユーザは、複数のソケット86のうちいずれを一つの軸部96に接合するかによって、第三方向における装着具8とHD10との距離を変更できる。また、一つまたは複数の軸部96が装着具8に設けられ、一つまたは複数のソケット86がアーム部90に設けられていてもよい。即ち、アーム部90および装着具8のいずれか一方において、複数の軸部96または複数のソケット86が設けられ、他方において複数の軸部96のいずれにも接合可能な一つのソケット86、または複数のソケット86のいずれにも接合可能な一つの軸部96が設けられていてもよい。
また、第二の変形例では、アーム部90は、上記実施形態の入れ子式の距離変更機構9Kをさらに有してもよいし、有さなくてもよい。即ち、アーム部90自体が伸縮して、アーム部90全体の長さを伸縮自在に調整できる構成の有無にかかわらず、HMD1は、第二の変形例の距離変更機構9Hを備えてよい。
以上のように、第二の変形例では、二つの軸部96,96は、アーム部90において、第三方向の異なる位置に設けられる。二つの軸部96,96のいずれにも接合可能なソケット86は、装着具8に設けられる。距離変更機構9Hは、ソケット86を二つの軸部96,96のいずれに接合するかによって、第三方向における装着具8とHD10との間の距離を変更できる。
第二の変形例において、アーム部90が本発明の「アーム部」に相当する。二つの軸部96,96が本発明の「複数の第一接合部」に相当し、ソケット86が本発明の「第二接合部」に相当する。
なお、本発明は、上記の実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、装着具8の第一部分8Aは、少なくともユーザがHMD1を装着した状態において、第一方向に延び、且つ、前側に向けて凸状に湾曲した形状を有していればよい。
装着具8の一対の第二部分8L,8Rは、少なくともユーザがHMD1を装着した状態において、それぞれの後端部8X,8Yが互いに近づくように後方に延びていればよい。例えば、ユーザがHMD1を装着しない状態において、第一部分8Aは、前側に向けて凸状に湾曲した形状を有していない場合があってもよい。ユーザがHMD1を装着しない状態において、一対の第二部分8L,8Rは、それぞれの後端部8X,8Yが互いに近づくように後方に延びていなくてもよい。例えば、ユーザがHMD1を装着しない状態において、第一部分8Aと一対の第二部分8L,8Rとを分離して保管できるように形成されていてもよい。
第一接続機構5は、1軸または3軸以上の可動部を有するものであってもよい。また、例えば、第一接続機構5は、第二接続機構6と同様の回転2軸ヒンジ構造であってもよい。
第二接続機構6は、1軸または3軸以上の可動部を有するものであってもよい。また、例えば、第二接続機構6は、第一接続機構5と同様のボールジョイント式に構成されて、任意の回転自由度を有してもよい。
HMD1において、第一接続機構5および第二接続機構6の少なくとも一方が、装着具8に対して2軸以上の回転自由度を有してHD10を保持する構成であってもよい。HMD1は、第一接続機構5および第二接続機構6のうちいずれかの回転自由度によって、ユーザが画像を視認しやすい位置にHD10を配置できればよい。
上記実施形態および第三の変形例の距離変更機構9K,9Hは、本発明に必須の構成ではない。例えば、HMD1が距離変更機構9K,9Hを有さない場合であっても、装着具8が一対の伸縮機構8P,8Qを有し、且つ、第一接続機構5および第二接続機構6の少なくともいずれかが装着具8に対して2軸以上の回転自由度を有してHD10を保持できれば、HMD1は、異なる装着方法のそれぞれに適切に対応しうる。
第一箇所95は、必ずしもアーム部9の一端側(上部)に配置される必要はなく、例えば、アーム部9の中央と他端側との間に配置されてもよい。