JP4910789B2 - パワー素子搭載用基板およびパワー素子搭載用基板の製造方法並びにパワーモジュール - Google Patents
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Description
この発明によれば、回路層において、前記反対の表面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上とされているので、熱サイクル時に回路層が繰り返し熱変形するのに伴い、徐々にこの反対の表面側を硬化させることが可能になり、この部分に発生する塑性変形量を抑えることができる。これにより、熱サイクル時の回路層の塑性変形に起因して、この回路層の前記反対の表面とパワー素子とを接合するはんだ層に作用する負荷を低減することが可能になり、熱サイクル時に、このはんだ層にクラックが発生してもその進展が抑えられ、回路層とパワー素子とをはんだ接合するのに無鉛系のはんだ材を採用しても、熱サイクル時にこのはんだ層でクラックが進展し易くなるのを抑えることができる。
一方、回路層において、ろう付け面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満とされているので、熱サイクル時に、セラミックス板および回路層の各熱膨張係数の差に起因して、これらの接合界面に応力が生じようとした場合においても、回路層のろう付け面側を塑性変形させることによりこの応力を吸収させることが可能になる。これにより、前記接合界面に作用する応力を抑えることが可能になり、セラミックス板と回路層との接合信頼性を向上させることもできる。
この場合、前記の作用効果が確実に奏効されることになる。
この発明では、前記積層体を積層方向に加圧してろう付けするので、セラミックス板の表面と回路層部材とを良好にろう付けすることが可能になり、回路層部材においてセラミックス板とのろう付け面側に含まれるFeを、前記接合界面で溶融しているろう材中に良好に溶解させることができる。したがって、回路層のろう付け面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満とされ、かつこのろう付け面と反対の表面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上とされたパワー素子搭載用基板を確実に形成することができる。
このパワーモジュール10は、セラミックス板11においてその表面に回路層12がろう付けされるとともに、裏面に金属層13がろう付けされたパワー素子搭載用基板14と、回路層12の表面にはんだ層15を介してはんだ接合された半導体チップ(パワー素子)16と、金属層13の表面にろう付けまたははんだ付けされたヒートシンク17とを備えている。
また、回路層12全体の平均純度は、まず、回路層12を、水、フッ化水素酸および硝酸がそれぞれ同量ずつ混入された水浴中(約100℃)に浸して分解し、その後、この分解した試料を、ICP−AES法(誘導結合プラズマ−発光分析法)を用いることにより測定した。
まず、回路層12と同形同大の回路層部材を形成する。ここで、回路層部材は、その全体の平均で、Feを0.05wt%以上1.0wt%以下含有する純度が98.5wt%以上99.95wt%以下のAl合金からなっている。その後、セラミックス板11の表面にろう材箔と回路層部材とをこの順に配置する。また、セラミックス板11の裏面にろう材箔を介して金属層13と同形同大の金属層部材を配置する。
以上より、セラミックス板11において、その表面にろう材箔と回路層部材とがこの順に配置され、裏面に前記ろう材箔と金属層部材とがこの順に配置された積層体を形成する。
例えば、金属層部材や回路層部材は、母材を打ち抜いて形成したり、あるいはいわゆるエッチング法により形成してもよい。また、前記実施形態では、はんだ層15のはんだ材として、例えばSn−Ag−Cu系等の無鉛系のはんだ材を示したが、これに限らず、Pbを含むはんだ材、例えばPbSn系のはんだ材を採用してもよい。この場合においても、前記実施形態と同様の作用効果が奏される。
さらに、ヒートシンク17の構造については、図1に例示した放熱フィンを備えたものに限定されることはなく、図3に示すように、多穴管タイプのものやその他の構造のものを適用してもよい。
まず、材質については、金属層部材および回路層部材を、Feを約0.3wt%含有する純度が99.5wt%のAl合金、金属層13および回路層12とセラミックス板11とを接合するろう材をAl−Si系(Alが92.5wt%、Siが7.5wt%)、セラミックス板11をAlNによりそれぞれ形成した。厚さについては、金属層13および回路層12をそれぞれ約0.6mm、ろう材箔を約30μm、セラミックス板11を約0.635mmとした。なお、金属層13は平面視四角形とされ、縦および横の寸法はそれぞれ、約30mmとした。
そして、前記積層体を600℃〜650℃の真空中(真空度1×10−5Torr(1.33×10−3Pa)以下)に置いて、約1時間、積層方向に0.098MPa〜0.294MPaで加圧して、パワー素子搭載用基板14を形成した。
この図により、ろう付け面12aから反対の表面12bに向かって0.15mmまでの領域(回路層12の厚さの約25%に相当)ではFeの濃度が低くなっており、それより反対の表面12b側ではFeの濃度が高い領域になっていることが確認される。
そして、回路層12のろう付け面12a側、および反対の表面12b側の各Fe濃度は、加速電圧15kV、電流値5×10−8A、スポットサイズ30μmの条件でEPMAを用いて、ろう付け面12a側、および反対の表面12b側のそれぞれについて、任意の10箇所で測定し、その平均値を算出することによって求めた。
回路層を形成する回路層部材において、Alの純度、厚さおよびFeの濃度の少なくとも1つを異ならせて8種類のパワー素子搭載用基板を形成し、各パワー素子搭載用基板の回路層において、ろう付け面側に含まれるFeの濃度、前記反対の表面側に含まれるFeの濃度、ろう付け面側の厚さ、および前記反対の表面側の厚さの少なくとも1つを異ならせた。そして、これらのパワー素子搭載用基板それぞれの回路層の表面に、同一の性能を有するSiチップをSn−Ag−Cu系の無鉛はんだではんだ接合したものを、−40℃から105℃に約3分間で昇温した後、105℃から−40℃に10分間で降温する温度履歴を1サイクルとした熱サイクルを2000サイクル付与した。
ここで、剥離進展率が4%を超えものを×とし、2%以上4%以下のものを○とし、さらに2%未満のものを◎として評価した。また、クラック進展率が3%を超えたものを×とし、3%以下ものを○として評価した。
結果を表1に示す。
11 セラミックス板
12 回路層
12a ろう付け面
12b 反対の表面
13 金属層
14 パワー素子搭載用基板
15 はんだ層
16 半導体チップ(パワー素子)
Claims (4)
- セラミックス板の表面に回路層がろう付けされてなり、この回路層の表面にパワー素子がはんだ接合されるパワー素子搭載用基板であって、
前記回路層は、全体の平均純度が98.0wt%以上99.9wt%以下のAl合金により形成されるとともに、前記セラミックス板とのろう付け面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満とされ、かつこのろう付け面と反対の表面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上とされていることを特徴とするパワー素子搭載用基板。 - 請求項1記載のパワー素子搭載用基板において、
前記ろう付け面側は、回路層においてこのろう付け面から前記反対の表面に向けて回路層の厚さの10%以上50%以下までに位置する部分とされ、残部が前記反対の表面側とされていることを特徴とするパワー素子搭載用基板。 - セラミックス板の表面に回路層がろう付けされてなり、この回路層の表面にパワー素子がはんだ接合されるパワー素子搭載用基板の製造方法であって、
セラミックス板の表面に、Al系のろう材箔と、Feを0.05wt%以上1.0wt%以下含有する純度が98.5wt%以上99.95wt%以下のAl合金からなる回路層部材とをこの順に配置して積層体とした後に、
この積層体を積層方向に加圧した状態で加熱し、ろう材箔を溶融させて、セラミックス板の表面に回路層部材をろう付けすることにより、請求項1または2に記載のパワー素子搭載用基板を形成することを特徴とするパワー素子搭載用基板の製造方法。 - セラミックス板の表面に回路層がろう付けされたパワー素子搭載用基板と、回路層の表面にはんだ接合されたパワー素子とを備えたパワーモジュールであって、
前記パワー素子搭載用基板が請求項1または2に記載のパワー素子搭載用基板であることを特徴とするパワーモジュール。
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