JP6232725B2 - パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
この種のパワーモジュール用基板において、回路層となる金属板に電気的特性に優れる銅を用い、放熱層となる金属板には、セラミックス基板との間の熱応力を緩和する目的でアルミニウムを用いる場合がある。
アルミニウム板にもエッチングピットは生じるが、極めて微細であるため、実用上の問題はない。これに対して、銅板の場合は、前述したように、アルミニウム板よりも先にセラミックス基板に接合されるため、2回の加熱処理がなされており、この加熱が繰り返される間に結晶粒が成長し、それによりエッチングピットも大きくなるものと想定される。
この大きなエッチングピットが生じていると、その後に接合される半導体素子やボンディングワイヤに対する接合信頼性を損なうおそれがある。
また、酸洗浄処理の前に、アルカリ洗浄処理を行うことにより、アルミニウム板についても表面洗浄することができ、その際、アルカリ液であるので銅板の表面を反応させることはないが、銅板の表面を脱脂することができ、その後の酸洗浄処理によって前述したように平滑に表面洗浄される。
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11の一方の面に、回路層となる銅板12が厚さ方向に積層され、セラミックス基板11の他方の面に放熱層となるアルミニウム板13が厚さ方向に積層され、これらがろう材によって接合されている。
セラミックス基板11は、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ、窒化珪素(Si3N4)等により、例えば0.25mm〜1.0mmの厚さに形成される。また、銅板12は無酸素銅やタフピッチ銅等の純銅又は銅合金により形成され、アルミニウム板13は純度99.00%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されている。これら銅板12及びアルミニウム板13の厚さは、例えば0.25mm〜2.5mmとされる。
本実施形態のパワーモジュール用基板10の好ましい組合せ例としては、例えばセラミックス基板11が厚み0.635mmのAlN、銅板12が厚み0.3mmの純銅板、アルミニウム板13が厚み1.6mmの4N−アルミニウム板で構成される。
<接合工程>
接合は2回に分けて行われ、セラミックス基板11の一方の面に銅板12をまず接合した後、セラミックス基板11の他方の面にアルミニウム板13を接合する。
(1)銅板接合処理
銅板12を、ペースト又は箔からなる活性金属ろう材を介在させてセラミックス基板11の一方の面に積層し、この積層体40をカーボングラファイト等からなる板状のクッションシート50の間に挟んだ状態として、複数組積み重ね、図3に示すような加圧治具110によって積層方向に例えば0.3MPa〜1.0MPaで加圧した状態とする。
このろう付けは、活性金属ろう材を用いた接合であり、ろう材中の活性金属であるTiがセラミックス基板11に優先的に拡散してTiNを形成し、Ag−Cu合金を介して銅板12とセラミックス基板11とを接合する。
セラミックス基板11の銅板12の接合面とは反対面にろう材を介在させた状態でアルミニウム板13を積層し、この積層体を前述したクッションシート50の間に挟んだ状態として複数組積み重ね、前述のものと同様の加圧治具110により積層方向に例えば0.3MPa〜1.0MPaで加圧した状態とする。
そして、この加圧治具110により積層体を加圧した状態で、加圧治具110ごと加熱炉(図示略)内に設置し、真空雰囲気中で630℃以上650℃以下の温度で1分〜60分加熱することによりセラミックス基板11とアルミニウム板13とをろう付けする。
接合工程後にパワーモジュール用基板10の表面を洗浄する洗浄工程を行う。この洗浄工程は、アルカリ液を用いたアルカリ洗浄処理と酸液を用いた酸洗浄処理、及びこれらの処理の後に行う水洗処理からなり、アルカリ洗浄の後に酸洗浄する。
(1)アルカリ洗浄処理
アルカリ洗浄処理は、主としてアルミニウム板13のための洗浄である。アルミニウム板13は酸液でも洗浄することができるが、セラミックス基板11のアルミニウム板13とは反対面に銅板12が接合されているので、この銅板12と反応しないようにアルカリ液を使用する。また、アルカリ液の方がアルミニウム板13に対する洗浄効果が高い。
洗浄液としては例えば、濃度30g/l〜250g/lの水酸化ナトリウム水溶液が好適であり、40℃〜60℃の温度で30g/l〜70g/l(より好適には53g/l)の水酸化ナトリウム水溶液にパワーモジュール用基板を1分〜10分浸漬する。
なお、このアルカリ洗浄処理は、アルミニウム板13の表面の洗浄が主目的であるが、銅板12の表面も脱脂されるという効果がある。
(2)水洗処理
アルカリ液内に所定時間浸漬したら、パワーモジュール用基板10を引き上げた後、純水等で水洗して表面のアルカリ液を除去する。
(3)酸洗浄処理
酸洗浄処理は、銅板12のための洗浄である。洗浄液としては、過酸化水素、硫酸及び安定化剤としての添加剤を含有する酸液が使用され、例えば以下の成分の水溶液が好適である。
過酸化水素の濃度:10g/l〜30g/l
硫酸の濃度:15g/l〜100g/l
添加剤:10g/l〜50g/l
添加剤としては、銅のエッチング液として一般に用いられている過酸化水素と硫酸との混合液用の安定化剤であり、例えば上村工業株式会社製「アディティブMGE−9」を好適に用いることができる。
最も好適には、過酸化水素が19.6g/l、硫酸が55g/l、添加剤が30g/lとなるように混合するとよい。
この酸液を25℃〜40℃の温度に保持し、超音波振動を付与しながらパワーモジュール用基板10を0.5分〜5分浸漬する。
超音波振動としては、特に限定されず、市販されている超音波洗浄器等を用いることができる。
(4)水洗処理
酸液にパワーモジュール用基板10を浸漬して引き上げた後、純水等で水洗して表面の酸液を除去する。
この場合、回路層となる銅板12の表面は、前述した洗浄工程のアルカリ洗浄処理によって脱脂された後に、酸洗浄処理によってエッチングピットの発生が低減された状態で平滑な表面に仕上げられており、半導体素子やボンディングワイヤに対する接合信頼性を向上させることができる。
30mm四方のAlNからなるセラミックス基板の一方の面に無酸素銅からなる銅板をAg−27.4質量%Cu−2.0質量%Tiの活性金属ろう材を用いて860℃で30分加熱して接合した後、セラミックス基板の他方の面に4N−アルミニウム板をAl−Si系ろう材を用いて640℃で30分間加熱して接合した。
そして、このパワーモジュール用基板に洗浄工程を施した。その際、アルカリ液を用いたアルカリ洗浄処理を行い、水洗後に、表1に示す組成の酸液による洗浄処理を超音波振動を付与しながら行った。アルカリ洗浄は、50℃に保持した5質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。酸液中に加えられる添加剤には上村工業株式会社製「アディティブMGE−9」を用いた。
超音波振動条件としては、BRANSON社製5510J−MT(周波数:4.2kHz、容量:9.5L、出力:180W)を用いた。
比較のため、添加剤を添加しなかったもの、超音波振動を付与しなかったものも試験した。
評価は、得られたパワーモジュール用基板の銅板表面におけるエッチングピットについて観察することにより行った。光学顕微鏡で20倍の倍率で観察したときの、300μm×200μmの領域を10領域観察して、直径2μm以上のエッチングピットが平均10個以上認められたものを×、5個〜9個認められたものを△、4個以下であったものを○とした。
その結果を表1に示す。
また、図5及び図6は銅板表面の顕微鏡写真であり、図5は実施例1、図6は比較例1を示す。図6の比較例の銅板は表面に多数のエッチングピットが認められるのに対して、図5の実施例の銅板にはエッチングピットがほとんど認められず、平滑な表面に仕上げられていることがわかる。
11 セラミックス基板
12 銅板
13 アルミニウム板
21 半導体素子
22 ヒートシンク
40 積層体
50 クッションシート
110 加圧治具
Claims (3)
- セラミックス基板の一方の面に無酸素銅からなる銅板が接合され、他方の面にアルミニウム板が接合されてなるパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記銅板を前記セラミックス基板に接合した後に、前記アルミニウム板を前記セラミックス板に接合する接合工程と、接合後のパワーモジュール用基板を洗浄する洗浄工程とを有し、前記洗浄工程は、前記パワーモジュール用基板をアルカリ液に浸漬するアルカリ洗浄処理と、該アルカリ洗浄処理の後に、過酸化水素、硫酸及び安定化剤としての添加剤を含む酸液に前記パワーモジュール用基板を浸漬した状態で超音波振動を付与する酸洗浄処理とを有することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記酸液は、前記過酸化水素の濃度を10g/l〜30g/l、前記硫酸の濃度を15g/l〜100g/l、前記添加剤の濃度を10g/l〜50g/lとすることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記酸液の温度が30℃〜60℃であることを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
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