JP6323104B2 - ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents

ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、セラミックス基板と該セラミックス基板の一方の面に形成された回路層と前記セラミックス基板の他方の面に形成された金属層とを有するパワーモジュール用基板と、前記金属層とフラックスを用いて接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
各種の半導体素子のうち、例えば、電気自動車や電気車両などを制御するために用いられる大電力制御用のパワー素子は、電流値が高いために発熱量が多い。こうした大電力制御用のパワー素子を搭載するパワーモジュール用基板は、発熱による誤動作などを防止するために、適切に冷却を行う必要がある。このため、パワーモジュール用基板に放熱、冷却用のヒートシンクを備えたヒートシンク付パワーモジュール基板が用いられている。
ヒートシンク付パワーモジュール用基板としては、例えば特許文献1に記載されているように、AlN(窒化アルミニウム)からなるセラミックス基板の一方の面、および他方の面にアルミニウム板(回路層及び金属層)が接合されたパワーモジュール用基板とAlからなるヒートシンクとが、ろう付けによって接合されたものが提案されている。
また、例えば特許文献2に示す半導体モジュールの冷却装置においては、セラミックス材からなる絶縁基板の両面にAlからなる金属板(上部電極及び下部電極)が接合されており、上部電極に半導体素子が接合された半導体モジュールと、アルミニウムからなる冷却器の天板とがフラックスを用いたろう付けによって接合されたもの、が提案されている。
ここで、フラックスを用いたろう付けとしては、KAlFを主成分とするフラックスを用いたノコロックろう付けがある。このノコロックろう付けは、主に、アルミニウム板同士を接合する技術であり、例えばAl−Si系ろう材箔とKAlFを主成分とするフラックスとを、アルミニウム板同士の間に配置し、このフラックスによってアルミニウム板の表面に形成された酸化膜を除去するとともに、ろう材の溶融を促進して、接合するものである。
特開2007−194256号公報 特開2009−105166号公報
しかしながら、パワーモジュール用基板とヒートシンクをノコロックろう付けで接合する際に、フラックス成分であるKAlFがパワーモジュール用基板のセラミックス基板とアルミニウム板との接合面に侵入し、セラミックス基板とアルミニウム板との間の接合信頼性を低下させる懸念があった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、フラックスを用いてパワーモジュール用基板とヒートシンクとを接合する際に、セラミックス基板と金属層との剥離を防止することが可能なヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。パワーモジュール用基板において、ヒートシンクが接合される金属層にCe及びLaなどの不純物が含有されている場合、セラミックス基板と金属板を接合する時にこれらCe及びLaがセラミックス基板と金属層との接合界面に凝集する。そして、セラミックス基板と金属層との接合界面にCe及びLaが凝集した状態で、ヒートシンクをフラックスを用いたろう付けで接合すると、セラミックス基板と金属層との接合界面にフラックスが侵入し、剥離が生じやすくなる。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板と、該セラミックス基板の一方の面に形成された回路層と、前記セラミックス基板の他方の面に形成された金属層とを有するパワーモジュール用基板、および前記金属層に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるヒートシンク、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板を非酸化雰囲気中で630℃以上、660℃以下の温度範囲、加熱時間を12分以上、180分以下の範囲内で熱処理し、不純物を表面に析出させる熱処理工程と、前記不純物を前記アルミニウム板の表面から除去し、Pの濃度を4ppm以下とする不純物除去工程と、前記アルミニウム板を前記セラミックス基板の他方の面に接合し、金属層を形成するアルミニウム板接合工程と、前記金属層と前記ヒートシンクとを、フラックスを用いて接合するヒートシンク接合工程と、を順に備えたことを特徴とする。
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、金属層を形成するためのするアルミニウム板に含まれる不純物を熱処理工程によって表面近傍に析出させ、更にこの不純物を不純物除去工程によって除去した。こうした前処理を行ったアルミニウム板をセラミックス基板に接合し金属層を形成することによって、金属層とヒートシンクとをフラックスを用いて接合しても、金属層とセラミックス基板との接合界面に不純物が凝集することが抑制され、フラックス侵入時の金属層とセラミックス基板との剥離を抑制したヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造することが可能になる。
ここで、熱処理の温度を630℃未満の場合、アルミニウム板に含まれる不純物を表面に析出させることができない。また、熱処理の温度が660℃を超えるとアルミニウム板が溶融する虞がある。よって、熱処理の温度を630℃以上660℃以下の範囲内としている。
また、熱処理工程における加熱時間を12分以上にすることよって、アルミニウム板の内部に存在する不純物を十分に表面近傍に析出させることができる。また、加熱時間を180分以下にすることよって、過度な加熱によるアルミニウム板の変形を防止することができる。
さらに、アルミニウム板に含まれるPは、セラミックス基板と金属層との間にフラックスが侵入した際に、セラミックス基板と金属層とを剥離させる原因となりうる。よって、フラックス成分によってセラミックス基板と金属層との接合を剥離させる懸念があるPを除去することで、セラミックス基板と金属層とをより一層強固に接合することが可能になる。
本発明によれば、前記不純物除去工程は、エッチングによって前記不純物を除去する工程であることが好ましい。
アルミニウム表層をエッチングすることによって、熱処理工程で析出させた不純物をアルミニウム板の表面近傍に残存させることなく確実に除去することが可能になる。
本発明によれば、前記アルミニウム板は、Alの純度が99.99質量%以上のものを用いることが好ましい。
アルミニウム板として、純度が99.99質量%以上のAlを用いることによって、ヒートシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差による熱ひずみを金属層で十分に吸収することができ、セラミックス基板の破損を抑制することができる。
本発明によれば、前記回路層は、前記不純物が除去された前記アルミニウム板を用いて形成されることが好ましい。
これによって、不純物が除去されたアルミニウム板を用いて回路層を形成することで回路層とセラミックス基板との接合界面に不純物が凝集することが抑制され、フラックス侵入時の剥離を抑制できる。よって、回路層とセラミックス基板とを強固に接合することが可能になる。
本発明によれば、前記不純物除去工程において除去する不純物は、少なくともCe、Laを含むことが好ましい。
アルミニウム板にCe、Laが含まれると、セラミックス基板と金属層との間にフラックスが侵入した際に、セラミックス基板と金属層とを剥離させる原因となりうる。アルミニウム板から除去する不純物として、少なくともCe、Laを含むことで、アルミニウム板とセラミックス基板を接合する際に、アルミニウム板(金属層)とセラミックス基板との接合界面にCe、Laが凝集することが抑制され、金属層とヒートシンクをフラックスを用いて接合した際に、フラックスが金属層とセラミックス基板の接合界面に侵入したとしても金属層とセラミックス基板との剥離を抑制したヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造することが可能になる。
本発明によれば、フラックスを用いてパワーモジュール用基板とヒートシンクとを接合する際に、セラミックス基板と金属層との剥離を防止することが可能なヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することができる。
ヒートシンク付パワーモジュール用基板を示す断面図である。 本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を段階的に示した断面図である。 本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を段階的に示した断面図である。 本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を段階的に示した断面図である。
以下、図面を参照して、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
(ヒートシンク付パワーモジュール用基板)
まず、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によって得られるヒートシンク付パワーモジュール用基板の構成を、添付した図1を参照して説明する。
図1は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を示す断面図である。
ヒートシンク付パワーモジュール用基板10は、パワーモジュール用基板11と、このパワーモジュール用基板11に接合されたヒートシンク12とから構成されている。
パワーモジュール用基板11は、セラミックス基板21と、このセラミックス基板21の一方の面(21a側)に接合された回路層22および他方の面(21b側)に接合された金属層23と、から構成されている。
セラミックス基板21と回路層22および金属層23とは、ろう材によって接合されている。このろう材としては、例えば、Al−Si系のろう材によって接合されている。Al−Si系のろう材は、融点が550℃〜620℃程度である。
セラミックス基板21は、絶縁性および耐熱性の高いセラミックスからなる基板が好適に用いられる。セラミックス基板21を構成するセラミックスとしては、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Al(酸化アルミニウム)、Si(窒化ケイ素)、Zr−Al(ジルコニウム−酸化アルミニウム)などが挙げられる。本実施形態では、セラミックス基板21としてAlNを用いている。こうしたセラミックス板の厚さは、例えば、0.1〜1.0mm程度であればよい。一例として、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
回路層22は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層用アルミニウム板52が接合すされることで形成されている。また、金属層23は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層用アルミニウム板53が接合されることで形成されている。本実施形態においては、これらアルミニウム板は、高純度アルミニウム材料、例えば、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板から構成されている。
そして、回路層22の一方の面(図1において上面)にははんだ層を介して半導体素子が接合される。そして、金属層23の一方の面(図1において下面)にはシートシンク12がフラックスを用いたろう付けによって接合される。
また、金属層23は、例えば緩衝層として用いられる。緩衝層は、このヒートシンク付パワーモジュール用基板10に冷熱サイクルが負荷された際に、セラミックス基板21に発生する熱応力をこの緩衝層(金属層23)によって吸収でき、セラミックス基板21に割れが発生することを抑制できる。
これら回路層22および金属層23のうち、少なくともヒートシンク12と接合される金属層23を形成するための金属層用アルミニウム板53は、少なくとも、Alに含まれる微量元素であるCe(セリウム)及びLa(ランタン)を含む不純物を除去したものが用いられる。このようなアルミニウム板の不純物除去は、製造方法において詳述する。
こうしたCeやLaなどの不純物は、パワーモジュール用基板11とヒートシンク12とをフラックスを用いて接合する際に、回路層22および金属層23とセラミックス基板21との接合部分を剥離させる原因となりうる。よって、このCeやLaを極めて低濃度になるようにしたものを用い、回路層22および金属層23とセラミックス基板21との接合部分の剥離を抑制させる。
なお、回路層22についても、回路層22を形成するためにCe(セリウム)及びLa(ランタン)を含む不純物を除去した回路層用アルミニウム板を用いることが好ましい。
また、金属層23や回路層22を形成するために用いる金属層用アルミニウム板53、回路層用アルミニウム板は、Alに含まれる微量元素であるP(リン)を更に除去したもの用いることが好ましい。こうしたPなどの不純物も、パワーモジュール用基板11とヒートシンク12とをフラックスを用いて接合する際に、回路層22および金属層23とセラミックス基板21との接合部分を剥離させる原因となりうる。よって、このPを極めて低濃度になるようにしたものを用い、回路層22および金属層23とセラミックス基板21との接合部分の剥離を抑制させる。
ヒートシンク12は、例えば、天板部31と、この天板部31に形成された複数のフィン32,32…から構成されている。フィン32,32…は、互いに所定の間隔をあけて配置された板状部材である。このようなヒートシンク12は、フィン32,32…の間を冷媒である空気が流通することによって、このヒートシンク12に接合されたパワーモジュール用基板11から伝搬する熱を放熱する、いわゆる空冷式のヒートシンク12である。
なお、ヒートシンク12は、例えば、天板部31に例えば冷却水を流通させる複数の流路を一体に形成した、いわゆる水冷式のヒートシンク12であってもよい。
ヒートシンク12を構成する天板部31やフィン32,32…は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などから形成されている。具体的には、A3003、A1050、4N−Al、A6063などが挙げられる。本実施形態では、A1050の圧延板を用いた。
なお、天板部31とフィン32,32…とは一体の部材として形成された構成であっても、天板部31の下面に複数のフィン32,32…をろう材等で接合した構成であってもよい。天板部31と複数のフィン32,32…とを別部材で構成する場合、天板部31と複数のフィン32,32…とは互いに異なる素材を用いて形成してもよい。
このようなヒートシンク12は、パワーモジュール用基板11の金属層23に対して、Al−Si系ろう材と、F(フッ素)を含むフラックス、例えばKAlFを主成分とするフラックスを用いたノコロックろう付けによって接合されている。
(ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法)
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法について、添付した図2、図3、図4を参照して説明する。
図2、図3、図4は、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を段階的に示した断面図である。
セラミックス基板21の一方の面21aおよび他方の面21bに接合される回路層22、金属層23を形成するための回路層用アルミニウム板52及び金属層用アルミニウム板53(両アルミニウム板51)を用意する。まず、両アルミニウム板51を加熱処理する(加熱処理工程)。両アルミニウム板51は、純度99%以上のアルミニウム材料、純度99.9%以上のアルミニウム材料、純度99.99%以上のアルミニウム材料を用いることができる。厚さは0.2mm〜2.5mmに設定されている。本実施形態では純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板を用い、回路層用アルミニウム52は厚さ0.5mm、金属層用アルミニウム53は厚さ1.5mmのものを用いている。
図2(a)に示すように、加熱処理工程では、非酸化雰囲気、例えば、真空中や窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気にした加熱炉50を用いて、両アルミニウム板51を、630℃以上、660℃以下の温度範囲で加熱する。本実施形態では、加熱炉42として真空加熱炉を用い、両アルミニウム板51を加熱している。
また、加熱処理工程における保持時間は、12分以上180分以下とすることができる。
こうした加熱処理工程によって、両アルミニウム板51の全体に分散して存在している不純物、例えばCe、La、Pを両アルミニウム板51の表層付近に析出させることができる。即ち、両アルミニウム板51の加熱によってこれらCe、La、Pの移動性が高まり、両アルミニウム板51の内部に存在するこれらCe、La、Pが両アルミニウム板51の表層に向けて移動し、表層近傍に析出するものと考えられる。
次に、加熱処理工程で両アルミニウム板51の表層近傍に析出させた、Ce、La、Pを含む不純物を両アルミニウム板51の表面近傍から除去する(不純物除去工程)。図2(b)に示すように、不純物除去工程では、加熱処理工程を経た両アルミニウム板51をエッチング液53に浸漬する。エッチング液53としては、アルカリ金属の水酸化物、本実施形態ではNaOH(水酸化ナトリウム)の水溶液を用いている。NaOH水溶液のNaOH濃度は、例えば2〜10質量%の範囲であればよく、本実施形態では5重量%としている。また、エッチング液53の液温としては、例えば室温ないし70℃以下の範囲であればよく、本実施形態ではエッチング液53の液温を50℃としている。
両アルミニウム板51をエッチング液53に浸漬する際には、エッチング液53は静止された状態、または、所定の流速で撹拌された状態のいずれでもよい。
両アルミニウム板51をエッチング液53に浸漬する時間(エッチング時間)は、例えば30秒から5分の範囲であればよく、本実施形態においてはエッチング時間を80秒としている。
このような不純物除去工程によって、両アルミニウム板51の表面から所定の深さまでの範囲がエッチング液53によって除去される。これによって、加熱処理工程で両アルミニウム板51の表面に析出させたCe、La、Pを含む不純物も、エッチング液53によって除去される。
なお、この不純物除去工程では、上述したようにNaOHなどのエッチング液53によって両アルミニウム板51の表面領域を一律に除去する以外にも、例えば、不純物を選択的に溶解可能なエッチング液を用いて、両アルミニウム板51の表面から不純物だけを選択的に溶解させることも好ましい。
不純物除去工程では、両アルミニウム板51をエッチング液53によってエッチングした後、純水54で水洗してから、更に酸洗液55によって酸洗することが好ましい。酸洗液55としては、無機酸溶液、本実施形態ではHNO(硝酸)用いている。HNOの濃度は、例えば30質量%程度のものを用いている。また、酸洗液55の液温としては、例えば室温(20℃)としている。
両アルミニウム板51を酸洗液55に浸漬する際には、エッチング液53は静止された状態、または、所定の流速で撹拌された状態のいずれでもよい。
両アルミニウム板51を酸洗液55で酸洗する時間は、例えば20秒程度であればよい。
不純物除去工程において、両アルミニウム板51のエッチング後に上述した酸洗を行うことによって、水洗だけを行う場合よりもエッチング後の残渣を確実に溶解して除去することができる。
こうした両アルミニウム板51の酸洗後に、再度両アルミニウム板51を純水54で水洗して酸洗液55を洗い流し、不純物除去工程が完了する。
以上のようにして得られる不純物除去後の両アルミニウム板51は、Ce、La、Pといった不純物が極めて低濃度にしか存在しない。一例として、不純物除去後の両アルミニウム板51は、CeとLaの合計濃度が2.6ppm以下、Pの濃度が4ppm以下である。
加熱処理工程および不純物除去工程によって得られたCe、La、Pといった不純物が除去された両アルミニウム板51を、それぞれ回路層22および金属層23を形成するために用いる。図3(a)に示すように、セラミックス基板21の一方の面(21a側)に、回路層用アルミニウム板52が、ろう材箔41を介して積層される。また、セラミックス基板21の他方の面(21b側)に、金属層用アルミニウム板53が、ろう材箔41を介して積層される。セラミックス基板21としては、AlNが用いられる。また、ろう材箔41としては、Al−5.0mass%Si〜Al−10mass%Siろう材が用いられる。ろう材箔41の厚さは10μm〜30μmの範囲内に設定される。本実施形態では、ろう材箔41として厚さ15μmのAl−7mass%Siろう材箔を用いた。
次に、図3(b)に示すように、回路層用アルミニウム板52、セラミックス基板21、金属層用アルミニウム板53を積層方向に加圧(圧力1〜5kgf/cm)した状態で真空加熱炉40内に導入し、ろう材箔41の溶融温度まで加熱する。すると、ろう材箔41と回路層用アルミニウム板52、金属層用アルミニウム板53の一部とが溶融し、セラミックス基板21の一方の面(21a側)に回路層22が、また、セラミックス基板21の他方の面(21b側)に金属層23が、それぞれ形成される(アルミニウム板接合工程)。なお、真空加熱時の加熱温度は、例えば550℃以上650℃以下、加熱時間は30分以上180分以下とされている。本実施形態では630℃で90分の条件で加熱した。
以上の工程によって、図3(c)に示すように、セラミックス基板21の一方の面(21a側)に回路層22が、また、セラミックス基板21の他方の面(21b側)に金属層23が、それぞれAl−Si系ろう材によって接合されたパワーモジュール用基板11が得られる。
次に、図4(a)に示すように、パワーモジュール用基板11の金属層23に、ヒートシンク12を接合する(ヒートシンク接合工程)。
具体的には、パワーモジュール用基板11の金属層23と、ヒートシンク12の天板部31との間に、Al−Si系ろう材箔42と、フッ化物、例えばKAlF、を主成分とするフラックス43とを介在させる。Al−Si系ろう材箔42としては、Al−10mass%Si〜Al−12mass%Siろう材が用いられる。ろう材箔42の厚さは30μm〜150μmの範囲内に設定される。本実施形態では、ろう材箔42として厚さ100μmのAl−10mass%Siろう材箔を用いた。
次に、積層されたパワーモジュール用基板11、ヒートシンク12を、加熱炉44内に導入して加熱する。本実施形態では、加熱炉44内は、窒素ガス雰囲気とされており、加熱温度は610〜625℃に設定されている。本実施形態においては、温度625℃5分の条件とした。
加熱炉44での加熱時に、フラックス43によって、金属層23の表面や、ヒートシンク12の天板部31の表面に形成されているAlの自然酸化膜が除去される。そして、ろう材箔42と金属層23の一部とが溶融し、パワーモジュール用基板11の金属層23と、ヒートシンク12とが、自然酸化膜を除去された状態で強固に接合される。
このような、パワーモジュール用基板11とヒートシンク12との接合時に、フラックス成分が液化、気化して、セラミックス基板21側へと移動することがある。しかしながら、回路層22及び金属層23が、前工程の加熱処理工程および不純物除去工程によって、Ce、La、Pなどの不純物が除去され、これらCe、La、Pが極めて低濃度であるアルミニウム板を用いて形成されているので、金属層23とヒートシンクの天板部31との接合時にフラックス成分がセラミックス基板21と金属層23との接合界面やセラミックス基板21と回路層22との接合界面に侵入しても、前工程でAl−Si系ろう材によって接合されているセラミックス基板21と回路層22、およびセラミックス基板21と金属層23とが剥離することを抑制できる。
以上の工程を経て、図4(b)に示すように、セラミックス基板21と回路層22や金属層23が強固に接合されたパワーモジュール用基板11を有するヒートシンク付パワーモジュール用基板10を製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、回路層用アルミニウム板52及び金属層用アルミニウム板53の両方に対し加熱処理工程及び不純物除去工程を施したが、回路層用アルミニウム板52に対しては必ずしも加熱処理工程及び不純物除去工程を適用する必要はない。フラックスの侵入は、セラミックス基板と金属層との接合界面への侵入が最も多いため、金属層用アルミニウム板53のみを上述した処理を行うことで、本発明の効果を得ることができる。
例えば、上述したように化学的にアルミニウム板51の表面を溶解させる以外にも、両アルミニウム板51の表面を物理的に研削、研磨することによって、加熱処理工程で両アルミニウム板51の表面に析出させたCe、La、Pを含む不純物を除去することもできる。
また、フラックスの成分は、KAlFに限定されるものでは無く、アルミニウム板の自然酸化膜を除去するために有効なフラックスであれば好ましく利用できる。
以下、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の効果を検証した実施例の結果を記載する。
まず、本発明例1−5と比較例1−3のサンプルを作成した。まず、パワーモジュール用基板の金属層を形成するアルミニウム板を用意した。アルミニウム板は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の厚さ1.5mmの圧延板とした。このアルミニウム板を用いて、表1記載の温度で熱処理工程を実施した。熱処理工程は真空中で60分行った。
次に、熱処理工程を実施したアルミニウム板に対しエッチングによって不純物除去工程を実施した。エッチング液としてNaOH5%水溶液を用い、液温50℃として表1記載の時間浸漬し、エッチング処理をした。その後、上記実施形態に記載した酸洗及び水洗を行った。なお、比較例1は熱処理工程及び不純物除去工程を実施しなかった。比較例3では不純物除去工程を実施しなかった。
次に、AlNからなるセラミックス基板の一方の面にAl−Si系ろう材を介して回路層用アルミニウム板(純度99.99%以上、厚さ0.5mm)を積層し、他方の面に金属層用アルミニウム板として本発明例1−5と比較例1−3の各アルミニウム板をAl−Si系ろう材を介して積層し、積層方向に加圧しながら640℃で接合し、パワーモジュール用基板を作成した。
そして、これらパワーモジュール用基板のそれぞれ金属層に、Al−Si系ろう材およびろう材箔の両面にKAlFを主成分とするフラックスを介してヒートシンクを積層し、ノコロックろう付けした。ヒートシンクとしては、A1050のアルミニウム板を用いた。
このようにして得られた、本発明例1−5と比較例1−3のヒートシンク付パワーモジュール用基板について、金属層とヒートシンクとの接合面の剥離率を評価した。
「剥離率」の評価は、超音波深傷装置を用いてセラミックス基板と金属層との接合部を評価したもので、剥離率=剥離面積/接合面積×100の式から算出した。
ここで、剥離面積は、接合面を撮影した超音波深傷像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を測定したものである。また、接合面積は、接合前における接合すべき面積である金属層の接合面の面積とした。
剥離率が3%以上のものは×、剥離率が2%以上3%未満のものは○、2%未満のものは◎と評価した。
評価結果を表1に示す。
Figure 0006323104
熱処理と不純物除去を行わなかった比較例1、熱処理温度が630℃未満であった比較例2及び不純物除去を行わなかった比較例3では、剥離率が3%以上であり、製品としては好ましくない状態であった。
630℃以上、660℃以下の温度範囲で熱処理を行い、エッチングによって不純物除去を行った本発明例1−5のアルミニウム板を用いて金属層を形成したヒートシンク付パワーモジュール用基板は、剥離率が3%未満であり、金属層とヒートシンクの剥離が抑制されていることが確認された。特に、エッチング時間を80秒とした本発明例1−4のアルミニウムを用いたヒートシンク付パワーモジュール用基板は、剥離率が2%未満とすることが可能であった。
10 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
11 パワーモジュール用基板
12 ヒートシンク
21 セラミックス基板
22 回路層
23 金属層
51 アルミニウム板

Claims (5)

  1. セラミックス基板と、該セラミックス基板の一方の面に形成された回路層と、前記セラミックス基板の他方の面に形成された金属層とを有するパワーモジュール用基板、および前記金属層に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなるヒートシンク、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
    アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板を非酸化雰囲気中で630℃以上、660℃以下の温度範囲、加熱時間を12分以上、180分以下の範囲内で熱処理し、不純物を表面に析出させる熱処理工程と、
    前記不純物を前記アルミニウム板の表面から除去し、Pの濃度を4ppm以下とする不純物除去工程と、
    前記アルミニウム板を前記セラミックス基板の他方の面に接合し、金属層を形成するアルミニウム板接合工程と、
    前記金属層と前記ヒートシンクとを、フラックスを用いて接合するヒートシンク接合工程と、
    を順に備えたことを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
  2. 前記不純物除去工程は、エッチングによって前記不純物を除去する工程であることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
  3. 前記アルミニウム板は、Alの純度が99.99質量%以上のものを用いることを特徴とする請求項1または2記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
  4. 前記回路層は、前記不純物が除去された前記アルミニウム板を用いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
  5. 前記不純物除去工程において除去する不純物は、少なくともCe、Laを含むことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
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